JP2003003334A - 捲縮性複合繊維とその製造方法およびこれを用いた不織布 - Google Patents

捲縮性複合繊維とその製造方法およびこれを用いた不織布

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JP2003003334A JP2001189066A JP2001189066A JP2003003334A JP 2003003334 A JP2003003334 A JP 2003003334A JP 2001189066 A JP2001189066 A JP 2001189066A JP 2001189066 A JP2001189066 A JP 2001189066A JP 2003003334 A JP2003003334 A JP 2003003334A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 柔らかな風合いであり、初期嵩回復性、長期
嵩回復性ともに優れた、特に頻繁に荷重のかかる用途に
適した繊維および不織布を得ることを目的とする。 【解決手段】 ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂
を含有する第1成分(1)と、ポリオレフィン系樹脂を
含有する第2成分(2)からなり、偏心芯鞘型複合ノズ
ルを用いて溶融紡糸、延伸処理を施し、鋸歯状捲縮を付
与した後、アニーリング処理を施すことにより、第2成
分の融点をTm(℃)としたときTm−3(℃)におい
て、波線状捲縮および/または螺旋状捲縮を発現すると
ともに乾熱収縮率を3%以下である捲縮性複合繊維を得
る。前記捲縮性複合繊維の第2成分を溶融し、構成する
繊維同士が熱融着させることにより不織布を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として嵩弾性に
優れる不織布に適したポリエステル系捲縮性複合繊維、
およびそれを用いた不織布に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、衛生材料、包装材、ウェットティ
ッシュ、フィルター、ワイパー等に用いられる不織布、
あるいは硬綿、椅子等に用いられる不織布、成形体など
様々な用途において、低融点成分の少なくとも一部が繊
維表面に露出し、低融点成分よりも融点が高い高融点成
分からなる熱融着性複合繊維を用いた熱接着不織布が使
用されている。なかでも、前記熱融着性複合繊維で得ら
れた不織布の嵩弾性、すなわち厚み方向での嵩回復性に
優れ、かつ、柔らかい触感を有する繊維の要求が、現在
廃棄の問題となっているウレタンの代替の環境問題と相
まって大きくなっている。
【0003】現状、嵩弾性に優れた不織布を得るのに用
いられている複合繊維としては、一般的にポリプロピレ
ン(以下、PPと記す場合がある)/ポリエチレン(以
下、PEと記す場合がある)、ポリエチレンテレフタレ
ート(以下、PETと記す場合がある)/PE、ポリブ
チレンテレフタレート(以下、PBTと記す場合があ
る)/PEとする複合繊維が挙げられ、前記以外にも、
ポリトリメチレンテレフタレート(以下、PTTと記す
場合がある)を用いた繊維および不織布が挙げられてお
り、例えば、特開平11-158732号公報では、芯
成分をポリエチレンテレフタレートなどのメチレン基の
nが偶数であるジオール成分を縮重合したポリエステル
とし、鞘成分をPTTなどのメチレン基のnが奇数であ
るジオール成分を縮重合したポリエステルとした偏心芯
鞘型複合繊維が提案されている。特開平11-1899
23号公報では、極限粘度が0.4〜1であるPTT
と、他のポリエステルとをサイドバイサイド型に接合し
た複合繊維が提案されている。さらに、特開2000−
256920号公報には、PTTと、熱接着性成分とし
てポリオレフィンあるいは共重合ポリエステルとを用い
た熱融着性複合繊維が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記繊
維には次のような問題点を有する。例えば、PP/PE
繊維で製造された不織布は、単繊維の曲げ強さが小さい
ため、風合いは柔らかいが、曲げ回復率も低いためへた
りやすい傾向がある。PET/PE繊維は、PP/PE
繊維に比べ単繊維の曲げ回復率が高いため、不織布に一
定荷重かけ、除重した直後の嵩回復性(以下、初期嵩回
復性と記す場合がある)は大きいが、単繊維の曲げ強さ
も大きいため、除重後24時間以降の嵩回復性(以下、
長期嵩回復性と記す場合がある)は不十分であり、更に
風合いが硬く感じるという問題がある。さらに、PBT
/PE繊維は、単繊維の曲げ強さが小さく、曲げ回復率
が高いため、不織布としたときの風合いが柔らかく、長
期嵩回復性に優れているが、曲げ弾性率が低いため、初
期嵩回復性がPP/PE同様に小さく、例えばオムツや
椅子用クッション材など頻繁に荷重のかかる様な用途に
は使用が困難であるという問題がある。
【0005】また、特開平11-158732号公報お
よび特開平11-189923号公報では、PTT成分
の収縮力を利用して、捲縮発現させているため、捲縮が
細かくなりすぎ、伸縮性を得ることは可能であるが、嵩
高性においては不十分である。特開2000−2569
20号公報では、PTTの熱収縮を抑制し、高速カード
性を高めるために、エチレングリコールの共重合比を減
らしたり、融点を高めたり、あるいは同心円型の芯鞘型
複合形態としたりしているが、初期嵩回復性および長期
嵩回復性について十分に改善されているといえない。し
たがって、柔らかな風合いであり、初期嵩回復性、長期
嵩回復性ともに優れた、特に頻繁に荷重のかかる用途に
適した繊維が得られていないのが実情である。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記問題点を
鑑みてなされたものであり、ポリトリメチレンテレフタ
レート系樹脂を含有する第1成分と、ポリオレフィン系
樹脂を含有する第2成分からなる複合繊維とし、延伸条
件、鋸歯状捲縮付与条件、およびアニーリング処理条件
を調整して、カード通過性が良好で、熱処理時に適度な
波線状捲縮および/または螺旋状捲縮を発現するととも
に第2成分の融点近傍の温度でも熱収縮を有しない捲縮
性複合繊維とすることによって、上記課題を解決し、本
発明に至った。すなわち、本発明の捲縮性複合繊維は、
ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂を含有する第1
成分と、ポリオレフィン系樹脂を含有する第2成分から
構成され、繊維断面において第2成分が繊維表面の少な
くとも20%を占め、第1成分の重心位置が繊維の重心
位置からずれている複合繊維からなり、前記複合繊維が
第2成分の融点をTm(℃)としたとき、Tm−3
(℃)において下記の範囲を満たす波線状捲縮および螺
旋状捲縮から選ばれた少なくとも一種の捲縮を有し、T
m−3(℃)における乾熱収縮率が3%以下を満たすも
のである。 (1)0.8<L<5 (2)0.4<H/L<0.9 L:捲縮の一山間の長さ(mm) H:捲縮の山の高さ(mm) かかる構成を採ることにより、不織布としたとき、柔ら
かな風合いであり、収縮を伴わずとも、適度な波線状捲
縮および/または螺旋状捲縮が発現して、初期嵩回復
性、長期嵩回復性ともに優れた、特に頻繁に荷重のかか
る不織布用途に適した捲縮性複合繊維が得られる。
【0007】本発明の捲縮性複合繊維は、偏心率5〜5
0%の偏心芯鞘型複合繊維であると、乾熱収縮率を低く
抑えながら、嵩回復性において有利な波線状捲縮および
/または螺旋状捲縮を得ることができ好ましい。さら
に、前記ポリオレフィン系樹脂は、高密度ポリエチレ
ン、エチレン−プロピレン共重合体、およびエチレン−
ブテン−1−プロピレン三元共重合体から選ばれた少な
くとも1種であることが好ましい。
【0008】本発明の捲縮性複合繊維は、ポリトリメチ
レンテレフタレート系樹脂を含有する第1成分と、ポリ
オレフィン系樹脂を含有する第2成分からなり、繊維断
面において第2成分が繊維表面の少なくとも20%を占
め、第1成分の重心位置が繊維の重心位置からずれるよ
うに配置された複合型ノズルを用いて溶融紡糸して得ら
れた紡糸フィラメントを、延伸倍率1.8倍以上で延伸
処理を施し、5個/25mm以上、25個/25mm以下の鋸歯状
捲縮を付与した後、90〜130℃の雰囲気下でアニー
リング処理を施すことにより製造することができる。さ
らに前記延伸処理において、延伸温度は第1成分のポリ
トリメチレンテレフタレート系樹脂のガラス転移点以
上、第2成分の融点未満であることが好ましい。
【0009】本発明の不織布は、前記捲縮性複合繊維を
少なくとも30mass%含有しており、初期嵩回復性、長
期嵩回復性ともに優れた、特に頻繁に荷重のかかる用途
に好適である。さらに、前記捲縮性複合繊維の第2成分
が溶融して、不織布を構成する繊維同士が熱融着されて
いると、他のバインダー成分を必要としないだけでな
く、捲縮性複合繊維同士および他の構成繊維と捲縮性複
合繊維とが部分的に接着点を有するので、不織布の形態
安定性が向上するとともに、接着点を基点としたスプリ
ング作用を発揮して嵩回復性が向上する点で好ましい。
【0010】前記不織布は、後述する測定により得られ
る除重直後の嵩回復率(以下、初期嵩回復率と記す場合
がある)が50%以上、かつ除重24時間後の嵩回復率
(以下、長期嵩回復率と記す場合がある)が85%以上
を満たすことが好ましい。以下、本発明の内容を説明す
る。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明に用いられる第1成分は、
ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂(以下、PTT
と記す場合がある)を含有する成分からなり、PTTホ
モ樹脂、下記に示すPTT共重合樹脂、あるいはPTT
と他のポリエステル系樹脂とのブレンドであってもよ
く、捲縮性複合繊維としたときの乾熱収縮率を低く抑え
て、所望の波線状捲縮および/または螺旋状捲縮を得ら
れる範囲で、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸等の
酸成分や、1,4ブタンジオール、1,6ヘキサンジオ
ール等のグリコール成分、ポリテトラメチレングリコー
ル、ポリオキシメチレングリコール等が10mass%以下
共重合されていてもよいし、PET、PBTなど他のポ
リエステル系樹脂を50mass%以下でブレンドしてもよ
い。前記共重合成分が、10mass%を超えると、曲げ弾
性率が小さくなるため好ましくない。一方、他のポリエ
ステル系樹脂のブレンド率が50mass%を超えると、ブ
レンドした他のポリエステル系樹脂の性質に近づくため
好ましくない。
【0012】前記PTTの極限粘度[η]は、0.4〜
1.2が好ましい。より好ましくは、0.5〜1.1で
ある。極限粘度[η]を上記範囲とすることにより、生
産性に優れ、嵩弾性に優れた複合繊維を得ることができ
る。ここでいう極限粘度[η]とは、35℃のo−クロ
ロフェノール溶液として、オストワルド粘度計により測
定した、下記式(数1)に基づいて求められる値であ
る。
【数1】 ただし、 ηr:純度98%以上のo−クロロフェノールで溶解し
た試料の希釈溶液における35℃での粘度を同一温度で
測定した上記溶剤全体の濃度で除した値。 C:上記溶液100ml中のグラム単位による溶質重量
値) 極限粘度が0.4未満であると、樹脂の分子量が低すぎ
るため、紡糸性に劣るだけでなく、繊維強度も低く、実
用性に乏しい。極限粘度が1.2を超えると、樹脂の分
子量が大きくなって溶融粘度が高くなりすぎるため、単
糸切れ等が発生し良好な紡糸が難しくなり好ましくな
い。
【0013】前記PTTの融点としては、180℃〜2
50℃であることが好ましい。より好ましくは、200
℃〜240℃である。ここでいう融点とは、JIS−K
−7122に準じてDSC法により測定される融点のこ
とを示す。融点が180℃未満であると、耐候性が低下
したり、あるいは得られた複合繊維の曲げ弾性率が小さ
くなり過ぎる恐れがあり、融点が250℃を超えると、
押し出し機など紡糸時の溶融温度を高くしなければなら
ず、樹脂の分解による紡糸安定性が低下する恐れがあ
る。
【0014】また、前記PTTには、必要に応じて、各
種の添加剤、例えば、帯電防止剤、顔料、艶消し剤、熱
安定剤、光安定剤、難燃剤、抗菌剤、滑剤、可塑剤、柔
軟剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤など本発明
の目的および効果を損なわない範囲で用途等に応じて混
合することができる。
【0015】次に、本発明に用いられる第2成分は、ポ
リオレフィン系樹脂を含有する成分であり、例えば、ポ
リプロピレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポ
リエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密
度ポリエチレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリブ
テン−1樹脂、及びそれらの共重合樹脂、アクリル酸、
メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、及び
それらのエステル、酸無水物より少なくとも一種以上を
共重合したもの、グラフト重合したもの、エラストマー
などを1種、または2種以上用いることができる。ま
た、本発明の作用を損なわない範囲であれば、上記ポリ
オレフィン系樹脂以外に他の樹脂を混合してもよく、例
えば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂などを
30mass%を超えない範囲で混合してもよい。
【0016】前記ポリオレフィン系樹脂を熱融着成分と
して利用する場合、ポリオレフィン系樹脂の融点は、前
記第1成分の融点よりも20℃以上低い温度であること
が好ましい。より好ましくは、第1成分の融点よりも3
0℃以上低い温度である。ポリオレフィン系樹脂の融点
と第1成分の融点との融点差が20℃未満であると、不
織布の熱融着加工時に、第1成分も熱による影響を受け
てへたりを生じて、嵩高性および嵩回復性が低下する恐
れがある。
【0017】前記ポリオレフィン系樹脂のうち、不織布
にしたときの柔軟性、嵩高性、嵩弾性など本発明の目的
および効果を発揮するためには、高密度ポリエチレン樹
脂(以下、HDPEと記す場合がある)、エチレン−プ
ロピレン共重合樹脂(以下、EPと記す場合がある)、
エチレン−プロピレン−ブテン三元共重合樹脂(以下、
EPBと記す場合がある)が好ましい。HDPE、E
P、EPBのメルトフローレート(MFR)は、1〜1
00g/10minであることが好ましい。より好ましくは、
10〜50g/10minである。なお、ここでいうMFR
は、ASTM−D−1238により、HDPEは190
℃、EP、EPBは230℃で、21.2N(2.16
kgf)で測定される繊維製造前の樹脂のMFRを示
す。MFRが1g/10min未満であると、溶融粘度が高す
ぎるため紡糸性に劣り、MFRが100g/10minを超え
ると、繊維製造中に繊維間融着が生じる恐れがある。
【0018】また、前記ポリオレフィン系樹脂には、本
発明の目的および効果を損なわない範囲で、各種の添加
剤、例えば、帯電防止剤、顔料、艶消し剤、熱安定剤、
光安定剤、難燃剤、抗菌剤、滑剤、可塑剤、柔軟剤、酸
化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤等いずれか一種類以
上含まれていてもよい。
【0019】本発明の捲縮性複合繊維は、前記PTTを
含有する第1成分と、前記ポリオレフィン系樹脂を含有
する第2成分からなり、繊維断面において第2成分が繊
維表面の少なくとも20%を占めた構造である。繊維断
面において第2成分の占める割合が繊維表面の20%未
満であると、熱融着不織布を作製する際に第2成分を熱
融着させたとき、不織布強力が低く、実用に耐えられな
い恐れがある。より好ましい繊維断面における第2成分
の占める割合は、50〜100%である。
【0020】また本発明の捲縮性複合繊維は、第1成分
の重心位置が繊維の重心位置からずれた構造を有する。
図1に本発明の捲縮性複合繊維の繊維断面の一例を示
す。第1成分(1)の重心位置(3)における繊維の重
心位置(4)からのずれの割合(以下、偏心率と記す場
合がある。)は、複合繊維の繊維断面を電子顕微鏡など
で拡大撮影し、第1成分(1)の重心位置(3)をC1
とし、複合繊維の重心位置(4)をCfとし、複合繊維
の半径(5)をrfとしたとき、下記式(数2)で示す
数値をいう。
【数2】 第1成分(1)の重心位置(3)が繊維の重心位置
(4)からずれている繊維断面としては、図1に示す偏
心芯鞘型、あるいは並列型であることが好ましい形態で
ある。場合によっては、多芯型であっても多芯部分が集
合して繊維の重心位置からずれて存在しているものでも
可能である。特に、偏心芯鞘型の繊維断面であると、熱
処理時に容易に所望の波線状捲縮および/または螺旋状
捲縮を発現させることができるの点で最も好ましい。偏
心芯鞘型複合繊維の偏心率は、5〜50%であることが
好ましい。より好ましい偏心率は、7〜30%である。
また、第1成分の繊維断面における形態は、円形以外
に、楕円形、Y形、X形、井形、多角形、星形などの異
形であってもよく、複合繊維の繊維断面における形態
は、円形以外に、楕円形、Y形、X形、井形、多角形、
星形などの異形、あるいは中空形であってもよい。
【0021】さらに、前記複合繊維は、第2成分の融点
をTm(℃)としたとき、Tm−3(℃)において下記
の範囲を満たす波線状捲縮および螺旋状捲縮から選ばれ
た少なくとも一種の捲縮を有しており、Tm−3(℃)
における乾熱収縮率が3%以下を満たすものである。 (1)0.8<L<5 (2)0.4<H/L<0.9 L:捲縮の一山間の長さ(mm) H:捲縮の山の高さ(mm) 図2に本発明の捲縮性複合繊維が捲縮発現したときの捲
縮形態を示す。本発明でいう波線状捲縮(6)とは、図
2(a)に示すような捲縮の山部が湾曲したものを指
し、螺旋状捲縮(7)とは、図2(b)に示すような捲
縮の山部が螺旋状に湾曲したものを指し、図2(c)に
示すような波線状捲縮と螺旋状捲縮とが混在した捲縮
(8)も含む概念である。図3に示すような捲縮の山が
鋭角である、いわゆる鋸歯状捲縮(9)のままである
と、不織布としたときの圧縮に対する面弾性、いわゆる
スプリング効果に劣り、特に十分な初期嵩回復性が得ら
れないからである。
【0022】また、図2(a)に示すように、本発明で
いう捲縮の一山間の長さL(10)は、捲縮の凸部から
となりの凸部までの距離のことをいう。捲縮の山の高さ
H(11)は、捲縮の凸部からとなりの凹部までの捲縮
の凹凸間の深さの距離のことをいう。そして、前記捲縮
の一山間の長さL(10)と前記捲縮の山の高さH(1
1)は、次のようにして測定する。まず、捲縮性複合繊
維の単繊維群を適量準備し、例えばカード機を用いるな
ど公知の方法で開繊して、約5g程度をできるだけシー
ト状(ウェブ状)になるようにして採取する。次いで、
シート状(ウェブ状)の繊維群を第2成分の融点をTm
(℃)としたとき、Tm−3(℃)の温度に調整した電
気オーブンにて(循環式のものでも構わない)30秒間
熱処理をし、熱処理後の単繊維を任意10本採取し、ス
ライドガラスにのせ、捲縮形状が変わらないように、繊
維が一直線上になるようにした後、カバーガラスをのせ
捲縮を平面上にした後、捲縮を顕微鏡にて観察し、その
10本のL(10)とH(11)を測定し、その平均値
をいう。なお、本発明では、スライドガラスをのせる
際、捲縮が図2(b)のように螺旋状となっている場合
は螺旋を解くこととする。
【0023】前記Lは、0.8<L<5であり、好まし
くは、1<L<4である。より好ましくは、1.2<L
<3である。Lが0.8未満であると、捲縮の山が小さ
すぎるため、得られる不織布の嵩高性に乏しくなるだけ
でなく、不織布の比容積が小さくなるため柔らかな触感
が得られなくなる。Lが5を超えると、嵩回復性におけ
る重要なファクターである単繊維のスプリング効果が働
きにくく、特に薄目付の不織布を作製した場合その傾向
が顕著になる。
【0024】前記H/Lは、0.4<H/L<0.9で
あり、好ましくは0.5<H/L<0.85である。よ
り好ましくは、0.6<H/L<0.85である。H/
Lが0.4未満であると、捲縮率が小さすぎ、つまり捲
縮の山が平べったいものであるため、単繊維のスプリン
グ効果が弱まり、嵩回復性が劣ったものとなる。H/L
が0.9を超えると、捲縮率が大きすぎ、つまり捲縮の
山が深くなりすぎるため、これも単繊維のスプリング効
果が弱まり、嵩回復性が劣ったものとなる。得られる不
織布の嵩高性に乏しくなり、特に嵩回復性が悪くなる。
【0025】また、前記複合繊維のTm−3(℃)にお
ける乾熱収縮率は、3%以下である。好ましくは、1%
以下である。単繊維の乾熱収縮率は、以下のようにして
測定する。 [乾熱収縮率]単繊維群を準備し、トータル繊度が約1
11dtexとなるように単繊維の本数を調整して束状にす
る。次いで束状単繊維群の先に2.5gを荷重を吊る
し、荷重を吊るした状態での繊維の長さ(S0)を測定
する。次いで、0.8sec/℃の速度で加熱していき、
所定の温度まで上げたときの繊維の長さ(S1)を測定
し、下記式で算出して、乾熱収縮率とした。 乾熱収縮率=(S0―S1)×100/S0 乾熱収縮率が3%を超えると、熱処理をして捲縮を発現
させる際に収縮を伴って、不織布自体が収縮を引き起こ
し、不織布工程性および不織布の地合の悪化を引き起こ
すだけでなく、過剰に捲縮発現する恐れがあり、不織布
にしたときに伸縮性をも発現し、用途によっては使用で
きない恐れがある。
【0026】本発明の捲縮性複合繊維の単繊維繊度は、
特に限定されないが0.5〜150dtexが好ましい。よ
り好ましくは、1〜30dtexであり、最も好ましくは、
2〜10dtexである。例えば、衛生材料の表面材など用
途に用いる場合であれば、1〜7dtexが好ましく、クッ
ション材などの用途に用いる場合であれば、4〜20dt
exが好ましい。
【0027】前記捲縮性複合繊維は、以下のように製造
することができる。まず、ポリトリメチレンテレフタレ
ート系樹脂を含有する第1成分と、ポリオレフィン系樹
脂を含有する第2成分として、繊維断面において第2成
分が繊維表面の少なくとも20%を占め、第1成分の重
心位置が繊維の重心位置からずれるように配置された複
合型ノズル、例えば偏心芯鞘型複合ノズルを用いて、第
1成分を紡糸温度240〜330℃、第2成分を紡糸温
度200〜300℃で溶融紡糸し、引取速度100〜1
500m/minで引き取り、紡糸フィラメントを得る。次
いで、延伸温度を40℃以上、第2成分の融点未満の温
度で、延伸倍率1.8倍以上で延伸処理を施す。より好
ましい延伸温度の下限は、第1成分のガラス転移点以上
である。より好ましい延伸温度の上限は、90℃以下で
ある。より好ましい延伸倍率の下限は、2倍以上であ
る。より好ましい延伸倍率の上限は、4倍以下である。
延伸倍率が1.8倍未満であると、加熱したときに波線
状捲縮および/または螺旋状捲縮が発現し難く、不織布
にしたときに十分な嵩高性が得られないだけでなく、繊
維自体の剛性も小さくなり、カード通過性などの不織布
工程性に劣るからである。また、このとき前記延伸時の
前後において必要に応じて90〜130℃の乾熱、湿
熱、蒸熱等の雰囲気下でアニーリング処理を施してもよ
い。
【0028】次いで、必要に応じて繊維処理剤を付与す
る前または後に、スタッファボックス式捲縮機など公知
の捲縮機を用いて捲縮数5個/25mm以上、25個/25mm以
下の鋸歯状捲縮を付与する。鋸歯状捲縮の捲縮数が5個
/25mm未満であると、カード通過性が低下し、捲縮数が
25個/25mmを超えると、カード通過性が低下するだけ
でなく、捲縮発現後の捲縮数が多くなって嵩回復性に悪
影響を及ぼす恐れがある。さらに、前記鋸歯状捲縮を付
与した後、90〜130℃の乾熱、湿熱、あるいは蒸熱
の雰囲気下でアニーリング処理を施される。具体的に
は、繊維処理剤を付与した後に鋸歯状捲縮を付与し、9
0〜130℃の乾熱雰囲気下でアニーリング処理と同時
に乾燥処理を施すことが、工程を簡略化することがで
き、好ましい。アニーリング処理が90℃未満である
と、乾熱収縮率が大きくなる傾向であり、得られる不織
布の地合が乱れたり、生産性が低下したりする恐れがあ
る。上記方法により得られた複合繊維は、主として、図
4に示すような捲縮数7個/25mm以上、25個/25mm以下
の鋸歯状捲縮と波線状捲縮が混在した捲縮(12)、あ
るいは鋸歯状捲縮と螺旋状捲縮が混在した捲縮を採るこ
とが、後述するカード工程性を低下させることなく、嵩
高な不織布を得ることができ、好ましい。そして、所望
の繊維長に切断されて、第2成分の融点をTm(℃)と
したときTm−3(℃)において所望の範囲を満たす波
線状捲縮および/または螺旋状捲縮を有し、Tm−3
(℃)における乾熱収縮率が3%以下である捲縮性複合
繊維が得られる。
【0029】そして、本発明の不織布は、上記のように
して得られた捲縮性複合繊維を少なくとも30mass%含
有する。含有量が30mass%未満であると、柔らかな風
合いであり、初期嵩回復性、長期嵩回復性ともに優れ
た、特に頻繁に荷重のかかる用途に適した不織布が得ら
れないからである。本発明の不織布を構成する繊維ウェ
ブ形態としては、パラレルウェブ、セミランダムウェ
ブ、ランダムウェブ、クロスレイウェブ、クリスクロス
ウェブ、エアレイウェブなどが挙げられる。
【0030】前記繊維ウェブは、必要に応じて、ニード
ルパンチ処理あるいは水流交絡処理が施された後、熱処
理される。熱処理の手段としては、特に限定はされない
が、本発明の捲縮性複合繊維の機能を十分に発揮させる
のであれば、熱風貫通式熱処理機、熱風上下吹き付け式
熱処理機、赤外線式熱処理機など風圧など圧力のあまり
かからない熱処理機を用いることが好ましい。また、熱
処理温度としては、捲縮性複合繊維の波線状捲縮および
/または螺旋状捲縮が下記の形状となる温度範囲に設定
すればよく、例えば、Tm−10(℃)〜Tm+10
(℃)の範囲で設定するとよい。 (1)0.8<L<5 (2)0.4<H/L<0.9 L:捲縮の一山間の長さ(mm) H:捲縮の山の高さ(mm) 熱処理温度がTm−10(℃)未満であると、捲縮の発
現が不十分となる恐れがあり、熱処理温度がTm+10
(℃)を超えても、捲縮発現状態に大差がないからであ
る。特に、捲縮性複合繊維の第2成分を溶融させて、不
織布を構成する繊維同士を熱融着させる場合であれば、
Tm(℃)〜Tm+40(℃)の範囲で設定するとよ
い。繊維同士を熱融着させることにより、捲縮性複合繊
維同士および他の構成繊維と捲縮性複合繊維とが部分的
に接着点を有するので、不織布の形態安定性が向上する
とともに、接着点を基点としたスプリング作用を発揮し
て嵩回復性が向上する点で好ましい。熱融着させる場合
の熱処理温度が高いのは、第2成分の融着力を向上させ
るためであり、Tm+40(℃)を超えると、第1成分
が熱の影響でへたる恐れがある。
【0031】特に、前記条件により繊維同士を熱融着さ
せた不織布は、柔らかな風合いを有するとともに、初期
嵩回復性、長期嵩回復性ともに優れた不織布となり、下
記の測定により得られる初期嵩回復率が50%以上、か
つ長期嵩回復率が85%以上を満たす不織布が得られ
る。 [嵩回復率]合計の目付が約1000g/m2となるように
10cm角に切断した不織布を必要な枚数準備し、重ね合
わせて初期合計厚み(T0)を測定する。重ね合わせた
不織布の上に10cm角、9.8kPa荷重の重りを載せ
て、常温雰囲気下で24時間荷重をかけ、24時間後荷
重を取り除き、除重直後の重ね合わせた不織布の合計厚
み(T1)、および除重24時間後の合計厚み(T2)を
測定し、不織布の嵩回復率を下記式により算出し、それ
ぞれ初期嵩回復率、長期嵩回復率とする。 初期嵩回復率(%)=(T1/T0)×100 長期嵩回復率(%)=(T2/T0)×100 前記初期嵩回復率および前記長期嵩回復率を満たすこと
により、例えば、紙おむつや椅子などのクッション材な
どの用途に用いた場合、面圧力がかかっても、へたり難
く、嵩高感が持続するという効果を奏する。
【0032】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説
明するが、本発明は実施例などにより何ら限定されるも
のではない。
【0033】[実施例1]第1成分として、極限粘度
0.93、融点220℃であるPTT、第2成分として
MFR12、融点(Tm)が130℃であるHDPE
(日本ポリケム(株)製、HE480)を用い、芯(第
1成分)/鞘(第2成分)の複合比(容積比)を5/5
とし、芯成分を偏芯させた700孔を有する公知の芯鞘
型複合ノズルを用いて、両成分の紡糸温度をそれぞれ2
70℃として溶融押出し、8dtexの紡糸フィラメントを
得た。このとき偏心率は25%であった。得られた紡糸
フィラメントを80℃の温水中で3倍に延伸し、4.4
dtexの延伸フィラメントとし、繊維処理剤を付与した。
次いで、このフィラメントにスタフィンボックス型クリ
ンパーにて鋸歯状捲縮が約10個/25mmとなるように捲
縮処理を施した後、110℃に設定した熱風貫通型乾燥
機にてアニーリング処理とともに乾燥させて、50mmの
繊維長に切断し、捲縮性複合繊維を得た。このときの捲
縮状態は、L=1.63、H/L=0.59の波線状捲
縮と鋸歯状捲縮が混在していた。そして、得られた複合
繊維をTm−3℃(127℃)で30秒間熱処理をした
ときの捲縮状態は、L=1.48、H/L=0.81の
波線状捲縮および螺旋状捲縮が発現していた。Tm−3
℃(127℃)における乾熱収縮率は0%であった。
【0034】[実施例2]第2成分をMFR25、融点
(Tm)138℃であるEP共重合樹脂(出光石油化学
(株)製、Y2045GP)を使用した以外は、実施例
1と同様の方法で、捲縮性複合繊維を得た。このときの
捲縮状態は、L=3.01、H/L=0.31の波線状
捲縮と鋸歯状捲縮が混在していた。そして、得られた複
合繊維をTm−3℃(142℃)で30秒間熱処理をし
たときの捲縮状態は、L=2.25、H/L=0.61
の波線状捲縮および螺旋状捲縮が発現していた。Tm−
3℃(142℃)における乾熱収縮率は0%であった。
【0035】[比較例1]第1成分として、MFR2
0、融点162℃であるPP(日本ポリケム(株)製、
SA1H)を使用した以外は、実施例1と同様の方法
で、捲縮性複合繊維を得た。このときの捲縮状態は、L
=3.13、H/L=0.24の波線状捲縮と鋸歯状捲
縮が混在していた。そして、得られた複合繊維をTm−
3℃(127℃)で30秒間熱処理をしたときの捲縮状
態は、L=1.90、H/L=0.46の波線状捲縮お
よび螺旋状捲縮が発現していた。Tm−3℃(127
℃)における乾熱収縮率は0%であった。
【0036】[比較例2]第1成分として、極限粘度
0.64、融点270℃であるPET(東レ(株)製、
T200E)を使用し、芯成分の紡糸温度を300℃と
した以外は、実施例1と同様の方法で、捲縮性複合繊維
を得た。このときの捲縮状態は、L=2.19、H/L
=0.39の波線状捲縮と鋸歯状捲縮が混在していた。
そして、得られた複合繊維をTm−3℃(127℃)で
30秒間熱処理をしたときの捲縮状態は、L=1.7
6、H/L=0.70の波線状捲縮および螺旋状捲縮が
発現していた。Tm−3℃(127℃)における乾熱収
縮率は0%であった。
【0037】[比較例3]第1成分として、極限粘度
0.75、融点228℃であるPBT(ポリプラスチッ
クス(株)製、400FP)を使用した以外は、実施例
1と同様の方法で、捲縮性複合繊維を得た。このときの
捲縮状態は、L=2.18、H/L=0.47の波線状
捲縮と鋸歯状捲縮が混在していた。そして、得られた複
合繊維をTm−3℃(127℃)で30秒間熱処理をし
たときの捲縮状態は、L=1.07、H/L=0.53
の波線状捲縮および螺旋状捲縮が発現していた。Tm−
3℃(127℃)における乾熱収縮率は0%であった。
【0038】[比較例4]クリンパーにて、捲縮数が3
5個/25mmになるように捲縮を施したこと以外は、実施
例1と同様の方法で、捲縮性複合繊維を得た。このとき
の捲縮状態は、L=0.71、H/L=0.51の波線
状捲縮と鋸歯状捲縮が混在していた。そして、得られた
複合繊維をTm−3℃(127℃)で30秒間熱処理を
したときの捲縮状態は、L=0.75、H/L=0.7
1の波線状捲縮および螺旋状捲縮が発現していた。Tm
−3℃(127℃)における乾熱収縮率は0%であっ
た。
【0039】[比較例5]ノズルを同芯円状に組んだこ
と以外は、実施例1と同様の方法で、捲縮性複合繊維を
得た。このときの捲縮状態は、L=1.80,H/L=
0.36で鋸歯状捲縮のままであった。そして、得られ
た複合繊維をTm−3℃(127℃)で30秒間処理し
た時の捲縮状態は、L=1.87、H/L=0.37で
鋸歯状捲縮のままであった。Tm−3℃(127℃)に
おける乾熱収縮率は0%であった。
【0040】[比較例6]実施例1の紡糸フィラメント
を1.5倍で延伸処理した以外は、実施例1と同様の方
法で、捲縮性複合繊維を得た。このときの捲縮状態は、
L=1.87,H/L=0.30で鋸歯状捲縮のままで
あった。そして、得られた複合繊維をTm−3℃(12
7℃)で30秒間処理した時の捲縮状態は、L=1.7
0、H/L=0.28でほとんどが鋸歯状捲縮として残
存していた。Tm−3℃(127℃)における乾熱収縮
率は1.7%であった。
【0041】[比較例7]アニーリング処理を70℃で
実施したこと以外は、実施例1と同様の方法で、捲縮性
複合繊維を得た。このときの捲縮状態は、L=2.2
5、H/L=0.45の波線状捲縮と鋸歯状捲縮が混在
していた。そして、得られた複合繊維をTm−3℃(1
27℃)で30秒間熱処理をしたときの捲縮状態は、L
=1.40、H/L=0.83の波線状捲縮および螺旋
状捲縮が発現していた。Tm−3℃(127℃)におけ
る乾熱収縮率は9.5%であった。
【0042】実施例1〜2、および比較例1〜7の捲縮
性複合繊維を以下の方法で不織布化し、嵩高性および圧
縮柔らかさを以下の方法で測定した。ただし、比較例7
の捲縮性複合繊維を用いた不織布は、熱処理した際に急
激なウェブ収縮を伴い、地合の乱れた不織布しか得られ
なかった。
【0043】[嵩高性]捲縮性複合繊維100mass%を
パラレルカードに掛けウェブを採取し、熱風循環式の熱
処理機を用い、加工温度134℃(実施例2のみ145
℃)で30秒間熱処理して鞘成分を熱融着させ、目付約
100g/m2の不織布とした。得られた不織布を縦横それ
ぞれ10cm角に切り、1000g/m2にしたときの高さ
0(cm)を測定した。
【0044】[圧縮柔らかさ]前記目付約100g/m2
不織布を、カトーテック(株)製の圧縮試験機(KES
−G5)にて、2cm2の円盤を1mm/secの速度で、不織
布厚みが1mmになるまで圧縮したときの荷重(N)で評
価した。
【0045】実施例1〜2、比較例1〜6の単繊維およ
び不織布の性能を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】表1に示すように、実施例1および2の不
織布は、比較例1と比べ高い初期嵩、初期嵩回復性、お
よび長期嵩回復性を有しており、比較例2と比べ高い長
期嵩回復性、および圧縮柔らかさを有しており、比較例
3と比べ高い初期嵩回復性を有していた。また、比較例
4〜6と比べ高い初期嵩回復性、および長期嵩回復性を
有していた。
【0048】
【発明の効果】本発明の捲縮性複合繊維は、ポリトリメ
チレンテレフタレート系樹脂を第1成分とし、ポリオレ
フィン系樹脂を第2成分とした重心の位置をずらした複
合繊維とし、第2成分の融点近傍における乾熱収縮率を
低く抑えるとともに、捲縮形状を所望の範囲の波線状捲
縮および螺旋状捲縮から選ばれた少なくとも一種の捲縮
に調整することにより、不織布にしたとき、柔らかな風
合いであり、初期嵩回復性、長期嵩回復性ともに優れ
た、特に頻繁に荷重のかかる用途に適した繊維が得られ
る。特に、第2成分を熱融着成分として用いると、繊維
同士が熱融着されて、繊維間のスプリング効果が最大限
発揮され、かつポリトリメチレンテレフタレート系樹脂
の持つ曲げ強さが小さく、曲げ回復力が大きく、曲げ弾
性が小さくて、柔軟であるという特徴が最大限に発揮さ
れる。
【0049】前記捲縮性複合繊維を用いた不織布は、ス
プリング効果、およびポリトリメチレンテレフタレート
系樹脂の性質が最大限発揮されるから、従来の捲縮性複
合繊維で得られた不織布と比較して、優れた圧縮柔軟
性、優れた初期嵩はもちろんのこと、優れた初期嵩回復
性および長期嵩回復性を共に有する不織布を得ることが
可能である。かかる不織布は、衛生材料、包装材、ウェ
ットティッシュ、フィルター、ワイパー等に好適であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の捲縮性複合繊維の繊維断面の一例を示
す。
【図2】本発明の捲縮性複合繊維が捲縮発現したときの
捲縮形態を示す。
【図3】通常の複合繊維の捲縮形態を示す。
【図4】本発明の捲縮性複合繊維の捲縮形態を示す。
【符号の説明】
1.第1成分 2.第2成分 3.第1成分の重心位置C1 4.複合繊維の重心位置Cf 5.複合繊維の半径rf 6.波線状捲縮 7.螺旋状捲縮 8.波線状捲縮と螺旋状捲縮が混在した捲縮 9.鋸歯状捲縮 10.捲縮の一山間の長さL 11.捲縮の山の高さH 12.鋸歯状捲縮と波線状捲縮が混在した捲縮
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 和気坂 弘二 兵庫県加古郡播磨町古宮877番地 ダイワ ボウポリテック株式会社播磨研究所内 Fターム(参考) 4L041 BA02 BA05 BA22 BA59 CA08 CA37 4L047 AA21 AA27 AB09 BA05 CB02 CC03 CC07 CC16

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂
    を含有する第1成分と、ポリオレフィン系樹脂を含有す
    る第2成分から構成され、繊維断面において第2成分が
    繊維表面の少なくとも20%を占め、第1成分の重心位
    置が繊維の重心位置からずれている複合繊維からなり、
    前記複合繊維が第2成分の融点をTm(℃)としたと
    き、Tm−3(℃)において下記の範囲を満たす波線状
    捲縮および螺旋状捲縮から選ばれた少なくとも一種の捲
    縮を有しており、Tm−3(℃)における乾熱収縮率が
    3%以下である捲縮性複合繊維。 (1)0.8<L<5 (2)0.4<H/L<0.9 L:捲縮の一山間の長さ(mm) H:捲縮の山の高さ(mm)
  2. 【請求項2】 複合繊維が、偏心率5〜50%の偏心芯
    鞘型複合繊維である請求項1記載の捲縮性複合繊維。
  3. 【請求項3】 ポリオレフィン系樹脂が、高密度ポリエ
    チレン、エチレン−プロピレン共重合体、およびエチレ
    ン−ブテン−1−プロピレン三元共重合体から選ばれた
    少なくとも1種である請求項1または2に記載の捲縮性
    複合繊維。
  4. 【請求項4】 ポリトリメチレンテレフタレート系樹脂
    を含有する第1成分と、ポリオレフィン系樹脂を含有す
    る第2成分からなり、繊維断面において第2成分が繊維
    表面の少なくとも20%を占め、第1成分の重心位置が
    繊維の重心位置からずれるように配置された複合型ノズ
    ルを用いて溶融紡糸して得られた紡糸フィラメントを、
    延伸倍率1.8倍以上で延伸処理を施し、5個/25mm以
    上、25個/25mm以下の鋸歯状捲縮を付与した後、90
    〜130℃の雰囲気下でアニーリング処理を施して、第
    2成分の融点をTm(℃)としたときTm−3(℃)に
    おいて下記の範囲を満たす波線状捲縮および螺旋状捲縮
    から選ばれた少なくとも一種の捲縮を有し、Tm−3
    (℃)における乾熱収縮率を3%以下とする捲縮性複合
    繊維の製造方法。 (1)0.8<L<5 (2)0.4<H/L<0.9 L:捲縮の一山間の長さ(mm) H:捲縮の山の高さ(mm)
  5. 【請求項5】 延伸温度が、第1成分のポリトリメチレ
    ンテレフタレート系樹脂のガラス転移点以上、第2成分
    の融点未満である請求項4記載の捲縮性不織布の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜3のいずれかに記載の捲縮性
    複合繊維を少なくとも30mass%含有する不織布。
  7. 【請求項7】 捲縮性複合繊維の第2成分が溶融して、
    構成する繊維同士が熱融着されている請求項6記載の不
    織布。
  8. 【請求項8】 下記の測定により得られる除重直後の嵩
    回復率(以下、初期嵩回復率という)が50%以上、か
    つ除重24時間後の嵩回復率(以下、長期嵩回復率とい
    う)が85%以上を満たす請求項6または7に記載の不
    織布。 [嵩回復率]合計の目付が約1000g/m2となるように
    10cm角に切断した不織布を必要な枚数準備し、重ね合
    わせて初期合計厚み(T0)を測定する。重ね合わせた
    不織布の上に10cm角で9.8kPa荷重の重りを載せて
    常温雰囲気下で24時間荷重をかけ、24時間後荷重を
    取り除き、除重直後の重ね合わせた不織布の合計厚み
    (T1)、および除重24時間後の合計厚み(T2)を測
    定し、不織布の嵩回復率を下記式により算出し、それぞ
    れ初期嵩回復率、長期嵩回復率とする。 初期嵩回復率(%)=(T1/T0)×100 長期嵩回復率(%)=(T2/T0)×100
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