JP2001146638A - モノフィラメントおよびその製造方法 - Google Patents
モノフィラメントおよびその製造方法Info
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Abstract
なるポリケトンポリマーにより構成されるポリケトンモ
ノフィラメントにおいて、単糸繊度が10dtex以上
であり、かつ、該モノフィラメントの結晶化度が50%
以上、結晶配向度が90%以上であることを特徴とする
ポリケトンモノフィラメント。 【効果】 太繊度でありながら、高強度・高弾性率であ
り、かつ耐熱性、耐湿潤特性に優れるポリケトン繊維を
提供することが出来た。
Description
よび優れた耐湿潤特性、耐熱性を有し、産業用資材用
途、特に漁網やロープ、釣り糸、ネット、タイヤやセメ
ント等の補強材料などに適したポリケトンモノフィラメ
ントおよび該モノフィラメントの製造方法に関する。
の力学物性を兼ね備えたモノフィラメントは産業用資材
用途、特に漁網、釣り糸、ネット、ロープ、天然芝、ケ
ーブル、タイヤやセメント、プラスチックの補強材等に
使用されており、一般にナイロン6・6、ナイロン6等
のポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート等のポリ
エステル類等の汎用素材が用いられてきた。しかし、こ
れらのポリマーから製造されるモノフィラメントは安価
ではあるものの強度・弾性率等の力学物性が十分には高
くないため、より高強度・高弾性率の優れた力学特性を
有する高性能のモノフィラメントが要求されている。
ル繊維、ポリベンザゾール繊維、超高分子量ポリエチレ
ン繊維等のいわゆる高強度繊維のモノフィラメントにつ
いても検討されてきた(例えば、特開平3−807号公
報、特開平8−27622号公報、特開昭60−153
741号公報)。しかしながら、アラミド繊維は液晶紡
糸法により紡糸することから単糸繊度が10dtex以
上の太物繊維が得られない問題、また超高分子量ポリエ
チレン繊維においては融点が低く耐熱性が劣る問題、ポ
リビニルアルコール繊維においては温水や湿熱によって
寸法変化、強度低下が起こる問題、ポリベンザゾール繊
維は曲げ剛性が高く可撓性が低くまた著しく高コストで
ある問題、等の問題があった。このように、これまで高
強度・高弾性率で、優れた耐久性を有し、かつ可撓性に
優れ実用的なコストのモノフィラメントは知られていな
い。
性、耐熱性を有し、可撓性を具備した繊維として、近
年、一酸化炭素とエチレン、プロペンのようなオレフィ
ンとを交互共重合せしめたポリケトンポリマーからなる
ポリケトン繊維が注目されている。ポリケトン繊維にお
いては、高融点のエチレンと一酸化炭素の完全交互共重
合ポリマー(以後「ECOポリマー」と略することがあ
る)と、数%のプロピレンを共重合した低融点のエチレ
ン/プロピレン/一酸化炭素ターポリマー(以後「EP
COポリマー」と略することがある)の2種類のポリマ
ーが知られている。ECOポリマーは融点が高く、耐熱
性のよい繊維を得ることが出来るが、融点が三次元架橋
反応が起こる温度よりも高く、溶融紡糸法を適用するこ
とは不可能であるため、これまでその繊維化は湿式紡糸
法により検討されてきた。
特開平4−228613号公報、特表平4−50534
4号公報、特開平2−112413号公報、特開平4−
228613号公報、特表平7−508317号公報、
特表平8−507328号公報には、ヘキサフルオロイ
ソプロパノール、m−クレゾール、レゾルシン/水、フ
ェノール/アセトン、ヒドロキノン/プロピレンカーボ
ネート、レゾルシン/プロピレンカーボネート等の溶剤
を用いて紡糸した繊維が開示されている。これらの技術
では、ポリケトンポリマーを溶剤に溶解した後に、凝固
浴に吐出して凝固せしめて紡糸し、さらに溶剤を一部ま
たは全部除去してから数倍〜数十倍の熱延伸を行うこと
で高強度のポリケトン繊維が得られることが開示されて
いる。しかしながらこれらの公報では、単糸繊度が0.
5〜数dtex程度の繊度の小さいECOポリマー繊維
に関する技術しか開示されておらず、単糸繊度が10d
tex以上の太物のECOポリマー繊維およびその製造
法に関する技術は一切知られていない。
は、特開平1−124617号公報、特開平2−112
413号公報、Polym.Prepr.(Am.Ch
em.Soc.,Div.Polym.Chem.),
36,1,291−292、Prog.Polym.S
ci.,Vol.22,8,1547−1605(19
97)、WO9918143号公開パンフレット等で、
溶融紡糸法や上述の乾式紡糸、湿式紡糸、あるいはアル
カリ金属やアルカリ土類金属、塩化亜鉛などの金属塩を
含む溶液にポリケトンポリマーを溶解し繊維を製造する
湿式紡糸技術が開示されている。また、米国RD399
004号公開パンフレットには繊維径の太いポリケトン
モノフィラメントがトリマー用途に適しているという情
報が開示されている。しかしながら、このパンフレット
ではポリケトンモノフィラメントに実用上必要な構造や
特性については一切開示されていない。また、その製造
法についても従来公知の溶融紡糸法(欧州特許3101
71号)が引用されているのみであるが、この引用特許
に開示されている溶融紡糸方法には繊度の大きいポリケ
トン繊維を紡糸する方法については一切触れられていな
い。また、通常の溶融紡糸法では延伸後の単糸繊度が1
0dtexを超える高強度・高弾性率のモノフィラメン
トを紡糸することは極めて困難であり、高性能のEPC
Oポリマーモノフィラメントに関する詳細な構造および
その実用的な製造方法については全く開示されていな
い。以上のように、ポリケトン繊維においても単糸繊度
が10dtex以上の太繊度のモノフィラメントにてお
いて、高強度・高弾性率の実用上十分な力学物性を有す
る繊維およびその製造法については全く知られていな
い。
度・高弾性率であり、優れた耐湿潤特性、耐熱性を具備
する繊度の大きいポリケトンモノフィラメントおよびそ
の製造法を提供することである。
一酸化炭素の共重合体からなるポリケトンポリマーによ
り構成されるポリケトンモノフィラメントにおいて、単
糸繊度が10dtex以上であり、かつ、該モノフィラ
メントの結晶化度が50%以上、結晶配向度が90%以
上であることを特徴とするポリケトンモノフィラメント
およびその製造方法である。本発明のモノフィラメント
に用いるポリマーはオレフィンと一酸化炭素の共重合ポ
リマーである。強度、寸法安定性、耐湿潤特性、高温繊
維物性等の観点からエチレンと一酸化炭素が結合した1
−オキソトリメチレンを主たる繰り返し単位とするポリ
マーが好ましい。繰り返し単位中の1−オキソトリメチ
レンの割合は、多ければ多いほど高融点、高力学物性の
繊維が得られるため90重量%以上であることが好まし
く、さらに好ましくは97重量%以上である。
り返し単位同士は、部分的にケトン基同士、エチレン同
士が結合していてもよいが、90重量%以上がオレフィ
ンと一酸化炭素が交互に配列したポリケトンポリマーで
あることが望ましい。耐光性、耐熱性、高温時の物性の
低下の観点からオレフィンと一酸化炭素が交互に配列し
た部分の含有率は多ければ多いほどよく、好ましくは9
7重量%以上、最も好ましくは100重量%である。ま
た必要に応じて、プロペン、ブテン、ヘキセン、シクロ
ヘキセン、ペンテン、シクロペンテン、オクテン、ノネ
ン等のエチレン以外のオレフィンやメチルメタクリレー
ト、酢酸ビニル、アクリルアミド、ヒドロキシエチルメ
タクリレート、スチレン、スチレンスルホン酸ナトリウ
ム、アリルスルホン酸ナトリウム、ビニルピロリドン、
塩化ビニル等の不飽和炭化水素を有する化合物を共重合
してもよい。
0dtex以上である。単糸繊度の範囲は10dtex
以上であれば特に制限はないが、繊度が細すぎるとモノ
フィラメントとしての使い勝手が低下し、また、繊度が
太すぎると工業的な装置・速度で製造することが出来な
くなるため、10〜100000dtexの範囲が好ま
しく、より好ましくは20〜10000dtexが望ま
しい。また、本発明のモノフィラメントは高い繊維物
性、耐熱性、耐久性を有する必要があり、これらの性能
を発現するためには、モノフィラメントの高次構造が重
要であり、具体的には結晶化度が50%以上、結晶配向
度が90%以上であることが必要である。
から結晶化度は高いほど好ましく、好ましくは50%以
上、さらに好ましくは60%以上、特に好ましくは70
%以上の結晶化度が望ましい。また、結晶配向度は高い
ほど高弾性率のモノフィラメントが得られることから、
好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上で
あることが望ましい。また、望まれる物性としては、強
度は好ましくは5cN/dtex以上、より好ましくは
10cN/dtex以上であることが望ましい。また、
引っ張り弾性率は好ましくは50cN/dtex以上、
より好ましくは100cN/dtex以上、特に好まし
くは200cN/dtex以上であることが望ましい。
湿熱処理後の繊維強度に代表される耐乾熱・湿熱特性に
優れることが望まれる。乾熱収縮率としては、無緊張下
で180℃、30分の乾熱処理後の乾熱収縮率が好まし
くは5%以下、さらに好ましくは3%以下であることが
望ましい。湿熱処理後の強度としては、120℃、10
0%湿度下で30分の湿熱処理後の繊維の強度として
は、好ましくは5cN/dtex以上、さらに好ましく
は10cN/dtex以上の強度であることが望まし
い。以上のような特性を具備するポリケトンモノフィラ
メントは補強材等の産業用途資材や漁網、ロープ、ネッ
ト、釣り糸、縫い糸等の用途に幅広く使用することが可
能となる。
に限定されないが、使用するポリケトンポリマーの組成
によって適宜選定することが望ましい。すなわち、融点
が230℃以上のポリケトンポリマーの場合は主に湿式
紡糸法を、また融点が230℃以下のポリマーについて
は主に溶融紡糸法を取ることが望ましい。以下、濃厚金
属塩を溶剤とする湿式紡糸法と溶融紡糸法を例に本発明
のモノフィラメントの製造法を説明する。ポリケトンポ
リマーの溶解に用いられる濃厚金属塩としてはハロゲン
化亜鉛化合物が挙げられ、具体的には例えば、塩化亜
鉛、臭化亜鉛、よう化亜鉛等の亜鉛塩である。ポリケト
ンポリマーの溶解性、溶媒のコスト、水溶液の安定性の
点で塩化亜鉛、よう化亜鉛が好ましく、塩化亜鉛が最も
好ましい。
が、ポリケトンポリマーの溶解性の点からは高い方が好
ましい。ハロゲン化亜鉛の水溶液中の濃度は、ポリケト
ンポリマーの組成、亜鉛塩の種類や水溶液の温度により
適正範囲が異なる。例えば、ポリマーの溶解においての
塩化亜鉛水溶液の好ましい濃度としては、50〜80℃
では10〜80重量%であり、ドープの安定性、紡糸
性、回収コスト等の観点から80℃において20〜70
重量%であることが特に好ましい。亜鉛塩の水溶液は、
溶解性向上、コストダウンやドープの熱安定性等を目的
として、ハロゲン化亜鉛を複数混合したものであっても
よい。また、必要に応じては塩化ナトリウム、塩化カリ
ウム、塩化カルシウム等のアルカリ金属あるいはアルカ
リ土類金属のハロゲン化物を60重量%以下で含んでい
てもよい。また、溶解性を阻害しない範囲で他の無機
物、有機物を10重量%以下で含んでいてもよい。
0.005〜70重量%であることが好ましい。尚、ド
ープとは、ポリマーを溶剤に溶解させた溶液を指す言葉
であり、ここではポリケトンポリマーを亜鉛塩水溶液に
溶解させた溶液を指すものである。ポリマー濃度が0.
005重量%未満では濃度が低すぎて、凝固時に繊維状
になりにくい欠点を有する他、製造コストが高くなりす
ぎる欠点を有する。また、70重量%を越えるともはや
ポリマーが溶剤に溶解しなくなる。溶解性、紡糸のしや
すさ、製造コストの観点から、好ましくは0.5〜40
重量%、更に好ましくは1〜30重量%である。
糸口金から押し出す。紡糸口金の径については特に制限
はなく、紡糸速度や繊度に応じて適宜選定される。10
〜100000dtexの実用的な性能を有するポリケ
トンモノフィラメントの場合には、0.1〜100mm
φの径が好ましい。紡糸口金の形状についても特に制限
はなく、丸形、三角型、四角、星形、矩形等の従来公知
の紡口形状から適宜選定される。凝固性、断面方向の物
性の均一性の観点から丸型紡口が推奨される。また、モ
ノフィラメントの繊度が1000dtex以上の場合、
それに合わせて紡口径を大きくすると吐出が不安定とな
り、安定した紡糸が困難となることがある。このため、
複数の紡口からドープを吐出し、凝固浴に入る前の気体
中、あるいは凝固浴に入って繊維状に固化する前に吐出
したドープ同士を接触、溶着せしめて一体化して繊維化
する方法をとってもよい。この場合、フィラメント内部
に気体を巻き込まないように、エアーギャップ部を減圧
状態にすることが望ましい。
入る前に一旦気体中を通過するエアーギャップ紡糸法を
とることが好ましい。気体の組成には特に制限はないが
空気、窒素が好ましく、空気が特に好ましい。紡糸口金
が凝固浴と接触している場合には、紡口周辺でポリマー
が析出して紡口詰まりや糸に欠陥が出来やすくなる。ま
た、紡糸口金内のドープ温度と凝固浴の温度差が大きい
場合には紡糸口金付近の温度が不均一になり紡糸が不安
定になって高性能の繊維が得られなくなる。エアーギャ
ップの長さについては特に制限はないが紡糸の安定性の
観点から0.1〜1000mmの範囲が好ましく、さら
に好ましくは0.5〜100mmであることが望まし
い。
の有機溶剤、水、有機物水溶液、無機物水溶液等どのよ
うなものであってもよいが、有機溶剤単独組成の凝固浴
の場合には、凝固速度が著しく遅くなり工業的なスピー
ド・設備で紡糸することが困難となってしまうため、少
なくとも1重量%の水を含有する溶液であることが好ま
しい。凝固浴の温度としては、凝固浴の組成によって変
化するが通常−100℃〜100℃の範囲である。しか
し、凝固浴温度が高くなりすぎると凝固速度が速くなり
フィブリルの直径が大きくなってしまうため、好ましく
は80℃以下、さらに好ましくは50℃以下、特に好ま
しくは30℃以下にすることが望ましい。一方、凝固浴
温度が低すぎると凝固速度が遅くなり生産性が低下する
ため、好ましくは−50℃以上、さらに好ましくは−3
0℃以上、特に好ましくは−10℃以上とすることが望
ましい。
高いとモノフィラメントの表層部と内層部の凝固速度が
著しく異なり繊維構造の内外差が出来て不均一な未延伸
糸構造となる。このような未延伸糸ではその後の熱延伸
工程で延伸倍率を高くとれず、結果として高強度・高弾
性率のポリケトンモノフィラメントが得られなくなる。
このため、モノフィラメントの断面方向の凝固速度差を
緩和するように凝固条件を選定することが重要なことで
ある。本発明者らはハロゲン化亜鉛溶剤系の場合、凝固
浴に0.1〜30重量%のハロゲン化亜鉛を含有する水
溶液を用いた場合に、繊維表面と中心部との繊維構造の
差が小さくなり、高強度・高弾性率のモノフィラメント
が得られるようになることを見いだした。凝固浴中のハ
ロゲン化亜鉛濃度が低すぎると、表層部の凝固速度が速
くなりいわゆるスキン−コア構造に近い構造になり、ま
た濃度が高すぎると凝固が遅くなりすぎて工業的な速度
での紡糸が困難となるため、好ましい濃度としては0.
1〜30重量%、さらに好ましくは0.5〜15重量
%、特に好ましくは1〜10重量%の範囲であることが
望ましい。
囲であればハロゲン化亜鉛以外の化合物を含有していて
もよく、回収効率の観点からは溶剤に含まれる化合物と
同一組成の化合物を使用することが推奨される。また、
必要に応じては析出した亜鉛塩の溶解助剤として凝固浴
に硫酸、塩酸等の酸を添加してもよい。繊維状物を凝固
浴に通す場合は、一定速度で引き取りながら通すことが
好ましい。巻き取り速度としては0.001〜100m
/min、紡糸ドラフトとしては0.01〜100であ
る。ここで紡糸ドラフトとは、巻き取り速度を吐出線速
度で除した値である。
は、凝固浴中で凝固糸中の亜鉛塩を十分に除去出来ない
場合もあるので、必要に応じては凝固浴を出た凝固糸を
さらに洗浄することが推奨される。洗浄には亜鉛塩を溶
解する能力を有する液体であればどのようなものを用い
てもよいが、安全性、溶液のコスト、回収のコスト等を
考慮すると、水系の溶液が好ましく、亜鉛塩の溶解性の
観点からは水もしくは硫酸、塩酸、リン酸等の酸性水溶
液が特に好ましい。洗浄方法は従来公知の方法、装置を
そのまま適用することが出来る。好ましい洗浄方法とし
ては、洗浄効率の点から洗浄浴中をフィラメントを通す
方法、または、フィラメントを洗浄液で満たされたロー
ル表面上を走行させる方法が挙げられる。洗浄温度は高
いほど亜鉛塩の溶解能力に優れるため、好ましくは20
〜100℃、より好ましくは40〜90℃の範囲で洗浄
することが望ましい。亜鉛塩が糸中に残存した場合、延
伸性が低下し高強度・高弾性率のモノフィラメントが得
られなくなるばかりか、モノフィラメントの耐熱性が低
下したり、フィラメントが変・着色する等の問題が起こ
りやすくなる。このため、洗浄工程では最終的に糸に含
まれる亜鉛金属の残量が好ましくは10000ppm以
下、より好ましくは1000ppm以下、特に好ましく
は100ppm以下になるまで繰り返し洗浄することが
望ましい。
含まない繊維は、乾燥後延伸あるいは乾燥させながら延
伸を行って延伸糸を得ることが出来る。乾燥方法として
は、いったん凝固糸を巻き取ったもの(チーズ、あるい
はケークやパーン)を乾燥機中で乾燥するバッチ乾燥法
であっても、また、凝固糸を紡糸後そのまま連続して、
あるいはいったん巻き取った後に、加熱したロールやプ
レート上あるいは加熱気体中を走行させて乾燥する連続
乾燥法であってもよい。糸の均一性や製造コストの観点
からは連続乾燥法が好ましい。乾燥温度は特に制約はな
いが、乾燥温度が高すぎると、乾燥時にモノフィラメン
トの表層部と内層部とで乾燥速度に差が生じて断面構造
が不均一となる。一方、乾燥温度が低すぎると工業的な
速度で乾燥が完了しないため、好ましくは100℃〜2
60℃、より好ましくは120〜240℃の範囲が好ま
しい。また、乾燥工程を数段に分けてあるいは連続的に
乾燥温度を徐々に上げていくと効率的に内外構造差の小
さい未延伸糸を得ることができるため、乾燥温度が昇温
していくような乾燥工程を通すことが望ましい。この場
合の乾燥温度は、乾燥効率、未延伸糸構造の観点から乾
燥初期100℃〜乾燥終了時240℃の範囲内であるこ
とが望ましい。乾燥温度が高すぎると糸が劣化する恐れ
があるため、糸の周囲に不活性気体を流すことが好まし
い。また、必要に応じては乾燥しながら同時に緩和や延
伸などの処理をしてもよい。
き加熱し、特定の倍率以上に延伸することによって高強
度・高弾性率のポリケトンモノフィラメントを得ること
が出来る。加熱延伸方法としては、加熱したロール上や
プレート上、あるいは加熱気体中を走行させる方法や、
走行糸にレーザーやマイクロ波、遠赤外線を照射する方
法等従来公知の装置、方法をそのままあるいは改良して
適用することが出来る。伝熱効率、糸温度の均一性の観
点から加熱ロール、加熱プレート上での延伸が好まし
く、ロールとプレートを併用した延伸法であってもよ
い。また、ロールやプレートの周囲を密閉し、密閉空間
内に加熱気体を充填するとより温度が均一な延伸が可能
となり好ましい。
じて多段延伸を行ってもよい。多段延伸を行う場合には
延伸温度を徐々に高くしていく方法が好ましい。延伸温
度は糸を有効に延伸可能な範囲であればどのような温度
でもよく、好ましい範囲としては80℃〜300℃、さ
らに好ましくは融点−50℃〜融点の範囲である。モノ
フィラメントの強度、弾性率、耐熱性の観点から、延伸
倍率は好ましくはトータルで5倍以上、より好ましくは
10倍以上、特に好ましくは15倍以上の倍率で延伸す
ることが望ましい。
ノフィラメントの製造法について説明する。溶融紡糸に
供するポリケトンポリマーは融点が230℃以下のポリ
マーであることが好ましい。融点が230℃以上のポリ
マーの場合、溶融温度を235℃以上にする必要があ
り、この場合には安定剤を添加しても長期間連続して安
定した紡糸を行うことが困難となる。融点が230℃以
下のポリケトンポリマーとしては、一酸化炭素/エチレ
ンの共重合ポリマーに第3成分としてプロペンやその他
不飽和炭化水素を含有する化合物を共重合したポリマー
が挙げられ、プロペンを共重合したEPCOポリマーが
好適に用いられる。ポリケトンポリマーには三次元架橋
反応を抑制する熱安定剤を添加することが望ましい。安
定剤は、カルシウムヒドロキシアパタイト等の従来公知
の安定剤をそのまま、あるいは複数種配合して用いても
よい。
混練し、溶融ポリマーを紡糸口金から気体中に吐出した
後に冷却浴に通して固化せしめる。紡糸口金の径、形状
は目的に応じて適宜選定されるが、好ましい径としては
0.05〜50mmφである。モノフィラメントの繊度
が1000dtexを超える場合には、湿式紡糸の場合
と同様に、複数の紡口から溶融ポリマーを吐出し、冷却
浴に入る前に溶融ポリマー同士を接触・融着せしめる方
法を採用してもよい。冷却浴の組成は特に制限はない
が、伝熱効率、コスト、安全性の点から水性溶液が好ま
しく、特に水が望ましい。冷却浴の温度はポリケトンポ
リマーが固化する温度であれば特に制限はないが、冷却
効率、生産性の観点から好ましくは0〜90℃、より好
ましくは10〜60℃、特に好ましくは20〜50℃で
ある。この際、急激に冷却するとフィラメントの外周の
みが先に固化して内部に空洞が出来る場合があるので、
必要に応じては冷却初期の水温は高めにして、徐々に冷
却浴温度が下がるような連続冷却法または多段冷却法と
することが好ましい。
延伸糸を、表面に付着した水を脱水した後に上述した延
伸工程にて延伸することで本発明のポリケトンモノフィ
ラメントが得られる。 本発明のポリケトンモノフィラ
メントは、従来の汎用モノフィラメントや高強度繊維で
は得ることのできなかった、また従来公知のポリケトン
繊維の製造方法では到底得ることの出来なかった太繊度
でありながら高強度・高弾性率、高耐熱性、高耐湿物
性、可撓性を具備しており、そのまま、あるいは必要に
応じて織物あるいは編み物や不織布に加工して幅広い分
野(例えば釣り糸、漁網等の漁獲用品、ラケット用スト
リング、ネット等のスポーツ用品、ロープ、ケーブル等
の土木・工業用資材、リボン、衣料用品・生活用品の芯
材、タイヤ用補強材、セメント補強材、プラスチック強
化繊維等の補強材料等)へ展開することが期待される。
また、必要に応じては本発明の太繊度のモノフィラメン
トを製造時あるいは製造後に複数本縦列せしめて、マル
チフィラメントとして上述の土木用・産業用資材用途、
あるいは衣料用用途等へ活用してもよい。
り更に詳しく説明するがそれらは本発明の範囲を限定す
るものではない。実施例などの説明中に用いられる各測
定値の測定方法は次の通りである。 (1)極限粘度 極限粘度[η]は次の定義式に基づいて求められる値で
ある。 [η]=lim(T−t)/(t・C) [g/dl] C→0 定義式中のt及びTは、ヘキサフルオロイソプロパノー
ル溶媒及び該溶媒に溶解したポリケトンの希釈溶液の2
5℃での粘度管の流過時間である。またCは、上記希釈
溶液100ml中のグラム単位による溶質重量値であ
る。
計測して求めた。 (4)湿熱処理後強度 湿度100%、温度120℃のオートクレーブ中に繊維
を投入し30分間処理した。処理後の繊維の強度を上記
(2)の方法に準じて測定した。 (5)結晶化度 パーキンエルマー社製示差熱測定装置Pyris1を用
いて下記条件で測定を行った。 測定温度 : 30℃→300℃ 昇温速度 : 20℃/分 雰囲気 : 窒素、流量=200ml/分 得られる吸発熱曲線において200℃〜300℃の範囲
に観測される最大の吸熱ピークの面積から計算される熱
量ΔH(J/g)より下記式により算出した。 結晶化度 = ΔH/225 × 100 (%)
INT2000を用いて下記の条件で繊維の回折像を取
り込んだ。 X線源 : CuKα線 出力 : 40KV、152mA カメラ長 : 94.5mm 測定時間 : 3分 得られた画像の2θ=21°付近に観察される(11
0)面を円周方向にスキャンして得られる強度分布の半
値幅Hから下記式により算出した。 結晶配向度=(180−H)/180 × 100 (%) (7)繊維中の亜鉛含有量 高周波プラズマ発光分光分析により、公知の方法を用い
て測定した。
が完全交互共重合した極限粘度5.9のポリケトンポリ
マーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量
%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解し
ポリマー濃度8重量%のドープを得た。得られたドープ
を80℃に加温し、20μmのフィルターでろ過した後
に、紡口径1mmφ、L/D=1のモノホール紡口より
10mmのエアーギャップを通した後に、5重量%の塩
化亜鉛と0.1重量%の塩酸を含有する32℃の水中に
吐出量2.5cc/分の速度で押し出し、浸漬長4mの
凝固浴中を通してポリケトン凝固糸を得た。引き続き凝
固糸を濃度2重量%、温度40℃の硫酸水溶液の流れる
径300mmの2組のロール上を30ラップ通して洗浄
し、さらに60℃の水が流れる径300mmの2組のロ
ール上を30ラップ通して仕上げ洗浄を行った後、巻き
取り速度3.2m/分で巻き取った。
0℃で1分間、引き続き180℃で1分間、さらに24
0℃で1分間定長乾燥して繊度1132.1dtexの
未延伸糸を得た。この未延伸糸を220℃に加熱したロ
ールを通した後に、周囲に240℃の加熱空気を流した
長さ1mのホットプレート上で240℃で1段目の延伸
を行った後に、引き続き255℃で2段目、さらに27
0℃で3段目の延伸を行いトータルで15倍の延伸を行
い、繊度78.2dtexのモノフィラメントを得た。
このモノフィラメントは、高い強度・弾性率の力学物
性、耐熱性、耐湿熱性を有していた。得られたモノフィ
ラメントの性質および性能を下記の実施例2〜5、比較
例1〜8と合わせて表1にまとめて示す。
0.5mmφ、L/D=1、モノホール紡口を用い吐出
量を0.5cc/分とする以外は実施例1と同様の処方
で紡糸を行った。乾燥は簡易脱水した後に120℃で1
分間、引き続き180℃で1分間、さらに240℃で3
0秒間の定長乾燥して、繊度228.6dtexの未延
伸糸を得た。この未延伸糸を実施例1と同じ処方でトー
タル19倍の延伸を行い繊度13.1dtexのモノフ
ィラメントを得た。
0.2mmφ、L/D=1、50H紡口を用い、吐出量
5cc/分で吐出した。エアーギャップ長を30mmと
し、吐出したマルチフィラメントを紡口直下25mm付
近で溶着せしめた後に、5重量%の塩化亜鉛と0.1重
量%の塩酸を含有する25℃の水を含有する凝固浴中に
吐出した。浸漬長4mの凝固浴を通した後に、さらに2
重量%の塩化亜鉛と0.1重量%の塩酸を含有する25
℃の水を含有する浸漬長4mの浴を通し、引き続き実施
例1と同様の処方で硫酸洗浄、水洗を行った後、巻き取
り速度3.2m/分で引き取った。得られた糸状物を簡
易脱水した後に、120℃で2分間、引き続き180℃
で2分間、さらに240℃で1分間定長乾燥して繊度2
238.2dtexの未延伸糸を得た。この未延伸糸を
実施例1と同じ処方でトータルで15倍の延伸を行い、
繊度152.1dtexのモノフィラメントを得た。
チレンユニットを6重量%含有する極限粘度1.6のエ
チレン/プロペン/一酸化炭素ターポリマーを調製し
た。該ポリマーを用い、ドープ濃度を22重量%とする
以外は実施例2と同様の処方で紡糸、乾燥を行い繊度6
09.0dtexの未延伸糸を得た。この未延伸糸を1
80℃に加熱したロールを通した後に、周囲に200℃
の加熱空気を流した長さ1mのホットプレート上で20
0℃で1段目の延伸を行った後に、引き続き215℃で
2段目、さらに225℃で3段目の延伸を行いトータル
で11倍の延伸を行い繊度57.1dtexのEPCO
モノフィラメントを得た。
にカルシウムヒドロキシアパタイトを0.3重量%添加
し、235℃で溶融した後に、紡口径1mmφ、L/D
=2、モノホール紡口から吐出量17.1g/分で押し
出した。吐出した線状ポリマーは空気中を20mm走行
した後に、温度55℃、浴長2mの温水中を通し、幅2
0cmの綿布上を通して予備脱水した後に、温度85℃
の加熱空気で満たされた長さ10mの筒中を通して速度
100m/分で巻き取り繊度1713.9dtexの未
延伸糸を得た。この未延伸糸を実施例4と同じ処方でト
ータル12倍の延伸を行い、繊度142.2dtexの
延伸糸を得た。
2.1dtexであったが、繊維物性は全く不十分で実
用不可能なものあった。
とする以外は同様の処方で紡糸、乾燥を行い、繊度11
45.9dtexの未延伸糸を得た。該未延伸糸を実施
例1と同様の処方で延伸を行ったが延伸性が不良でトー
タル5.5倍の延伸しか出来ず、繊度205.2dte
xの延伸糸を得た。未延伸糸の断面を電子顕微鏡で観察
したところ、繊維表面部が密で中心部が疎なスキン−コ
ア構造になっていた。
水洗浄を行わない以外は同様の処方で紡糸、乾燥を行い
繊度1122.0dtexの未延伸糸を得た。この未延
伸糸は乾燥時に黄褐色に着色していた。この糸を実施例
1と同様の処方で延伸を行ったが延伸性が不良でトータ
ル6倍の延伸しか出来ず、得られた延伸糸は繊度18
6.5dtexで茶褐色に変色していた。この延伸糸中
には35000ppmのZn分が残存していた。
ず紡口面を凝固浴と直接接触させて紡糸した。紡糸性は
不良で開始直後より断糸が多発し巻き取ることが出来な
かった。
レン/一酸化炭素完全交互共重合ポリマーにカルシウム
ヒドロキシアパタイトを0.3重量%添加したポリマー
粉を、270℃の単筒内に充填し、プランジャー押し出
し機を用いて0.5mmφ、L/D=1のモノホール紡
口から押し出そうとした。充填後2分後から押し出しを
試みたが押し出し圧力を100MPaとしても吐出不能
であった。バレル内部から取り出したポリマーは完全に
硬化していた。
から吐出した糸状物を冷却浴に通す替わりに温度20
℃、風速2m/分の冷却風を当てて高さ10mのチャン
バー内を通し、引き続き速度100m/分で引き取ろう
としたが、糸が軟かく巻き取り不能であった。巻き取り
速度を上げていったところ速度2500m/分で引き取
り可能となり繊度67.4dtexの未延伸糸を得た。
この未延伸糸を用い単糸繊度が10.0dtexとなる
よう実施例5と同様の処方でトータル7倍の延伸を行っ
たが、このモノフィラメントの繊維物性は不十分であっ
た。
ビニルアルコールを濃度7重量%となるようDMSOに
溶解し、紡口径0.5mmφ、L/D=1、モノホール
紡口を用い吐出量を1cc/分で10mmのエアーギャ
ップを通した後に浴長4mの冷メタノール中に吐出し、
実施例1の洗浄液を硫酸および温水からメタノールに変
えて洗浄し、紡糸速度2.5m/分で紡糸した。巻き取
ったボビンを60℃下で24時間乾燥し、繊度420d
texの未延伸糸を得た。この未延伸糸を1段目延伸温
度190℃、2段目延伸温度220℃、3段目延伸温度
を230℃としてトータル17倍の熱延伸を行った。得
られたPVAモノフィラメントは繊度25.2dtex
で高強度・高弾性率であったが、湿熱処理によって大き
く物性が低下した。
6モノフィラメント(商品名SO−100ビス:旭化成
工業(株)製)は強度・弾性率、寸法安定性、耐湿熱性
のいずれもポリケトンモノフィラメントに対して大きく
劣るものであった。
ントや高強度繊維では得ることのできなかった、また従
来公知のポリケトン繊維の製造方法では到底得ることの
できなかった太繊度でありながら高強度・高弾性率、高
耐熱性、高耐湿物性、可撓性を具備したポリケトンモノ
フィラメントおよびその製造方法を提供することができ
た。本発明のポリケトンモノフィラメントは、そのま
ま、あるいは織物あるいは編み物や不織布に加工して幅
広い分野(例えば、釣り糸、漁網等の漁獲用品、ラケッ
ト用ストリング、ネット等のスポーツ用品、ロープ、ケ
ーブル等の土木・工業用資材、リボン、衣料用品・生活
用品の芯材、タイヤ用補強材、セメント補強材、プラス
チック強化繊維等の補強材料等)へ展開することが期待
される。
Claims (11)
- 【請求項1】 オレフィンと一酸化炭素の共重合体から
なるポリケトンポリマーにより構成されるポリケトンモ
ノフィラメントにおいて、単糸繊度が10dtex以上
であり、かつ、該モノフィラメントの結晶化度が50%
以上、結晶配向度が90%以上であることを特徴とする
ポリケトンモノフィラメント。 - 【請求項2】 モノフィラメントの引っ張り強度が5c
N/dtex以上、引っ張り弾性率が100cN/dt
ex以上であることを特徴とする請求項1記載のポリケ
トンモノフィラメント。 - 【請求項3】 モノフィラメントの引っ張り強度が10
cN/dtex以上、引っ張り弾性率が200cN/d
tex以上であることを特徴とする請求項1記載のポリ
ケトンモノフィラメント。 - 【請求項4】 ポリケトンポリマーを構成する繰り返し
単位の97重量%以上が1−オキソトリメチレンである
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリ
ケトンモノフィラメント。 - 【請求項5】 ポリケトンポリマーを構成する繰り返し
単位が1−オキソトリメチレンのみからなることを特徴
とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリケトンモノ
フィラメント。 - 【請求項6】 ポリケトンポリマーをハロゲン化亜鉛を
10〜80重量%含有する水溶液に溶解し、紡糸口金を
通した後にハロゲン化亜鉛を0.1〜30重量%含有す
る凝固浴に吐出せしめて繊維状とした後に、水または酸
性水溶液を通して実質的に溶剤を除去し、100〜26
0℃下で乾燥を行い、さらに全延伸倍率が5倍以上の熱
延伸を行う工程を含むことを特徴とする請求項1〜5の
いずれかに記載のポリケトンモノフィラメントの製造方
法。 - 【請求項7】 ポリケトンポリマーを溶融し、紡糸口金
から吐出後気体中を通過せしめ、引き続き温度が0〜9
0℃の水性浴にて冷却固化し、さらに全延伸倍率が5倍
以上の熱延伸を行う工程を含むことを特徴とする請求項
1〜5のいずれかに記載のポリケトン繊維の製造方法。 - 【請求項8】 請求項1〜5記載のポリケトンモノフィ
ラメントを含有することを特徴とする繊維製品。 - 【請求項9】 繊維製品が釣り糸であることを特徴とす
る請求項8記載の繊維製品。 - 【請求項10】 繊維製品が漁網であることを特徴とす
る請求項8記載の繊維製品。 - 【請求項11】 繊維製品がタイヤ補強材であることを
特徴とする請求項8記載の繊維製品。
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