JP5172295B2 - ポリプロピレン繊維製のシート状繊維構造体 - Google Patents

ポリプロピレン繊維製のシート状繊維構造体 Download PDF

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Description

本発明は、ポリプロピレン繊維を用いて形成したシート状繊維構造体に関する。
より詳細には、本発明は、保水性が高く、耐熱性、力学的特性に優れる、ポリプロピレン繊維製のシート状繊維構造体に関する。
ポリプロピレン繊維は、耐薬品性、軽量性に優れ、容易に溶融できてリサイクル性に優れ、しかも焼却してもハロゲンガスなどの有害ガスを発生しないという長所を有していることから、織編物、不織布、合成紙、網状物などの種々の用途に用いられている。
例えば、ポリプロピレン繊維製の合成紙や不織布は、耐薬品性に優れることから、フィルターやセパレーターなどの様々な産業資材用途で利用されている。しかしながら、ポリプロピレン繊維は、多くの用途において、その疎水性が問題となっている。例えば、水系のろ過フィルターやアルカリ2次電池セパレーターなどとして用いられる合成紙や不織布では、主体をなす繊維に高い親水性が求められることが多いが、ポリプロピレン繊維製の合成紙や不織布は、親水性に劣ることから、親水性を求められる液体フィルターや電池セパレーターなどの用途にはそのままでは使用しにくい。
上記の点から、ポリプロピレン繊維の親水性または保水性の向上に係る技術が従来から提案されている。例えば、ポリエチレンワックスを用いて粒子状の吸水性樹脂を添加分散させたポリプロピレンを用いて溶融紡糸を行なって吸水性ポリプロピレン繊維を製造する方法(特許文献1)が知られている。しかし、この方法による場合は、ポリプロピレン中に添加した粒子状の吸水性樹脂が紡糸時や延伸時に断糸、不均一延伸などの原因になることがあり、紡糸性および延伸性への影響が避けられない。しかも、これにより得られるポリプロピレン繊維は強度が不十分であるため、織編物、不織布、合成紙、網状物などのシート状繊維構造体にしたときに十分な強度が得られない。
また、ポリプロピレン繊維からなるシート状繊維構造体(織編物、不織布、合成紙、網状物など)の保水率を向上させるための方法として、表面を粗面化したり、表面に凹凸を設けたポリプロピレン繊維を用いてシート状繊維構造体を製造し、当該シート状繊維構造体を構成するポリプロピレン繊維の表面に形成されている凹部に水を保持させることが考えられる。しかしながら、従来知られている表面に凹凸を形成したポリプロピレン繊維や、表面を粗面化したポリプロピレン繊維では、その凹凸(粗面化)が不十分であったり、凹凸の形成に制約があり、当該ポリプロピレン繊維を用いてシート状繊維構造体を製造しても、保水性の高いシート状繊維構造体は得られない。
例えば、ポリプロピレン繊維に電離性放射線を照射して表面に凹凸を形成させた水硬性物質用の補強繊維(特許文献2を参照)、溶融紡糸したポリプロピレン繊維にエンボス加工および延伸処理を施して表面に凹凸を形成したセメント配合用のポリプロピレン繊維(特許文献3を参照)、押出機により溶融押し出ししたポリプロピレン繊維の引き取り速度を変化させて凹凸を付与した後に延伸処理を施して製造した表面に凹凸を有するセメント配合用のポリプロピレン繊維(引用文献4を参照)などが知られているが、水硬性物質(セメント)配合用のこれらのポリプロピレン繊維を用いて織編物、不織布、合成紙、網状物などのシート状繊維構造体を製造しても、保水率が高く、しかも強度に優れるシート状繊維構造体は得られない。
具体的には、特許文献2〜4、そのうちでも特許文献2に記載されている凹凸の形成方法によって得られるポリプロピレン繊維(特に単繊維繊度が10dtex以下の細繊度ポリプロピレン繊維)では損傷の発生が著しく、そのため当該ポリプロピレン繊維を用いてシート状繊維構造体を形成しても、強度に優れるシート状繊維構造体は得られない。
さらに、ポリプロピレン未延伸糸を、熱風槽で125〜155℃で延伸して製造してなる、9cN/dtex以上の単糸強度を有し、繊維表面の曲面に添って筋状の粗面構造を有するコンクリート補強用のポリプロピレン繊維が知られている(特許文献5)。しかし、このポリプロピレン繊維では繊維表面に存在する筋状の粗面構造の間隔および高さが共に小さいため、保水性に優れるシート状繊維構造体は得られない。
また、ポリプロピレン未延伸糸を3.0〜5.0kg/cm2(温度133〜151℃)の加圧飽和水蒸気により1段で延伸して、光学的に明部と暗部を有する延伸糸を製造する方法が提案されている(特許文献6)。しかし、この方法により得られるポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)は、繊維表面における凹凸の形成が不十分で、凹凸の間隔および高さが小さいため、やはり保水性に優れるシート状繊維構造体は得られない。
また、例えばリサイクル性および強度に優れるシートとして、ポリオレフィンシート基材に、ポリプロピレン繊維製の布帛を積層した繊維補強ポリオレフィンシートが知られている。この繊維補強ポリオレフィンシートの製造に当たっては、生産性の向上およびポリプロピレン繊維製布帛とポリオレフィンシート基材との間の接着性の向上などの点から、ポリオレフィンをできるだけ高温で溶融してポリオレフィンシート基材とポリプロピレン繊維製布帛の接着を行う必要がある。しかしながら、ポリプロピレン繊維製布帛の耐熱性が不十分で、繊維補強シートの製造時にポリオレフィンシート基材を高温で溶融することができないため、生産速度を十分に高くすることができず、更にはポリプロピレン繊維製布帛とポリオレフィン基材との間の接着が不十分になり、生産性の低下、得られる繊維補強ポリオレフィンシートの強度不足などを招いている。
また、ポリプロピレン繊維製の合成紙や不織布などからなるフィルターに対しても、高温環境下で用いられることがあることから、耐熱性の向上が求められている。
ポリプロピレン繊維の耐熱性の向上を目的とした従来技術としては、アイソタクチックペンタッド分率が96%以上98.5%未満で、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1〜30g/10分であるホモポリプロピレン樹脂を溶融成形後に延伸してなる、170℃、10分間における熱収縮率が10%以下で、融解ピーク温度が178℃以上であるポリプロピレン繊維が知られている(特許文献7を参照)。しかしながら、このポリプロピレン繊維は、吸熱ピーク形状が、ブロードなダブル形状またはシングル形状であって、結晶が不均一であるため、耐熱性が未だ十分に高いとはいえない。
また、他の従来技術として、アイソタクチック指数が90〜99%のポリプロピレンホモポリマーを溶融紡糸するか又は溶融紡糸した後に延伸してなる、155〜170℃で2つのDSC吸熱ピークを有するポリプロピレン繊維が知られている(特許文献8を参照)。しかしながら、このポリプロピレン繊維では、2つのDSC吸熱ピークのうちで低温側の吸熱ピークがポリプロピレン繊維の耐熱性の指標をなし、しかも吸熱ピーク形状がブロードであって、結晶が不均一であるため、耐熱性が十分ではない。
特開平4−41710号公報 特公昭61−26510号公報 特開昭56−9268号公報 特公昭61−301号公報 特開2003−293216号公報 特許第3130288号公報 特開2002−302825号公報 特開2001−20132号公報 「Macromolecules」、第6巻、1973年、p925 「Macromolecules」、第8巻、1975年、p687
本発明の目的は、保水性に優れ、しかも強度にも優れる、ポリプロピレン繊維製の不織布、合成紙、織編物、網状物などのシート状繊維構造体を提供することである。
また、本発明の目的は、強度に優れ、しかも耐熱性にも優れるポリプロピレン繊維製のシート状繊維構造体を提供することである。
さらに、本発明の目的は、保水性、強度および耐熱性に優れるポリプロピレン繊維製のシート状繊維構造体を提供することである。
本発明者は、前記した目的を達成するために鋭意検討を重ねてきた。そして、特定以上のアイソタクチックペンタッド分率(IPF)を有するポリプロピレンを用いて、繊維表面に、大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に存在してなる所定の平均間隔および平均高さの凹凸を有する、単繊維繊度が小さく、しかも強度に優れる、高保水性の従来にないポリプロピレン繊維を得ることができた。
また、本発明者は、特定以上のアイソタクチックペンタッド分率(IPF)を有するポリプロピレンを用いて、走査示差熱量測定(DSC)において特定の吸熱・融解特性を示し、均一な結晶構造を有していて、耐熱性に優れ、しかも強度にも優れる、従来にないポリプロピレン繊維を得ることができた。
さらに、本発明者は、特定以上のアイソタクチックペンタッド分率(IPF)を有するポリプロピレンを用いて、繊維表面に、大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に存在してなる所定の平均間隔および平均高さの凹凸を有し、しかも走査示差熱量測定(DSC)において特定の吸熱・融解特性を示し、均一な結晶構造を有する、強度、保水性および耐熱性に優れるポリプロピレン繊維を得ることができた。
そして、本発明者は、上記で得られたポリプロピレン繊維を用いて、織編物、不織布、合成紙、網状物などのシート状繊維構造体を製造したところ、当該シート状繊維構造体が、高い保水率を有し保水性に優れること、しかも強度および耐熱性に優れることを見出して本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1) アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上のポリプロピレンよりなる、繊維強度が7cN/dtex以上であり、且つ単繊維繊度が0.1〜3dtexで、表面に大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に存在してなる平均間隔が6.5〜20μmで平均高さが0.35〜1μmの凹凸を有するポリプロピレン繊維を50質量%以上の割合で含むことを特徴とするシート状繊維構造体;
(2) アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上のポリプロピレンよりなる、繊維強度が7cN/dtex以上であり、且つ走査示差熱量測定(DSC)による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であるポリプロピレン繊維を50質量%以上の割合で含むことを特徴とするシート状繊維構造体;
(3) アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上のポリプロピレンよりなる、繊維強度が7cN/dtex以上であり、単繊維繊度が0.1〜3dtexで、走査示差熱量測定(DSC)による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であり、表面に大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に存在してなる平均間隔が6.5〜20μmで平均高さが0.35〜1μmの凹凸を有するポリプロピレン繊維を50質量%以上の割合で含むことを特徴とするシート状繊維構造体;および、
(4) 保水率が10質量%以上である前記(1)〜(3)のいずれかのシート状繊維構造体;
である。
本発明のシート状繊維構造体を形成している、アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上のポリプロピレンからなる、7cN/dtex以上の高い繊維強度を有し、且つ繊維の表面に大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に位置してなる平均間隔が6.5〜20μmで平均高さが0.35〜1μmの特定の凹凸を有するポリプロピレン繊維は、繊維表面に前記した特定の凹凸を有することによって高い保水率を有し、しかも強度に優れている。そのため、当該ポリプロピレン繊維を用いて形成してなる本発明のシート状繊維構造体は、高い保水率(一般に10質量%以上の保水率)を有し、保水性に優れ、しかも強度に優れている。
また、本発明のシート状繊維構造体を形成している、アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上のポリプロピレンからなる、7cN/dtex以上の高い繊維強度を有し、且つ走査示差熱量測定(DSC)における吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、その融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であるとポリプロピレン繊維は、前記した特定のDSC特性を備えていることによって、結晶性が高く、均一な結晶構造を有し、耐熱性に極めて優れており、高温に曝されても簡単に融解せずに、繊維形状および繊維強度を良好に維持することができる。そのため、当該ポリプロピレン繊維を用いて形成してなる本発明のシート状繊維構造体は、強度が高く、しかも耐熱性に優れていて、高温に曝されても、強度などの力学的特性を長期にわたって維持することができ、耐久性に優れている。
特に、単繊維繊度が0.1〜3dtex、繊維強度が7cN/dtex以上で、表面に前記した特定の凹凸構造を有し、且つ走査示差熱量測定(DSC)による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であるポリプロピレン繊維を用いて形成してなる本発明のシート状繊維構造体は、保水性、耐熱性および強度のいずれにおいても優れており、当該ポリプロピレン繊維を用いて形成してなる本発明のシート状繊維構造体、保水性、耐熱性、強度および耐久性に極めて優れている。
本発明のシート状繊維構造体(織編物、不織布、合成紙、網状物など)は、前記した特性を活かして種々の用途、例えば、フィルター、セパレータ、補強材、衣類、ワイパー、化粧落しなどの用途に有効に使用することができる。
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明のシート状繊維構造体は、本発明で規定する特定のポリプロピレン繊維を用いて形成されている。
ここで、本発明の「シート状繊維構造体」とは、本発明で規定する特定のポリプロピレン繊維を用いるか、および/または当該ポリプロピレン繊維からなる糸を用いて製造されたシート状をなす繊維構造体の総称である。本発明のシート状繊維構造体には、織編物、不織布、合成紙、網状物、それらの2種以上を積層してなる繊維構造体などが含まれる。
本発明のシート状繊維構造体を形成しているポリプロピレン繊維は、アイソタクチックペンタッド分率(IPF)(以下単に「IPF」ということがある)が94%以上のポリプロピレンよりなるポリプロピレン繊維であり、IPFが95〜99%のポリプロピレンからなっていることが好ましく、IPFが96〜99%のポリプロピレンからなることがより好ましい。
ポリプロピレンのIPFが94%未満であると、ポリプロピレン繊維に均一な結晶構造を形成されにくくなって、十分な強度および耐熱性を有する、本発明のシート状繊維構造体に用いるポリプロピレン繊維が得られなくなる。一方、IPFが99%を超えるポリプロピレンは工業的には量産が困難であるため、コスト面などから実用性が低い。
本発明のシート状繊維構造体を形成しているポリプロピレン繊維は、ポリプロピレンとして、IPFが前記した値を満たすものであれば、1種類のプロピレン単独重合体から形成されていてもよいし、またはプロピレンと他の共重合性単量体からなるプロピレン共重合体から形成されていてもよい。或いは、混合物全体でのIPFが前記した値を満たすものであれば、2種類以上のプロピレン単独重合体の混合物、1種または2種以上のプロピレン単独重合体と1種または2種以上のプロピレン共重合体の混合物、または2種類以上のプロピレン共重合体の混合物から形成されていてもよい。
また、本発明のシート状繊維構造体を形成しているポリプロピレン繊維は、ポリプロピレン繊維を構成するプロピレン系重合体全体でのIPFが前記した値を満たすものであれば、2種類以上のプロピレン単独重合体および/またはプロピレン共重合体を用いて形成された、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型などの複合形態または混合形態を有する複合紡糸繊維または混合紡糸繊維などであってもよい。
ポリプロピレンにおけるIPFは、その立体規則性を表わす指標であり、ポリプロピレンを繊維化した際の結晶性に影響を及ぼす。一般には、IPFが高いポリプロピレンほど立体規則性が高い。ポリプロピレンにおけるIPFは、13C−NMRのシグナルから求めることができ、本明細書におけるポリプロピレンのIPF値は、以下の実施例に記載する方法で求めた値をいう。
ポリプロピレン繊維を製造する際の溶融紡糸性、延伸性などが良好になり、さらに本発明で用いる上記した特定の物性を備えるポリプロピレン繊維が円滑に得られる点から、本発明のシート状繊維構造体を形成しているポリプロピレン繊維は、JIS K 7210に従って温度230℃、荷重2.16kg、時間10分の条件で測定したときのメルトフローレート(MFR)が5〜70g、更には10〜50g、特に15〜40gのポリプロピレンから形成されていることが好ましい。
本発明のシート状繊維構造体を形成しているポリプロピレン繊維は7cN/dtex以上の繊維強度を有しており、9〜13cN/dtexの繊維強度を有することが好ましい。
ここで、本明細書におけるポリプロピレン繊維の繊維強度(単繊維繊度強度)は、以下の実施例に記載した方法で測定した繊維強度をいう。
本発明のシート状繊維構造体は、前記した繊維強度を有するポリプロピレン繊維を用いて形成されていることにより、高い強度を有する。繊維強度が前記よりも小さいポリプロピレン繊維を用いてシート状繊維構造体を形成した場合には、シート状繊維構造体の強度が不足することがある。一方、繊維強度が13cN/dtexを超えるポリプロピレン繊維は、その製造に当たって、量産性の低い条件を採用する必要があるため、実用面で難がある。
本発明のシート状繊維構造体を形成しているポリプロピレン繊維の繊度(単繊維繊度)は特に制限されないが、ポリプロピレン繊維を製造する際の製造の容易性(特に延伸のし易さ)、シート状繊維構造体を製造する際の工程性、シート状繊維構造体の強度や耐久性などの点から、ポリプロピレン繊維の繊度(単繊維繊度)は、一般的に0.01〜500dtexであることが好ましく、0.05〜50dtexであることがより好ましく、0.1〜5dtexであることが更に好ましい。
ポリプロピレン繊維の繊度(単繊維繊度)が小さ過ぎると、シート状繊維構造体を形成する際に又シート状繊維構造体を形成した後に、ポリプロピレン繊維の断糸などが生じてシート状繊維構造体の強度が低下することがあり、一方大きすぎると、ポリプロピレン繊維を得るための延伸物性が低下して、高強度で、高度に結晶化したポリプロピレン繊維が得られないことがある。
本発明のシート状繊維構造体を形成しているポリプロピレン繊維のうち、上記した7cN/dtex以上の繊維強度と共に、『単繊維繊度が0.1〜3dtexで、表面に大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に存在してなる平均間隔が6.5〜20μmで平均高さが0.35〜1μmの凹凸を有する』という特性を備えるポリプロピレン繊維は、前記した凹凸を繊維軸に沿って有していることにより、高い保水率(一般に10質量%以上の保水率)を有し、保水性に優れている。そのため、当該ポリプロピレン繊維を用いて形成してなる本発明のシート状繊維構造体は、高い保水率(一般に10質量%以上の保水率)を有し、保水性に優れている。
ここで、本明細書における「ポリプロピレン繊維が、表面に、大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に位置してなる凹凸を有する」とは、図1の模式図に示すように、ポリプロピレン繊維が長さ方向に沿って均一の径を有しておらず、径の大きな隆起部(凸部)(図1におけるA1,A2,A3,A4,・・・・)と、それよりも径の小さな非隆起部(凹部)(図1におけるB1,B2,B3,B4,・・・・・)が、繊維軸(繊維の長さ方向)に沿って交互に形成されていて、繊維表面が凹凸をなしていること意味する。
そして、本明細書における前記「平均間隔」とは、繊維軸に沿って形成された多数の凹凸(隆起部と非隆起部)のうち、隣り合う2つの隆起部(凸部)の間の間隔(距離)(図1におけるA1−A2,A2−A3,A3−A4,・・・の長さ)の平均値を意味する。
また、前記「平均高さ」は、繊維軸に沿って形成された多数の凹凸(隆起部と非隆起部)のうち、隣り合う2つの非隆起部(凹部)の最小径部分を結ぶ仮想直線(図1におけるB1とB2を結ぶ直線,B2とB3を結ぶ直線,B3とB4を結ぶ直線,・・・)への、当該隣り合う2つの非隆起部(凹部)の間にある隆起部(凸部)の頂点からの垂線の長さ(図1におけるh1,h2,h3,h4,・・・)の平均値を意味する。
ポリプロピレン繊維の繊維軸に沿って形成された前記凹凸の平均間隔および平均高さは、ポリプロピレン繊維を走査型電子顕微鏡などを用いて撮影した写真から求めることができ、本明細書における凹凸の前記平均間隔および平均高さは以下の実施例に記載する方法で求められる値をいう。
前記した凹凸特性を有するポリプロピレン繊維において、ポリプロピレン繊維の繊度が0.1dtexよりも小さいと、量産性を維持するために紡糸孔数の極めて多い口金を用いて紡糸することになり、それに伴って口金での紡糸孔の間隔を十分に確保するために紡糸装置の規模を大きくするなどの大幅な設備の改良が必要になり、しかも繊度が小さいために延伸工程で断糸トラブルや毛羽が発生し易くなる。一方、ポリプロピレン繊維の繊度が3dtexを超えると、繊維の外周に上記した特定の凹凸を発現させにくくなり、また繊維の比表面積が小さくなるため十分な保水性を確保できなくなり、更に延伸性が低下して十分な繊維強度が得られにくくなる。
前記した特定の凹凸特性を有するポリプロピレン繊維では、その繊度(単繊維繊度)は、0.2〜2.5dtexであることが好ましく、0.3〜2.4dtexであることがより好ましい。
表面に凹凸を有するポリプロピレン繊維において、前記した凹凸の平均間隔が6.5μm未満であると、および/または平均高さが0.35μm未満であると、繊維表面の凹凸が微細になり過ぎて、保水性が低下する。一方、凹凸の平均間隔が20μmを超えるかおよび/または平均高さが1μmを超えるポリプロピレン繊維は、ポリプロピレン繊維の製造速度を大幅に低下しないと製造できず、またIPFが100%に近いポリプロピレンを使用する必要があるため、実用性に乏しい。
本発明のシート状繊維構造体を、繊維表面に前記凹凸を有するポリプロピレン繊維から形成する場合は、当該ポリプロピレン繊維では、繊維軸方向に沿って形成された凹凸の平均間隔が6.6〜20μm、特に6.8〜20μmであることが好ましく、平均高さが0.40〜1μm、特に0.45〜1μmであることが好ましい。
ポリプロピレン繊維として前記した凹凸特性を有するポリプロピレン繊維を用いた場合には、ポリプロピレン繊維の表面に、平均間隔が6.5〜20μmで平均高さが0.35〜1μmである前記した凹凸を繊維軸に沿って有していることにより、当該繊維表面の凹凸の凹部に水が保持されて、保水率の高いシート状繊維構造体(一般に保水率が10質量%以上のシート状繊維構造体)を得ることができる。
本発明のシート状繊維構造体を高保水率が求められる用途に用いる場合は、当該シート状繊維構造体の保水率は、10質量%以上であることが好ましく、11〜50%質量%であることがより好ましい。保水率が50%を超えるポリプロピレン繊維製のシート状繊維構造体を得るためには、ポリプロピレン繊維表面の凹凸を極めて大きなものとしなければならず、現実には、生産性よく製造することが困難である。
なお、本明細書におけるポリプロピレン繊維の保水率およびシート状繊維構造体の保水率は、以下に実施例に記載する方法で測定した保水率をいう。
本発明のシート状繊維構造体を形成しているポリプロピレン繊維のうち、上記した7cN/dtex以上の繊維強度と共に、『走査示差熱量測定(DSC)(以下単に「DSC測定」ということがある)による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上である』という特定のDSC特性を備えているポリプロピレン繊維は、かかる特性を備えていることによって、耐熱性に優れている。
DSC測定による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有する幅の狭い(シャープな)シングル形状をなしていて且つ融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であるポリプロピレン繊維を用いて本発明のシート状繊維構造体を形成すると、ポリプロピレン繊維が耐熱性に優れていることにより、高温に曝されても溶断や物性低下が生じにくく、丈夫で耐久性に優れるシート状繊維構造体が得られる。
ここで、本発明におけるDSC測定による前記した「吸熱ピーク形状」および「融解エンタルピー変化量(△H)」は、以下の実施例に記載する方法で行ったDSC測定による吸熱ピーク形状および融解エンタルピー変化量(△H)をいう。
アイソタクチックポリプロピレン繊維のDSC測定において、160℃以上で観察される吸熱ピークは一般にα晶の融解に由来する。吸熱ピークの温度が160℃以上、場合によっては175℃以上であるポリプロピレン繊維は、従来から知られているが(特許文献7などを参照)、そのような従来のポリプロピレン繊維では結晶化が未だ十分に行われていないため、その吸熱ピークの形状はダブルピーク形状であったり、幅の広い(ブロードな)シングルピーク形状であり、その結晶構造は全体として均一性に欠ける。
それに対して、本発明のシート状繊維構造体を形成している「DSC測定による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上である」というDSC特性を備えているポリプロピレン繊維は、DSC測定による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有する幅の狭い(シャープな)シングル形状をなしていて、且つ融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であることにより、結晶性が高く、均一な結晶構造をなしており、耐熱性に優れている。
ここで、本明細書でいう「DSC測定による吸熱ピーク形状」と「半価幅」について説明する。
まず、図2は、ポリプロピレン繊維におけるDSC測定による吸熱ピーク形状を模式的に示した図である。
図2において、(a)は、唯一の吸熱ピーク(シングルピーク)を有し、当該シングルピークはシャープでしかも大きなピークをなし、大きな融解エンタルピー変化量(△H)を有する本発明に含まれる本発明のポリプロピレン繊維の吸熱ピーク曲線の代表例を示したものである。
一方、図2において、(b)は従来のポリプロピレン繊維の吸熱ピーク曲線の一例であって、2つの吸熱ピーク(ダブルピーク)を有し、ピークの幅(半価幅)は大きく、融解エンタルピー変化量(△H)は小さい。
また、図2において、(c)は従来のポリプロピレン繊維の吸熱ピーク曲線の他の例であり、吸熱ピークは1個(シングルピーク)ではあるが、融解エンタルピー変化量(△H)は小さい。
次に、図3は、DSC曲線にピーク形状がシングルピークである場合を例に挙げて、本発明で用いるポリプロピレン繊維のDSC測定による吸熱ピークにおける半価幅の求め方を示した図である。
図3において、吸熱ピーク(シングルピーク)の頂点Xから温度軸に下ろした垂線と、吸熱ピークのベースラインとの交点をYとしたときに、線分X−Yを二等分する点をMとし、Mを通り温度軸に平行な直線と吸熱曲線との交点をそれぞれN1およびN2としたときに、線分N1−N2の長さ(温度幅)が本明細書でいう「半価幅(℃)」に相当する。
ポリプロピレン繊維の吸熱ピーク曲線が、図2の(b)に示すように2つの吸熱ピークを有するダブルピークである場合や、3つ以上の吸熱ピークを有する場合は、最も高い吸熱ピークの頂点をXとし、当該頂点Xから温度軸に下ろした垂線と、吸熱ピークのベースラインとの交点をYとし、線分X−Yを二等分する点をMとし、Mを通り温度軸に平行な直線と吸熱曲線との交点のうち、温度の最も低い交点をN1とし、温度の最も高い交点をN2としたときに、線分N1−N2の長さ(温度幅)が本明細書でいう「半価幅(℃)」に相当する。この場合には、半価幅(℃)は一般に広いものとなる。
そして、吸熱ピーク曲線において、吸熱ピークのベースライン(図3を参照)と、当該ベースラインよりも上の吸熱ピーク曲線によって包囲される部分の面積が、本明細書における「融解エンタルピー変化量(△H)」に相当する。
ポリプロピレン繊維における結晶形成が不十分であると、DSC測定時の結晶の再配列などによって吸熱ピークや発熱ピークが新たに発現して複雑なDSC曲線になる場合がある。さらに、ポリプロピレン繊維における結晶形成が不十分であると、DSC測定時の昇温速度の違いによって、同じ試料であっても、吸熱ピークや発熱ピークの発現や消失が生じて吸熱ピーク曲線が変化することがある。
それに対して、本発明のシート状繊維構造体の形成に用いるポリプロピレン繊維のうち、「DSC測定による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上である」というDSC特性を備えているポリプロピレン繊維は、当該DSC特性を備えていることによって、DSC測定時の昇温速度1〜50℃/分の範囲では、昇温速度が異なっても、その吸熱ピーク曲線は1個の吸熱ピークのみを有する、シャープで大きなシングルピーク形状をなし、高い融解エンタルピー変化量(△H)を有している。そのことは、本発明のシート状繊維構造体の形成に用いるポリプロピレン繊維のうち、前記したDSC特性を有するポリプロピレン繊維が、均一で高い結晶性を有し、その結果として、高い耐熱性を備えていることを裏付けている。
ポリプロピレン繊維の融解エンタルピー変化量(△H)が高いほど、耐熱性が高くなるが、165J/gを超えるポリプロピレン繊維は、製造速度を大幅に低下しないと製造が困難であり、またIPFが100%に近いポリプロピレンを用いて製造することが必要であるため、工業的には実効性が低い。
かかる点から、本発明のシート状繊維構造体を形成しているポリプロピレン繊維は、融解エンタルピー変化量(△H)が125〜165J/gであることが好ましく、130〜165J/gであることがより好ましく、135〜165J/gであることが更に好ましく、140〜165J/gであることが一層好ましい。
ポリプロピレン繊維の融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g未満であると、耐熱性が不十分になることがある。
但し、「DSC測定による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上である」という要件を備えていないポリプロピレン繊維であっても、「IPFが94%以上のポリプロピレンよりなる、単繊維繊度が0.1〜3dtexおよび繊維強度が7cN/dtex以上で、表面に大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に存在してなる平均間隔が6.5〜20μmで平均高さが0.35〜1μmの凹凸を有する」という特性を備えるポリプロピレン繊維を用いてシート状繊維構造体を形成した場合には、ポリプロピレン繊維が前記した特定の凹凸を繊維表面に有していることにより、シート状繊維構造体を構成するポリプロピレン繊維間の絡合が強くなり、耐ヘタリ性、形状保持性などに優れる、保水性に優れるシート状繊維構造体を得ることができる。
本発明は、『7cN/dtex以上の繊維強度で、単繊維繊度0.1〜3dtexで、さらに本発明で規定する上記したDSC特性[DSC測定による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であるという特性]、および上記した特定の凹凸特性(表面に大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に存在してなる平均間隔が6.5〜20μmで平均高さが0.35〜1μmの凹凸を有するという特性)を有するポリプロピレン繊維』を用いて形成したシート状繊維構造体を包含する。かかるポリプロピレン繊維を用いて形成した本発明のシート状繊維構造体は、保水性、耐熱性、強度などの特性に一層優れている。
本発明のシート状繊維構造体を形成する前記したポリプロピレン繊維の形状(横断面形状)は特に制限されず、中実の円形断面形状であってもよいし、それ以外の異形断面形状であってもいずれでもよい。繊維の横断面が異形断面形状である場合の具体例としては、偏平形、十字形、Y字形、T字形、V字形、星形、多葉形、アレイ形、中空形などを挙げることができる。
本発明の目的を妨げない範囲で、本発明のシート状繊維構造体を形成するポリプロピレン繊維は、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、充填剤、帯電防止剤などの1種または2種以上を含有していてもよい。
本発明のシート状繊維構造体を形成するポリプロピレン繊維は、シート状繊維構造体の用途などに応じて、表面処理を施してなくてもよいし、または様々な物質との親和性の向上、帯電防止、処理剤の安定化などの目的で、任意の表面処理剤で表面処理してあってもよい。
表面処理したポリプロピレン繊維を用いる場合は、限定されるものではないが、使用し得る表面処理剤の具体例としては、ポリオキシエチレンソフタノール、脂肪酸カリウム石鹸、アルキルホスフェートカリウム塩、ジアルキルチオジプロピオネート、ジ−2−エチルヘキシルスルフォサクシネートナトリウム塩、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンデシルエーテルホスフェートカリウム塩、ポリオキシエチレンひまし油エーテル、アルカンスルフォネートナトリウム塩、イソオクチルパルミテート、イソオクチルステアレート、イソセチルホスフェートカリウム塩、ヤシ脂肪酸アマイド、オレイルアルコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ジオクチルフルフォサクシネートナトリウム塩、ポリオキシエチレンデシルエーテルホスフェートアミン塩、ポリエチレングリコールヤシ脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
本発明のシート状繊維構造体を形成するポリプロピレン繊維の製法は特に制限されず、繊維強度が7cN/dtex以上であり且つ前記した単繊維繊度と凹凸特性(単繊維繊度が0.1〜3dtexおよび表面に大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に存在してなる平均間隔が6.5〜20μmで平均高さが0.35〜1μmの凹凸を有するという特性)を備えるポリプロピレン繊維、繊維強度が7cN/dtex以上であり且つ上記したDSC特性[DSC測定による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であるという特性]を備えるポリプロピレン繊維、或いは前記した繊維強度、凹凸特性およびDSC特性を備えるポリプロピレン繊維を製造し得る方法であれば、いずれの方法で製造してもよい。
そのうちでも、本発明のシート状繊維構造体を形成するポリプロピレン繊維は、IPFが94%以上のポリプロピレンを溶融紡糸してポリプロピレン未延伸繊維(未延伸糸)を製造し、それを冷却固化した後に、その冷却固化した未延伸ポリプロピレン繊維を特定の条件下で前延伸および後延伸する以下で説明する方法により、円滑に製造することができる。
まず、ポリプロピレンを溶融紡糸してポリプロピレン未延伸繊維を製造するに当たっては、IPFが94%以上のポリプロピレンを200〜3500m/分、特に300〜2000m/分の紡糸速度で溶融紡糸した後に冷却固化する方法が好ましく採用される。
ポリプロピレンの溶融紡糸および溶融紡糸したポリプロピレン繊維の冷却固化は、通常の方法で行うことができ、一般的にはポリプロピレンを200〜300℃で溶融混練した後、それを220〜280℃の紡糸口金から吐出させ、それに5〜50℃の冷却用気体(空気など)を吹き付けて冷却固化する方法が採用される。
未延伸ポリプロピレン繊維の単繊維繊度は特に制限されず、延伸工程での延伸倍率、最終的に得られるポリプロピレン繊維の用途などに応じて決めることができるが、一般的には0.3〜90dtex、特に1〜60dtexであることが、延伸のしやすさ、強度などの点から好ましい。
本発明のシート状繊維構造体を形成するポリプロピレン繊維の製造に当って、溶融紡糸を低紡糸速度で行った場合(一般に紡糸速度が200〜1000m/分程度の場合)には、溶融紡糸後に冷却固化して得られるポリプロピレン未延伸繊維(未延伸糸)を、次の延伸工程で高倍率で延伸する(一般に総延伸倍率5〜20倍)ことで、高強度および高耐熱性を有するポリプロピレン繊維、特に繊維強度が7cN/dtex以上で、且つDSC測定による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であるポリプロピレン繊維を円滑に製造することができる。
一方、溶融紡糸を高紡糸速度で行った場合(一般に紡糸速度が1000〜3500m/分程度の場合)には、溶融紡糸後に冷却固化して得られるポリプロピレン未延伸繊維(未延伸糸)を延伸する際の延伸倍率が低くても(一般に総延伸倍率3.9〜7倍)、溶融紡糸した繊維を冷却固化する段階での配向が高くなるため、結果として繊維強度が7cN/dtex以上で且つ前記したのと同じDS特性を有する強度および耐熱性に優れるポリプロピレン繊維を円滑に製造することができる。
ポリプロピレン繊維の製造にあたって、冷却固化したポリプロピレン未延伸繊維(未延伸糸)は、巻き取らずにそのまま引き続いて延伸処理を行ってもよいし、または一旦巻き取った後に、巻き出しながら次の延伸処理を行ってもよく、そのうちでも、一旦巻き取った後に巻き出しながら次の延伸処理を行うことが、延伸条件の制御や管理が容易である点から好ましい。
本発明のシート状繊維構造体を形成するポリプロピレン繊維は、冷却固化したポリプロピレン未延伸繊維(未延伸糸)を、総延伸倍率(前延伸と後延伸の合計延伸倍率)が3.9〜20倍になるようにして、温度120〜150℃および延伸倍率3〜10倍で前延伸した後、温度170〜190℃で、変形速度1.5〜15倍および延伸張力1.0〜2.5cN/dtexの条件下に延伸倍率1.2〜3.0倍で後延伸することによって円滑に製造することができる。
前記した前延伸および後延伸は、熱風炉または熱プレートを用いて行うことが、延伸処理が円滑に行われる点から好ましい。前延伸および後延伸の両方を熱風炉を用いて行ってもよいし、前延伸と後延伸の両方を熱プレートを用いて行ってもよいし、前延伸を熱風炉を用いて行い、後延伸を熱プレートを行ってもよいし、または前延伸を熱プレートを用いて行い、後延伸を熱風炉を用いて行ってもよい。
前延伸および/または後延伸を熱風炉を用いて行う場合は、前延伸時の上記温度および後延伸時の上記温度は熱風炉の雰囲気温度をいい、また前延伸および/または後延伸を熱プレートを用いて行う場合は、前延伸時時の上記温度および後延伸時の上記温度は熱プレートの温度をいう。
冷却固化してなるポリプロピレン未延伸繊維(未延伸糸)の前延伸は、1段で行ってもよいし、または多段で行ってもよく、一般的には1段〜3段で行うことが好ましい。
また、前延伸したポリプロピレン延伸繊維(延伸糸)の後延伸は、1段で行ってもよいし、または多段で行ってもよく、一般的には1段〜5段で行うことが好ましい。
延伸処理を行うに当たっては、前延伸して得られるポリプロピレン延伸繊維(延伸糸)を巻き取らずにそのまま引き続いて後延伸する方法を採用してもよいし、または前延伸して得られるポリプロピレン延伸繊維(延伸糸)を冷却(一般に室温程度)して巻き取った後に再度巻き出して後延伸する方法を採用してもよい。そのうちでも、前延伸して得られるポリプロピレン延伸繊維(延伸糸)を一旦巻き取った後に巻き戻して後延伸する後者の方法が、本発明の複合材料に用いる上記した特性を備えるポリプロピレン繊維をより円滑に得ることができる点から好ましい。
前延伸は、冷却固化してなるポリプロピレン未延伸繊維(未延伸糸)を、温度(雰囲気温度)が120〜150℃、特に125〜140℃の熱風炉に導入するか、または温度が120〜150℃、特に125〜140℃の熱プレートに接触させて、1段または多段で延伸倍率3〜10倍、特に3〜5倍で行うことが好ましい。
また、後延伸は、前記した条件下で前延伸して得られるポリプロピレン延伸繊維(延伸糸)を、温度(雰囲気温度)が170〜190℃、更には170〜185℃、特に170〜180℃の熱風炉に導入するか、または温度が170〜190℃、更には170〜185℃、特に170〜180℃の熱プレートに接触させて、1段または多段で延伸倍率1.2〜3.0倍、特に1.3〜2.5倍で行うことが好ましい。
熱風炉または延伸プレートを用いて後延伸を行う際には、熱風炉の雰囲気温度または延伸プレート温度を、後延伸処理を施す直前のポリプロピレン繊維のDSC曲線での吸熱開始温度+10℃以上の温度にして後延伸を行うことが好ましい。
前延伸および後延伸の総延伸倍率は3.9〜20倍であることが好ましく、4.5〜11倍であることがより好ましく、4.7〜10.5倍であることが更に好ましい。
また、ポリプロピレン未延伸繊維(未延伸糸)を製造するための溶融紡糸速度をA(m/分)とし、前記した前延伸および後延伸を行った後の総延伸倍率をB(倍)としたときに、A×Bの値が、3000〜17000(m・倍/分)、特に3500〜15000(m・倍/分)の範囲になるようにして、ポリプロピレンの溶融紡糸と前記した前延伸および後延伸を行うと、目的とするポリプロピレン繊維を円滑に製造することができる。
ここで、前延伸における前記した延伸倍率は、前延伸工程から排出された直後の繊維(糸)の長さを前延伸工程に導入された未延伸繊維(未延伸糸)の長さで除した値をいい、また後延伸における前記した延伸倍率は、後延伸工程から排出された直後の繊維(糸)の長さを後延伸工程に導入された繊維(糸)の長さで除した値をいう。
また、前記した前延伸および後延伸の総延伸倍率とは、後延伸工程から排出された直後の繊維(糸)の長さを前延伸工程に導入された未延伸繊維(未延伸糸)の長さで除した値をいう。
後延伸は、前記した温度(170〜190℃)および延伸倍率(1.2〜3.0倍)を採用すると共に、変形速度1.5〜15倍/分および延伸張力1.0〜2.5cN/dtexという条件を採用して行う。かかる後延伸条件を採用することによって、本発明で用いる上記した特性を備えるポリプロピレン繊維を得ることができる。
後延伸時の変形速度は1.6〜12倍/分であることが好ましく、1.7〜10倍/分であることがより好ましい。
また、後延伸時の延伸張力は、1.1〜2.5cN/dtexが好ましく、1.3〜2.5cN/dtexがより好ましい。
ここで、後延伸における前記した変形速度とは、後延伸での延伸倍率(倍)を後延伸に要した時間(分)[熱風炉で後延伸する場合は繊維(糸)が熱風路内に存在していた時間、延伸プレートで後延伸する場合は繊維(糸)が延伸プレートに接触していた時間]で除した値をいい、後延伸を多段で行った場合は、後延伸での最終延伸倍率(合計延伸倍率)を後延伸に要した延伸処理時間の合計で除した値をいう。
また、後延伸における前記延伸張力は、後延伸における最終段の延伸を行った直後の糸の張力を、張力計を用いて測定する。
また上記した条件下でポリプロピレン繊維を延伸した後、熱固定あるいは収縮処理を施してもよい。その際の処理温度、収縮率は、本発明で用いるポリプロピレン繊維の特性を損なわない範囲において、特に限定されるものではない。
IPFが94%以上のポリプロピレンを溶融紡糸した後に冷却固化してなるポリプロピレン未延伸繊維を、上記した条件下で前延伸した後に更に上記した条件下で後延伸してポリプロピレン繊維を製造する上記した方法により、耐熱性および強度に優れるポリプロピレン繊維、特に、DSC測定による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であり、且つ繊維強度が7cN/dtex以上である、耐熱性および強度に優れるポリプロピレン繊維を円滑に製造することができる。
さらに、IPFが94%以上のポリプロピレンを溶融紡糸した後に冷却固化してなるポリプロピレン未延伸繊維を、上記した条件下で前延伸した後に更に上記した条件下で後延伸してポリプロピレン繊維を製造する際に、前延伸工程に供給するポリプロピレン未延伸繊維の単繊維繊度、前延伸および/または後延伸における延伸倍率などを調整することによって、最終的に単繊維繊度が3dtex以下、特に0.1〜3dtexのポリプロピレン繊維が得られるようにすることによって、上記した7cN/dtex以上の繊維強度、上記した特定のDSC特性[DSCによる吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であるという特性]と共に、表面に大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に存在してなる平均間隔が6.5〜20μmで平均高さが0.35〜1μmの凹凸を有する」という特定の凹凸構造を有するポリプロピレン繊維を得ることができる。このポリプロピレン繊維は、耐熱性および強度に優れると共に表面に前記した特定の凹凸を有することによって高い保水性を有しているため、このポリプロピレン繊維を用いてシート状繊維構造体を形成することにより、保水性、力学的特性および耐熱性に優れるシート状繊維構造体が得られる。
本発明のシート状繊維構造体は、上記したポリプロピレン繊維を、シート状繊維構造体の質量に基づいて、50質量%以上の割合で含んでおり、60質量%以上の割合で含むことが好ましく、65質量%以上の割合で含むことがより好ましい。
シート状繊維構造体における上記したポリプロピレン繊維の含有割合が少なすぎると、当該ポリプロピレン繊維が有する高い保水性能、耐熱性、強度などの優れた性能を、シート状繊維構造体に付与できなくなる。
本発明のシート状繊維構造体の種類、形態などは特に制限されず、上記したポリプロピレン繊維を50質量%以上の割合で含むシート状の繊維構造体であればよく、例えば、織編物、不織布、合成紙、網状物、それらの2種以上を積層してなる積層繊維構造体などを挙げることができる。
本発明のシート状繊維構造体が織物である場合は、例えば、ジェット織機、スルザー織機、ラピヤー織機、ドビー織機、ジャガード織機などを使用して製造される平織物、斜文織物、朱子織物、スダレ状の織物、多軸織物、多層織物などのいずれであってもよい。
また、本発明のシート状繊維構造体が編物である場合は、丸編み機、縦編み機、横編み来、トリコット機などを使用して得られる種々の編物であることができる。
本発明のシート状繊維構造体が不織布である場合は、湿式抄造不織布、ニードルパンチ不織布、サーマルボンド不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布などのいずれであってもよい。
本発明のシート状繊維構造体が、上記したポリプロピレン繊維と共に他の繊維を含む場合は、他の繊維の種類は特に制限されず、例えば、綿、絹、羊毛、麻などの天然繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリビニルアルコール繊維、上記したポリプロピレン繊維以外のポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維などのポリオレフィン繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アラミド繊維、ポリアリレート繊維などの合成繊維、ビスコース、レーヨンなどの半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維などの1種または2種以上を、50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下の割合で併用することができる。
上記したポリプロピレン繊維と共に他の繊維を併用する場合は、併用形態は特に制限されず、シート状繊維構造体の種類、形態、用途などに応じて適宜選択することができる。本発明のシート状繊維構造体は、例えば、上記したポリプロピレン繊維からなる糸と他の繊維からなる糸を用いて作製した織編物や網状物であってもよいし、上記したポリプロピレン繊維と他の繊維を混紡して得た糸を用いて作製した織編物や網状物であってもよいし、上記したポリプロピレン繊維と他の繊維を混綿して作製した不織布、合成紙であってもよいし、上記したポリプロピレン繊維よりなる織編物または不織布と他の繊維よりなる織編物または不織布との積層体であってもよい。
何ら限定されるものではないが、本発明のシート状繊維構造体の例としては、上記したポリプロピレン繊維からなる糸を単独で用いて製造した織物、編物、網状物、上記したポリプロピレン繊維と他の合成繊維、天然繊維および/または半合成繊維を混紡して得た混紡糸を用いて製造した織物、編物、網状物、上記したポリプロピレン繊維からなる糸と、他の合成繊維からなる糸および/または天然繊維からなる糸を組み合わせて作製した織物、編物、網状物などを挙げることができる。例えば、上記したポリプロピレン繊維と綿を混紡した糸を用いるかまたは上記したポリプロピレン繊維よりなる糸と綿紡績糸を組み合わせて用いて編地(ニット)を製造すると、耐熱性に優れていて体育館の床などと摩擦しても溶融することがなく、軽量で、しかも保水性が高くて吸汗性に優れるスポーツ衣料用として好適な編地(ニット)を得ることができる。
また、本発明のシート状繊維構造体が、不織布や合成紙である場合は、例えば、上記したポリプロピレン繊維に捲縮を付与し、切断し、カーディング後にニードルパンチを施して製造したフェルト状の不織布、上記したポリプロピレン繊維に捲縮を付与し、切断し、カーディングする際に当該ポリプロピレン繊維よりも低温で溶融する表面部分を少なくとも有するバインダー繊維(例えば芯部分がポリプロピレンからなり鞘部分がポリエチレンからなる芯鞘型複合繊維など)を混綿し熱処理してポリプロピレン繊維をバインダー繊維で結合してなる乾式不織布、上記したポリプロピレン繊維からなる短繊維にバインダー繊維を混合して水分散スラリーを調製した後に抄造し、乾燥処理することにより得られる湿式不織布(合成紙)などを挙げることができる。上記したポリプロピレン繊維を用いて形成した本発明の不織布は、当該ポリプロピレン繊維が高い耐熱性を有していて、接着処理工程、乾燥処理工程などの処理工程を高温で行うことができるため、当該不織布を高い生産速度で製造することができる。
上記したポリプロピレン繊維を用いて形成してなる本発明のシート状繊維構造体は、保水率が高くて保水性に優れ、耐熱性、力学的特性、耐薬品性などにも優れるため、それらの特性を活かして、工業用フィルター、アルカリ2次電池セパレーター、ポリプロピレン繊維補強ポリオレフィンシート、衣類用布帛(織編物、不織布など)、衛生用品、日用雑貨などの種々の用途に有効に使用することができる。
以下に実施例などにより本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。以下の実施例などにおいて、ポリプロピレンのアイソタクチックペンタッド分率(IPF)、延伸時の延伸張力、ポリプロピレン繊維のDSC特性、単繊維繊度、繊維強度、繊維表面の凹凸の平均間隔および平均高さ、ポリプロピレン繊維の保水率およびシート状繊維構造体(ポリプロピレン繊維製不織布)の保水率並びにシリンダー乾燥処理の工程性は、以下に記載した方法で測定、算出または評価した。
(1)ポリプロピレンのアイソタクチックペンタッド分率(IPF):
超伝導核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製「Lambda500」)を使用して、非特許文献1に記載されている「13C−NMRスペクトル法」に従ってポリプロピレンのIPFを求めた。具体的には、ポリプロピレン中における、13C−NMRスペクトルにおいてプロピレン単量体単位が5個連続してアイソタクチック結合したプロピレン単位(アイソタクチックペンタッド単位)の含有割合(分率)(%)を求めてIPFとした。その際に、13C−NMRスペクトルにおけるピークの帰属に関しては、非特許文献2に記載されている方法に従って決定した。
(2)延伸時の延伸張力:
荷重張力計測器(日本電産シンポ社製「DTMX−5B」)を使用して、延伸炉(熱風炉)から出た直後の糸、または延伸プレートから離れた直後の糸の張力を測定して延伸張力(cN/dtex)とした。
(3)ポリプロピレン繊維の繊度(単繊維繊度):
ポリプロピレン繊維を、温度20℃および相対湿度65%の雰囲気下に5日間放置して調湿した後、調湿したポリプロピレン繊維(単繊維)の一定長(900mm)を採取し、その質量を測定して繊度を算出した。同じ調湿ポリプロピレン繊維について、前記と同じ測定操作を10回行い、その平均値を採ってポリプロピレン繊維の繊度(単繊維繊度)とした。なお、繊維が細くて一定試長の質量測定により繊度が測定できない場合は、同じ調湿繊維について、繊度測定装置(Textechno製「VIBROMAT M」)を使用して繊度を測定した。
(4)ポリプロピレン繊維の繊維強度:
ポリプロピレン繊維を温度20℃および相対湿度65%の雰囲気下に5日間放置して調湿した後、ポリプロピレン繊維(単繊維)を長さ60mmに切断して試料とし、当該試料(長さ60mmのポリプロピレン単繊維)の両端を把持して(両端から10mmまで把持)、繊維強度測定装置(Textechno製「FAFEGRAPH M」)を使用して、温度20℃、相対湿度65%の環境下で、引張速度60mm/分で伸張して、切断時の応力を測定し、その値をポリプロピレン単繊維の繊度で除して繊維強度(cN/dtex)を求めた。なお同じポリプロピレン繊維について同じ操作を10回行って繊維強度を求め、その平均値を採ってポリプロピレン繊維(ポリプロピレン単繊維)の繊維強度とした。
(5)ポリプロピレン繊維の繊維表面の凹凸の平均間隔および平均高さ:
走査型電子顕微鏡(HITACHI製「S−510」)を使用して、ポリプロピレン繊維(単繊維)を、繊維軸に対して垂直方向から1000倍の倍率で写真撮影し、得られた写真について、図1に基づいて先に説明した方法にしたがって、繊維表面の凹凸の平均間隔および平均高さを求めた。平均間隔および平均高さの算出に当たっては、10本のポリプロピレン繊維(単繊維)について、1本の繊維につき、5箇所(各測定箇所の間隔10cm)ずつを選んでその箇所での凹凸の間隔および高さを測定し(延べ50箇所)、その平均値を採って、凹凸の平均間隔(μm)および平均高さ(μm)とした。
(6)ポリプロピレン繊維のDSC測定:
ポリプロピレン繊維を温度20℃および相対湿度65%の雰囲気下に5日間放置して調湿した後、長さ1mmに切断し、その5mgを量り採ってアルミパン(容量100μL)(METTLER TOLEDO社製「No.51119872」)に入れ、アルミパンカバー(METTLER TOLEDO社製「No.51119871」)を用いてシールし、走査示差熱量測定器(TA Instuments社製「DSC2010」)を使用して、窒素雰囲気中で、昇温速度10℃/分で測定した1st runのDSC曲線から、吸熱ピークの半価幅(℃)および融解エンタルピー変化量(△H)(J/g)を、図2および図3(特に図3)を参照して前述した方法で求めた。
(7)ポリプロピレン繊維およびシート状繊維構造体(ポリプロピレン繊維製不織布)の保水率:
ポリプロピレン繊維またはシート状繊維構造体(ポリプロピレン繊維製不織布)の1gを採取して、105℃で5時間乾燥させて、その質量(M1)を測定した。前記の乾燥試料をイオン交換水30ml中に浸漬して、20℃で10分間静置した後、取り出して露出状態(他の材料で包まずに)のままで卓上遠心機(KOKUSAN社製「H−27F」)に入れて、温度20℃の温度で、3000rpmの回転速度で5分間遠心脱水し、そのときの質量(M2)を測定して、下記の数式(1)から保水率(質量%)を求めた。

保水率(質量%)={(M2−M1)/M1}×100 (1)
(8)シリンダー乾燥処理の工程性:
シリンダー乾燥処理の工程性を以下の評価基準に従って評価した。
[シリンダー乾燥処理の工程性の評価基準]
良好:シリンダーへのポリプロピレン繊維シートの付着がなく、良好に通過し、乾燥処理後の風合が良好で、保水率の減少がみられない。
不良:シリンダーへのポリプロピレン繊維シートの貼付があり、通過性に劣り、乾燥処理後に保水率の低下などが起きる。
《製造例1》[ポリプロピレン繊維(a−1)の製造]
(1) ポリプロピレン[プライムポリマー社製「Y2000GV」、IPF=97%、MFR=18g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を溶融紡糸装置の押出機に投入して240℃で溶融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温度245℃の紡糸口金[孔数24個(円形孔)、孔径0.2mm]から22.3g/分の量で吐出し、800m/分の引き取り速度でポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って、室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=288dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、2段で4.6倍に前延伸してポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取り、室温で保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=63dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=153.5℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風炉に導入して、変形速度1.7倍/分および延伸張力1.18cN/dtexの条件下に、3段で1.3倍に後延伸して、総延伸倍率が6.0倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=48dtex/24フィラメント)[ポリプロピレン繊維(a−1)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ポリプロピレン繊維(a−1)]について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および平均高さ)および保水率の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
また、上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ポリプロピレン繊維(a−1)]を、走査型電子顕微鏡(HITACHI製「S−510」)を使用して写真撮影(倍率1000倍)したところ、図4に示すとおりであった。
《製造例2》[ポリプロピレン繊維(a−2)の製造]
(1) 製造例1の(1)において、未延伸糸の引き取り速度を3000m/分に変えた以外は製造例1の(1)と同じ操作を行って、ポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=214dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、2段で3.1倍に前延伸して、ポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温で保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=69dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=155.3℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風炉に導入して、変形速度1.8倍/分および延伸張力1.34cN/dtexの条件下に、3段で1.5倍に後延伸して、総延伸倍率が4.7倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=46dtex/24フィラメント)[ポリプロピレン繊維(a−2)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ポリプロピレン繊維(a−2)]について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および平均高さ)および保水率の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《製造例3》[ポリプロピレン繊維(a−3)の製造]
(1) 製造例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレンを溶融紡糸装置の押出機に投入して240℃で溶融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温度245℃の紡糸口金[孔数48個(十字形孔)、孔径0.2mm]から20.2g/分の量で吐出し、800m/分の引き取り速度でポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=436dtex/48フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度138℃の熱風炉に導入して、2段で3.9倍に前延伸して、ポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温で保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=112dtex/48フィラメント、吸熱開始温度=155.2℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風炉に導入して、変形速度2.1倍/分および延伸張力1.12cN/dtexの条件下に、1段で1.3倍に後延伸して、総延伸倍率が5.1倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=86dtex/48フィラメント)[ポリプロピレン繊維(a−3)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ポリプロピレン繊維(a−3)]について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および平均高さ)および保水率の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《製造例4》[ポリプロピレン繊維(a−4)の製造]
(1) ポリプロピレン[プライムポリマー社製「ZS1337A」、IPF=96%、MFR=20g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を用いて、製造例1の(1)と同じ溶融紡糸条件を採用して、ポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取った(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=288dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度135℃の熱風炉に導入して、2段で4.8倍に前延伸して、ポリプロピレン前延伸糸を製造しボビンに巻き取って室温に保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=60dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=152.0℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風炉に導入して、変形速度1.6倍/分および延伸張力1.33cN/dtexの条件下に、3段で1.8倍に後延伸して、総延伸倍率が8.6倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=50dtex/24フィラメント)[ポリプロピレン繊維(a−4)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ポリプロピレン繊維(a−4)]について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および平均高さ)および保水率の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《製造例5》[ポリプロピレン繊維(a−5)の製造]
(1) ポリプロピレン[IPF=98%、MFR=16g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を用いて、製造例1の(1)と同じ溶融紡糸条件を採用して、ポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取った(未延伸糸の総繊度=293dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、2段で4.6倍に前延伸してポリプロピレン前延伸糸を製造しボビンに巻き取って室温に保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=64dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=156.4℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度178℃の熱風炉に導入して、変形速度2.8倍/分および延伸張力1.54cN/dtexの条件下に、4段で2.2倍に後延伸して、総延伸倍率が10.1倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=29dtex/24フィラメント)[ポリプロピレン繊維(a−5)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ポリプロピレン繊維(a−5)]について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、摩擦防融性、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および平均高さ)および保水率の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《製造例6》[ポリプロピレン繊維(a−6)の製造]
(1) ポリプロピレン[IPF=98%、MFR=16g/10分(230℃、荷重2.16kg)]およびポリプロピレン[プライムポリマー社製「Y3002G」、IPF=93%、MFR=30g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を1:1の質量比で混合した混合物(混合物のIPF=95.5%)を用いて、製造例1の(1)と同じ溶融紡糸条件を採用して、ポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取った(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=288dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、2段で4.6倍に前延伸して、ポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温に保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=63dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=152.5℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度171℃の熱風炉に導入して、変形速度1.7倍/分および延伸張力1.18cN/dtexの条件下に、3段で1.3倍に後延伸して、総延伸倍率が6.0倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=48dtex/24フィラメント)[ポリプロピレン繊維(a−6)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ポリプロピレン繊維(a−6)]について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および平均高さ)および保水率の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《製造例7》[ポリプロピレン繊維(a−7)の製造]
(1) 溶融紡糸装置の紡糸ヘッドに芯鞘型複合繊維製造用の紡糸口金[孔数24個(円形孔)、孔径0.2mm]を取り付け、ポリプロピレン(プライムポリマー社製「Y3002G」、IPF=93%)を芯成分およびポリプロピレン[IPF=98%、MFR=16g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を鞘成分として用いて、芯成分:鞘成分=1:2の質量比で、240℃で溶融混練し、紡糸口金(口金温度245℃)から22.3g/分の量で吐出し、800m/分の引き取り速度でボビンに巻き取って芯鞘型のポリプロピレン未延伸糸を製造して、室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=287dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、2段で4.6倍に前延伸してポリプロピレン前延伸糸を製造しボビンに巻き取って室温に保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=62dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=152.2℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度171℃の熱風炉に導入して、変形速度1.8倍/分および延伸張力1.18cN/dtexの条件下に、3段で1.3倍に後延伸して、総延伸倍率が6.0倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=48dtex/24フィラメント)[ポリプロピレン繊維(a−7)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ポリプロピレン繊維(a−7)]について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および平均高さ)および保水率の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《製造例8》[ポリプロピレン繊維(a−8)の製造]
(1) 製造例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレンを用いて製造例1の(1)と同じ条件を採用してポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取った。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、1段で4.6倍に前延伸して、ポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温に保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=63dtex/24フィラメント)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度172℃の熱プレートに接触させて、変形速度13.8倍/分および延伸張力1.43cN/dtexの条件下に、1段で1.6倍に後延伸して(熱プレートへの接触時間=15秒)、総延伸倍率が7.4倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=39dtex/24フィラ
メント)[ポリプロピレン繊維(a−8)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ポリプロピレン繊維(a−8)]について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および平均高さ)および保水率の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《製造例9》[ポリプロピレン繊維(b−1)の製造]
(1) ポリプロピレン(プライムポリマー社製「Y3002G」、IPF=93%)を用いて、製造例1の(1)と同じ溶融紡糸条件を採用して、ポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取って、室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=288dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、2段で4.6倍に前延伸して、ポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温に保存し(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=68dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=151.8℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度171℃の熱風炉に導入して、変形速度1.7倍/分および延伸張力0.96cN/dtexの条件下に、3段で1.3倍に後延伸して、総延伸倍率が6.0倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=48dtex/24フィラメント)[ポリプロピレン繊維(b−1)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ポリプロピレン繊維(b−1)]について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度および保水率を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。なお、この製造例9で得られたポリプロピレン繊維は、表面に凹凸を有していなかった。
《製造例10》[ポリプロピレン繊維(b−2)の製造]
(1) 製造例1の(1)および(2)と同じ操作を行ってポリプロピレン前延伸糸[ポリプロピレン繊維(b−2)]を製造した。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン前延伸糸[ポリプロピレン繊維(b−2)]について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度および保水率を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。なお、この製造例10で得られたポリプロピレン繊維は、表面に凹凸を有していなかった。
《製造例11》[ポリプロピレン繊維(b−3)の製造]
(1) 製造例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレン(プライムポリマー社製「Y2000GV」、IPF=97%)を用いて、製造例1の(1)と同じ溶融紡糸条件を採用して、ポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取った。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度143℃の熱風炉に導入して、1段で6.9倍に延伸して、ポリプロピレン延伸糸(総繊度=42dtex/24フィラメント)[ポリプロピレン繊維(b−3)]を製造した。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸[ポリプロピレン繊維(b−3)]について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および平均高さ)および保水率の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《製造例12》[ポリプロピレン繊維(b−4)の製造]
(1) ポリプロピレン[プライムポリマー社製「ZS1337A」、IPF=96%、MFR=20g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を溶融紡糸装置の押出機に投入して300℃で溶融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温度320℃の紡糸口金[孔数24個(円形孔)、孔径0.2mm]から22.3g/分の量で吐出し、600m/分の引き取り速度でポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って、室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の「総繊度=304dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度90℃の加熱ロールにより1段で1.5倍に前延伸した後、ボビンに巻き取って室温に保存し(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=203dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=150.8℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度138℃の熱風炉に導入して、1段で4.9倍に後延伸して、総延伸倍率が7.4倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=40.8dtex/24フィラメント)[ポリプロピレン繊維(b−4)]を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸[ポリプロピレン繊維(b−4)]について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および平均高さ)および保水率の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《製造例13》[ポリプロピレン繊維(b−5)の製造]
(1) 製造例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレン[プライムポリマー社製「Y2000Gv」、IPF=97%、MFR=18g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を溶融紡糸装置の押出機に投入して255℃で溶融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温度260℃の紡糸口金[孔数24個(円形孔)、孔径0.2mm]から35.4g/分の量で吐出し、600m/分の引き取り速度でポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って、室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の「総繊度=635dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度145℃のスチーム槽により1段で11.5倍に延伸して、ポリプロピレン延伸糸(総繊度=55.2dtex/24フィラメント)[ポリプロピレン繊維(b−5)]を製造した。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸[ポリプロピレン繊維(b−5)]について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度、表面の凹凸寸法(凹凸の平均間隔および平均高さ)および保水率の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《実施例1〜8》
(1) 製造例1〜18で得られたポリプロピレン繊維(a−1)〜(a−8)のそれぞれを繊維長51mmに切断して短繊維にし、カーディング、水流交絡処理、カレンダー処理(温度140℃)およびシリンダー乾燥処理(温度170℃、移送速度50cm/秒)を順次行って、シート状繊維構造体(ポリプロピレン繊維製不織布)を製造した。
(2) 上記(1)で得られたシート状繊維構造体(ポリプロピレン繊維製不織布)の保水率およびシリンダー乾燥処理の工程性を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
《比較例1〜5》
(1) 製造例9〜13で得られたポリプロピレン繊維(b−1)〜(b−5)のそれぞれを繊維長51mmに切断して短繊維にし、実施例1〜8と同じ条件下で、カーディング、水流交絡処理、カレンダー処理(温度140℃)およびシリンダー乾燥処理(温度170℃、移送速度50cm/秒)を順次行って、シート状繊維構造体(ポリプロピレン繊維製不織布)を製造した。
(2) 上記(1)で得られたシート状繊維構造体(ポリプロピレン繊維製不織布)の保水率およびシリンダー乾燥処理の工程性を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
上記の表2にみるように、実施例1〜8では、IPFが94%以上のポリプロピレンよりなる、繊維強度が7cN/dtex以上で、単繊維繊度と繊維表面の凹凸特性が本発明で規定する要件を満たすか、DSC特性が本発明で規定する要件を満たすか、或いは単繊維繊度と繊維表面の凹凸特性とDSC特性とが本発明で規定する要件を満たしているポリプロピレン繊維(a−1)〜(a−8)のいずれかを用いてシート状繊維構造体(ポリプロピレン繊維製不織布)を製造したことにより、実施例1〜8で得られたシート状繊維構造体(ポリプロピレン繊維製不織布)は、保水率が10.2〜25.0質量%と高くて、保水性に優れており、更に耐熱性に優れていてシリンダー乾燥処理の工程性が良好である。
それに対して、比較例1〜5では、繊維表面における凹凸特性およびDSC特性の両方が本発明の規定から外れているポリプロピレン繊維(b−1)〜(b−5)のいずれかを用いてシート状繊維構造体を製造したことにより、比較例1〜5で得られたシート状繊維構造体(ポリプロピレン繊維製不織布)は、保水率が3.5〜8.0質量%であって、実施例1〜8で得られたシート状繊維構造体(ポリプロピレン繊維製不織布)に比べて保水率が大幅に低く、保水性に劣っており、更にシリンダー乾燥処理の工程性が不良で、耐熱性の点でも実施例1〜8で得られたシート状繊維構造体(ポリプロピレン繊維製不織布)に比べて大きく劣っている。
本発明のシート状繊維構造体は、表面に特定の凹凸を有し、結晶性が高く、均一な結晶構造を有し、耐熱性に極めて優れ、更に高い繊維強度を有するポリプロピレン繊維を用いて形成されているため、保水性、耐熱性、強度に優れており、例えば、フィルター、セパレータ、補強材、衣類、ワイパー、化粧落しなどの種々の用途に有効に使用することができる。
本発明のシート状繊維構造体を形成するポリプロピレン繊維の凹凸形状を模式的に示すと共に、凹凸の平均間隔および平均高さの求め方について説明した図である。 ポリプロピレン繊維におけるDSC測定による吸熱ピーク形状を模式的に示した図である。 ポリプロピレン繊維のDSC測定による吸熱ピークにおける半価幅の求め方を示した図である。 製造例1で得られたポリプロピレン繊維の走査型電子顕微鏡で撮影した写真である。

Claims (4)

  1. アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上のポリプロピレンよりなる、繊維強度が7cN/dtex以上であり、且つ単繊維繊度が0.1〜3dtexで、表面に大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に存在してなる平均間隔が6.5〜20μmで平均高さが0.35〜1μmの凹凸を有するポリプロピレン繊維を50質量%以上の割合で含むことを特徴とするシート状繊維構造体。
  2. アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上のポリプロピレンよりなる、繊維強度が7cN/dtex以上であり、且つ走査示差熱量測定(DSC)による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であるポリプロピレン繊維を50質量%以上の割合で含むことを特徴とするシート状繊維構造体。
  3. アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上のポリプロピレンよりなる、繊維強度が7cN/dtex以上であり、単繊維繊度が0.1〜3dtexで、走査示差熱量測定(DSC)による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であり、表面に大径の隆起部と小径の非隆起部が繊維軸に沿って交互に存在してなる平均間隔が6.5〜20μmで平均高さが0.35〜1μmの凹凸を有するポリプロピレン繊維を50質量%以上の割合で含むことを特徴とするシート状繊維構造体。
  4. 保水率が10質量%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のシート状繊維構造体。
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