JP4379127B2 - 熱接着性複合繊維、その製造方法及び該複合繊維を用いた繊維成形体 - Google Patents

熱接着性複合繊維、その製造方法及び該複合繊維を用いた繊維成形体 Download PDF

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本発明は、衛生用品等に好適な嵩高性と柔軟性を保有し、リサイクル性にも優れた熱接着性複合繊維、その製造方法及び該複合繊維を用いた繊維成形体に関する。
使い捨て衛生用品において、嵩高性、柔軟性といった基本的な機能、つまり、ふんわりとして柔らかい感触を持たせることは、該衛生用品が人肌に触れるものであるため、その重要性は極めて高く、これまでにも嵩高性、柔軟性を改良した不織布を得る手法が数多く提案されている。
その手法として、結晶性ポリプロピレンよりなる第1成分と、主としてポリエチレンより成る第2成分とを、並列もしくは(偏心)鞘芯型に配して、特定条件下で紡糸し、延伸して得られた繊維のウェブを成形することによって、嵩高で高弾性な繊維成形体を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法では、ポリエチレンを必須成分として使用しているため、得られる成形体は、ポリエチレン特有のぬめり感が付与されてしまう上、ペーパーライクなものとなってしまうため、衛生用品等には敬遠される傾向にある。また、リサイクル性に欠けるという問題も有している。
この様な問題を解消するため、プロピレン共重合体と結晶性ポリプロピレンとから構成される複合繊維を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。すなわち、
プロピレン共重合体を鞘成分とし、結晶性ポリプロピレンを芯成分とするDSC曲線において特定のピーク構造を有する熱接着性繊維は、リサイクル性に優れることが開示されている。しかし、この様な樹脂の組み合わせによる複合繊維を用いると嵩高なものが得られ難い。事実、特許文献2では、該複合繊維に機械捲縮を施し、捲縮数14山/2.54cm(1インチ)のステープルファイバーとした後、それを用いて不織布を製造しているが、嵩が40〜56cm/gという非常に低いものしか得られていない。これでは、とても衛生用品として使用できるレベルではない。
プロピレン共重合体と結晶性ポリプロピレンとから構成される複合繊維において嵩高な不織布を得る方法として、プロピレン共重合体を鞘側、結晶性ポリプロピレンを芯側とする偏心鞘芯型もしくはプロピレン共重合体と結晶性ポリプロピレンとの並列型の複合構造とした繊維に対し、その製造中において、延伸・緊張緩和工程を加えることにより、スパイラルな三次元捲縮構造を有する複合繊維を得るという手法がある。そして、この複合繊維を用いて得た不織布は、嵩高性の良好なものであることが解っている。しかし、この様な三次元捲縮構造を有する複合繊維は、加熱による構造安定性に乏しいため、該複合繊維同士を熱接着させて不織布を得る際の加熱工程等により、該複合繊維が熱収縮し、得られる不織布の地合や風合いを悪化させるという欠点を有している。
この様な欠点を解消する方法として、低い延伸倍率で該複合繊維を得ることにより、捲縮構造の熱安定性を向上させる手法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、低い延伸倍率での製造は、生産性を著しく低下させ、製造コストを悪化させるという問題を有している。また、この方法により得られる複合繊維は、スパイラルな三次元捲縮構造を有するため、開繊工程で分散性を悪化させ、地合を低下させるという問題も有している。
そこで、生産性を低下させることなく得ることができ、捲縮構造の熱安定性に富むプロピレン共重合体/結晶性ポリプロピレン複合繊維であって、更に衛生用品等に好適な嵩高性、柔軟性及び優れたリサイクル性を有するものが強く望まれている。
以上のように、従来技術によって得られる複合繊維は、使い捨て衛生用品等の用途にとって主要な使用適性である嵩高性及び風合いを十分に満足し得るものとは言えなかった。また、リサイクル性を備えた上で、嵩高性及び風合いを向上させるためには、開繊等の物理的及び熱加工等の加熱に対して安定した捲縮構造を有している必要があり、そのような複合繊維を生産性良く得ることが望まれるが、前記従来技術では、それらを満足し得るものが存在しなかったのが現状であった。
特開昭58―126357号公報 特開平5―9810号公報 特開2002−173830号公報
本発明の課題は、衛生用品等に好適な嵩高性と柔軟性を保有し、リサイクル性にも優れた熱接着性複合繊維、該複合繊維を用いた繊維成形体及び該複合繊維を極めて効率的に得るための製造方法を提供することである。
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定構造を有する熱接着性複合繊維が前記全ての課題を解決し得ることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
本発明は以下によって構成される。
(1)繊維軸に対して垂直に入射されたX線の散乱を子午線方向(繊維軸と同一方向)に走査した場合に得られる散乱強度曲線において、散乱ベクトルqの2乗と散乱ベクトル強度Iとの積qIを縦軸に、散乱ベクトルqを横軸にプロットした場合に、0.02≦q≦0.04の範囲における積qIの最小値が3以上であり、開繊後の平均機械捲縮数が7〜18山/2.54cmであり、開繊前後の平均機械捲縮数の変動率が30%以下であり、プロピレン共重合体を第1成分とし、結晶性ポリプロピレンを第2成分として構成される、複合繊維の構造が第1成分を鞘側、第2成分を芯側とする偏心鞘芯型もしくは第1成分と第2成分との並列型の断面形状である複合繊維であって、該複合繊維を用いて加熱処理(140℃、5分)を施して不織布とする際のウェブの熱収縮率が9.1%以下であることを特徴とする、熱接着性複合繊維。
(2)繊維軸に対して垂直に入射されたX線の散乱を子午線方向(繊維軸と同一方向)に走査した場合に得られる散乱強度曲線において、散乱ベクトルqの2乗と散乱ベクトル強度Iとの積q Iを縦軸に、散乱ベクトルqを横軸にプロットした場合に、0.02≦q≦0.04の範囲における積q Iの最小値が3以上であり、開繊後の平均機械捲縮数が7〜18山/2.54cmであり、開繊前後の平均機械捲縮数の変動率が30%以下であり、プロピレン共重合体を第1成分とし、結晶性ポリプロピレンを第2成分として構成される、複合繊維の構造が第1成分を鞘側、第2成分を芯側とする偏心鞘芯型もしくは第1成分と第2成分との並列型の断面形状である熱接着性複合繊維を用いて得られたウェブであり、加熱処理(140℃、5分)を施して不織布とする際のウェブの熱収縮率が9.1%以下であることを特徴とするウェブ。
)前記(1)項記載の熱接着性複合繊維または前記(2)項に記載のウェブを用いた繊維成形体。
(4)前記(3)項記載の繊維成形体を用いて得られた衛生用品。
本発明の熱接着性複合繊維は、耐熱収縮性(保型性)に非常に優れている。そして、該複合繊維を用いると、従来技術の複合繊維では得られない、優れた風合い(地合や柔軟性)を有し、嵩高な繊維成形体(繊維成形体の代表例として不織布という場合もある。)を得ることができるので、衛生用品、カーペット、土木材料等の幅広い分野に利用可能であるが、衛生用品として特に好適である。また、本発明の熱接着性複合繊維は、第1成分、第2成分に同系統の樹脂を使用しているため、リサイクル性にも優れている。更に、本発明の製造方法によれば、本発明の熱接着性複合繊維を容易に得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱接着性複合繊維(以下、単に複合繊維ということがある。)は、プロピレン共重合体を第1成分とし、結晶性ポリプロピレンを第2成分として構成される複合繊維の断面形状が、第1成分を鞘側、第2成分を芯側とする偏心鞘芯型もしくは第1成分と第2成分との並列型の構造を有する熱接着性複合繊維であって、該複合繊維は、繊維軸に対して垂直に入射されたX線の散乱を子午線方向(繊維軸と同一方向)に走査した場合に得られる散乱強度曲線において、散乱ベクトルqの2乗と散乱ベクトル強度Iとの積qIを縦軸に、散乱ベクトルqを横軸にプロットした場合に、0.02≦q≦0.04の範囲における積qIの最小値(以下、散乱強度という)が3以上の値を有し、開繊後の平均機械捲縮数が7〜18山/2.54cmであり、開繊前後の平均機械捲縮数の変動率が40%以下であることを特徴とする熱接着性複合繊維である。
本発明の複合繊維を構成するプロピレン共重合体とは、プロピレンを主とし、これと他のオレフィンとを共重合させることにより得ることができ、本発明においては、メルトマスフローレイト(以下、MFRということがある)が0.1〜80g/10minのプロピレン共重合体が好ましく、中でも3〜40g/10minのプロピレン共重合体を特に好適に用いることができる。該オレフィンとしては、例えば、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、4−メチル−ペンテン−1等を挙げることができ、またこれらのオレフィンのうち2種以上を併用することもできる。 尚、ここでプロピレンを主とするとは、プロピレン共重合体において、プロピレン構成単位の含有量が他のオレフィン構成単位の含有量に比べて最も多いことを意味する。
プロピレン共重合体の具体例としては、エチレン−プロピレン二元共重合体、プロピレン−ブテン−1二元共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1三元共重合体、プロピレン−ヘキセン−1二元共重合体、プロピレン−オクテン−1二元共重合体等、及びこれらの混合物等を挙げることができる。これらの共重合体は通常ランダム共重合体であるが、ブロック共重合体、ランダムブロック共重合体であってもよい。
中でも、加工性の点から、融点Tm(℃)が120℃≦Tm≦147℃の範囲にあるプロピレン共重合体が好ましい。該プロピレン共重合体の融点Tm(℃)が上記の範囲内であれば、ゴム弾性が小さく表面摩擦も低いため、得られた複合繊維はカード加工性に優れ、得られた複合繊維を不織布に加工する際、低温加工性が良好である。
該プロピレン共重合体は、低温加工性、コスト面から、エチレン構成単位含有量が4〜10重量%、プロピレン構成単位含有量が90〜96重量%のプロピレン共重合体もしくはエチレン構成単位含有量が2〜7重量%、プロピレン構成単位含有量が90〜97重量%及び1−ブテン構成単位含有量が1〜5重量%(合計100重量%)からなるプロピレン共重合体が特に好ましい。
尚、本発明の目的を大きく損なわない範囲において、必要に応じて2種類以上のプロピレン共重合体を混合して用いてもよい。また、該プロピレン共重合体には必要に応じて他の熱可塑性樹脂や二酸化チタン、炭酸カルシウム及び水酸化マグネシウム等の無機物や、難燃剤、顔料及びその他のポリマーを添加しても差し支えない。
本発明の複合繊維を構成する結晶性ポリプロピレンとは、プロピレン単独重合体もしくはプロピレンと少量の、通常は2重量%以下のα−オレフィンとの共重合体である。このような結晶性ポリプロピレンとしては、汎用のチーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒を用いて得られる結晶性ポリプロピレンを例示でき、本発明においては、融点が150〜165℃、好ましくは155〜165℃、また、MFRが0.1〜80g/10min、好ましくは3〜40g/10minの範囲内にある結晶性ポリプロピレンを好適に用いることができる。本発明の効果を著しく損なわなければ、前記結晶性ポリプロピレン同士を混合したものや、異なる分子量分布、MFR等の物性が異なる結晶性ポリプロピレン同士を混合したものを用いてもよい。また結晶性ポリプロピレンには必要に応じて他の熱可塑性樹脂や二酸化チタン、炭酸カルシウム及び水酸化マグネシウム等の無機物や、難燃剤、顔料及びその他のポリマーを添加しても差し支えない。
本発明の複合繊維は、プロピレン共重合体を第1成分とし、結晶性ポリプロピレンを第2成分として構成される複合繊維であり、該複合繊維の断面形状は、第1成分を鞘側、第2成分を芯側とする偏心鞘芯型構造、もしくは第1成分と第2成分との並列型構造のいずれかである(ここで、偏心鞘芯型とは、該複合繊維の繊維軸と直交する方向における断面において、該複合繊維の外周と芯の外周とのそれぞれの中心が一致しないものをいう。)。これ以外の断面形状であると本発明の熱接着性複合繊維に充分な嵩高性を付与することができない。ただし、嵩高性付与の観点から、繊維内部に中空部を設けてもよい。
本発明の複合繊維においては、該複合繊維の第1成分と第2成分との体積比(該複合繊維を繊維軸方向と直交する方向に切った切断面における両成分の面積比)が、70/30〜30/70の範囲であることが好ましく、本発明の複合繊維においては鞘芯の体積比が65/35〜35/65の範囲であることが特に好ましい。第1成分と第2成分の体積比が50/50から大きく離れていると、生産性の低下を招くことや、得られる複合繊維に十分な嵩高性や熱接着性を付与できなくなることがある。
本発明の複合繊維は、繊度を特に限定しない。使用するプロピレン共重合体の物性や、該複合繊維の用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、使い捨てオムツ、生理用ナプキンの表面材等の吸収性物品に代表される衛生材料に用いる場合には1〜10dtexの範囲、ニードルパンチカーペットやタフテッドカーペット等に用いる場合には、8〜80dtexの範囲、土木材料に用いるモノフィラメント等の場合には、50〜7000dtexの範囲がそれぞれ好ましい。
本発明の複合繊維は、繊維の長さを特に限定しない。該複合繊維を不織布もしくは他の繊維成形体へ加工する際に実施する加工法及び用途に応じて、マルチフィラメント、モノフィラメント、ステープルファイバー、チョップ、トウ等適宜選択するとよい。
例えばローラーカード機またはランダムウェバー等により、ランダムウェブ、パラレルウェブあるいはクロスラップウェブ等の繊維ウェブを作製する場合にはカット長は20〜125mmとすることが好ましく、またカード通過性、地合いの良い不織布を得るためには、25〜75mmのカット長がより好ましい。また、エアーレイド法、抄紙法により繊維ウェブを作製する場合には、カット長は20mm未満とすることが好ましい。
本発明の複合繊維は、繊維軸に対して垂直に入射されたX線の散乱を子午線方向(繊維軸と同一方向)に走査した場合に得られる散乱強度曲線において、散乱ベクトルqの2乗と散乱ベクトル強度Iとの積qIを縦軸に、散乱ベクトルqを横軸にプロットした場合に、0.02≦q≦0.04の範囲における積qIの最小値、すなわち散乱強度が3以上のものである。
散乱強度は、得られる繊維成形体が嵩高で風合いに優れたものとなるかを判断する極めて優れた指標であり、散乱強度が3を大きく下回った場合には、得られる繊維成形体に良好な嵩高性を付与することができなくなり、風合いも悪化する。
従来技術により製造された偏心鞘芯型または並列型の断面形状を有するプロピレン共重合体/結晶性ポリプロピレン複合繊維は、加熱に対し非常に高い収縮を示す。そのため、該複合繊維を熱融着させて得た繊維成形体は、衛生用品に適した地合い、嵩高性に優れたものとなり難い。その理由としては、プロピレン共重合体の分子配向が原因となっていると考えられる。つまり、従来の製造法では、プロピレン共重合体の分子配向を抑制することが困難であるために、プロピレン共重合体の分子配向を抑制するには特殊な条件下で製造する必要があるものの、プロピレン共重合体の分子配向の抑制度合いが定量的に解れば、該複合繊維から得られる繊維成形体の嵩高性及び風合いの良否を容易に判断し得る。散乱強度は、その尺度として極めて優れたものであり、嵩高性及び風合いの良否の推測に散乱強度を用いた手法は過去に存在しない。
本発明で用いている散乱ベクトルは下式で定義される。
q=4πsinθ/λ
π:円周率(3.14159)
θ:回折角( ゜(度))
λ:X線の波長(nm)
X線源として、CuKα線(Niフィルター使用)波長0.1542nmを使用すると、0.02≦q≦0.04の範囲に対応する回折角2θは、0.281゜≦2θ≦0.563゜となる。以下、回折角の説明においては、このX線源を用いていることを前提とする。
本発明の複合繊維は、従来技術により製造されるプロピレン共重合体/結晶性ポリプロピレン複合繊維とは異なり、繊維軸に対して入射されたX線により得られる小角X線散乱スペクトルにおいて、回折角2θが特に0.3゜以下の領域で著しい散乱強度の増加が観察される。
このような低角度領域における著しい散乱強度増加について、その詳細は明らかではないが、一般的にこのような低角度領域における散乱強度の著しい増加は次のように考えられている。
まず、散乱強度の著しい増加は、試料内部に電子密度の差が大きい部分、例えば試料内の微細なボイドや、層間の剥離等による空隙等が多い、すなわち濃度のゆらぎが大きい試料で観察されるとされている。また、ポリプロピレンにおいては長周期を示すピークは2θが0.7゜近傍の領域で観察されるが、これよりも更に低角度領域で散乱強度が増加していることは、ポリプロピレンの長周期よりも更に大きな周期的な構造が形成されていると考えられる。このような低角度領域における著しい散乱強度の増加は、例えば、アイソタクチックポリプロピレンにアタクチックポリプロピレンを混ぜた場合に観察され、この現象は、アタクチックポリプロピレンが結晶部より排斥され、この非晶部と結晶部を合わせた構造が小角X線散乱の観察範囲に入ってくるからと考えられている(Journal of Polymer Science, Vol.38, 2580(2000))。
以上のことから、本発明の複合繊維内部においては、非常に乱れた構造が形成されていること、長周期を示すピークの位置はほとんど変化していないが、ポリプロピレンの長周期よりも更に低角度領域に、ある大きな周期構造による散乱が観察されていることから、本発明の複合繊維においては非晶部が通常よりも大きくなっている、つまり分子配向が抑制されていると考えられる。
本発明の複合繊維において、プロピレン共重合体の分子配向を抑制し、嵩高い繊維成形体が得られるようにするためには、長周期よりも大きな周期構造によると考えられる散乱強度が3以上であること、特に、2θが0.3゜以下となる低角度領域の散乱強度が高い事が重要である。この散乱強度が3を大きく下回った場合、得られる繊維成形体に良好な嵩高性及び風合いを付与することができなくなる。
複合繊維の散乱強度が3以上であると、プロピレン共重合体の分子配向が充分抑制されているので、耐熱収縮性の優れた複合繊維となっており、該複合繊維を用いて不織布等を製造すると、耐熱収縮性の優れた不織布となるが、本発明の目的としている高度に優れた衛生用品を得るには、複合繊維を用いてウエブを得た後、加熱処理(145℃、5分)を施して不織布とする際のウェブの熱収縮率が20%以下となるような複合繊維を用いることが好ましく、15%以下がより好ましい。
本発明の複合繊維は、嵩高な繊維成形体を得るために捲縮が施される。複合繊維に捲縮を付与させる方法としては、複合繊維の製造工程中で、延伸・緊張緩和によりスパイラルな三次元捲縮を付与する方法、複合繊維を構成する樹脂の熱収縮差を利用してスパイラルな三次元捲縮を付与する方法、クリンパー等の捲縮付与装置を用いてジグザグな機械捲縮を付与する方法等がある。スパイラルな三次元捲縮は、嵩高な繊維成形体を得るのに有利ではあるが、耐熱収縮性に乏しいので所望の形状の繊維成形体を得難く、風合いを損ない易い。また、耐熱収縮性を向上させようとすると生産性が悪化する上、開繊性に劣るという問題点を有している。そのため、本発明では機械捲縮の付与された複合繊維を用いる。本発明の複合繊維は、耐熱収縮性に優れており、開繊性にも優れているので、従来の複合繊維を機械捲縮したものと比べ、嵩高性に極めて優れている。
本発明の複合繊維は、開繊後の平均機械捲縮数が7〜18山/2.54cmのものである。開繊後の平均機械捲縮数が7山/2.54cmを大きく下回る複合繊維は、不織布を作製する際の生産性の悪化、例えばステープルファイバーとして用いる場合、カード加工時に該複合繊維がシリンダーやドッファに巻き付いたり、ウェブが切れたりする。加えて不織布とした際の嵩高性が得られないといった問題が生じる。逆に、開繊後の平均機械捲縮数が18山/2.54cmを大きく超える複合繊維は、不織布を作製する際の生産性や地合が酷く悪くなり、かつ嵩高性や風合いが損なわれるといった問題が生じる。
本発明でいう開繊後の平均機械捲縮数とは、該複合繊維を用いて繊維成形体を作製する際、得られる該繊維成形体の地合を良くするために、該複合繊維の局所的な塊をなくし、均一に分散させる工程として、開繊工程を実施する必要があるが、その工程後のウェブ状態にある複合繊維層から任意に取り出された該複合繊維の平均捲縮数のことである(測定には、一般なステープルファイバーを用いて実施している。)
本発明の複合繊維は、開繊前後の平均機械捲縮数の変動率が40%以下のものである。変動率は、該複合繊維の開繊前の平均機械捲縮数から開繊後の平均機械捲縮数を引いた値に対し、開繊前の平均機械捲縮数を除した数値の絶対値に対し、100を乗じたものである(測定には、一般なステープルファイバーを用いて実施している。)。該変動率が40%を大きく上回ると、得られる繊維成形体の風合いが悪化する。35%以下が好ましく、30%以下が更に好ましい。
本発明の複合繊維は、開繊等における物理的、不織布化等における加熱に対し、極めて捲縮構造の安定性が高いため、捲縮数の増減が極めて少なく、風合い、嵩高性に優れた不織布等の繊維成形体を得ることが極めて容易である。この様な複合繊維を製造するには、その方法及び条件に限定はないが、公知の方法により得るのは非常に難しい。本発明の複合繊維を実用的に効率よく生産するための製造方法は以下の通りである。
本発明の製造方法は、プロピレン共重合体を第1成分とし、結晶性ポリプロピレンを第2成分として構成される複合繊維の断面形状が、第1成分を鞘側、第2成分を芯側とする偏心鞘芯型もしくは第1成分と第2成分との並列型になるように、偏心鞘芯型紡糸口金もしくは並列型紡糸口金を備えた押出機によって両成分を紡糸して未延伸糸とし、該未延伸糸を、複数本の加熱ロールからなる加熱装置を2組以上有する延伸装置を用いて延伸する際に、2.0倍を超え3.0倍未満の延伸倍率がかかる延伸セクションにおいて、該延伸装置の上流側にある加熱装置の加熱ロールの表面温度を50℃以上80℃以下とし、開繊後の平均機械捲縮数が7〜18山/2.54cmの範囲になるように機械捲縮を付与したことを特徴とする熱接着性複合繊維の製造方法である。
本発明の製造方法では、プロピレン共重合体を第1成分とし、結晶性ポリプロピレンを第2成分として構成される複合繊維の断面形状が、第1成分を鞘側、第2成分を芯側とする偏心鞘芯型もしくは第1成分と第2成分との並列型になるように、偏心鞘芯型紡糸口金もしくは並列型紡糸口金を備えた押出機によって両成分を紡糸して未延伸糸を得る。
こうして得られた未延伸糸を、走査型示差熱量分析法(以下、DSCという)により測定すると、同心鞘芯型紡糸口金を用いて得られた未延伸糸のDSCチャートでは見られない、160℃近辺に出現する結晶性ポリプロピレンに相当するピークに、ショルダーが観察される。これは偏冷却により、同心鞘芯型紡糸口金により得られる未延伸糸に比べて、結晶性ポリプロピレンに、より大きな紡糸線張力が加わっているためであると考えられる。このことは換言すれば、偏心鞘芯型紡糸口金、または並列型紡糸口金により得られた未延伸糸では、プロピレン共重合体に加わる紡糸線張力が同心鞘芯型紡糸口金により得られる未延伸糸よりも小さく、分子配向が進んでいないということである。同心鞘芯型紡糸口金を用いて得られた未延伸糸に次に述べる延伸方法を適用しても、散乱強度は3以上の値とならず、また嵩高な不織布を得ることはできない。
本発明の製造方法では、公知の溶融複合紡糸装置を用いることができる。ここでいう公知の溶融複合紡糸装置とは2台の押出機、ギヤポンプ、配管とそのヒーター、紡糸口金等から構成される紡糸装置のことを指す。
本発明の製造方法では、前記未延伸糸を、複数本のロールからなる加熱装置を2組以上有する延伸装置を用いて延伸する際に、2.0倍を超え3.0倍未満の延伸倍率がかかる延伸セクションを通過させる(図2及び3参照)。延伸倍率が3倍を大きく超えると、得られる繊維成形体の熱収縮性が高くなり、かつ嵩高性が損なわれることがある。反面、延伸倍率が2倍を大きく下回ると、捲縮構造が不安定となり、経時的及び開繊等の物理的作用により捲縮数が増加し、繊維成形品の風合い損なわれやすくなる。また、複合繊維の生産性は、延伸倍率に依存するところが大きく、その延伸倍率が2倍を大きく下回るような低倍率では、生産性が極端に悪くなり、製造コストが著しく悪化する。延伸倍率は、2.0倍以上2.6倍以下が好ましい。
本発明の製造方法では、前記未延伸糸を延伸セクションに通過させる際、延伸装置の上流側にある加熱装置(以下、上流側セクションという。)の加熱ロールの表面温度を50℃以上80℃以下に設定する(図2及び3参照)。未延伸糸の延伸時には、上流側セクションによって繊維束を加熱するが、この上流側セクションおいて、繊維束の温度が50℃を大きく下回ると、捲縮が不安定となり、経時的及び開繊等の物理的作用により捲縮数が増加し、繊維成形品の風合い損なわれやすくなる。また、上流側セクションにおいて、繊維束の温度が80℃を大きく超えると、延伸の際の分子配向が進むため、散乱強度が3以上の値になり難く、繊維成形体の熱収縮性が高くなり、かつ、嵩高性及び風合いが損なわれてしまう。上流側セクションの加熱ロールの表面温度は50℃以上70℃以下が好ましい。
本発明の製造方法では、公知の延伸装置を用いることができる。ここでいう公知の延伸装置とは、複数本のロールを有する加熱装置を通常2〜3組程度有する延伸装置を指す。また、延伸装置には加熱装置間にスチーム、電気等による予熱装置や、延伸後のトウを引き取るためのロール、圧縮空気による開繊機等が設置されているものもあるが、これらは必要に応じて使用することができる。
尚、ここで延伸セクションとは、ある1組の加熱装置とその次の1組の加熱装置とのように、隣り合う加熱装置対(図2のS、図3のS及びS)のことをいい、2組の延伸ロール(図2のA及びB)を有する延伸装置では延伸セクションはNo.1延伸セクション(図2のS)の1つのみ、3組の延伸ロールを有する延伸装置では上流側からNo.1延伸セクション、No.2延伸セクションの2つを有することになる(図3のS及びS)。該延伸装置の上流側にある加熱装置の加熱ロールの設定温度が50℃以上80℃以下となるような延伸セクションを少なくとも1組含む場合として、例えば加熱装置を2組有する延伸装置の場合は、No.1加熱装置(A)の加熱ロールの設定温度を50℃以上80℃以下とし、延伸倍率を2.0倍を超え3.0倍未満として延伸する。
また、3組以上の加熱装置を含む場合、No.1加熱装置(A)の加熱ロールの設定温度が50℃以上80℃以下で、No.1延伸セクション(S)の延伸倍率が2.0倍を超え3.0倍未満とした場合、No.2加熱装置(B)及びNo.3加熱装置(C)の加熱ロールの設定温度は、本発明の目的を大きく損なわない範囲において、任意に設定することができ(例えば80℃以上)、またNo.2延伸セクション(S)の延伸倍率も、本発明の目的を大きく損なわない範囲において、任意に設定することができるが、延伸セクション全体としての延伸倍率が2.0倍を超え3.0倍未満の範囲で設定することが好ましい。更に本発明においては、No.2加熱装置(B)の加熱ロールの設定温度が50℃以上80℃以下であって、No.2延伸セクション(S)における延伸倍率が2.0倍を超え、3.0倍未満とした場合、No.1加熱装置(A)及びNo.3加熱装置(C)の加熱ロールの設定温度は、本発明の目的を大きく損なわない範囲において、任意に設定することができ(例えば80℃以上)、またNo.1延伸セクション(S)の延伸倍率も、本発明の目的を大きく損なわない範囲において、任意に設定することができるが、延伸セクション全体としての延伸倍率が2.0倍を超え3.0倍未満の範囲で設定することが好ましい。
更には、No.1加熱装置(A)の加熱ロールの設定温度が50℃以上80℃以下、No.2加熱装置(B)の加熱ロールの設定温度が50℃以上80℃以下である場合は、No.1延伸セクション(S)における延伸倍率と、No.2延伸セクション(S)における延伸倍率との積が、2.0倍を超え3.0倍未満となるように設定する。この場合、No.3加熱装置の加熱ロールの温度は、本発明の目的を大きく損なわない範囲において、任意に設定することができる(例えば80℃以上)。
本発明の製造方法によって得られる複合繊維は、従来技術により製造されるプロピレン共重合体/結晶性ポリプロピレン複合繊維とは異なり、繊維軸に対して入射されたX線により得られる小角X線散乱スペクトルにおいて、回折角2θが0.3゜以下の領域で著しい散乱強度の増加が観察され、開繊前後の平均機械捲縮数の変動率が極めて小さい。
本発明の繊維成形体は、本発明の複合繊維を使用して得られる。該繊維成形体を得るためには、該複合繊維をカーディング法あるいはエアーレイド法を用いて所望の目付のウェブとし、熱風接着法あるいは熱ロール接着法等の公知の方法で加工して得ることができる。代表的な形態として不織布がある。また、該繊維成形体にあっては、本発明の目的を損なわない範囲において、本発明の複合繊維に他の繊維や複合繊維を混合して使用することもできる。
本発明の繊維成形体の形態が不織布である場合、該不織布の目付は、使用目的によって適宜選ぶことができる。例えば、吸収性物品の表面材等に使用する場合には、5〜100g/m2の範囲、ドレーン材等の土木資材に用いる場合には、50〜2000g/m2の範囲がそれぞれ好ましい。
また、本発明の繊維成形体の形態が不織布である場合、該不織布の比容積は嵩高性の点で、80cm/g以上が好ましく、85cm/g以上がより好ましい。
本発明の繊維成形体としては、該不織布の他に、目的に応じて該不織布に他の不織布、熱可塑性樹脂フィルム、シ−ト、編織物等を積層した積層体を挙げることができ、スパンボンド不織布/熱接着性複合繊維の組み合わせ、熱接着性複合繊維/スパンボンド不織布/メルトブロー不織布からなる不織布の組み合わせ等を例示することができる。
次に、本発明を実施例と比較例によって具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、本明細書、特に実施例と比較例において用いられている用語の定義及び測定方法は以下の通りである。
(1)MFR:(単位 g/10min)
実施例1〜10及び比較例1〜10に用いられている各重合体のMFRを、JIS K7210(230℃、2.16Kg)に準じて測定した。尚、表中に示したMFRは紡糸前の樹脂について測定した値である。
(2)融点:(単位 ℃)
DuPont社製示差走査熱量計DSC−10により、実施例1〜10及び比較例1〜10に用いられている各重合体を10℃/minで昇温し、得られた融解吸収曲線上のピークに対応する温度をその重合体の融点とした。
(3)Q値:(重量平均分子量/数平均分子量)
Q値は、Waters製GPC−150C(カラム:東ソー製TSKgel GMH−HT 7.5cmI.D.×60cm 1本)を用いて、ゲルパーミエイションクロマトグラフ法により求めた実施例1〜10及び比較例1〜10で用いられている重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)である。尚、ここでは紡糸前の重合体の値を示した。
(4)開繊前の平均機械捲縮数(単位 山/2.54cm)
試料原綿についてJIS L 1015の7.12.1の条件に準じ、実施例と比較例で得られた複合繊維からそれぞれ20本を選び出し、それぞれについてデシテックス(dtex)当たり2.22mgの荷重をかけたときの2.54cm(1インチ)当たりの捲縮数を数え、平均した値を開繊前の平均機械捲縮数とした。
(5)開繊後の平均機械捲縮数(単位 山/2.54cm)
実施例と比較例で得られた複合繊維50gを大和機工社製カード機に通過させる。(速度 シリンダー/ドッファ=430/7 m/min)通過した後の該複合繊維を再度カード機に通過させ、これを5回繰り返す。得られた該複合繊維についてJIS L 1015の7.12.1の条件に準じ、それぞれ20本を選び出し、それぞれについてデシテックス(dtex)当たり2.22mgの荷重をかけたときの2.54cm(1インチ)当たりの捲縮数を数え、平均した値を開繊後の平均機械捲縮数とした。
(6)開繊前後の平均機械捲縮数の変動率:(単位 %)
実施例と比較例で得られた複合繊維の開繊前の平均機械捲縮数から開繊後の平均機械捲縮数を引いた値に対し、開繊前の平均機械捲縮数を除した数値の絶対値に対し、100を乗じた値を変動率とした。
(7)ウェブ熱収縮率:(単位 %)
実施例と比較例で得られた各複合繊維をカード機により、約200g/m2のウェブとし、得られたウェブをカード機の流れ方向(MD)とカード機の流れに直角な方向(CD)に沿って、それぞれ25cm×25cmの長さにカットし、次いでそれを循環熱風式ドライヤーで145℃、5分間熱処理を行い、更に室温で5分間放冷後、MDの長さを測定し、MDの熱処理前後の長さを次式に当てはめることによりウェブ熱収縮率を求めた。この数値が小さい程、複合繊維の耐熱収縮性に優れていることをあらわす。
ウェブ熱収縮率(%)={(L0−L)/L}×100
0:熱処理前のウェブの長さ
L:熱処理後のウェブの長さ
(8)散乱強度
下記試験条件下で小角X線散乱スペクトルを測定した後、空気散乱強度を補正し、得られたデータを散乱ベクトルqの2乗と散乱ベクトル強度Iとの積qIを縦軸に、散乱ベクトルqを横軸にプロットした時の0.02≦q≦0.04におけるqIの最小値をグラフから得て、これを散乱強度とした。
試験条件
測定機器 :日本電子データム株式会社 JDX 8200T
X線源 :CuKα線(Niフィルター使用)波長0.1542nm
出力 :50kV−150mA
測定開始角 :2θ=0.2°
測定終了角 :2θ=2.0°
ステップ角 :2θ=0.01°
計数時間 :20.0s/ステップ
(9)引張強度(単位 cN/dtex)及び伸度(単位 %)
繊度が880〜1320dtexとなるように複合繊維束を採取し、これを試料として島津製作所製AG−500Dを用いて、試料長50mm、引張り速度50mm/min(100%/min)の条件で試料の引張強度、伸度を測定した。尚、ここでいう引張強度とは試料が示した最大の引張強度を試料の繊度で除したものであり、伸度は試料の破断伸度を指す。引張強度及び伸度は3回測定した結果の平均値である。
(10)繊度:(単位 dtex)
複合繊維を走査型電子顕微鏡によって観察し、得られた画像から100本の繊維の直径を測定し、その平均値から繊度を算出した。
(11)比容積:(単位 cm/g)
実施各例及び比較各例で得られた複合繊維を用いてミニチュアカードでウェブとし、134℃にてスルーエア不織布化した後、東洋精機製作所製デジシックネステスタを用い、2g/cmの荷重が不織布に加えられた時の厚さを測定し、比容積を算出した。この数値が大きい程、嵩高性が優れていることをあらわす。
(12)不織布の風合い
実施例と比較例で得られた複合繊維を用いてミニチュアカードでウェブとし、134℃にて目付25g/mのスルーエア不織布とし、その不織布の感触を10人のパネラーによる官能試験によって、以下の基準で風合いを4段階で採点した。
◎:地合が良好で、柔軟な感触を有し、嵩高いもの
○:地合が良好で、嵩高性または柔軟性のいずれかが若干欠けるが、実用上全く問題
無いもの
△:地合が良好であるが、嵩高性及び柔軟性に劣るもの
×:嵩高性及び柔軟性に劣り、地合も乱れているもの
実施例1〜3、比較例1〜3
表1記載の第1成分(Co.−PPはプロピレン共重合体を意味する)及び第2成分(PPは結晶性ポリプロピレンを意味する)とを、押出機、孔径0.8mmの偏心鞘芯型紡糸口金または並列型紡糸口金、巻取り装置等を備えた紡糸装置ならびに2組の加熱装置と引き取りロールを備えた延伸装置から構成される紡糸装置において、表1に示される条件で紡糸、延伸し90℃で乾燥した後、51mmに切断して、実施例1〜3、比較例1〜3の各々の複合繊維を得た。得られた各複合繊維の繊維物性を上記(4)〜(9)の測定方法に準拠して測定した。得られた結果を表1の糸質の項目に示す。また、各複合繊維から得た不織布の物性を上記(10)、(11)の測定方法に準拠して測定した。実施例1〜3の条件下ではいずれの場合においても、従来の、偏心鞘芯型または並列型のプロピレン共重合体/結晶性ポリプロピレン複合繊維において得ることが困難であった良好な感触を有する嵩高性に優れた不織布が得られた。比較例1〜3は、実施例1で用いた第1成分及び第2成分と同じものを用い、従来技術の製造方法によって得た従来の複合繊維であるが、これらは散乱強度が本発明での特定値(3以上)を外れる複合繊維であり、該複合繊維から得られた不織布物性(嵩高性、風合い)は、本発明の複合繊維に比べ著しく劣るものであった。
Figure 0004379127
実施例4〜6(参考例)、比較例4〜6
表2記載の第1成分及び第2成分を用いて、表2に示される条件で紡糸、延伸し90℃で乾燥した後、51mmに切断して各々の複合繊維を得た。得られた各複合繊維の繊維物性を上記(4)〜(9)の測定方法に準拠して測定した。得られた結果を表2の糸質の項目に示す。また、各複合繊維から得た不織布の物性を上記(10)、(11)の測定方法に準拠して測定した。得られた結果を表2の不織布物性の項目に示す。実施例4〜6の条件下では嵩高で良好な感触を有する不織布を得ることができた。比較例4、5は、実施例4で用いた第1成分及び第2成分と同じものを用い、従来技術の製造法により得た複合繊維であるが、該複合繊維は、散乱強度が本発明での特定値(3以上)を下回る複合繊維であり、嵩高性が十分でなく、柔軟性も劣っていた。比較例6は、実施例6で用いた第1成分及び第2成分と同じものを用い、従来技術の製造法とは異なる条件(No.1加熱装置の加熱ロール設定温度:30℃)とし、得られる複合繊維の散乱強度が本発明での特定値(3以上)に入るように製造したものであるが、得られた複合繊維の開繊前後の平均機械捲縮数の変動率が本発明での特定値(40%以下)を外れるものであり、捲縮構造の安定性が極めて悪く、該複合繊維によって得た不織布の地合が乱れ、風合いが劣るものとなった。
Figure 0004379127
比較例7〜10
表3記載の第1成分及び第2成分を用いて、表3に示される条件で紡糸、延伸し90℃で乾燥した後、51mmに切断して各々の複合繊維を得た。得られた各複合繊維の繊維物性を上記(4)〜(9)の測定方法に準拠して測定した。得られた結果を表3の糸質の項目に示す。また、各複合繊維から得た不織布の物性を上記(10)、(11)の測定方法に準拠して測定した。得られた結果を表3の不織布物性に示す。比較例7〜10は、繊維断面形状が同心鞘芯型を有する複合繊維であり、この構造を有していると散乱強度が本発明での特定値(3以上)に入るように製造することが極めて困難であり、本発明での特定値(3以上)に入らないこれら同心鞘芯型複合繊維から得られる不織布は、嵩高性が不十分であり、風合いも満足できるものではなかった。
Figure 0004379127
実施例7〜10、比較例11、12
表4記載の第1成分及び第2成分を用いて、表4に示される条件で紡糸、延伸し90℃で乾燥した後、51mmに切断して各々の複合繊維を得た。得られた各複合繊維の繊維物性を上記(4)〜(9)の測定方法に準拠して測定した。得られた結果を表4の糸質の項目に示す。また、各複合繊維から得た不織布の物性を上記(10)、(11)の測定方法に準拠して測定した。得られた結果を表4の不織布物性の項目に示す。実施例7、8の条件下で得られる複合繊維を用いると、嵩高で良好な風合いの不織布を得ることができる。比較例11は、実施例7で用いた第1成分及び第2成分と同じものを用い、従来技術の製造法とは異なる条件とし、得られる複合繊維の散乱強度が本発明での特定値(3以上)に入るように製造したものであるが、得られた複合繊維の開繊前後の平均機械捲縮数の変動率が本発明での特定値(40%以下)を外れるものであり、捲縮構造の安定性が極めて悪く、該複合繊維によって得た不織布の地合が乱れ、風合いが劣るものとなった。また、延伸倍率を1.7倍で実施したため生産性を著しく低下させてしまった。生産性を上げるために、延伸倍率を3.2倍で行った比較例12は、得られた複合繊維の散乱強度と開繊前後の平均機械捲縮数の変動率が本発明での特定値を外れるものであり、不織布の嵩高性及び風合いが一層劣るものとなった。実施例9では3組の延伸ロールを、実施例10では第1成分としてエチレン−プロピレン二元共重合体を用いたが、表から明らかなように、この条件下においても嵩高で風合いの良好な不織布が得られた。
Figure 0004379127
本発明の複合繊維の小角X線散乱スペクトルより得たqI vs.qプロットにおいて、0.02≦q≦0.04の範囲におけるqIの最小値の算出を示した図。 2組の加熱装置を有する延伸装置の1例を示した図。 3組の加熱装置を有する延伸装置の1例を示した図。
符号の説明
qは散乱ベクトル
Iは散乱ベクトル強度
AはNo.1加熱装置
BはNo.2加熱装置
CはNo.3加熱装置
Dは延伸されたトウ
は第1延伸セクション
は第2延伸セクション

Claims (4)

  1. 繊維軸に対して垂直に入射されたX線の散乱を子午線方向(繊維軸と同一方向)に走査した場合に得られる散乱強度曲線において、散乱ベクトルqの2乗と散乱ベクトル強度Iとの積qIを縦軸に、散乱ベクトルqを横軸にプロットした場合に、0.02≦q≦0.04の範囲における積qIの最小値が3以上であり、開繊後の平均機械捲縮数が7〜18山/2.54cmであり、開繊前後の平均機械捲縮数の変動率が30%以下であり、プロピレン共重合体を第1成分とし、結晶性ポリプロピレンを第2成分として構成される、複合繊維の構造が第1成分を鞘側、第2成分を芯側とする偏心鞘芯型もしくは第1成分と第2成分との並列型の断面形状である複合繊維であって、該複合繊維を用いて加熱処理(140℃、5分)を施して不織布とする際のウェブの熱収縮率が9.1%以下であることを特徴とする、熱接着性複合繊維。
  2. 繊維軸に対して垂直に入射されたX線の散乱を子午線方向(繊維軸と同一方向)に走査した場合に得られる散乱強度曲線において、散乱ベクトルqの2乗と散乱ベクトル強度Iとの積qIを縦軸に、散乱ベクトルqを横軸にプロットした場合に、0.02≦q≦0.04の範囲における積qIの最小値が3以上であり、開繊後の平均機械捲縮数が7〜18山/2.54cmであり、開繊前後の平均機械捲縮数の変動率が30%以下であり、プロピレン共重合体を第1成分とし、結晶性ポリプロピレンを第2成分として構成される、複合繊維の構造が第1成分を鞘側、第2成分を芯側とする偏心鞘芯型もしくは第1成分と第2成分との並列型の断面形状である熱接着性複合繊維を用いて得られたウェブであり、加熱処理(140℃、5分)を施して不織布とする際のウェブの熱収縮率が9.1%以下であることを特徴とするウェブ。
  3. 請求項1記載の熱接着性複合繊維または請求項2記載のウェブを用いた繊維成形体。
  4. 請求項3記載の繊維成形体を用いて得られた衛生用品。
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