JP2024003570A - ポリエステルバインダー繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱接着工程、熱圧着工程にて良好な加工性を発揮するとともに、熱接着性が優れ、また、湿式不織布用のバインダー繊維として適用した場合に水中分散性が良好であり、水処理用のろ過布や浸透膜等の特殊分野に使用する不織布にも適用可能なポリエステルバインダー繊維を提供する。【解決手段】繊維を構成する熱可塑性樹脂がアルキレンテレフタレートにより構成されるポリエステルのみからなる単相型のバインダー繊維であり、繊維を構成する熱可塑性樹脂に含まれる酸化チタンの含有量が0.20~0.40質量%、リン酸化合物の含有量が多くとも10ppmであるポリエステルバインダー繊維。【選択図】 図1

Description

本発明は、ポリエステルバインダー繊維に関するものである。
従来より、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂からなる繊維を5~20mm程度に切断した短繊維を用い、乾式不織布や湿式不織布を得ることが行われている。この場合、主体繊維となるこれらの繊維に、主体繊維の融点よりも低融点の繊維をバインダー繊維として混合してシートを作製し、熱処理することによってバインダー繊維を溶融させ、主体繊維同士を接着して不織布を得るのが一般的である。
バインダー繊維として用いられている熱可塑性樹脂からなる繊維としては、低融点のポリアミド繊維、低融点の共重合ポリエステル繊維等が挙げられる。しかしながら、これらのバインダー繊維は、融点の低い熱可塑性樹脂からなるため、耐熱性や耐薬品性が十分とはいえない場合がある。
また、湿式不織布を水処理用のろ過布や浸透膜等の特殊分野に使用することも行われており、このような特殊分野においては、使用過程における不純物の析出が少ないことを要求されることが多い。
特許文献1には、バインダー繊維として未延伸ポリエステル繊維を用いることが開示されている。特許文献1記載のポリエステル繊維は、水中分散性を向上させるためにポリエーテルエステル共重合体を繊維表面に付着させたものであり、上記のような特殊分野に使用すると、使用過程で不純物の析出が生じやすいものであった。
また、特許文献1のポリエステル繊維は、結晶部の割合が高く、主体繊維との熱接着性が十分とはいえず、熱接着処理温度を高く設定しなければ、得られる不織布の強度が向上しないという問題があった。
本件出願人は、特許文献1の問題に鑑みて、熱接着処理温度が低くても接着効果を有するポリエステルバインダー繊維を提案している(特許文献2)。特許文献2によれば、ポリエステルバインダー繊維の結晶部の割合が低く、良好な接着性能を発揮する。しかし、水中の分散性が良好とはいえず、得られる不織布の地合いは均一性に劣るものであった。
特開2002-339289号公報 特許第4874014号
本発明の課題は、熱接着工程、熱圧着工程にて良好な加工性を発揮するとともに、熱接着性が優れ、また、湿式不織布用のバインダー繊維として適用した場合に水中分散性が良好であり、水処理用のろ過布や浸透膜等の特殊分野に使用する不織布にも適用可能なポリエステルバインダー繊維を提供することにある。
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく検討を重ねた結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、繊維を構成する熱可塑性樹脂がアルキレンテレフタレートにより構成されるポリエステルのみからなる単相型のバインダー繊維であり、繊維を構成する熱可塑性樹脂に含まれる酸化チタンの含有量が0.20~0.40質量%、リン酸化合物の含有量が多くとも10ppmであることを特徴とするポリエステルバインダー繊維を要旨とする。
本発明のポリエステルバインダー繊維は、繊維を構成する熱可塑性樹脂中に含まれるリン酸化合物の含有量が多くとも10ppmであることから、バインダー成分の流動性、結晶性を阻害せず、熱処理工程で十分な接着効果を発揮することができる。また、リン酸化合物の含有量が多くとも10ppmであることから、フィラー成分(酸化チタン)を多く含有することができ、繊維どうしの凝集や密着を抑制することができるため、繊維表面に特殊な溶剤を塗布しなくとも良好な水中分散性を奏する。また、バインダー繊維を構成する熱可塑性樹脂は、アルキレンテレフタレートのみから構成される単相型の繊維であり、所定の条件にて延伸が施され、接着性能に寄与する非晶領域の割合をコントロールされたものであるため、加工性、熱安定性、経時分散性、熱接着性のいずれにも優れたものとなる。
融解ピークおよび昇温結晶化ピークを説明するために、融点および昇温結晶化温度を示すDSC曲線の一例を示すものである。
以下、本発明のポリエステルバインダー繊維を詳細に説明する。
本発明のポリエステルバインダー繊維は、アルキレンテレフタレートからなるポリエステルのみから構成される単相型の繊維であって、2種の熱可塑性樹脂からなる複合型の繊維ではない。本発明のバインダー繊維を構成する熱可塑性樹脂は、具体的には、エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルが挙げられ、少量であれば、他の構成成分を重合してもよい。本発明においては、樹脂特性や汎用性、耐熱性等の観点から、ホモポリエステルであることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが好ましく、より好ましくはポリエチレンテレフタレートである。
本発明のポリエステルバインダー繊維を構成する熱可塑性樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、一般的に使用されている酸化防止剤、艶消剤、着色剤、結晶核剤等の添加剤を含有させてもよい。
本発明のポリエステルバインダー繊維は、繊維同士の凝集や密着が発生しにくくするために、また、本発明のバインダー繊維を湿式不織布用のショートカットバインダー繊維として適用した際の水中分散性を向上させるために、フィラー成分として酸化チタンを特定量含有させることを必須とし、バインダー繊維に含まれる酸化チタンの含有量を0.20~0.40質量%とする。酸化チタンの含有量が前記範囲とすることにより、繊維/繊維間の摩擦が低下し、繊維同士の密着による融着や変形が生じることがなく、また、湿式不織布用のショートカット繊維として適用した場合に、水中で凝集せずに優れた水中分散性を発揮することができる。また、製品保管時などの荷重がかかるような環境下において、繊維同士が密着することによる融着や変形が生じることを抑制できる。酸化チタンの含有量が0.20質量%未満であると、フィラー成分の含有量が少ないため、繊維/繊維間の摩擦を低下させることができず、製品保管時などの荷重がかかるような環境下において繊維同士が密着により融着や変形が生じる恐れがあり、また、ショートカット繊維として適用した場合に、水中分散性が悪くなる。一方、酸化チタンの含有量が0.40質量%を超えると、フィラー成分の含有量が多く、ポリエステル分子の流動性や結晶性が阻害されるため、接着性能が低下し、バインダー繊維としての性能に劣るものとなる。
本発明のポリエステルバインダー繊維は、繊維を構成するポリエステル中に含まれるリン酸化合物の割合が多くとも10ppmであることが必要である。リン酸化合物は、酢酸コバルト等の有機金属化合物による樹脂の劣化を抑制することを目的に、ポリエステル系の高分子化合物の添加剤として使用されることがある。しかしながら、リン酸化合物は、4つの配位子をもつことから、体積が大きく密度が小さいため、ポリエステルの分子の流動性を阻害しやすく、このような性質のリン酸化合物が多く含まれる場合、バインダー繊維中において熱接着に主に寄与する非晶部におけるポリエステル分子の流動性が悪化し、接着性能が低下することになると、本発明者は考察した。また、リン酸化合物が多く含まれる場合、重合の際の溶媒が酸性になるため、等電点が酸性側にある無機物(酸化チタン、シリカなど)は凝集しやくなり、凝集した粗大粒子がポリエステル分子の流動性や結晶性を阻害することとなり、接着性能が低下し、接着強度が得られないと考察した。
そこで、本発明においては、バインダー繊維を構成するポリエステル樹脂は、リン化合物の含有量を多くとも10ppmとしたことにより、酸化チタン(フィラー成分)を前記した多くの量を含有させても、ポリエステル分子の流動性、結晶性が悪化せず、優れた熱接着性能を発揮することができたものである。リン化合物の割合が10ppmを超える量を含有すると、リン酸化合物や凝集した酸化チタン等のフィラーが、ポリエステル分子の流動性を阻害しやすくなるため、目的とするバインダー繊維の接着機能が低下する。このポリエステル分子の流動性阻害を考慮すると、リン化合物の含有量が10ppmを超える量とし、かつ酸化チタンの含有量として本発明が規定する下限の量(0.20質量%)以上を含有させることはできず、そうすると、酸化チタンの含有量が0.20質量%未満であることによる上記した問題(繊維の水中分散性の悪化や製品保管時などの荷重がかかるような環境下において繊維同士が密着により融着や変形の発生)が生じやすくなる。
本発明においては、リン化合物の含有量が多くとも10ppmとするポリエステル樹脂を用いるにあたっては、ポリエステルを得る際の添加剤としてリン化合物が含まれないものをポリエステル(原料)として選択する。
なお、本発明において、リン化合物の含有量は、繊維を構成するポリエステル樹脂中に含まれる量が多くとも10ppmであることを必須としており、繊維表面に塗布する機能性油剤等に含まれるリン酸化合物の量は含有量として含まない。
本発明のポリエステルバインダー繊維は、繊維を構成するポリエステルにおいて、配向してなる結晶部と、配向していない非晶部とを有する。本発明のバインダー繊維は、熱処理が施されると熱接着成分(バインダー成分)となるものであり、非晶部は、配向結晶化が進んでいないためガラス転移温度以上で熱処理した際に、分子が流動して、熱接着成分となる。また、温度が昇温結晶化温度以上になると、熱接着成分となった非晶部が結晶化するため、より高強度な不織布を得ることができる。一方、配向結晶化した部分(結晶部)は配向結晶化が進んでいるため、この配向結晶化した結晶部が存在することで、繊維の乾熱収縮率を低いものとすることができ、熱接着処理における寸法安定性が良好で加工性に優れる。また、本発明のバインダー繊維を用いた不織布等の繊維製品の強度をさらに向上させるために、昇温結晶化温度よりも高温で熱圧着処理を施す場合においても、ポリエステルバインダー繊維中の結晶部の存在やフィラー成分を特定量含有することにより、加圧ローラーへの貼り付きを抑制しつつ、良好な接着性能を発揮することができる。
さらには、本発明のバインダー繊維は、フィラー成分(酸化チタン)を特定量含有しているため、繊維/繊維間の摩擦が低く、水中での分散性が良好であるため、均一な地合いの不織布が得られるばかりではなく、強度ムラ、不織の地合いムラが少ない高品質な不織布を作成することが可能である。
本発明のポリエステルバインダー繊維は、示差走査熱量測定による昇温結晶化ピークと融解ピークを有し、次の式を満たすものであることが好ましい。
[b(T)/a(T)] /[ b(Tcc)/a(Tcc)]=X
0.40<X<1.50
上式において、b(T)/a(T)の a(T)は、融点を示すDSC曲線に傾きが最大になる点で引いた接線とベースラインとの交点であるところの高温側の温度A1(℃)と低温側の温度A2(℃)との差(A1-A2)であり、b(T)は融解ピークのベースラインの熱量B1(mW)と融解ピークのトップの熱量B2(mW)との差(B2-B1)を試料量(mg)で除した値であり、b(Tcc)/a(Tcc)のa(Tcc)は昇温結晶化を示すDSC曲線に傾きが最大になる点で引いた接線とベースラインとの交点であるところの高温側の温度A3(℃)と低温側の温度A4(℃)との差(A3-A4)であり、b(Tcc)は昇温結晶化ピークのベースラインの熱量B3(mW)と昇温結晶化ピークのトップの熱量B4(mW)との差(B3-B4)を試料量(mg)で除した値である。
融解ピークの領域を示すb(T)/a(T)は、融点を示すDSC曲線から得られるピークのシャープさを示す値である。昇温結晶化ピークの領域を示すb(Tcc)/a(Tcc)は、繊維が十分に延伸されてなる延伸糸には発現しないピークである。図1に、DSC曲線の一例を示す。a(T)は、融点を示すDSC曲線に傾きが最大になる点で引いた接線とベースラインとの交点であって、高温側の温度A1(℃)と低温側のA2(℃)の差(A1-A2)であり、b(T)は、ピークトップの熱量B2(mW)とピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)との差(B2-B1)を試料量(mg)で除した値である。また、図示しないが、a(Tcc)は、昇温結晶化ピークを示すDSC曲線における傾きが最大になる点で引いた接線とベースラインとの交点であるところの高温側の温度A3(℃)と低温側のA4(℃)の差(A3-A4)であり、b(Tcc)は、昇温結晶化ピークベースラインの熱量B3(mW)とピークトップの熱量B4(mW)との差(B3-B4)を試料量(mg)で除した値である。
本発明のポリエステルバインダー繊維において、示差走査熱量測定による昇温結晶化ピークと融解ピークとの比(X)が0.40<X<1.50であると、加圧または加熱によって優れた流動性を示し、優れた接着性能を有しつつ、紡糸延伸工程での繊維同士の密着を抑制し、高温保管の際の繊維同士の密着による融着や変形が生じることを効果的に抑制できる。つまり、高い熱接着性能と品位を兼ね備えたバインダー繊維となる。
示差走査熱量測定による昇温結晶化ピークと融解ピークの割合Xが0.40より大きいことにより、結晶配向した結晶部の割合をバランスよく有し、紡糸延伸工程での繊維同士の密着を抑制し、高温下の保管輸送の際の繊維同士の密着による融着等の発生を良好に防止できる。また、乾燥ローラーや熱圧ローラーにて熱圧着する場合には、金属ローラーに繊維が貼り付きにくくなり、操業性が良好となる。さらには、未配向の非晶部の割合が大きくなく、紡糸延伸工程での応力の緩和が起きにくくなり、乾熱収縮率が抑制された繊維となる。
一方、示差走査熱量測定による昇温結晶化ピークと融解ピークの割合Xが1.50より小さいことにより、結晶部の割合が大きくなりすぎず、加圧または加熱によって熱処理を施した際のポリマーの流動性が良好で、熱接着成分として機能を発揮する際の接着性能が高く、接着強力に優れる繊維製品を得ることができる。
本発明においてバインダー繊維の示差走査熱量測定(昇温結晶化温度、融解温度、降温結晶化温度、昇温結晶化ピークと融解ピーク)は、以下の方法により行う。すなわち、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製Diamond DSC)を用い、繊維試料を約8.5mg秤量し、25℃から280℃まで昇温速度20℃/分で測定する。降温については、前記した280℃まで昇温した後、280℃で3分間ホールドした後、降温速度20℃/分の条件で測定する。
本発明のポリエステルバインダー繊維は、コバルト化合物を含有しないことが好ましい。コバルト化合物は、繊維に含有させることで、繊維の黄色味を消して、より白く視認できるために用いられるものであるが、人体への毒性や環境汚染の懸念がある物質であり、近年、欧州を中心に含有規制を検討されている物質である。そのため、本発明のポリエステルバインダー繊維中にはコバルト化合物が含有されていないことで、水処理用のろ過布や浸透膜等の特殊分野に適用するにあたり、好適に使用することができる。
本発明のポリエステルバインダー繊維は、乾熱収縮率(170℃×15分)が70%以下であるとよく、60%以下であることがより好ましい。本発明のポリエステルバインダー繊維は、乾熱収縮率が70%以下とすることにより、不織布の製造に適用した際の不織布工程において乾燥熱処理をする際の繊維の収縮が小さいものとなり、加工性が良好で、得られる繊維製品の品位が向上する。一方、乾熱収縮率が70%を超えると、不織布等の繊維製品を得る工程において、乾燥熱処理をする際に繊維が大きく収縮し、得られる繊維製品に斑が生じることから、繊維製品が不織布や抄造紙の場合には地合いの悪いものとなり、また、得られる繊維製品の強力も劣るものとなる。
本発明における熱収縮率は、JIS L1015 8.15b 乾熱寸法変化率に基づいて、以下のようにして測定する。なお、空間距離は25mmとして試料を作成した。具体的には、繊維の両端を接着剤(両面テープおよび接着剤)で滑艶紙に1本ずつ貼り付けて固定した試料を作成し(両面テープの上から紙を貼り付けてさらに固定)、この試料を単繊維弾性試験機につかみ間隔25mmで取り付け、滑艶紙を切断した後、所定の初荷重(初荷重= 45mg×繊度(dtex)の値)をかけた時の初期試料長(N)を測定する。初期試料長測定後の繊維を熱処理用台に取り付け、170℃に設定した熱風乾燥機中に吊り下げて15分間放置後、取り出し、室温まで冷却後、再び単繊維弾性試験機に取り付け、初荷重をかけたときのつかみ間の距離(熱処理後試料長(N))を読み、下式にて熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)=〔1-(N/N)〕×100
なお、無荷重下の熱処理とは、オーブン等の熱処理機の中に、1本1本の繊維が、収縮しても緊張しないように十分に弛ませた状態(弛緩状態)でセットし、170℃で15分間加熱処理することをいう。また、繊維30本について測定し、その平均値を熱収縮率(%)とする。なお、本発明のポリエステルバインダー繊維が、連続繊維の場合も、連続繊維を長さ30mmに切断したものを準備し、上記した方法により乾熱収縮率を測定する。
本発明のポリエステルバインダー繊維の単繊維繊度は、2.5デシテックス以下であることが好ましく、中でも1.7デシテックス以下であることが好ましい。単繊維繊度が2.5デシテックスを超えると、繊度が大きくなることから未延伸部が乾燥熱処理工程で十分に溶融しない場合があり、熱接着処理した際の接着が不十分となり、強力が低下しやすくなる。なお、安定して製糸を行うためには0.1デシテックス以上とすることが好ましい。
本発明のポリエステルバインダー繊維の繊維長は、湿式不織布に用いる場合は3~15mmが好ましく、より好ましくは5~10mmの範囲である。繊維長が3mmより小さいと、繊維の接着点数が減少し、十分な強力の不織布が得にくくなる。繊維長が15mmより長くなると、繊維のアスペクト比が大きくなるため、水中にて単繊維同士が絡みやすくなり分散性が悪化する傾向となる。乾式不織布に用いる場合は、繊維長は30~110mmが好ましく、さらには38mm以上がより好ましい。繊維長を38mm以上とすることにより、カード機での開繊時に繊維の脱落が発生しにくく操業性が良好となる。一方、繊維長を110mm以下とすることにより、カード機で良好に解繊でき、地合いの均一な不織布が得られる。また、本発明のポリエステルバインダー繊維を適用する用途や繊維製品によっては、繊維長を有さない連続繊維の形態として適用することも好ましい。
本発明のポリエステルバインダー繊維を構成するポリエステルの固有粘度は0.53~0.75であることが好ましい。0.53未満であると紡糸および延伸時に張力が掛かりにくくなり、配向結晶化が進みにくくなるため、本発明が目的とする熱特性を有する繊維を得ることが難しくなる。また、湿式不織布用の繊維として用いる場合に、単繊維同士の凝集が生じ、水分散性が低下する。さらに繊維製造時に、紡糸ノズルにおける計量性が低下し、繊維セクション分布に劣るものとなる。一方、固有粘度0.75より大きくなると、ポリマーの流動性が低下し、熱接着性能が低下する。さらには、紡糸および延伸時に張力が大きく掛かり、配向結晶化が進みにやすくなり、本発明の熱特性を有する繊維を得ることが難しくなる。
なお、固有粘度[η]は、以下の方法により測定する。すなわち、フェノールとテトラクロロエタンとの等重量混合物を溶媒とし、20℃で、樹脂(0.2g)を試料として投入し、濃度0.5%溶液とし、常法に基づき20℃にて相対粘度〔ηr〕を測定し、その値を用いて、下記式により固有粘度〔η〕を算出した。

本発明のポリエステルバインダー繊維を構成するポリエステル(原料)は、示差走査熱量測定による降温結晶化ピークが180~160℃の範囲に発現することが好ましい。特に、2.0デシテックス以下の細繊度の繊維を紡糸する場合は、降温結晶化ピークが上記範囲にあることにより、溶融され、ノズル孔から吐出された樹脂の降温結晶化による固化点がノズル直下よりも低い箇所になる。そのため、紡糸張力がかかりにくく、かつ均一冷却性が向上するため、紡糸でのセクションの安定性、操業性が向上し、より高品質なバインダー繊維となる。
ポリエステル(原料)の降温結晶化ピークは、以下の方法により測定する。すなわち、示差走査型熱量計を用い、ポリエステル樹脂を約8.5mg秤量し、25℃から280℃まで昇温速度20℃/分で測定した。降温については280℃で3分間ホールドした後、降温速度20℃/分の条件で測定する。
本発明のポリエステルバインダー繊維を得るには、フィラー成分(酸化チタン)が前記した範囲の量を含有し、前記した降温結晶化ピークを有するポリエステル樹脂を用い、ポリエステル樹脂の固有粘度を適切な範囲のものとし、紡糸速度、延伸倍率を後述する条件に調整することにより製造することができる。
次に、本発明のポリエステルバインダー繊維の製造方法について、一例を用いて説明する。
(紡糸延伸条件)
まず、酸化チタンの含有量が0.20~0.40質量%、リン酸化合物の含有量が多くとも10ppmであるポリエステル樹脂を、スクリュー式押出機等を装備した紡糸設備で溶融紡糸し、糸条を冷却・固化し、700~1500m/分の速度で引き取る。得られた糸条を集束して糸条束とした後、ローラー間で延伸倍率を延伸倍率は自然延伸倍率(NDR)以下で延伸する。延伸倍率は、供給ローラーと引き取りローラーとの速度比(引き取りローラーの速度を供給ローラーの速度で除した値)であるが、好ましい延伸倍率は、1.00を超え1.20以下である。また、供給ローラーと引き取りローラーのいずれも非加熱ローラーを用いることが好ましい。そして、延伸を施した糸条束に油剤を付与し、ロータリー式カッターに供給し、所望の繊維長に切断するとよい。
本発明のポリエステルバインダー繊維は、不織布のバインダー繊維として使用することが好適なものであるが、紡績糸に混紡して用いても良好に効果を発揮し、また、その他の繊維製品や繊維以外のものとを熱接着する用途に適用することもできる。
不織布に適用するにあたっては、不織布としては、乾式であっても、湿式であってもよく、また、不織布の目付は特に限定するものではなく、用途に応じて適宜選択すれば良い。
湿式不織布は、一般的な抄紙工程によって製造することができる。より具体的には、本発明のポリエステルバインダー繊維と、主体となる繊維(熱接着処理により溶融せず、不織布において骨格となる繊維)とを準備し、パルプ離解機を用いて攪拌、解繊工程を行った後、抄紙機にて湿式ウエブを得る。得られた湿式ウエブをヤンキードライヤー、エアスルードライヤーなどの連続熱処理機を用いてポリエステルバインダー繊維の構成樹脂が融解または軟化する温度で熱接着処理を施し、構成繊維同士が熱接着により一体化した湿式不織布を得る。そして上記のように常法にて抄紙された後、不織の強度や密度を向上させる場合はカレンダー加工などにより熱圧着加工をすることが好ましい。
このようにして得られる湿式不織布においては、その用途に応じて様々な加工を施す場合がある。例えば、紙の密度や強度を高めるために、乾燥熱処理後にさらにカレンダーロールで熱圧着加工を施したり、各種の機能を付与するために紙の表面に樹脂加工を行うことがある。このような加工においては、抄紙後の乾燥熱処理よりもさらに高温の熱処理を行う場合があるが、本発明のポリエステルバインダー繊維は、ポリエチレンテレフタレートからなるものであるためポリマーの融点が高く、耐熱性に優れており、これらの加工において高温の熱処理を施しても劣化が生じることがない。
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。なお、実施例中の各種の値の測定方法は次の通りである。
(1)繊維の示差走査型熱量測定
前記した方法により測定した。
(2)固有粘度
前記した方法にて算出した。
(3)金属成分の含有量
30℃以下の温水中にバインダー繊維を入れ、付着している油剤を洗い流した後、
30℃の熱風乾燥機にてバインダー繊維を乾燥させた。前記処理を実施したバインダー繊維(約8mg)を300℃で溶融させて、直径3cm×厚み1cmの円盤状の成形樹脂体(板状物)を得た。この成形樹脂体を用いて、リガク社製蛍光X線分析装置 ZSX Primusを用いて、検量線法により定量分析を行った。
(4)単繊維繊度
試料を20mmの長さに切断すること、繊維を100本取り出し、質量を測定すること、測定回数を4回とした以外は、JIS L1015 8.5.1 A法に準じて測定した。
(5)繊維長
測定数を25本とした以外は、JIS L1015 8.4.1 直接法(C法)に準じて測定した。
(6)乾熱収縮率
前記した方法にて測定した。
(7)紡糸性
未延伸糸を得る際の、溶融紡糸時の糸切れの状況を、24時間連続して溶融紡糸を行った際の1トンあたりの糸切れ回数により、以下のように3段階で評価した。
○・・糸切れ回数が0~1回/トンであった。
△・・糸切れ回数が1~2回/トンであった。
×・・糸切れ回数が2回/トン以上であった。
(8)分散性
2000cmのビーカーに30℃の水1kgを秤取し、そこへバインダー繊維1.0gを投入し、DCスターラー(攪拌ペラは3枚スクリュー型で直径は約50mm)を用いて回転数850rpm、攪拌時間1分間の条件で攪拌した後の分散状態を下記の評価基準で、目視にて判断した。なお、○~△であれば合格とした。
評価 結束繊維の数
○: 0個
△: 1~5個
×: 6個以上
(9)強力
実施例で得られた不織布または合成繊維紙から幅50mm×長さ150mmに切断して、強力測定用サンプルとした。そのサンプルを、JIS L 1913 6.3.1 に基づき、つかみ間隔100mm、引張速度100mm/分として、タテ方向の強力をn=5で測定し、その平均値を強力とした。
[抄造不織布]
(温度140℃×2分 ヤンキードライヤーにより乾燥熱処理した後の強力)
〇:強力が4.0N以上
×:強力が3.9N以下
[合成繊維紙]
(温度210℃・線圧60kg/cm・処理速度6m/分 カレンダーロール圧着処理後の強力)
〇:強力が110N以上
×:強力が109N以下
(10)不織布の地合
得られた不織布の地合を目視により以下の3段階で評価した。
○:構成繊維の分布が均一であり、斑が非常に少ない
△:構成繊維の分布がやや不均一であり、斑がやや目立つ
×:構成繊維の分布が非常に不均一であり、斑が目立つ。
(10)不織布の加工性
実施例記載の条件で、熱ロールおよび加圧ロールに不織布を通した際の、ロールへの貼り付きの有無を確認した。
〇:ロールへの不織布の貼り付きが弱く、ロールから不織布がはがれる
×:ロールへの不織布の貼り付きが強く、ロールから不織布がはがれない
実施例1
フィラー成分として酸化チタンを0.28質量%含有し、リン酸化合物およびコバルト化合物を含有しないポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.69)を130℃で乾燥後、295℃で溶融し、紡糸口金(紡糸孔数が2010)を通して、吐出量334g/分で吐出し、紡糸速度1176m/分の速度で引取り、その後、引き取った繊維群を約80万デシテックスのトウとなし、延伸倍率1.10倍で延伸し(延伸熱処理なし)、油剤を付与後、トウの水分率が約18質量%となるように絞り、ドラム式カッターで5mmの長さに切断し、単繊維繊度が1.4デシテックスのバインダー繊維(ショートカット繊維)を得た。
次に、得られたバインダー繊維と、主体繊維として延伸熱処理して得られた単繊維繊度が0.6デシテックス、長さが5mmのポリエチレンテレフタレートショートカット繊維(ユニチカ社製<521>0.4T5)とを用い、バインダー繊維/主体繊維(質量比)=40/60として水中へ分散させ、繊維濃度が0.04質量%となるように調整して円網抄紙機に供給した。抄造ウエブを得た後、140℃のヤンキー式ドライヤーで乾燥熱処理(2分間)を施して、から余剰水分を除去して抄造不織布を得た。
得られた抄造不織布を、表面が平滑の一対のロールからなる熱カレンダー装置に通して、ロールの設定温度210℃、線圧60kg/cm、処理速度6m/分にて熱圧着(熱接着処理)を施し、坪量が約40g/mの合成繊維紙を得た。
実施例2
表1記載の固有粘度であり、表1記載の酸化チタンおよびリン酸化物を含有し、コバルト化合物を含有しないポリエチレンテレフタレートを使用したこと以外は、実施例1と同様に本発明のポリエステルバインダー繊維、抄造不織布及び合成繊維紙を得た。
比較例1および2
表1記載の固有粘度、酸化チタン、リン酸化物、コバルト化合物を含有しているポリエチレンテレフタレートを使用したこと以外は、実施例1と同様に本発明のポリエステルバインダー繊維、抄造不織布及び合成繊維紙を得た。
比較例3および4
表1記載の延伸倍率に変更したこと以外は、実施例1と同様に本発明のポリエステルバインダー繊維、抄造不織布及び合成繊維紙を得た。
表1から明らかなように、実施例1及び実施例2のバインダー繊維は各物性値が本発明で規定した範囲内であったため、分散性にすぐれ、上記したように高接着性のバインダー繊維であった。また得られた不織布および合成繊維紙の地合い、強力は良好であった。
比較例1についてはフィラー成分の含有量が少ないため、水中の分散性が悪く、得られる不織布および紙の地合いが悪いものであった。
比較例2については高温結晶化温度が高いため、バインダー繊維の接着性能が低く、得られる不織布および紙の強力が劣るものとなった。
比較例3については、延伸倍率が低いため、未配向部の割合が多く、得られるバインダー繊維の熱収縮率が高いものとなった。また繊維が大きく収縮してしまうため、得られる不織布および紙の地合いは悪いものとなった。また、合成繊維紙を得るための熱ロール処理の際にロールへの貼り付きが強く、加工性が悪化した。
比較例4については、延伸倍率が高いため、未配向部の割合が少なく、得られるバインダー繊維の接着性能が劣るものとなり、得られる不織布および紙強力が低い結果となった。


Claims (5)

  1. 繊維を構成する熱可塑性樹脂がアルキレンテレフタレートにより構成されるポリエステルのみからなる単相型のバインダー繊維であり、繊維を構成する熱可塑性樹脂に含まれる酸化チタンの含有量が0.20~0.40質量%、リン酸化合物の含有量が多くとも10ppmであることを特徴とするポリエステルバインダー繊維。
  2. 示差走査熱量測定によって測定されるピークが下記の式を満たすことを特徴とする請求項1記載のポリエステルバインダー繊維。
    [b(T)/a(T)] /[ b(Tcc)/a(Tcc)]=X
    0.40<X<1.50・・・(1)
    上式において、b(T)/a(T)の a(T)は、融点を示すDSC曲線に傾きが最大になる点で引いた接線とベースラインとの交点の高温側の温度A1(℃)と低温側の温度A2(℃)との差(A1-A2)であり、b(T)は融解ピークのベースラインの熱量B1(mW)と融解ピークのトップの熱量B2(mW)との差(B2-B1)を試料量(mg)で除した値であり、b(Tcc)/a(Tcc)のa(Tcc)は昇温結晶化を示すDSC曲線に傾きが最大になる点で引いた接線とベースラインとの交点の高温側の温度A3(℃)と低温側の温度A4(℃)との差(A3-A4)であり、b(Tcc)は昇温結晶化ピークのベースラインの熱量B3(mW)と昇温結晶化ピークのトップの熱量B4(mW)との差(B3-B4)を試料量(mg)で除した値である。
  3. 繊維を構成する熱可塑性樹脂中にコバルト化合物を含有しないことを特徴とする請求項1または2記載のポリエステルバインダー繊維。
  4. 請求項1または2記載のポリエステルバインダー繊維を用いてなる不織布
  5. 酸化チタンの含有量が0.20~0.40質量%、リン酸化合物の含有量が多くとも10ppmであるポリエステル樹脂を用いて、溶融紡糸し、1500m/分以下の速度で引き取った糸条を、ローラー間で延伸する際に、ローラー間での延伸倍率が、1.00を超え1.20以下であり、供給ローラーおよび引き取りローラーのいずれも非加熱ローラーを用いて、単相型のバインダー繊維を得ることを特徴とするポリエステルバインダー繊維の製造方法。
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