JP4834688B2 - 耐熱性に優れるポリプロピレン繊維 - Google Patents

耐熱性に優れるポリプロピレン繊維 Download PDF

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Description

本発明は、耐熱性に優れ、しかも強度にも優れるポリプロピレン繊維に関する。
ポリプロピレン繊維は、耐水性、耐薬品性、軽量性などの特性に優れ、容易に溶融できリサイクル性に優れ、しかも焼却してもハロゲンガスなどの有害ガスを発生せず焼却処分が容易であるなどの理由で、多種多様な用途で広く用いられている。しかしながら、ポリプロピレン繊維は、合成繊維の中では耐熱性が十分に高いとはいえないため、耐熱性の向上が求められている。
例えば、リサイクル性および強度に優れるシートとして、ポリプロピレン繊維で補強したポリオレフィンシートが知られており、この繊維補強シートの製造にあたっては、生産性の向上およびポリプロピレン繊維とポリオレフィンシート基材との間の接着性の向上などの点から、ポリオレフィンをできるだけ高温で溶融してポリオレフィン基材とポリプロピレン繊維の接着を行う必要がある。しかしながら、ポリプロピレン繊維の耐熱性が不十分で、繊維補強シートの製造時にポリオレフィンを高温で溶融することができないため、生産速度を十分に高くすることができず、更にはポリプロピレン繊維とポリオレフィン基材との間の接着が不十分になり、生産性の低下、得られる繊維補強ポリオレフィンシートの強度不足などを招いていた。
また、ポリプロピレン繊維製の布帛をフィルターとして用いることが行われており、当該フィルターは高温環境下で用いられることもあることから、耐熱性の向上が求められている。
ポリプロピレン繊維の耐熱性の向上を目的とした従来技術としては、アイソタクチックペンタッド分率が96%以上98.5%未満で、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1〜30g/10分であるホモポリプロピレン樹脂を溶融成形後に延伸してなる、170℃、10分間における熱収縮率が10%以下で、融解ピーク温度が178℃以上であるポリプロピレン繊維が知られている(特許文献1を参照)。
しかしながら、このポリプロピレン繊維は、吸熱ピーク形状が、ブロードなダブル形状またはシングル形状であって、結晶が不均一であるため、耐熱性が未だ十分に高いとはいえない。
また、他の従来技術としては、アイソタクチック指数が90〜99%のポリプロピレンホモポリマーを溶融紡糸するか又は溶融紡糸した後に延伸してなる、155〜170℃で2つのDSC吸熱ピークを有するポリプロピレン繊維が知られている(特許文献2を参照)。
しかしながら、このポリプロピレン繊維では、2つのDSC吸熱ピークのうちで低温側の吸熱ピークがポリプロピレン繊維の耐熱性の指標をなし、しかも吸熱ピーク形状がブロードであって、結晶が不均一であるため、耐熱性が十分ではない。
特開2002−302825号公報 特開2001−20132号公報 「Macromolecules」、第6巻、1973年、p925 「Macromolecules」、第8巻、1975年、p687
本発明の目的は、均一な結晶構造を有していて、高い耐熱性を有し、しかも強度にも優れるポリプロピレン繊維を提供することである。
本発明者は、前記した目的を達成するために鋭意検討を重ねてきた。その結果、特定以上のアイソタクチックペンタッド分率(IPF)を有するポリプロピレンを用いて、走査示差熱量測定(DSC)において特定の吸熱・融解特性を示し、均一な結晶構造を有していて、高い耐熱性を有し、しかも強度にも優れる、従来にないポリプロピレン繊維を得ることができた。
すなわち、本発明は、
(1) アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上のポリプロピレンよりなるポリプロピレン繊維であって、走査示差熱量測定(DSC)による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であり、且つ繊維強度が7cN/dtex以上であることを特徴とするポリプロピレン繊維である。
本発明のポリプロピレン繊維は、アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上のポリプロピレンよりなり、しかも走査示差熱量測定(DSC)における吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、その融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であるという特性を備えていることによって、結晶性が高く、均一な結晶構造を有し、耐熱性に極めて優れている。そのため、本発明のポリプロピレン繊維は、高温に曝されても、また摩擦を受けても、簡単に融解せずに、繊維形状および繊維強度を良好に維持することができる。
さらに、本発明のポリプロピレン繊維は、高い繊維強度を有している。
本発明のポリプロピレン繊維は、前記した優れた特性を活かして、短繊維、長繊維、繊維束などの形態で、または織編物、不織布、網状体、紙などの繊維構造体の形態にして、種々の用途に有効に使用することができる。
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明のポリプロピレン繊維は、アイソタクチックペンタッド分率(IPF)(以下単に「IPF」ということがある)が94%以上のポリプロピレンよりなっていることが必要あり、IPFが95〜99%のポリプロピレンよりなっていることが好ましく、IPFが96〜99%のポリプロピレンよりなっていることがより好ましい。
ポリプロピレンのIPFが94%未満であると、均一な結晶構造を有するポリプロピレン繊維が得られにくくなり、ポリプロピレン繊維に十分な強度および耐熱性が付与できなくなる。一方、IPFが99%を超えるポリプロピレンは工業的には量産が困難であるため、コスト面などから実用性が低い。
本発明のポリプロピレン繊維は、IPFが前記した値を満たすものであれば、1種類のプロピレン単独重合体よりなっていてもよいし、またはプロピレンと他の共重合性単量体からなる1種類のプロピレン共重合体よりなっていてもよい。或いは、本発明のポリプロピレン繊維は、混合物全体でのIPFが前記した値を満たすものであれば、2種類以上のプロピレン単独重合体の混合物、1種または2種以上のプロピレン単独重合体と1種または2種以上のプロピレン共重合体の混合物、または2種類以上のプロピレン共重合体の混合物からなっていてもよい。
また、本発明のポリプロピレン繊維は、ポリプロピレン繊維を構成するプロピレン系重合体全体でのIPFが前記した値を満たすものであれば、2種類以上のプロピレン単独重合体および/またはプロピレン共重合体が、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型などの形態で複合または混合してなる複合紡糸繊維または混合紡糸繊維であってもよい。
したがって、本発明において、本発明のポリプロピレン繊維を形成する「ポリプロピレン」とは、プロピレン単独重合体、プロピレン共重合体、前記した単独重合体および/または共重合体の2種以上の混合物或いは複合物の総称を意味する。
ポリプロピレンにおけるIPFは、その立体規則性を表わす指標であり、ポリプロピレンを繊維化した際の結晶性に影響を及ぼす。一般には、IPFが高いポリプロピレンほど立体規則性が高い。ポリプロピレンにおけるIPFは、13C−NMRのシグナルから求めることができ、本明細書におけるポリプロピレンのIPF値は、以下の実施例に記載する方法で求めた値をいう。
また、ポリプロピレン繊維を得る際の溶融紡糸性、延伸性などが良好になり、本発明で規定する上記特性を備える本発明のポリプロピレン繊維が円滑に得られる点から、本発明のポリプロピレン繊維を形成するポリプロピレンは、JIS K 7210に従って温度230℃、荷重2.16kg、時間10分の条件で測定したときのメルトフローレート(MFR)が5〜70gであることが好ましく、10〜50gであることがより好ましく、15〜40gであることが更に好ましい。
本発明のポリプロピレン繊維は、走査示差熱量測定(DSC)(以下単に「DSC測定」ということがある)による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状であり、且つその融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であるという要件を備えている。
ここで、本発明におけるDSC測定による前記した「吸熱ピーク形状」および「融解エンタルピー変化量(△H)」は、以下の実施例に記載する方法で行ったDSC測定による吸熱ピーク形状および融解エンタルピー変化量(△H)をいう。
アイソタクチックポリプロピレン繊維のDSC測定において、160℃以上で観察される吸熱ピークは一般にα晶の融解に由来する。吸熱ピークの温度が160℃以上、場合によっては175℃以上であるポリプロピレン繊維は、従来から知られているが(特許文献1および2を参照)、そのような従来のポリプロピレン繊維では結晶化が未だ十分に行われていないため、その吸熱ピークの形状はダブルピーク形状であったり、幅の広い(ブロードな)シングルピーク形状であって、その結晶構造は全体として均一性に欠ける。
それに対して、本発明のポリプロピレン繊維は、DSC測定による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有する、幅の狭い(シャープな)シングル形状をなしており、均一な結晶構造をなしている。
しかも、本発明のポリプロピレン繊維は、DSC測定による融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上と高くて、結晶性が高い(結晶の生成が十分に行われている)ため、耐熱性に優れている。
ここで、本明細書でいう「DSC測定による吸熱ピーク形状」と「半価幅」について説明する。
まず、図1は、ポリプロピレン繊維におけるDSC測定による吸熱ピーク形状を模式的に示した図である。
図1において、(a)は本発明のポリプロピレン繊維の吸熱ピーク曲線の代表例に相当し、唯一の吸熱ピーク(シングルピーク)を有し、当該シングルピークはシャープでしかも大きなピークをなし、融解エンタルピー変化量(△H)も、従来のポリプロピレン繊維に比べて大きな値をなす。
一方、図1において、(b)は従来のポリプロピレン繊維の吸熱ピーク曲線の一例であって、2つの吸熱ピーク(ダブルピーク)を有し、ピークの幅(半価幅)は大きく、融解エンタルピー変化量(△H)は小さい。
また、図1において、(c)は従来のポリプロピレン繊維の吸熱ピーク曲線の他の例であり、吸熱ピークは1個(シングルピーク)ではあるが、融解エンタルピー変化量(△H)は小さい。
次に、図2は、ポリプロピレン繊維のDSC測定による吸熱ピークにおける半価幅の求め方を示した図である。
図2には、本発明のポリプロピレン繊維のDSC測定による吸熱特性(融解特性)の代表例を示しており、唯一の吸熱ピーク(シングルピーク)の頂点Xから温度軸に下ろした垂線と、吸熱ピークのベースラインとの交点をYとしたときに、線分X−Yを二等分する点をMとし、Mを通り温度軸に平行な直線と吸熱曲線との交点をそれぞれN1およびN2としたときに、線分N1−N2の長さ(温度幅)が本明細書でいう「半価幅(℃)」に相当する。
ポリプロピレン繊維の吸熱ピーク曲線が、図1の(b)に示すように2つの吸熱ピークを有するダブルピークである場合や、3つ以上の吸熱ピークを有する場合は、最も高い吸熱ピークの頂点をXとし、当該頂点Xから温度軸に下ろした垂線と、吸熱ピークのベースラインとの交点をYとし、線分X−Yを二等分する点をMとし、Mを通り温度軸に平行な直線と吸熱曲線との交点のうち、温度の最も低い交点をN1とし、温度の最も高い交点をN2としたときに、線分N1−N2の長さ(温度幅)が本明細書でいう「半価幅(℃)」に相当する。この場合には、半価幅(℃)は一般に広いものとなる。
そして、吸熱ピーク曲線において、吸熱ピークのベースライン(図2を参照)と、当該ベースラインよりも上の吸熱ピーク曲線によって包囲される部分の面積が、本明細書における「融解エンタルピー変化量(△H)」に相当する。
ポリプロピレン繊維における結晶形成が不十分であると、DSC測定時の結晶の再配列などによって吸熱ピークや発熱ピークが新たに発現して複雑なDSC曲線になる場合がある。さらに、ポリプロピレン繊維における結晶形成が不十分であると、DSC測定時の昇温速度の違いによって、同じ試料であっても、吸熱ピークや発熱ピークの発現や消失が生じて吸熱ピーク曲線が変化することがある。
それに対して、本発明のポリプロピレン繊維は、DSC測定時の昇温速度1〜50℃/分の範囲では、昇温速度が異なっても、その吸熱ピーク曲線は1個の吸熱ピークのみを有する、シャープで大きなシングルピーク形状をなし、高い融解エンタルピー変化量(△H)を有している。そのことは、本発明のポリプロピレン繊維が、均一で高い結晶性を有し、その結果として、高い耐熱性を備えていることを裏付けている。
本発明のポリプロピレン繊維は、DSC測定による融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であることが必要である。
ポリプロピレン繊維の融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g未満であると、耐熱性が不十分となり、各種用途に用いたときに、問題が生じ易くなる。
例えば、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g未満のポリプロピレン繊維は、ロープにしたときに摩擦によって溶融して切断し易くなり、スポーツウエアとして用いた場合には摩擦時に繊維表面が溶融するトラブルが生じ易くなる。さらに、紙用原料として用いた場合には、乾燥用のヤンキードライヤーへの繊維に付着などトラブルが生じ易くなり、またニードルパンチ不織布にしてエアフィルターとして用いた場合に高温空気による溶融トラブルが生じ易くなる。
ポリプロピレン繊維の融解エンタルピー変化量(△H)が高いほど、耐熱性が高くなるが、165J/gを超えるポリプロピレン繊維は、製造速度を大幅に低下しないと製造が困難であり、またIPFが100%に近いポリプロピレンを用いて製造することが必要であるため、工業的には実効性が低い。
かかる点から、本発明のポリプロピレン繊維では、融解エンタルピー変化量(△H)は、125〜165J/gであることが好ましく、128〜165J/gであることがより好ましく、130〜165J/gであることが更に好ましく、133〜165J/gであることが一層好ましい。
本発明のポリプロピレン繊維の繊維強度は7cN/dtex以上であり、7〜13cN/dtexであることが好ましく、8〜13cN/dtexであることがより好ましく、9〜13cN/dtexであることが更に好ましく、10〜13cN/dtexであることが一層好ましい。
ここで、本明細書におけるポリプロピレン繊維の繊維強度(単繊維繊度強度)は、以下の実施例に記載した方法で測定した繊維強度をいう。
本発明のポリプロピレン繊維は、前記した繊維強度を有することにより、各種用途に有効に使用することができる。ポリプロピレン繊維の繊維強度が7cN/dtex未満であると、ポリプロピレン繊維を用いて強度に優れる各種製品を製造することが困難になったり、所定の強度を得るためにポリプロピレン繊維を多量に使用することが必要になり、ポリプロピレン繊維が本来有する軽量であるという特性を活かせなくなる。例えば、繊維強度が7cN/dtex未満のポリプロピレン繊維からロープを製造すると、強力の大きなロープが得られにくくなり、十分な強力のロープを得るためにポリプロピレン繊維を多く用いて太繊度のロープとせざるを得ず、軽量性が損なわれる。
一方、繊維強度が13cN/dtexを超えるポリプロピレン繊維は、その製造に当たって、量産性の低い条件を採用する必要があるため、実用面で難がある。
本発明のポリプロピレン繊維の繊度(単繊維繊度)は特に制限されず、ポリプロピレン繊維の用途などに応じて決めることができる。ポリプロピレン繊維を製造する際の製造の容易性(特に延伸のし易さ)、各種用途への適用性、耐久性などの点から、ポリプロピレン繊維の繊度(単繊維繊度)は、一般的に0.01〜500dtexであることが好ましく、0.05〜50dtexであることがより好ましく、0.1〜5dtexであることが更に好ましく、0.2〜3dtexであることが一層好ましい。
ポリプロピレン繊維の繊度(単繊維繊度)が小さ過ぎると、構造体などに用いた際に、摩耗によって溶融、断糸して構造体の劣化を招くことがあり、一方大きすぎると、ポリプロピレン繊維を得るための延伸処性が低下して、高強度で、高度に結晶化したポリプロピレン繊維が得られないことがある。
本発明のポリプロピレン繊維の形状(横断面形状)は特に制限されず、中実の円形断面形状であってもよいし、それ以外の異形断面形状であってもいずれでもよい。繊維の横断面が異形断面形状である場合の具体例としては、偏平形、十字形、Y字形、T字形、V字形、星形、多葉形、アレイ形、中空形などを挙げることができる。ポリプロピレン繊維を補強材として用いる場合は、表面積の大きい異形断面形状、特に多葉形などにしておくと、マトリックスとの接着強度が高くなり、強度の高い繊維補強成形体などを得ることができる。
本発明のポリプロピレン繊維は、本発明の目的を妨げない範囲で、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤、離型剤、充填剤、帯電防止剤などの1種または2種以上を含有することができる。ポリプロピレン繊維は比重が一般に水よりも小さく、そのままでは水に浮くため、本発明のポリプロピレン繊維を水中に分散させたい場合には、浮遊防止のために、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、メタクリル酸カリウムなどを繊維中に含有させることで、比重を適宜調整することができる。
本発明のポリプロピレン繊維は、IPFが94%以上のポリプロピレンを用いて、本発明で規定する上記したDSC特性および繊維強度を有するポリプロピレン繊維を製造することのできる方法であればいずれの方法で製造してもよいが、そのうちでも本発明のポリプロピレン繊維は、IPFが94%以上のポリプロピレンを用いて、以下で説明する、溶融紡糸によってポリプロピレン未延伸糸(ポリプロピレン繊維)を製造して冷却固化した後にその未延伸糸を改めて延伸する非直結延伸方式を採用することにより、円滑に得ることができる。
非直結延伸方式を採用するに当たっては、IPFが94%以上のポリプロピレンを200〜3500m/分、特に300〜2000m/分の紡糸速度で溶融紡糸した後に冷却固化して未延伸糸(未延伸繊維)を製造し、その未延伸糸(未延伸繊維)を延伸することが好ましい。紡糸速度が小さい場合(一般に紡糸速度が200〜1000m/分程度の場合)には、溶融紡糸後に冷却固化して得られる未延伸糸を高倍率で延伸する(一般に延伸倍率5〜20倍)ことで本発明のポリプロピレン繊維を得ることができる。一方、紡糸速度が大きい場合(一般に紡糸速度が1000〜3500m/分程度の場合)には、溶融紡糸後に冷却固化して得られる未延伸糸を延伸する際の延伸倍率は低くなるが(一般に延伸倍率3.9〜7倍)、溶融紡糸した繊維を冷却固化する段階での配向が高くなるため、結果として本発明のポリプロピレン繊維を得ることができる。
IPFが94%以上のポリプロピレンを溶融紡糸し、冷却固化して得られる未延伸糸を非直結延伸方式によって延伸するに当たっては、当該未延伸糸を、温度(雰囲気温度)120〜150℃、好ましくは125〜140℃の熱風炉に導入して、または温度120〜150℃、好ましくは125〜140℃の熱プレートに接触させて、1段または多段で延伸倍率3〜10倍、好ましくは3〜5倍で前延伸した後、それを温度(雰囲気温度)170〜190℃、好ましくは170〜185℃、より好ましくは170〜180℃の熱風炉に導入して、または温度170〜190℃、好ましくは170〜185℃、より好ましくは170〜180℃の熱プレートに接触させて、1段または多段で延伸倍率1.2〜3.0倍、好ましくは1.3〜2.5倍で後延伸することが、本発明のポリプロピレン繊維が円滑に得られる点から望ましい。
なお、前延伸における前記した延伸倍率は、前延伸工程から排出された直後の糸の糸長を前延伸工程に導入された糸(未延伸糸)の糸長で除した値をいい、また後延伸における前記した延伸倍率は、後延伸工程から排出された直後の糸の糸長を後延伸工程に導入された糸の糸長で除した値をいう。
本発明のポリプロピレン繊維を得るためには、前記した前延伸および後延伸を行った後の総延伸倍率(前延伸を行う前の未延伸糸に対する後延伸を終了した延伸糸の延伸倍率)は、3.9〜20倍であることが好ましく、4.5〜11倍であることがより好ましく、4.7〜10.5倍であることが更に好ましい。
また、ポリプロピレンの溶融紡糸速度をA(m/分)とし、前記した前延伸および後延伸を行った後の総延伸倍率をB(倍)としたときに、A×Bの値が、3000〜17000(m・倍/分)、特に3500〜15000(m・倍/分)の範囲になるようにして、ポリプロピレンの溶融紡糸と前記した前延伸および後延伸を行うと、本発明のポリプロピレン繊維を円滑に得ることができる。
前記した後延伸を行うに当たっては、後延伸を行う熱風炉の雰囲気温度または延伸プレート温度が、後延伸処理を施す直前の延伸糸(前延伸後の糸)のDSC曲線での吸熱開始温度+10℃以上、更には前記吸熱開始温度+12℃以上、特に前記吸熱開始温度+14℃以上の温度であるようにして、変形速度1.5〜15倍/分、更には1.6〜12倍/分、特に1.7〜10倍/分で延伸することが好ましい。本発明では、後延伸処理をかかる範囲内の変形速度で行うことが、本発明のポリプロピレン繊維を円滑に得る上で、極めて望ましい。
ここで、前記した変形速度とは、後延伸での延伸倍率(倍)を後延伸に要した時間(分)(熱風炉で後延伸する場合は糸が熱風路内にあった時間、延伸プレートで後延伸する場合は糸が延伸プレートに接触していた時間)で除した値をいい、後延伸を多段で行った場合は、後延伸での最終延伸倍率(合計延伸倍率)を後延伸に要した延伸処理時間の合計で除した値をいう。
また、後延伸を行う際の延伸張力は、1.0〜2.5cN/dtexであることが好ましく、1.1〜2.5cN/dtexがより好ましく、1.3〜2.5cN/dtexが更に好ましい。ここで、後延伸における前記延伸張力は、後延伸における最終段の延伸を行った直後の糸の張力を張力計を用いて測定する。
IPFが94%以上のポリプロピレンを溶融紡糸して得られる未延伸糸を冷却固化した後に、その未延伸糸を上記した条件下で前延伸し、前延伸した糸を上記した条件下で更に後延伸することによって、DSC測定による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状であって、且つ融解エンタルピー変化量(△H)および繊維強度が本発明で規定する上記の要件を満たす、耐熱性および強度に優れる本発明のポリプロピレン繊維を円滑に得ることができる。
本発明のポリプロピレン繊維は、表面処理を行うことなくそのまま使用してもよいし、または様々な物質との親和性の向上、帯電防止、処理剤の安定化などの目的で、任意の表面処理剤で表面処理してもよい。限定されるものではないが、本発明のポリプロピレン繊維に用い得る表面処理剤の具体例としては、ポリオキシエチレンソフタノール、脂肪酸カリウム石鹸、アルキルホスフェートカリウム塩、ジアルキルチオジプロピオネート、ジ−2−エチルヘキシルスルフォサクシネートナトリウム塩、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンデシルエーテルホスフェートカリウム塩、ポリオキシエチレンひまし油エーテル、アルカンスルフォネートナトリウム塩、イソオクチルパルミテート、イソオクチルステアレート、イソセチルホスフェートカリウム塩、ヤシ脂肪酸アマイド、オレイルアルコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ジオクチルフルフォサクシネートナトリウム塩、ポリオキシエチレンデシルエーテルホスフェートアミン塩、ポリエチレングリコールヤシ脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
本発明のポリプロピレン繊維は、モノフィラメント、マルチフィラメント、スライバー、短繊維、撚糸(紡績糸)、仮撚糸、交絡糸、その他の加工糸の形態にして使用することができる。
また、本発明のポリプロピレン繊維は、織編物、不織布、網状物、紙などの繊維構造体として使用することができる。また、本発明のポリプロピレン繊維または当該繊維を用いた繊維構造体を、繊維補強プラスチック成形体、繊維補強ゴム成形体、繊維補強水硬性物質成形体(コンクリート、モルタル、スレート、瓦など)などにおける繊維補強材として用いることができる。また、本発明のポリプロピレン繊維は、耐熱性に優れるため、コード、ロープに使用することができ、当該コード、ロープを用いて、耐摩耗性および軽量性に優れるスリングロープ、漁網、養生ネット、ゴルフボールネットなどを製造することができる。
本発明のポリプロピレン繊維を織編物の製造に用いる場合は、ジェット織機、スルザー織機、ラピヤー織機、丸編み機、縦編み機、横編み機、トリコット機などを使用して種々の織編物を製造することができる。前記織編物は、本発明のポリプロピレン繊維のみから製造してもよいし、必要に応じて、綿、絹、羊毛、麻などの天然繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリビニルアルコール繊維などの合成繊維、ビスコース、レーヨンなどの半合成繊維などの他の繊維の1種または2種以上と併用して製造してもよい。例えば、本発明の耐熱性に優れるポリプロピレン繊維と綿を組み合わせて編地(ニット)を製造すると、体育館の床などと摩擦しても溶融することがなく、軽量で、しかも吸汗性に優れるスポーツ衣料用として好適な編地(ニット)を得ることができる。
本発明のポリプロピレン繊維を用いて不織布を製造する場合は、例えば、本発明のポリプロピレン繊維に捲縮を付与し、カーディング後にニードルパンチを施してフェルト状の不織布とすることもできるし、カーディング時にポリオレフィン系のバインダー繊維を混綿して、熱処理することにより、嵩高な乾式不織布とすることもできる。また、本発明のポリプロピレン繊維を短繊維状にカットし、ポリオレフィン系のバインダー繊維を混合して水分散スラリーを調製した後に、抄造し、乾燥処理することにより湿式不織布(紙)を得ることができる。本発明のポリプロピレン繊維を用いて不織布を製造するに当たっては、ポリプロピレン繊維が高い耐熱性を有していて、接着処理工程、乾燥処理工程などの処理工程を高温で行うことができるため、不織布を高い生産速度で製造することができる。
本発明のポリプロピレン繊維を用いて得られる不織布や紙は、耐熱性および耐薬品性に優れるため、工業用フィルターなどとして有効に使用することができる。
本発明のポリプロピレン繊維を用いて、多軸メッシュまたは多軸プリプレグを作製することもできる。例えば、本発明のポリプロピレン繊維を用いて2軸メッシュを作製し、ポリオレフィン系シートと積層し熱圧着することにより、引張強度および引裂き強度が飛躍的に向上したポリプロピレン繊維補強ポリオレフィンシートを高い生産性で円滑に製造することができる。すなわち、本発明のポリプロピレン繊維を用いて作製した2軸メッシュは、従来のポリプロピレン繊維製2軸メッシュに比べて耐熱性に優れているため、従来よりも高い温度でポリオレフィンシートを溶融することができ、それに伴って生産速度を十分に高くすることができ、しかもポリプロピレン繊維製2軸メッシュとポリオレフィンシートとの間の接着が十分に行われることによって、強度の高いポリプロピレン繊維補強ポリオレフィンシートを生産性良く製造することができる。
本発明のポリプロピレン繊維を、ポリオレフィンなどの重合体シートの補強用に用いる場合には、ポリプロピレン繊維を織編物にして用いるよりも、一方向プリプレグ状にして用いると、ポリプロピレン繊維の強度利用率を高くすることができる。
また、本発明のポリプロピレン繊維を短繊維にして、オレフィン系重合体に配合して溶融混練、成形を行って、強度に優れる繊維補強成形体を得ることができる。本発明のポリプロピレン繊維は耐熱性に優れていて、かなりの高温に曝されても溶融せずに繊維形状を維持できるので、従来よりも高温でオレフィン系重合体への配合、オレフィン系重合体の溶融混練を行うことができ、それによってポリプロピレン繊維で補強されたオレフィン系重合体成形体を高い生産速度で得ることができる。
そして、それにより得られるポリプロピレン繊維補強オレフィン系重合体成形体は、軽量性、リサイクル性に優れているため、自動車部品、電気・電子部品、衛生用品、その他の用途に広く用いることができる。
本発明のポリプロピレン繊維またはそれからなる繊維構造体を用いて樹脂の補強を行うに当たっては、熱硬化性樹脂の硬化時の反応熱や、熱可塑性樹脂の成形加工時の温度で本発明のポリプロピレン繊維の特質が損なわれない限りは、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のいずれに対しても用いることができる。本発明のポリプロピレン繊維またはそれからなる繊維構造体を用いて補強を行うことのできる樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル系樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂、ポリ乳酸、変性ポリエステル、変性ポリアミドなどを挙げることができる。
また、本発明のポリプロピレン繊維をコンクリートやモルタルなどの補強に用いる場合は、ポリプロピレン繊維の使用割合は、ポリプロピレン繊維以外のコンクリートまたはモルタル用原料の合計体積に対して、0.01〜10体積%、特に0.03〜5体積%程度の量とすることが好ましい。
コンクリートやモルタル用原料へのポリプロピレン繊維の混合は、例えば、パンミキサー、アイリッヒミキサー、傾動式ミキサー、強制二軸ミキサー、オムニミキサー、ホバートミキサー、ハンドミキサーなどの各種ミキサーを用いて行うことができる。その際の原料としては、水硬性材料、骨材、フィラー、ポリプロピレン繊維、それ以外の補強用繊維、その他の混和剤などを挙げることができる。前記水硬性材料としては、普通ポルトランドセメント、早強セメント、中庸セメント、高炉セメント、シリカフューム、フライアッシュなどの1種または2種以上を使用することができる。前記骨材としては、砂利、砕砂、川砂、海砂、山砂、粉末珪砂、各種軽量骨材などを、またフィラーとしては炭酸カルシウム、カオリンなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を使用することができる。また、前記したその他の混和剤としては、減水剤、増粘剤、起泡剤、膨張剤、収縮低減剤などを挙げることができる。
コンクリートまたはモルタル用の原材料の混合方法、添加順序、撹拌時間などは特に制限されず、適宜調整することができる。また、コンクリートまたはモルタルを形成させる際の成形方法としては、流し込み成形、振動成形、遠心成形、サクション成形、押出成形、プレス成形などの従来から用いられている成形方法を採用することができる。また、養生方法も特に制限されず、例えば、気中養生、水中養生、湿布養生、オートクレーブ養生、それらの2つ以上の組み合わせる方法などを採用することができる。
また、本発明のポリプロピレン繊維を用いてスレートを製造する場合は、円網、長網、フローオンなどの方式によってスレートを製造することができる。スレート用の材料としては、水硬性材料、補強用繊維(本発明のポリプロピレン繊維および必要に応じて他の補強用繊維)、パルプ、凝集剤、その他の添加剤(無機物質など)を挙げることができる。本発明のポリプロピレン繊維をスレートの補強に用いる場合は、ポリプロピレン繊維の使用割合は、ポリプロピレン繊維以外のスレート用原料の合計質量に対して、0.1〜7質量%、特に1〜5質量%程度の量とすることが好ましい。
スレートの製造に用いる前記水硬性材料としては、普通ポルトランドセメントが好適に使用されるが、それに限定されるものではない。また、前記パルプとしては広範なものが使用でき、具体例としては、針葉樹、広葉樹、マニラ麻、ミツマタ、コウゾ、ガンピ、サラゴ、桑、ワラ、竹、アシ、サバイ、ララン草、エスパルト、バガス、サイザル、ケナフ、リンター、バナナ、故紙などを挙げることができ、前記したパルプのうちの晒したものまたは未晒しのものの1種または2種以上を含有すればよく、叩解度と添加量を適宜制御して使用する。前記針葉樹としては、スギ科、マツ科、ヒノキ科、ナンヨウスギ科などの針葉樹を挙げることができ、また前記広葉樹としては、ニレ科、ブナ科、フトモモ科、カツラ科、モクセイ科、ミカン科、カバノキ科、カエデ科、クルミ科、シナノキ科、ウコギ科、アカテツ科、ニシキギ科、キョウチクトウ科、クマツヅラ科、モクテン科、アオギリ科などを挙げることができる。また、前記その他の添加剤としては、高炉スラグ、フライアッシュ、炭酸カルシウム、シリカフューム、セピオライト、ベントナイト、アタパルジャイト、マイカ、ワラスナイトなどの無機物質などを挙げることができる。これらの添加剤は、硬化体の物性を向上させる効果、例えば耐凍結融解性の向上、腐食性物質(塩素、硫酸などの各種酸)の侵入抑制、補強繊維とマトリックスとの付着性の改善、懸濁液の粘性を適度に調節して抄造効率を向上させる効果や、抄造体の乾燥収縮制御を行う効果、硬化体の強度向上効果などを発現する効果を有し、スレートを製造する際の工程通過性、成形性、スレートの機械的物性の阻害を招かない範囲で用いるようにする。
スレートを製造する際の原料スラリーを調製する際の添加順序、撹拌時間などは適宜調整することができる。また、スレートを製造する際の養生方法も特に制限されず、コンクリートやモルタル成形体の場合と同様に、例えば、気中養生、水中養生、湿布養生、オートクレーブ養生、それらの2つ以上の組み合わせる方法などを採用することができる。
いずれの用途においても、本発明のポリプロピレン繊維は、従来のポリプロピレン繊維に比べて、耐熱性により優れているので、その使用温度範囲を高くすることができ、例えば、コンクリート、モルタル、スレートなどの製造に用いる際には、オートクレーブ養生などの高温で養生を行ってもポリプロピレン繊維の溶融が生じず、良好な繊維形態および繊維物性を維持することができるので、養生時間の短縮を図ることができ、ひいてはコンクリート、モルタル、スレートなどの成形体の生産性を向上させることができる。
以下に実施例などにより本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。以下の実施例などにおいて、ポリプロピレンのアイソタクチックペンタッド分率(IPF)、延伸時の延伸張力、ポリプロピレン繊維のDSC、繊維強度および摩擦防融性の測定は次のようにして行った。
(1)ポリプロピレンのアイソタクチックペンタッド分率(IPF):
超伝導核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製「Lambda500」)を使用して、非特許文献1に記載されている「13C−NMRスペクトル法」に従ってポリプロピレンのIPFを求めた。具体的には、ポリプロピレン中における、13C−NMRスペクトルにおいてプロピレン単量体単位が5個連続してアイソタクチック結合したプロピレン単位(アイソタクチックペンタッド単位)の含有割合(分率)(%)を求めてIPFとした。その際に、13C−NMRスペクトルにおけるピークの帰属に関しては、非特許文献2に記載されている方法に従って決定した。
(2)延伸時の延伸張力:
荷重張力計測器(日本電産シンポ社製「DTMX−5B」)を使用して、延伸炉(熱風炉)から出た直後の糸、または延伸プレートから離れた直後の糸の張力を測定して延伸張力(cN/dtex)とした。
(3)ポリプロピレン繊維のDSC測定:
ポリプロピレン繊維を温度20℃および相対湿度65%の雰囲気下に5日間放置して調湿した後、長さ1mmに切断し、その5mgを量り採ってアルミパン(容量100μL)(METTLER TOLEDO社製「No.51119872」)に入れ、アルミパンカバー(METTLER TOLEDO社製「No.51119871」)を用いてシールし、走査示差熱量測定器(TA Instuments社製「DSC2010」)を使用して、窒素雰囲気中で、昇温速度10℃/分で測定した1st runのDSC曲線から、吸熱ピークの半価幅(℃)および融解エンタルピー変化量(△H)(J/g)を、図1および図2(特に図2)を参照して前述した方法で求めた。
(4)ポリプロピレン繊維の繊維強度:
ポリプロピレン繊維を温度20℃および相対湿度65%の雰囲気下に5日間放置して調湿した後、ポリプロピレン繊維(単繊維)を長さ60mmに切断して試料とし、当該試料(長さ60mmのポリプロピレン単繊維)の両端を把持して(両端から10mmまで把持)、繊維強度測定装置(Textechno製「FAFEGRAPH M」)を使用して、温度20℃、相対湿度65%の環境下で、引張速度60mm/分で伸張して、切断時の応力を測定し、その値をポリプロピレン単繊維の繊度で除して繊維強度(cN/dtex)を求めた。なお同じポリプロピレン繊維について同じ操作を10回行って繊維強度を求め、その平均値を採ってポリプロピレン繊維(ポリプロピレン単繊維)の繊維強度とした。
(5)摩擦防融性:
(i) 以下の実施例または比較例で得られたポリプロピレン繊維を束ねて1000dtexのマルチフィラメント糸にし、そのマルチフィラメント糸を用いて、基布密度が経30本/25.4mmおよび緯30本/25.4mmの平織生地を作製した。
(ii) 上記(i)で得られた平織生地から試験片(幅×長さ=3.5cm×8.5cm)を切り出し、試験片を1800rpmで回転しているローラー(材質:桜木)に1134g(2.5ポンド)の荷重で押し当て、試験開始から試験片の溶融が始まるまでの時間の長さを測定した。測定に当たっては、摩擦音が大きくなった瞬間を試験片の溶融開始時点とした。同じ試料(平織生地)について同じ試験を3回行って、平均値を採って、摩擦防融性の指標とした。試験片が摩擦により溶融を開始するまでの時間が長いほど、耐熱性に優れていることを示す。
《実施例1》
(1) ポリプロピレン[プライムポリマー社製「Y2000GV」、IPF=97%、MFR=18g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を溶融紡糸装置の押出機に投入して240℃で溶融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温度245℃の紡糸口金[孔数24個(円形孔)、孔径0.2mm]から22.3g/分の量で吐出し、800m/分の引き取り速度でポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って、室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=288dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、2段で4.6倍に前延伸してポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取り、室温で保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=63dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=153.5℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風炉に導入して、変形速度1.7倍/分および延伸張力1.18cN/dtexの条件下に、3段で1.3倍に後延伸して、総延伸倍率が6.0倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=48dtex/24フィラメント)を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度および摩擦防融性の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《実施例2》
(1) 実施例1の(1)において、未延伸糸の引き取り速度を3000m/分に変えた以外は実施例1の(1)と同じ操作を行って、ポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=214dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、2段で3.1倍に前延伸して、ポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温で保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=69dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=155.3℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風炉に導入して、変形速度1.8倍/分および延伸張力1.34cN/dtexの条件下に、3段で1.5倍に後延伸して、総延伸倍率が4.7倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=46dtex/24フィラメント)を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度および摩擦防融性の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《実施例3》
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレンを溶融紡糸装置の押出機に投入して240℃で溶融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温度245℃の紡糸口金[孔数48個(十字形孔)、孔径0.2mm]から20.2g/分の量で吐出し、800m/分の引き取り速度でポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=436dtex/48フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度138℃の熱風炉に導入して、2段で3.9倍に前延伸して、ポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温で保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=112dtex/48フィラメント、吸熱開始温度=155.2℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風炉に導入して、変形速度2.1倍/分および延伸張力1.12cN/dtexの条件下に、1段で1.3倍に後延伸して、総延伸倍率が5.1倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=86dtex/48フィラメント)を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度および摩擦防融性の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《実施例4》
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレンを用いて実施例1の(1)と同じ条件を採用してポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取った。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、実施例1の(2)と同じ条件を採用して前延伸を行って、ポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取った。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度180℃の熱風炉に導入して、変形速度1.7倍/分および延伸張力1.06cN/dtexの条件下に、3段で1.3倍に後延伸して、総延伸倍率が6.0倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=50dtex/24フィラメント)を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度および摩擦防融性の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《実施例5》
(1) ポリプロピレン[プライムポリマー社製「ZS1337A」、IPF=96%、MFR=20g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を用いて、実施例1の(1)と同じ溶融紡糸条件を採用して、ポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取った(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=288dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度135℃の熱風炉に導入して、2段で4.8倍に前延伸して、ポリプロピレン前延伸糸を製造しボビンに巻き取って室温に保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=60dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=152.0℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風炉に導入して、変形速度1.6倍/分および延伸張力1.33cN/dtexの条件下に、3段で1.8倍に後延伸して、総延伸倍率が8.6倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=50dtex/24フィラメント)を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度および摩擦防融性の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《実施例6》
(1) ポリプロピレン[IPF=98%、MFR=16g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を用いて、実施例1の(1)と同じ溶融紡糸条件を採用して、ポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取った(未延伸糸の総繊度=293dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、2段で4.6倍に前延伸してポリプロピレン前延伸糸を製造しボビンに巻き取って室温に保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=64dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=156.4℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度178℃の熱風炉に導入して、変形速度2.8倍/分および延伸張力1.54cN/dtexの条件下に、4段で2.2倍に後延伸して、総延伸倍率が10.1倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=29dtex/24フィラメント)を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度および摩擦防融性の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《実施例7》
(1) ポリプロピレン[IPF=98%、MFR=16g/10分(230℃、荷重2.16kg)]およびポリプロピレン[プライムポリマー社製「Y3002G」、IPF=93%、MFR=30g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を1:1の質量比で混合した混合物(混合物のIPF=95.5%)を用いて、実施例1の(1)と同じ溶融紡糸条件を採用して、ポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取った(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=288dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、2段で4.6倍に前延伸して、ポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温に保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=63dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=152.5℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風炉に導入して、変形速度1.7倍/分および延伸張力1.20cN/dtexの条件下に、3段で1.3倍に後延伸して、総延伸倍率が6.0倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=48dtex/24フィラメント)を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度および摩擦防融性の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《実施例8》
(1) 溶融紡糸装置の紡糸ヘッドに芯鞘型複合繊維製造用の紡糸口金[孔数24個(円形孔)、孔径0.2mm]を取り付け、ポリプロピレン(プライムポリマー社製「Y3002G」、IPF=93%)を芯成分およびポリプロピレン[IPF=98%、MFR=16g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を鞘成分として用いて、芯成分:鞘成分=1:2の質量比で、240℃で溶融混練し、紡糸口金(口金温度245℃)から22.3g/分の量で吐出し、800m/分の引き取り速度でボビンに巻き取って芯鞘型のポリプロピレン未延伸糸を製造して、室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=287dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、2段で4.6倍に前延伸してポリプロピレン前延伸糸を製造しボビンに巻き取って室温に保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=62dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=152.2℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風炉に導入して、変形速度1.7倍/分および延伸張力1.25cN/dtexの条件下に、3段で1.3倍に後延伸して、総延伸倍率が6.0倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=48dtex/24フィラメント)を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度および摩擦防融性の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《実施例9》
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレンを用いて実施例1の(1)と同じ条件を採用してポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取った。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、1段で4.6倍に前延伸して、ポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温に保存した(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=63dtex/24フィラメント)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度172℃の熱プレートに接触させて、変形速度13.8倍/分および延伸張力1.43cN/dtexの条件下に、1段で1.6倍に後延伸して(熱プレートへの接触時間=15秒)、総延伸倍率が7.4倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=39dtex/24フィラメント)を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度および摩擦防融性の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《比較例1》
(1) ポリプロピレン(プライムポリマー社製「Y3002G」、IPF=93%)を用いて、実施例1の(1)と同じ溶融紡糸条件を採用して、ポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取って、室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=288dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度128℃の熱風炉に導入して、2段で4.6倍に前延伸して、ポリプロピレン前延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温に保存し(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=68dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=151.8℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度172℃の熱風炉に導入して、変形速度1.7倍/分および延伸張力0.96cN/dtexの条件下に、3段で1.3倍に後延伸して、総延伸倍率が6.0倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=48dtex/24フィラメント)を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度および摩擦防融性の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《比較例2》
実施例1の(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸(ポリプロピレン繊維)について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度および摩擦防融性の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《比較例3》
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレン(プライムポリマー社製「Y2000GV」、IPF=97%)を用いて、実施例1の(1)と同じ溶融紡糸条件を採用して、ポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取った。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度143℃の熱風炉に導入して、1段で6.9倍に延伸して、ポリプロピレン延伸糸(総繊度=42dtex/24フィラメント)を製造した。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度および摩擦防融性の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《比較例4》
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレン(プライムポリマー社製「Y2000GV」、IPF=97%)を用いて、実施例1の(1)と同じ溶融紡糸条件を採用して、ポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取った。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度90℃の熱水槽に導入して、1段で3.7倍に前延伸した後、巻き取らずに引き続いて温度138℃の熱風炉に導入して1.2倍に後延伸して、総延伸倍率が4.4倍の延伸糸(総繊度=65dtex/24フィラメント)を製造した。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度および摩擦防融性の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《比較例5》
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレン(プライムポリマー社製「Y2000GV」、IPF=97%)を用いて、実施例1の(1)と同じ溶融紡糸条件を採用して、ポリプロピレン未延伸糸を製造してボビンに巻き取った。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度90℃の熱水槽に導入して、1段で3.7倍に前延伸した後、巻き取らずに引き続いて温度172℃の熱風炉に導入して1.2倍に後延伸して、総延伸倍率が4.4倍の延伸糸(総繊度=65dtex/24フィラメント)を製造した。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)は、毛羽が多く、使用できるものではなかったため、DSC測定、繊維強度および摩擦防融性の測定を行わなかった。
《比較例6》
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレン(プライムポリマー社製「Y2000GV」、IPF=97%)を溶融紡糸装置の押出機に投入して270℃で溶融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温度295℃の紡糸口金[孔数24個(円形孔)、孔径0.2mm]から9.5g/分の量で吐出し、1500m/分で引き取ってポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取り、室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=65dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度130℃の熱風炉に導入して、1段で1.5倍に延伸して、ポリプロピレン延伸糸(総繊度=44dtex/24フィラメント)を製造した。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度および摩擦防融性の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《比較例7》
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレン(プライムポリマー社製「Y2000GV」、IPF=97%)を溶融紡糸装置の押出機に投入して230℃で溶融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温度300℃の紡糸口金[孔数30個(円形孔)、孔径0.8mm]から20g/分の量で吐出し、300m/分で引き取ってポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の総繊度=535dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度110℃の熱ローラーで、1段で3.7倍に延伸して、ポリプロピレン延伸糸(総繊度=145dtex/24フィラメント)を製造した。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸の両端を固定した後、165℃のエアーオーブン中に30分間入れて熱処理を施した。
(4) 上記(3)で得られた熱処理後のポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度および摩擦防融性の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《比較例8》
(1) ポリプロピレン[プライムポリマー社製「ZS1337A」、IPF=96%、MFR=20g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を溶融紡糸装置の押出機に投入して300℃で溶融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温度320℃の紡糸口金[孔数24個(円形孔)、孔径0.2mm]から22.3g/分の量で吐出し、600m/分の引き取り速度でポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って、室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の「総繊度=304dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度90℃の加熱ロールにより1段で1.5倍に前延伸した後、ボビンに巻き取って室温に保存し(ポリプロピレン前延伸糸の総繊度=203dtex/24フィラメント、吸熱開始温度=150.8℃)。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン前延伸糸をボビンから巻き出して、温度138℃の熱風炉に導入して、1段で4.9倍に後延伸して、総延伸倍率が7.4倍のポリプロピレン延伸糸(総繊度=40.8dtex/24フィラメント)を製造した。
(4) 上記(3)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度および摩擦防融性の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
《比較例9》
(1) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリプロピレン[プライムポリマー社製「Y2000Gv」、IPF=97%、MFR=18g/10分(230℃、荷重2.16kg)]を溶融紡糸装置の押出機に投入して255℃で溶融混練し、紡糸ヘッドに取り付けた温度260℃の紡糸口金[孔数24個(円形孔)、孔径0.2mm]から35.4g/分の量で吐出し、600m/分の引き取り速度でポリプロピレン未延伸糸を製造し、ボビンに巻き取って、室温で保存した(ポリプロピレン未延伸糸の「総繊度=635dtex/24フィラメント)。
(2) 上記(1)で得られたポリプロピレン未延伸糸をボビンから巻き出して、温度145℃のスチーム槽により1段で11.5倍に延伸して、ポリプロピレン延伸糸(総繊度=55.2dtex/24フィラメント)を製造した。
(3) 上記(2)で得られたポリプロピレン延伸糸(ポリプロピレン繊維)について、DSC測定[吸熱ピーク形状、半価幅、融解エンタルピー変化量(△H)の測定]、並びに繊維強度および摩擦防融性の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
Figure 0004834688
上記の表1にみるように、実施例1〜9のポリプロピレン繊維は、IPFが94%以上のポリプロピレンよりなり、DSC測定による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であって、且つ繊維強度が7cN/dtex以上であることにより、繊維強度が高く、しかも摩擦防融性試験での摩擦溶融開始時間が6.8〜8.0秒と長く、耐熱性に優れている。
これに対して、比較例1〜4および8〜9のポリプロピレン繊維は、DSC測定による吸熱ピーク形状が10℃を超える半価幅を有するブロードな形状であって、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/gよりも低いことにより(118J/g以下)、摩擦防融性試験での摩擦溶融開始時間が4.1秒以下で、実施例1〜9に比べて大幅に短く、耐熱性に劣っている。
また、比較例6および7のポリプロピレン繊維は、繊維強度が7cN/dtexよりも低く、しかもDSC測定による融解エンタルピー変化量(△H)が125J/gよりも低いことにより(75J/gまたは82J/g)、摩擦防融性試験での摩擦溶融開始時間が実施例1〜9に比べて大幅に短く、耐熱性に劣っている。
本発明のポリプロピレン繊維は、結晶性が高く、均一な結晶構造を有し、耐熱性に極めて優れており、しかも繊維強度にも優れているため、それらの特性を活かして、短繊維、長繊維、繊維束などの形態で、または織編物、不織布、網状体、紙などの繊維構造体の形態にして、種々の用途に有効に使用することができる。
ポリプロピレン繊維におけるDSC測定による吸熱ピーク形状を模式的に示した図である。 ポリプロピレン繊維のDSC測定による吸熱ピークにおける半価幅の求め方を示した図である。

Claims (1)

  1. アイソタクチックペンタッド分率(IPF)が94%以上のポリプロピレンよりなるポリプロピレン繊維であって、走査示差熱量測定(DSC)による吸熱ピーク形状が10℃以下の半価幅を有するシングル形状で、融解エンタルピー変化量(△H)が125J/g以上であり、且つ繊維強度が7cN/dtex以上であることを特徴とするポリプロピレン繊維。
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