JP5273995B2 - ポリプロピレン繊維を含む複合材料および成形体 - Google Patents
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Description
ポリプロピレン繊維の用途の1つとして、有機重合体用の補強繊維としての使用が挙げられる。
しかしながら、ポリプロピレン繊維の耐熱性が不十分で、ポリプロピレン繊維補強ポリオレフィンシートの製造時にポリオレフィンを高温で溶融することができないため、生産速度を十分に高くすることができず、しかもポリプロピレン繊維とポリオレフィン基材との間の接着が不十分であり、生産性の低下、得られるポリプロピレン繊維補強ポリオレフィンシートの強度不足などを招いている。
しかしながら、このポリプロピレン繊維は、吸熱ピーク形状が、ブロードなダブル形状またはシングル形状であって、結晶が不均一であるため、耐熱性が未だ十分に高いとはいえない。
しかしながら、このポリプロピレン繊維では、2つのDSC吸熱ピークのうちで低温側の吸熱ピークがポリプロピレン繊維の耐熱性の指標をなし、しかも吸熱ピーク形状がブロードであって、結晶が不均一であるため、耐熱性が十分ではない。
具体的には、特許文献3〜5、そのうちでも特許文献3に記載されている凹凸の形成方法によって得られるポリプロピレン繊維(特に単繊維繊度が10dtex以下の細繊度ポリプロピレン繊維)では損傷の発生が著しく、そのため当該ポリプロピレン繊維を有機重合体用の補強繊維として用いても、力学的強度に優れる有機重合体とポリプロピレン繊維との複合材料および成形体は得られない。
さらに、本発明の目的は、前記した複合材料からなる、力学的特性、耐熱性および耐久性に優れる成形体を提供することである。
さらに、本発明者は、前記した特定の方法を採用して単繊維繊度が3dtex以下、特に0.1〜3dtexのポリプロピレン繊維を製造することで、繊維表面に、大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に存在した所定の平均間隔および平均高さの凹凸を有し、しかも強度に優れるポリプロピレン繊維を得ることができた。しかもその際に、当該ポリプロピレン繊維における走査示差熱量測定(DSC)による吸熱・融解特性を特定のものにすることで、結晶構造が均一で且つ前記特定の凹凸を有しながら、更に耐熱性にも優れるポリプロピレン繊維を得ることができた。
(1) 有機重合体よりなるマトリックス中にポリプロピレン繊維を含む複合材料であって、前記ポリプロピレン繊維が、アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上のポリプロピレンよりなる、繊維強度が7cN/dtex以上であり、且つ走査示差熱量測定(DSC)による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であるポリプロピレン繊維であることを特徴とする複合材料;
(2) 有機重合体よりなるマトリックス中にポリプロピレン繊維を含む複合材料であって、前記ポリプロピレン繊維が、アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上のポリプロピレンよりなる、繊維強度が7cN/dtex以上であり、且つ単繊維繊度が0.1〜3dtexで、表面に大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に存在してなる平均間隔が6.5〜20μmで平均高さが0.35〜1μmの凹凸を有するポリプロピレン繊維であることを特徴とする複合材料;および、
(3) 有機重合体よりなるマトリックス中にポリプロピレン繊維を含む複合材料であって、前記ポリプロピレン繊維が、アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上のポリプロピレンよりなる、繊維強度が7cN/dtex以上であり、単繊維繊度が0.1〜3dtexで、走査示差熱量測定(DSC)による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であり、表面に大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に存在してなる平均間隔が6.5〜20μmで平均高さが0.35〜1μmの凹凸を有するポリプロピレン繊維であることを特徴とする複合材料;
である。
(4) ポリプロピレン繊維が、短繊維、長繊維、繊維束、糸、織編物、不織布または網の形態である前記(1)〜(3)のいずれかの複合材料;および、
(5) 有機重合体が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂および弾性重合体から選ばれる少なくとも1種の有機重合体である前記(1)〜(4)のいずれかの複合材料;
である。
さらに、本発明は、
(6) 前記(1)〜(5)のいずれかの複合材料からなる成形体である。
本発明の複合材料は、有機重合体よりなるマトリックスと、当該マトリックス中に含まれる上記した特定のポリプロピレン繊維よりなる複合材料である。
本発明の複合材料に用いるポリプロピレン繊維は、アイソタクチックペンタッド分率(IPF)(以下単に「IPF」ということがある)が94%以上のポリプロピレンよりなるポリプロピレン繊維であり、IPFが95〜99%のポリプロピレンからなっていることが好ましく、IPFが96〜99%のポリプロピレンからなることがより好ましい。
ポリプロピレンのIPFが94%未満であると、ポリプロピレン繊維に均一な結晶構造を形成されにくくなって、十分な強度および耐熱性を有する、本発明の複合材料に用いるポリプロピレン繊維が得られなくなる。一方、IPFが99%を超えるポリプロピレンは工業的には量産が困難であるため、コスト面などから実用性が低い。
また、本発明の複合材料に用いるポリプロピレン繊維は、ポリプロピレン繊維を構成するプロピレン系重合体全体でのIPFが前記した値を満たすものであれば、2種類以上のプロピレン単独重合体および/またはプロピレン共重合体を用いて形成された、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型などの複合形態または混合形態を有する複合紡糸繊維または混合紡糸繊維などであってもよい。
ここで、本明細書におけるポリプロピレン繊維の繊維強度(単繊維繊度強度)は、以下の実施例に記載した方法で測定した繊維強度をいう。
本発明の複合材料およびそれからなる成形体は、前記した繊維強度を有するポリプロピレン繊維を用いて形成されていることにより、高い強度を有する。繊維強度が前記よりも小さいポリプロピレン繊維を用いて複合材料および成形体を製造した場合には、複合材料および成形体の強度が不足することがある。一方、繊維強度が13cN/dtexを超えるポリプロピレン繊維は、その製造に当たって、量産性の低い条件を採用する必要があるため、実用面で難がある。
DSC測定による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有する幅の狭い(シャープな)シングル形状をなしていて且つ融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であるポリプロピレン繊維を用いて本発明の複合材料を製造すると、ポリプロピレン繊維が耐熱性に優れていることにより、高温に曝されても溶断や物性低下が生じにくく、引張強度、耐衝撃性、曲げ弾性率、曲げ強度などの力学的特性に優れる複合材料および成形体が得られる。
ここで、本発明におけるDSC測定による前記した「吸熱ピーク形状」および「融解エンタルピー変化量(△H)」は、以下の実施例に記載する方法で行ったDSC測定による吸熱ピーク形状および融解エンタルピー変化量(△H)をいう。
それに対して、本発明で用いる、「DSC測定による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上である」というDSC特性を備えているポリプロピレン繊維は、DSC測定による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有する幅の狭い(シャープな)シングル形状をなしていて、且つ融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であることにより、結晶性が高く、均一な結晶構造をなしており、耐熱性に優れている。
まず、図1は、ポリプロピレン繊維におけるDSC測定による吸熱ピーク形状を模式的に示した図である。
図1において、(a)は、唯一の吸熱ピーク(シングルピーク)を有し、当該シングルピークはシャープでしかも大きなピークをなし、大きな融解エンタルピー変化量(△H)を有する本発明に含まれる本発明のポリプロピレン繊維の吸熱ピーク曲線の代表例を示したものである。
一方、図1において、(b)は従来のポリプロピレン繊維の吸熱ピーク曲線の一例であって、2つの吸熱ピーク(ダブルピーク)を有し、ピークの幅(半価幅)は大きく、融解エンタルピー変化量(△H)は小さい。
また、図1において、(c)は従来のポリプロピレン繊維の吸熱ピーク曲線の他の例であり、吸熱ピークは1個(シングルピーク)ではあるが、融解エンタルピー変化量(△H)は小さい。
次に、図2は、DSC曲線にピーク形状がシングルピークである場合を例に挙げて、本発明で用いるポリプロピレン繊維のDSC測定による吸熱ピークにおける半価幅の求め方を示した図である。
図2において、吸熱ピーク(シングルピーク)の頂点Xから温度軸に下ろした垂線と、吸熱ピークのベースラインとの交点をYとしたときに、線分X−Yを二等分する点をMとし、Mを通り温度軸に平行な直線と吸熱曲線との交点をそれぞれN1およびN2としたときに、線分N1−N2の長さ(温度幅)が本明細書でいう「半価幅(℃)」に相当する。
そして、吸熱ピーク曲線において、吸熱ピークのベースライン(図2を参照)と、当該ベースラインよりも上の吸熱ピーク曲線によって包囲される部分の面積が、本明細書における「融解エンタルピー変化量(△H)」に相当する。
それに対して、本発明の複合材料に用いるポリプロピレン繊維のうち、「DSC測定による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上である」というDSC特性を備えているポリプロピレン繊維は、当該DSC特性を備えていることによって、DSC測定時の昇温速度1〜50℃/分の範囲では、昇温速度が異なっても、その吸熱ピーク曲線は1個の吸熱ピークのみを有する、シャープで大きなシングルピーク形状をなし、高い融解エンタルピー変化量(△H)を有している。そのことは、本発明の複合材料に用いるポリプロピレン繊維のうち、前記したDSC特性を有するポリプロピレン繊維が、均一で高い結晶性を有し、その結果として、高い耐熱性を備えていることを裏付けている。
但し、「DSC測定による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上である」という要件を備えていないポリプロピレン繊維であっても、「IPFが94%以上のポリプロピレンよりなる、単繊維繊度が0.1〜3dtexおよび繊維強度が7cN/dtex以上で、表面に大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に存在してなる平均間隔が6.5〜20μmで平均高さが0.35〜1μmの凹凸を有する」という特性を備えるポリプロピレン繊維を用いて本発明の複合材料および成形体を形成した場合には、ポリプロピレン繊維が前記した特定の凹凸を繊維表面に有していることにより、有機重合体マトリックスへの投錨効果が大きくなって、有機重合体マトリックスとの接着性が向上して、引張強度、耐衝撃性、曲げ弾性率、曲げ強度などの力学的特性に優れる複合材料および成形体を得ることができる。
かかる点から、本発明の複合材料に用いるポリプロピレン繊維は、融解エンタルピー変化量(△H)が125〜165J/gであることが好ましく、130〜165J/gであることがより好ましく、135〜165J/gであることが更に好ましく、140〜165J/gであることが一層好ましい。
ポリプロピレン繊維の繊度(単繊維繊度)が小さ過ぎると、複合材料および成形体を製造する際に、また製造した後に、ポリプロピレン繊維の溶融、断糸などが生じて複合材料および成形体の強度が低下することがある。一方、ポリプロピレン繊維の単繊維繊度が大きすぎると、ポリプロピレン繊維を得るための延伸物性が低下して、高強度で、高度に結晶化したポリプロピレン繊維が得られないことがあり、また当該ポリプロピレン繊維を織編物、不織布、網などの形態にして複合材料に用いる場合に、織編物、不織布、網などが製造しにくくなることがある。
7cN/dtex以上の繊維強度と共に、または7cN/dtex以上の繊維強度および前記した特定のDSC特性と共に、前記した特定の凹凸特性を有するポリプロピレン繊維を用いる場合は、当該凹凸特性を有するポリプロピレン繊維を円滑に製造するために、ポリプロピレン繊維の単繊維繊度は0.1〜3dtexであることが好ましく、0.2〜2.5dtexであることがより好ましく、0.3〜2.4dtexであることが更に好ましい。
そして、本明細書における前記「平均間隔」とは、繊維軸に沿って形成された多数の凹凸(隆起部と非隆起部)のうち、隣り合う2つの隆起部(凸部)の間の間隔(距離)(図3におけるA1−A2,A2−A3,A3−A4,・・・の長さ)の平均値を意味する。
また、前記「平均高さ」は、繊維軸に沿って形成された多数の凹凸(隆起部と非隆起部)のうち、隣り合う2つの非隆起部(凹部)の最小径部分を結ぶ仮想直線(図3におけるB1とB2を結ぶ直線,B2とB3を結ぶ直線,B3とB4を結ぶ直線,・・・)への、当該隣り合う2つの非隆起部(凹部)の間にある隆起部(凸部)の頂点からの垂線の長さ(図3におけるh1,h2,h3,h4,・・・)の平均値を意味する。
ポリプロピレン繊維の繊維軸に沿って形成された前記凹凸の平均間隔および平均高さは、ポリプロピレン繊維を走査型電子顕微鏡などを用いて撮影した写真から求めることができ、本明細書における凹凸の前記平均間隔および平均高さは以下の実施例に記載する方法で求められる値をいう。
前記した特定の凹凸特性を有するポリプロピレン繊維では、その繊度(単繊維繊度)は、0.2〜2.5dtexであることが好ましく、0.3〜2.4dtexであることがより好ましい。
本発明の複合材料および成形体を前記した凹凸特性を有するポリプロピレン繊維を用いて形成する場合には、繊維軸方向に沿って形成された凹凸の平均間隔が6.6〜20μm、特に6.8〜20μmで、平均高さが0.40〜1μm、特に0.45〜1μmであるポリプロピレン繊維を用いることが好ましい。
本発明の複合材料に用いるポリプロピレン繊維は、表面処理を施してなくてもよいし、または複合材料および成形体の用途などに応じて、適当な表面処理剤で表面処理してあってもよい。
そのうちでも、本発明の複合材料に用いるポリプロピレン繊維は、IPFが94%以上のポリプロピレンを溶融紡糸してポリプロピレン未延伸繊維(未延伸糸)を製造し、それを冷却固化した後に、その冷却固化した未延伸ポリプロピレン繊維を特定の条件下で前延伸および後延伸する以下で説明する方法により、円滑に製造することができる。
ポリプロピレンの溶融紡糸および溶融紡糸したポリプロピレン繊維の冷却固化は、通常の方法で行うことができ、一般的にはポリプロピレンを200〜300℃で溶融混練した後、それを220〜280℃の紡糸口金から吐出させ、それに5〜50℃の冷却用気体(空気など)を吹き付けて冷却固化する方法が採用される。
未延伸ポリプロピレン繊維の単繊維繊度は特に制限されず、延伸工程での延伸倍率、最終的に得られるポリプロピレン繊維の用途などに応じて決めることができるが、一般的には0.3〜90dtex、特に1〜60dtexであることが、延伸のしやすさ、強度などの点から好ましい。
一方、溶融紡糸を高紡糸速度で行った場合(一般に紡糸速度が1000〜3500m/分程度の場合)には、溶融紡糸後に冷却固化して得られるポリプロピレン未延伸繊維(未延伸糸)を延伸する際の延伸倍率が低くても(一般に総延伸倍率3.9〜7倍)、溶融紡糸した繊維を冷却固化する段階での配向が高くなるため、結果として繊維強度が7cN/dtex以上で且つ前記したのと同じDS特性を有する強度および耐熱性に優れるポリプロピレン繊維を円滑に製造することができる。
本発明の複合材料に用いるポリプロピレン繊維は、冷却固化したポリプロピレン未延伸繊維(未延伸糸)を、総延伸倍率(前延伸と後延伸の合計延伸倍率)が3.9〜20倍になるようにして、温度120〜150℃および延伸倍率3〜10倍で前延伸した後、温度170〜190℃で、変形速度1.5〜15倍および延伸張力1.0〜2.5cN/dtexの条件下に延伸倍率1.2〜3.0倍で後延伸することによって円滑に製造することができる。
前延伸および/または後延伸を熱風炉を用いて行う場合は、前延伸時の上記温度および後延伸時の上記温度は熱風炉の雰囲気温度をいい、また前延伸および/または後延伸を熱プレートを用いて行う場合は、前延伸時時の上記温度および後延伸時の上記温度は熱プレートの温度をいう。
また、前延伸したポリプロピレン延伸繊維(延伸糸)の後延伸は、1段で行ってもよいし、または多段で行ってもよく、一般的には1段〜5段で行うことが好ましい。
延伸処理を行うに当たっては、前延伸して得られるポリプロピレン延伸繊維(延伸糸)を巻き取らずにそのまま引き続いて後延伸する方法を採用してもよいし、または前延伸して得られるポリプロピレン延伸繊維(延伸糸)を冷却(一般に室温程度)して巻き取った後に再度巻き出して後延伸する方法を採用してもよい。そのうちでも、前延伸して得られるポリプロピレン延伸繊維(延伸糸)を一旦巻き取った後に巻き戻して後延伸する後者の方法が、本発明の複合材料に用いる上記した特性を備えるポリプロピレン繊維をより円滑に得ることができる点から好ましい。
また、後延伸は、前記した条件下で前延伸して得られるポリプロピレン延伸繊維(延伸糸)を、温度(雰囲気温度)が170〜190℃、更には170〜185℃、特に170〜180℃の熱風炉に導入するか、または温度が170〜190℃、更には170〜185℃、特に170〜180℃の熱プレートに接触させて、1段または多段で延伸倍率1.2〜3.0倍、特に1.3〜2.5倍で行うことが好ましい。
熱風炉または延伸プレートを用いて後延伸を行う際には、熱風炉の雰囲気温度または延伸プレート温度を、後延伸処理を施す直前のポリプロピレン繊維のDSC曲線での吸熱開始温度+10℃以上の温度にして後延伸を行うことが好ましい。
前延伸および後延伸の総延伸倍率は3.9〜20倍であることが好ましく、4.5〜11倍であることがより好ましく、4.7〜10.5倍であることが更に好ましい。
また、ポリプロピレン未延伸繊維(未延伸糸)を製造するための溶融紡糸速度をA(m/分)とし、前記した前延伸および後延伸を行った後の総延伸倍率をB(倍)としたときに、A×Bの値が、3000〜17000(m・倍/分)、特に3500〜15000(m・倍/分)の範囲になるようにして、ポリプロピレンの溶融紡糸と前記した前延伸および後延伸を行うと、目的とするポリプロピレン繊維を円滑に製造することができる。
また、前記した前延伸および後延伸の総延伸倍率とは、後延伸工程から排出された直後の繊維(糸)の長さを前延伸工程に導入された未延伸繊維(未延伸糸)の長さで除した値をいう。
後延伸時の変形速度は1.6〜12倍/分であることが好ましく、1.7〜10倍/分であることがより好ましい。
また、後延伸時の延伸張力は、1.1〜2.5cN/dtexが好ましく、1.3〜2.5cN/dtexがより好ましい。
また、後延伸における前記延伸張力は、後延伸における最終段の延伸を行った直後の糸の張力を、張力計を用いて測定する。
ポリプロピレン繊維が短繊維の形態である場合は、本発明の複合材料は、一般に、有機重合体中に上記したポリプロピレン繊維の短繊維を分散、含有する有機重合体組成物(コンパウンド)の形態となる。また、ポリプロピレン繊維が、長繊維、繊維束、糸、織編物、不織布、網などの短繊維以外の形態である場合は、本発明の複合材料は、有機重合体マトリックス中にポリプロピレン長繊維、ポリプロピレン繊維束、ポリプロピレン繊維製の糸、ポリプロピレン繊維製の織編物、不織布、網などが含まれる種々の形態物、例えば、線状、棒状、シート状、板状、管状、ブロック状などの任意の形状をなす、有機重合体含浸物(FRP)などの形態にすることができる。
また、本発明の複合材料および成形体では、ポリプロピレン繊維は、有機重合体マトリックス中に完全に埋没した状態であってもよいし、ポリプロピレン繊維の一部が有機重合体マトリックスから外部に露出した状態であってもよい。ポリプロピレン繊維の一部が有機重合体マトリックスから外部に露出している場合は、その露出の程度は、複合材料および成形体の用途や使用目的などに応じて適宜調節することができる。
(1a)押出機やその他の適当な溶融混合装置(溶融混練装置)を使用して、短繊維状のポリプロピレン繊維と、ポリプロピレン繊維の融点よりも低温で溶融混合する熱可塑性重合体を溶融混合して、当該熱可塑性重合体マトリックス中に短繊維状のポリプロピレン繊維を含む複合材料(熱可塑性重合体組成物、コンパウンド)を製造する方法。
前記(1a)の方法を行うに当たっては、オレフィン系のエマルジョンなどをポリプロピレン繊維に付与しておくと、溶融混合時に繊維ダマの発生などのトラブルが少なくなるので好ましい。本発明で用いる上記したプロピレン繊維は、耐熱性に優れていて、かなりの高温に曝されても溶融せずに繊維形状を維持できるので、従来よりも高温で熱可塑性重合体への配合、溶融混合を行うことができ、それによって熱可塑性有機重合体中にポリプロピレン繊維を含む複合材料(熱可塑性重合体組成物)を従来よりも高い生産速度で製造することができる。
上記(1a)の方法により得られる複合材料(熱可塑性重合体組成物、コンパウンド)を用いて、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、プレス成形、ブロー成形、押出ブロー成形などのような従来から広く知られている溶融成形を行うことによって、種々の成形体を製造することができる。
(1b)長繊維状、繊維束状、糸状のポリプロピレン繊維に、低温溶融熱可塑性重合体をポリプロピレン繊維の全表面を覆うように溶融押出被覆して複合材料を製造する方法;
(1c)織編物状、不織布状、網状)のポリプロピレン繊維(ポリプロピレン繊維構造体)上に、低温溶融熱可塑性重合体を、溶融押出、溶融流延、カレンダーなどによってシート状に施すと共にポリプロピレン繊維(ポリプロピレン繊維構造体)中に含浸させて複合材料を製造する方法。
(1d)織編物状、不織布状、網状のポリプロピレン繊維(ポリプロピレン繊維構造体)上に、低温溶融熱可塑性重合体から予め製造したフィルムやシートを積層し、当該フィルムやシートを加熱して、必要であれば更に押圧して、ポリプロピレン繊維(ポリプロピレン繊維構造体)中に低温溶融熱可塑性重合体を含浸させて複合材料を製造する方法。
(1e)織編物状、不織布状、網状のポリプロピレン繊維(ポリプロピレン繊維構造体)に、低温溶融熱可塑性重合体の粉末を施し、加熱し、必要であれば押圧して、ポリプロピレン繊維(ポリプロピレン繊維構造体)中に低温溶融熱可塑性重合体を含浸させて複合材料を製造する方法。
上記した(1b)〜(1e)の方法で得られる複合材料は、得られる複合材料の構造や形態に応じて、そのままで成形体や製品として用いてもよいし、または更に加熱加工などを行って成形体や最終製品を製造してもよい。
この場合に、ポリプロピレン繊維を織編物にする代わりに一方向プリプレグ状にすると、ポリプロピレン繊維の強度利用率を高くすることができる。
(2a)短繊維状のポリプロピレン繊維と、ポリプロピレン繊維の融点よりも低温で硬化または加硫する熱硬化性樹脂または弾性重合体を、当該熱硬化性樹脂または弾性重合体の硬化温度または加硫温度よりも低い温度で混合して、当該熱硬化性樹脂または弾性重合体マトリックス中に短繊維状のポリプロピレン繊維を含む複合材料を製造する方法。
(2b)長繊維状、繊維束状、糸状、織編物状、不織布状、網状)のポリプロピレン繊維(ポリプロピレン繊維構造体)に、ポリプロピレン繊維の融点よりも低温で硬化または加硫する、液状、ペースト状、粉末状、シート状の熱硬化性樹脂または弾性重合体を施し、必要であれば更に押圧して、ポリプロピレン繊維(ポリプロピレン繊維構造体)中に熱硬化性樹脂または弾性重合体を含浸させて複合材料を製造する方法。
有機重合体を溶解し、ポリプロピレン繊維を溶解または膨潤しない溶媒としては、例えば、水、アセトン、タノール、酢酸、トルエン、フェノール、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スチレンなどを挙げることができ、有機重合体の種類に応じて、前記した溶媒の1種または2種以上を用いることができる。
これにより得られる複合材料は、複合材料を構成する有機重合体マトリックスの種類などに応じて、それぞれの有機重合体に適した方法で、成形加工することによって、目的とする成形体にすることができる。
それぞれの成形法に応じて、それに適した複合材料の製造して用いるとよい。
超伝導核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製「Lambda500」)を使用して、非特許文献1に記載されている「13C−NMRスペクトル法」に従ってポリプロピレンのIPFを求めた。具体的には、ポリプロピレン中における、13C−NMRスペクトルにおいてプロピレン単量体単位が5個連続してアイソタクチック結合したプロピレン単位(アイソタクチックペンタッド単位)の含有割合(分率)(%)を求めてIPFとした。その際に、13C−NMRスペクトルにおけるピークの帰属に関しては、非特許文献2に記載されている方法に従って決定した。
荷重張力計測器(日本電産シンポ社製「DTMX−5B」)を使用して、延伸炉(熱風炉)から出た直後の糸、または延伸プレートから離れた直後の糸の張力を測定して延伸張力(cN/dtex)とした。
ポリプロピレン繊維を温度20℃および相対湿度65%の雰囲気下に5日間放置して調湿した後、長さ1mmに切断し、その5mgを量り採ってアルミパン(容量100μL)(METTLER TOLEDO社製「No.51119872」)に入れ、アルミパンカバー(METTLER TOLEDO社製「No.51119871」)を用いてシールし、走査示差熱量測定器(TA Instuments社製「DSC2010」)を使用して、窒素雰囲気中で、昇温速度10℃/分で測定した1st runのDSC曲線から、吸熱ピークの半価幅(℃)および融解エンタルピー変化量(△H)(J/g)を、図1および図2(特に図2)を参照して前述した方法で求めた。
ポリプロピレン繊維を、温度20℃および相対湿度65%の雰囲気下に5日間放置して調湿した後、調湿したポリプロピレン繊維(単繊維)の一定長(900mm)を採取し、その質量を測定して繊度を算出した。同じ調湿ポリプロピレン繊維について、前記と同じ測定操作を10回行い、その平均値を採ってポリプロピレン繊維の繊度(単繊維繊度)とした。なお、繊維が細くて一定試長の質量測定により繊度が測定できない場合は、同じ調湿繊維について、繊度測定装置(Textechno製「VIBROMAT M」)を使用して繊度を測定した。
ポリプロピレン繊維を温度20℃および相対湿度65%の雰囲気下に5日間放置して調湿した後、ポリプロピレン繊維(単繊維)を長さ60mmに切断して試料とし、当該試料(長さ60mmのポリプロピレン単繊維)の両端を把持して(両端から10mmまで把持)、繊維強度測定装置(Textechno製「FAFEGRAPH M」)を使用して、温度20℃、相対湿度65%の環境下で、引張速度60mm/分で伸張して、切断時の応力を測定し、その値をポリプロピレン単繊維の繊度で除して繊維強度(cN/dtex)を求めた。なお同じポリプロピレン繊維について同じ操作を10回行って繊維強度を求め、その平均値を採ってポリプロピレン繊維(ポリプロピレン単繊維)の繊維強度とした。
走査型電子顕微鏡(HITACHI製「S−510」)を使用して、ポリプロピレン繊維(単繊維)を、繊維軸に対して垂直方向から1000倍の倍率で写真撮影し、得られた写真について、図3に基づいて先に説明した方法にしたがって、繊維表面の凹凸の平均間隔および平均高さを求めた。平均間隔および平均高さの算出に当たっては、10本のポリプロピレン繊維(単繊維)について、1本の繊維につき、5箇所(各測定箇所の間隔10cm)ずつを選んでその箇所での凹凸の間隔および高さを測定し(延べ50箇所)、その平均値を採って、凹凸の平均間隔(μm)および平均高さ(μm)とした。
以下の実施例1〜3および比較例1で得られた射出成形による成形体(射出成形で製造した試験片)の引張強度を、JIS K7160(ISO 527−1)に準じて測定した。
以下の実施例1〜3および比較例1で得られた射出成形体(射出成形で製造した試験片)のノッチ付きシャルピー衝撃強度を、JIS 7111(ISO 179−1)に準じて測定した。
以下の実施例4〜6および比較例2で得られたシート状成形体(厚さ1mm)から、JIS K6773に準じて、1号ダンベル状試験片を切り出し、当該ダンベル状試験片を用いてJIS K6773に準じて引張強度を測定した。
以下の実施例7〜9および比較例3で得られた積層成形体から、長さ×幅×厚さ=90mm×15mm×3mmの試験片を切り出し、JIS K7017に準じて、3点曲げ試験を行って、曲げ弾性率および曲げ強度を測定した。
(1) ポリプロピレン[プライムポリマー社製「Y2000GV」、IPF=97%、MFR=18g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を溶融紡糸装置の押出機に投入して240℃で溶融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温度245℃の紡糸口金[孔数24個(円形孔)、孔径0.2mm]から22.3g/分の量で吐出し、800m/分の引き取り速度でポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って、室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=288dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、2段で4.6倍に前延伸してポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取り、室温で保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=63dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=153.5℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風炉に導入して、変形速度1.7倍/分および延伸張力1.18cN/dtexの条件下に、3段で1.3倍に後延伸して、総延伸倍率が6.0倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=48dtex/24フィラメント)[ポリプロピレン繊維(a−1)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ポリプロピレン繊維(a−1)]について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、摩擦防融性、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および平均高さ)および保水率の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
また、上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ポリプロピレン繊維(a−1)]を、走査型電子顕微鏡(HITACHI製「S−510」)を使用して写真撮影(倍率1000倍)したところ、図4に示すとおりであった。
(1) 製造例1の(1)において、未延伸糸の引き取り速度を3000m/分に変えた以外は製造例1の(1)と同じ操作を行って、ポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=214dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、2段で3.1倍に前延伸して、ポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温で保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=69dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=155.3℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風炉に導入して、変形速度1.8倍/分および延伸張力1.34cN/dtexの条件下に、3段で1.5倍に後延伸して、総延伸倍率が4.7倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=46dtex/24フィラメント)[ポリプロピレン繊維(a−2)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ポリプロピレン繊維(a−2)]について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、摩擦防融性、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および平均高さ)および保水率の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
(1) 製造例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレンを溶融紡糸装置の押出機に投入して240℃で溶融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温度245℃の紡糸口金[孔数48個(十字形孔)、孔径0.2mm]から20.2g/分の量で吐出し、800m/分の引き取り速度でポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=436dtex/48フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度138℃の熱風炉に導入して、2段で3.9倍に前延伸して、ポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温で保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=112dtex/48フィラメント、吸熱開始温度=155.2℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風炉に導入して、変形速度2.1倍/分および延伸張力1.12cN/dtexの条件下に、1段で1.3倍に後延伸して、総延伸倍率が5.1倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=86dtex/48フィラメント)[ポリプロピレン繊維(a−3)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ポリプロピレン繊維(a−3)]について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、摩擦防融性、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および平均高さ)および保水率の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
(1) 製造例1の(1)および(2)と同じ操作を行ってポリプロピレン前延伸糸[ポリプロピレン繊維(b−1)]を製造した。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン前延伸糸[ポリプロピレン繊維(b−1)]について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、摩擦防融性および保水率を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。なお、この製造例4で得られたポリプロピレン繊維は、表面に凹凸を有していなかった。
(1) 製造例1〜4で得られたポリプロピレン繊維(a−1)、(a−2)、(a−3)、(b−1)のそれぞれを長さ5mmに切断して短繊維にし、当該ポリプロピレン短繊維のそれぞれと、低密度ポリエチレン樹脂(プライムポリマー社製「ネオゼックス45200」、MFR=20g/10min)を、低密度ポリエチレン:ポリプロピレン短繊維=90:10質量比で押出機に供給し、160℃で溶融混練した後、押し出し、切断して、低密度ポリエチレンよりなるマトリックス中にポリプロピレン短繊維を含む複合材料(低密度ポリエチレン組成物)のペレットを製造した。
(2) 上記(1)で得られたペレットを用いて、電動式射出成形機(東芝機械社製「EC75N II)を使用して、溶融温度165℃、金型温度30℃の条件下に射出成形を行って、JIS K7139(ISO−3167)に準じて多目的試験片(射出成形による成形体)を製造した。
(3) 上記(2)で得られた試験片(射出成形による成形体)を用いて、上記した方法で引張強度およびシャルピー衝撃強度を測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
それに対して、比較例1では、DSC特性および繊維表面における凹凸特性の両方が本発明の規定から外れているポリプロピレン繊維(b−1)からなる短繊維を用いて、低密度ポリエチレンよりなるマトリックス中に当該ポリプロピレン短繊維が含まれる複合材料を製造し、当該複合材料を用いて成形体を製造したことにより、比較例1で得られた成形体は、引張強度およびシャルピー衝撃強度のいずれもが、実施例1〜3で得られた成形体に比べて大幅に小さく、実施例1〜3の成形体に比べて力学的特性が大きく劣っている。
(1) 製造例1〜4で得られたポリプロピレン繊維(a−1)、(a−2)、(a−3)、(b−1)のそれぞれを長さ5mmに切断して短繊維にし、当該ポリプロピレン短繊維のそれぞれを用いて、実施例1〜3の(1)と全く同様にして、低密度ポリエチレンよりなるマトリックス中にポリプロピレン短繊維を含む複合材料(低密度ポリエチレン組成物)のペレットを製造した。
(2) 上記(1)で得られたペレットを用いて、温度150℃で熱プレス成形して、厚さ1mmのシート状成形体を製造した。
(3) 上記(2)で得られたシート状成形体から、JIS K6773に準じて1業ダンベル状の試験片を切り出し、上記した方法で引張強度を測定したところ、下記の表3に示すとおりであった。
それに対して、比較例2では、DSC特性および繊維表面における凹凸特性の両方が本発明の規定から外れているポリプロピレン繊維(b−1)からなる短繊維を用いて、低密度ポリエチレンよりなるマトリックス中に当該ポリプロピレン短繊維が含まれる複合材料を製造し、当該複合材料を用いてシート状成形体を製造したことにより、比較例2で得られたシート状成形体は、引張強度が、実施例4〜6で得られたシート状成形体に比べて大幅に小さく、実施例4〜6のシート状成形体に比べて力学的特性が大きく劣っている。
(1) 製造例1〜4で得られたポリプロピレン繊維(a−1)、(a−2)、(a−3)、(b−1)を束ねて約1000dtexの糸(マルチフィラメント糸)にし、そのマルチフィラメント糸を用いて、基布密度が経30本/25.4mmおよび緯30本/25.4mmの平織生地を製造した。
(2) 上記(1)で得られた平織生地に、エポキシ樹脂[ナガセケムテック社製、主剤:DENATOOL XNR6708、硬化剤:DENATOOL XNH6708、主剤/硬化剤=100/33(質量比)]を含浸してエポキシ樹脂含浸平織生地を調製し[エポキシ樹脂の含浸量=58質量%(平織生地の1.4質量倍)]、当該エポキシ樹脂含浸平織生地をハンドライアップ法で10枚積層し、25℃で16時間乾燥した後、熱風循環型乾燥機中で60℃に2時間乾燥し、次いで120℃で3時間熱硬化させた後、160℃で更に1時間熱硬化させて、厚さ3mmの積層成形体を製造した。
(3) 上記(2)で得られた積層成形体から試験片を切り出して、上記した方法で3点曲げ試験を行って、曲げ弾性率および曲げ強度を測定した。その結果を下記の表4に示す。
それに対して、比較例3では、DSC特性および繊維表面における凹凸特性の両方が本発明の規定から外れているポリプロピレン繊維(b−1)からなる平織生地を用いて、エポキシ樹脂よりなるマトリックス中に当該ポリプロピレン繊維平織生地が含まれる複合材料を製造し、当該複合材料を用いて積層成形体を製造したことにより、比較例3で得られた積層成形体は、曲げ弾性率および曲げ強度の両方が、実施例7〜9で得られた積層成形体に比べて大幅に小さく、実施例7〜9の積層成形体に比べて力学的特性が大きく劣っている。
Claims (4)
- 有機重合体よりなるマトリックス中にポリプロピレン繊維を含む複合材料であって、前記ポリプロピレン繊維が、アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上のポリプロピレンよりなる、繊維強度が7cN/dtex以上であり、単繊維繊度が0.1〜3dtexで、走査示差熱量測定(DSC)による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であり、表面に大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に存在してなる平均間隔が6.5〜20μmで平均高さが0.35〜1μmの凹凸を有するポリプロピレン繊維であることを特徴とする複合材料。
- ポリプロピレン繊維が、短繊維、長繊維、繊維束、糸、織編物、不織布または網の形態である請求項1に記載の複合材料。
- 有機重合体が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂および弾性重合体から選ばれる少なくとも1種の有機重合体である請求項1または2に記載の複合材料。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合材料からなる成形体。
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