JP4566422B2 - ポリケトン繊維及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、繊維の単糸膠着率の低いポリケトン繊維及びその製造方法に関する。更に詳しくは、高強度・高弾性率であり、撚糸したときの強力利用率が高いポリケトン繊維及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一酸化炭素と、エチレンやプロピレンのようなオレフィンとをパラジウムやニッケル等といった遷移金属錯体を触媒として用いて重合させることにより、一酸化炭素とオレフィンが実質完全に交互共重合したポリケトンが得られることが知られている(工業材料、12月号、第5ページ、1997年)。
ポリケトンを産業資材用繊維として応用する検討が多くの研究者によってなされ、高強度、高弾性率、高温での寸法安定性、接着性、耐クリープ特性を生かしてタイヤコード、ベルト等の補強繊維、コンクリート補強用繊維といった複合材料用繊維への応用が期待されている。
【0003】
特に、エチレンと一酸化炭素の繰り返し単位からなるポリケトン(以下、ECO、という)は結晶性や融点も高いために、高強度・高弾性率の繊維やフィルムが最も得やすく、高温下での物性変化や収縮率が小さい等、熱安定性が最も優れている。このECO繊維の製造方法としては、溶融紡糸が困難であるため、溶剤にECOを溶解して乾式または湿式紡糸法により繊維化が行われている。
湿式紡糸に使用する溶剤として、例えば、特開平2−112413号公報、特開平4−228613号公報、特表平4−505344号公報、特表平7−508317号公報等に記載の溶剤、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール、m−クレゾール、クロロフェノール、レゾルシン/水、フェノール/アセトン、プロピレンカーボネート/ヒドロキノン、ピロール、レゾルシン/プロピレンカーボネート、ピリジン、ギ酸等の有機溶剤を用いることもできるが、これらの溶剤は高価又は毒性が高い、ポリケトンの変性をもたらす、可燃性が高い等、工業的に使用するには問題がある。
【0004】
これに対して、本出願人は、国際特許出願第99/18143号、国際特許出願第00/09611号、特願平11−293928号等で、例えば、亜鉛塩、カルシウム塩、鉄塩等の金属塩水溶液がポリケトンの溶剤として使用できることを提案した。これらは低毒性、不燃、安価で、紡糸安定性、溶剤回収性に優れ、工業用溶剤として優れている。しかし、金属塩水溶液を溶剤として用いてマルチフィラメントの湿式紡糸を行った場合、乾燥時に単糸膠着を起こしやすいことが明らかになった。このような単糸膠着は熱延伸後も残り、可燃時の強力利用率を低下させたり、単糸切れの原因となり、タイヤコード等の産業資材用繊維として使用する場合には、更なる改良が望まれる。
【0005】
単糸膠着を防止する方法として、特表平7−508317号公報には、レゾルシン/水の溶剤とメタノール凝固浴を用いて、凝固の後に室温で予備延伸することが開示されているが、前記のような金属塩水溶液を用いた場合には、この方法では解決することができない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、以下の課題を達成ことである。
(1)高い強度、弾性率を維持し、撚糸後の強力保持率の高いポリケトン繊維及びその製造法を提供すること。
(2)低毒性、不燃、安価で、溶剤回収性に優れた溶剤を用いた湿式紡糸法により、上記(1)の目的を達成するポリケトン繊維を製造する方法を提供すること。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、ポリケトンの溶剤組成及びポリケトン繊維の製造方法を詳細に検討した結果、乾燥工程で水分率が0〜40質量%である繊維に単糸間のずれを生ずる外力を加えることにより単糸膠着率が10%以下となることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0010】
(請求項
以下のステップ:
繰り返し単位の95モル%以上が下記式(1):
【化2】
Figure 0004566422
で示されるポリケトンを金属塩水溶液に溶解し、
得られた溶液を、紡口口金から、−20〜2℃の凝固浴へ押し出し、
得られた繊維状物を水洗して前記の金属塩を実質的に除去し、
乾燥し、そして
繊維を熱延伸する、
を含むポリケトン繊維の製造法において、前記乾燥ステップにおいて、水分率が0〜40質量%にある繊維に、単糸間のずれを生ずる外力を加えることを特徴とするポリケトン繊維の製造方法。
【0012】
(請求項
前記単糸間のずれを生ずる外力が、気体を吹きつけることにより加えられる、請求項に記載のポリケトン繊維の製造方法。
(請求項
前記ポリケトンの金属塩水溶液が、塩化カルシウム/塩化亜鉛(質量比は68/32〜61/39)からなる塩を59〜64質量%含んだ水溶液であり、そして紡口口金から押し出すときのポリケトン溶液の温度が60〜150℃である、請求項又はに記載のポリケトン繊維の製造方法。
【0013】
本発明のポリケトン繊維は、繰り返し単位の95モル%以上が上記の式(1)で示されるポリケトンである。5モル%未満の範囲で上記の式(1)以外の繰り返し単位、例えば、下記式(2)に示したもの等を含有していてもよい。
【0014】
【化5】
Figure 0004566422
【0015】
式中、Rはエチレン以外の炭素数1〜30の有機基で、プロピレン、ブチレン、1−フェニルエチレン等が例示される。これらの水素原子の一部又は全部が、ハロゲン基、エステル基、アミド基、水酸基、エーテル基で置換されていてもよい。もちろん、Rは2種以上であってもよく、例えば、プロピレンと1−フェニルエチレンが混在していてもよい。高強度、高弾性率が達成可能で、高温での強度、弾性率の保持性が優れる、という観点から、繰り返し単位の97モル%以上が上記の式(1)で示されるポリケトンであることが好ましく、より好ましくは100モル%である。
【0016】
本発明のポリケトン繊維は、繊維の単糸膠着率が30%以下である必要がある。
単糸膠着率は、
単糸膠着率(%)=[1−(見かけの単糸数/単糸数)]×100
で定義される値である。
式中、見かけの単糸数は、ポリケトン繊維を10cmの長さに切断し、膠着して分繊ができない単糸の組を1本として数えたときの単糸の本数である。さらに詳細に述べると、単糸膠着率を測定しようとする長さ5mのポリケトン繊維の任意の部分を10cm単位の長さに切断して5本のサンプルを採取し、それぞれのサンプルから単糸をピンセットで1本1本取り出して前述したように単糸数を数えたときの平均値である。単糸数は、前記のポリケトン繊維の製造に用いた紡口口金の孔数と同じ値であり、通常、繊維銘柄表示で示されるフィラメント本数である。
【0017】
具体的な例で説明すると、例えば、10個の孔数を持った紡口口金を用いて製造された繊維において、2本の単糸が膠着しているものが2組あるとすれば、単糸数は10で、見かけの単糸本数は8となり、単糸膠着率は20%となる。
単糸膠着率が30%を越える場合、可燃時の強力利用率の低下が大きい、単糸切れが多く発生する、等の問題が生じ、タイヤコード等の産業資材用繊維として使用するときに性能を十分に発揮させることができない。単糸膠着率は、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下である。
【0018】
以下に、ポリケトン繊維の製造方法について説明する。
本発明で使用するポリケトンの極限粘度[η]は特に制限はないが、高強度のポリケトン繊維が得られるという点で、好ましくは2dl/g以上である。ただし、[η]が大きすぎると溶解性や紡糸性が悪くなる傾向が見られることから、20dl/g以下であることが好ましい。より好ましい[η]の範囲としては、3〜15dl/gであり、最も好ましくは4〜10dl/gである。
【0019】
ポリケトン溶液を製造するには、先ず、ポリケトンを金属塩水溶液に溶解する。金属塩水溶液は、ポリケトンを溶解する能力のある、亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩、リチウム塩、鉄塩等の中から選ばれた少なくとも1種の水溶液である。亜鉛塩としては、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛等、カルシウム塩としては、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化カルシウム等、チオシアン酸塩としては、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム等、リチウム塩としては、チオシアン酸リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム等、鉄塩としては、臭化鉄、ヨウ化鉄、塩化鉄等がある。
【0020】
ポリケトンの溶解性の向上、コストダウン及びポリケトン溶液の安定性を目的として、上記の塩を複数混合してもかまわない。また、上記の金属塩以外で水に溶解する金属塩を本発明の目的を阻害しない範囲で混合してもよい。
ハロゲン化亜鉛を使用する場合、ハロゲン化アルカリ金属塩又はハロゲン化アルカリ土類金属塩を混合すると、高温で溶解するときのポリマーの着色を低減させ、溶解時の安定性を向上させるので好ましい。ハロゲン化アルカリ金属塩、ハロゲン化アルカリ土類金属塩として、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化リチウム、塩化バリウム、臭化ナトリウム、臭化カルシウム、臭化リチウム、臭化バリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化バリウム等が挙げられるが、特に、塩化ナトリウム、塩化カルシウムが好ましい。
【0021】
金属塩水溶液の塩濃度は50〜80質量%であることが好ましい。50質量%未満の場合、又は80質量%を越える高い塩濃度では、紡糸が不安定になる傾向がある。
塩濃度は、以下の式で定義される値である。
塩濃度(質量%)=[塩の質量/(塩の質量+水の質量)]×100
金属塩水溶液に溶解するポリケトンのポリマー濃度は0.1〜40質量%であることが好ましい。ポリマー濃度が0.1質量%未満では濃度が低すぎて、凝固浴中で繊維状に形成することが困難になる傾向があり、また、繊維の製造コストが高くなる傾向がある。ポリマー濃度が40質量%を越えると、ポリケトンの塩水溶液に対する溶解性が低下する。
【0022】
ポリマー濃度は、以下の式で定義される値である。
ポリマー濃度(質量%)
=[ポリマー質量/(ポリマー質量+金属塩水溶液の質量)]×100得られたポリケトン溶液を、必要に応じて、フィルターで濾過した後、紡口口金から凝固浴へ押し出し、繊維状に成形する。押し出し時のポリケトン溶液の温度と凝固浴の温度の差が大きいときは、紡口を空気中に置いて、紡口口金から出た繊維状物が空気相を経て浴に入る方法、いわゆる、エアギャップ法が好ましい。凝固浴の組成及び温度について特に限定はないが、溶剤の回収コストを下げる点で、溶剤に用いた塩の水溶液であることが好ましい。
【0023】
凝固浴外へ引き上げられた繊維状物を水洗し、必要に応じて、塩酸、硫酸、リン酸等を含んだpHが4以下の水溶液を用いて塩を実質的に除去する。
特に、金属塩水溶液が、塩化カルシウム/塩化亜鉛(質量比は68/32〜61/39)からなる塩を59〜64質量%含んだ水溶液であり、紡口口金から押し出すときのポリケトン溶液の温度が60〜150℃、凝固浴の温度が−50〜20℃で、後述の乾燥工程での単糸膠着率を下げる方法と組み合わせた場合、単糸膠着率を下げる効果が大きくなることに加え、強度を高める効果もあり、好ましい。これらの効果をさらに高める点で、塩カルシウム/塩化亜鉛の質量比は65/35〜63/37、塩濃度は61〜63質量%、ポリケトン溶液の温度は75〜100℃であることがより好ましい。凝固浴の温度は低いほど効果は大きいが、−50℃未満では効果の増加は小さく、冷却コストを考慮に入れると−20〜10℃がより好ましい。
【0024】
次に、繊維に含まれた水を除去するために乾燥を行う。乾燥方法には、特に限定はなく、トンネル型乾燥機、ロール加熱機やネットプロセス型乾燥機等、公知の設備を用い、延伸しながら、定長で、又は収縮させながら乾燥を行うことができる。
この乾燥工程で水分率が0〜40質量%である繊維に単糸間のずれを生ずる外力を加えることにより、単糸膠着率が30%以下のポリケトン繊維を製造することが可能となる。乾燥工程で水分率が0〜40質量%である繊維とは、乾燥機中で水分を除去していく過程で、水分率が0〜40質量%に到達した繊維のことであり、水分率は次式で定義される。
水分率(質量%)
=[(残水繊維質量−乾燥後の繊維質量)/残水繊維質量]×100
【0025】
残水繊維質量とは、単糸間のずれを生ずる外力を加える時点の繊維を5mサンプリングしたときの繊維質量であり、乾燥工程で除去しきれなかった水分を含んだ繊維質量である。乾燥後の繊維質量とは、前記のサンプリングした繊維を105℃で5時間乾燥し、実質的に水分を完全に除去したときの繊維質量である。水分率が40質量%を越える場合、単糸間のずれを生ずる外力を加えたときに、単糸断面が変形したり、繊維に傷が付いたり、たるみが起こる等、高強度化に悪影響を及ぼす原因がつくられ易くなる。この観点から、水分率は低い方が好ましいが、水分率が低くなると単糸膠着が進行して接着力が大きくなるため、単糸間のずれを生ずる外力が大きい方が好ましい。外力を加える方法によって外力の大きさが異なるため、外力を加える方法に依存して好ましい水分率の範囲は異なる。
【0026】
単糸間のずれとは、互いに接触した単糸が離れたり、単糸間の側面に沿って滑ることであり、これにより単糸間の膠着を防いだり、一旦できた膠着を取り除くことができ、単糸膠着率の低いポリケトン繊維となる。
単糸間のずれを生ずる外力としては、繊維をしごくことや繊維に振動を与えることが有効である。具体的には、例えば、走行する繊維を実施例1で図1により具体的に説明するように、繊維をピンガイドやロールに通すことによってしごき、単糸間のずれを生じさせることが可能である。しごく力の大きさは、ピンガイドの数や繊維角をピンガイドの位置で調節することにより設定することができる。この方法による場合の好ましい水分率は5〜20質量%である。
【0027】
また、超音波発生器の上に繊維を走行させて、繊維を振動させることで単糸間のずれを生じさせることも可能である。この方法による場合の好ましい水分率は10〜30質量%である。
更に、走行している繊維に気体を吹きつけることにより単糸間のずれを生じさせることも可能である。圧縮空気、圧縮窒素等を用いて、細孔あるいはスリットから繊維に吹き付けることにより単糸が振動し、単糸間のずれが起こる。振動力の大きさは、細孔又はスリットの数や気体の吹き出し圧力を調整することにより設定することができる。吹き付ける方法として、細孔又はスリットの前後に繊維の振動を固定するためのガイドを設けるか、リングや筒の内側に細孔あるいはスリットを設けるの方法により、気体の吹き付けに伴う繊維の逃げを回避して、気体が繊維に効率的に当たるようにすることが好ましい。この方法の場合の好ましい水分率は0〜20質量%である。この方法が、単糸断面の変形や単糸側面の傷ができにくく、単糸膠着率を下げる効果が高いという観点で、最も好ましい。
【0028】
次いで、この乾燥糸を熱延伸する。延伸温度は100〜300℃であることが好ましい。100℃より低い温度では高強度・高弾性率のポリケトン繊維を得ることが困難であり、300℃を越える温度では延伸時に糸が溶融して糸の切断が起りやすい。延伸のしやすさから150℃以上が好ましく、更に好ましくは180〜280℃である。延伸は1段で行っても、延伸温度を徐々に高くして多段延伸で行ってもかまわないが、延伸倍率を高くできる点及び延伸速度を早くできる点で多段延伸が好ましい。
【0029】
繊維と延伸機との摩擦、静電気の発生を抑制し延伸を円滑にするために、乾燥から延伸の任意の段階で繊維に仕上げ剤を付与することが好ましい。仕上げ剤としては、公知のものが使用できる。熱延伸装置としては、加熱ロール又はプレート上あるいは加熱気体中を走行させる方法や、走行糸にレーザーやマイクロ波、赤外線を照射する等の従来公知の装置をそのまま又は改良して採用することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明を、実施例により具体的に説明するが、それらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例の説明中に用いられる各測定値の測定方法は、次の通りである。
(1)極限粘度
極限粘度[η]は、次の定義式に基づいて求める。
[η]=lim(T−t)/(t・C)
C→0
式中のt及びTは、純度98%以上のヘキサイソプロパノール及びヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間である。Cは上記100ml中のグラム単位による溶質質量値である。
(2)繊維の強度、伸度、弾性率
繊維の強伸度は、JIS−L−1013に準じ、サンプル長=20cm、引張り速度=20cm/分で測定し、10回測定したときの平均値とした。
【0031】
(3)水分率
水分率(質量%)
=[(残水繊維質量−乾燥後の繊維質量)/残水繊維質量]×100
残水繊維質量とは、単糸間のずれを生ずる外力を加える時点の繊維を5mサンプリングしたときの繊維質量であり、乾燥工程で除去しきれなかった水分を含んだ繊維質量である。乾燥後の繊維質量とは、前記のサンプリングした繊維を105℃で5時間乾燥し、実質的に水分を完全に除去したときの繊維質量である。
(4)単糸膠着率
単糸膠着率(%)=[1−(見かけの単糸数/単糸数)]×100
見かけの単糸数は、長さ5mのポリケトン繊維の任意の部分を10cm単位の長さに切断して5本のサンプルを採取し、それぞれのサンプルから単糸をピンセットで1本1本取り出して、膠着して分繊ができない単糸の組は1本として数えたときの平均値である。単糸数は、ポリケトン溶液を凝固浴へ押し出して前記の繊維を製造するのに用いた紡口口金の孔数である。
(5)撚糸強力利用率
撚糸強力利用率(%)=(撚糸後の強力/撚糸前の強力)×100
撚糸後の強度は、張力=0.44cN/dtex(0.5g/d)、撚り数1200回/mの条件で撚糸したものを(2)の方法で測定した。
【0032】
【参考例1】
75質量%の塩化亜鉛と塩化ナトリウムの混合塩(塩化亜鉛/塩化ナトリウムの質量比は87/13)水溶液に、極限粘度が6.0で、実質的に繰り返し単位の100モル%が式(1)で示されるポリケトンを8質量%となるように50℃で混合し、1.33kPaまで減圧した。泡の発生が無くなった後、減圧のまま密閉し、これを80℃で3時間攪拌することにより均一で透明なポリケトン溶液を得た。
【0033】
得られたポリケトン溶液を20μmのフィルターを通過させた後、直径0.15mmの孔が50個ある紡口口金からプランジャー型押出機を用いて、80℃、5m/minの速度で押し出した。エアギャップ長10mmを通過させ、そのまま40℃の水からなる凝固浴中を通した後、5m/minの速度でネルソンロールを用いて引き上げた。次いで、そのネルソンロール上で水を吹きかけて洗浄し、さらに2%の硫酸浴を通してネルソンロールで引き上げた後、ネルソンロール上で水を吹きかけて洗浄した。
【0034】
次いで、220℃のホットプレート上を通した後、図1に示すピンガイドにより繊維をしごく装置に通した。繊維1をピンガイド2、3、4を順次経由して矢印の方向に通し、そのときの繊維のなす角度θを60℃に設定した。繊維1がこれらのピンガイドを通過する際に繊維にしごきが加えられる。この繊維を、さらに220℃ホットプレート上を通して巻き取った。最初のホットプレート通過後の繊維の水分率は15質量%であり、2回目のホットプレート通過後の繊維の水分率は0質量%であった。この繊維をホットプレート上を通過させながら、225℃で7倍、240℃で1.5倍、250℃で1.4倍、257℃で1.4倍の延伸を行い、ポリケトン繊維を製造した。
【0035】
得られた繊維の物性は、繊度=72.2dtex、強度=14.2cN/dtex、伸度=4.4%、弾性率=362cN/dtexであり、単糸膠着率は22%であった。撚糸強力利用率は68%で良好であった。
【0036】
【参考例2】
図1の装置を、図2及び図3に示し装置に変更した以外は、参考例1と同じ条件でポリケトン繊維を製造した。図2は、細孔により繊維に圧縮空気を吹き付ける装置の平面図、図3は図2の装置のAーB線における断面図である。繊維1をガイド5、導糸口7、ガイド6を順次通し、矢印の方向に繊維1が通過する際に、圧縮空気9を細孔8から繊維1に吹き付けることにより単糸を振動させ、単糸間のずれを起こさせた。
【0037】
得られた繊維の物性は、繊度=72.2dtex、強度=14.9cN/dtex、伸度=4.6%、弾性率=353cN/dtexであり、単糸膠着率は14%であった。撚糸強力利用率は71%で良好であった。
【0038】
【実施例3】
62質量%の塩化カルシウムと塩化亜鉛の混合塩(塩化カルシウム/塩化亜鉛の質量比は64.5/35.5)水溶液に、極限粘度が5.7で、実質的に繰り返し単位の100モル%が式(1)で示されるポリケトンを7質量%となるように30℃で混合し、1.33kPaまで減圧した。泡の発生が無くなった後、減圧のまま密閉し、これを90℃で2時間攪拌することにより均一で透明なポリケトン溶液を得た。
【0039】
得られたポリケトン溶液を20μmのフィルターを通過させた後、直径0.15mmの孔が50個ある紡口口金からプランジャー型押出機を用いて、80℃、5m/minの速度で押し出し、エアギャップ長10mmを通過させ、そのまま2℃の水である凝固浴中を通した後、5m/minの速度でネルソンロールを用いて引き上げた。次いで、そのネルソンロール上で水を吹きかけて洗浄し、さらに、2%の硫酸浴を通してネルソンロールで引き上げた後、ネルソンロール上で水を吹きかけて洗浄した。
【0040】
次いで、200℃のホットプレート上を通した後、参考例1と同様に図1に示す装置に繊維を通してしごき、220℃ホットプレート上を通して巻き取った。最初のホットプレート通過後の繊維の水分率は10質量%であり、2回目のホットプレート通過後の繊維の水分率は0質量%であった。この繊維をホットプレート上を通過させながら、225℃で7倍、240℃で1.5倍、250℃で1.4倍、257℃で1.3倍の延伸を行い、ポリケトン繊維を製造した。
【0041】
得られた繊維の物性は、繊度=67.8dtex、強度=17.8cN/dtex、伸度=4.9%、弾性率=459cN/dtexであり、単糸膠着率は10%であった。撚糸強力利用率は76%で良好であった。
【0042】
【実施例4】
図1の装置を、図2及び図3に示した装置に変更した以外は、実施例3と同じ条件でポリケトン繊維を製造した。
得られた繊維の物性は、繊度=68.9dtex、強度=17.7cN/dtex、伸度=5.0%、弾性率=441cN/dtexであり、単糸膠着率は0%であった。撚糸強力利用率は80%で良好であった。
【0043】
【実施例5】
図2及び図3に示す装置を2回目のホットプレート通過後に設置した(すなわち繊維の水分率は0質量%)以外は、実施例4と同じ条件でポリケトン繊維を製造した。
得られた繊維の物性は、繊度=67.8dtex、強度=18.4cN/dtex、伸度=5.0%、弾性率=444cN/dtexであり、単糸膠着率は0%であった。撚糸強力利用率は82%で良好であった。
【0044】
【比較例1】
図1の装置を用いない以外は参考例1と同じ方法で行い、ポリケトン繊維を製造した。
得られた繊維の物性は、繊度=73.3dtex、強度=14.3cN/dtex、伸度=4.3%、弾性率=379cN/dtexであり、単糸膠着率は70%であった。撚糸強力利用率は52%と、低い値であった。
【0045】
【比較例2】
図1の装置を用いない以外は実施例3と同じ方法で行い、ポリケトン繊維を製造した。
得られた繊維の物性は、繊度=68.9dtex、強度=17.8cN/dtex、伸度=4.8%、弾性率=450cN/dtexであり、単糸膠着率は50%であった。撚糸強力利用率は61%と、低い値であった。
【0046】
【比較例3】
参考例1において最初のホットプレートの温度を150℃としたところ、水分率は48%ととなった。これ以外は参考例1と同じ方法でポリケトン繊維を製造した。
得られた繊維の物性は、繊度=72.2dtex、強度=13.4cN/dtex、伸度=4.2%、弾性率=379cN/dtexであり、単糸膠着率は44%であった。撚糸強力利用率は55%と、低い値であった。
【0047】
参考例1、参考例2、実施例〜5及び比較例1〜3の製造条件及び得られた繊維の性能を表1及び2にまとめて示す。
【0048】
【表1】
Figure 0004566422
【0049】
【表2】
Figure 0004566422
【0050】
【発明の効果】
本発明により、高い強度、弾性率を維持し、撚糸後の強力保持率が高いポリケトン繊維が提供される。この繊維は、本発明の方法により、低毒性、不燃、安価で、溶剤回収性、紡糸安定性に優れた溶剤を用いて製造することが可能である。
本発明によって得られたポリケトン繊維は、撚糸時後の強力保持率が高いため、タイヤコード、ベルトなどのゴム補強材における耐疲労性が特に必要な分野への展開が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリケトン繊維を製造する際に、ピンガイドにより繊維をしごく装置の断面図
【図2】本発明のポリケトン繊維を製造する際に、細孔により繊維に圧縮空気を吹き付ける装置の平面図
【図3】本発明のポリケトン繊維を製造する際の、図2の装置のAーB線における断面図
【符号の説明】
1 繊維
2 ピンガイド
3 ピンガイド
4 ピンガイド
5 ガイド
6 ガイド
7 導糸口
8 細孔
9 圧縮空気

Claims (3)

  1. 以下のステップ:
    繰り返し単位の95モル%以上が下記式(1):
    Figure 0004566422
    で示されるポリケトンを金属塩水溶液に溶解し、
    得られた溶液を、紡口口金から、−20〜2℃の凝固浴へ押し出し、
    得られた繊維状物を水洗して前記の金属塩を実質的に除去し、
    乾燥し、そして
    繊維を熱延伸する、
    を含むポリケトン繊維の製造法において、前記乾燥ステップにおいて、水分率が0〜
    40質量%にある繊維に、単糸間のずれを生ずる外力を加えることを特徴とするポリケトン繊維の製造方法。
  2. 前記単糸間のずれを生ずる外力が、気体を吹きつけることにより加えられる、請求項に記載のポリケトン繊維の製造方法。
  3. 前記ポリケトンの金属塩水溶液が、塩化カルシウム/塩化亜鉛(質量比は68/32〜61/39)からなる塩を59〜64質量%含んだ水溶液であり、そして紡口口金から押し出すときのポリケトン溶液の温度が60〜150℃である、請求項又はに記載のポリケトン繊維の製造方法。
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