JP2005200795A - 熱接着性複合繊維、その製造方法及び該複合繊維を用いた繊維成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】繊維軸に対して垂直に入射されたX線の散乱強度曲線において、散乱ベクトルqの2乗と散乱ベクトル強度Iとの積q2Iを縦軸に、散乱ベクトルqを横軸にプロットした場合に、0.02≦q≦0.04の範囲における積q2Iの最小値が3以上であり、開繊後の平均機械捲縮数が7〜18山/2.54cmであり、開繊前後の平均機械捲縮数の変動率が40%以下であり、プロピレン共重合体を第1成分とし、結晶性ポリプロピレンを第2成分として構成される、第1成分を鞘側、第2成分を芯側とする偏心鞘芯型もしくは第1成分と第2成分との並列型の断面形状を有する熱接着性複合繊維、その成形体、及び該複合繊維を製造する際に50℃以上80℃以下の温度、2.0倍を超え3.0倍未満の延伸倍率で延伸し、機械捲縮を付与することを特徴とする製造方法。
【選択図】なし
Description
その手法として、結晶性ポリプロピレンよりなる第1成分と、主としてポリエチレンより成る第2成分とを、並列もしくは(偏心)鞘芯型に配して、特定条件下で紡糸し、延伸して得られた繊維のウェブを成形することによって、嵩高で高弾性な繊維成形体を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法では、ポリエチレンを必須成分として使用しているため、得られる成形体は、ポリエチレン特有のぬめり感が付与されてしまう上、ペーパーライクなものとなってしまうため、衛生用品等には敬遠される傾向にある。また、リサイクル性に欠けるという問題も有している。
プロピレン共重合体を鞘成分とし、結晶性ポリプロピレンを芯成分とするDSC曲線において特定のピーク構造を有する熱接着性繊維は、リサイクル性に優れることが開示されている。しかし、この様な樹脂の組み合わせによる複合繊維を用いると嵩高なものが得られ難い。事実、特許文献2では、該複合繊維に機械捲縮を施し、捲縮数14山/2.54cm(1インチ)のステープルファイバーとした後、それを用いて不織布を製造しているが、嵩が40〜56cm3/gという非常に低いものしか得られていない。これでは、とても衛生用品として使用できるレベルではない。
そこで、生産性を低下させることなく得ることができ、捲縮構造の熱安定性に富むプロピレン共重合体/結晶性ポリプロピレン複合繊維であって、更に衛生用品等に好適な嵩高性、柔軟性及び優れたリサイクル性を有するものが強く望まれている。
(1)繊維軸に対して垂直に入射されたX線の散乱を子午線方向(繊維軸と同一方向)に走査した場合に得られる散乱強度曲線において、散乱ベクトルqの2乗と散乱ベクトル強度Iとの積q2Iを縦軸に、散乱ベクトルqを横軸にプロットした場合に、0.02≦q≦0.04の範囲における積q2Iの最小値が3以上であり、開繊後の平均機械捲縮数が7〜18山/2.54cmであり、開繊前後の平均機械捲縮数の変動率が40%以下であり、プロピレン共重合体を第1成分とし、結晶性ポリプロピレンを第2成分として構成される、複合繊維の構造が第1成分を鞘側、第2成分を芯側とする偏心鞘芯型もしくは第1成分と第2成分との並列型の断面形状である熱接着性複合繊維。
本発明の熱接着性複合繊維(以下、単に複合繊維ということがある。)は、プロピレン共重合体を第1成分とし、結晶性ポリプロピレンを第2成分として構成される複合繊維の断面形状が、第1成分を鞘側、第2成分を芯側とする偏心鞘芯型もしくは第1成分と第2成分との並列型の構造を有する熱接着性複合繊維であって、該複合繊維は、繊維軸に対して垂直に入射されたX線の散乱を子午線方向(繊維軸と同一方向)に走査した場合に得られる散乱強度曲線において、散乱ベクトルqの2乗と散乱ベクトル強度Iとの積q2Iを縦軸に、散乱ベクトルqを横軸にプロットした場合に、0.02≦q≦0.04の範囲における積q2Iの最小値(以下、散乱強度という)が3以上の値を有し、開繊後の平均機械捲縮数が7〜18山/2.54cmであり、開繊前後の平均機械捲縮数の変動率が40%以下であることを特徴とする熱接着性複合繊維である。
q=4πsinθ/λ
π:円周率(3.14159)
θ:回折角( ゜(度))
λ:X線の波長(nm)
X線源として、CuKα線(Niフィルター使用)波長0.1542nmを使用すると、0.02≦q≦0.04の範囲に対応する回折角2θは、0.281゜≦2θ≦0.563゜となる。以下、回折角の説明においては、このX線源を用いていることを前提とする。
本発明の製造方法では、公知の溶融複合紡糸装置を用いることができる。ここでいう公知の溶融複合紡糸装置とは2台の押出機、ギヤポンプ、配管とそのヒーター、紡糸口金等から構成される紡糸装置のことを指す。
また、本発明の繊維成形体の形態が不織布である場合、該不織布の比容積は嵩高性の点で、80cm3/g以上が好ましく、85cm3/g以上がより好ましい。
実施例1〜10及び比較例1〜10に用いられている各重合体のMFRを、JIS K7210(230℃、2.16Kg)に準じて測定した。尚、表中に示したMFRは紡糸前の樹脂について測定した値である。
DuPont社製示差走査熱量計DSC−10により、実施例1〜10及び比較例1〜10に用いられている各重合体を10℃/minで昇温し、得られた融解吸収曲線上のピークに対応する温度をその重合体の融点とした。
Q値は、Waters製GPC−150C(カラム:東ソー製TSKgel GMH6−HT 7.5cmI.D.×60cm 1本)を用いて、ゲルパーミエイションクロマトグラフ法により求めた実施例1〜10及び比較例1〜10で用いられている重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)である。尚、ここでは紡糸前の重合体の値を示した。
試料原綿についてJIS L 1015の7.12.1の条件に準じ、実施例と比較例で得られた複合繊維からそれぞれ20本を選び出し、それぞれについてデシテックス(dtex)当たり2.22mgの荷重をかけたときの2.54cm(1インチ)当たりの捲縮数を数え、平均した値を開繊前の平均機械捲縮数とした。
実施例と比較例で得られた複合繊維50gを大和機工社製カード機に通過させる。(速度 シリンダー/ドッファ=430/7 m/min)通過した後の該複合繊維を再度カード機に通過させ、これを5回繰り返す。得られた該複合繊維についてJIS L 1015の7.12.1の条件に準じ、それぞれ20本を選び出し、それぞれについてデシテックス(dtex)当たり2.22mgの荷重をかけたときの2.54cm(1インチ)当たりの捲縮数を数え、平均した値を開繊後の平均機械捲縮数とした。
実施例と比較例で得られた複合繊維の開繊前の平均機械捲縮数から開繊後の平均機械捲縮数を引いた値に対し、開繊前の平均機械捲縮数を除した数値の絶対値に対し、100を乗じた値を変動率とした。
実施例と比較例で得られた各複合繊維をカード機により、約200g/m2のウェブとし、得られたウェブをカード機の流れ方向(MD)とカード機の流れに直角な方向(CD)に沿って、それぞれ25cm×25cmの長さにカットし、次いでそれを循環熱風式ドライヤーで145℃、5分間熱処理を行い、更に室温で5分間放冷後、MDの長さを測定し、MDの熱処理前後の長さを次式に当てはめることによりウェブ熱収縮率を求めた。この数値が小さい程、複合繊維の耐熱収縮性に優れていることをあらわす。
ウェブ熱収縮率(%)={(L0−L)/L}×100
L0:熱処理前のウェブの長さ
L:熱処理後のウェブの長さ
下記試験条件下で小角X線散乱スペクトルを測定した後、空気散乱強度を補正し、得られたデータを散乱ベクトルqの2乗と散乱ベクトル強度Iとの積q2Iを縦軸に、散乱ベクトルqを横軸にプロットした時の0.02≦q≦0.04におけるq2Iの最小値をグラフから得て、これを散乱強度とした。
試験条件
測定機器 :日本電子データム株式会社 JDX 8200T
X線源 :CuKα線(Niフィルター使用)波長0.1542nm
出力 :50kV−150mA
測定開始角 :2θ=0.2°
測定終了角 :2θ=2.0°
ステップ角 :2θ=0.01°
計数時間 :20.0s/ステップ
繊度が880〜1320dtexとなるように複合繊維束を採取し、これを試料として島津製作所製AG−500Dを用いて、試料長50mm、引張り速度50mm/min(100%/min)の条件で試料の引張強度、伸度を測定した。尚、ここでいう引張強度とは試料が示した最大の引張強度を試料の繊度で除したものであり、伸度は試料の破断伸度を指す。引張強度及び伸度は3回測定した結果の平均値である。
複合繊維を走査型電子顕微鏡によって観察し、得られた画像から100本の繊維の直径を測定し、その平均値から繊度を算出した。
実施各例及び比較各例で得られた複合繊維を用いてミニチュアカードでウェブとし、134℃にてスルーエア不織布化した後、東洋精機製作所製デジシックネステスタを用い、2g/cm2の荷重が不織布に加えられた時の厚さを測定し、比容積を算出した。この数値が大きい程、嵩高性が優れていることをあらわす。
実施例と比較例で得られた複合繊維を用いてミニチュアカードでウェブとし、134℃にて目付25g/m2のスルーエア不織布とし、その不織布の感触を10人のパネラーによる官能試験によって、以下の基準で風合いを4段階で採点した。
◎:地合が良好で、柔軟な感触を有し、嵩高いもの
○:地合が良好で、嵩高性または柔軟性のいずれかが若干欠けるが、実用上全く問題
無いもの
△:地合が良好であるが、嵩高性及び柔軟性に劣るもの
×:嵩高性及び柔軟性に劣り、地合も乱れているもの
表1記載の第1成分(Co.−PPはプロピレン共重合体を意味する)及び第2成分(PPは結晶性ポリプロピレンを意味する)とを、押出機、孔径0.8mmの偏心鞘芯型紡糸口金または並列型紡糸口金、巻取り装置等を備えた紡糸装置ならびに2組の加熱装置と引き取りロールを備えた延伸装置から構成される紡糸装置において、表1に示される条件で紡糸、延伸し90℃で乾燥した後、51mmに切断して、実施例1〜3、比較例1〜3の各々の複合繊維を得た。得られた各複合繊維の繊維物性を上記(4)〜(9)の測定方法に準拠して測定した。得られた結果を表1の糸質の項目に示す。また、各複合繊維から得た不織布の物性を上記(10)、(11)の測定方法に準拠して測定した。実施例1〜3の条件下ではいずれの場合においても、従来の、偏心鞘芯型または並列型のプロピレン共重合体/結晶性ポリプロピレン複合繊維において得ることが困難であった良好な感触を有する嵩高性に優れた不織布が得られた。比較例1〜3は、実施例1で用いた第1成分及び第2成分と同じものを用い、従来技術の製造方法によって得た従来の複合繊維であるが、これらは散乱強度が本発明での特定値(3以上)を外れる複合繊維であり、該複合繊維から得られた不織布物性(嵩高性、風合い)は、本発明の複合繊維に比べ著しく劣るものであった。
表2記載の第1成分及び第2成分を用いて、表2に示される条件で紡糸、延伸し90℃で乾燥した後、51mmに切断して各々の複合繊維を得た。得られた各複合繊維の繊維物性を上記(4)〜(9)の測定方法に準拠して測定した。得られた結果を表2の糸質の項目に示す。また、各複合繊維から得た不織布の物性を上記(10)、(11)の測定方法に準拠して測定した。得られた結果を表2の不織布物性の項目に示す。実施例4〜6の条件下では嵩高で良好な感触を有する不織布を得ることができた。比較例4、5は、実施例4で用いた第1成分及び第2成分と同じものを用い、従来技術の製造法により得た複合繊維であるが、該複合繊維は、散乱強度が本発明での特定値(3以上)を下回る複合繊維であり、嵩高性が十分でなく、柔軟性も劣っていた。比較例6は、実施例6で用いた第1成分及び第2成分と同じものを用い、従来技術の製造法とは異なる条件(No.1加熱装置の加熱ロール設定温度:30℃)とし、得られる複合繊維の散乱強度が本発明での特定値(3以上)に入るように製造したものであるが、得られた複合繊維の開繊前後の平均機械捲縮数の変動率が本発明での特定値(40%以下)を外れるものであり、捲縮構造の安定性が極めて悪く、該複合繊維によって得た不織布の地合が乱れ、風合いが劣るものとなった。
表3記載の第1成分及び第2成分を用いて、表3に示される条件で紡糸、延伸し90℃で乾燥した後、51mmに切断して各々の複合繊維を得た。得られた各複合繊維の繊維物性を上記(4)〜(9)の測定方法に準拠して測定した。得られた結果を表3の糸質の項目に示す。また、各複合繊維から得た不織布の物性を上記(10)、(11)の測定方法に準拠して測定した。得られた結果を表3の不織布物性に示す。比較例7〜10は、繊維断面形状が同心鞘芯型を有する複合繊維であり、この構造を有していると散乱強度が本発明での特定値(3以上)に入るように製造することが極めて困難であり、本発明での特定値(3以上)に入らないこれら同心鞘芯型複合繊維から得られる不織布は、嵩高性が不十分であり、風合いも満足できるものではなかった。
表4記載の第1成分及び第2成分を用いて、表4に示される条件で紡糸、延伸し90℃で乾燥した後、51mmに切断して各々の複合繊維を得た。得られた各複合繊維の繊維物性を上記(4)〜(9)の測定方法に準拠して測定した。得られた結果を表4の糸質の項目に示す。また、各複合繊維から得た不織布の物性を上記(10)、(11)の測定方法に準拠して測定した。得られた結果を表4の不織布物性の項目に示す。実施例7、8の条件下で得られる複合繊維を用いると、嵩高で良好な風合いの不織布を得ることができる。比較例11は、実施例7で用いた第1成分及び第2成分と同じものを用い、従来技術の製造法とは異なる条件とし、得られる複合繊維の散乱強度が本発明での特定値(3以上)に入るように製造したものであるが、得られた複合繊維の開繊前後の平均機械捲縮数の変動率が本発明での特定値(40%以下)を外れるものであり、捲縮構造の安定性が極めて悪く、該複合繊維によって得た不織布の地合が乱れ、風合いが劣るものとなった。また、延伸倍率を1.7倍で実施したため生産性を著しく低下させてしまった。生産性を上げるために、延伸倍率を3.2倍で行った比較例12は、得られた複合繊維の散乱強度と開繊前後の平均機械捲縮数の変動率が本発明での特定値を外れるものであり、不織布の嵩高性及び風合いが一層劣るものとなった。実施例9では3組の延伸ロールを、実施例10では第1成分としてエチレン−プロピレン二元共重合体を用いたが、表から明らかなように、この条件下においても嵩高で風合いの良好な不織布が得られた。
Iは散乱ベクトル強度
AはNo.1加熱装置
BはNo.2加熱装置
CはNo.3加熱装置
Dは延伸されたトウ
S1は第1延伸セクション
S2は第2延伸セクション
Claims (3)
- 繊維軸に対して垂直に入射されたX線の散乱を子午線方向(繊維軸と同一方向)に走査した場合に得られる散乱強度曲線において、散乱ベクトルqの2乗と散乱ベクトル強度Iとの積q2Iを縦軸に、散乱ベクトルqを横軸にプロットした場合に、0.02≦q≦0.04の範囲における積q2Iの最小値が3以上であり、開繊後の平均機械捲縮数が7〜18山/2.54cmであり、開繊前後の平均機械捲縮数の変動率が40%以下であり、プロピレン共重合体を第1成分とし、結晶性ポリプロピレンを第2成分として構成される、複合繊維の構造が第1成分を鞘側、第2成分を芯側とする偏心鞘芯型もしくは第1成分と第2成分との並列型の断面形状である熱接着性複合繊維。
- 請求項1記載の熱接着性複合繊維を用いた繊維成形体。
- プロピレン共重合体を第1成分とし、結晶性ポリプロピレンを第2成分として構成される複合繊維の断面形状が、第1成分を鞘側、第2成分を芯側とする偏心鞘芯型もしくは第1成分と第2成分との並列型になるように、偏心鞘芯型紡糸口金もしくは並列型紡糸口金を備えた押出機によって両成分を紡糸して未延伸糸とし、該未延伸糸を、複数本のロールからなる加熱装置を2組以上有する延伸装置を用いて延伸する際に、2.0倍を超え3.0倍未満の延伸倍率がかかる延伸セクションにおいて、該延伸装置の上流側にある加熱装置の加熱ロールの表面温度を50℃以上80℃以下とし、平均機械捲縮数が7〜18山/2.54cmの範囲になるように機械捲縮を付与することを特徴とする熱接着性複合繊維の製造方法。
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