JP2020143387A - ポリフェニレンサルファイド繊維 - Google Patents

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祐真 小林
武司 杉本
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武司 杉本
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Abstract

【課題】PPSの耐薬品、難燃性、絶縁性等の優れた性質を損なうことなく、均一な繊維系を有し、接着性に優れ、抄紙などの繊維構造体を均一に成形可能なポリフェニレンサルファイド繊維を提供する。【解決手段】繊維横断面が少なくとも複数の島成分を含む海島構造を形成しており、海成分がp−フェニレンサルファイド単位を主成分とし、繰り返し単位に3モル%以上40モル%以下のm−フェニレンサルファイド単位を含む共重合ポリフェニレンサルファイド、島成分がp−フェニレンサルファイド単位を主成分としたポリフェニレンサルファイドであり、島成分直径(r)が10μm以下であり、繊度CV値が10%以下であることを特徴とするポリフェニレンサルファイド繊維。【選択図】なし

Description

本発明は、抄紙などの繊維構造体を均一に成形可能なポリフェニレンサルファイド繊維に関するものである。
ポリフェニレンサルファイド(以下「PPS」と略記することがある。)は高い耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、難燃性を有することから、これらの特性を生かした種々の用途、例えば、バグフィルター、抄紙カンバス、電気絶縁紙、電池セパレーターなどの用途に使用されている。
その中で、電気絶縁紙や電池セパレーター用途では、緻密化や薄膜化が可能である湿式不織布が用いられている。近年、高温環境下で使用できる電気絶縁紙や電池セパレーターの需要が高まっており、耐熱性および耐薬品性に優れたポリフェニレンサルファイド湿式不織布が注目されている。
しかしながら、延伸されたポリフェニレンサルファイド繊維単体では、耐熱性が高く、湿式不織布とした時の繊維同士の接着(融着)性に劣るため、湿式不織布シートの力学特性が低下するという課題があった。そこで、上記課題を解決するために、様々な提案がされている。
例えば、延伸されたポリフェニレンサルファイド繊維と、延伸熱圧着のためのバインダー繊維としての未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維とから構成されるポリフェニレンサルファイド湿式不織布が提案されている(特許文献1参照。)。これにより、低目付であっても目付斑が小さく、高い力学特性を有するポリフェニレンサルファイド湿式不織布を得ることができる。
また、未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維を結晶化温度未満の温度であらかじめ熱処理することで、抄紙乾燥工程での熱収縮を抑制した、低収縮のバインダー繊維が提案されている(特許文献2参照。)。これにより、抄紙乾燥工程でのシワやふくれが改善することに加えて、熱寸法安定性に優れたポリフェニレンサルファイド湿式不織布を得ることができる。
さらに、未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維を110℃のエチレングリコール浴中で延伸した、接着性に優れた細繊度のバインダー繊維も提案されている(特許文献3参照。)。このバインダー繊維と特定のポリフェニレンサルファイド繊維により、力学特性と膜厚均一性に優れたポリフェニレンサルファイド湿式不織布を得ることができる。
特開平7−189169号公報 特開2010−77544号公報 特開2007−39840号公報
しかし、特許文献1では、バインダー繊維として用いられている未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維の収縮率が極めて高く、抄紙乾燥工程での繊維の熱収縮に由来する、乾燥シワやふくれが発生するという課題がある。さらには、未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維は繊維径が太いことから、湿式不織布シートの薄膜化が困難になることに加え、融着時のムラが大きくなり、膜厚均一性や目付CV値が十分でないといった課題もある。さらには、抄紙化に際しては繊維を均一に分散させなければはならないが、繊維径に差があることから分散性が悪く、膜厚均一化が困難であった。
また、特許文献2では未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維を熱処理することにより、抄紙乾燥工程での繊維の熱収縮は小さくなるものの、熱処理により結晶化が進行し、バインダー繊維としての接着性が低下する課題がある。また、未延伸状態であり、太繊度であることから、融着時のムラが大きくなり、湿式不織布シートの膜厚均一性や目付CV値に劣る。
さらに、特許文献3では、未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維を110℃のエチレングリコール浴中で延伸することにより、低配向かつ繊維径の細い繊維が得られるが、前記の方法で得られた繊維は、配向結晶化を伴わない延伸のため、熱収縮率が大きく、熱寸法安定性に劣るため、抄紙乾燥工程で収縮し、乾燥シワやふくれが発生し、乾燥工程の通過性が悪いものとなる。
このように、薄膜化が可能で、力学特性そして膜厚均一性や目付CV値に優れ、さらに乾燥工程の通過性に優れた抄紙用途に適したポリフェニレンサルファイド繊維はこれまでに報告されていない。
上記の目的を達成するため、以下の構成を採用する。すなわち、
(1)繊維横断面が少なくとも複数の島成分を含む海島構造を形成しており、海成分がp−フェニレンサルファイド単位を主成分とし、繰り返し単位に3モル%以上40モル%以下のm−フェニレンサルファイド単位を含む共重合ポリフェニレンサルファイド、島成分がp−フェニレンサルファイド単位を主成分としたポリフェニレンサルファイドであり、島成分直径(r)が10μm以下であり、繊度CV値が10%以下であること特徴とするポリフェニレンサルファイド繊維。
(2)海成分の融点が200℃以上260℃以下であり、島成分の融点が270℃以上290℃以下である前記(1)に記載のポリフェニレンサルファイド繊維。
(3)繊維直径(R)に対する島成分直径(r)がr/R≦0.35であり、繊維直径(R)が8μm以上20μm以下であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のポリフェニレンサルファイド繊維。
本発明により、PPSの耐薬品、難燃性、絶縁性等の優れた性質を損なうことなく、均一な繊維径を有し、接着性に優れ、抄紙などの繊維構造体を薄く、均一に成形可能なポリフェニレンサルファイド繊維が提供できる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、海成分および島成分の樹脂のいずれもがPPSを主として含むことが重要である。そうすることでPPSの耐薬品、難燃性、絶縁性等を得ることができる。
また、本発明のPPS繊維は繊維横断面において少なくとも複数の島成分を含む海島構造を形成していることが重要である。そうすることで、海成分の樹脂が接着成分として作用し、島成分が主体成分となることで抄紙における緻密化、紙力向上、薄地化、膜厚均一性向上が期待できる。
本発明において海成分で用いられる共重合PPSは、構造式(1)で示されるp−フェニレンサルファイド単位を主たる繰り返し単位とし、構造式(2)で示されるm−フェニレンサルファイド単位を共重合成分として含むことが重要である。m−フェニレンサルファイドを共重合成分として含むことで、ポリフェニレンサルファイドの耐薬品性を維持したまま結晶性が低下し、優れた耐薬品性と融着性を両立したポリフェニレンサルファイド繊維となる。
本発明に用いられる共重合PPSは、p−フェニレンサルファイド単位を主たる繰り返し単位とすることが重要である。ここで、主たる繰り返し単位とは、繰り返し単位の60モル%以上97モル%以下であることを指す。p−フェニレンサルファイド単位を繰り返し単位の60モル%以上、好ましくは70モル%以上とすることにより、紡糸性が良好であり、かつ優れた耐熱性および力学特性を有したPPS繊維となる。また、p−フェニレンサルファイド単位を97モル%以下、好ましくは95モル%以下とすることにより、共重合PPSの結晶性が低下するため、融着性に優れたPPS繊維となる。
本発明に用いられる共重合PPSは、繰り返し単位の3モル%以上40モル%以下がm−フェニレンサルファイド単位からなることが重要である。m−フェニレンサルファイド単位を3モル%以上、好ましくは5モル%以上とすることにより、共重合PPSの結晶性が低下するため、融着性に優れたPPS繊維となる。また、m−フェニレンサルファイド単位を40モル%以下、好ましくは30モル%以下とすることにより、良好な力学特性を有したPPS繊維となる。
なお、本発明に用いられる共重合PPSのp−フェニレンサルファイド単位およびm−フェニレンサルファイド単位のモル分率は、赤外分光分析により測定可能である。
また、本発明に用いられる共重合PPSにおける共重合の態様としては、ランダム共重合やブロック共重合等を挙げることができるが、融点を制御しやすい点から、ランダム共重合が好ましく用いられる。
本発明に用いられる共重合PPSには、本発明の効果を損なわない範囲で、他の共重合成分を含有させることができる。他の共重合成分としては、トリフェニレンサルファイドやビフェニレンサルファイドなどの芳香族スルフィド、またはこれらのアルキル置換体、ハロゲン置換体などが挙げられる。他の共重合成分の質量比率は、本発明の共重合PPSの特性を十分に発現させるため、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。
本発明に用いられる共重合PPSには、本発明の効果を損なわない範囲で熱可塑性樹脂をブレンドすることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、繰り返し単位が、p−フェニレンサルファイド単位のみからなるポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリオレフィンおよびポリエーテルエーテルケトンなどの各種熱可塑性樹脂を挙げることができる。ブレンド可能な熱可塑性樹脂の質量比率は、本発明の共重合ポリフェニレンサルファイドの特性を十分に発現させるため、ブレンドした組成物基準で5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。なお、ここでいうブレンドとは、2成分以上の樹脂の溶融混合・混練のことであり、紡糸時に2成分以上の樹脂を繊維断面における任意の位置に配置する複合化技術とは異なるものである。
本発明に用いられる共重PPSには、本発明の効果を損なわない範囲で、各種金属酸化物、カオリン、シリカなどの無機物、着色のための顔料、艶消剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤、末端基封止剤、相溶化剤などの各種添加剤を添加することができる。
本発明に用いられる共重合PPSのメルトマスフローレートは、100g/10分以上、350g/10分以下が好ましい。メルトマスフローレートを好ましくは120g/10分以上、より好ましくは150g/10分以上とすることにより、溶融時の流動性が高くなるため紡糸性が向上し、繊維径均一性に優れたポリフェニレンサルファイド繊維となる。また、メルトマスフローレートを好ましくは350g/10分以下、より好ましくは300g/10分以下とすることにより、良好な力学特性を有したPPS繊維となる。
なお、本発明における共重合PPSのメルトマスフローレートは、JIS K7210−1:2014 8章 A法:質量測定法により、荷重が5.0kgで、温度が315℃の条件で測定された値を指すこととする。
本発明に用いられる共重合PPSの融点としては200℃以上260℃以下であることが好ましい。更に好ましくは260℃以下、より好ましくは、255℃以下とすることにより、優れた融着性を発現し、抄紙バインダーとしての接着性が良好となる。融点を好ましくは200℃以上、より好ましくは、230℃以上とすることにより、耐熱性に優れたポリフェニレンスルフィド繊維となる。
本発明において島成分で用いられるPPSは、構造式(1)で示されるp−フェニレンサルファイド単位を主たる繰り返し単位とし、p−フェニレンサルファイド単位の含有量とし、98モル%以上が好ましく、より好ましくは99モル%以上含有することで、曳糸性や機械的強度に優れた線意図することができる。
また島成分には本発明の効果を損なわない範囲で熱可塑性樹脂をブレンドすることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリオレフィンおよびポリエーテルエーテルケトンなどの各種熱可塑性樹脂を挙げることができる。ブレンド可能な熱可塑性樹脂の質量比率は、本発明のPPSの特性を十分に発現させるため、ブレンドした組成物基準で5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。なお、ここでいうブレンドとは、2成分以上の樹脂の溶融混合・混練のことであり、紡糸時に2成分以上の樹脂を繊維断面における任意の位置に配置する複合化技術とは異なるものである。
本発明の島成分に用いられるPPSには、本発明の効果を損なわない範囲で、各種金属酸化物、カオリン、シリカなどの無機物、着色のための顔料、艶消剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤、末端基封止剤、相溶化剤などの各種添加剤を添加することができる。
本発明の島成分に用いられるPPSのメルトマスフローレートは、100g/10分以上、350g/10分以下が好ましい。メルトマスフローレートを好ましくは120g/10分以上、より好ましくは150g/10分以上とすることにより、溶融時の流動性が高くなるため紡糸性が向上し、繊維径均一性に優れたポリフェニレンサルファイド繊維となる。また、メルトマスフローレートを好ましくは350g/10分以下、より好ましくは300g/10分以下とすることにより、良好な力学特性を有したPPS繊維となる。
なお、本発明におけるポリフェニレンサルファイドのメルトマスフローレートは、JIS K7210−1:2014 8章 A法:質量測定法により、荷重が5.0kgで、温度が315℃の条件で測定された値を指すこととする。
本発明の島成分に用いられるPPSの融点としては270℃以上290℃以下であることが好ましい。更に好ましくは275℃以上280℃以下、とすることにより、優れた耐薬品性および機械的強度を得ることができ、抄紙の主体繊維としての特性が良好となる。
本発明は、繊維横断面が少なくとも複数の島成分を含む海島構造を形成しており、海成分が共重合PPS、島成分がPPSからなり、島成分直径が10μm以下であることを特徴とするPPS繊維である。
島成分にPPSを用いることで、抄紙の主体繊維としての耐薬品性および機械的強度が良好となる。さらに、海成分として共重合PPSで島成分を取り囲むことで、島部成分のPPSを共重合PPSが被膜しておりバインダー性能が優れることとなる。更に、本来抄紙用途としては主体繊維とバインダー繊維を個別に作成し、溶液内に分散させる必要があり、融着ムラが生じ、紙力の低下に繋がる。しかし、本発明は主体繊維とバインダー繊維が一体となっているため、融着ムラがなくなり、抄紙の均厚化に有効である。
加えて、重要なことに、海島構造を採用することで島成分の細繊度化が可能であり、抄紙の薄地化に有効である。
全ての島成分において、その直径(r)が10μm以下であることが重要であり、好ましくは8.0μm以下であり、更に好ましくは5.0μm以下である。rが10μmより大きい島成分が存在すると、島成分同士の融着が生じ断面形成性が悪くなる。rの下限は特に制限されないが、本発明において現実的にrの達し得る下限は0.1μmである。
本発明のポリフェニレンスルフィド繊維の繊維径CV値は10.0%以下であることが必要である。繊維径CV値を10.0%以下、好ましくは、8.0%以下とすることにより、抄紙時の繊維の分散性が向上し、得られる湿式不織布シートの目付CV値や膜厚均一性が向上する。また、繊維径CV値の下限は特に制限されないが、工業的に達し得る下限は3.0%程度である。なお、繊維径CV値は後述の実施例の欄に記載した方法によって測定した値をいう。
融着ムラが生じないためには島成分が繊維横断面において、できるだけ微細に分散していることが重要である。繊維横断面において単繊維の外接円より求めた繊維直径を(R)とし、同様に、1つの島成分において、島成分の外接円より求めた直径を(r)とした場合に、全ての島成分がr/R≦0.35を満たすことが重要であり、好ましくはr/R≦0.30である。r/R>0.35となる島成分が存在すると、共重合PPSが均一に被膜せず、島同士の融着が生じ断面形成性が悪くなる。r/Rの下限は特に制限されないが、本発明におけるr/Rの達し得る下限は0.01である。なお、島成分直径(r)及び繊維直径(R)は後述の実施例の欄に記載した方法によって測定した値をいう。
Rは8.0〜20μmであることが好ましい。Rが20μmを超えると、溶融紡糸時に過度な冷却能力が必要になり、紡糸操業性が悪化する。また、Rが8.0μm未満となると、繊維中に島成分を微細分散させることが困難となることに加えて、抄紙作成時の水分散工程にて凝集が生じてしまい、膜厚均一性が劣ってしまう。なお、本発明においては、繊維横断面の外形(単繊維の断面形状)は円形が好ましいが、異形断面であってもかまわない。
本発明の海島複合繊維では、島成分を繊維横断面方向にできるだけ微細に分散させるため、特開2011−174215号公報に記載の、ポリマー流を吐出するための複合口金を用いることにより製造することが好ましい。この複合口金は、海島成分のポリマー流を計量する複数の計量孔を有する計量板と、複数の計量孔からの吐出ポリマー流を合流させる合流溝に複数の分配孔を有する分配板とを組み合わせてあり、海島型の複合構造を有する繊維を得ることができる。
次に、本発明のPPS繊維の製造方法について説明する。まず、PPSおよひ共重合PPSの粉末またはペレットを溶融し、その溶融したPPSを、海島構造繊維を紡糸するための紡糸口金から紡出する。
溶融紡糸機としては、一般的にはプレッシャーメルター型紡糸機か、1軸または2軸のエクストルーダー型紡糸機を用いる。紡糸工程では増粘によるゲル化を防止するため、加熱温度は可能な限り低温で、かつ溶融するに十分な程度の温度とすることが好ましく、具体的には290〜340℃の範囲が好ましい。同じくゲル化防止の観点から、溶融中は窒素雰囲気とすることが好ましい。次いで、溶融ポリマーは上記の複合口金から吐出され、冷却風の吹きつけにより冷却固化される。冷却風の風速は通常5〜100m/分であり、温度は室温またはそれ以下の温度であれば良い。冷却固化された後のPPS繊維は、収束剤として油剤を適量付与された後、所定の引取装置で引き取られる。引取速度は通常500〜7000m/分の範囲である。
引き取られたPPS繊維は、通常は、次いで延伸工程に供される。延伸工程では、好ましくは、加熱浴中や熱板上や熱ローラー上を走行することにより、延伸温度90〜170℃程度で、延伸倍率2〜5倍にて延伸される。また、延伸は1段延伸であっても2段延伸であっても良い。
熱延伸後に定長熱処理を行っても良い。定長熱処理は糸条の長さを一定に保って熱処理を行うか、数%リラックスを取ることが重要である。
定長熱処理温度は、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上にすることのより、原綿の収縮率を抑えることでき乾燥時工程通過性が良好となる。また、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下にすることにより繊維間の擬似接着を抑制することができる。
また、未延伸糸を延伸する工程は、紡糸に続けて延伸を行う連続工程でも良いし、所定速度で引き取られた未延伸糸を一旦缶内に収納し、又は巻き取った後に、延伸工程に供する不連続工程でも良い。得られるPPS繊維は、マルチフィラメントでも、モノフィラメントでも、また、ステープル繊維のいずれの形態でもよいが、なかでも本発明はステープル繊維とするのが特に好適である。一般的に、フィラメントよりもステープル繊維の方が工業的生産の数量規模が大きいため、コストメリットの効果が得られるためである。
抄紙などの繊維構造体の原料として供するため、PPS繊維に抄紙分散剤が付与されることが好ましい。得られたPPS繊維への抄紙分散剤の付与は、通常、トウ状態にて、キスローラーを用いて行われる。上記の抄紙分散剤付着率は、繊維重量に対して0.2質量%以上0.6質量%以下が好ましい。分散剤付着率を好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3%質量以上とすることにより、繊維の分散性が向上し、膜厚均一性および目付CV値に優れた湿式不織布となる。また、分散剤付着率を好ましくは0.6質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下とすることにより、工程通過性が向上する。
このように抄紙分散剤付与を行った後、クリンパーによる捲縮の付与を行っても良い。捲縮を付与することにより、繊維同士の絡合が起こり、力学特性に優れた湿式不織布となる。
上記の捲縮数としては、2山/25mm以上15山/25mm以下が好ましい。捲縮数を2山/25mm以上とすることにより、繊維同士の絡合により、力学特性に優れた湿式不織布となる。また、捲縮数を15山/25mm以下とすることにより、抄紙時の繊維の分散性が向上し、膜厚均一性と目付CV値が良好な湿式不織布となる。
上記のように得られたPPS繊維を、セッターによる乾燥後、カッターで切断することにより、カットファイバーを得ることができる。上記のカットファイバーのカット長は、1mm以上20mm以下であることが好ましい。カット長を好ましくは1mm以上より好ましくは3mm以上とすることにより、繊維同士の絡合により、力学特性に優れた湿式不織布となる。また、カット長を好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下とすることにより、抄紙時の繊維の分散性が向上し、膜厚均一性と目付CV値が良好な湿式不織布となる。
上記のように得られたカットファイバーを水中に分散させることにより、抄紙液を調合することができる。
なお、トウ状態での抄紙分散剤付与を行わなかった場合には、この段階で、抄紙分散液中にカットファイバーを分散させることにより、繊維への分散剤の付与を行ってもよい。
上記の抄紙液を抄紙機に供給することにより、湿式不織布を得ることができる。なお、供給する抄紙液の繊維濃度を調整することにより、得られる湿式不織布の目付および厚みを変更することができる。
上記のように得られた湿式不織布は、水分を除去するために、乾燥することが好ましい。乾燥温度としては、非晶部の結晶化による融着性の低下が起こらないように、90℃以上150℃以下であることが好ましい。
上記湿式不織布を平板加熱プレス機もしくはカレンダーロールにて、熱圧着することにより、本発明のPPS繊維の海成分による融着が生じ、力学特性に優れた湿式不織布となる。熱圧着温度としては170℃以上250℃以下が好ましく、圧着時間は1分以上10分以内とすることが好ましい。熱圧着温度を好ましくは170℃以上とすることにより、本発明のPPS繊維の融着により、力学特性に優れた湿式不織布となる。熱圧着温度を250℃以下とすることにより、熱圧着時の湿式不織布の熱収縮を抑制することができる。また圧着時間を1分以上とすることにより、湿式不織布全体に均一に加熱することができ、均質な湿式不織布となる。圧着時間を10分以内とすることにより、過度な結晶化による湿式不織布の力学特性の低下を抑制することができる。
以下、実施例により本発明のポリフェニレンサルファイド繊維をより具体的に説明する。なお実施例中の各特性値は次の方法で求めた。
[測定・評価方法]
(1)メルトマスフローレート
ポリフェニレンサルファイドのメルトマスフローレートは、前記の方法(JIS K7210−1:2014 8章 A法:質量測定法、荷重5.0kg、温度315℃)に従って、メルトインデックサ(株式会社東洋精機製作所製F−F01)を使用して測定した。
(2)繊維直径(R)
得られたポリフェニレンサルファイド繊維をカットしたカットファイバーの中から無作為に抽出した100本について、光学顕微鏡(オリンパス株式会社製BH2)を用い、対物レンズ40倍、接眼レンズ10倍の条件にて繊維の断面より、単繊維の外接円より求めた繊維直径(μm)を測定し、その算術平均値を求め繊維直径(R)(μm)とした。なお、異形断面の場合は、断面積を真円換算したときの直径を平均繊維径(μm)とした。
(3)融点
ポリフェニレンサルファイド繊維の融点は得られた繊維をDSC(TA Instruments社製Q1000)で30℃から320℃の温度まで16℃/分で昇温させ、得られたDSC曲線において200℃以上の温度で観測される融解ピーク(吸熱ピーク)の頂点の温度を測定し、1水準につき3回測定を行い、その算術平均値を求めた。
(4)紡糸性
各実施例・比較例において、紡糸時間が0〜12時間、12〜24時間における1錘当たりの糸切れ回数をカウントした。糸切れの要因は様々考えられるが、0〜12時間と比較し12〜24時間で糸切れ回数が多くなるのは口金汚れによる糸切れである。紡糸性は、紡糸時間12時間で1錘当たりの糸切れ回数が2回未満の場合を○、2〜3回の場合を△、4回以上の場合を×とした。
(5)繊維直径(R)、島成分直径(r)、r/R
透過型電子顕微鏡(日立製作所TEM(H−800型))を用いて繊維横断面を観察し、短繊維の外接円より繊維直径Rを、島成分の外接円より島成分直径rを、それぞれ求めた。島成分直径については、全ての島成分について測定した後、算術平均を取ることで求めた。
(6)繊維径CV値
繊維径CV値(%)=(繊維直径の標準偏差)/(繊維直径の算術平均値)×100
得られたポリフェニレンサルファイド繊維をカットしたカットファイバーの中から無作為に抽出した100本について、光学顕微鏡(オリンパス株式会社製BH2)を用い、対物レンズ40倍、接眼レンズ10倍の条件にて繊維の断面より単繊維の外接円より求めた繊維直径(μm)を測定し、上記式より、繊維径CV値を求めた。なお、異形断面の場合は、断面積を真円換算したときの直径を繊維径(μm)とした。
(7)水分散性
各実施・比較例記載の方法で得られたポリフェニレンサルファイドカットファイバーを5g採取し、繊維濃度が0.4質量%となるように調合した。ミキサーを用いて13600rpmにて、10秒間攪拌後、1分間放置した溶液を目視で確認した。同測定を7回繰返し、繊維異常部や凝集体が2個/5g以下であるものは○(優良)、それ以外を×(不良)とした。
(8)乾燥工程通過性
実施例または比較例にて得られたカット長6mmのPPS繊維を繊維濃度1重量%の水分散液を調合し手漉き抄紙機(熊谷理機工業(株)社製角型シートマシン自動クーチング付き)を用いて目付50g/mの湿式不織布を得、クーチング処理をした。該不織布を未乾燥のまま熊谷理機工業(株)社製KRK回転型乾燥機(標準型)に投入し、温度120℃、処理時間約2.5min/回で処理を行い湿式不織布のシワ(乾燥工程通過性)を確認した。乾燥工程通過性では乾燥時のシワについて、収縮シワが少なく連続抄紙可能な程度のものは○(優良)、収縮シワや剥がれが発生して連続抄紙不可と推測されるものは×(不良)とした。
(9)紙力
上記(7)の方法で得られた湿式不織布を230℃の平板加熱プレス機を用いて、プレス圧1.5MPaで3分間熱圧着を行った。得られた湿式不織布を、テンシロン(オリエンテック社製UTM−III−100)を用いて、試料幅15mm、初期長20mm、引張速度20mm/分で最大点荷重の値を測定し、5回の測定の算術平均値を引張強度(N/15mm)とし、引張強度の平均値が20N/15mm以上であるものを○(優良)、それ以下を×(不良)とした。
<実施例1〜3、比較例1〜3>
メルトマスフローレートが175g/10分であり、p−フェニレンスルフィド単位が90mol%、m−フェニレンスルフィド単位が10mol%からなる共重合PPSとp−フェニレンスルフィド単位が98mol%であるPPSを150℃で12時間真空乾燥した後、紡糸温度330℃で溶融紡糸した。溶融紡糸において、該樹脂をプレッシャーメルタによって溶融押出しし、ギアーポンプで計量しつつ紡糸パックにポリフェニレンスルフィドを供給した。島成分にPPSを重量比率50%、海成分に共重合PPSを重量比率50%用い、それぞれ重量比率溶融し、海島複合繊維となる吐出孔を300孔有する紡糸口金(複数の計量孔を有する計量板と複数の計量孔からの吐出ポリマー流を合流する合流溝に複数の分配孔を有する分配板を含む口金)を通して紡糸した。
その後トータル繊度1,000,00dtexとし、延伸倍率3.4、延伸温度98℃にて延伸し、キスローラーにて油剤を付与した後、乾燥後6mmにカットしてPPSカットファイバーを得た。得られたPPSカットファイバーを繊維濃度1重量%の水分散液を調合し手漉き抄紙機(熊谷理機工業(株)社製角型シートマシン自動クーチング付き)を用いて目付50g/mの湿式不織布を得、クーチング処理をした。該不織布を未乾燥のまま熊谷理機工業(株)社製KRK回転型乾燥機(標準型)に投入し、温度120℃、処理時間約2.5min/回で処理を行い湿式不織布を得た。さらに、上記湿式不織布を230℃の平板加熱プレス機を用いて、プレス圧1.5MPaで3分間熱圧着を行った。
得られたPPSカットファイバーおよび湿式不織布にて上記評価を行った。結果を下表に示す。
実施例1〜3では紡糸性も良好であり、水分散性も良好な抄紙用PPSを得ることができ、得られた湿式不織布においても乾燥工程でのシワが改善でき、かつ得られた湿式不織布の紙力も充分強かった。一方、比較例1において、繊度CVが大きく目付け均一性が悪いために紙力が悪い結果となった。比較例2においては繊維径が30μmと大きく、紡糸時のべた付きによる糸切れ多発により紡糸性が悪かった。また、抄紙化の際、目付け均一性が悪く、乾燥工程通過性および紙力が悪い結果となった。

Claims (3)

  1. 繊維横断面が少なくとも複数の島成分を含む海島構造を形成しており、海成分がp−フェニレンサルファイド単位を主成分とし、繰り返し単位に3モル%以上40モル%以下のm−フェニレンサルファイド単位を含む共重合ポリフェニレンサルファイド、島成分がp−フェニレンサルファイド単位を主成分としたポリフェニレンサルファイドであり、島成分直径(r)が10μm以下であり、繊度CV値が10%以下であることを特徴とするポリフェニレンサルファイド繊維。
  2. 海成分の融点が200℃以上260℃以下であり、島成分の融点が270℃以上290℃以下である前記(1)に記載のポリフェニレンサルファイド繊維。
  3. 繊維直径(R)に対する島成分直径(r)がr/R≦0.4であり、繊維直径(R)が5μm以上30μm以下であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のポリフェニレンサルファイド繊維。
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