JP4603210B2 - ポリケトン繊維およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、撚糸したときの強力利用率が高いポリケトン繊維およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一酸化炭素と、エチレンやプロピレンのようなオレフィンとをパラジウムやニッケル等の遷移金属錯体を触媒として用いて重合させることにより、一酸化炭素とオレフィンが実質完全に交互共重合したポリケトンが得られることが知られている(工業材料、12月号、第5頁、1997年)。ポリケトンを産業資材用繊維として応用する検討が多くの研究者によってなされ、ポリケトン繊維のもつ高強度、高弾性率、高温での高い寸法安定性、優れた接着性、耐クリープ特性等を生かして、タイヤコード、ベルト等の補強用繊維、コンクリートの補強用繊維といった複合材料用繊維への応用が期待されている。
【0003】
特に、エチレンと一酸化炭素の繰り返し単位からなるポリケトン(以下、ECO、という)は結晶性や融点も高いために、高強度および高弾性率を有する繊維やフィルムが最も得やすく、高温下での物性変化や収縮率が小さい等、熱安定性が最も優れている。
ECO繊維の製造方法としては、溶融紡糸が困難であるため、溶剤にECOを溶解して乾式または湿式紡糸法により繊維化が行われており、例えば、特開平2−112413号公報、特開平4−228613号公報、特表平4−505344号公報、特表平7−508317号公報、特表平8−507328号公報、国際公開99/18143号パンフレット、国際公開00/09611号パンフレット、特開2001−293928号公報等にその製造法が開示されている。
【0004】
いずれの方法においても、繊維を10倍以上の高倍率に熱延伸して一軸方向に高配向させることにより、高強度および高弾性率を有するポリケトン繊維を得ている。しかしながら、タイヤコード用途のように、撚糸して使用されるような場合、上記のように高倍率に熱延伸された高配向のECO繊維は、撚糸前の強力に対する撚糸後の強力の比率(以下、撚糸強力利用率、という)が低くなることがわかった。
【0005】
一般に、高配向された繊維は、繊維軸方向に引っ張る力に対しては強い耐性を示すが、曲げ等による圧縮される力が加わると、繊維の赤道方向の結合力が弱いために結晶のすべりやフィブリル間のはがれ等が起こり、破壊されやすくなる。ECO繊維にも同様な現象がおこることが考えられ、撚糸された繊維を引っ張った場合、繊維軸方向に引っ張る力以外に曲げの力が加わるため、高配向されたECO繊維は撚糸強力利用率が低くなるものと考えられる。
【0006】
タイヤコードの耐疲労性を向上させる目的で撚糸数を多くした場合、この問題は顕著になる。これまでに開示されたポリケトン繊維の製造方法によると、高配向で強度や弾性率の高い繊維を得るためには、適正な温度および倍率で延伸を行うことが示されているのみであり、延伸方法により撚糸強力利用率に与える影響について何ら開示されていない。
特表平7−508317号公報には、1段目の熱延伸における最適な延伸温度と延伸速度との組み合わせが示されているが、強度と伸度の積が大きいECO繊維を製造するために適した延伸方法が示されているのみであり、延伸方法により撚糸強力利用率に与える影響についての記載は全く見られない。
【0007】
以上のように、これまでECO繊維の製造法は、ECO繊維の強度や弾性率を高かめるための技術を追求するのみで、タイヤコードとして利用する際に重大な問題となる撚糸強力利用率を向上させる技術に関する開示は見られない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、撚糸後の強力保持率の高いポリケトン繊維およびその製造法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、ポリケトン繊維の構造と撚糸強力利用率の関係を詳細に検討した結果、透過型光学顕微鏡により400倍で単繊維を観察したときに、単繊維表面に横縞が存在すると撚糸強力利用率が向上することを見いだし、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、繰り返し単位の95モル%以上が化学式(1)で示されるポリケトンからなる、強度が12cN/dtex以上のポリケトン繊維であって、透過型光学顕微鏡により400倍で単繊維を観察したときに、繊維長さ50μm当たりに少なくとも1本の横縞が存在することを特徴とするポリケトン繊維、および繰り返し単位の95モル%以上が化学式(1)で示されるポリケトンからなるドープを紡糸口金から凝固浴へ押し出して凝固させ、得られた繊維状物を洗浄して乾燥した後、2段以上の多段で8倍以上に熱延伸を行い、次いで、数式(1)で示すひずみ速度0.05〜0.50秒-1で熱延伸することを特徴とするポリケトン繊維の製造方法である。
【0010】
【化3】
【0011】
【数2】
【0012】
(式中、V1は延伸のフィード速度(m/秒)、V2は延伸の引取り速度(m/秒、Lは加熱長(m))
本発明のポリケトン繊維は、繰り返し単位の95モル%以上が化学式(1)で示されるポリケトンである。5モル%未満の範囲で例えば、化学式(2)に示したもの等を含有していてもよい。
【0013】
【化4】
【0014】
式中、Rはエチレン以外の炭素数1〜30の有機基であり、プロピレン、ブチレン、1−フェニルエチレン等が例示される。有機基の水素原子の一部または全部が、ハロゲン基、エステル基、アミド基、水酸基、エーテル基等で置換されていてもよい。もちろん、Rは2種以上であってもよく、例えば、プロピレンと1−フェニルエチレンが混在していてもよい。高強度および高弾性率が達成可能で、高温での強度および弾性率の保持性が優れるという観点から、繰り返し単位の97モル%以上が化学式(1)で示されるポリケトンであることが好ましく、より好ましくは100モル%である。
【0015】
本発明のポリケトン繊維は、12cN/dtex以上の強度を有する。ここで強度とは、引っ張り強度のことをいう。タイヤコード等のゴム補強材料としてポリケトン繊維を使用した場合、使用する繊維の割合を少なくすることが可能になるという点から、強度は15cN/dtex以上が好ましく、17cN/dtex以上がより好ましい。
本発明のポリケトン繊維は、透過型光学顕微鏡により400倍で単繊維を観察したときに、繊維長さ50μm当たりに少なくとも1本の横縞が存在することが必要である。本発明でいう横縞は、図1に示すように、透過型顕微鏡を用い400倍の倍率で単繊維を観察したときに繊維軸と垂直方向に観察される線のことである。強度が12cN/dtex以上であるポリケトン繊維において、上述の横縞が観察されたときに、撚糸強力利用率や結節強度を高める効果がある。
【0016】
横縞は、ポリケトン繊維を製造する際の熱延伸時に生じるミクロボイド等の小さな欠陥であると考えられる。しかし、この横縞の存在によってポリケトン繊維の強度が急激に低下することはなく、むしろ、繊維を曲げたときの応力集中による破壊の伝搬を抑制するために、高い強度を維持したまま、撚糸強力利用率や結節強度を高める効果を得ることが可能となる。横縞は、繊維長さ50μmあたりに少なくとも1本存在すれば前述の効果が得られるが、効果を一層発揮させる上から2以上が好ましく、3本以上がより好ましい。30本を越えても効果の向上は見られず、強度が低くなる傾向が見られることから、30本以下が好ましい。
【0017】
本発明のポリケトン繊維は、示差走査熱量計(DSC)を用いて20℃/分の昇温速度で測定したときに、100〜120℃にピークトップが観察される吸熱ピークに対応した熱量(結晶転移熱量)が9.5J/g以上であることが好ましく、より好ましくは10.0J/g以上、最も好ましくは10.5J/g以上である。結晶転移熱量は、後述する方法により測定される。結晶転移熱量は、結晶形が、結晶の緻密性が高いα型から低いβ型へ結晶転移するときに吸熱される熱量で、DSCを用いて20℃/分の速度で昇温したときに100〜120℃に吸熱ピークのトップが観察されることが知られている(J.Polym.Sci.:Part B:Polym.Phys.,33,315−326(1995))。
【0018】
結晶転移熱量が9.5J/g以上の場合、ポリケトン繊維の弾性率はより高くなり、高温での寸法安定性が一層向上する。すなわち、結晶転移熱量が9.5J/g以上になると、α型の結晶の比率が多くなるために、結晶の緻密性の向上により弾性率が高くなり、高温での寸法変化も小さくなるものと考えられる。タイヤコード用途としてポリケトン繊維を使用する場合、タイヤに加工するときの加硫工程で170〜200℃の加熱を受けたり、高速走行によるタイヤの発熱による加熱を受ける可能性があり、上記の効果は重要である。
【0019】
本発明のポリケトン繊維の製造方法について限定はない。以下に本発明のポリケトン繊維の製造方法の一例について説明する。
本発明で使用するポリケトンの極限粘度[η]は、高強度のポリケトン繊維が得られるという点で、2dl/g以上が好ましい。ただし、[η]が大きすぎると溶解性や紡糸性が悪くなる傾向が見られることから、20dl/g以下であることが好ましく、より好ましくは3〜15dl/g、最も好ましくは4〜10dl/gである。
【0020】
ポリケトンは融点以上になるとポリマーの化学架橋反応が起こりやすく、溶融紡糸が困難になるため、ポリケトンを溶剤に溶解してポリケトンからなるドープを製造し、このドープを用いて湿式紡糸法または乾式紡糸することが好ましい。溶剤としては、特開平2−112413号公報、特開平4−228613号公報、特表平4−505344号公報、特表平7−508317号公報、特表平8−507328号公報等に記載の溶剤、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール、m−クレゾール、クロロフェノール、レゾルシン/水、等の有機溶剤を用いて行うこともできるが、安価で、毒性が低いまたは引火性がない等の利点から、国際公開99/18143号パンフレット、国際公開00/09611号パンフレット、特開2001−293928号公報等に開示された金属塩水溶液をポリケトンの溶剤として用いることが好ましい。
【0021】
金属塩としては、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化カルシウム、チオシアン酸カルシウム、チオシアン酸リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、臭化鉄、ヨウ化鉄、塩化鉄等があり、単独または複数を混合して使用する。
金属塩水溶液の塩濃度は50〜80質量%であることが好ましい。50質量%未満の場合およびは80質量%を越える高い塩濃度では紡糸が不安定になる傾向がある。塩濃度は、以下の式で定義される。
塩濃度(質量%)=[塩の質量/(塩の質量+水の質量)]×100
【0022】
溶剤に溶解するポリケトンのポリマー濃度は0.1〜40質量%であることが好ましい。ポリマー濃度が0.1質量%未満では濃度が低すぎて、凝固浴中で繊維状に形成することが困難になる傾向がある。ポリマー濃度が40質量%を越えるとポリケトン溶液の粘度が高くなり、紡糸が不安定となる傾向がある。ポリマー濃度は、以下の式で定義される。
ポリマー濃度(質量%)
=[ポリマー質量/(ポリマー質量+金属塩水溶液の質量)]×100ポリケトンドープを、必要に応じてフィルターで濾過した後、紡糸口金から凝固浴へ押し出して凝固させ、繊維状に成形する。凝固浴に使用する凝固剤としては、ポリケトンドープを凝固させることが可能であれば限定はなく、例えば、メタノール、エタノール、アセトン、水、前述の金属塩の水溶液や硫酸、塩酸、リン酸の水溶液等が用いられる。押し出し時のポリケトンドープの温度と凝固浴の温度の差が大きいときは、紡糸口金を空気中に設置し、紡糸口金から吐出された繊維状物が空気相を経て凝固浴に導く方法、いわゆるエアギャップ法が好ましい。
【0023】
凝固後、凝固浴外へ引き上げられた繊維状物は、必要に応じて溶媒の抽出剤、例えば、水、メタノール、アセトン等を用いて洗浄し、ホットロール、ホットプレート、熱風炉等公知の方法を用いて乾燥し、繊維から溶剤を実質的に除去する。
次いで、実質的に溶剤が除去された繊維を熱延伸する。熱延伸は延伸温度を徐々に高くして2段以上で行う多段延伸法を採用し、8倍以上熱延伸した繊維をさらに0.05〜0.50秒-1のひずみ速度で熱延伸することが必要である。ひずみ速度は数式(1)で定義される。
【0024】
【数3】
【0025】
(式中、V1は延伸のフィード速度(m/秒)、V2は延伸の引取り速度(m/秒)、Lは加熱長(m))
熱延伸は、フィードロールと引取りロールの速度規制ロール間において繊維を加熱することにより行うことができる。この組み合わせの数が熱延伸の段数である。2段以上の多段で延伸を行う方法として、速度規制ロールと繊維を加熱する装置を並べて連続的に行う方法、延伸後に一旦巻き取り、さらに延伸する非連続的な方法等がある。繊維を加熱する方法としては、ホットロールまたはホットプレート上、あるいは加熱炉を用いて加熱気体中を走行させる方法や、繊維にレーザー、マイクロ波または赤外線を照射して加熱する方法等、公知の方法をそのまままたは改良して採用することができる。加熱長とは、上述の方法により繊維が加熱されている長さである。
【0026】
8倍以上の延伸を1段で行った場合、透過型光学顕微鏡により400倍で単繊維を観察したときに、繊維長さ50μm当たりに少なくとも1本の横縞が存在するポリケトン繊維が得られず、したがって撚糸強力利用率や結節強度に優れた高強度ポリケトン繊維を得ることができない。
8倍以上の熱延伸を行った後に、ひずみ速度が0.05秒-1未満の熱延伸を行った場合、または8倍未満の熱延伸を行った後にひずみ速度が0.05秒-1以上の熱延伸を行った場合にも、繊維長さ50μm当たりに少なくとも1本の横縞が存在するポリケトン繊維を得られず、したがって撚糸強力利用率や結節強度に優れた高強度ポリケトン繊維を得ることができない。
【0027】
8倍以上の熱延伸を行った後、ひずみ速度が0.50秒-1越える熱延伸を行った場合には、単糸切れが発生し、強度が12cN/dtex以上のポリケトン繊維が得られない。
より高い強度および弾性率を有し、撚糸強力利用率および結節強度を高める上で、ひずみ速度は0.10〜0.40秒―1が好ましく、より好ましくは0.20〜0.30秒-1である。0.05〜0.50秒-1のひずみ速度の熱延伸は、8倍以上の熱延伸を行った後にすぐに行ってもよく、0.05秒-1未満のひずみ速度の熱延伸を行った後でもよい。8倍以上熱延伸した繊維を0.05〜0.50秒-1のひずみ速度で熱延伸した後に、0.05秒-1未満のひずみ速度の熱延伸を行ってもよい。0.05〜0.50秒-1のひずみ速度の熱延伸を2段以上行ってもよい。
【0028】
熱延伸に際して、延伸温度は100〜300℃であることが好ましい。100℃未満では延伸倍率を高めることが困難になり、300℃を越えると延伸時に糸が溶融して糸の切断がおこりやすい。延伸のしやすさから150℃以上が好ましく、より好ましくは180〜280℃である。
熱延伸終了後に、好ましく0.2〜2.0cN/dtex、より好ましくは0.5〜1.5cN/dtexの張力を加えながら、好ましくは230〜280℃、より好ましくは250〜260℃の範囲で、好ましくは0.01〜60秒間、より好ましくは0.1〜30秒間熱処理することにより、ポリケトン繊維の弾性率がより高くなり、高温での寸法安定性が一層向上する。
【0029】
熱処理温度が230℃未満では熱処理の効果が現れず、280℃を越えると単糸間の融着が起こる場合がある。張力が0.2cN/dtex未満になると配向緩和が起こり弾性率の低下を引き起こす場合があり、2.0cN/dtexを越えても効果が殆ど向上しない。熱処理処理時間が0.01秒未満では熱処理の効果が小さく、60秒を越えると効果の増加率が小さくなるとともに熱劣化が生じやすくなる。張力を加えながら熱処理する方法は限定されないが、前述の熱延伸と同様な装置をそのまま用いて行うことができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明を実施例により具体的に説明するが、それらは本発明の範囲を限定するものではない。
本発明に用いられる各測定値の測定方法は次の通りである。
(1)極限粘度[η]
極限粘度[η]は、次の式により求める。
式中のtおよびTは、純度98%以上のヘキサイソプロパノールおよびヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間である。Cは上記100ml中のグラム単位による溶質質量値である。
(2)繊維の強度、伸度、弾性率
繊維の強伸度は、JIS−L−1013に準じ、サンプル長:20cm、引張り速度:20cm/分で測定し、10回測定したときの平均値とする。
【0031】
(3)横縞の本数
任意に単繊維を5本採取し、それぞれの単繊維について、単繊維をスライドグラス上に乗せてカバーグラスで挟んだ状態でオリンパス光学工業(株)社製の透過型顕微鏡BX50を用いて400倍の倍率で観察し、写真撮影を行う(図1に繊維軸に対して垂直方向の線が存在する単糸の一例を示す)。繊維サンプルと同じ条件で写真撮影したスケール(1目盛りが10μm)写真を用いて、単繊維の任意の位置における繊維長50μmの範囲内に存在する繊維軸に対して垂直方向に存在する線を数え、5本の単繊維における横縞の本数を平均する。
(4)結晶転移熱量
長さ2mm程度に切断したポリケトン繊維2mgを、窒素雰囲気下、20℃/分の昇温速度で、PERKIN ELMER社製の示差走査熱量計Pyrisー1(商標)を用いて測定する。結晶転移熱量は、図2に示すように、100〜120℃にピークトップが観察される吸熱ピークと点線のベースラインで囲まれた面積に対応した熱量であり、示差走査熱量計Pyrisー1に付属した解析ソフト「Pyris Data Analysis」を使用して計算する。
【0032】
(5)撚糸強力利用率
撚糸強力利用率(%)=(撚糸後の強力/撚糸前の強力)×100
撚糸後の強度は、張力0.44cN/dtex、撚り数1200回/mの条件で撚糸したものを(2)の方法で測定する。
(6)熱収縮率
ポリケトン繊維を150℃、30分間、無緊張状態で熱処理したときの繊維長の変化を測定し、以下に示す式より熱収縮率を計算する。
熱収縮率(%)=
[(熱処理前の繊維長−熱処理後の繊維長)/熱処理前の繊維長]×100
【実施例1】
62質量%の塩化カルシウムと塩化亜鉛の混合塩(塩化カルシウム/塩化亜鉛の質量比は64.5/35.5)水溶液に、極限粘度[η]が5.7で、実質的に繰り返し単位の100モル%が化学式(1)で示されるポリケトンが7質量%となるように30℃で混合し、1.33kPaまで減圧した。泡の発生が無くなった後、減圧のまま密閉し、これを90℃で2時間攪拌することにより均一で透明なポリケトン溶液を得た。
【0033】
得られたポリケトン溶液を20μmのフィルターを通過させた後、直径0.15mmの孔が50個ある紡口口金からプランジャー型押出機を用いて、80℃、5m/分の速度で押し出し、エアギャップ長10mmを通過させ、そのまま2℃の水からなる凝固浴中を通した後、5m/分の速度でネルソンロールを用いて引き上げた。次いで、そのネルソンロール上で水を吹きかけて洗浄し、1質量%の塩酸浴を通してネルソンロールで引き上げた後、ネルソンロール上で水を吹きかけて洗浄した。次いで、220℃のホットプレート上を通して乾燥した後に巻き取り、未延伸糸を得た。
【0034】
この未延伸糸を2台のネルソンロールと加熱長が1mのホットプレートを用いて、225℃で7.0倍、240℃で1.5倍、250℃で1.3倍、257℃で1.3倍の4段による熱延伸を行った。1段目はフィード速度が1m/分でひずみ速度が0.12秒-1、2段目はフィード速度が2m/分でひずみ速度が0.02秒-1、3段目はフィード速度が2m/分でひずみ速度が0.01秒-1、で延伸を行った。3段目までの延伸倍率は13.7倍であった。4段目のフィード速度は20m/分で、ひずみ速度が0.10秒-1の熱延伸を行った。
【0035】
得られた繊維の物性は、繊度が58.9dtex、強度が16.8cN/dtex、伸度が4.8%、弾性率が349cN/dtexで、横縞の本数は13本、結晶転移熱量は9.1J/g、熱収縮率は1.8%であった。撚糸強力利用率は76%であり良好であった。
【0036】
【実施例2】
乾燥して未延伸糸を得るまでは実施例1と同様に行った。この未延伸糸を、ネルソンロールを用いて2m/分でフィードし、加熱長が1mで温度が225℃のホットプレート上を通した後、ネルソンロールを用いて14m/分で引取って(延伸倍率=7.0倍)、そのままフィードして加熱長が1mで温度が240℃のホットプレート上を通した。次いで、ネルソンロールを用いて21m/分で引取った(延伸倍率1.5倍)。さらにそのままフィードして加熱長が1m、温度が255℃のホットプレート上を通し、ネルソンロールを用いて28.4m/分で引取り(延伸倍率=1.35倍)、連続3段の熱延伸を行った。このとき、2段目までの延伸倍率は10.5倍であり、3段目のひずみ速度は0.12秒-1であった。
【0037】
得られた繊維の物性は、繊度が73.9dtex、強度が15.3cN/dtex、伸度が5.1%、弾性率が329cN/dtexで、横縞の本数は19本、結晶転移熱量が8.8J/g、熱収縮率が1.6%であった。撚糸強力利用率は79%であり良好であった。
【0038】
【実施例3】
実施例1で得られた繊維を、ネルソンロールを用いて4m/分の速度でフィードし、温度が255℃のホットプレート上を通した後にネルソンロールで4.2m/分の速度で引取る方法で熱処理を行った。このときのネルソンロール間の繊維に加わった張力は0.9cN/dtex、処理時間は15秒であった。
得られた繊維の物性は、繊度が58.1dtex、強度が16.9cN/dtex、伸度が4.3%であった。弾性率は399cN/dtexであり、高い弾性率を示した。横縞の本数は12本、撚糸強力利用率は77%であった。また、結晶転移熱量は10.8J/gであった。熱収縮率は0.5%であり、加熱時の寸法安定性は良好であった。
【0039】
【実施例4】
実施例1で得られた繊維を、ネルソンロールを用いて4m/分の速度でフィードし、温度が250℃のホットプレート上を通した後にネルソンロールで4.2m/分引取り方法で熱処理を行った。このときのネルソンロール間の繊維に加わった張力は0.9cN/dtexであり、処理時間は15秒であった。
得られた繊維の物性は、繊度が73.5dtex、強度が15.8cN/dtex、伸度が4.3%であった。弾性率が375cN/dtexであり、高い弾性率を示した。横縞の本数は12本であり、撚糸強力利用率は78%であった。
また、結晶転移熱量は10.2J/gであった。熱収縮率は0.6%であり、加熱時の寸法安定性は良好であった。
【0040】
【比較例1】
4段目のフィード速度を2m/分、ひずみ速度を0.01秒-1とした以外は実施例1と同じ方法で行い、ポリケトン繊維を製造した。
得られた繊維の物性は、繊度が58.2dtex、強度が17.8cN/dtex、伸度が4.4%、弾性率が402cN/dtexであり、横縞の本数は0本、結晶転移熱量は11.2J/g、熱収縮率は0.8%であった。撚糸強力利用率は66%であり、低い値であった。
【0041】
【発明の効果】
本発明のポリケトン繊維は、高い強度及び弾性率を有し、撚糸後の強力保持率が高い。そのため、本発明のポリケトン繊維は、タイヤコード、ベルトなどのゴム補強材として好適であり、中でも、耐疲労性を特に要求される分野に最適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリケトン繊維を400倍の透過型顕微鏡で観察した写真。
【図2】結晶転移熱量を求めるためのDSC曲線図。
Claims (4)
- 示差走査熱量計を用いて20℃/分の速度で昇温したときに、100〜120℃にピークトップが観察される吸熱ピークに対応した熱量が9.5J/g以上である、請求項1に記載のポリケトン繊維。
- 前記熱延伸工程が終了後、0.2〜2.0cN/dtexの張力を加えながら、230〜280℃で、0.01〜60秒間熱処理する工程をさらに含む、請求項3に記載の方法。
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