JP4599760B2 - 熱融着性複合繊維及びこれを用いた繊維成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱融着性複合繊維及びこれを用いた繊維成形体に関する。さらに詳しくはバッテリーセパレーター、フィルターなどの産業資材分野、おむつ、ナプキンなどの衛生材料分野にも好適に用いることのできる熱融着性複合繊維及びこれを用いた繊維成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
紙オムツや生理用品等の表面材には目付け約10〜45g/m2の低目付け不織布が使用されている。また、不織布の用途の多用化に伴い不織布に要求される性能も高度化し、出来るだけ少ない不織布重量で高い不織布強力を維持し、且つ嵩高で風合いがソフトなものが要求されている。このような要求を満たすためには、細繊度の熱融着性複合繊維で不織布を構成すること、熱融着性複合繊維の熱融着に寄与する低融点成分が柔軟であること等が必要条件とされている。特開昭63−92722号公報には、第1成分にポリエステル、第2成分に剛性の低い直鎖状低密度ポリエチレンを用いた細繊度の熱融着性複合繊維及びその複合繊維からなる熱融着不織布が開示されているが、第1成分と第2成分の親和性が低い為に、応力がかかると界面剥離が発生し、その結果、高い不織布強力が得られず上記要求を満足しない。
【0003】
また、ニッケル水素蓄電池に使用されるセパレータには、耐薬品性の観点から親水化されたオレフィン系熱融着性複合繊維を使用した不織布が用いられている。電池の高性能化に伴い、これらの不織布には、電極に緻密に巻付ける為の薄肉化及び高い引張強力が必要であり、さらに電極材表面の凹凸による穴明きを防止する為の高い貫通強力が求められる。これまでの熱融着性複合繊維を使用した不織布では、ある程度の強力は得られるものの、不織布に対して非常に高い引張応力を与えると熱融着性複合繊維の第1成分と第2成分の親和性が低いことにより界面剥離が発生し、これが原因で不織布強力が低下するという問題がある。これを防ぐ為に高強力ポリプロピレン繊維等を混合して不織布強力を向上させる方法があるが、風合いの悪化、高コスト化を招く為、使用上問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、風合いに優れ引張強力の大きい繊維成形体及び該繊維成形体を製造可能とする熱融着性複合繊維を提供することにある。
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために、鋭意検討を重ねた。その結果、第1成分としてポリプロピレン樹脂、第2成分として熱可塑性ブロックタイプエラストマー樹脂を0.1〜20重量%含有したポリエチレン樹脂からなる熱融着性複合繊維において、該複合繊維の表面の少なくとも一部がその繊維方向に該第2成分で形成されている複合繊維が目的とする熱融着性複合繊維となり、かつ該熱融着性複合繊維を用いると風合いの良い高強力の繊維成形体が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の構成を有する。
(1)第1成分と第2成分とからなる複合繊維であって、該複合繊維の表面の少なくとも一部はその繊維長さ方向に連続して該第2成分で形成されており、第1成分がポリプロピレン樹脂であり、第2成分が熱可塑性ブロックタイプエラストマー樹脂を0.1〜20重量%含有するポリエチレン樹脂であることを特徴とする熱融着性複合繊維。
(2)熱可塑性ブロックタイプエラストマー樹脂が、スチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体、オレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種である前記(1)項記載の熱融着性複合繊維。
(3)熱融着性複合繊維が15%以下の熱収縮率(110℃×30分間)を有することを特徴とする前記(1)項または前記(2)項記載の熱融着性複合繊維。
(4)前記(1)〜(3)のいずれか1項記載の熱融着性複合繊維を用いた繊維成形体。
(5)繊維成形体が目付60g/m2換算で40N/2.5cm以上の引張強度を有することを特徴とする前記(4)項記載の繊維成形体。
(6)繊維成形体が0.25〜0.90の剥離係数を有することを特徴とする前記(4)項または前記(5)項記載の繊維成形体。
(7)前記(1)〜(3)のいずれか1項記載の熱融着性複合繊維を用いた繊維製品。
(8)前記(4)〜(6)のいずれか1項記載の繊維成形体を用いた繊維製品。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱融着性複合繊維は、第1成分と第2成分とからなる複合繊維であって、第1成分がポリプロピレン樹脂であり、第2成分が熱可塑性ブロックタイプエラストマー樹脂を0.1〜20重量%含有するポリエチレン樹脂であり、該複合繊維の表面の少なくとも一部はその繊維長さ方向に連続して該第2成分で形成されている。なお、第2成分が第1成分の表面の一部を覆い、かつ第2成分が繊維表面の少なくとも一部を繊維長さ方向に連続して形成する並列型または鞘芯型複合繊維が熱融着性の点から好ましい。
【0008】
本発明に好適に使用できるポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂のメルトフローレート(以下、MFRと略す)は、紡糸可能な範囲であれば特に限定されることはないが、1〜100g/10分が好ましく、より好ましくは、5〜70g/10分である。
【0009】
また、本発明の熱融着性複合繊維に好適に使用される第1成分のポリプロピレン樹脂と第2成分のポリエチレン樹脂の組み合わせにあっては、該ポリプロピレン樹脂が高融点樹脂となる。
【0010】
本発明の熱融着性複合繊維に好適に用いられる第1成分のポリプロピレン樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレンを主成分とし(70重量%以上含有)、それと少量のエチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、ペンテン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチル−1−ブテン等のαオレフィンとの結晶性のプロピレン系共重合体が例示できる。プロピレン系共重合体としては、エチレン−プロピレン共重合体等のプロピレン系二元共重合体やエチレン−プロピレン−ブテン共重合体等のプロピレン系三元共重合体が利用できる。これらのポリプロピレン樹脂は、チーグラーナッタ触媒、メタロセン触媒等で重合されたシンジオタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレンが具体的に例示できる。高融点樹脂である該ポリプロピレン樹脂のMFRは紡糸可能な範囲であれば特に限定されることはなく、紡糸条件等の変更で繊維成形後のMFRは10〜100g/10分であれば特に問題はない。繊維成形後のMFRは、より好ましくは、10〜70g/10分である。繊維成形後のMFRが10g/10分未満もしくは繊維成形後のMFRが100g/10分を超えるとフィラメントを紡糸する場合、曳糸性が悪くなる場合がある。
【0011】
一方、ポリエチレン樹脂は、前記ポリプロピレン樹脂の融点より低い低融点樹脂であって、本発明の熱融着性複合繊維に好適に用いられる第2成分のポリエチレン樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)が具体的に例示でき、なかでも高密度ポリエチレン樹脂が好ましい。また、これらの2種以上の混合物であっても良い。原料としてのポリエチレン樹脂のMFRは溶融紡糸可能な範囲であれば良く、紡糸条件等の変更で、繊維成形後のMFRが10〜100g/10分であれば特に問題はない。繊維成形後のMFRは、より好ましくは、10〜70g/10分である。繊維成形後のMFRが10g/10分未満もしくは繊維成形後のMFRが100g/10分を超えるとフィラメントを紡糸する場合、曳糸性が悪くなる場合がある。
【0012】
本発明の第2成分に使用される熱可塑性ブロックタイプエラストマー樹脂は、常温では加硫ゴムと同様な弾性体の性質を持ち(分子中のソフトセグメントによる)、高温では通常の熱可塑性樹脂と同様に既存の成形機をそのまま使って成形することのできる(分子中のハードセグメントによる)高分子材料である。該熱可塑性ブロックタイプエラストマー樹脂としては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマーが挙げられ、なかでもスチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体、オレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体が好ましい。また、該熱可塑性ブロックタイプエラストマー樹脂のMFRは、1〜100g/10分であれば特に問題はない。これらの熱可塑性ブロックタイプエラストマー樹脂は、ゴム状水添ポリブタジエンと結晶性直鎖エチレン鎖のあるブロックポリマーであるため、ポリプロピレンやポリエチレン系ポリマーの改質や相溶化効果に優れる。よってポリオレフィン系熱融着性複合繊維の第2成分側に添加すると、第1成分と第2成分の界面部分に相溶化効果をもたらし、第1成分と第2成分の界面剥離を低減させることができる。なお、より相溶化効果を高めるために、該熱可塑性ブロックタイプエラストマー樹脂を第1成分側のポリプロピレン樹脂に添加してもよい。このとき、第1成分が複合繊維の芯成分に用いられる場合には、紡糸時に糸切れ等による曳糸性の低下が生じない範囲内で第1成分に熱可塑性ブロックタイプエラストマー樹脂を添加することが好ましく、目的とする繊度にもよるが6重量%未満の添加量がよい。
【0013】
該熱可塑性ブロックタイプエラストマー樹脂の第2成分への混合率は、第2成分の重量に対して0.1〜20重量%の範囲であることが必要であり、好ましくは1〜15重量%、より好ましくは3〜10重量%である。混合率が0.1重量%未満となる第2成分を用いた熱融着性複合繊維からなる繊維成形体は、目標とする強力が得られず、また混合率が20重量%を超える第2成分を用いた熱融着性複合繊維からなる繊維成形体は、その繊維成形体製造過程にて繊維同士の融着が発生し、これが地合ムラ等の品質の低下を招き、良好な風合いが得られない。
【0014】
本発明に用いられるポリプロプピレン樹脂及びポリエチレン樹脂には、本発明の効果を妨げない範囲内でさらに、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤、親水剤などの添加剤を適宜必要に応じて添加しても良い。
【0015】
本発明に係る熱融着性複合繊維の繊維断面は、第2成分が繊維表面の少なくとも一部を繊維長さ方向に連続して形成していればいかなる断面形状でもよい。例えば円形状の芯部が中心を同じくするドーナツ状の鞘部に包まれる同心型、芯部の中心と鞘部の中心がずれている偏心型、両成分が並列した並列型、両成分が放射状に交互に配列された放射型等を挙げることができるが、なかでも同心型、並列型が好ましい。
【0016】
本発明に係る熱融着性複合繊維の第1成分と第2成分の容量比は、紡糸可能な範囲であれば特に規定されないが、なかでも30対70から70対30の範囲が好ましく、最も好ましくは50対50の容量比である。
【0017】
熱融着性複合繊維の単糸繊度は、特に限定されることはなく、使用する目的に応じて適宜選択できるが、良好な風合いを要求される用途では0.1〜10デシテックスであることが好ましく、より好ましくは、0.5〜6デシテックスである。単糸繊度が0.1デシッテクス未満であると溶融紡糸工程で曳糸性が低下する傾向にある。また、10デシッテクスを大幅に超えると、風合いの良い繊維成形体が得られにくくなる傾向にある。なお、引張強度が要求される用途では、製造が可能な繊度であれば利用が可能である。
【0018】
本発明の熱融着性複合繊維の熱収縮率は15%以下であることが特によい。熱収縮率が15%より大きくなると、風合いの悪い繊維成形体となる場合や、得られた薄物繊維成形体にしわが発生する場合がある。
【0019】
本発明の熱融着性複合繊維からなる繊維成形体の引張強度は、目付60g/m2換算で40N/2.5cm以上であることが特によい。例えばバッテリセパレーター等に本発明の繊維成形体を用いた場合に、引張強度が40N/2.5cm未満であると、破れ及び穴明等の不具合が発生する恐れが高い。
【0020】
本発明の繊維成型体においては、その剥離係数が0.25〜0.90の範囲にあることが好ましい。ここでいう剥離係数とは、下記式にて表される値である。
(剥離係数)=(剥離試験にて不織布同士が剥離しない試験回数)/(20回の試験本数)
この剥離係数が0.25未満の場合目標とする強力が得られず、また、0.90より大きくなると、目標とする良好な風合いが得られなかったりする場合がある。
【0021】
以下、本発明の熱融着性複合繊維の1例として、ポリプロピレン樹脂の第1成分と高密度ポリエチレン樹脂中に熱可塑性ブロックタイプエラストマー樹脂を添加した第2成分とを組み合わせた熱融着性複合繊維の製造方法を例示する。
通常の溶融紡糸機を用いて前記樹脂からなる長繊維を紡出する。紡糸に際し、紡糸温度は200〜330℃の範囲で紡糸することが好ましく、引き取り速度は40m/分〜1500m/分程度とするのが良い。延伸は必要に応じて多段延伸を行っても良く、延伸倍率は通常3〜9倍程度とするのが良い。さらに得られたトウは必要に応じて捲縮を付与した後、所定長に切断して短繊維とし、公知のカード法、エアレイド法、乾式パルプ法、湿式抄紙法等によりウェブとする。以上は短繊維でのウェブ製造工程であるが、トウを切断せず、長繊維トウを分繊ガイドなどでウェブとしたり、公知のスパンボンド法やメルトブロー法等の紡糸工程から直接ウェブを得る方法を用いても良い。その後は必要に応じて高次加工工程、熱処理工程を経て、種々用途に応じて繊維成形体に成形される。また紡糸延伸後、フィラメント糸条として巻き取り、これを編成または織成して編織物とし、熱処理工程を通した繊維成形体、あるいは前記短繊維を紡績糸とした後、これを編成または織成して編織物とし、熱処理工程を通して繊維成形体に成形しても良い。さらに該ウェブと、例えばカード法、エアレイド法、スパンボンド法、あるいは抄紙法などの方法により均一にしたウェブ状物、または織物、編物、不織布、フィルムなどとを積層し、熱処理工程を通して繊維成形体としても良い。
【0022】
上記熱処理工程としては、熱風ドライヤー、サクションバンドドライヤー、ヤンキードライヤー等のドライヤーを用いる方法や、フラットカレンダーロール、エンボスロール等の加圧ロールを用いる方法等のいずれの方法も使用できる。熱処理温度は、熱融着性複合繊維の第2成分の融点以上、第1成分の融点未満の温度であり、約120〜155℃の範囲が用いられる。処理時間は前記ドライヤー等を用いる場合は約5秒以上が、前記加圧ロールを用いる場合は5秒以下が一般的である。
【0023】
本発明の繊維成形体とは、上記熱処理工程を通した布状の形態あるいは布状の積層した形態であればいかなるものでも良く、例えば織物、編物、不織布あるいは不織繊維集合体などの布帛を挙げることができる。また、混綿、混紡、混繊、交撚、交編、交繊等の方法により本発明の熱融着性複合繊維を布状の形態とすることができる。なお本発明における繊維集合体とは、例えばカード法、エアレイド法、スパンボンド法、あるいは抄紙法などの方法で均一にしたウェブ状物、あるいはこのウェブ状物に同ウェブ状物、織物、編物、不織布、フィルムなどを種々積層した積層体等をいう。
【0024】
かかる工程において、繊維を紡出後、繊維の静電気防止、繊維成形体への加工性向上のための平滑性付与などを目的として繊維に界面活性剤を付着させることができる。界面活性剤の種類、濃度は用途に合わせて適宜調整する。付着の方法は、ローラー法、浸漬法、パットドライ法などを用いることができる。付着は、紡糸工程、延伸工程、捲縮工程のいずれの工程で行ってもよい。さらに短繊維、長繊維に問わず、紡糸工程、延伸工程、捲縮工程以外の、例えば繊維成形体に成形後、界面活性剤を付着させることもできる。界面活性剤としては、アルキルフォスフェートカリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどが例示できる。
【0025】
本発明の熱融着性複合繊維の繊維長は、特に限定されるものではないが、カード機を用いてウェブを作製するカード法の場合には、一般に20〜76mmの範囲の繊維長が好ましく、抄紙法やエアレイド法の場合では、一般に2mm〜20mmの範囲の繊維長が好ましく用いられる。繊維長が2mm未満の場合には、繊維同士の接着面積が小さすぎて、熱融着させても求める強力が得られにくい。また、繊度によっても異なるが、繊維長が76mmを大幅に超える場合には、カード機等でのウェブ形成が均一にできにくく、均一な地合のウェブとすることが難しい傾向となる。
【0026】
本発明の熱融着性複合繊維からなる繊維成形体の製造方法の一例として、不織布の製造方法を例示する。例えば前記熱融着性複合繊維の短繊維を用いて、カード法、エアレイド法、あるいは抄紙法を用いて必要な目付のウェブを作製する。またこの他メルトブロー法、スパンボンド法などで直接ウェブを作製しても良い。これらの方法で作製したウェブを、ニードルパンチ法、高圧液体流処理等の公知の方法で処理し、熱風あるいは熱ロール等の公知の熱処理方法で処理して繊維成形体を得ることができる。なお非常に短い繊維を用いて抄紙法などにより得られたウェブをニードルパンチ法、高圧液体流処理等の公知の方法で処理する場合には、その物理的応力でウェブ中の繊維が動いて地合不良となる場合があるので、予め本発明の熱融着性複合繊維を構成する樹脂の融点よりも低温で熱融着する他の繊維を混綿しておき、この繊維で接着しておくことで地合不良を抑えることができる。
【0027】
本発明に用いられるウェブの目付は、特に限定されるものではないが、10〜200g/m2の範囲の目付が好ましく使用できる。目付が10g/m2未満では、高圧液体流処理などの物理的応力で処理する場合、地合不良な不織布となる場合がある。また200g/m2を超える高目付になると、通常以上に高圧水流が必要となり、地合良く均一な処理を行うことが困難となる場合がある。
【0028】
本発明の繊維成形体には、必要に応じて本発明の熱融着性複合繊維以外の他の繊維を混合してもよい。この他の繊維としては、上記熱処理により変質せず、本発明の目的を阻害しないものであれば自由に使用でき、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリルなどの合成繊維、綿、羊毛、麻などの天然繊維、レーヨン、キュプラ、アセテートなどの再生繊維、半合成繊維などが挙げられる。
【0029】
本発明のポリオレフィン系熱融着性複合繊維を用いた繊維成形体は、従来のポリオレフィン系熱融着性複合繊維を用いた繊維成形体と比較して、高強力を得ることができる。これにより、例えばバッテリセパレーター等に使用する場合、高強度ポリプロピレン繊維の使用量を減らすことができ、その結果、地合の改善及び低コスト化が可能となる。
【0030】
以上のようにポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂から構成された熱融着性複合繊維であっても、本発明の構成とすることで、風合いの良い高強力の繊維成形体を得ることができる。さらにポリオレフィン系樹脂からなるこの繊維成形体は、軽量で耐薬品性が高いことから、バッテリセパレーター、フィルター、ボード、紙オムツ及び生理用品等の繊維製品に使用することができ、さらに産業資材分野をはじめ、衛生材料分野、医療分野にも好適に使用することができる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明の効果を実施例及び比較例によって説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお実施例、比較例における用語と物性の測定方法は以下の通りである。
【0032】
(メルトフローレート)
JIS K 7210に準拠して測定した。
原料ポリプロピレン樹脂:条件14(温度230℃、荷重21.18N)
原料ポリエチレン樹脂 :条件4(温度190℃、荷重21.18N)
原料熱可塑性ブロックタイプエラストマー樹脂:条件14(温度230℃、荷重21.18N)
繊維:条件14(温度230℃、荷重21.18N)
【0033】
(融点)
融点測定は、デュポン社製 熱分析装置DSC10を用い、JIS K 7121に準拠して行なった。
【0034】
(曳糸性)
溶融紡糸時の曳糸性を糸切れ回数の発生率により、次の3段階で評価した。
○:糸切れが全く発生せず、操作性が良好である。
△:糸切れが1時間当たり1〜3回発生。
×:糸切れが1時間当たり4回以上発生し、操作上問題がある。
【0035】
(熱収縮率)
ドライヤーを用い無荷重下110℃で30分間加熱した後の複合繊維の収縮率を求め、20個の試料の平均値を示した。
【0036】
(引張強度)
2.5cm幅の不織布を島津製作所(株)製オートグラフ AGS500Dを用い、繊維成形体の破断強度を測定した。試長150mm、引張速度100mm/分で測定し、測定温度は室温とした。なお、値は下記式により目付60g/m2換算とした。
引張強度=(引張強度実測値)×(60/目付実測値)
【0037】
(剥離係数)
2.5cm幅の同種類の不織布サンプルA及びBをテスター産業(株)製ヒートシールテスター TP701Sを用い熱融着させ(条件:140℃/140℃×10sec)、A側を固定しB側に600gの荷重をかけ、このとき荷重によって剥離しない試験回数をチェックする。この試験を20回の試験回数実施し、下記式にて算出した。
剥離係数=(剥離試験にて不織布同士が剥離しない試験回数)/(試験回数)
【0038】
(不織布風合い評価)
5人のパネラーによる官能試験を行ない、しわ等によるガサツキ感がなくしかもソフトであると全員が判定した場合を優(○)、同様に3〜4名が判定した場合を良(△)、3名以上がしわ等によるガサツキ感があるかまたはソフト感に欠けると判定した場合を不可(×)と評価した。
【0039】
実施例1
第1成分としてポリプロピレン樹脂(プロピレン単独重合体、融点163℃、MFR16)を用い、第2成分として高密度ポリエチレン樹脂(融点131℃、MFR37)99.9重量部とオレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(JSR(株)製 DYNARON6200P MFR2.5)0.1重量部との混合物を用いて、複合繊維用口金及び2機の押出機を有する複合紡糸機で、第1成分と第2成分の容積比率50/50の同心型繊維断面形状を有する複合繊維を紡糸し、未延伸糸をワインダーで引き取りを行った。なお、該引き取り工程において、未延伸糸表面にアルキルフォスフェートカリウム塩を付着させた。得られた未延伸糸を7ロールからなる延伸機を使用して90℃で5.0倍に延伸し、さらにその延伸糸表面に抄紙用分散剤を付着させた後、6mm長に切断した。
抄紙法により角型シートマシン(25cm×25cm)を使用し、得られた短繊維(1.0デシテックス)をウェブとした。得られたウェブを乾燥し、ついで140℃で10分間加熱処理し、繊維同士を熱融着させてることで目付62g/m2の不織布を得た。
【0040】
実施例2
第2成分として高密度ポリエチレン樹脂(融点131℃、MFR37)99重量部とオレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(JSR(株)製 DYNARON6200P MFR2.5)1重量部との混合物を用いた以外は、実施例1に準拠して目付58g/m2の不織布を得た。
【0041】
実施例3
第2成分として高密度ポリエチレン樹脂(融点131℃、MFR37)97重量部とオレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(JSR(株)製 DYNARON6200P MFR2.5)3重量部との混合物を用いた以外は、実施例1に準拠して目付59g/m2の不織布を得た。
【0042】
実施例4
第2成分として高密度ポリエチレン樹脂(融点131℃、MFR37)94重量部とオレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(JSR(株)製 DYNARON6200P MFR2.5)6重量部との混合物を用いた以外は、実施例1に準拠して目付59g/m2の不織布を得た。
【0043】
実施例5
第2成分として高密度ポリエチレン樹脂(融点131℃、MFR37)90重量部とオレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(JSR(株)製 DYNARON6200P MFR2.5)10重量部との混合物を用いた以外は、実施例1に準拠して目付61g/m2の不織布を得た。
【0044】
実施例6
第2成分として高密度ポリエチレン樹脂(融点131℃、MFR37)85重量部とオレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(JSR(株)製 DYNARON6200P MFR2.5)15重量部との混合物を用いた以外は、実施例1に準拠して目付60g/m2の不織布を得た。
【0045】
実施例7
第2成分として高密度ポリエチレン樹脂(融点131℃、MFR37)80重量部とオレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(JSR(株)製 DYNARON6200P MFR2.5)20重量部との混合物を用いた以外は、実施例1に準拠して目付64g/m2の不織布を得た。
【0046】
実施例8
第2成分として高密度ポリエチレン樹脂(融点131℃、MFR37)97重量部とスチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(JSR(株)製 DYNARON4600P MFR5.6)3重量部との混合物を用いた以外は、実施例1に準拠して目付62g/m2の不織布を得た。
【0047】
実施例9
第2成分として高密度ポリエチレン樹脂(融点131℃、MFR37)90重量部とスチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(JSR(株)製 DYNARON4600P MFR5.6)10重量部との混合物を用いた以外は、実施例1に準拠して目付60g/m2の不織布を得た。
【0048】
実施例10
第2成分として高密度ポリエチレン樹脂(融点131℃、MFR37)97重量部とオレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(JSR(株)製 DYNARON6200P MFR2.5)3重量部の混合物を用い、繊維断面形状を並列型とした以外は、実施例1に準拠して目付60g/m2の不織布を得た。
【0049】
実施例11
第2成分として高密度ポリエチレン樹脂(融点131℃、MFR37)90重量部とオレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(JSR(株)製 DYNARON6200P MFR2.5)10重量部との混合物を用い、繊維断面形状を並列型とした以外は、実施例1に準拠して目付61g/m2の不織布を得た。
【0050】
実施例12
第2成分として高密度ポリエチレン樹脂(融点131℃、MFR37)97重量部とスチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(JSR(株)製 DYNARON4600P MFR5.6)3重量部との混合物を用い、繊維断面形状を並列型とした以外は、実施例1に準拠して目付58g/m2の不織布を得た。
【0051】
実施例13
第2成分として高密度ポリエチレン樹脂(融点131℃、MFR37)90重量部とスチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(JSR(株)製 DYNARON4600P MFR5.6)10重量部との混合物を用い、繊維断面形状を並列型とした以外は、実施例1に準拠して目付61g/m2の不織布を得た。
【0052】
実施例14
第2成分として低密度ポリエチレン樹脂(融点110℃、MFR20)94重量部とオレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(JSR(株)製 DYNARON6200P MFR2.5)6重量部との混合物を用い、延伸倍率を3.5倍、熱処理温度を120℃とした以外は、実施例1に準拠して目付58g/m2の不織布を得た。
【0053】
実施例15
第2成分として直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(融点123℃、MFR23)94重量部とオレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(JSR(株)製 DYNARON6200P MFR2.5)6重量部との混合物を用い、延伸倍率を3.5倍、熱処理温度を130℃とした以外は、実施例1に準拠して目付60g/m2の不織布を得た。
【0054】
比較例1
第2成分として高密度ポリエチレン樹脂(融点131℃、MFR37)のみを用いた以外は、実施例1に準拠して目付62g/m2の不織布を得た。
【0055】
比較例2
第2成分として高密度ポリエチレン樹脂(融点131℃、MFR37)99.95重量部とオレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(JSR(株)製 DYNARON6200P MFR2.5)0.05重量部との混合物を用いた以外は、実施例1に準拠して目付61g/m2の不織布を得た。
【0056】
比較例3
第2成分として高密度ポリエチレン樹脂(融点131℃、MFR37)75重量部とオレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(JSR(株)製 DYNARON6200P MFR2.5)25重量部との混合物を用いた以外は、実施例1に準拠して目付59g/m2の不織布を得た。得られた不織布は、非常に高強度のものであったが、繊維の分散性が悪く風合いが悪化していた。
【0057】
比較例4
第1成分としてポリプロピレン樹脂(プロピレン単独重合体、融点163℃、MFR16)94重量部とオレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体(JSR(株)製 DYNARON6200P MFR2.5)6重量部との混合物、第2成分として高密度ポリエチレン樹脂(融点131℃、MFR37)を用いた以外は、実施例1に準拠して目付63g/m2の不織布を得た。
【0058】
実施例1〜15、比較例1〜4の繊維の断面形状、曳糸性、熱収縮率、及び不織布強度、剥離係数、風合い評価結果を表1、表2に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
表1、2から明らかなように、本発明の実施例1〜15からなる不織布は、高い強力と良好な風合いを併せ持っているのに対して、比較例1〜3からなる不織布は、強力が低かったり、たとえ強力が高くても良好な風合いを併せ持っていない。また、比較例4では曳糸性の悪化(糸切れ多発)が見られ、その結果、発生する太繊度の糸混入により、不織布の風合いが低下している。
【0062】
実施例16
実施例4で得られた短繊維50重量%と分割型複合繊維(EDC繊維 チッソ(株)、2.2デシテックス)50重量%を混合し、角型シートマシン(25cm×25cm)で、抄紙法によりウェブとした。得られたウェブに高圧液体流処理を施し乾燥工程を通した後、140℃で10分間加熱処理し、繊維同士を熱融着させることで目付62g/m2の不織布を得た。
【0063】
比較例5
比較例1で得られた短繊維50重量%と分割型複合繊維(EDC繊維 チッソ(株)、2.2デシテックス)50重量%を混合し、角型シートマシン(25cm×25cm)で、抄紙法によりウェブとした。得られたウェブに高圧液体流処理を施し乾燥工程を通した後、140℃で10分間加熱処理し、繊維同士を熱融着させ目付60g/m2の不織布を得た。
【0064】
実施例16、比較例5の不織布強度、風合い評価結果を表3に示す。表3から明らかな様に、実施例16で得られた不織布は良好な風合いと高い強力を併せ持つ不織布であり、バッテリセパレーターとして好適な不織布であるのに対して、比較例5で得られた不織布は、良好な風合いを備えているものの強力が低く、バッテリセパレーターとして使用した場合、実用価値の低いものであった。
【0065】
【表3】
【0066】
【発明の効果】
本発明の熱融着性複合繊維及び繊維成形体は、複合繊維の第1成分と第2成分の界面強力が高く、これにより外部応力による界面剥離が低減されることにより、非常に高い強力を持つ。また、強力向上による風合いの悪化をもたらさないことから、不織布に高い強力が求められるバッテリーセパレーター、フィルターなどの産業資材分野、強力と良好な風合いがバランス良く求められるおむつ、ナプキンなどの衛生材料分野にも好適に用いることができる。
Claims (7)
- 第1成分と第2成分とからなる複合繊維であって、該複合繊維の表面の少なくとも一部はその繊維長さ方向に連続して該第2成分で形成されており、第1成分がポリプロピレン樹脂であり、第2成分が熱可塑性ブロックタイプエラストマー樹脂を0.1〜20重量%含有するポリエチレン樹脂であり、熱可塑性ブロックタイプエラストマー樹脂が、スチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体、オレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする熱融着性複合繊維。
- 熱融着性複合繊維が15%以下の熱収縮率(110℃×30分間)を有することを特徴とする請求項1記載の熱融着性複合繊維。
- 請求項1〜2のいずれか1項記載の熱融着性複合繊維を用いた繊維成形体。
- 繊維成形体が目付60g/m2換算で40N/2.5cm以上の引張強度を有することを特徴とする請求項3記載の繊維成形体。
- 繊維成形体が0.25〜0.90の剥離係数を有することを特徴とする請求項3または請求項4記載の繊維成形体。
- 請求項1〜2のいずれか1項記載の熱融着性複合繊維を用いた繊維製品。
- 請求項3〜5のいずれか1項記載の繊維成形体を用いた繊維製品。
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