JP5418936B2 - 顕在捲縮性複合繊維及びこれを用いた繊維集合物 - Google Patents

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Description

本発明は、優れた柔軟性を有し、弾力性に優れ、常温、高温下での嵩回復性が高く、初期嵩の大きい不織布等を得ることができる顕在捲縮性複合繊維及びこれを用いた繊維集合物に関する。
衛生材料、包装材、ウェットティッシュ、フィルター、ワイパー等に用いられる不織布、或いは硬綿、椅子等に用いられる不織布、成形体など様々な用途において、低融点成分の少なくとも一部が繊維表面に露出し、低融点成分よりも融点が高い高融点成分からなる熱融着性複合繊維を用いた熱接着不織布が使用されている。特に硬綿、椅子等に使用するクッション材、建築物の断熱材等に広く使用されてきた発泡ウレタンの代替材料となる嵩弾性の優れた不織布、すなわち厚み方向での嵩回復性に優れる不織布と、それに適した繊維に対する要求が大きくなっている。発泡ウレタンの代替材料が強く求められる理由として、発泡ウレタンは、その原料となる薬品や、生産する際に使用する薬品の取り扱いが難しいこと、生産時に環境に与える影響の大きいフロンが排出されること、使用後の廃棄が難しいことなどが挙げられる。また、得られた発泡ウレタンの特性として、圧縮の際、圧縮初期に硬く感じるという問題があったり、通気性が乏しく蒸れやすかったりする。それに加えて、吸音性が十分でなかったり、黄変し易いという欠点も指摘されている。したがって、嵩回復性に優れる不織布について様々な検討がなされている。
下記特許文献1〜2は、融解ピーク温度が200℃以上のポリエステル成分と、融解ピーク温度が180℃以下のポリエーテルエステルブロック共重合体成分、いわゆるエラストマー成分とからなる複合繊維を提案している。鞘成分にエラストマー成分を使用することによって、圧縮変形を受けた際に、接着部分の自由度、及び耐久性が向上するために、嵩回復性の高い繊維が得られる。
下記特許文献3は、ポリトリメチレンテレフタレート(以下PTTと略すことがある)系ポリマーを含有する第一成分と、ポリオレフィン系ポリマー、特に高密度ポリエチレンを含有する第二成分から構成され、繊維断面において第一成分の重心位置が繊維の重心位置からずらすことで捲縮を顕在化させた、顕在捲縮性複合繊維を提案している。この顕在捲縮性複合繊維は、第一成分に曲げ弾性が大きく、かつ曲げ硬さの小さいポリマーを使用し、更に、繊維断面を偏心とし、捲縮形状を波形状とすることによって、嵩回復性が高く、更に初期嵩の大きい不織布が得られる。
下記特許文献4は、芯成分にポリエチレンテレフタレート(以下PETと略すことがある)、又はPETとポリブチレンテレフタレート以下PBTと略すことがある)とのブレンド、若しくはPETとPTTとのブレンドポリマーを使用し、鞘成分にエチレン・α−オレフィン共重合体を使用した潜在捲縮性複合繊維と不織布を提案している。
特開平4−240219号公報 特開平5−247724号公報 特開2003−3334号公報 特開2006−233381号公報
前記特許文献1〜2では、鞘成分にポリエステルエーテルエラストマーを使用しており、このポリマーがゴム状弾性を有し、接着点の変形に対する自由度が大きいため、嵩回復性の高い不織布を得ようとしている。しかし、このポリエステルエーテルエラストマーは硬質なポリエステルと軟質なエーテルとの共重合体であり、耐熱性が低い軟質成分を含むため、熱により柔らかくなり易く、熱加工時に不織布の嵩が減少する、いわゆるへたりが生じる。その結果、鞘成分にポリエステルエーテルエラストマーを使用した複合繊維は、不織布にしたときの初期嵩が小さく、高密度な不織布しか得られず、用途が限定されるという問題があった。また、熱が加わった状態で圧縮された後、あるいは繰り返し圧縮された後の不織布は、繊維同士の接着点および繊維自体が破壊されたり、折れ曲がったり、繊維強度が低下するなど、元の不織布に比べて不織布硬さが大きく低下するという問題があった。
前記特許文献3では、芯・鞘のポリマー、及び繊維断面を特定のものとし、且つ、捲縮状態を特定の形状にすることによって、嵩回復性の高い不織布を得ようとするものであるが、初期の不織布厚み(初期嵩)が大きいものの、圧縮時の硬さを感じることがある。また、嵩回復性、特に除重直後の初期嵩回復性が十分とはいえない場合もあり、用途が限定されるという問題があった。
前記特許文献4は、潜在捲縮性複合繊維であり、収縮して立体捲縮を発現するため、不織布の収縮性及び伸縮性に富むが、嵩回復性については十分とはいえないという問題があった。
したがって、従来技術では柔軟性に富み、弾力性と嵩回復性、また、繰り返し圧縮した際における耐久性が高く、さらに高温下での使用時における弾力性、嵩回復性、その耐久性が高い複合繊維及び不織布は得られていなかった。
本発明は、前記従来の問題を解決するため、優れた柔軟性を有し、弾力性に優れ、初期嵩の大きい不織布等を得ることができる顕在捲縮性複合繊維及びこれを用いた繊維集合物を提供する。
本発明の顕在捲縮性複合繊維は、メタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンを含む第一成分と、PTTを50質量%以上含むポリエステルから成る第二成分で構成される複合繊維であって、繊維断面から見たとき、前記第一成分は前記複合繊維表面の少なくとも20%を占めており、前記第二成分の重心位置は前記複合繊維の重心位置からずれており、前記複合繊維は、波形状捲縮及び螺旋状捲縮から選ばれる少なくとも一種の捲縮を有していることを特徴とする。また本発明の繊維集合物は、前記顕在捲縮性複合繊維を30質量%以上含有していることを特徴とする。
本発明の顕在捲縮性複合繊維は、メタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンを含むポリマーを第一成分とし、PTTを50質量%以上含むポリエステル樹脂を第二成分とする顕在捲縮性複合繊維とすることにより、柔軟性に富み、弾力性及び嵩回復性が高い繊維集合物を得ることができる。
本発明の顕在捲縮性複合繊維を30質量%以上含む繊維集合物は、従来の不織布に比べて特に優れた柔軟性、常温での嵩回復性を有することができる。
本発明の顕在捲縮性複合繊維は、第一成分と第二成分を含む複合繊維であって、前記第一成分は、メタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンを含む。メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状ポリエチレンは、融着させた際の接着強度が高いので、繊維集合物を熱加工した際、繊維同士の接着点をより強固に融着させることができ、得られる繊維集合物の耐破壊性を高くすることができる。また、メタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンは、低密度成分、低分子量成分の含有量が少ないため、耐熱性の高く、高温時での嵩回復性、弾力性が高い繊維集合物を得ることができる。加えてメタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンは、分子量分布の幅が狭く、分子鎖の長さが均一なポリマーであることから、独特の柔軟性も有し、柔軟性のよい繊維集合物を得ることができる。
前記第二成分は、PTTを50質量%以上含むポリエステルである。PTTは、その分子構造がジグザグの構造であり、このポリマーを繊維にした場合、従来のポリエステル(例えばPET、PBTなど)を紡糸して製造した繊維と比較して伸縮性、形状安定性、柔軟性に優れた繊維となる。
前記第一成分、前記第二成分は、複合繊維を繊維断面から見たとき、前記第一成分が前記複合繊維表面の少なくとも20%を占めており、かつ前記第二成分の重心位置が前記複合繊維の重心位置からずれるように各成分を配置される。例えば、第二成分のPTTを芯成分とし、その外側(鞘成分)にメタロセン触媒を用いて重合された直鎖状ポリエチレンが配置される。
上記の断面構造を有し、捲縮形状を波形状及び/又は螺旋状捲縮の立体捲縮を発現させて顕在化することにより、圧縮の際、スプリング効果を発揮するものとなり、本発明の顕在捲縮性複合繊維を使用した不織布は嵩回復性に優れた繊維集合物となる。
以下さらに好ましい例を説明する。まず、本発明に用いられるメタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンは、JIS−K−7121に準じて測定したDSC曲線より求められる融解ピーク温度が105〜140℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは110〜135℃である。融解ピーク温度が105〜140℃の範囲であると、柔軟性、嵩回復性が良好である。
また、使用する目的に応じて、適した融解ピーク温度を有する直鎖状ポリエチレンを選択することもできる。例えば、嵩高性、高温での嵩回復性を高くする場合、融解ピーク温度が120℃〜140℃、より好ましくは、125℃〜140℃の直鎖状ポリエチレンが好ましい。より柔軟性を高くする場合、融解ピーク温度105℃〜125℃、より好ましくは、105℃〜120℃の直鎖状ポリエチレンが好ましい。
前記メタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンについて、JIS−K−7210に準じて、測定温度190℃において測定したメルトフローレート(MFR(190℃):測定温度190℃、荷重21.18N(2.16kgf))は、1〜50g/10分の範囲であることが好ましい。より好ましいMFR(190℃)は5〜40g/10分である。MFR(190℃)が1〜50g/10分の範囲であると、メタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンが高分子量となるため、耐熱性が良好であり、高温時の嵩回復性が高く、好ましい。
前記メタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンにおける重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Q値:Mw/Mn)は、5以下であることが好ましい。より好ましいQ値は2以上4以下であり、さらにより好ましくは2.5〜3.5である。Q値を5以下であると、直鎖状ポリエチレンの分子量分布の幅が狭いという特徴を有しているといえ、このQ値の範囲を満たすメタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンを第一成分に使用することで、上記の性質を有する顕在捲縮性複合繊維を得ることができる。
前記直鎖状ポリエチレンの密度は、0.91〜0.95g/cm3であることが好ましい、より好ましくは密度が0.915〜0.945g/cm3の範囲である。メタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンの密度が上記範囲内にあることで、本願発明の顕在捲縮性複合繊維は耐熱性が高いものとなり、ウェブにして熱加工した際にもへたりが生じることがなく、高温下での使用における嵩回復性も良好なものとなる。
メタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンでは、密度が大きくなると融解ピーク温度も上昇する。本発明では、使用する目的に応じて、適した密度を有する直鎖状ポリエチレンを選択することができる。例えば、嵩高性、高温での嵩回復性を高める場合、密度が0.925〜0.95g/cm3の直鎖状ポリエチレンが適しており、より好ましくは0.93〜0.95g/cm3、さらにより好ましくは0.935〜0.95g/cm3の直鎖状ポリエチレンが好ましい。より柔軟性の高める場合、密度が0.91〜0.935g/cm3の直鎖状ポリエチレンが適しており、より好ましくは0.91〜0.925g/cm3の直鎖状ポリエチレンが好ましい。
第一成分に使用するメタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンにおいて、その曲げ弾性率も重要である。ポリマーの曲げ弾性率は、柔軟性を示す指標であり、曲げ弾性率の低い直鎖状ポリエチレンを第一成分のポリマーとして選択することにより、第二成分に使用されるポリエステルの中では比較的柔軟なポリマーであり、曲げ弾性率の低いPTTの性質を阻害することがなく、良好な弾力性、嵩回復性を有する繊維集合物を得ることができる。メタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンの曲げ弾性率は、200〜1000MPaであることが好ましい。より好ましくは、300〜900MPaであり、特に初期嵩、耐熱性の高い繊維集合物にしたいのであれば、600〜900MPaであることが好ましい。
第一成分のポリマーはメタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンを含むポリマーである。第一成分にさらにブレンドできるポリマーとしては、嵩高性及び嵩回復性を阻害しない範囲で、例えばポリプロピレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリブテン−1樹脂、及びそれらの共重合樹脂、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、及びそれらのエステル、酸無水物より少なくとも一種以上を共重合したもの、グラフト重合したもの、エラストマーなどを1種、または2種以上用いることができる。第一成分における前記直鎖状ポリエチレンの含有量は50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上。最も好ましくはメタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンのみである。また、本発明の作用を損なわない範囲であれば、上記ポリオレフィン系樹脂以外に他の樹脂を混合してもよく、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂などを50質量%を超えない範囲で混合してもよい。
第二成分は、PTTを50質量%以上含むポリエステルであり、曲げ強さ、曲げ弾性に優れたものにすることが好ましい。本発明で好ましく用いられるPTTは、PTTホモ樹脂、下記に示すPTT共重合樹脂、あるいはPTTと他のポリエステル系樹脂とのブレンドであってもよく、顕在捲縮性複合繊維としたときの乾熱収縮率を低く抑えて、所望の波形状捲縮及び/又は螺旋状捲縮を得られる範囲で、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸等の酸成分や、1,4ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール等のグリコール成分、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール等が10質量%以下共重合されていてもよい。前記共重合成分は、割合が10質量%を超えないものとする。前記共重合成分の割合が10質量%を超えると、曲げ弾性率が小さくなるため好ましくない。
また、第二成分のPTTに混合することができるポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸等のポリエステルが使用可能である。PTT以外の樹脂を混合する場合は、混合する他のポリエステル樹脂の割合が50質量%以下とする。PTT以外のポリエステル樹脂の割合が50質量%よりも多くなると、混合した他のポリエステル系樹脂の性質に近づく、または、PTTの柔軟性、伸縮性が十分に発揮されなくなることがある。本発明において好ましくは、第二成分は、PTTを80質量%以上含むポリエステルであり、最も好ましくは、第二成分に含まれるのはPTTのみである。
前記PTTの極限粘度[η]は、0.4〜1.2が好ましい。より好ましくは、0.5〜1.1である。極限粘度[η]を上記範囲とすることにより、生産性に優れ、嵩弾性に優れた複合繊維を得ることができる。ここでいう極限粘度[η]とは、35℃のo−クロロフェノール溶液として、オストワルド粘度計により測定した、下記式(数1)に基づいて求められる値である。
Figure 0005418936
(ただし、ηr:純度98%以上のo−クロロフェノールで溶解した試料の希釈溶液における35℃での粘度を同一温度で測定した上記溶剤全体の濃度で除した値。C:上記溶液100ml中のグラム単位による溶質重量値。)
極限粘度が0.4未満であると、樹脂の分子量が低すぎるため、紡糸性に劣るだけでなく、繊維強度も低く、実用性に乏しい。極限粘度が1.2を超えると、樹脂の分子量が大きくなって溶融粘度が高くなりすぎるため、単糸切れ等が発生し良好な紡糸が難しくなり好ましくない。
前記PTTのJIS−K−7121に準じて測定したDSC曲線より求められる融解ピーク温度は180℃〜240℃であることが好ましい。より好ましくは200℃〜235℃である。融解ピーク温度が180〜240℃の範囲であると、耐候性が高く、得られる複合繊維の曲げ弾性率を高くすることができる。
また、前記PTTには、必要に応じて各種の添加剤、例えば、帯電防止剤、顔料、艶消し剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、抗菌剤、滑剤、可塑剤、柔軟剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤などを本発明の目的及び効果を損なわない範囲で用途等に応じて混合することができる。
複合比(第二成分/第一成分)は、8/2〜4/6(容積比)が好ましい。より好ましくは7/3〜45/55、最も好ましくは6/4〜5/5である。第二成分は、主として嵩回復性に寄与し、第一成分は、主として不織布強力および不織布の柔らかさに寄与する。その複合比が8/2〜4/6であると、不織布強力および柔らかさと、嵩回復性を両立することができる。複合比は、第一成分が多くなると、不織布強力は上がるが、得られる不織布が硬くなったり、嵩回復も悪くなる傾向になる。一方、第二成分が多くなりすぎると接着点が少なくなりすぎ、不織布強力が小さくなったり、これも嵩回復性も悪くなる傾向となる。
本発明においては、第二成分の重心位置は複合繊維の重心位置からずれている。図1に本発明の一実施形態における複合繊維の繊維断面を示す。第二成分(2)の周囲に第一成分(1)が配置され、第一成分(1)が複合繊維(10)表面の少なくとも20%を占めている。これにより第一成分(1)は熱接着時に表面が溶融する。第二成分(2)の重心位置(3)は複合繊維(10)の重心位置(4)からずれており、ずれの割合(以下、偏心率と記載する場合がある。)は、複合繊維の繊維断面を電子顕微鏡などで拡大撮影し、第二成分(2)の重心位置(3)をC1とし、顕在捲縮性複合繊維(10)の重心位置(4)をCfとし、顕在捲縮性複合繊維(10)の半径(5)をrfとしたとき、下記式(数2)で示す数値をいう。
Figure 0005418936
第二成分(2)の重心位置(3)が繊維の重心位置(4)からずれている繊維断面としては、図1に示す偏心芯鞘型、あるいは並列型であることが好ましい形態である。場合によっては、多芯型であっても多芯部分が集合して繊維の重心位置からずれて存在しているものでも可能である。特に、偏心芯鞘型の繊維断面であると、容易に所望の波形状捲縮及び/又は螺旋状捲縮を発現させることができる点で好ましい。偏心芯鞘型複合繊維の偏心率は、5〜50%であることが好ましい。より好ましい偏心率は、7〜30%である。また、第二成分の繊維断面における形態は、円形以外に、楕円形、Y形、X形、井形、多角形、星形などの異形であってもよく、複合繊維(10)の繊維断面における形態は、円形以外に、楕円形、Y形、X形、井形、多角形、星形などの異形、あるいは中空形であってもよい。
図2に本発明の一実施形態における顕在捲縮性複合繊維の捲縮形態を示す。本発明でいう波形状捲縮とは、図2Aに示すような捲縮の山部が湾曲したものを示す。螺旋状捲縮とは、図2Bに示すような捲縮の山部が螺旋状に湾曲したものを示す。図2Cに示すような波形状捲縮と螺旋状捲縮とが混在した捲縮も本発明に含まれる。図3に示すような通常の機械捲縮の場合は、捲縮の山が鋭角である、いわゆる鋸歯状捲縮のままであると、不織布としたときの初期嵩を大きくすることができない。さらに、圧縮に対する面弾性、いわゆるスプリング効果に劣り、特に十分な初期嵩回復性が得られない。また、図4に示すように機械捲縮の鋭角な捲縮と、図2Aに示す波形状捲縮が混在した捲縮も本発明に含まれる。本発明においては、波形状捲縮と螺旋状捲縮含めて、機械捲縮と区別して立体捲縮という。
本発明においては、特に図2Cに示す波形状捲縮と螺旋状捲縮とが混在した捲縮であることが、カード通過性と初期嵩および嵩回復性を両立できる点で好ましい。
次に、本発明の顕在捲縮性複合繊維の製造方法について説明する。前記顕在捲縮性複合繊維は、以下のように製造することができる。まず、メタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンを含む第一成分と、PTTを50質量%以上含むポリエステルを第二成分として、繊維断面において第一成分が繊維表面の少なくとも20%を占め、第二成分の重心位置が繊維の重心位置からずれるように配置された複合型ノズル、例えば偏心芯鞘型複合ノズルを用いて、第二成分を紡糸温度240〜330℃、第一成分を紡糸温度200〜300℃で溶融紡糸し、引取速度100〜1500m/minで引き取り、紡糸フィラメントを得る。次いで、延伸温度をPTTのガラス転移点以上、直鎖状ポリエチレンの融解ピーク温度未満の温度で、延伸倍率1.8倍以上で延伸処理を施す。より好ましい延伸温度の下限は、PTTのガラス転移点より10℃高い温度である。より好ましい延伸温度の上限は、90℃である。延伸温度がPTTのガラス転移点未満であると、PTTの結晶化が進みにくいため、熱収縮が大きくなったり、嵩回復性が小さくなったりする傾向がある。延伸温度が直鎖状ポリエチレンの融解ピーク温度以上であると、繊維同士が融着するからである。より好ましい延伸倍率の下限は2倍である。より好ましい延伸倍率の上限は、4倍である。延伸倍率が1.8倍未満であると、延伸倍率が低すぎるため、波形状捲縮および/または螺旋状捲縮が発現した繊維を得ることが難しく、初期嵩が小さくなるだけでなく、繊維自体の剛性も小さくなりため、カード通過性などの不織布工程性に劣ったり、嵩回復性も低下したりする傾向がある。また、このとき前記延伸時の前後において必要に応じて50〜115℃の繊維同士が融着しない温度で乾熱、湿熱、蒸熱等の雰囲気下でアニーリング処理を施してもよい。
次いで、必要に応じて繊維処理剤を付与する前または後に、スタッファボックス式捲縮機など公知の捲縮機を用いて捲縮数5個/25mm以上、25個/25mm以下の捲縮を付与する。捲縮機を通過した後の捲縮形状は、鋸歯状捲縮及び/又は波形状捲縮であるとよい。捲縮数が5個/25mm未満であると、カード通過性が低下すると共に、不織布の初期嵩や嵩回復性が悪くなる傾向がある。一方、捲縮数が25個/25mmを超えると、捲縮数が多すぎるためにカード通過性が低下し、不織布の地合が悪くなるだけでなく、不織布の初期嵩も小さくなる恐れがある。
さらに、前記捲縮機にて捲縮を付与した後、50〜115℃の乾熱、湿熱、あるいは蒸熱の雰囲気下でアニーリング処理を施すとよい。具体的には、繊維処理剤を付与した後に捲縮機にて捲縮を付与し、50〜115℃の乾熱雰囲気下でアニーリング処理と同時に乾燥処理を施すと工程を簡略化することができるため、好ましい。アニーリング処理が50℃未満であると、乾熱収縮率が大きくなる傾向であり、得られる不織布の地合が乱れたり、生産性が低下したりする恐れがある。また、アニーリング工程が乾燥工程も兼ねている場合、アニーリング温度が50℃未満であると、繊維の乾燥が不十分となる可能性がある。このような方法により、立体捲縮が発現して顕在捲縮性複合繊維が得られる。
上記方法により得られた顕在捲縮性複合繊維は、主として、図2に示すような捲縮数5個/25mm以上、25個/25mm以下の波形状捲縮と螺旋状捲縮から選ばれる少なくとも一種の捲縮を有するので、後述するカード工程性を低下させることなく、嵩高な不織布を得ることができ、好ましい。そして、所望の繊維長に切断されて、顕在捲縮性複合繊維が得られる。より好ましい捲縮数は、10〜20個/25mmである。
また、本発明の顕在捲縮性複合繊維は、波形状捲縮と螺旋状捲縮から選ばれる少なくとも一種の捲縮を有しており、言い換えれば複合繊維に立体捲縮が発現して顕在捲縮をなしている。繊維の状態では、完全に捲縮が発現して顕在捲縮としてもよいし、少し捲縮の発現しろ(繊維に熱を加えたときに捲縮発現を生じる)を残した顕在捲縮であってもよい。ただし、繊維に熱を加えたとき(例えば、後述する不織布に加工する温度を加えたとき)に捲縮数が25個/25mmを超えるほど捲縮が発現すると、初期嵩及び嵩回復性が低下するため、好ましくない。
本発明の顕在捲縮性複合繊維におけるJIS−L−1015に準じて下記の条件で測定される乾熱収縮率は、5%以下であることが好ましい。より好ましい乾熱収縮率は、3%以下である。乾熱収縮率が5%を超えると、熱処理して不織布とする際に、収縮を伴って不織布自体が収縮を引き起こし、不織布工程性および不織布の地合いの悪化を引き起こす。また、熱収縮に伴って捲縮が過剰に発現する恐れがあり、捲縮数が多くなりすぎたりして、不織布の初期嵩や、嵩回復性が悪くなることがある。なお、本発明の顕在捲縮性複合繊維の乾熱収縮率は、JIS−L−1015に準じて、初荷重0.45mN/dtex(50mg/de)、温度120℃で15分間乾熱処理して収縮率を測定した。
本発明の顕在捲縮性複合繊維を使用して、柔軟性、嵩回復性の高い繊維集合物を作製する場合、本発明の顕在捲縮性複合繊維を少なくとも30質量%含有する繊維集合物とする。好ましくは本発明の顕在捲縮性複合繊維の含有量が繊維集合物全体に対して50質量%以上である。混綿できる繊維としては合成繊維、半合成繊維、天然繊維のいずれであっても構わないが、得られる繊維集合物の弾性、耐久性を高いものにするためにはポリエステル、ポリアミドなどの比較的硬い繊維が好ましい。本発明の顕在捲縮性複合繊維の柔軟性、嵩回復性を十分に発揮できる繊維集合物の形態としては不織布であることが好ましい。
本発明の不織布を構成する繊維ウェブ形態としては、パラレルウェブ、セミランダムウェブ、ランダムウェブ、クロスレイウェブ、クリスクロスウェブ、エアレイウェブなどが挙げられる。前記繊維ウェブは、熱処理により第一成分が接着することにより、さらに高い効果を発揮する。そして、前記繊維ウェブは熱処理前に必要に応じて、ニードルパンチ処理あるいは水流交絡処理が施されてもよい。熱処理の手段としては、特に限定はされないが、本発明の顕在捲縮性複合繊維の機能を十分に発揮させるのであれば、熱風貫通式熱処理機、熱風上下吹き付け式熱処理機、赤外線式熱処理機など風圧など圧力のあまりかからない熱処理機を用いることが好ましい。また、熱処理温度としては、顕在捲縮性複合繊維の波形状捲縮及び/又は螺旋状捲縮が下記の形状となる温度範囲に設定すればよく、例えば、メタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンの融解ピーク温度をTmとしたとき、Tm(℃)〜Tm+40(℃)の範囲で設定することが好ましい。特に、前記顕在捲縮性複合繊維の少なくともメタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンを溶融させて、構成する繊維同士を熱融着させると、より強固な繊維同士の交点を形成することができ、嵩回復性が高くなり好ましい。より好ましい熱処理の温度範囲はTm(℃)〜Tm+20(℃)である。
前記不織布は、25℃において、下記の測定により得られる圧縮嵩減少率が65%以上を満たすことが好ましい。より好ましい圧縮嵩減少率は、70%以上であり、最も好ましい圧縮嵩減少率は、80%以上である。
[圧縮嵩減少率(%)]
合計の目付が約1000g/m2となるように10cm角に切断した不織布を必要枚数重ね合わせて初期合計厚み(T0)を測定し、重ね合わせた不織布の上に10cm角で9.8kPa荷重の重りを載せて25℃雰囲気下で荷重を掛け、1分後に重ね合わせた不織布の合計厚み(T1)を測定し、不織布の圧縮嵩減少率を下記式にて算出した。
圧縮嵩減少率(%)=((T0−T1)/T0)×100
圧縮嵩減少率が前記範囲を満たすことで、本願発明の不織布特有の柔らかさを有していると言え、肌に直接触れる衛材等への使用した場合、硬さを感じることなく使用することができる。
前記不織布は、25℃において、下記の測定により得られる初期嵩回復率が60%以上、かつ長期嵩回復率が90%以上を満たすことが好ましい。より好ましい初期嵩回復率は、70%以上、かつ長期嵩回復率は95%以上である。
[嵩回復率]
合計の目付が約1000g/m2となるように10cm角に切断した不織布を必要枚数重ね合わせて初期合計厚み(T0)を測定し、重ね合わせた不織布の上に10cm角で9.8kPa荷重の重りを載せて25℃雰囲気下で24時間荷重を掛け、24時間後荷重を取り除き、除重直後の重ね合わせた不織布の合計厚み(T1)、及び除重24時間後の合計厚み(T2)を測定し、不織布の嵩回復率を下記式にて算出し、それぞれ初期嵩回復率、長期嵩回復率とする。
初期嵩回復率(%)=(T1/T0)×100
長期嵩回復率(%)=(T2/T0)×100
初期嵩回復率が60%以上、および長期嵩回復率が90%以上を満たす不織布は、クッション材、車両用等の内装材、ブラジャー等のパッド材などの繰り返し厚み方向に圧力の加わる用途、ウレタン発泡体に置き換わる用途に好適である。
前記不織布は、ニードルパンチにより交絡されている不織布であり、JIS−K−6401−5.4(硬さ試験)に準じて測定される不織布の硬さを測定し、圧縮柔らかさH0(N)とする。本発明の不織布において、圧縮柔らかさH0(N)は1.5N以下を満たすことが好ましい。より好ましい圧縮柔らかさは、1.2N以下である。不織布の圧縮柔らかさがこの値を超えると、その不織布を用いて不織布製品を作製した場合、使用時に硬さを感じるおそれがある。さらに、この不織布の硬さH0(N)の値を用い、JIS−K−6401−5.5(圧縮残留ひずみ試験)に準じて圧縮残留ひずみ試験を行い、圧縮残留ひずみを測定した。同様に、ニードルパンチにより交絡されている不織布を作成し、JIS−K−6401−5.6(繰り返し圧縮残留ひずみ試験)に準じて繰り返し圧縮残留ひずみ試験を行い、繰り返し圧縮残留ひずみを測定した。
前記圧縮残留ひずみ及び/又は繰り返し圧縮残留ひずみを満足する不織布は、本発明の顕在捲縮性複合繊維を含むニードルパンチ不織布、又は不織布中の繊維の配列方向が厚さ方向に対して垂直、斜め方向のいずれかに配列した不織布であって、本発明の顕在捲縮性複合繊維のメタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンを溶融させて繊維交点を接着させることにより得ることができる。圧縮残留ひずみが35%以下、および繰り返し圧縮残留ひずみが10%以下を満たす不織布は、クッション材、車両用等の内装材、ブラジャー等のパッド材などの繰り返し厚み方向に圧力の加わる用途、ウレタン発泡体に置き換わる用途に好適である。
以下実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお各特性は以下の方法で測定した。
(1)使用したポリマーの物性
前記において、IVは前記極限粘度である。MFRはJIS−K−7210に準じて、230℃、21.18N(2.16kgf)で測定されるメルトフローレートである。また、MFR(190℃)はJIS−K−7210に準じて、190℃、21.18N(2.16kgf)で測定されるポリマーのメルトフローレートである。
Q値は、次の条件で測定した。
I.使用する分析装置
(a)クロス分別装置
ダイヤインスツルメンツ社製CFC T−100(CFCと略す)
(b)フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析
FT−IR、パーキンエルマー社製 1760X
CFCの検出器として取り付けられていた波長固定型の赤外分光光度計を取り外して代わりにFT−IRを接続し、このFT−IRを検出器として使用する。CFCから溶出した溶液の出口からFT−IRまでの間のトランスファーラインは1mの長さとし、測定の間を通じて140℃に温度保持する。FT−IRに取り付けたフローセルは光路長1mm、光路直径5mmφのものを用い、測定の間を通じて140℃に温度保持する。
(c)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
CFC後段部分のGPCカラムは、昭和電工社製AD806MSを3本直列に接続して使用する。
II.CFCの測定条件
(a)溶媒:オルトジクロルベンゼン(ODCB)
(b)サンプル濃度:1mg/mL
(c)注入量:0.4mL
(d)カラム温度:140℃
(e)溶媒流速:1mL/分
III.FT−IRの測定条件
CFC後段のGPCから試料溶液の溶出が開始した後、以下の条件でFT−IR測定を行い、GPC−IRデータを採取する。
(a)検出器:MCT
(b)分解能:8cm-1
(c)測定間隔:0.2分(12秒)
(d)一測定当たりの積算回数:15回
IV.測定結果の後処理と解析
分子量分布は、FT−IRによって得られる2945cm-1の吸光度を使用して求める。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式([η]=K・Mα)には以下の数値を用いる。
(a)標準ポリスチレンを使用する較正曲線作成時
K=0.000138、α=0.70
(b)ポリプロピレンのサンプル測定時
K=0.000103、α=0.78
なお、上記GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定するが、別の機種により測定したとき、2005年度プラスチック成形材料商取引便覧(化学工業日報社、2004年8月30日発行)に記載の、日本ポリプロ社製「MG03B」と同時に測定し、MG03Bが3.5を示すときの値をブランク条件とし、条件を調整して測定することもできる。
(2)各測定方法
[樹脂 曲げ弾性率]JIS−K−7171に準じて測定する。
[乾熱収縮率]JIS−L−1015に準じて測定する。初荷重0.45mN/dtex(50mg/de)、温度120℃で15分間乾熱処理して収縮率を測定する。
[面積収縮率]熱加工前のカードウェブを縦:100mm、横:100mmに切断し、所定の温度にて熱加工した際の、面積減少率を測定する。
[25℃嵩回復率]合計の目付が約1000g/m2となるように100mm角に切断した不織布を必要枚数準備し、重ね合わせて無荷重下で初期厚み(T0)を測定する。重ね合わせた不織布の上に100mm角、9.8kPa荷重の重りを乗せて、25℃で24時間荷重を掛け、24時間後荷重を取り除き、除重直後の重ね合わせた不織布の厚み(T1)、及び除重24時間後の厚み(T2)を測定し、不織布の嵩回復率を下記式により算出する。
初期嵩回復率(%)=(T1/T0)×100
長期嵩回復率(%)=(T2/T0)×100
厚みの測定は、何れも無荷重下とする。
[70℃嵩回復率]温度を70℃とし、荷重を掛ける時間を4時間とした以外は上記と同じとした。
[見掛け密度]JIS−K−6401−5.3(見掛け密度試験)に準じて測定した。
[硬さ]JIS−K−6401−5.4(硬さ試験)に準じて測定した。
[圧縮残留ひずみ]JIS−K−6401−5.5(圧縮残留ひずみ試験)に準じて測定した。
[繰り返し圧縮残留ひずみ]JIS−K−6401−5.6(繰り返し圧縮残留ひずみ試験)に準じて測定した。
[実施例1〜2、比較例1〜3]
1.繊維製造条件
(A)使用したポリマー(略語の説明は次のとおり)。
(1)PTT(シェル社製「CORTERRA9240」融解ピーク温度228℃、ガラス転移点45℃、IV値0.92、曲げ弾性率2760MPa)
(2)PET(東レ社製「T200E」、融解ピーク温度255℃、IV値0.64、曲げ弾性率3110MPa)
(3)直鎖状PE(1)(宇部丸善ポリエチレン(株)製メタロセン触媒使用「ZM078」、密度0.941g/cm3、融解ピーク温度128℃、MFR(190℃)30g/10分、Q値:3.0、曲げ弾性率800MPa)
(4)直鎖状PE(2)=(宇部丸善ポリエチレン(株)製メタロセン触媒使用「420SD」、密度0.918g/cm3、融解ピーク温度118℃、MFR(190℃)7g/10分、Q値:3.0、曲げ弾性率350MPa)
(5)高密度ポリエチレン(HDPE)=(日本ポリエチレン(株)製チーグラー・ナッタ触媒使用「HE481」、密度0.963g/cm3、融解ピーク温度130℃、MFR(190℃)20g/10分、Q値:5.6、曲げ弾性率1100MPa)
(B)押し出し温度:芯成分ポリマー(PTT)を280℃、鞘成分ポリマーを250℃、ノズル口金温度を270℃とした。
(C)ノズル孔数:600ホール
(D)複合比:芯/鞘=55/45(容積比)
(E)未延伸繊度:12dtex
(F)延伸温度:湿式70℃
(G)延伸倍率:2.8倍
(H)捲縮:12〜15個/25mm
(H)アニーリング温度(乾燥温度):100℃×15分
(I)製品繊度×繊維長:5.6dtex・51mm
2.不織布製造条件
各顕在捲縮性複合繊維100質量%をパラレルカードに掛けウェブを採取し、熱風循環式の熱処理機を用い、表1〜2に示す加工温度で30秒間熱処理して鞘成分を熱融着させ、目付約100g/m2の不織布とした。
3.ニードルパンチ不織布の製造条件
各潜在捲縮性複合繊維100質量%をパラレルカードに掛け、クロスレイヤーを用いてクロスレイウェブを作製した。次いで、クロスレイウェブに、フォスターニードル社製円錐ブレードを用いて、針深度5mm、表1に示すペネ数(表裏とも)でニードルパンチ処理を施した。得られたニードルパンチ不織布を熱風循環式の熱処理機を用い、加工温度で30秒間熱処理して鞘成分を熱融着させ、不織布とした。得られた不織布の圧縮残留ひずみ、繰り返し圧縮残留ひずみを測定した結果を表1に示す。
また、メタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンの密度、融点、熱加工温度の違いによる嵩回復性の変化を測定するため、処理温度を変化させた試料を作製し嵩回復性等の測定を行った。処理温度を変化させた試料における嵩回復性の測定結果を表2に示す。
[実施例1〜2、比較例1〜3]
各条件と得られた結果を表1に示す。
Figure 0005418936
[実施例1〜2、比較例1〜2]
各条件と得られた結果を表2に示す。
Figure 0005418936
表1の測定結果から明らかなとおり、本発明の顕在捲縮性複合繊維を使用して作製した実施例1、2の不織布は、比較例1〜3の不織布と比較して圧縮柔らかさ、25℃、での初期、長期嵩回復率がよいことが確認できた。特に、密度が高い直鎖状ポリエチレンを第一成分に使用した実施例1では、25℃、70℃での嵩回復性が特に高く、高温下でも高い嵩回復性を発揮することが確認できた。実施例1〜2、比較例1〜3の不織布について、圧縮柔らかさを比較すると実施例1〜2が各比較例と比較して数値が大きく減少していることから、本発明の顕在捲縮性複合繊維を使用した実施例の不織布が特に柔軟性が高いことを示している。
表1、2の結果から、実施例1、2の不織布は比較例2に比べ、圧縮柔らかさ、常温での初期嵩回復、長期嵩回復に優れていた。これは比較例2の第一成分のポリマーが、実施例1,2において、第一成分に使用されているポリマーよりも曲げ弾性率が高い(硬い)HDPEであるため、PTTの伸縮性、柔軟性を十分に生かすことができていないためと考えられる。この結果から実施例1〜2は使用時に肌に触れ、加重が頻繁にかかる用途に使用しても硬さを感じることなく、良好な嵩回復性を奏することが可能である。
また、前記第一成分の樹脂による繊維全体の特性の低下は、高温時になると顕著に表れると推察され、表1において、常温では実施例と遜色ない嵩回復性を示した比較例2だが、高温での嵩回復性は実施例に大きく劣っていた。これに対し本発明の実施例のなかでも特に実施例1は高い柔軟性、嵩回復性を示し、かつ高温下において安定した嵩回復性を示した。
表2は、メタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンについて、密度と熱加工温度の違いによる柔軟性、嵩回復性の変化を示す。表2における圧縮柔らかさ、嵩高性の値から、常温においてより柔らかい不織布を得ようとするのであれば、第一成分には、より密度が低い直鎖状ポリエチレンを使用することが好ましく、より嵩の大きな不織布を得ようとするのであれば、第一成分には、より密度が高い直鎖状ポリエチレンを使用することが好ましいことが確認できる。表2の実施例1において、125℃で熱処理を行った試料は熱処理後の試料の圧縮柔らかさが、他の温度で熱処理を行った試料と比較して大きく低下している。これは熱処理を行った温度が使用した直鎖状ポリエチレンの融解ピーク温度よりも低温であり、繊維同士の融着が十分に行われなかったためであると考えられる。高温下での嵩回復性は、密度が高い直鎖状ポリエチレンを使用した顕在捲縮性複合繊維を含む不織布が、同じ温度で熱加工した、密度の低い直鎖状ポリエチレンを使用した顕在捲縮性複合繊維を含む不織布に比べていずれも嵩回復性が高いことが確認できた。このことから、本発明の顕在捲縮性複合繊維において、ポリマーの密度、融解ピーク温度の高い、メタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンを第一成分に選択、使用することで、得られた繊維を使用する繊維集合物の嵩高性や高温でのクッション性を特に向上させることが可能であると言える。
本発明の顕在捲縮性複合繊維は、優れた柔軟性を有し、弾力性に優れ、常温、高温下での嵩回復性が高く、初期嵩の大きい繊維集合物を得ることができる。前記繊維集合物は柔軟性と嵩回復性に特に優れており、使用する際、人体に接触することが予想される衛生材料、化粧品用材料、女性のブラジャーのパッド、肩パッド等の用途に適している。また、熱加工の際の嵩減少(へたり)が小さく、高温下での嵩回復性も良好であることから、耐熱性が要求される分野、例えば車両用クッション材、床暖房用フローリングの裏打ち材等に使用することができる。
図1は本発明の一実施形態における捲縮性複合繊維の繊維断面を示す。 図2A〜Cは、本発明の一実施形態における捲縮性複合繊維の捲縮形態を示す。 図3は従来の機械捲縮の形態を示す。 図4は本発明の別の実施形態における捲縮性複合繊維の捲縮形態を示す
符号の説明
1 第一成分
2 第二成分
3 第二成分の重心位置
4 複合繊維の重心位置
5 複合繊維の半径
10 複合繊維

Claims (6)

  1. 第一成分と第二成分を含む複合繊維であって、
    前記第一成分は、メタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンを80質量%以上含み、
    前記第二成分は、ポリトリメチレンテレフタレートを50質量%以上含むポリエステルであり、
    前記直鎖状ポリエチレンは、JIS−K−7171に準じて測定した曲げ弾性率が200〜1000MPaであり、
    繊維断面から見たとき、前記第一成分は前記複合繊維表面の少なくとも20%を占めており、前記第二成分の重心位置は前記複合繊維の重心位置からずれており、
    前記複合繊維は、繊維の状態で、波形状捲縮及び螺旋状捲縮から選ばれる少なくとも一種の立体捲縮が発現して顕在捲縮をなしており、前記複合繊維の捲縮数は10〜20個/25mmであり、
    JIS−L−1015に基づいて下記の条件で測定される乾熱収縮率が5%以下であることを特徴とする顕在捲縮性複合繊維。
    [乾熱収縮率]
    JIS−L−1015に基づき、初荷重を0.45mN/dtex(50mg/de)とし、温度120℃にて15分間乾熱処理して収縮率を測定する。
  2. 前記直鎖状ポリエチレンは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Q値)が5以下である請求項1に記載の顕在捲縮性複合繊維。
  3. 前記直鎖状ポリエチレンは、JIS−K−7121に準じて測定したDSCより求められる融解ピーク温度が105〜140℃であり、JIS−K−7210に準じて測定したメルトフローレート(MFR(190℃):測定温度190℃、荷重21.18N(2.16kgf))が1〜50g/10分の範囲である請求項1または2に記載の顕在捲縮性複合繊維。
  4. 前記メタロセン触媒を用いて重合した直鎖状ポリエチレンの密度が0.910〜0.950g/cm3である請求項1〜3に記載の顕在捲縮性複合繊維。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の顕在捲縮性複合繊維を少なくとも30質量%含有する繊維集合物。
  6. 前記顕在捲縮性複合繊維の少なくとも直鎖状ポリエチレンが溶融して、構成する繊維同士が熱融着されている請求項5に記載の繊維集合物。
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