JP4555599B2 - プロピレン系短繊維およびこれを用いた繊維集合物並びに熱融着不織布 - Google Patents

プロピレン系短繊維およびこれを用いた繊維集合物並びに熱融着不織布 Download PDF

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Description

本発明は、エチレン−プロピレン共重合体が繊維表面の少なくとも一部を占めてなるプロピレン系短繊維に関するものである。さらに、本発明は、当該プロピレン系短繊維を含んで成る繊維集合物、および当該プロピレン系短繊維により熱融着された熱融着不織布に関する。
従来から、エチレンを数%含有するエチレン−プロピレン共重合体に代表されるαオレフィン−プロピレン共重合体を紡糸して成るプロピレン系繊維は、風合いが柔軟であり、熱融着性またはヒートシール性に優れることから、衛生材料、フィルター、ワイパー、およびティーバッグなど様々な用途に使用することが提案されている。特に、αオレフィン−プロピレン共重合体を低融点成分とし、ポリプロピレンまたはポリエステルなどを高融点成分としたプロピレン系複合繊維は、高融点成分と低融点成分の融点差が大きいほど、すなわち低融点成分の融点が低いほど、これを含む不織布は優れた風合いを有するとともに、優れた熱融着性またはヒートシール性を示す傾向にある。しかしながら、プロピレン系繊維は、αオレフィン−プロピレン共重合体の結晶化温度が低い、あるいは結晶化速度が遅いため、溶融紡糸法による紡糸時にフィラメント間が融着し易く、生産性が劣る傾向にあった。また、αオレフィン−プロピレン共重合体の結晶化温度が低い又は結晶化速度が遅いことは、当該プロピレン系繊維を使用して、例えば熱融着不織布を製造する場合に、当該プロピレン系繊維が熱融着した後、固化するまでに長い時間を必要とすることを意味する。このことは、不織布の生産性を低下させる一因となっていた。同様の問題は、当該プロピレン系繊維を含む繊維集合物にヒートシール加工を施す場合にも生じていた。即ち、一般的に、エチレン−プロピレン共重合体から成る繊維は、熱融着性および熱圧着性といった熱加工性の点でも満足すべきものではなかった。
上記問題を解決するため、αオレフィン−プロピレン共重合体の結晶化速度を高くして、溶融紡糸時のフィラメント間の融着が防止されるように製造したプロピレン系繊維を構成繊維とする不織布が提案されている。例えば、特開平5−263350号公報(特許文献1)では、エチレン含有量が2〜4重量%であるエチレン−プロピレンランダム共重合体に3−メチル−1−ブテン重合体を1〜1000重量ppm含有するポリプロピレン系長繊維不織布が提案されている。特開2000−64168号公報(特許文献2)では、メルトフローレートが5〜100g/10分を満たすホモポリプロピレンあるいはプロピレン−エチレンランダム共重合体からなる芯成分と、メルトフローレートが5〜100g/10分を満たすプロピレン−エチレンランダム共重合体に造核剤として3−メチル−1−ブテン重合体1〜500重量ppmを含有する鞘成分とで形成され、芯成分と鞘成分の示差走査型熱量計(DSC)による測定から求まる融解熱量と融点の比を所望の範囲とする芯鞘型複合繊維を構成繊維とするポリプロピレン系不織布が提案されている。
特開2001−254256号公報(特許文献3)では、芯成分をホモポリプロピレンとし、鞘成分をメタロセン系触媒を用いて製造された融点が130℃以下のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であって、3−メチルブテン重合体を1〜500ppm含有する成分として形成した(偏心)芯鞘型複合繊維を用いた熱接着性不織布が提案されている。国際公開第97/49853号公報(特許文献4)では、鞘成分が、繊維中濃度にして500〜50000重量ppmの無機物粉末を含有するオレフィン系二元共重合体またはオレフィン系三元共重合体であり、芯成分がポリプロピレンまたはポリエチレンテレフタレートである熱融着性複合長繊維からなる、長繊維不織布が提案されている。
一方、ヒートシール性を向上させる目的で、特開平11−255833号公報(特許文献5)では、プロピレンと1−ブテンとの共重合体であり、融点と1−ブテン含有量とが一定の関係を満たし、且つ結晶化温度と融点とが一定の関係を満たす、プロピレン系ランダム共重合体が提案されている。当該公報はまた、この共重合体を用いて繊維を構成し得ることを開示している。
特開平5−263350号公報 特開2000−64168号公報 特開2001−254256号公報 国際公開第97/49853号公報 特開平11−255833号公報
しかしながら、上記プロピレン系繊維に関して、以下の問題点が挙げられる。例えば、特開平5−263350号公報および特開2000−64168号公報に開示されたプロピレン系繊維では、造核剤の作用により、紡糸フィラメントの融着防止に関して一定の効果は得られる。しかし、細繊度の繊維を得る場合、あるいは芯成分として、例えばポリエステルのように260℃以上の高い紡糸温度を必要とする樹脂を用いる場合においては、十分な融着防止効果が得られないことがあった。それは、造核剤によるエチレン−プロピレン共重合体の結晶化温度の上昇は通常2〜5℃程度であることによる。即ち、エチレン−プロピレン共重合体とポリエステル樹脂とを複合紡糸すると、溶融して高温となったポリエステル樹脂が、エチレン−プロピレン共重合体の冷却を阻害するために、造核剤により結晶化温度を上昇させてもなお、融着を防止できないのである。
また、特開平5−263350号公報および特開2000−64168号公報では、主としてチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたプロピレン−エチレンランダム共重合体を用いているため、一般に融点が高い。そのため、この繊維を含むウェブまたは不織布を、熱ロール、熱風、およびヒートシールなどにより熱加工する場合には、加工温度を高くする必要があり、その結果、得られる不織布または積層品の風合いが硬くなる傾向にあった。かかる不都合を解消するためには、融点を低くすればよく、融点の降下は、エチレン含有量を多くする(例えば4mass%以上とする)ことにより達成することができる。しかしながら、エチレン含有量が多くなる(即ち、プロピレン含有量が少なくなる)と、繊維自体がゴム的弾性を示す傾向にある。ゴム的弾性を示す繊維を用いて繊維集合物または積層品等を製造するに際し、熱ロール機、熱風処理機、およびヒートシール機などの加工機を用いて熱加工すると、溶融した樹脂が加工機に付着するなど、生産性に悪影響を及ぼす可能性がある。さらに、ゴム的弾性体の挙動を示す繊維を用いて短繊維不織布を製造する場合、当該繊維は、長繊維不織布の製造では問題とならないカード通過性に悪影響を及ぼす可能性がある。さらに、一般にエチレン−プロピレン共重合体は、その融点が低いほど、結晶化温度も低くなる傾向にあるため、エチレン含有量を多くすると、溶融紡糸時の繊維間の融着が発生しやすくなるという問題も生じる。
特開2001−254256号公報に記載された繊維についても、造核剤により、紡糸フィラメントの融着防止に関して一定の効果が達成される。しかし、メタロセン系触媒を用いて製造されたプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体は、元来チーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体に比べ融点が低い傾向にある。そのため、造核剤を添加しても当該共重体の融点は、130℃以下と低く、また結晶化温度自体も低い傾向にある。このように融点および結晶化温度が低い共重合体を使用して、細繊度の繊維を得る場合においては、十分な融着防止効果を得られないことがある。当該共重合体を鞘成分とし、例えばポリエステルのように260℃以上の高い紡糸温度を必要とする樹脂を鞘成分として芯鞘型複合繊維を製造する場合にもまた、融着防止効果を十分に得られないことがある。国際公開第97/49853号公報では、鞘成分のオレフィン系二元共重合体またはオレフィン系三元共重合体に無機物粉末を含有させることによって、当該粉末を繊維表面に露出させ、それにより繊維表面へ微細な凹凸を付与して繊維相互間の融着を防止することを試みている。しかしながら、繊維表面に露出した無機物粉末は、金属など他の物質と接触したときに脱落する可能性がある。特に、短繊維不織布を製造する場合には、カード機(長繊維不織布の製造では使用されない)を繊維が通過するときに、繊維表面が受けるダメージが大きいため、無機物粉末が脱落し易く、カード通過性に悪影響を及ぼす可能性がある。
特開平11−255833号公報は、造核剤として、ジベンジリデンソルビトールなどを用いて、ヒートシール性に優れたプロピレン−1−ブテン共重合体を提案するに留まり、当該共重合体を使用して溶融紡糸法により繊維を製造する際の融着防止、延伸性、およびカード通過性などに関して検討はなされていない。
本発明は、かかる問題を鑑みてなされたものであり、溶融紡糸時における融着糸の発生が防止され、延伸性も良好であるとともに、繊維を細繊度化するときの生産性に優れるプロピレン系短繊維に得ること、ならびにカード通過性、熱融着性(例えば、熱風による熱融着処理)、および熱圧着性(例えば、ヒートシール機によるヒートシール性)に優れ、したがって繊維集合物(特に不織布)の生産性に優れるプロピレン系短繊維を得ること、ならびに当該短繊維を含んで成る繊維集合物を得ることを課題とする。
本発明者等は、繊維を溶融紡糸法により製造するときのフィラメントの融着防止(即ち、紡糸性)と、繊維集合物を製造するときのカード通過性、ならびに熱融着性および熱圧着性などの熱加工性(即ち、繊維集合物の生産性および熱加工性)を両立しつつ、繊維集合物に柔軟な風合いを与え、且つ優れた熱融着性または熱圧着性を有する繊維を得るべく、エチレン−プロピレン共重合体のエチレン含有量、プロピレン含有量、融点、および結晶化温度について検討した。その結果、紡糸後の結晶化温度がある一定の温度以上となるエチレン−プロピレン共重合体を紡糸することにより、溶融紡糸時におけるフィラメントの融着を有効に抑制でき、かつ得られた短繊維を熱融着性繊維として用いる場合に、効率良く熱加工できることを見い出した。さらに、エチレン−プロピレン共重合体のエチレン含有量を少なくしてプロピレン含有量を多くするとともに、融点および結晶化温度をある一定の温度以下とすることによって、カード通過性、熱融着性、および熱圧着性(特にヒートシール性)などの特性においても優れ、且つ繊維集合物に柔軟な風合いを付与でき、また、高い熱融着強力または熱圧着強力をもたらす繊維が得られることを見い出し、本発明に至った。ここで、熱融着強力とは、熱融着性繊維の熱融着による、熱融着性繊維同士の接合強力、または熱融着性繊維と他の繊維との接合強力をいい、不織布強力に代表される強力である。また、熱圧着強力とは、熱融着性繊維により、当該熱融着性繊維を含む2つの繊維集合物同士、または当該熱融着性繊維を含む繊維集合物と他の部材(例えば、フィルム等)とを、熱と圧力を加えて接合して得た積層品における、接合部の剥離強力をいい、ヒートシール強力に代表される強力である。
すなわち、本発明におけるプロピレン系短繊維の第1の発明は、エチレン含有量が1mass%以上4mass%以下の範囲内にあり、プロピレン含有量が96mass%以上99mass%以下の範囲内にあり、JIS−K−7121に準じて測定したDSC曲線より求める紡糸後の融点Tf(℃)および紡糸後の結晶化温度Tfc(℃)が下記の条件を満たすエチレン−プロピレン共重合体が繊維表面の少なくとも一部を占めてなることを特徴とする。
(1)Tf≦140℃、
(2)100≦Tfc≦(Tf−20)。
この短繊維は、140℃以下という比較的低い融点と、100℃以上の比較的高い結晶化温度とを両立していることを特徴とする。この特徴により、溶融紡糸時の繊維同士の融着が生じにくくなり、かつ得られた短繊維を、熱融着性繊維として使用する場合には、融着温度をそれほど高くしなくとも繊維同士を接着させることができ、熱融着後も良好な風合いを維持する。さらに、熱融着成分であるエチレン−プロピレン共重合体の結晶化温度が低いために、例えばこのプロピレン系短繊維を含むウェブまたは繊維集合物(例えば不織布)に、熱融着処理またはヒートシール処理等の熱圧着処理を施す場合、溶融した当該繊維が加熱されなくなったとき(例えば、熱加工機を通過して常温雰囲気に置かれたとき)から固化するまでの時間は短くなる。したがって、このプロピレン系短繊維を用いて、熱融着不織布を製造する場合、またはヒートシール加工により積層品等を製造する場合には、生産ライン速度を高くしても固化が速やかに進行するため、生産性が向上する。
本発明におけるプロピレン系短繊維の第2の発明は、エチレン含有量が1mass%以上4mass%以下の範囲内にあり、プロピレン含有量が96mass%以上99mass%以下の範囲内にあるエチレン−プロピレン共重合体を含む第1成分と、エチレン−プロピレン共重合体の紡糸後の融点Tfよりも高い紡糸後の融点を有する熱可塑性重合体を含む第2成分とから成り、かつ第1成分が繊維表面の少なくとも一部を占めてなる複合繊維であって、JIS−K−7121に準じて測定したDSC曲線より求める紡糸後のエチレン−プロピレン共重合体の融点Tfおよび紡糸後の繊維の最低結晶化温度Tscが下記の条件を満たすことを特徴とする。
(i)Tf≦145℃、
(ii)97≦Tsc≦(Tf−20)℃。
ここで、繊維の最低結晶化温度Tscとは、DSC曲線において現れる結晶化温度のピークが2以上存在する場合に、最も低い温度で現れるピークの頂点の温度をいう。ピークが1つのみである場合には、当該1つのピークの頂点の温度を最低結晶化温度Tscとする。
この第2の発明は、エチレン−プロピレン共重合体と他の重合体との複合繊維として得た、本発明のプロピレン系短繊維を特定している。エチレン−プロピレン共重合体はこれを第1成分とし、他の重合体を第2成分として、複合繊維を形成するように紡糸すると、最終的に得られる繊維において、当該他の重合体の影響を受けて、紡糸後の融点および結晶化温度が影響を受ける場合がある。例えば、エチレン−プロピレン共重合体は、融点が比較的低く、かつ相溶性が比較的高いポリオレフィン(特にポリプロピレン)とともに複合繊維を形成するように紡糸すると、最終的に得られる繊維において、ポリオレフィンの影響を受けて、DSC曲線により求める融点が高くなる傾向にある。即ち、同じエチレン−プロピレン共重合体を使用しても、複合紡糸する重合体によって、DSC曲線により得られる融点が変化することがある。また、エチレン−プロピレン共重合体とポリオレフィンを複合紡糸して得た繊維において、エチレン−プロピレン共重合体の結晶化温度がポリオレフィンのそれと重なり、エチレン−プロピレン共重合体のみの結晶化温度を求めることができない(即ち、結晶化温度のピークがDSC曲線において1つだけしか現れない)場合がある。さらに、エチレン−プロピレン共重合体と他の重合体とから成る複合繊維の結晶化温度は、繊維を構成する重合体全部を一旦完全に溶融させてから温度降下させて測定するために、測定中、エチレン−プロピレン共重合体と複合紡糸した他の重合体とがブレンド状態となって入り乱れ、それによりエチレン−プロピレン共重合体の結晶化が阻害される場合がある。そのような場合には、エチレン−プロピレン共重合体のみから成る単一繊維と比較して、紡糸後の繊維の最低結晶化温度が低下することがある。このような影響を考慮して、複合繊維に係る第2の発明は、第1の発明の条件(1)と比較してエチレン−プロピレン共重合体の紡糸後の融点Tfの上限値が高く設定され、また、第1の発明の条件(2)と比較して最低結晶化温度が低く設定されている。しかし、これらの影響を受けるとしても、この複合繊維は、なお比較的低い融点と高い結晶温度を両立し得るものであり、したがって、第2の発明の繊維は、上記第1の発明に関して説明した効果と同様の効果を発揮する。
本発明におけるプロピレン系短繊維の第3の発明は、エチレン含有量が1mass%以上4mass%以下の範囲内にあり、プロピレン含有量が96mass%以上99mass%以下の範囲内にあり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Q値)が、1.5以上3.5以下の範囲内にあり、JIS−K−7121に準じて測定したDSC曲線より求める樹脂の融点T(℃)および結晶化温度Tc(℃)が下記の条件を満たすエチレン−プロピレン共重合体が繊維表面の少なくとも一部を占めるように溶融紡糸して得られることを特徴とする。
(A)T≦140℃、
(B)97≦Tc≦(T−20)。
かかるエチレン−プロピレン共重合体を使用することにより、紡糸中に発生する繊維同士の融着を少なくする又は無くすことができる。また、得られた短繊維は、熱融着性繊維として機能し、融着温度をそれほど高くしなくとも融着性を示し、したがって、熱融着後も良好な風合いを維持する。さらにまた、前述のように、得られた短繊維において、エチレン−プロピレン共重合体については、溶融後、その冷却が開始されてから固化するまでの時間が短いので、この短繊維を含むウェブまたは繊維集合物を、熱融着処理(例えば、熱風処理)または熱圧着処理(例えば、ヒートシール加工)に付す場合には、加工ライン速度を高くできる。
本発明の繊維集合物は、前記プロピレン系短繊維を20mass%以上含有することを特徴とする。前述のようにこのプロピレン系短繊維は、熱融着性繊維として機能し得るため、得られる繊維集合物は、接着剤等を使用することなく、別の部材(例えば不織布、織物、紙、またはフィルム等)に接合させることができる。
本発明の熱融着不織布は、前記プロピレン系短繊維を20mass%以上含有し、前記プロピレン系短繊維によって、不織布を構成する繊維が熱融着されてなることを特徴とする。この熱融着不織布は、比較的低い融着温度(具体的には140℃以下)でプロピレン系短繊維を熱融着させることにより得られる。したがって、この不織布は、全体として柔軟な風合いを有する。
本発明の熱融着不織布は湿式不織布であってもよい。本発明のプロピレン系短繊維は、後述するように繊度を小さくして製造することが可能である。湿式不織布中に細い繊維を存在させることにより、湿式不織布をより緻密なものとすることができる。
本発明のプロピレン系短繊維は、所定のエチレン含有量、プロピレン含有量、融点および結晶化温度を有するエチレン−プロピレン共重合体が繊維表面の少なくとも一部を占めるように構成されていることを特徴とする。かかる特徴によれば、この構成の繊維を溶融紡糸により製造するに際し、ノズルからフィラメント状に溶融押出しされた後、フィラメントが短時間で固化するため、溶融紡糸時におけるフィラメントの融着を防止することができる。したがって、本発明のプロピレン系短繊維は、紡糸時の引き取り速度を高くして細繊度の繊維として得ることができる。さらに、上記所定のエチレン含有量等を有するエチレン−プロピレン共重合体が繊維表面の一部を占めるために、本発明のプロピレン系短繊維は、この共重合体を熱融着成分とする熱融着性繊維として使用できる。本発明のプロピレン系短繊維を構成するエチレン−プロピレン共重合体は、その紡糸後の融点が高くても145℃であるので、優れた熱融着性および熱圧着性を有するとともに、熱融着後も硬くならず、柔軟な風合いを維持する。さらに、本発明のプロピレン系短繊維を所定のQ値を有するエチレン−プロピレン共重合体を使用して製造することにより、繊維のカード通過性を良好にすることができる。したがって、本発明のプロピレン系短繊維を用いれば、不織布等の繊維集合物を高い生産性で製造でき、得られた不織布を柔軟な風合いを有するようにでき、また、高い熱融着強力または熱圧着強力が得られる。
前記プロピレン系短繊維で繊維間を接着した熱融着不織布は、良好な風合いと優れた熱融着強力を有する。また、前記プロピレン系短繊維はその繊度が細い場合には、緻密で且つ優れた熱融着強力を有する湿式不織布を構成しうる。さらに、前記プロピレン系短繊維を含む熱融着不織布同士、またはこの熱融着不織布と他の不織布等を、例えばヒートシール加工により熱圧着して接合する場合には、高い熱圧着強力(ヒートシール加工の場合にはヒートシール強力)を得ることができる。したがって、本発明の熱融着不織布は、衛生材料、ウェットティッシュ、ワイパー、フィルター、およびティーバッグ等の用途に好適である。
本発明のプロピレン系短繊維は繊維表面の少なくとも一部が、エチレン−プロピレン共重合体(以下、単にプロピレン共重合体ともいう)で構成されている。本発明のプロピレン系短繊維の製造に使用するプロピレン共重合体において、プロピレン含有量は、96mass%以上99mass%以下の範囲内にある。好ましいプロピレン含有量の下限は、96.5mass%である。一方、好ましいプロピレン含有量の上限は、98.5mass%である。プロピレン含有量が96mass%未満であると、プロピレン共重合体のゴム的弾性が大きくなる傾向にあり、このことは繊維のカード通過性および/または熱加工性などに影響を及ぼし、ひいては繊維集合物等の生産性に影響を及ぼす可能性がある。一方、プロピレン含有量が99mass%を超えると、ホモポリプロピレンに近い性質となって、融着温度を低く設定して、例えば熱融着不織布を得た場合には、得られる不織布において、十分な熱融着強力(即ち、不織布強力)を得られないことがある。同様に、プロピレン含有量の大きい繊維を用いて熱圧着(例えばヒートシール加工)する場合には、十分な熱圧着強力が得られないことがある。
前記プロピレン共重合体において、エチレンの含有量は、1mass%以上4mass%以下の範囲内にあることが好ましい。より好ましいエチレン含有量の下限は、1.5mass%である。より好ましいエチレン含有量の上限は、3.5mass%である。最も好ましいエチレン含有量の上限は、2.5mass%である。エチレン含有量が1mass%以上4mass%以下の範囲内にあると、(1)繊維生産性(即ち、紡糸性)において優れている、(2)得られた繊維を用いて不織布など繊維集合物を製造する際の生産性において優れている、(3)得られた繊維を用いて製造した不織布などの繊維集合物が柔軟な風合いを有する、(4)良好な熱融着強力または熱圧着強力が得られる、といった効果を達成できる。前記プロピレン共重合体には、必要に応じてエチレン以外のα−オレフィンモノマーを、本発明の効果を損なわない限りにおいて、含有させてもよい。前記エチレン以外のα−オレフィンモノマーとして、炭素数4〜20のαオレフィン、例えば、ブテン−1、ヘキセン−1、およびオクテン−1などから選択される少なくとも1種のモノマーを含有させてよい。
前記プロピレン共重合体は、上記条件(A)を満たす、即ち、JIS−K−7121に準じて測定したDSC曲線より求めた(紡糸前の)融点Tが140℃以下のものである。好ましい融点の下限は、127℃であり、より好ましい融点Tの下限は、132℃である。好ましい融点Tの上限は、138℃である。融点Tが140℃を超えると、不織布などの繊維集合物において本発明の繊維を熱融着させた場合に、熱融着後の繊維集合物の風合いが硬くなる傾向にある。一方、融点Tが低くなるにつれて、樹脂の結晶化温度も低くなる傾向にあるため、樹脂の融点が低いと、後述する100℃以上の結晶化温度を得ることができないことがある。その結果、細繊度の繊維、またはプロピレン共重合体と高い紡糸温度を必要とする他の樹脂(例えば、紡糸温度260℃以上のポリエステル)との複合繊維を溶融紡糸する際に、溶融紡糸時の紡糸フィラメント間の融着を防止できないことがある。
前記プロピレン共重合体は、上記条件(B)を満たす、即ち、JIS−K−7121に準じて測定したDSC曲線より求めた(紡糸前の)結晶化温度Tcが97℃以上、融点から25℃引いた値(即ちT−25℃)以下の範囲内にあるものである。好ましい結晶化温度Tcの下限は、99℃である。好ましい結晶化温度Tcの上限は、(T−30)℃である。結晶化温度Tcが97℃未満であると、細繊度の繊維を得る場合、あるいは本発明の繊維を、プロピレン系共重合体と高い紡糸温度を必要とする他の樹脂(例えば、紡糸温度260℃以上のポリエステル)との複合繊維として得る場合において、溶融紡糸時の紡糸フィラメント間の融着を防止することが困難となることがある。一方、結晶化温度Tcは融点Tにより近い温度であることが望ましい。しかし、ポリプロピレンにエチレンを共重合する現状の重合技術では、結晶化温度Tcが(T−25)℃を超えるプロピレン共重合体を得るのは困難である。なお、前記プロピレン共重合体には、必要に応じて造核剤を本発明の効果を損なわない範囲で含有させてもよい。
前記プロピレン共重合体のJIS−K−7210(条件:230℃、荷重21.18N(2.16kg))に準じて測定したメルトフローレート(紡糸前)は、10g/10min以上、50g/10min以下の範囲内にあることが好ましい。より好ましいMFRの下限は20g/10minである。より好ましいMFRの上限は40g/10minである。プロピレン共重合体のMFRが10g/10min未満であると、樹脂自体が硬いために、紡糸中に糸切れを起こす可能性がある。一方、MFRが50g/10minを超えると、樹脂自体が柔らかいために、融点Tおよび結晶化温度Tcが上記範囲内にあるとしても、紡糸中にフィラメント間の融着が発生することがある。
前記プロピレン共重合体は、紡糸前に測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Q値)が、1.5以上3.5以下の範囲内にあるものである。好ましいQ値の下限は、2である。好ましいQ値の上限は、3である。プロピレン共重合体のQ値を上記範囲とすることにより、カード通過性などの工程性に優れ、且つ不織布などの繊維集合物としたときに、べたつき感のない風合いを与えるプロピレン系短繊維が得られる。
前記に示すエチレン含有量、プロピレン含有量、融点T(紡糸前)、結晶化温度Tc(紡糸前)、およびQ値(紡糸前)を満たす具体的なプロピレン共重合体としては、メタロセン触媒により重合されたプロピレン共重合体が挙げられる。そのようなプロピレン共重合体として、より具体的には、例えば、日本ポリプロ(株)製のOX1066A(商品名)などが挙げられる。即ち、本発明のプロピレン系短繊維を製造するのに使用するプロピレン共重合体は、メタロセン系触媒を用いて重合された樹脂であることが好ましい。メタロセン触媒を用いると、従来のプロピレン共重合体(例えばチーグラー・ナッタ触媒を用いて得たプロピレン共重合体)と比較して、同じ融点であっても高い結晶化温度を有するプロピレン共重合体が得られやすいので好ましい。さらに核剤を添加することで融点を余り変化させずに結晶化温度だけを高めることができるので(B)の条件を満たしやすい。ここで、メタロセン触媒とは、a)ジメチルシリレンビス(1−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド等のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)、b)メチルアルモキサン等の有機アルミニウムオキシ化合物およびイオン交換性層状珪酸塩等から選択される、メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、c)必要に応じて使用するトリエチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物とからなる触媒をいう。メタロセン系触媒を構成するa)成分、b)成分、および必要に応じて使用されるc)成分の具体的な例は、前述の特許文献3に示されており、当該文献に開示されたメタロセン系触媒は、本発明の繊維を構成するプロピレン共重合体を製造する場合にも使用され得る。
プロピレン共重合体は、上記メタロセン触媒の存在下、所望のプロピレン含有量及びエチレン含有量となるよう調整されたモノマー比率のプロピレンとエチレンとを共重合して得られる。
上述した範囲のQ値は、メタロセン触媒を用いることで容易に達成される。しかし、得られたプロピレン共重合体のQ値が小さすぎる場合には、分子量の異なる二種以上のプロピレン共重合体をブレンド又は重合ブレンドすることによりQ値を大きくし、また、得られたプロピレン共重合体のQ値が大きすぎる場合には、過酸化物の存在下で溶融混練して分子量を減らすことによりQ値を小さくし、それによりQ値を所望の値に調整することも可能である。
前記プロピレン共重合体は、造核剤を含んでいてよい。造核剤としては、結晶核生成過程において、結晶核生成の進行速度を向上させるものを任意に使用できる。一般的には、プロピレン共重合体の結晶化は、結晶核生成過程と結晶成長過程の2過程からなり、結晶核生成過程では、融点と結晶化温度との温度差や分子鎖の配向挙動等がその結晶核生成速度に影響する。この過程において、特に分子鎖の吸着等を経て分子鎖配向を助長する物質(いわゆる造核剤)が存在すること等により、不均一な結晶核生成速度は著しく増大し、結晶化が促進され、その結果、得られる共重合体の結晶化温度はより高くなる。
前記プロピレン共重合体に含まれる造核剤の具体例として、ジベンジリデンソルビトール若しくはその誘導体、有機リン酸化合物若しくはその金属塩、芳香族スルホン酸塩若しくはその金属塩、有機カルボン酸若しくはその金属塩、ロジン酸部分金属塩、タルク等の無機微粒子、イミド類、アミド類、キナクリドンキノン類、高密度ポリエチレン、3−メチルブテン−1重合体、4−シクロヘキシルペンテン−1等の結晶性高分子化合物又はこれらの混合物が挙げられる。いずれの造核剤を使用する場合も、含有量は、300〜5000ppmであることが好ましい。尤も、造核剤は、本発明の短繊維を構成するプロピレン共重合体において必須のものではない。メタロセン触媒を用いれば、造核剤を含有させなくとも上記(A)および(B)の条件を満たすプロピレン共重合体が得られる。
プロピレン共重合体を得るために使用する他の触媒としては、チーグラー・ナッタ触媒がある。この触媒を用いて得たプロピレン共重合体は、ポリマーの不均一性に起因して、融点を低くすると結晶化温度がより低くなる傾向にあり、例えば、融点が140℃以下であると、結晶化温度は100℃を超えることはない。そのため、造核剤を添加しても結晶化温度を十分に高くできず、上記(B)の要件を満たすことは困難である。尤も、本発明はチーグラー・ナッタ触媒を用いて得たプロピレン共重合体の使用を排除するものではない。紡糸前の樹脂が上記(A)および(B)の要件を満たす限りにおいて、あるいは後述するように紡糸後の樹脂が所定の融点および結晶化温度を満たす限りにおいて、プロピレン共重合体の製造方法は限定されない。
前記プロピレン共重合体には、本発明の効果が損なわれない範囲で、通常用いられるその他の各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、中和剤、アンチブロッキング剤、滑剤、顔料、および無機充填剤等から選択される1または2以上の添加剤が配合されていてもよい。
本発明のプロピレン系短繊維は、上記において説明したプロピレン共重合体が繊維表面の少なくとも一部を占めるように溶融紡糸して得られる。ここでいう「繊維表面の少なくとも一部を占める」形態の繊維には、前記プロピレン共重合体のみ、又は前記プロピレン共重合体と他の熱可塑性樹脂との混合樹脂を溶融紡糸した単一形態、あるいは前記プロピレン共重合体のみ又は前記プロピレン共重合体と他の熱可塑性樹脂とを混合した樹脂を第1成分とし、他の樹脂を第2成分として、第1成分が繊維表面に露出するように配置される複合形態の繊維が含まれる。複合形態の繊維において、第2成分は第1成分より高い融点を有することが好ましく、それにより第1成分を熱融着成分とする熱融着性複合繊維を得ることが可能となる。
本発明のプロピレン系短繊維が単一繊維形態である場合、本発明の短繊維は前記プロピレン共重合体を単独で溶融紡糸して、または前記プロピレン共重合体と他の熱可塑性樹脂とを混合した樹脂を溶融紡糸して得ることができる。混合樹脂を使用する場合、前記プロピレン共重合体の好ましい含有率は50mass%以上である。より好ましいプロピレン共重合体の含有率は、80mass%以上である。プロピレン共重合体の含有率が50mass%未満であると、得られたプロピレン系短繊維を用いて不織布など繊維集合物を作製するにあたり、繊維同士をプロピレン系短繊維により熱融着させるときに十分な不織布強力が得られないことがある。あるいは、プロピレン共重合体の含有率が小さい場合には、プロピレン系単繊維を含む繊維集合物同士、またはこの繊維集合物と他の材料とを熱圧着させるときに、十分な熱圧着強力を得られないことがある。プロピレン共重合体と混合する他の熱可塑性樹脂は、プロピレン共重合体の融点を考慮して融点差が大きくならないように選択することが好ましい。具体的には、例えば、ポリプロピレンおよび/またはポリブテン−1を混合できる。
本発明のプロピレン系短繊維が複合繊維形態である場合、前記プロピレン共重合体を含む樹脂を第1成分とし、他の熱可塑性樹脂を第2成分として、第1成分を鞘成分とし、第2成分を芯成分とする鞘芯型もしくは偏心鞘芯型、並列型、分割型、または海島型などの複合断面を有する繊維を溶融紡糸して得ることができる。特に、得られた短繊維で熱融着不織布を構成した場合に、高い熱融着強力が求められるとき、または得られた短繊維を含む繊維集合物を用いて熱圧着により積層品を得る場合において、高い熱圧着強力が求められるときには、本発明の短繊維は鞘芯型複合繊維であることが好ましい。
本発明のプロピレン系短繊維が複合繊維形態である場合、第1成分において、前記プロピレン共重合体の含有率は、好ましくは50mass%以上である。より好ましいプロピレン共重合体の含有率は、80mass%以上である。特に、高い熱融着強力または熱圧着強力が求められる場合には、第1成分においてプロピレン共重合体の含有率は90mass%以上であることが好ましく、95mass%以上であることがより好ましい。第1成分において、プロピレン共重合体の含有率が50mass%未満であると、得られた短繊維で熱融着不織布を構成したときに十分な不織布強力が得られず、あるいは得られた短繊維を含む繊維集合物を用いて熱圧着(例えばヒートシール加工)により積層品を得た場合に、十分な熱圧着強力を得られないことがある。第1成分に混合される他の熱可塑性樹脂は、先に単一繊維形態の繊維に関連して説明したとおりである。したがって、例えばポリプロピレンおよび/またはポリブテン−1などをプロピレン共重合体と混合できる。特に、ポリプロピレンを混合すると、第2成分を後述するようにポリプロピレンとする場合に、第1成分と第2成分との相溶性がより良好となり、層間剥離がより生じにくくなる。
本発明のプロピレン系短繊維が複合繊維形態である場合、エチレン−プロピレン共重合体を含む第1成分は、繊維周面長さ(即ち、繊維断面の外周の長さ)の20%以上を占めていることが好ましく、30%以上を占めていることがより好ましい。第1成分が繊維周面長さに占める割合が20%以下であると、この複合繊維を熱融着性複合繊維として使用する場合に、十分な熱融着性を得ることができないことがある。
本発明のプロピレン系短繊維が複合繊維形態である場合、第2成分として用いる熱可塑性樹脂は、その樹脂融点Tが前記プロピレン共重合体の樹脂融点Tよりも15℃以上高いものであることが好ましい。そのような熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、およびその共重合体などのポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66、およびその共重合体などのポリアミド樹脂、ならびにポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂などが挙げられる。第2成分は、これらから選択される1種の樹脂を用いて、または2種以上の樹脂を混合して構成される。特に、ポリプロピレン樹脂は、前記プロピレン共重合体との相溶性に優れるため、これを第2成分とした場合には、第1成分との間で層間(または界面)剥離が生じにくい。したがって、ポリプロピレン/プロピレン共重合体の複合繊維を用いて繊維同士を熱融着させた不織布を作製した場合には、高い熱融着強力が得られ、またこの複合繊維を含む繊維集合物を用いて熱圧着により積層品を得た場合には高い熱圧着強力が得られる。
また、第2成分としてポリエステル樹脂を用いる場合、ポリエステル樹脂は樹脂融点が200℃以上と高いため、溶融紡糸するときに紡糸温度を場合により260℃以上に設定する必要がある。複合紡糸される相手方(即ち、第2成分)の紡糸温度がそのように高い場合、プロピレン共重合体の結晶化は、高温となった第2成分の影響を受けて遅く進行する傾向にあり、そのために紡糸フィラメント間の融着がより発生しやすくなる。しかし、前記プロピレン共重合体は結晶化温度が100℃以上と高いために、ポリエステル樹脂のような紡糸温度の高い樹脂と組み合わせて複合繊維を紡糸する場合でも、紡糸フィラメント間の融着は有効に防止される。さらに、第2成分としてポリエステル樹脂を用いて得た複合繊維は、カード通過性に優れ、特に90m/min以上高速カードにも適用できるので、不織布等の繊維集合物の生産性をより高くするという効果を有する。また、第2成分としてポリエステル樹脂を用いて得た複合繊維を用いて形成した繊維集合物(特に不織布)は嵩高性に優れるという利点を有する。さらにまた、第2成分がポリエステル樹脂である複合繊維は、第1成分と第2成分との融点差が大きいために、この繊維を熱融着処理または熱圧着処理に付する際に、広い温度範囲から処理温度を選択できる(即ち、加工温度範囲が広い)という利点をも有する。
本発明のプロピレン系短繊維は、上述のエチレン−プロピレン共重合体を使用して、上述した繊維形態(即ち、複合断面形態)をとるように製造されたものであり、下記の2つの繊維のうち、いずれか1つの繊維として特定される。
本発明の第1のプロピレン系短繊維は、エチレン含有量が1mass%以上4mass%以下の範囲内にあり、プロピレン含有量が96mass%以上99mass%以下の範囲内にあり、JIS−K−7121に準じて測定したDSC曲線より求める紡糸後の融点Tfおよび紡糸後の結晶化温度Tfcが下記の条件を満たすαオレフィン−プロピレン共重合体が繊維表面の少なくとも一部を占めてなる短繊維である。
(1)紡糸後の融点Tfが140℃以下である。
(2)紡糸後の結晶化温度Tfcが100℃以上、(Tf−20)℃以下の範囲内にある。
本発明の第2のプロピレン系短繊維は、エチレン含有量が1mass%以上4mass%以下の範囲内にあり、プロピレン含有量が96mass%以上99mass%以下の範囲内にあるエチレン−プロピレン共重合体を含む第1成分と、エチレン−プロピレン共重合体の紡糸後の融点Tfよりも高い紡糸後の融点を有する熱可塑性重合体を含む第2成分とから成り、かつ第1成分が繊維表面の少なくとも一部を占めてなる複合繊維であって、JIS−K−7121に準じて測定したDSC曲線より求める紡糸後のエチレン−プロピレン共重合体の融点Tfおよび紡糸後の繊維の最低結晶化温度Tscが下記の条件を満たす短繊維である。
(i)紡糸後のエチレンープロピレン共重合体の融点Tfが145℃以下である。
(ii)紡糸後の繊維の最低結晶化温度Tscが97℃以上、(Tf−20)℃以下の範囲内にある。
第1のプロピレン系短繊維における紡糸後のエチレン−プロピレン共重合体の融点Tfは、140℃以下である。第2のプロピレン系短繊維における紡糸後のエチレン−プロピレン共重合体の融点Tfは、145℃以下である。第2のプロピレン系短繊維において、紡糸後のエチレン−プロピレン共重合体の融点の上限が高く設定されているのは、前述したように、相溶性を有する重合体(特にポリプロピレン)と複合紡糸した場合に、この重合体の影響を受けるためである。第1および第2のプロピレン系短繊維のいずれにおいても、好ましい紡糸後の融点のTfの下限は、130℃である。より好ましい紡糸後の融点Tfの下限は、132℃である。好ましい紡糸後の融点Tfの上限は、138℃である。
本発明の短繊維が、複合繊維である場合、融点Tfはエチレン−プロピレン共重合体の融点を指す。本発明において繊維形態での融点を特定するのは、樹脂を溶融紡糸し、延伸すると、樹脂の結晶化が進むこと、ならびに上述のように複合紡糸される重合体の影響を受けて変化すること等に起因して、紡糸前の樹脂の融点に比べ繊維(紡糸後)の融点が変化する(一般には高くなる)ことによる。即ち、紡糸前の樹脂の融点が上記(A)の条件を満たすとしても、得られる繊維が熱融着性繊維として所期の特性を発揮しない場合があることを想定して、紡糸後の融点を規定している。紡糸した後の繊維の融点Tfが上記範囲を満たすべき理由は、先に樹脂融点Tに関連して説明したとおりである。
第1のプロピレン系短繊維における紡糸後のエチレン共重合体の結晶化温度Tfcは、100℃以上、(Tf−20)℃以下の範囲内である。第2のプロピレン系短繊維においては、紡糸後の繊維の最低結晶化温度Tscが97℃以上、(Tf−20)℃以下の範囲内である。第2のプロピレン系短繊維において、最低結晶化温度Tscの範囲を規定しているのは、エチレン−プロピレン共重合体を他の重合体と複合紡糸した場合に、エチレン−プロピレン共重合体と他の重合体(特に相溶性を有する重合体)の結晶化温度のピークをDSC曲線上において区別することができず、単一のピークとして得られる場合があることによる。また、第2の繊維において最低結晶化温度の下限を97℃としているのは、複合繊維の結晶化温度の測定手法に起因して、エチレン−プロピレン共重合体の結晶化が阻害される場合があることによる。なお、第2の繊維において、エチレンープロピレン共重合体の結晶化温度のピークと他の重合体の結晶化温度のピークを区別し得る場合には、エチレンープロピレン共重合体の結晶化温度のピークがTscとなる。さらに、第1の繊維における紡糸後のエチレン−プロピレン共重合体の結晶化温度のピークは、第1の繊維が単一繊維である場合には、Tscともいえることに留意されたい。単一繊維において結晶化温度のピークは1つだけ現れるからである。
第1および第2のプロピレン系短繊維のいずれにおいても、好ましい紡糸後の結晶化温度TfcおよびTscの下限は、101℃である。より好ましい紡糸後の結晶化温度Tfcの上限は、(Tf−25)℃であり、さらにより好ましくは(Tf−30)℃である。本発明において繊維形態での結晶化温度を特定するのは、前記紡糸後の融点と同様に、樹脂を溶融紡糸し、延伸すると、樹脂の結晶化が進むために、紡糸前の樹脂の結晶化温度に比べ繊維(紡糸後)の結晶化温度が変化する(一般的には高くなる)ことによる。即ち、(2)および(ii)の条件等により特定した第1および第2の繊維は、溶融紡糸時に繊維間の熱融着が生じずに製造された繊維であって、良好な熱融着性または熱圧着性を示す繊維である。
紡糸直後のフィラメントは、溶融状態から冷却されてフィラメントの表面温度が降下しながら結晶化温度に到達した時点で固化する。したがって、フィラメントが固化する温度、すなわち結晶化温度が高いほど結晶化して固化する速度が速くなる(即ち、固化するまでの時間が短くなる)。そのため、紡糸工程において高速での引き取りが可能となり、細繊度の繊維を採取することができる。また、得られた短繊維を用いて繊維集合物を製造するに際し、本発明の短繊維を熱融着させる加工を実施する場合(特に、熱融着不織布を製造する場合)には、熱により溶融させた成分(即ち、プロピレン共重合体)の固化する速度は、繊維集合物の生産性、ならびに繊維集合物の風合いおよび熱融着強力などに重要な影響を及ぼす。結晶化温度TfcまたはTscが上記(2)または(ii)に記載した下限値よりも低いと、不織布などの繊維集合物、またはこの繊維集合物を用いて積層品を製造するに際し、熱ロール機、熱風処理機、およびヒートシール機などの加工機を用いて、熱加工したときに、溶融したプロピレン共重合体が加工機に付着するなど生産性に影響を及ぼすおそれがある。さらに、結晶化温度TfcまたはTscが低いほど、溶融したプロピレン共重合体が固化するまでにより多くの時間を要するため、熱加工後に繊維集合物を冷却して結晶化温度に至るまでの時間を短縮するための冷却装置を設ける、あるいはライン速度を遅くして冷却に必要な時間を確保すること等が必要となる。そのような必要性を少なくする又は無くすために、前記所定温度以上のTfcまたはTscが要求される。結晶化温度TfcまたはTscは融点Tfにより近い温度が望ましいが、前述のとおり、現状の技術ではTfcまたはTscがTf−20℃を超えるようにすることは困難である。
第2のプロピレン系短繊維は、前述のように、エチレン−プロピレン共重合体と他の重合体と複合紡糸した複合繊維を特定している。そのような複合繊維のうち、当該他の重合体が相溶性を有する重合体(特にポリプロピレン)である複合繊維のTscは、相溶性を有しない重合体(例えばポリエステル)と複合紡糸した複合繊維における、紡糸後の最低結晶化温度Tscよりも高くなる傾向にあり、具体的には例えば110℃〜120℃となる。そのようにTscが高い複合繊維を、例えば、後述するように、エチレン−プロピレン共重合体を熱融着成分とするバインダー繊維として、湿式不織布を製造するために使用すると、熱融着成分が溶融してから冷却するまでの時間がより短くなる。このことは、熱処理装置において湿式不織布を搬送するネットに熱融着した成分が残りにくく、したがってネットを汚しにくいという利点をもたらす。
続いて、本発明のプロピレン系短繊維を製造する方法を説明する。以下においては、プロピレン共重合体を第1成分とし、他の樹脂を第2成分として、第1成分が鞘成分となるように複合紡糸して、鞘芯型複合繊維を得る方法を説明する。当業者であれば、下記に説明する方法を応用して、単一繊維、または他の複合繊維を製造できるであろう。
まず第1成分として、樹脂融点Tが140℃以下であり、エチレン含有量が1mass%以上4mass%以下の範囲内にあり、プロピレン含有量が96mass%以上99mass%以下の範囲内にあり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Q値)が、1.5以上3.5以下の範囲内にあるプロピレン共重合体、あるいは当該プロピレン共重合体を含む混合物を準備する。一方、第2成分として、融点が前記プロピレン共重合体樹脂の融点Tよりも15℃以上高い熱可塑性樹脂を準備する。
次いで、常套の溶融紡糸機を用いて鞘芯型複合ノズルからそれぞれの樹脂を押し出して複合紡糸して、紡糸フィラメントを作製する。紡糸フィラメントの繊度は、用途などに応じて適宜設定すればよい。紡糸フィラメントは、好ましくは繊度が3dtex以上、30dtex以下の範囲内にあるように作製される。紡糸フィラメント間の融着は、フィラメントの繊度が細いほど発生しやすい傾向にある。本発明の重要な効果の1つは、紡糸フィラメントの融着を防止することにあるから、この効果を最大限に発揮させるには、最終的に得られる繊維の繊度が2.5dtex以下となるように紡糸することが好ましい。繊度2.5dtex以下の細繊度の繊維を得ようとする場合、紡糸フィラメントの繊度は、延伸条件にもよるが5dtex以下とする必要がある。この場合、ノズルのホール数や樹脂の吐出量にもよるが、紡糸時の引取速度は、一般には1000m/min以上とされる。このような引取速度を採用する場合、樹脂の結晶化の進行が遅い場合には、冷却不足などに起因するフィラメント間の融着が発生しやすい傾向にある。しかし、所定の結晶化温度を有する前記プロピレン共重合体を使用する場合には、引取速度が1500m/min以上であっても、フィラメント間の融着を防止することができる。
プロピレン共重合体を紡糸する際の紡糸温度は、200℃以上、260℃以下の範囲内にあることが好ましい。プロピレン共重合体の紡糸温度が200℃未満であると、紡糸性に影響を及ぼす恐れがある。一方、プロピレン共重合体の紡糸温度が260℃を超えると、紡糸直後の冷却が不足してフィラメント間の融着が発生する可能性がある。
一方、第2成分の紡糸温度は、用いる樹脂、およびその紡糸性を考慮して適宜設定する。第1成分として、前記所定の融点および結晶化温度を有するプロピレン共重合体を用いることにより、第2成分がポリエステル樹脂であって、その紡糸温度を例えば260℃と高くする必要がある場合でも、フィラメント間の融着の発生を防止できる。第2成分の紡糸温度の上限は、好ましくは330℃である。第2成分の紡糸温度が330℃を超えると、紡糸後のフィラメントを十分に冷却することができず、フィラメント間の融着が発生する可能性がある。
次いで、前記紡糸フィラメントを常套の延伸処理機を用いて延伸処理して、延伸フィラメントを得る。延伸処理は、延伸温度を50℃以上、100℃以下の範囲として実施することが好ましい。また延伸倍率は、2倍以上とすることが好ましい。より好ましい延伸倍率の下限は、2.5倍である。より好ましい延伸倍率の上限は、6倍である。延伸温度が50℃未満であると、延伸が不十分となり、単繊維強度や単繊維伸度に影響を及ぼす傾向にある。延伸温度が100℃を超えると、延伸中に破断が生じ易く、十分な延伸ができない。従来、エチレン−プロピレン共重合体繊維を製造する場合には、延伸温度が80℃以上を超えると、フィラメントが延伸中に破断する傾向にあり、単繊維強度が十分に得られないことがあった。これに対し、本発明のプロピレン系短繊維の製造に際しては、延伸温度を80℃以上としても延伸を実施できるので、得られる短繊維は単繊維強度に優れ、特に好ましい。また、延伸倍率が2倍未満であると、単繊維強度および単繊維伸度などが小さくなる傾向にあり、得られた繊維のカード通過性が不十分となることがある。延伸方法は、温水または熱水中で実施する湿式延伸法、および乾式延伸法など公知の方法のいずれを採用してもよい。
得られた延伸フィラメントには、必要に応じて所定量の繊維処理剤が付着され、必要に応じてクリンパー(捲縮付与装置)で機械捲縮が与えられる。次いで、フィラメントは、必要に応じてアニーリング処理あるいは乾燥処理に付され、その後、用途等に応じて、所望の繊維長に切断される。例えば、湿式不織布用の繊維を製造する場合には機械捲縮を付与せずに、3〜20mm程度の繊維長にカットして、乾燥させずに(または乾燥処理は施すが若干の水分を残したまま)、不織布製造に使用する。
本発明のプロピレン系短繊維の繊度は、用途などに応じて適宜設定される。好ましくは、本発明の短繊維の繊度は、1dtex以上10dtex以下の範囲内にある。前述のように、特に細繊度の繊維を得ようとする場合に、本発明の効果が最大限に発揮され、紡糸中にフィラメント間で融着を生じることなく、1500m/min以上の引取速度を採用して、良好な生産性で細繊度の繊維を製造できる。具体的には、本発明のプロピレン系短繊維が、エチレン−プロピレン共重合体を含む第1成分と、ポリプロピレン樹脂を含む第2成分とから成る複合繊維である場合、少なくとも1.5dtexの細繊度を実現することができ、1.5dtex未満のものを得ることも可能である。また、本発明のプロピレン系短繊維が、エチレン−プロピレン共重合体を含む第1成分と、ポリエステル樹脂を含む第2成分とから成る複合繊維である場合、少なくとも2.5dtexの細繊度を実現することができ、2dtex以下のものを得ることも可能である。エチレン−プロピレン共重合体を融着成分とする細繊度の熱融着性複合繊維は、十分な実用性を有するものとしてこれまで提供されておらず、したがって、この繊維は種々の繊維集合物を製造するのに有用である。例えば、細繊度の熱融着性複合繊維を使用することによって、より緻密な不織布を得ることができる。特に湿式抄紙法で得られる不織布において、細繊度の熱融着性複合繊維は不織布の均一性を高くし、かつ緻密なものとするので、本発明のプロピレン系短繊維は湿式不織布用の熱融着性複合繊維として好ましく製造される。
以上において説明した本発明のプロピレン系短繊維が、繊維集合物中に20mass%以上含まれることにより、風合いの柔軟な繊維集合物を得ることができ、また、細繊度のプロピレン系短繊維を使用する場合には緻密な繊維集合物を得ることができる。前記繊維集合物としては、例えば、織物、編物、および短繊維不織布などが挙げられる。
前記繊維集合物には、本発明のプロピレン系短繊維以外に他の繊維が含まれていてよい。前記他の繊維として、例えば、コットン、シルク、ウール、麻、およびパルプなどの天然繊維、レーヨンおよびキュプラなどの再生繊維、ならびにアクリル系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系などの合成繊維から1種または複数種の繊維が、用途などに応じて選択される。
また、前記繊維集合物には、必要に応じて本発明のプロピレン系短繊維を含む別の繊維集合物、あるいは他のシート状部材を積層してもよい。前記他のシート状部材としては、織物、編物、不織布、ネットおよびフィルムなどが挙げられる。
前記繊維集合物において、本発明のプロピレン系短繊維が熱融着して繊維同士を接合している必要は必ずしもない。そのような繊維集合物に含まれる本発明のプロピレン系短繊維は、他のシート状部材と積層して熱圧着により一体化させるときに、接着剤として機能する。即ち、そのような繊維集合物は、接着剤を必要とすることなく、他のシート状部材と接合させ得るという点において有用である。本発明のプロピレン系短繊維が熱融着していない繊維集合物は、例えば、後述する交絡処理(水流交絡またはニードルパンチ)を施して繊維同士を交絡させた不織布、ならびに織物および編物等である。
続いて、本発明の繊維集合物の具体的な一例として不織布を、その製造方法とともに説明する。まず、前記プロピレン系短繊維を20mass%以上含有するように短繊維ウェブを作製する。短繊維ウェブの形態としては、例えば、カードウェブ、エアレイウェブ、および湿式抄紙ウェブが挙げられる。そして、前記短繊維ウェブは、熱ロール、熱風、高周波およびヒートシールなどの熱処理、または、ニードルパンチおよび水流交絡などの交絡処理等に付して、繊維同士を接合および/または交絡させ、それにより不織布となす。
さらに、前記不織布の具体的な一例として熱融着不織布を、その製造方法とともに説明する。熱融着不織布は、前記短繊維ウェブに公知の熱処理方法により、プロピレン系短繊維が熱融着するように熱処理を施すことにより得られる。熱処理方法としては、熱風貫通法および熱圧着法から選ばれる少なくとも1つの熱処理方法を用いることが好ましい。熱処理温度等の熱処理条件は、採用する熱処理方法に応じて適宜設定される。例えば、熱風貫通法(エアースルー法)を採用する場合、熱処理温度は、本発明のプロピレン系短繊維が溶融する温度に設定するとよいが、得られる不織布の風合い等を考慮すると、135℃以上、145℃以下の範囲内とすることが好ましい。一方、熱ロール機やヒートシール機を用いる熱圧着法を採用する場合、熱処理温度は、得られる不織布の風合い等を考慮すると、125℃以上、145℃以下の範囲内とすることが好ましい。
本発明のプロピレン系短繊維により熱融着される不織布は、エアスルー法等、生産性に優れた方法を採用して製造することができる。また、熱処理温度をそれほど高くせずにプロピレン系短繊維を融着できるために、得られる熱融着不織布は柔軟な風合いを有するとともに、高い熱融着強力を有し、また、当該不織布同士または当該不織布を、他の不織布もしくはフィルム等に熱圧着させたときには、高い熱圧着強力が得られる。さらに、本発明のプロピレン系短繊維を細繊度のバインダーとして使用する湿式不織布は、高い熱融着強力を有することに加えて、緻密である(即ち、繊維間の空隙(ポア)の寸法が小さい)。したがって、本発明の熱融着不織布は、衛生材料、ウェットティッシュ、ワイパー、フィルター、およびティーバッグ等の用途に好適である。
以下、本発明の内容について実施例を挙げて具体的に説明する。本実施例においては、エチレン−プロピレン共重合体を含む第1成分と、他の第2成分とから成る複合繊維を製造し、これを用いて熱融着不織布を作製した。なお、使用した第1成分(エチレン−プロピレン共重合体を含む成分)の紡糸前の融点Tと結晶化温度Tc、第2成分の紡糸前の融点T、紡糸後の第1成分の融点Tfと結晶化温度Tfc(またはTsc)、第2成分の融点Tf、得られた繊維の単繊維強伸度、および得られた不織布の引張強力の測定、ならびに不織布の風合いの評価は、以下のように実施した。
[T、Tc、およびTの測定]
セイコー(株)製DSCを使用し、サンプル量を5.0mgとして、200℃(ただしポリエステル樹脂の場合は300℃)で5分間保持した後、40℃まで10℃/minの降温スピードで冷却した後、10℃/minの昇温スピードで融解させて、第1成分および第2成分それぞれについて融解熱量曲線を得て、得られた融解熱量曲線より、第1成分の樹脂の結晶化温度Tc、第1成分の樹脂の融点T、および第2成分の樹脂の融点Tをそれぞれ求めた。
[Tf、Tfc、およびTf2の測定]
セイコー(株)製DSCを使用し、サンプル量を6.0mgとして、10℃/minの昇温スピードで常温から200℃(ただしポリエステル樹脂を第2成分とする場合には300℃)まで昇温し、5分間保持した後、40℃まで10℃/minの降温スピードで冷却して、得られた融解熱量曲線から紡糸後の第1成分の融点Tf、紡糸後の第1成分の結晶化温度Tfc,および紡糸後の第2成分のTf2を求めた。結晶化温度のピークが1つだけしか出なかったものについては、そのピークの頂点の温度をTscとして求めた。
[単繊維強伸度]
JIS−L−1015に準じ、引張試験機を用いて、試料のつかみ間隔を20mmとして繊維切断時の荷重値および伸びを測定し、それぞれ単繊維強力、単繊維伸度とした。
[不織布の引張強力]
JIS−L−1913に準じ、幅5cm、長さ15cmの試料片をつかみ間隔10cmで把持し、定速伸長型引張試験機を用いて引張速度30cm/分で伸長し、切断時の荷重値を引張強力とした。
[不織布の風合い(実施例1、比較例1〜5のみ)]
不織布をA4サイズの大きさに裁断し、不織布の表面をモニター10名の手で触れた時の触感を下記の基準に従って判定した。
○:柔軟であり、べたつき感もない。
△:硬い、またはべたつき感がある。
×:硬く、べたつき感がある。
[実施例1]
鞘成分(第1成分)として融点Tが136℃、MFRが25g/10min、Q値が2.5、エチレン含有量が2mass%、プロピレン含有量が98mass%であるエチレン−プロピレン共重合体であって、メタロセン触媒を用いて重合したもの(日本ポリプロ(株)製、試験クレード名OX1066)を使用した。芯成分(第2成分)として、融点Tが255℃のポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製、商品名T−200E)を用いた。鞘芯型複合ノズルを用い、第1成分/第2成分の複合比(容積比)を5/5として、鞘成分の紡糸温度を250℃、芯成分の紡糸温度を300℃として溶融押出し、引き取り速度1200m/minで引き取り、繊度4.5dtexの紡糸フィラメントを得た。得られた紡糸フィラメントの繊維断面を光学顕微鏡で50倍に拡大して観察したところ、フィラメント間の融着は認められなかった。
前記紡糸フィラメントを80℃の温水中で2.8倍に延伸し、繊度2.2dtexの延伸フィラメントとした。次いで、繊維処理剤を付与した後、延伸フィラメントにスタッフィングボックス型クリンパーにて捲縮数約15山/25mmの機械捲縮を付与した。そして、110℃に設定した熱風貫通型乾燥機にて約15分間乾燥処理を施し、フィラメントを51mmの繊維長に切断して、本発明のプロピレン系短繊維を得た。
[実施例2]
鞘成分(第1成分)として融点Tが136℃、MFRが25g/10min、Q値が2.6〜2.8、エチレン含有量が2mass%、プロピレン含有量が98mass%であるエチレン−プロピレン共重合体であって、メタロセン触媒を用いて重合したもの(日本ポリプロ(株)製、商品名OX1066A)を使用した。芯成分(第2成分)として、実施例1で使用したポリエチレンテレフタレートと同じものを使用した。第1成分/第2成分の複合比(容積比)を5/5として、鞘成分の紡糸温度を220℃、芯成分の紡糸温度を310℃として溶融押出し、引き取り速度512m/minで引き取り、繊度7.8dtexの紡糸フィラメントを得た。得られた紡糸フィラメントの繊維断面を光学顕微鏡で50倍に拡大して観察したところ、フィラメント間の融着は認められなかった。
前記紡糸フィラメントを80℃の温水中で2.4倍に延伸し、繊度3.3dtexの延伸フィラメントとした。次いで、繊維処理剤を付与した後、延伸フィラメントにスタッフィングボックス型クリンパーにて捲縮数約15山/25mmの機械捲縮を付与した。そして、110℃に設定した熱風貫通型乾燥機にて約15分間乾燥処理を施し、フィラメントを45mmの繊維長に切断して、本発明のプロピレン系短繊維を得た。
[実施例3]
鞘成分(第1成分)として融点Tが136℃、MFRが25g/10min、Q値が2.6〜2.8、エチレン含有量が2mass%、プロピレン含有量が98mass%であるエチレン−プロピレン共重合体であって、メタロセン触媒を用いて重合したもの(日本ポリプロ(株)製、商品名OX1066A)を使用した。芯成分(第2成分)として融点Tが161℃、MFRが26g/10min、Q値が6.5の結晶性ポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製、商品名SA03A)を用いた。鞘芯型複合ノズルを用い、第1成分/第2成分の複合比(容積比)を5/5として、鞘成分の紡糸温度を250℃、芯成分の紡糸温度を315℃として溶融押出し、引き取り速度1350m/minで引き取り、繊度2.2dtexの紡糸フィラメントを得た。得られた紡糸フィラメントの繊維断面を光学顕微鏡で50倍に拡大して観察したところ、フィラメント間の融着は認められなかった。
前記紡糸フィラメントを90℃の温水中で2.4倍に延伸し、繊度1.3dtexの延伸フィラメントとした。次いで、繊維処理剤を付与した後、フィラメントを10mmの繊維長に切断して、本発明のプロピレン系短繊維を湿式不織布用の短繊維として得た。
[実施例4]
鞘成分(第1成分)として実施例2で使用したエチレン−プロピレン共重合体と同じものを使用した。芯成分(第2成分)として融点Tが161℃、MFRが23g/10min、Q値が6.0の結晶性ポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製、商品名SA03E)を用いた。鞘芯型複合ノズルを用い、第1成分/第2成分の複合比(容積比)を5/5として、鞘成分の紡糸温度を250℃、芯成分の紡糸温度を300℃として溶融押出し、引き取り速度600m/minで引き取り、繊度5.6dtexの紡糸フィラメントを得た。得られた紡糸フィラメントの繊維断面を光学顕微鏡で50倍に拡大して観察したところ、フィラメント間の融着は認められなかった。
前記紡糸フィラメントを90℃の温水中で2.7倍に延伸し、繊度2.6dtexの延伸フィラメントとした。次いで、繊維処理剤を付与した後、フィラメントを10mmの繊維長に切断して、本発明のプロピレン系短繊維を湿式不織布用の短繊維として得た。
[実施例5]
鞘成分(第1成分)として実施例2で使用したエチレン−プロピレン共重合体と同じものを使用した。芯成分(第2成分)として融点Tが161℃、MFRが30g/10min、Q値が3.5の結晶性ポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製、商品名SA03B)を用いた。鞘芯型複合ノズルを用い、第1成分/第2成分の複合比(容積比)を5/5として、鞘成分の紡糸温度を255℃、芯成分の紡糸温度を290℃として溶融押出し、引き取り速度1000m/minで引き取り、繊度2.2dtexの紡糸フィラメントを得た。得られた紡糸フィラメントの繊維断面を光学顕微鏡で50倍に拡大して観察したところ、フィラメント間の融着は認められなかった。
前記紡糸フィラメントを90℃の温水中で2.7倍に延伸し、繊度1.0dtexの延伸フィラメントとした。次いで、繊維処理剤を付与した後、フィラメントを4mmの繊維長に切断して、本発明のプロピレン系短繊維を得た。
[実施例6]
鞘成分(第1成分)として実施例2で使用したエチレン−プロピレン共重合体と同じものを使用した。芯成分(第2成分)として融点Tが161℃、MFRが26g/10min、Q値が6.5の結晶性ポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製、商品名SA03A)を用いた。鞘芯型複合ノズルを用い、第1成分/第2成分の複合比(容積比)を5/5として、鞘成分の紡糸温度を250℃、芯成分の紡糸温度を315℃として溶融押出し、引き取り速度490m/minで引き取り、繊度6.0dtexの紡糸フィラメントを得た。得られた紡糸フィラメントの繊維断面を光学顕微鏡で50倍に拡大して観察したところ、フィラメント間の融着は認められなかった。
前記紡糸フィラメントを90℃の温水中で3.9倍に延伸し、繊度2.0dtexの延伸フィラメントとした。次いで、繊維処理剤を付与した後、延伸フィラメントにスタッフィングボックス型クリンパーにて捲縮数約15山/25mmの機械捲縮を付与した。そして、105℃に設定した熱風貫通型乾燥機にて約15分間乾燥処理を施し、フィラメントを45mmの繊維長に切断して、本発明のプロピレン系短繊維を得た。
[比較例1]
鞘成分(第1成分)として融点Tが128℃、MFRが38g/10min、Q値が2.6、エチレン含有量が2.6mass%、プロピレン含有量が97.4mass%であるエチレン−プロピレン共重合体であって、メタロセン触媒を用いて重合したものに造核剤として3−メチル−1ブテン重合体を10ppm含有させた樹脂を使用したこと以外は、実施例3と同様の方法で複合紡糸した。しかし、紡糸フィラメント間で融着が多発したために、紡糸フィラメントの引き取りを中止した。
[比較例2]
鞘成分(第1成分)として比較例1で第1成分として使用した樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で複合紡糸した。しかし、紡糸フィラメント間で融着が多発したために、紡糸フィラメントの引き取りを中止した。
[比較例3]
鞘成分(第1成分)として比較例1で第1成分として使用した樹脂を用い、芯成分(第2成分)として実施例1で使用したポリエチレンテレフタレートを用いた。鞘芯型複合ノズルを用い、第1成分/第2成分の複合比(容積比)を5/5として、鞘成分の紡糸温度を240℃、芯成分の紡糸温度を300℃として溶融押出し、引き取り速度500m/minで引き取り、繊度8.0dtexの紡糸フィラメントを得た。
前記紡糸フィラメントを80℃の温水中で2.5倍に延伸し、繊度3.3dtexの延伸フィラメントとした。次いで、繊維処理剤を付与した後、延伸フィラメントにスタッフィングボックス型クリンパーにて捲縮数約15山/25mmの機械捲縮を付与した。そして、110℃に設定した熱風貫通型乾燥機にて約15分間乾燥処理を施し、フィラメントを51mmの繊維長に切断して、プロピレン系短繊維を得た。
[比較例4]
鞘成分(第1成分)として融点が135℃、MFRが18g/10min、Q値が3.5、エチレン含有量が4.3mass%、プロピレン含有量が95.7mass%であるエチレン−プロピレン共重合体であって、チーグラー・ナッタ触媒を用いて重合したもの(日本ポリプロ(株)製、商品名SX02R)に造核剤として酸化チタンを0.3mass%添加した樹脂を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で複合紡糸した。しかし、紡糸フィラメント間で融着が多発したために、紡糸フィラメントの引き取りを中止した。
[比較例5]
鞘成分(第1成分)として比較例4で第1成分として使用した樹脂を用い、芯成分(第2成分)として実施例1で使用したポリエチレンテレフタレートを用いた。鞘芯型複合ノズルを用い、第1成分/第2成分の複合比(容積比)を5/5として、鞘成分の紡糸温度を240℃、芯成分の紡糸温度を290℃として溶融押出し、引き取り速度500m/minで引き取り、繊度8.0dtexの紡糸フィラメントを得た。
前記紡糸フィラメントを80℃の温水中で2.5倍に延伸し、繊度3.3dtexの延伸フィラメントとした。次いで、繊維処理剤を付与した後、延伸フィラメントにスタッフィングボックス型クリンパーにて捲縮数約15山/25mmの機械捲縮を付与した。そして、110℃に設定した熱風貫通型乾燥機にて約15分間乾燥処理を施し、フィラメントを51mmの繊維長に切断して、プロピレン系短繊維を得た。
さらに、実施例1、ならびに比較例3および5で得たプロピレン系短繊維のみをそれぞれ用いて(即ち、プロピレン系短繊維の含有量を100mass%として)、セミランダムカード機で、目付約30g/mのカードウェブを作製した。次いで、熱風貫通型熱処理機を用いて、熱処理温度140℃、熱処理時間10秒で、カードウェブに熱融着処理を施して、熱融着不織布を得た。
また、実施例5で得たプロピレン系短繊維を乾重量で1.25gと、ポリプロピレン単一繊維(繊度0.9dtex、繊維長5mm)1.25gと、1リットルの水とを混合して、家庭用ミキサー(松下電器産業(株)製:商品名ナショナルミキサー、MX−151S)を用いて、1分間、離解および叩解処理して、繊維が水中に分散したスラリーを調製した。このスラリーを一辺が25cmの抄紙用ネットに流し込み、目付40g/mの湿式抄紙ウェブを作製した。次いで、脱水した後、シリンダードライヤー機を用いて140℃にて乾燥および熱融着処理を施し、熱融着湿式不織布を得た。
各実施例および比較例で得たプロピレン系短繊維および熱融着不織布の物性を表1および表2に示す。
Figure 0004555599



Figure 0004555599
紡糸前の結晶化温度が97℃以上であるプロピレン共重合体を鞘成分とし、ポリプロピレンおよびポリエチレンテレフタレートをそれぞれ芯成分とした場合には、紡糸中に繊維同士の融着が生じることなく、紡糸後のプロピレン共重合体の結晶化温度(または紡糸後の繊維の最低結晶化温度)が高い、細繊度の複合繊維を得ることができた(実施例1〜6)。これに対し、紡糸前の結晶化温度が97℃未満のプロピレン共重合体を使用した場合には、細繊度の複合繊維を得ることができず(比較例1、2、4)、引き取り速度を実施例1および2よりも相当低くした場合にのみ、繊維化が可能であった(比較例3、5)。
実施例1および2の細繊度のプロピレン系短繊維を用いて作製した不織布は、カード通過性も良好で、風合いも良好であった。一方、比較例3のプロピレン系短繊維を用いた不織布は、べたつき感こそ感じないものの、プロピレン系短繊維の繊度が太いために、柔軟性に劣り、風合いが良くなかった。比較例5のプロピレン系短繊維を用いた不織布は、べたつき感があり、また、プロピレン系短繊維の繊度が太いために柔軟性においても劣っていた。べたつき感は、エチレン含有量が高いことによるものと考えられる。また、表には示していないが、実施例5の繊維で作製した湿式不織布は緻密で均一性の高いものであった。また、実施例5の繊維を用いて湿式不織布を製造するときに使用したシリンダードライヤー機において、熱融着処理後のシリンダーに汚れは殆ど付着していなかった。
特定のエチレン−プロピレン共重合体を使用する本発明のプロピレン系短繊維は、良好な熱融着性を有するとともに、他の重合体と複合紡糸する場合でも細い繊度を有するように製造することができるので、風合いおよび緻密さが要求される不織布を製造するのに特に好ましく使用される。

Claims (11)

  1. メタロセン触媒により重合され、エチレン含有量が1mass%以上2.5mass%以下の範囲内にあり、プロピレン含有量が96mass%以上99mass%以下の範囲内にあり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Q値)が、1.5以上3.5以下の範囲内にあり、JIS−K−7121に準じて測定したDSC曲線より求める紡糸前の樹脂の融点Tおよび結晶化温度Tcが下記の条件(A)および(B)を満たすエチレン−プロピレン共重合体を含む第1成分が繊維表面の少なくとも一部を占めるように、エチレン−プロピレン共重合体の紡糸後の融点Tfよりも高い紡糸後の融点を有するポリプロピレン樹脂を含む第2成分とともに溶融紡糸して得られる、繊度1.5dtex以下の複合短繊維。
    (A)造核剤を添加せずに測定した融点Tが132℃以上140℃以下である。
    (B)造核剤を添加せずに測定した結晶化温度Tcが97℃以上であり、(T−25)℃以下の範囲内にある。
  2. 繊維長が3〜20mmである、湿式不織布用の請求項1に記載の複合短繊維。
  3. メタロセン触媒により重合され、エチレン含有量が1mass%以上2.5mass%以下の範囲内にあり、プロピレン含有量が96mass%以上99mass%以下の範囲内にあり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Q値)が、1.5以上3.5以下の範囲内にあり、JIS−K−7121に準じて測定したDSC曲線より求める紡糸前の樹脂の融点Tおよび結晶化温度Tcが下記の条件(A)および(B)を満たすエチレン−プロピレン共重合体を含む第1成分が繊維表面の少なくとも一部を占めるように、エチレン−プロピレン共重合体の紡糸後の融点Tfよりも高い紡糸後の融点を有するポリエステル樹脂を含む第2成分とともに溶融紡糸して得られる複合短繊維。
    (A)造核剤を添加せずに測定した融点Tが140℃以下である。
    (B)造核剤を添加せずに測定した結晶化温度Tcが97℃以上であり、(T−25)℃以下の範囲内にある。
  4. 前記複合短繊維の繊度が、2.5dtex以下である請求項に記載の複合短繊維。
  5. 前記融点Tが127℃以上、140℃以下の範囲内にある、請求項のプロピレン系短繊維。
  6. 湿式不織布用の請求項のいずれか1項に記載の複合短繊維。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の複合短繊維を20mass%以上含有する繊維集合物。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の複合短繊維を20mass%以上含有し、前記複合短繊維を構成する前記エチレン−プロピレン共重合体により熱融着されてなる熱融着不織布。
  9. 請求項2または6に記載の複合短繊維を20mass%以上含有し、前記複合短繊維を構成する前記エチレン−プロピレン共重合体により熱融着されてなる、湿式不織布。
  10. メタロセン触媒により重合され、エチレン含有量が1mass%以上2.5mass%以下の範囲内にあり、プロピレン含有量が96mass%以上99mass%以下の範囲内にあり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Q値)が、1.5以上3.5以下の範囲内にあり、JIS−K−7121に準じて測定したDSC曲線より求める紡糸前の樹脂の融点Tおよび結晶化温度Tcが下記の条件(A)および(B)を満たすエチレン−プロピレン共重合体を含む第1成分が、繊維表面の少なくとも一部を占めるように、エチレン−プロピレン共重合体の紡糸後の融点Tfよりも高い紡糸後の融点を有するポリプロピレンを含む第2成分とともに、第1成分の紡糸温度を200℃以上260℃以下の範囲内とし、引取速度1000m/min以上の条件下で溶融紡糸して紡糸フィラメントを得ること、および
    前記紡糸フィラメントに対し、延伸倍率2倍以上の延伸処理を行った後、所定長に切断することを含む繊度1.5dtex以下の複合短繊維の製造方法。
    (A)造核剤を添加せずに測定した融点Tが132℃以上140℃以下である。
    (B)造核剤を添加せずに測定した結晶化温度Tcが97℃以上であり、(T−25)℃以下の範囲内にある。
  11. メタロセン触媒により重合され、エチレン含有量が1mass%以上2.5mass%以下の範囲内にあり、プロピレン含有量が96mass%以上99mass%以下の範囲内にあり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Q値)が、1.5以上3.5以下の範囲内にあり、JIS−K−7121に準じて測定したDSC曲線より求める紡糸前の樹脂の融点Tおよび結晶化温度Tcが下記の条件(A)および(B)を満たすエチレン−プロピレン共重合体を含む第1成分が、繊維表面の少なくとも一部を占めるように、エチレン−プロピレン共重合体の紡糸後の融点Tfよりも高い紡糸後の融点を有するポリエステル樹脂を含む第2成分とともに、第1成分の紡糸温度を200℃以上260℃以下の範囲内として、溶融紡糸することを含む複合短繊維の製造方法。
    (A)造核剤を添加せずに測定した融点Tが140℃以下である。
    (B)造核剤を添加せずに測定した結晶化温度Tcが97℃以上であり、(T−25)℃以下の範囲内にある。
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