JP6042762B2 - ポリプロピレン繊維及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、極細かつ高強力で寸法安定性に優れ、特にバッテリーセパレーター、マスク、各種フィルターなどの不織布用途に適したポリプロピレン短繊維とその製造方法に関する。
天然パルプ、合成パルプ、合成繊維ショートカット綿、またはこれらの混合物を、水溶液中に分散し抄紙して湿式不織布が従来から盛んに生産されている。特に最近では、不織布の分離性を利用した電池用セパレーター又は電気二重層キャパシタ用セパレーターの用途が知られている。そして、近年の電子機器の小型軽量化に伴って、電池又はキャパシタの占めるスペースも狭くなっているにもかかわらず、電池又はキャパシタには従来と同程度以上の性能が必要とされるため、電池又はキャパシタの高容量化が要求され、電極の活物質量を増やす必要がある。そのため、必然的にセパレーターの占める体積が小さくならざるを得ず、最近では厚さ0.1mm以下のセパレーターが市場で要求されている。よって、単糸繊維の細繊度化が進んでいる。しかしながら、ポリプロピレン樹脂を原料とした場合、従来の溶融紡糸法では延伸倍率の限界から、0.7デニール程度の繊度の繊維しか得られず、ポリプロピレン繊維の極細化は難しかった。一方、メルトブローにより0.7デシテックス以下の極細化が達成されているが、高度にネック延伸されていないため強度が低く、不織布引裂強度や不織布突刺強度が十分に出ないため、製品寿命が短くなったり、単糸繊維の熱収縮率が高いために高温下の不織布寸法安定性に欠ける。
通常の溶融紡糸法による極細ポリプロピレン繊維としては、例えばメルトフローレート値が50〜300g/10分のポリオレフィンを紡糸温度180〜240℃、紡糸孔径1.2mm以下の紡糸口金にて紡糸し、次いで延伸倍率2〜7倍、延伸温度50〜90℃の条件で延伸することを特徴とする単繊維繊度が1.1dtex以下、繊維強度が2.6cN/dtex以上であるポリオレフィン極細長繊維が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。但し実施例で達成されている繊維の繊度は最も細いもので0.69dtexまでであり、かつ、強度も5.35cN/dtexまでに過ぎず、繊度0.6dtex以下で強度5.5cN/dtex以上の極細高強度のポリプロピレン繊維は示されていない。また同特許文献を含む殆どの極細高強度ポリプロピレン繊維は比較的総繊度の少ないマルチフィラメント(長繊維)であり、一般的な短繊維の製造プロセスである5万dtex以上のトウの状態で延伸すると、延伸前の加熱効率が悪く、加熱不足のトウが切断して極めて生産性が悪いことが本発明者らの検討で判明し、前述の極細高強度ポリオレフィン繊維を短繊維の製造プロセスで延伸する方法は示されていないのが実情である。
特許第3592266号公報
本発明は前述のような問題点を解決するためになされたものであり、セパレーター用途に適した極小ポアサイズと不織布強度、寸法安定性を全て持ち合わせた不織布の提供を可能とする、極細高強度ポリプロピレン短繊維を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために検討を行った結果、メルトフローレート(MFR)が30〜100g/10分であるアタクチックポリプロピレン40質量%以上からなり、繊維全体がポリオレフィン樹脂からなる繊維であって、単糸繊度が0.08〜0.6dtex、破断強度が5.5〜8.0cN/dtex、10%伸長強度が3.5〜6.0cN/dtex、破断伸度が10〜50%、120℃乾熱収縮率が0〜10.0%であることを特徴とするポリプロピレン繊維によって上記課題を解決できることを見出した。また、このポリプロピレン繊維は、アイソタクチックタクチックポリプロピレン40質量%以上からなるメルトフローレート(MFR)が30〜100g/10分のポリプロピレンを用い、5万dtex以上の未延伸トウを、90℃以上の温水中で定長熱処理後、90℃以上の温水中で延伸を行い、更に100〜140℃の定長熱処理を施すことで、前述の極細かつ高強度のポリプロピレン短繊維を高生産能力で製造できることを見出し、本発明に到達した。
このような利点を有する用途は幅広いが、特に、低ポアサイズかつ高強度・低熱収縮の不織布性能が要求される、電池用セパレーター、フィルターやコンクリート補強繊維等の産業資材用途に好適に用いることができる。
以下、本願発明について詳細に説明する。本発明において使用されるアイソタクチックポリプロピレン(以下、i−PPと略す)は、アイソタクチック・ペンタッド分率(IPF;モル%)が90モル%以上の高結晶性ポリプロピレンを示し、プロピレンの単独重合体の他、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1等のプロピレン以外のα−オレフィンを本発明の効果を著しく低下させない範囲、通常5モル%以下、特に、2モル%以下で含有するプロピレン−αオレフィン共重合体を含む。ここで、アイソタクチック・ペンタッド分率とは、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に記載されている方法、すなわち13C−NMRによって測定されるプロピレン重合体分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である(ただし、NMR吸収ピークの帰属は、その後発刊されたMacromolecules,8,687(1975)に基づいて決定される)。具体的には、13C−NMRスペクトルによって測定されるメチル炭素領域の吸収ピークの面積に対する、mmmmピークの面積の割合が、アイソタクチック・ペンタッド分率である。
また、本発明に用いられるi−PPは、メルトフローレート(以下、MFRと略す)が30〜100g/10分、好ましくは35〜80g/10分であることが肝要である。このMFR値は、JIS K 7210に準拠し、試験温度230℃、試験荷重2.16kgの測定条件での測定値である。i−PPのMFRが30g/10分未満であると、溶融後の伸長粘度が高く、溶融紡糸時に細い未延伸糸を採取するのが困難であり、また、延伸工程においても延伸倍率が上がりにくいため、極細化が難しい。また、MFRが100g/10分を超えると、流動性が高すぎて溶融紡糸を行うこと自体難しくなり、また、延伸後の繊維の強度と伸度ともに低下し、不織布の引張強度や突刺強度が低下する傾向にある。より好ましいMFR値は36〜60g/10分の範囲である。
また、本発明の極細高強度ポリプロピレン繊維は、メルトフローレート(MFR)が30〜100g/10分であるi−PP40質量%以上から構成されていればよく、繊維全体を前述のi−PPが100重量%で構成されてもよいし、他のポリオレフィンポリマーとの複合繊維であってもよい。複合繊維の形態としては、芯または鞘が前述のi−PPである芯鞘または偏芯芯鞘複合繊維、サイドバイサイドの貼合せ型複合繊維、セグメントパイ型分割型複合繊維、海島型複合繊維であってもよい。他のポリオレフィンポリマーとしては、強度面から、高密度ポリエチレン(以下、HDPEと略す)あるいはエチレンとプロピレン、ブテン−1を主成分とするランダム共重合体等が好適である。また、本発明においては、上記ポリプロピレンの2種類以上のポリプロピレンを混合して使用してもよく、必要によりポリエチレンなどの他の樹脂を少量添加してもよい。但し、0.6dtex以下の高強度繊維を得るには、MFR30〜100g/10分のi−PPが40質量%以上含まれている必要があり、該i−PPが40質量%未満となると、5.5cN/dtex以上の強度を達成できない。
本発明の極細高強度ポリプロピレン短繊維には、使用目的に応じて適宜従来公知のポリオレフィン用改質剤を併用することができる。例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、界面活性剤、中和剤、分散剤、エポキシ安定剤、結晶核剤、可塑剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、発泡剤、発泡助剤、架橋剤、架橋助剤、無機充填剤、有機充填剤、顔料等である。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤及びビタミン類などが挙げられる。分散剤をかねた中和剤としては、金属石鹸、ハイドロタルサイト類、リチウムアルミニウム複合水酸化物塩、ケイ酸塩、金属酸化物、金属水酸化物等が挙げられる。
本発明のポリプロピレン繊維の単糸繊度は、0.08〜0.6dtexであり、好ましくは0.1〜0.5dtex、更に好ましくは0.12〜0.4dtexである。0.6dtex以下であれば、構成不織布あたりの繊維本数が増加して、極めて均一かつポアサイズが小さい不織布ができるのである。また、セパレーター用途においては吸水性や保液性が向上する。0.08dtex未満は、紡糸性・延伸性の限界を超えて断糸するため、現状の技術では製造が困難である。一方、0.6dtexを越えると、不織布のポアサイズが大きくなり、セパレーターやフィルター等では従来存在するものからの大幅な性能向上が見られない。
本発明のポリプロピレン短繊維の破断強度は5.5〜8.0cN/dtex、かつ、10%伸長強度が3.5〜6.0cN/dtexであり、好ましくは破断強度が6.0〜7.9cN/dtex、更に好ましくは6.5〜7.8cN/dtexである。好ましくは10%伸長強度が3.9〜5.9cNdtexである。破断強度が5.5cN/dtexまたは10%伸長強度が3.5cN/dtexを下回ると、不織布強度、特に引張強度が低く、バッテリーセパレーター用途には滴さない。また、破断強度が8.0cN/dtex又は10%伸長強度が6.0cN/dtexを超えるような高強度高モデュラスの繊維は、MFR30g/10分以上のi−PPでは延伸倍率の向上が難しいため(延伸での破断が起こり)、また、延伸後熱セットの温度はi−PPの融点未満に上限があるので、得ることが難しい。
本発明の繊維の破断伸度は10〜50%であり、好ましくは10〜40%、更に好ましくは15〜39%である。破断伸度が10%未満では不織布の衝撃による破れが生じやすく、特にセパレーターの評価指標である不織布突刺強度に劣る。また、破断伸度が50%を超えると、破断強度、あるいは10%伸長強度が小さくなり、不織布強度、特に引張強度が低く、バッテリーセパレーター用途には適さなくなる。
本発明のポリオレフィン短繊維の120℃乾熱収縮率は、0〜10%であることが望ましい。10%を超えると不織布における寸法安定性が悪く、地合ムラが起こり、フィルターや電池セパレーターとして用いた時の製品寿命が短くなってしまう。好ましい範囲は0.3〜9.0%、更に好ましくは0.5〜8.5%である。
本発明の短繊維において、繊維長は特に限定されないが、極細高強度の特性を生かすには、短繊維を水中に分散して抄紙する湿式不織布として用いるのが特に好適である。湿式不織布として用いる場合の繊維長は1.0〜25.0mmが好ましく、より好ましくは1.5〜15.0mm、更により好ましくは2.0〜10.0mmである。繊維長が1mm未満では水中分散性や不織布品位は良好なるも、高い不織布強度が得られにくい。また、繊維長が25mmを超えると、繊維が絡まりやすくなり、不織布欠点や品位(地合い)不良に繋がる。
抄紙工程により湿式不織布用として用いるには、抄紙工程で落ちにくい耐久性の高い親水油剤を繊維表面に付与する必要があるが、特にポリエーテル・ポリエステル共重合体として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分とイソフタル酸成分および/またはアルカリ金属塩スルホイソフタル酸成分を40:60〜100:0のモル比で含有し、グリコール成分がエチレングリコールである、かつ数平均分子量が600〜10000の範囲にあるポリアルキレングリコールを20〜95重量%共重合させたものを用いることが好ましい。なお、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの酸成分や、1、3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のジオール成分が少量共重合されていてもよく、また、分子量を調整するために、ポリアルキレングリコールの片方の末端基が、モノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノフェニルエーテルのようなエーテル結合により封鎖されていても差し支えない。一方、ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド共重合体、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等があげられ、なかでもポリエチレングリコールが好ましい。前述のポリエーテル・ポリエステル共重合体の数平均分子量は3000〜20000の範囲が、水中分散性の面で優れており、良好な品位(地合い)の湿式不織布が得られる。油剤付着率は、繊維質量に対して0.05〜5質量%であり、0.05質量%未満では水中分散性が不良となり、5質量%を超えると、抄紙工程の水中に脱落し、発泡することがある。好ましい油剤付着率は0.1〜4質量%、更に好ましくは0.15〜3質量%である。
本発明の繊維断面形状は丸断面に限定されることはなく、楕円断面、3〜8葉断面等の多葉断面、3〜8角形等の多角形断面など異形断面でもよい。特に+字断面やY字断面では、用途によっては不織布の目付けダウンや嵩アップの点で好ましい。また、本発明のフィラメント数は好ましくは200本以上、より好ましくは300本以上、更に好ましくは500本以上である。背景技術の欄で述べたように従来技術においては、これほど多数のマルチフィラメントでありながら、細繊度かつ高強度のポリプロピレン繊維は開示されておらず、またフィラメント数が多いことにより、生産効率を高めることができる。その結果、この本発明の繊維を用いて得られる不織布の生産効率をも高めることができる。
以上に述べた本発明のポリプロピレン短繊維は、次に例示する溶融紡糸法により製造することができる。公知の短繊維紡糸設備を用いて、MFR30〜100g/10分のi−PPを含む溶融ポリマーを口金より吐出して、冷却風で空冷しながら速度500〜1500m/分で引き取り、未延伸糸を得る。得られた未延伸糸を5万dtex以上のトウにし、公知の短繊維用延伸機のうち、延伸用温水バスを2段以上有し、更に、アニーラー(蒸気加熱あるいは電気加熱によるローラー)を具備した延伸機を用いて、1段目の温水バスにてトウを90℃以上に予備加熱し、2段目以降の90℃以上の温水バス中で高倍率(ネック)延伸し、その後、100〜140℃のアニーラーで0.95〜1.05のドラフトで定長熱処理を実施する。その後、抄紙用等の仕上油剤を付与し、必要に応じて捲縮機で捲縮を付けたのち、水分を80℃以下で弛緩熱処理の一態様である熱風乾燥を実施したり、または、乾燥(弛緩熱処理)を実施せずに、ロータリーカッターなどで所望の繊維長にカットして、発明の短繊維を得る。
5万dtex以上のトウを高倍率延伸するには、トウを加熱効率のよい温水で90℃以上(100℃未満)でドラフト0.95〜1.2の定長で延伸前予熱し、その後、90℃以上の温水で1段或いは2段以上の多段延伸でネック延伸させることが必要である。予熱、延伸とも高い温水温度がよく、90℃未満では加熱不足で延伸中にトウまたは単糸が破断することがあり、延伸不可、あるいは、単糸切れによる抄紙欠点につながる。予熱時のドラフトが0.95を下回ると、単糸の収束性が乱れ、延伸単糸切れにつながり、また、予熱時ドラフトが1.2を超えると、部分的に延伸され、その後の延伸時に延伸斑やトウ切断に繋がる。好ましいドラフトの範囲は0.98〜1.1である。この延伸前予熱を施すことにより、施さない条件に比べて、2段目以降の延伸倍率を著しく高めることができることを本発明者は発見し、本発明に到達した。
また、延伸後の定長熱処理は100〜140℃で行い、結晶化による破断強度・モデュラスの向上と低熱収縮化に繋げる。好ましくは105〜135℃、更に好ましくは110〜130℃である。繊維表面にi−PP以外のポリオレフィンとして、低融点であるポリエチレンを用いる際には、アニーラー温度をポリエチレン融点未満に下げる必要があるが、特にポリエチレンとして、高密度ポリエチレン(HDPE)を用いると、融点が高いために定長熱処理温度が上げられ、比較的、高強度・高モデュラス・低熱収縮率の繊維が得られる。特に、バインダー繊維として用いられるi−PP/HDPE芯鞘複合繊維として、極細高強度バインダー繊維を得ることができる。この場合、HDPEの融点以下である130℃が定長熱処理の上限温度となる。定長熱処理のドラフトは0.90〜1.10が好ましく、更に好ましい範囲は0.95〜1.05である。0.95未満ではトウの熱収縮が不十分で弛みが生じ、アニーラー以降のトウテンションが不足となる。ドラフトが1.05を超えると、熱収縮率が10%より大きくなる傾向にある。
延伸、定長熱処理後に高温の弛緩熱処理を施すと、非晶部分が緩和し、目標とする強度やモデュラス(10%伸度での強度などの低伸度引張強度)を高めることが困難となる。常温で熱処理を施さないか、80℃以下、好ましくは60℃以下の極力低温での乾燥・弛緩熱処理にとどめることが肝要である。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例における工程調子、力学的特性(一般物性)は下記の方法にて測定した。
(a)メルトフローレート(MFR)
JIS K 7210に準じ、温度230℃、荷重2.16kgで測定した。
(b)単糸繊度
JIS L 1015 7.5.1 A法に記載の方法により測定した。
(c)破断強度・破断伸度・10%伸長強度
JIS L 1015:2005 8.7.1法に記載の方法により測定した。
10%伸長強度は、荷伸曲線における10%伸長時の強度(cN/dtex)を測定した。
(d)乾熱収縮率
JIS L 1015:2005 8.15 b)法に記載の方法により測定した。
(e)繊維長
JIS L 1015 7.4.1 C法に記載の方法により測定した。
(f)不織布作成
得られたポリプロピレン短繊維を水中へ分散させ、繊維濃度が0.04重量%となるように調整して円網抄紙機に供給し、抄紙後、130℃×2分のヤンキー式ドライヤーで乾燥し、目付量が約30g/m2の繊維紙を得た。次に、金属ロール温度120℃の2本のカレンダーローラー間で線圧200kg/cmでカレンダー処理し湿式不織布を得た。得られた紙の特性を表1に示した。
(g)目付量(坪量、単位面積当たりの質量)
JIS L 1913:1998 6.2に記載の方法により測定した。
(h)湿式不織布引張強度(N/15mm)
JIS P8113(紙及び板紙の引張強さ試験方法)に基づいて実施した。
(i)ポアサイズ
西華産業(株)製PMIパームポロメーター(ASTM E1294−89準拠)を用いて、ポアサイズ(μm)の測定を実施した。
(j)地合
湿式不織布の地合の良否を目視で判定した。
レベル1 : 構成繊維の分布が均一であり、斑が非常に少ない
レベル2 : 構成繊維の分布がやや不均一であり、斑がやや目立つ
レベル3 : 構成繊維の分布が非常に不均一であり、斑が目立つ。
[実施例1]
MFR39のi−PPを260℃で溶融し、0.3mmの丸穴キャピラリーの1305H孔を有する口金から145g/分の吐出量で吐出し、25℃の冷却風で空冷しつつ、紡糸速度1000m/分で巻き取って未延伸糸を得た。該未延伸糸を6万dtexのトウとし、95℃の温水中でドラフト1.0で予熱した後、95℃下で2.94倍に1段延伸を行い、120℃・ドラフト1.0でアニーラーで定長熱処理し、その後ポリエーテル・ポリエステル系油剤を固形分0.3%になるように付与し、乾燥を施さず(温度30℃、50分で弛緩熱処理と同等)にドラム式カッターで5mmの長さに切断し、単糸繊度0.42dtex、繊維長5mmの短繊維を得た。繊維物性と湿式不織布物性を下記表1に示した。
[実施例2]
実施例1記載の中でアニーラーの定長熱処理温度を変更した以外は同様の方法で湿式不織布を得た。その物性を表1に示した。
[実施例3]
実施例1記載の定長予熱ドラフト、延伸倍率を変更した以外は同様の方法で湿式不織布を得た。その物性を表1に示した。
[実施例4]
実施例1記載のi−PPをエチレン10モル%共重合した変性アイソタクチックポリプロピレンに変更し、延伸倍率を変更した以外は同様の方法で湿式不織布を得た。その物性を表1に示した。
Figure 0006042762
[比較例1]
実施例1記載の延伸前予熱を実施せず、2段延伸した以外は同様の方法で湿式不織布を得た。その物性を表2に示した。
[比較例2〜3]
実施例1記載のアニーラーの定長熱処理温度または弛緩熱処理温度を変更した以外は同様の方法で湿式不織布を得た。その物性を表2に示した。
[比較例4]
実施例4記載の弛緩熱処理温度を変更した以外は同様の方法で湿式不織布を得た。その物性を表2に示した。
Figure 0006042762
[実施例5]
MFR39g/10分のi−PPを芯とし、MFR20g/10分のHDPE(但し、JIS K 7210で190℃・2.16kgの条件下で測定)を鞘としてそれぞれ240℃、250℃で別々に溶融し、0.3mmの丸穴キャピラリーを1336H有する芯鞘複合口金からi−PP、HDPE共に320g/分の吐出量で吐出し、25℃の冷却風で空冷しつつ、紡糸速度1200m/分で巻き取って未延伸糸を得た。該未延伸糸を6万dtexのトウとし、95℃の温水中でドラフト1.0で予熱した後、5.6倍に1段延伸を行い、120℃・ドラフト1.0でアニーラーで定長熱処理し、その後ポリエーテル・ポリエステル系油剤を固形分0.3%になるように付与し、乾燥を施さず(温度30℃、50分で弛緩熱処理と同等)にドラム式カッターで5mmの長さに切断し、単糸繊度0.38dtex、繊維長5mm、破断強度7.5cN/dtex、10%伸長強度5.7cN/dtex、破断伸度18%、120℃乾熱収縮率7.4%の短繊維を得た。湿式不織布物性は、引張強度、120℃不織布熱収縮率、ポアサイズ、地合いはレベル1のものが得られた。繊維の物性などの結果を表3に示した。
[比較例5]
実施例5にて、延伸後のアニーラーによる120℃の定長熱処理を実施せず、弛緩熱処理条件を変更した以外は同様の方法で湿式不織布を得た。その物性を表3に示した。
[実施例6]
実施例1記載のポリプロピレン繊維と実施例5記載のバインダー繊維を混合して抄紙する以外は同様の方法で湿式不織布を得た。その物性を表1に示した。
Figure 0006042762
本発明により、低ポアサイズかつ高強度・低熱収縮の不織布性能が要求される、電池用セパレーター、フィルターやコンクリート補強用繊維等の産業資材の用途に広く且つ好適に用いることができる繊維を提供することができ、その産業上の意義は極めて大きい。

Claims (4)

  1. メルトフローレート(MFR)が30〜100g/10分であるアイソタクチックタクチックポリプロピレン40質量%以上からなり、繊維全体がポリオレフィン樹脂からなる繊維であって、単糸繊度が0.08〜0.6dtex、破断強度が5.5〜8.0cN/dtex、10%伸長強度が3.5〜6.0cN/dtex、破断伸度が10〜50%、120℃乾熱収縮率が0.0〜10.0%であることを特徴とするポリプロピレン繊維。
  2. 繊維全体がメルトフローレート30〜100g/10分であるアイソタクチックタクチックポリプロピレンからなる、請求項1記載のポリプロピレン繊維。
  3. メルトフローレート30〜100g/10分であるアイソタクチックタクチックポリプロピレンと高密度ポリエチレンの複合繊維である、請求項1記載のポリプロピレン繊維。
  4. アイソタクチックタクチックポリプロピレン40質量%以上からなる5万dtex以上の未延伸トウを、90℃以上の温水中で定長熱処理後、90℃以上の温水中で延伸を行い、更に100〜140℃の定長熱処理を施し、その後に弛緩熱処理を施さないか、もしくは80℃以下の弛緩熱処理を行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン繊維の製造方法。
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