JP3997613B2 - 高強度ポリプロピレン繊維及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高強度でかつ高伸度な産業用資材などに適した高強度ポリプロピレン繊維及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまで高強度が要求されるような産業資材等の分野では、ポリエステル、ナイロン等の繊維が広く使用されている。しかし、ポリエステル、ナイロン等は耐薬品性の点で問題があり、かつ大量に利用される産業資材分野での焼却時の有害ガスの発生、またリサイクル性など問題も多い。
一方、ポリプロピレン繊維は、比重が小さく、耐薬品性に優れるという特徴を有する。また、リサイクル性にも優れ、焼却時にも有毒ガスが発生しないなど、産業資材分野の材料としては非常に優れている。しかし、これまで高強度のポリプロピレン繊維を生産性良く製造することができず、この分野への展開が遅れていた。また従来のポリプロピレン繊維は高強度化しても伸度が低く、加工品への成形時に加工性の点でしばしば問題になることがあった。また、不織布の分野でも伸度の高い高強度ポリプロピレン繊維を用いることにより、より機械的物性の向上した不織布とすることが可能となり、市場のニーズとして伸度と強度が共に高いポリプロピレン繊維が強く望まれていた。
【0003】
通常のポリプロピレン繊維は、Q値(重量平均分子量/数平均分子量)が4以上のポリプロピレンを原料とし、溶融紡糸、延伸により繊維が製造されるが、せいぜい単糸強度は5g/d前後であった。延伸温度を高く設定することで、延伸倍率は幾分向上し強度物性は上がるが、延伸時の全繊度が多くなればなるほど糸のケバ立ち、糸切れ等の問題が発生し、高倍率延伸による延伸は実際のところ困難であった。
【0004】
高強度ポリプロピレン繊維の生産に関しては、従来高分子量ポリプロピレンを低温度で溶融紡糸し、低速で延伸することが言われてきたが、工業化には問題も多かった。特許2537313号公報には、Q値が5未満、n−ヘプタン不溶分(HI;重量%)が97<HI<100、アイソタクチックペンタッド分率(IPF;モル%)が94<IPF<100である高結晶性ポリプロピレンペレットを用いて、立体規則性を失わない紡糸温度260〜280℃で溶融紡糸し、延伸温度は延伸性を少しでも向上させるために、140〜150℃で高延伸して、破断強度8g/d以上の繊維を得る旨の記載がある。しかしこの公報に記載された繊維の製造条件は、溶融紡糸時はポリプロピレンの熱分解が進みにくい温度280℃以下での紡糸であり、延伸時はより延伸性を高くするために、融点に近い温度での延伸であり、得られる繊維の伸度も40%と低いものであった。
一方、特開平6−313208号公報には、MFRが5〜15、IPFが95以上、HIが98以上、Q値が4以下の高結晶性ポリプロピレンを用いて、熱分解が進みにくい紡糸温度270〜300℃で溶融紡糸し、延伸性を確保するために70〜130℃の温度で、延伸倍率は7倍以上延伸して、破断強度8g/d以上、伸度40%以下の繊維を得る旨の記載がある。しかしこの公報に記載された繊維の製造条件は、溶融紡糸時はポリプロピレンの熱分解が進みにくい温度300℃以下での紡糸であり、延伸時はより延伸性を高くするために、70℃以上での延伸であり、延伸糸の全繊度が1000デニール未満であるために、高倍率での延伸が可能であり高強度化を達成しているものの、50%以上の伸度を持った繊維を得ることはできない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、強度、伸度共に高く、産業資材等に好適に使用できる高強度ポリプロピレン繊維及びその製造方法を提供しようとするものである。
【0006】
本発明は前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、結晶性ポリプロピレンを高温度で紡糸して低速度で引き取ることにより、低配向な未延伸糸とし、1段以上の延伸を行うことにより、さらに好ましくは通常のポリプロピレン繊維の延伸温度に比べ、低温度で1段目の延伸を行い、1段目の延伸温度より高い温度で2段目以後の延伸を行うことにより、強度、伸度共に高い繊維を提供できることを知り、本発明を完成するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記の課題を解決するために以下の構成を有する。
(1)Q値(重量平均分子量/数平均分子量)が4以下の分子量分布を持つ結晶性ポリプロピレンを原料とし、300〜350℃の温度で溶融紡糸した後、50〜70℃の範囲で1段目の延伸を行い、次いで1段目の延伸より高い温度で2段以降の延伸を行うことを特徴とする高強度ポリプロピレン繊維の製造方法。
(2)未延伸糸のメルトフローレート/ポリプロピレン原料樹脂のメルトフローレートの比が2〜7である前記(1)に記載の高強度ポリプロピレン繊維の製造方法。
(3)溶融紡糸工程の巻き取り速度が100〜700m/minである前記(1)または(2)に記載の高強度ポリプロピレン繊維の製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の高強度ポリプロピレン繊維は、前述したように破断強度が7g/d以上、破断伸度50%以上の繊維である。
本発明において使用される結晶性ポリプロピレンは、Q値が4以下のものであればよいが、Q値が3以下の分子量分布の狭い結晶性ポリプロピレンを用いた場合延伸性をさらに高くすることができるためより好ましい。Q値が4を超えると、分子量分布が広くなり、延伸性を高めるのが困難となる。ここでQ値とは重量平均分子量/数平均分子量の比によって求められた値で、通常はゲル浸透クロマトグラフ法(GPC)により求めることができ、また、重量平均分子量は例えば光錯乱法、粘度法、超延伸法等公知の方法により求められ、数平均分子量は、例えば末端基定量法、氷点降下法、沸点上昇法、浸透圧法等公知の方法により求められる。結晶性ポリプロピレン樹脂の分子量分布は、該樹脂の製造時のプロピレンの重合条件を変えることにより調整できるが、さらに結晶性ポリプロピレン樹脂を有機過酸化物、硫黄系化合物等の分解剤の存在下に熱処理して調整してもよい。なお、Q値は分子量分布が狭くなるほど1に近づくが、現在のところQ値が2以下のポリプロピレンはほとんど知られていない。
【0009】
上記の結晶性ポリプロピレン樹脂はまた、メルトフローレートが1〜30g/10minの範囲であることが溶融紡糸時の曳糸性及び延伸時の延伸性の点で好ましい。メルトフローレートが1g/10min未満であると、紡糸が困難となる傾向が現れ、メルトフローレートが小さくなるにしたがって紡糸性が著しく悪くなる。また、メルトフローレートが30g/10min以上であると高温度で紡糸するために、これもまた曳糸性が悪くなる傾向が現れる。また上記結晶性ポリプロピレンのn−ヘプタン不溶分は96%以上あれば問題なく本発明を実施することができ、特殊な高結晶性ポリプロピレンを用いなくても高強度繊維を得ることができる。
【0010】
本発明に使用する結晶性ポリプロピレンは、100%プロピレン単位からなるものでもよく、またプロピレン重合体中に2重量%以下の他のオレフィン、例えばエチレンもしくはC4以上のオレフィン(1−ブテン、1−ペンテン,4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等)を含有するプロピレンを主成分とする共重合体であってもよい。また上記ポリプロピレン樹脂に、プロピレンとエチレン、オレフィンとの結晶性ランダム共重合体もしくはブロック共重合体等を混合したものであってもよい。
【0011】
本発明に関わるポリプロピレン樹脂には、本発明の効果を妨げない範囲内でさらに、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤などの添加剤を適宜必要に応じて添加してもよい。
【0012】
次に本発明の製造法について説明する。まず紡糸について説明する。
ポリプロピレン樹脂は、Q値が4以下でかつ、メルトフローレートが1〜30g/10minのものを用いて溶融紡糸する。この時の紡糸温度は、300〜350℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは、310〜340℃の範囲で溶融紡糸することが繊維の配向を抑えた未延伸糸とすることができ好ましい。紡糸温度が300℃未満であると、押出機で溶融したポリプロピレン溶融物を紡糸口金から押出した繊維状のポリプロピレン溶融物は急激に冷却され、固化点での繊維の変形が大きく、配向がより進んだ未延伸糸となるため延伸性が低く高倍率で延伸することが難しくなり好ましくない。また紡糸温度が350℃を超えると急激にポリプロピレン樹脂の分解が進み、繊維の発泡などから曳糸性の良い未延伸糸を得ることが困難であるばかりでなく、繊維の分子鎖が著しく切断されてしまい、必要以上に低分子量化し、延伸しても高強度なポリプロピレン繊維とならない。
【0013】
また、押し出した繊維状のポリプロピレン溶融物を冷却する場合、従来の方法、例えば空気、水、グリセリン等の媒体中で融点以下の温度まで冷却し、引き取ることができるが、未延伸糸の配向を極力抑えるには、液体で急冷却するのではなく、空気で冷却することが好ましい。空気の温度、風量は任意に設定できるが、より配向を抑えた未延伸糸とするため、徐冷却、即ち風量は弱く、温度はあまり低すぎないことが好ましい。このように徐冷することにより、ラメラが繊維軸方向に対して直角に配列したような結晶の高次構造を充分に形成させることができ好ましい。
【0014】
未延伸糸の巻取り速度は、通常ポリプロピレン繊維では、1000m/分付近で引き取ることが一般的であるが、より未延伸糸の配向を抑えるためには、引き取り速度は700m/min以下、好ましくは600m/min以下であることが好ましい。引き取り速度が700m/minを越えると、繊維状のポリプロピレン溶融物の固化点での変形が大きく、配向が進んだ未延伸糸となり、延伸性が悪く、高倍率で延伸することが難しくなる。また、引き取り速度が100m/min未満では、高温度紡糸により溶融粘度が低くなったポリプロピレン溶融物の自然落下速度よりも遅く均一な未延伸糸とすることが困難である。
【0015】
従来の高強度ポリプロピレン繊維の製造方法では、ポリプロピレンの樹脂劣化を抑えることが重要であると一般に考えられているが、本発明では、高温度で紡糸することによりかつ、積極的にスクリュー押出機内で熱履歴を加えることにより、未延伸糸のメルトフローレート(MFR)をポリプロピレン樹脂原料のメルトフローレートに比べて高くすることが高強度化を発現させるためには重要である。未延伸糸のMFR/ポリプロピレン樹脂原料のMFRの比が2〜7であることが好ましい。(原料のMFRは、熱履歴を経ていない原料そのものの値を測定すればよく、未延伸糸のMFRは押出機内で加熱され溶融紡糸された直後の状態の繊維の値を測定すればよい。)すなわち、前述の溶融紡糸温度(300〜350℃、より好ましくは310〜340℃)で紡糸を行った場合に未延伸糸のメルトフローレートを高くすることができ、未延伸糸とポリプロピレン樹脂原料のメルトフローレート比を2〜7にすることが可能となる。溶融紡糸温度とこの比との間には、ほぼ相関関係があることがわかっている。つまり、紡糸温度が350℃を越えるとこの比が7を越え、曳糸性が著しく低下し、また必要以上に分子量が小さくなりすぎて高強度化しない。また、紡糸温度が300℃未満であるとこの比が2未満となり、延伸性が低く高倍率で延伸することが難しくなる。
紡糸押出機内で積極的に熱を加えることが得られる繊維の延伸性を高めることについて、現在のところその理由は明らかではないが、熱によりポリプロピレンの分子鎖がある程度切断されて適切な長さとなり、延伸を阻害するような分子鎖のもつれを低減するためではないかと本発明者等は推定している。
【0016】
繊維の断面形状は、円形または異形形状とすることができる。異形断面の場合には、例えば偏平形、三角〜八角形等の角型、T字形、多葉形、中空断面形等任意の形状とすることができ、特に限定されるものではない。
【0017】
次に延伸について説明する。前述の方法で得たポリプロピレン未延伸糸を延伸して強度、伸度の高いポリプロピレン繊維を得る。ポリプロピレン未延伸糸の延伸法は、熱ロール延伸、温水延伸、加熱プレートなど公知の方法が採用される。延伸操作は、1段延伸、2段延伸、多段延伸のいずれによっても行うことができるが、1段延伸よりも2段以上の延伸操作を行うことが好ましい。1段延伸のみを行う場合、延伸温度は50〜150℃の範囲が好ましく、延伸倍率は4〜8倍の範囲が好ましい。2段以上の延伸を行う場合、1段目の延伸は、50〜70℃の比較的低温度で延伸する。次いで2段目以降の延伸は、延伸するにつれてその結晶融解温度は高くなるため、前段の延伸温度より高いことが必要である。2段目以降の各延伸段は前段よりも10℃以上より好ましくは15℃以上高く(ただし繊維が溶融する温度より低く)設定することが望ましい。1段目で70℃以上の温度で延伸した場合、急激に未延伸糸の配向結晶化が進行し、2段延伸で延伸性が極端に低下するため、低温度での延伸が好ましい。また、50℃未満でも延伸性は低下し高強度化するのに必要な延伸倍率とすることができない。
【0018】
2段以上の延伸を行う時の延伸倍率は、全延伸倍率が4〜9倍である場合が好ましい。格段の延伸倍率については、1段目の延伸で全延伸倍率の40%以上、好ましくは50%以上の延伸を行い、ついで2段目以降で単糸切れ、ケバ立ちが起きない範囲まで延伸し、所望の全延伸倍率に延伸された高強度ポリプロピレン繊維の延伸糸を得る。1段目の延伸で全延伸倍率の40%以下の延伸倍率で延伸した場合、前記の全延伸倍率の40%以上で1段延伸した場合に比べて全延伸倍率が同じであっても、高強度ポリプロピレン繊維を得ることはできない。これは、1段延伸で配向結晶化は著しく進行するため、2段以上の延伸では無理な延伸がかかり結果として高強度化しないためである。ここで延伸倍率とは、供給ロール速度と引き取りロール速度の比によって表される値のことである。。
【0019】
また、延伸したポリプロピレン繊維の延伸物を融点付近の温度で定長熱処理、弛緩熱処理等でアニール処理を行うことにより熱収縮が改善されたポリプロピレン繊維を得ることができる。
【0020】
通常、マルチフィラメント製造工程での全延伸糸繊度が50〜1000デニールの未延伸糸を延伸するのとは異なり、ステープルファイバーを製造する場合の延伸工程での単糸繊度は1〜30デニール、全延伸糸繊度は、1〜100万デニールである。このため延伸性は悪くなり、マルチフィラメント製造時のように延伸倍率は高く設定することができない。しかし本発明の方法によれば、前記のポリプロピレン樹脂原料を用いて、紡糸工程で300〜350℃の高温度紡糸、700m/min以下、好ましくは600m/min以下の低速度で未延伸糸の引き取り、繊維状のポリプロピレン溶融物の除冷却により、配向を抑えた未延伸糸とする。次いで、1段延伸を50〜70℃の低温で延伸し、2段以上の延伸を前段よりも10℃以上、好ましくは15℃以上高い温度で延伸し、また延伸倍率は、1段延伸を全延伸倍率の40%以上、好ましくは50%以上で延伸することにより、高倍率で延伸できる。その結果、単糸破断強度7g/d以上、好ましくは8g/d以上、破断伸度は50%以上、好ましくは60%以上を有する高強度なポリプロピレン繊維、特にステープルファイバーの製造などの延伸時の全繊度が非常に大きい場合でも生産することができるようになる。また、延伸時に全繊度の小さいマルチフィラメント、モノフィラメント等の製造方法であっても問題なく、高強度ポリプロピレン繊維を得ることができる。
【0021】
本発明で得られた強度、伸度共に高いポリプロピレン繊維は、長繊維あるいは短繊維で使用しても良いし、ストレートでも機械捲縮をかけて使用することもできる。また、本発明の高強度ポリプロピレン繊維は、単体で使用してもよいし、他の繊維と混合して使用することもできる。この他の繊維としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル、などの合成繊維、綿、羊毛、麻などの天然繊維、レーヨン、キュプラ、アセテートなどの再生、半合成性繊維が挙げられる。これら前記の繊維を用いて、不織布、編織物、繊維成形品とすることもできる。また、他の不織布、編織物、あるいはメッシュ状物、成型品との積層あるいは複合化した形で使用することもできる。あるいは、複合材料、セメント補強などの補強材としても使用することができる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
・メルトフローレート(MFR):
JIS K 7210(温度230℃、荷重2.169kg)に準じて測定した。
・メルトフロー比:
以下の式により算出した。
未延伸糸のMFR/ポリプロピレン樹脂原料のMFR
・単糸強伸度:
JIS L 1015(試長20mm、引張速度20mm/min)に準じて測定した。
・延伸倍率:
以下の式により算出した。
引き取りロール速度(m/min)/供給ロール速度(m/min)
・全繊度(d):
延伸工程での延伸糸トウの全体の繊度
【0023】
実施例1〜7
Q値が3、MFRが8のポリプロピレンを用いて、シリンダー内径30mmの押出機(L/D=20)にて、表1に示してある紡糸条件でノズル孔径0.8mmのノズルから溶融押出し、20℃の空気で冷却しながら未延伸糸を引き取った。得られた未延伸糸を表1に示すような延伸条件で延伸し、機械捲縮をかけ所定長に切断して短繊維とした。これらの短繊維は、捲縮数15個/25mm、カット長51mm、表1に示した糸物性を持つ短繊維であった。
【0024】
表1からも明らかなように、本発明の実施例1〜7のポリプロピレン繊維は、強度、伸度ともに高い糸物性を持つことがわかった。
【0025】
比較例1
Q値が5、MFRが16のポリプロピレンを用いて、シリンダー内径30mmの押出機(L/D=20)にて、表1に示してある紡糸条件でノズル孔径0.8mmのノズルから溶融押出し、20℃の空気で冷却しながら未延伸糸を引き取った。得られた未延伸糸を表1に示すような延伸条件で延伸し、機械捲縮をかけ所定長に切断して短繊維とした。これらの短繊維は、捲縮数15個/25mm、カット長51mm、表1に示した糸物性を持つ短繊維であった。
【0026】
比較例2〜4
Q値が3、MFRが8のポリプロピレンを用いて、シリンダー内径30mmの押出機(L/D=20)にて、表1に示してある紡糸条件でノズル孔径0.8mmのノズルから溶融押出し、20℃の空気で冷却しながら未延伸糸を引き取った。得られた未延伸糸を表1に示すような延伸条件で延伸し、機械捲縮をかけ所定長に切断して短繊維とした。これらの短繊維は、捲縮数15個/25mm、カット長51mm、表1に示した糸物性を持つ短繊維であった。
【0027】
比較例5
Q値が3、MFRが8のポリプロピレンを用いて、シリンダー内径30mmの押出機(L/D=20)にて、紡糸温度360℃でノズル孔径0.8mmのノズルから溶融押出したが、曳糸性が悪くサンプルを採取することができなかった。
【0028】
表1からも明らかなように、比較例1では、分子量分布が広いため延伸性が悪く、強度が低くなった。また、比較例2〜5は、強度が低くポリプロピレン樹脂原料、紡糸条件、延伸条件の最適な組合せでないと高強度化しないことがわかる。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、延伸工程で高倍率で延伸するために、Q値が小さい分子量分布の狭いポリプロピレン樹脂を用いて、紡糸工程で未延伸糸の配向を小さくし、紡糸温度を上げ積極的に未延伸糸フローレートを高くすることにより、延伸性が著しく改善された未延伸糸とすることができる。これをさらに従来のポリプロピレン未延伸糸の延伸温度よりもかなり低い温度で1段延伸を行い、1段延伸以上の温度で2段以上の延伸を行うことにより、高倍率で延伸が可能となり、強度7g/d以上、伸度50%以上の高強度ポリプロピレン繊維を得ることができるようになった。これにより従来ポリプロピレンの用途展開が遅れていた高強度繊維を必要とする産業資材分野の繊維を大量に生産供給できるようになった。
【表1】
Claims (3)
- Q値(重量平均分子量/数平均分子量)が4以下の分子量分布を持つ結晶性ポリプロピレンを原料とし、300〜350℃の温度で溶融紡糸した後、50〜70℃の範囲で1段目の延伸を行い、次いで1段目の延伸より高い温度で2段目以降の延伸を行うことを特徴とする高強度ポリプロピレン繊維の製造方法。
- 未延伸糸のメルトフローレート/ポリプロピレン原料樹脂のメルトフローレートの比が2〜7である請求項1に記載の高強度ポリプロピレン繊維の製造方法。
- 溶融紡糸工程の巻き取り速度が100〜700m/minである請求項1または2に記載の高強度ポリプロピレン繊維の製造方法。
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