JP2001207330A - ポリケトン繊維の製造方法 - Google Patents

ポリケトン繊維の製造方法

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JP2001207330A
JP2001207330A JP2000019961A JP2000019961A JP2001207330A JP 2001207330 A JP2001207330 A JP 2001207330A JP 2000019961 A JP2000019961 A JP 2000019961A JP 2000019961 A JP2000019961 A JP 2000019961A JP 2001207330 A JP2001207330 A JP 2001207330A
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spinning
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polymer
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Tatsu Taniguchi
龍 谷口
Toru Morita
徹 森田
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Asahi Kasei Corp
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 ハロゲン化亜鉛を溶剤とする湿式紡糸法にお
いて高強度、高弾性率で高均質のポリケトン繊維を得る
ためのドープの組成及び紡糸条件を決定すること。 【解決手段】 オレフィンと一酸化炭素が共重合してな
るポリケトンポリマーを、ハロゲン化亜鉛を15〜80
重量%含有する溶剤に溶解したドープを、紡糸口金より
凝固浴中に吐出して湿式紡糸する際に、ポリケトンポリ
マーの極限粘度を[η](dl/g)、ドープ中のポリ
ケトンポリマー濃度をPC(重量%)、紡糸時のドープ
温度をT(℃)としたときに、[η]、PC、Tから以
下の式1により表される紡糸性パラメーターKが100
≦K≦50000の範囲内で紡糸を行う。 K=1×10-9×[η]3.9 ×PC4.9 ×e
(4200/(T+273))・・・(式1) ただし、式中eはNapier数であり、[η]、P
C、Tは以下の式の範囲内である。 1 ≦ [η] ≦ 20 2 ≦ PC ≦ 30 50 ≦ T ≦ 130

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高強度・高弾性
率、高耐熱性の優れた機械的・熱的特性および優れた均
質性を有するポリケトン繊維を安定かつ効率的に製造す
る方法に関する。さらに詳しくは、ハロゲン化亜鉛を溶
剤とするポリケトン繊維の湿式紡糸プロセスにおいて、
凝固工程および乾燥工程、延伸工程において紡口詰ま
り、毛羽や糸切れ等の工程上の不具合が少ない、安定か
つ効率的なポリケトン繊維の製造方法に関する。この製
造方法で得られたポリケトン繊維は、高強度、高弾性
率、高耐熱性の優れた機械的特性、熱的特性を有し、さ
らには毛羽や単糸切れ等の欠陥が少ない、繊度ムラが小
さいという優れた均質性を有しており、産業用資材、特
にタイヤコードとして有用である。
【0002】
【従来の技術】近年、一酸化炭素とエチレン、プロペン
のようなオレフィンをパラジウムやニッケルを触媒とし
て重合させることにより、一酸化炭素とオレフィンが実
質完全に交互共重合した脂肪族ポリケトンポリマーが得
られることが見いだされ(工業材料、12月号、第5ペ
ージ、1997年)、以後ポリケトンポリマーの繊維化
の検討が行われている。
【0003】ポリケトン繊維は、従来のポリオレフィン
繊維に比べて融点が高く、また高強度・高弾性率の繊維
が得られることが知られており、この優れた物性を活か
して産業用資材、土木用資材、生活資材、衣料用途など
幅広い用途への展開が検討されている。中でも高強度、
高弾性率の優れた機械的特性と高融点の熱的特性を活か
して産業用資材用途、特にタイヤコード用途への展開が
期待されている。これまで高強度、高弾性率のポリケト
ン繊維の製造については、溶融紡糸法や有機・無機溶液
を溶剤とする湿式紡糸法が開示されている。 しかしな
がら、これらの公知の製造方法は、いずれも得られるポ
リケトン繊維の性能や安全性、製造コストに大きな問題
があった。例えば、特開平1−124617号公報、P
olym.Prepr.(Am.Chem.Soc.,
Div.Polym.Chem.),36,1,291
−292、Prog.Polym.Sci.,Vol.
22,8,1547−1605(1997)等に開示さ
れている溶融紡糸法ではポリケトンの熱架橋が起こるた
め、エチレン/一酸化炭素にプロペンを共重合して融点
を230℃以下まで低くしなければ紡糸が出来なかっ
た。しかしながらこれら共重合によって、ポリケトン繊
維の融点が低下し耐熱性が悪くなる問題、高弾性率の繊
維が得られない、などの問題があった。
【0004】また、エチレン/一酸化炭素が交互共重合
した高融点のポリケトンポリマーを用いた湿式紡糸方法
については、特開平2−112413号公報、特表平4
−505344号公報、特開平2−112413号公
報、特開平4−228613号公報、特表平7−508
317号公報、特表平8−507328号公報などに、
m−クレゾール、レゾルシン/水、フェノール/アセト
ン、ヒドロキノン/プロピレンカーボネート、レゾルシ
ン/プロピレンカーボネート等を溶剤とする方法が開示
されている。この製造法では高強度・高弾性率で高融点
の繊維を得ることは出来るものの、溶剤に毒性や爆発性
があるなどして安全性、取り扱い性に問題があり、また
製造コストが極めて高価で、実用的な製造法ではなかっ
た。
【0005】これらの製造法に対して、実用的な湿式紡
糸方法として、米国特許5955019号明細書、WO
9918143号公開パンフレットではアルカリ金属や
アルカリ土類金属、塩化亜鉛などの金属塩を含む溶液に
ポリケトンポリマーを溶解し繊維を製造する技術が開示
されている。しかしながらこの特許文献では、これら溶
剤を用いたドープから安定かつ効率的に湿式紡糸を行う
要件およびその組み合わせについては一切開示されてい
ない。
【0006】例えば、WO9918143号公開パンフ
レットでは実施例9および実施例10においてポリケト
ンポリマーを塩化亜鉛水溶液に溶解し湿式紡糸を行う方
法(ポリマーの極限粘度が1.75、ポリマー濃度が約
1.5重量%および7重量%)が例示されているが、こ
の極限粘度、ポリマー濃度の組み合わせではドープの曳
糸性が極めて乏しく長時間安定して紡糸することが困難
である。また、得られる凝固糸も脆く強度が低いため次
の乾燥工程、延伸工程で毛羽や糸切れ等の工程上のトラ
ブルが多発するばかりか、得られるポリケトン繊維も毛
羽が多く、また繊度ムラの大きい不均質なものであり、
高品位のポリケトン繊維を安定して製造することは極め
て困難であった。さらには、これらの発明で開示されて
いるポリマー粘度、ポリマー濃度の組み合わせのドープ
は曳糸性に乏しいため、エアーギャップ紡糸法では紡糸
することが出来ず、紡糸口金から直接凝固浴にドープを
吐出するいわゆる浸漬紡糸法でしか紡糸が出来ない。し
かしながら、浸漬紡糸法では長時間の紡糸によって紡口
ノズルに塩化亜鉛が水と反応して不溶化した亜鉛塩が析
出し、紡口詰まりが発生したり、毛羽や単糸切れ等の工
程上のトラブルが多発するばかりか、得られるポリケト
ン繊維も毛羽が多く、また、繊度ムラの大きい不均質な
ものとなる。また、これらの特許で開示されているポリ
ケトン繊維は、融点が220℃のエチレン/プロピレン
/一酸化炭素のターポリマーを用いたものであるが、こ
の繊維は融点が低く耐熱性に問題があり、また、弾性率
が170cN/dtexと低く、産業用資材用途、特に
タイヤコードとしては全く不十分な性能であった。以上
のように高強度、高弾性率の優れた力学特性および高融
点で優れた熱特性、高い均質性を有し、産業用繊維、特
にタイヤコードに適したポリケトン繊維を、安全かつ安
価に、そして紡口詰まりや、毛羽、糸切れ等の工程上の
不具合なく安定かつ効率的に製造する方法については一
切知られていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らはハロゲン
化亜鉛を溶剤とするポリケトン繊維の湿式紡糸製造方法
において、高強度・高弾性率で優れた均質性を有するポ
リケトン繊維を安定かつ効率的に製造するための条件を
鋭意検討した結果、ポリケトンドープの組成および紡糸
条件を適正な範囲内に制御することが極めて重要である
ことを見いだした。すなわち、本発明の課題はハロゲン
化亜鉛を溶剤とする湿式紡糸法において高強度、高弾性
率で高均質のポリケトン繊維を得るためのドープの組成
および紡糸条件を決定することである。具体的には、ハ
ロゲン化亜鉛溶剤を用いた湿式紡糸方法により製造した
ポリケトン繊維において、強度10cN/dtex以
上、弾性率200cN/dtex以上、融点240℃以
上であり毛羽や単糸切れ等の欠陥が少ない均質で高性能
のポリケトン繊維を、工程上の不具合なく安定かつ効率
的に製造するためのポリケトンポリマーの極限粘度、ド
ープ中のポリマー濃度、および紡糸温度の組み合わせを
決定することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、オレフィンと
一酸化炭素が共重合してなるポリケトンポリマーを、溶
質として少なくともハロゲン化亜鉛を15〜80重量%
含有する溶剤に溶解したドープを、紡糸口金より凝固浴
中に吐出して湿式紡糸することを特徴とするポリケトン
繊維の製造方法において、ポリケトンポリマーの極限粘
度を[η](dl/g)、ドープ中のポリケトンポリマ
ー濃度をPC(重量%)、紡糸時のドープ温度をT
(℃)としたときに、[η]、PC、Tから以下の式1
により表される紡糸性パラメーターKが100≦K≦5
0000の範囲内で紡糸を行うことを特徴とするポリケ
トン繊維の製造方法である。 K=1×10-9×[η]3.9 ×PC4.9 ×e(4200/(T+273))・・・(式1) ただし、式中eはNapier数であり、[η]、P
C、Tは以下の式の範囲内である。 1 ≦ [η] ≦ 20 2 ≦ PC ≦ 30 50 ≦ T ≦ 130
【0009】本発明に用いるポリケトンポリマーは、オ
レフィンと一酸化炭素の共重合ポリマーである。強度・
弾性率などの機械的特性、耐熱性、耐湿熱性、接着性の
観点からエチレンと一酸化炭素が結合した1−オキソト
リメチレンを主たる繰り返し単位とするポリマーが好ま
しい。繰り返し単位中の1−オキソトリメチレンの割合
は、多ければ多いほど高融点、高力学物性の繊維が得ら
れるため97重量%以上であることが好ましく、特に1
00重量%が1−オキソトリメチレンであることが好ま
しい。
【0010】オレフィンと一酸化炭素が結合した繰り返
し単位同士は、部分的にケトン基同士、オレフィン同士
がつながっていてもよいが、90重量%以上がオレフィ
ンと一酸化炭素が交互に配列したポリケトンポリマーで
あることが望ましい。耐光性、耐熱性、高温時の物性の
低下の観点からオレフィンと一酸化炭素が交互に配列し
た部分の含有率は多ければ多いほどよく、好ましくは9
7重量%以上、最も好ましくは100重量%である。ま
た、必要に応じてプロペン、ブテン、ヘキセン、シクロ
ヘキセン、ペンテン、シクロペンテン、オクテン、ノネ
ン等のエチレン以外のオレフィンやメチルメタクリレー
ト、酢酸ビニル、アクリルアミド、ヒドロキシエチルメ
タクリレート、スチレン、スチレンスルホン酸ナトリウ
ム、アリルスルホン酸ナトリウム、ビニルピロリドン、
塩化ビニル等の不飽和炭化水素を有する化合物を共重合
してもよい。
【0011】本発明に用いるドープは、ポリケトンポリ
マーを溶質としてハロゲン化亜鉛を15〜80重量%含
有する溶剤に溶解したドープである。なお、本発明にお
いてドープとは、ポリケトンポリマーを溶剤に溶解させ
たポリマー溶液を指す言葉である。また、ここで言うハ
ロゲン化亜鉛の濃度は、以下の式で定義される値であ
る。溶剤の重量は、ポリケトンは含まず、ハロゲン化亜
鉛を含んだ溶液の重量を示す。 ハロゲン化亜鉛の濃度=ハロゲン化亜鉛の重量/溶剤の
重量 ×100 (重量%)
【0012】ハロゲン化亜鉛としては、塩化亜鉛、臭化
亜鉛、よう化亜鉛等が挙げられ、溶解性、コスト、溶液
の安定性の点から塩化亜鉛を主成分とする溶剤が好適に
用いられる。溶剤であるハロゲン化亜鉛の濃度は、好ま
しくは20〜80重量%、より好ましくは50〜75重
量%である。また、ハロゲン化亜鉛を溶解せしめる溶液
としては、ハロゲン化亜鉛を溶解可能な液体であれば特
に制限はなく、通常は極性溶液が用いられ、溶解性、取
り扱い性、安全性、回収コストの観点から水、メタノー
ルが好適に用いられる。
【0013】本発明のポリケトン繊維の紡糸方法は、ポ
リケトンハロゲン化亜鉛ドープを紡糸口金から吐出し、
引き続き凝固浴中で糸条に凝固する湿式紡糸法である。
ポリケトン繊維の湿式紡糸法法には紡糸口金吐出面が凝
固浴と接触しており、凝固浴から吐出したポリマードー
プが直接凝固浴中に入る浸漬紡糸法と紡糸口金吐出面が
凝固浴と接触しておらず、紡糸口金から吐出されたドー
プが一旦気体中を通過した後に凝固浴中に射出されるエ
アーギャップ紡糸法があるが、本発明の製造方法はその
いずれの紡糸法を採用してもよい。浸漬紡糸法では高強
度・高弾性率の繊維を製造することは出来るが、長時間
の紡糸を行った場合、浸透圧によって凝固浴の液体が紡
口内部に浸透し、紡口ノズル孔周辺やノズル壁面でポリ
ケトンポリマーの凝固・析出が発生し、吐出不良やノズ
ル詰まりが発生することがあるため、エアーギャップ紡
糸法が好適に用いられる。また、エアーギャップ紡糸法
では、ドープの吐出温度と凝固浴温度をそれぞれ独立し
た温度に維持出来るため、凝固速度を任意に制御するこ
とが可能となり好ましい。
【0014】本発明者らは、これらの湿式紡糸法でポリ
ケトン繊維を紡糸するに際して特にポリケトンポリマー
の極限粘度およびドープ中のポリマー濃度、紡糸時のド
ープ温度が非常に重要であり、これらの因子から計算さ
れる紡糸性パラメーターKを一定の範囲内に制御した場
合に、均質で高性能のポリケトン繊維を毛羽や糸切れ等
の工程上の不具合なく安定して製造可能となることを見
いだした。具体的には、ポリケトンポリマーの極限粘度
を[η](dl/g)、ドープ中のポリケトンポリマー
濃度をPC(重量%)、紡糸時のドープ温度をT(℃)
としたときに、[η]、PC、Tから以下の式1により
表される紡糸性パラメーターKが100≦K≦5000
0の範囲内で紡糸を行うことを特徴とするポリケトン繊
維の製造方法である。 K=1×10-9×[η]3.9 ×PC4.9 ×e(4200/(T+273))・・・(式1) ただし、式中eはNapier数であり、[η]、P
C、Tは以下の式の範囲内である。 1 ≦ [η] ≦ 20 2 ≦ PC ≦ 30 50 ≦ T ≦ 130
【0015】紡糸性パラメーターKは、ドープの曳糸性
を表す指標でエアーギャップ部や凝固浴中での曳糸性
(紡糸性)を表すパラメーターである。この値が100
未満である場合、ドープ中のポリマー同士の凝集力が低
いために曳糸性に乏しく、紡糸口金より吐出された糸条
はエアーギャップ部にて表面張力によって破断したり、
凝固浴中で浴抵抗により切断したりして、連続した糸条
として紡糸することが困難となる。Kの値が高ければ高
いほどドープ中のポリマー分子鎖同士の絡み合いが強固
で凝集力が強いため、曳糸性に優れるドープであるが、
Kが50000を超えると紡糸口金を通しての安定した
吐出が困難となる。具体的には、吐出圧力が不安定な波
状となり、吐出されたドープはロープ状にねじれ、太さ
ムラのある不均質な状態となる。このような状態で紡糸
した繊維は、紡糸、延伸時に毛羽、断糸が発生しやす
く、高度の延伸が困難となり高強度の繊維が得られない
ばかりか、最終製品の繊維は、繊度ムラが大きく毛羽も
多い低品位のものとなる。このため、紡糸性パラメータ
ーKの好ましい範囲としては100〜50000、より
好ましくは500〜10000、特に好ましくは100
0〜8000の範囲であることが望ましい。
【0016】本発明における紡糸時のドープ温度Tは5
0〜130℃である。本発明において、紡糸時のドープ
温度とは紡糸口金から吐出される際のドープの温度であ
る。紡糸口金中のドープ温度の測定が困難な場合には、
紡糸口金パック内部あるいは紡糸口金パック入り口のド
ープ温度など、紡糸ノズルに最も近い部分のドープ温度
を紡糸時のドープ温度とする。Tが50℃未満の場合、
溶剤の種類によっては溶剤の塩が析出したり、凝固速度
が速くなりすぎて高強度の繊維が得られなくなる場合が
ある。また、Tが130℃を超える場合、ドープが着色
したり、劣化物が生成する場合がある。このため、Tは
好ましくは50〜130℃、より好ましくは60〜10
0℃の範囲で紡糸することが望ましい。
【0017】本発明に用いるポリケトンポリマーの極限
粘度としては、1〜20であることが望まれる。なお、
極限粘度は本発明実施例に記載した方法により測定され
る。極限粘度が1未満では分子量が低すぎて高強度のポ
リケトン繊維を得ることが困難となるばかりか、凝固糸
の物性(強度・伸度)が低くなるため紡糸時や乾燥時、
延伸時に毛羽や糸切れ等の工程上のトラブルが多発す
る。一方、極限粘度が20を超えるとポリマーの重合に
時間、コストがかかるばかりか、均一な溶解が困難とな
り紡糸性や繊維物性にも悪影響が出る。このため、本発
明に用いるポリケトンポリマーの極限粘度としては、好
ましくは1〜20、より好ましくは2〜10、特に好ま
しくは3〜8であることが望ましい。
【0018】本発明に用いるドープ中のポリケトンポリ
マーの濃度は2〜30重量%である。本発明においてポ
リマー濃度PCは、以下の式により算出される濃度の1
00分率である。 PC = ドープ中のポリマー重量/全ドープ重量 ×
100(重量%) PCが30重量%を超えるとポリマーの均一な溶解が困
難となり、紡糸性、繊維物性に悪影響を及ぼす。一方、
PCが2%未満となると凝固糸が脆い構造となり、凝固
時に糸切れが発生したり、延伸時に毛羽が発生しやすく
なり、高品位の繊維を得ることが困難となる。このた
め、ドープ中のポリマー濃度PCとしては2〜30重量
%が好ましく、より好ましくは5〜20重量%の範囲が
望ましい。
【0019】特に、100≦K≦50000の範囲内で
ポリマーの極限粘度およびポリマー濃度をそれぞれ、2
≦[η]≦10、5≦PC≦20となる組み合わせにし
た場合には、膨潤度が500%以下、伸度が20%以上
の緻密な凝固構造を有する高物性で紡糸性、乾燥特性、
延伸性に優れ、高強度のポリケトン繊維を製造するのに
適した凝固糸が得られるようになり好ましい。なお、本
発明において膨潤度とは、凝固糸を構成する非溶剤の液
体の重量をポリケトンポリマーの重量で除した値の10
0分率で表され、本発明実施例記載の方法により測定さ
れる。
【0020】本発明に用いる溶剤はハロゲン化亜鉛を1
5〜80重量%含有する溶液である。溶剤中の金属塩と
して塩化亜鉛やヨウ化亜鉛等のハロゲン化亜鉛のみを用
いる場合には、溶剤中のハロゲン化亜鉛の濃度が60〜
80重量%であることが望ましい。また、必要に応じて
塩化亜鉛とヨウ化亜鉛、塩化亜鉛とシュウ化亜鉛等の複
数のハロゲン化亜鉛を含有する溶液を溶剤としてもよ
く、その場合には溶剤中にしめるハロゲン化亜鉛の総重
量の割合が60〜80重量%であることが望ましい。溶
剤中の金属塩がハロゲン化亜鉛のみのドープでは、紡糸
性パラメーターKを100≦K≦30000とした場
合、特に、毛羽や糸切れ、繊度ムラ等の不具合なく紡糸
を行うことが可能となり、より好ましくは300≦K≦
10000、特に好ましくは500≦K≦5000とす
ることが望ましい。また、本発明の溶剤中には溶解性向
上、コストダウンやドープの熱安定性向上などを目的と
して、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム
等のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属のハロゲン
化物を60重量%以下で含んでいてもよい。これらの非
溶剤の金属塩とハロゲン化亜鉛の複合塩を含有するドー
プは、ハロゲン化亜鉛のみからなるドープに比べてその
溶液粘度が低く、エアーギャップ紡糸においては、ドー
プ中のポリマー濃度の高い領域、あるいは、ポリマーの
極限粘度のより高い領域での紡糸が可能となり、より高
強度・高弾性率のポリケトン繊維が得られるようにな
る。さらには、複合塩を含有するドープは、ハロゲン化
亜鉛単独のドープに比べて熱安定性にも優れることか
ら、好ましくはアルカリ金属塩を1〜20重量%および
/またはアルカリ土類金属塩を3〜55重量%含有する
溶剤が好ましい。
【0021】アルカリ金属のハロゲン化物としては、塩
化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ヨウ化リ
チウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化リチ
ウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等が挙げられ、ド
ープの安定性、コストの観点から塩化ナトリウム、塩化
カリウムが好ましく、塩化ナトリウムが特に好ましい。
また、アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、塩化
カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、ヨウ
化カルシウム、ヨウ化バリウム、臭化カルシウム、臭化
バリウム等が挙げられ、ドープの安定性、コストの観点
から塩化カルシウムが好適に用いられる。
【0022】これらハロゲン化亜鉛とハロゲン化アルカ
リ金属および/またはハロゲン化アルカリ土類金属との
複合塩溶液の溶剤は、ハロゲン化亜鉛単独の場合に比べ
て低ポリマー濃度、および、低極限粘度ポリマーの曳糸
性が低下するが、高ポリマー濃度、高極限粘度ポリマー
領域での紡糸が安定に行えるため、高強度・高弾性率の
ポリケトン繊維の製造に適している。これら複合塩溶剤
を用いる場合、紡糸性パラメーターKを、300≦K≦
50000とすることが好ましい。
【0023】特に、塩化亜鉛を55〜75重量%、塩化
ナトリウムを3〜15重量%含有する溶液および塩化亜
鉛を15〜75重量%、塩化カルシウムを5〜55重量
%含有する溶液を溶剤とするドープは、高ポリマー濃
度、高極限粘度のポリマーを含有するドープの熱安定
性、曳糸性に優れ、高強度・高弾性率のポリケトン繊維
を安定して製造する方法として好適に用いられる。この
場合、紡糸性パラメーターKを300≦K≦30000
の範囲にした場合、毛羽や糸切れ、繊度ムラ等の不具合
なく紡糸を行うことが可能となり、より好ましくは50
0≦K≦10000、特に好ましくは1000≦K≦8
000とすることが望ましい。また、本発明に用いるド
ープは溶解性を阻害しない範囲でポリケトンポリマーお
よび溶剤に用いる塩以外に、その他の無機物、有機物を
10重量%以下で含んでいてもよい。
【0024】紡糸口金の径およびノズル長、形状につい
ては特に制限はなく従来公知のものをそのままあるいは
修正して用いることが出来る。一般的な用途に用いる紡
口としては例えば、紡口径は0.01〜10mm、ノズ
ル長は紡口径の0.1〜20倍、紡口形状としては丸
型、三角型、楕円型、星形、X型やY型などのアルファ
ベット型などが挙げられる。タイヤコードやベルト等の
産業用資材用途では、丸形紡口で紡口径0.05〜2m
m、ノズル長は紡口径の0.5〜5倍程度のものが好適
に用いられる。
【0025】エアーギャップ部分の気体の組成について
は特に制限はなく、空気、窒素、水蒸気、ヘリウム、ア
ルゴン等どのようなものを用いても良いが、コスト、取
り扱い性から空気、窒素、水蒸気が好適に用いられ、安
全性の面から空気が特に望ましい。エアーギャップ部の
気体の温度については特に制限はなく、必要に応じて加
熱、冷却した気体を用いてもよいが、操作性、コストの
観点から気体の温度は好ましくは0〜130℃、より好
ましくは10〜60℃の範囲であることが望ましい。エ
アーギャップ部分の長さについても特に制限はないが、
紡糸性、操作性の観点から好ましくは0.1〜1000
mm、より好ましくは1〜100mm、特に好ましくは
2〜50mmとすることが望ましい。
【0026】凝固浴の組成は、特に制限はなくポリケト
ンポリマーを溶解する能力の小さい、あるいは溶解する
能力のない溶液であることが好ましい。凝固性および取
り扱い性、回収性、コストの観点から水を50重量%以
上含有する水性溶液が好適に用いられ、より好ましくは
80重量%以上の水を含有する水溶液であることが望ま
しい。凝固浴の温度としては、−10〜50℃の範囲が
好ましい。また、必要に応じて凝固浴にハロゲン化亜鉛
やハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金
属等の金属塩や硫酸や塩酸等の酸等の化合物を添加して
もよい。
【0027】凝固浴で凝固した糸条は引き続きさらに洗
浄することが推奨される。洗浄には溶剤に用いた亜鉛塩
を溶解する能力を有する液体であればどのようなものを
用いてもよいが、安全性、溶液のコスト、回収のコスト
等を考慮すると、水系の溶液が好ましい。特に、凝固し
た糸状物をpH2〜7の酸性水溶液で洗浄処理すること
で、凝固構造がより緻密で低膨潤度の糸が得られること
を見いだした。酸性水溶液の組成は特に限定されず、硫
酸、塩酸、リン酸、酢酸等の無機・有機の酸を用いるこ
とが出来る。
【0028】亜鉛塩が凝固糸中に残存した場合、凝固糸
の力学物性が低下するばかりか、耐熱性の低下が起こ
り、乾燥や延伸工程での毛羽や糸切れ等の工程上の不具
合が起こりやすく十分な延伸が出来ず延伸糸の物性が不
十分となる。このため、洗浄工程では最終的に糸に含ま
れる亜鉛の残量が、好ましくは金属亜鉛として1000
0ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、特
に好ましくは100ppm以下になるまで繰り返し洗浄
することが望ましい。また、酸性水溶液で洗浄した場合
には、引き続き凝固糸中の酸を洗浄して除去することが
望ましい。凝固糸中に酸が残存した場合乾燥・延伸時に
分子量低下やポリマーの劣化を引き起こし、単糸切れや
毛羽などの工程上の不具合や延伸糸物性が低下する問題
が起こる。酸の除去に用いる液体については酸を溶解可
能な化合物であれば特に制限はないが、安全性、取り扱
い性の観点から20〜80℃の水が好ましい。
【0029】以上のような方法で製造されるポリケトン
凝固糸において、膨潤度が500%以下の凝固糸では、
電子顕微鏡で観察した際の凝固構造が、繊維状のポリマ
ー骨格が三次元的に結合した密なネットワーク構造とな
り、強力が高く、伸度の高い力学的に優れた凝固糸とな
る。該凝固糸は優れた機械的特性を有し、紡糸時および
洗浄時、乾燥時に毛羽や断糸等の工程上の不具合が発生
しにくくなる。また、含有する非溶剤液体の量が少ない
ため、乾燥効率が向上し、より短時間、低エネルギーで
の乾燥が可能となる。一方、凝固糸の膨潤度が500%
を超える場合では、凝固構造は粒子状のポリマー骨格同
士が部分的に接合しただけの疎な構造となり、強力が低
く、低伸度の力学的に脆い凝固糸となる。このような凝
固糸は、紡糸時や洗浄時、あるいは乾燥時に毛羽や断糸
等が発生しやすく、高倍率の延伸を行い高強度、高弾性
率のポリケトン繊維を得ることが困難となる。また、凝
固糸中の非溶剤液体の量が多いため乾燥効率が悪くなっ
て、より長時間、高エネルギーの乾燥が必要となる。凝
固糸の膨潤度は低ければ低いほど凝固糸の構造は緻密で
力学特性に優れ、紡糸や乾燥・延伸時の工程通過性がよ
く、また乾燥効率に優れ、さらには延伸した際には高性
能の延伸糸が得られるため、好ましくは500%以下、
より好ましくは450%以下、特に好ましくは400%
以下であることが望ましい。
【0030】一方、低分子量のポリマーを使用した場合
やポリケトン以外のポリマーをブレンドした場合などに
は、凝固糸の構造が膨潤度が500%以下の緻密な構造
であっても、力学特性が不十分で紡糸時および乾燥、延
伸時に毛羽や断糸が頻発し、高強度、高弾性率のポリケ
トン繊維を安定して製造することが困難となる。凝固糸
の力学特性としては特に伸度が重要であり、該凝固糸の
伸度が20%以上である場合に工程通過性のよく高強
度、高弾性率化が可能な凝固糸が得られる。凝固糸の伸
度は高いほどよく、好ましくは20%以上、より好まし
くは50%以上、特に好ましくは80%以上であること
が望ましい。
【0031】このようにして得られた凝固糸を引き続
き、乾燥、延伸することで高強度、高弾性率のポリケト
ン繊維を得ることが可能となる。凝固糸の加熱方法、乾
燥条件は特に制限はなく、通常常圧下で凝固糸中に残存
する液体の沸点以上の温度に加熱して乾燥される。凝固
糸中の液体が水の場合、乾燥温度としては好ましくは1
20〜260℃、特に好ましくは200〜240℃であ
る。乾燥時には必要に応じて緩和、延伸を同時に行って
もよい。加熱方式、乾燥装置については特に制限はなく
従来公知の方法、装置をそのままあるいは修正して適用
できる。乾燥効率、糸の均一性の観点から加熱固体に接
触するロール接触型、プレート接触型の乾燥機や、加熱
気体に接触するトンネル型乾燥機、あるいはこれらの複
合型の乾燥機を用いた連続乾燥装置が好適に用いられ
る。乾燥温度が高い場合には糸の周囲に窒素等の不活性
気体を流すことが好ましい。乾燥工程ではポリケトン繊
維中の水分率が10重量%以下になるまで行うことが必
要である。ポリケトン繊維中の水分率が10重量%を超
える場合、延伸時に毛羽や糸切れが発生し高倍率の延伸
が出来なくなり、高強度、高弾性率のポリケトン繊維が
得られない。乾燥工程終了後の水分率としては好ましく
は10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、特に
好ましくは3重量%以下となるまで乾燥することが望ま
しい。
【0032】このようにして得られた未延伸糸を引き続
き加熱し、一段あるいは二段以上の多段にて延伸する。
加熱延伸方法としては、加熱したロール上やプレート
上、あるいは加熱気体中を走行させる方法や、走行糸に
レーザーやマイクロ波、遠赤外線を照射する方法等従来
公知の装置、方法をそのままあるいは改良して採用する
ことが出来る。伝熱効率、糸温度の均一性の観点から加
熱ロール、加熱プレート上での延伸が好ましく、ロール
とプレートを併用した延伸法であってもよい。また、ロ
ールやプレートの周囲を密閉し、密閉空間内に加熱気体
を充填するとより温度が均一な延伸が可能となり好まし
い。好ましい延伸温度範囲としては200〜300℃、
さらに好ましくは、融点−50℃〜融点の範囲である。
また、多段延伸を行う場合には延伸段数とともに延伸温
度が徐々に高くなっていく昇温延伸が好ましい。延伸倍
率は好ましくはトータルで5倍以上、より好ましくは1
0倍以上、特に好ましくは15倍以上の倍率で延伸する
ことが望ましい。
【0033】上述のような方法で得られたポリケトン繊
維は、高い強度、弾性率の優れた力学特性と優れた耐熱
性を有している。本発明のポリケトン繊維に望まれる物
性としては、強度は好ましくは10cN/dtex以
上、より好ましくは15cN/dtex以上であること
が望ましい。また、弾性率は好ましくは200cN/d
tex以上、より好ましくは300cN/dtex以上
であることが望ましい。繊維の融点は240℃以上であ
ることが好ましく、より好ましくは250℃以上、特に
好ましくは260℃以上であることが望ましい。またポ
リケトン繊維の単糸繊度およびフィラメント数について
は使用条件、用途によって変化するため特に制限はない
が、好ましくは単糸繊度0.01〜10dtex、フィ
ラメント数2〜10000fの範囲である。また、ポリ
ケトン繊維中には目的に応じて、酸化防止剤、クエンチ
ング剤、ラジカル捕捉剤、重金属不活性化剤、ゲル化抑
制剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、顔料等の添加剤、他の
ポリマー等を含んでいてもよい。
【0034】本発明の紡糸条件で製造したポリケトン繊
維は毛羽や糸切れ等の欠陥が少ない高強度、高弾性率の
力学物性に優れる繊維であるが、さらに糸長方向の繊度
ムラの小さい、均質な繊維である。これは、紡糸口金よ
り吐出されたドープが優れた曳糸性を有しており、高い
張力をかけて伸長、曳糸を行うことができてエアーギャ
ップ部や凝固浴中の空気や液体の揺らぎや変動の影響を
受けにくいため、と考えられる。ポリケトン繊維の均質
度としては、U%で表される糸長方向の繊度ムラが、好
ましくは3%以下、より好ましくは0.1〜2、さらに
好ましくは0.5〜1.5であることが望ましい。
【0035】本発明の製造法で製造された高強度・高弾
性率、高耐熱性で均質なポリケトン繊維は、そのままあ
るいは仮撚り、嵩高加工、捲縮加工、捲回加工などの加
工を施した加工糸として、さらには織物や編み物、ある
いは不織布に加工した繊維製品として用いることが出来
る。なお、本発明において繊維製品とは、本発明のポリ
ケトン繊維のみから構成される糸、中空糸、多孔糸、
綿、紐、編物、織物、不織布およびこれらを使用した衣
類、医療用器具、生活資材、タイヤコード、ベルト、コ
ンクリート補強材料等はもちろんのこと、該ポリケトン
繊維を少なくとも一部に使用した繊維製品が含まれる。
該繊維製品においては、ナイロン6、ナイロン6・6等
のポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリ
プロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレー
ト等のポリエステル繊維、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン等のポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊
維、アラミド繊維、羊毛、ポリアクリロニトリル繊維、
木綿、ビスコースレーヨン等のセルロース繊維などの従
来公知の繊維と複合して用いてもよい。また、同一種の
繊維であっても熱的・機械的特性の異なる繊維、あるい
は繊度やフィラメント数の異なる繊維、または長繊維や
短繊維、紡績糸などを複合して用いてもよい。以上のよ
うな特性を具備するポリケトン繊維はタイヤコードやロ
ープ、エアバッグ、セメント補強材、土木用ネット、漁
網、狩猟用網地、釣り糸などの産業用資材や婦人用衣
料、スポーツ用衣料、ユニフォーム、作業衣などの衣料
用繊維、生活用資材などに幅広く使用することが可能と
なる。
【0036】
【実施例】本発明を、以下の実施例などにより更に詳し
く説明するがそれらは本発明の範囲を限定するものでは
ない。実施例の説明中に用いられる各測定値の測定方法
は次の通りである。 (1)極限粘度 極限粘度[η]は次の定義式に基づいて求められる値で
ある。 [η]=lim(T−t)/(t・C) [dl/g] C→0 定義式中のt及びTは、純度98%以上のヘキサフルオ
ロイソプロパノール及び該ヘキサフルオロイソプロパノ
ールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度
管の流過時間である。また、Cは上記100ml中のグ
ラム単位による溶質重量値である。
【0037】(2)紡糸性 紡糸時間中の凝固浴中での走行糸を観測し、単糸切れお
よび毛羽の発生回数を計測した。単糸切れおよび毛羽の
発生頻度をZ(回/時間)として、以下の基準で紡糸性
を判定した。 ◎: 極めて良好 〜 Z=0 ○: 良好 〜 0<Z≦1 △: まずまず 〜 1<Z≦5 ×: 不良 〜 5 < Z ××: 極めて不良 〜 30分以上連続して巻
き取ることが不可能
【0038】(3)膨潤度 ポリケトン凝固糸を 遠心分離機(KOKUSAN−H
−200:国産遠心器社製)を用いて4500rpmに
て10分間遠心脱水し、繊維表面やフィラメント間に付
着した液体分を取り除く。該凝固糸を105℃で5時間
乾燥し繊維内部の液体分を取り除く。乾燥前後の糸の重
量をそれぞれMa、Mdとして次式より膨潤度を算出し
た。 膨潤度 = (Ma−Md)/Md × 100
(%)
【0039】(4)凝固糸の毛羽率 紡糸時間中の巻き取り機前での凝固糸の毛羽、単糸切れ
の数を目視で計測した。巻き取り速度をV(m/分)、
計測時間をH(分)、計測中の毛羽数をNとして以下の
式より凝固糸100mあたりの毛羽率を求めた。 毛羽率 = N/(V×H) × 100 (個/10
0m) (5)強伸度、弾性率 JIS−L−1013に準じて測定した。
【0040】(6)融点 繊維を長さ5mmにカットしたものを試料とした。パー
キンエルマー社製示差熱測定装置Pyris1を用いて
以下の条件で測定を行った。 サンプル重量 : 1mg 測定温度 : 30℃→300℃ 昇温速度 : 20℃/分 雰囲気 : 窒素、流量=200mL/分 得られる吸発熱曲線において200℃〜300℃の範囲
に観測される最大の吸熱ピークのピークトップ温度を融
点とした。 (7)繊度ムラ(U%) ZellwegerUster(株)社製のUSTER
−TESTER3を用いて測定を行った。測定は50m
/分の速度にて行い、2分間の平均値を用いた。
【0041】
【実施例1】常法により調製したエチレンと一酸化炭素
が完全交互共重合した極限粘度5.3のポリケトンポリ
マーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量
%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解し
ポリマー濃度8重量%のドープを得た。このドープを8
0℃に加温し、20μm焼結フィルターでろ過した後
に、80℃に保温した紡口径0.10mmφ、50ホー
ルの紡口より10mmのエアーギャップを通した後に5
重量%の塩化亜鉛を含有する18℃の水中に吐出量2.
5cc/分の速度で押し出し、速度3.2m/分で曳き
ながら凝固糸条とした。この紡糸条件における紡糸性パ
ラメーターKは2613であった。
【0042】引き続き凝固糸条を濃度2重量%、温度2
5℃の硫酸水溶液で洗浄し、さらに30℃の水で洗浄し
た後に、速度3.2m/分で凝固糸を巻き取った。3時
間の紡糸時間内でエアーギャップ部および凝固浴中での
糸切れは1回も発生せず紡糸性は極めて良好であった。
巻き取られた凝固糸は膨潤度が435%と低くさらに伸
度が129.3%と伸縮性に富む性質であり、凝固糸の
断面構造を電子顕微鏡で観察したところ緻密なネットワ
ーク構造を有するものであった。また、凝固糸には毛
羽、単糸切れは観察されず、欠陥のない均質な糸であっ
た。この凝固糸を220℃にて乾燥後、240℃で1段
目の延伸を行い、引き続き258℃で2段目、268℃
で3段目のトータル延伸倍率17倍の延伸を行った。こ
の延伸糸は、強度15.4cN/dtex、弾性率33
1cN/dtexと高い物性を有しており、U%も1.
75と優れた均質性を有していた。紡糸状態および得ら
れた繊維の性質を下記の実施例2〜18と合わせて表1
にまとめて示す。
【0043】
【実施例2】常法により調製したエチレンと一酸化炭素
が完全交互共重合した極限粘度11.2のポリケトンポ
リマーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重
量%含有する水溶液に添加し、69℃で2時間攪拌溶解
しポリマー濃度3.5重量%のドープを得た。このドー
プを用いて巻き取り速度を12.8m/分とする以外は
実施例1と同様の温度、処方で紡糸を行った。紡糸性は
極めて良好で2時間の紡糸時間中1回も単糸切れ、毛羽
は発生しなかった。この凝固糸を用いて実施例1と同様
の処方で乾燥、延伸を行いトータルで15.5倍の延伸
を行った。
【0044】
【実施例3】常法により調製したエチレンと一酸化炭素
が完全交互共重合した極限粘度1.8のポリケトンポリ
マーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量
%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解し
ポリマー濃度23重量%のドープを得た。このドープを
用いて巻き取り速度を1.6m/分とする以外は実施例
1と同様の温度、処方で紡糸を行った。この紡糸条件に
おける紡糸性パラメーターKは6843であった。紡糸
性はまずまずで1時間の紡糸時間中5回の単糸切れが発
生したが、紡口詰まりや断糸等の重大なトラブルは発生
しなかった。得られた凝固糸は膨潤度175%、伸度
9.5%であった。この凝固糸を用いて実施例1と同様
の処方で乾燥、延伸を行った。
【0045】
【実施例4】常法により調製したエチレンと一酸化炭素
が完全交互共重合した極限粘度2.8のポリケトンポリ
マーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量
%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解し
ポリマー濃度18重量%のドープを得た。このドープを
実施例1と同様の温度、処方で紡糸を行った。この紡糸
条件における紡糸性パラメーターKは11534であっ
た。紡糸性はまずまずで2時間の紡糸時間中、3回の単
糸切れが発生したのみであった。得られた凝固糸は膨潤
度223%、伸度35.9%と優れていた。この凝固糸
を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行った。
【0046】
【実施例5】常法により調製したエチレンと一酸化炭素
が完全交互共重合した極限粘度3.9のポリケトンポリ
マーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量
%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解し
ポリマー濃度12重量%のドープを得た。このドープを
実施例1と同様の温度、処方で紡糸を行った。この紡糸
条件における紡糸性パラメーターKは5759であっ
た。紡糸性は極めて良好で3時間の紡糸時間中、毛羽、
単糸切れは一回も発生しなかった。得られた凝固糸は膨
潤度292%、伸度84.2%と優れていた。この凝固
糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行っ
た。
【0047】
【実施例6】常法により調製したエチレンと一酸化炭素
が完全交互共重合した極限粘度7.8のポリケトンポリ
マーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量
%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解し
ポリマー濃度6.5重量%のドープを得た。このドープ
を実施例1と同様の温度、処方で紡糸を行った。この紡
糸条件における紡糸性パラメーターKは4263であっ
た。紡糸性は極めて良好で3時間の紡糸時間中、毛羽、
単糸切れは一回も発生しなかった。得られた凝固糸は膨
潤度461%、伸度71.3%と優れていた。この凝固
糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行っ
た。
【0048】
【実施例7】常法により調製したエチレンと一酸化炭素
が完全交互共重合した極限粘度9.8のポリケトンポリ
マーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量
%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解し
ポリマー濃度5.5重量%のドープを得た。このドープ
を実施例1と同様の温度、処方で紡糸を行った。この紡
糸条件における紡糸性パラメーターKは4579であっ
た。紡糸性は良好で3時間の紡糸時間中、凝固浴中で2
回の単糸切れが発生したのみであった。得られた凝固糸
は膨潤度497%、伸度64.3%と優れていた。この
凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行
った。
【0049】
【実施例8】常法により調製したエチレンと一酸化炭素
が完全交互共重合した極限粘度12.7のポリケトンポ
リマーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重
量%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解
しポリマー濃度4.5重量%のドープを得た。このドー
プを実施例1と同様の温度、処方で紡糸を行った。この
紡糸条件における紡糸性パラメーターKは4708であ
った。紡糸性はまずまずで2時間の紡糸時間中5回の単
糸切れが発生したのみであった。得られた凝固糸は膨潤
度551%、伸度41.2%と優れていた。この凝固糸
を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行った。
【0050】
【実施例9】実施例1においてドープ中のポリマー濃度
を11.0%とする以外は実施例1と同様の条件で紡糸
を行った。この紡糸条件における紡糸性パラメーターK
は12438であった。紡糸性は極めて良好で3時間の
紡糸時間中一度も単糸切れや毛羽は発生しなかった。得
られた凝固糸は膨潤度358%、伸度133.4%と優
れていた。この凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で
乾燥、延伸を行った。
【0051】
【実施例10】実施例1においてドープ中のポリマー濃
度を14.0%とする以外は実施例1と同様の条件で紡
糸を行った。この紡糸条件における紡糸性パラメーター
Kは40546であった。紡糸性は良好で2時間の紡糸
時間中2回の単糸切れが発生したのみであった。得られ
た凝固糸は膨潤度251%、伸度189.3%と非常に
優れていた。この凝固糸を用いて実施例1と同様の処方
で乾燥、延伸を行った。
【0052】
【実施例11】実施例1において溶剤に塩化亜鉛40重
量%/塩化カルシウム30重量%含有する水溶液を用い
る他は同様の紡糸条件で紡糸を行った。この紡糸条件に
おける紡糸性パラメーターKは2613であった。紡糸
性は極めて良好で3時間の紡糸時間中一度も単糸切れや
毛羽は発生しなかった。得られた凝固糸は膨潤度419
%、伸度138.2%と優れていた。この凝固糸を用い
て実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行った。
【0053】
【実施例12】実施例1において溶剤に塩化亜鉛75重
量%を含有する水溶液を用いる以外は実施例1と同様の
紡糸条件で紡糸を行った。この紡糸条件における紡糸性
パラメーターKは2613であった。紡糸性は極めて良
好で3時間の紡糸時間中で一度も単糸切れや毛羽は発生
しなかった。得られた凝固糸は膨潤度427%、伸度1
18.0%と優れていた。この凝固糸を用いて実施例1
と同様の処方で乾燥、延伸を行った。
【0054】
【実施例13】実施例12においてドープ中のポリマー
濃度を5.5重量%とする以外は同様の紡糸条件で紡糸
を行った。この紡糸条件における紡糸性パラメーターK
は417であった。紡糸性は良好で2時間の紡糸時間中
で1回の単糸切れが発生したのみであった。得られた凝
固糸は膨潤度500%、伸度42.2%と優れていた。
この凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸
を行った。
【0055】
【実施例14】実施例1において紡糸時のドープ温度を
60℃とする以外は同様の紡糸条件で紡糸を行った。こ
の紡糸条件における紡糸性パラメーターKは5338で
あった。紡糸性は極めて良好で2時間の紡糸時間中で1
回も単糸切れや毛羽は発生しなかった。得られた凝固糸
は膨潤度441%、伸度92.5%と優れていた。この
凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行
った。
【0056】
【実施例15】実施例1において紡糸時のドープ温度を
120℃とする以外は同様の紡糸条件で紡糸を行った。
この紡糸条件における紡糸性パラメーターKは778で
あった。紡糸性はまずまずで2時間の紡糸時間中で3回
の単糸切れが発生したのみであった。得られた凝固糸は
膨潤度411%、伸度120.2%と優れていた。この
凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行
った。
【0057】
【実施例16】実施例1においてエアーギャップ部の長
さを25mmとする以外は同様の処方で紡糸を行った。
紡糸性は極めて良好で3時間の紡糸時間中で1回も単糸
切れや毛羽は発生しなかった。得られた凝固糸は膨潤度
429%、伸度133.1%と優れていた。この凝固糸
を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行った。
【0058】
【実施例17】実施例1においてエアーギャップ部をも
うけず、80℃に加温した紡口から5重量%の塩化亜鉛
を含有する35℃の水中に直接ドープを押し出す以外は
同様にして浸漬紡糸を行った。紡糸性はまずまずで3時
間の紡糸中に5回の単糸切れが発生したのみであった。
得られた凝固糸は膨潤度443%、伸度72.5%であ
った。この凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で乾
燥、延伸を行った。
【0059】
【実施例18】常法により、1−オキソ−3−メチルト
リメチレンユニット3重量%、1−オキソトリメチレン
ユニットを97重量%からなるエチレン/プロピレン/
一酸化炭素ターポリマー(極限粘度4.9)を調製し
た。このポリケトンポリマーを、塩化亜鉛65重量%/
塩化ナトリウム10重量%含有する水溶液に添加し、8
0℃で2時間攪拌溶解しポリマー濃度10重量%のドー
プを得た。紡糸性は極めて良好で3時間の紡糸時間中に
一度も単糸切れや毛羽は発生しなかった。このドープを
用いて、実施例1と同様にして紡糸行い凝固糸を得た。
得られた凝固糸は膨潤度382%、伸度42.5%であ
った。この凝固糸を乾燥温度200℃、延伸温度を20
0℃、220℃、230℃の3段でトータル延伸倍率1
3倍の熱延伸を行い延伸糸を得た。
【0060】
【比較例1】常法により、1−オキソ−3−メチルトリ
メチレンユニット3重量%、1−オキソトリメチレンユ
ニットを97重量%からなるエチレン/プロピレン/一
酸化炭素ターポリマー(極限粘度1.8)を調製した。
このポリケトンポリマーを、塩化亜鉛75重量%を含有
する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解しポリマ
ー濃度7重量%のドープを得た。このドープを用いて実
施例1と同様の条件で紡糸を行った。この紡糸条件の紡
糸性パラメーターKは20であった。紡糸性は全く不良
でエアーギャップ部でドープが油滴状に滴下して凝固浴
中で連続した糸条体を得ることが出来なかった。エアー
ギャップ長を1mm、5mm、25mmと変えた場合で
も同様に糸条体を得ることが出来なかった。比較例に用
いたドープの紡糸状態および得られた繊維の性質を下記
の比較例2〜12と合わせて表2にまとめて示す。
【0061】
【比較例2】比較例1で調製したドープを用いて紡糸温
度を60℃とする以外は同様の処方で紡糸を行った。こ
の紡糸条件の紡糸性パラメーターは41であった。比較
例1と同様に紡糸性は全く不良でエアーギャップ部およ
び凝固浴入り口で切断が起こり、連続した糸条体を得る
ことが出来なかった。
【0062】
【比較例3】比較例2においてエアーギャップ部をもう
けず、60℃に加温した紡口から5重量%の塩化亜鉛を
含有する18℃の水中に直接ドープを押し出す以外は同
様にして浸漬紡糸を行った。紡糸性は不良で凝固浴中で
凝固体の切断が起こり連続した糸条として曳きとること
が不可能であったため、一旦ドープの自重により凝固浴
中に糸条体を沈積せしめた後に、速度0.4m/分で長
さ10m分だけ凝固体を曳きとった。この凝固糸は膨潤
度482%、伸度1.8%と極めて脆い糸であったた
め、乾燥機前で凝固糸の破断が起こり実施例1と同様の
条件で乾燥、延伸に供することが出来なかった。
【0063】
【比較例4】比較例1において溶剤の組成を塩化亜鉛6
5重量%/塩化ナトリウム10重量%とする以外は同様
の条件で紡糸を行った。紡糸性は全く不良で、連続した
糸条体を得ることが出来なかった。
【0064】
【比較例5】実施例1において、ドープ中のポリマー濃
度を4.0%とする以外は同様にして紡糸を行った。こ
の紡糸条件における紡糸性パラメーターは88であっ
た。紡糸性は全く不良でエアーギャップ部および凝固浴
入り口で糸の切断が起こり、連続した糸条体を得ること
が出来なかった。
【0065】
【比較例6】比較例5においてエアーギャップ部をもう
けず、80℃に加温した紡口から5重量%の塩化亜鉛を
含有する18℃の水中に直接ドープを押し出す以外は同
様にして浸漬紡糸を行った。紡糸性は不良で紡糸速度
3.2m/分では凝固浴中で凝固体の切断が起こり連続
した糸条として曳きとることが不可能であったため、紡
糸速度を0.8m/分に下げて凝固体を曳きとった。紡
糸性は不良で1時間の紡糸時間中に凝固浴中で12回の
単糸切れが発生した。また、得られた凝固糸は膨潤度5
52%、伸度12.5%と脆い糸であった。この凝固糸
を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行った。
【0066】
【比較例7】実施例1においてドープ中のポリマー濃度
を16.0%とする以外は同様にして紡糸を行った。こ
の紡糸条件における紡糸性パラメーターKは78002
であった。紡糸性は不良で2時間の紡糸時間中に凝固浴
中で14回の毛羽、単糸切れが観測された。また、エア
ーギャップ部を走行する糸条は太細ムラが大きく左右に
振動したため、2時間の紡糸中で2回吐出されたドープ
が紡口に付着して断糸が発生した。得られた凝固糸を実
施例1と同様の処方で乾燥、延伸した。
【0067】
【比較例8】実施例8においてドープ中のポリマー濃度
を2.0重量%とする以外は同様の条件で紡糸を行っ
た。この条件における紡糸性パラメーターKは89であ
った。紡糸性は極めて不良でエアーギャップ部および凝
固浴入り口で断糸が多発し連続した糸条体として曳きと
ることが不可能であった。
【0068】
【比較例9】実施例7においてドープ中のポリマー濃度
を9.0重量%とする以外は同様の条件で紡糸を行っ
た。この条件における紡糸性パラメーターKは5114
6であった。紡糸性は不良で2時間の紡糸時間中に凝固
浴中で13回の毛羽、単糸切れが観測された。また、エ
アーギャップ部を走行する糸条は太細ムラが大きく左右
に振動し吐出されたドープが紡口に付着して断糸が発生
した。得られた凝固糸を実施例1と同様の処方で乾燥、
延伸した。
【0069】
【比較例10】実施例1において紡糸時のドープ温度を
30℃とする以外は同様にして紡糸を行った。紡糸性パ
ラメーターKは18610であった。吐出開始直後から
紡口詰まりが発生し正常な吐出が不能となり紡糸するこ
とが出来なかった。
【0070】
【比較例11】実施例1において紡糸時のドープ温度を
150℃とする以外は同様にして紡糸を行った。紡糸性
パラメーターKは1088であった。紡糸開始直後から
紡口付近に滲みが発生し、紡口より吐出されたドープが
紡口周辺に付着して紡糸不能であった。
【0071】
【比較例12】常法により調製したエチレンと一酸化炭
素が完全交互共重合した極限粘度0.9のポリケトンポ
リマーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重
量%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解
しポリマー濃度35重量%のドープを得た。このドープ
を実施例1と同様の温度、処方で紡糸を行った。この紡
糸条件における紡糸性パラメーターKは3587であっ
た。紡糸性は不良で紡糸速度3.2m/分では凝固浴中
で凝固体の切断が起こり連続した糸条として曳きとるこ
とが不可能であったため、一旦ドープの自重により凝固
浴中に糸条体を沈積せしめた後に、速度0.2m/分で
長さ10mだけ凝固体を曳きとった。この凝固糸は膨潤
度154%、伸度0.9%と極めて脆い糸であったた
め、乾燥機前で凝固糸の破断が起こり実施例1と同様の
条件で乾燥、延伸に供することが出来なかった。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】 なお、50℃、80℃、130℃における本発明の製造
法における適正範囲(100≦K≦50000)を図示
すると、夫々図1(50℃)、図2(80℃)、図3
(130℃)の斜線部分となる。
【0074】
【発明の効果】本発明のポリマーの極限粘度、ドープ中
のポリマー濃度、紡糸温度の組み合わせを適正な範囲内
とする紡糸方法によって、優れた機械的・熱的特性およ
び優れた均質性を有するポリケトン繊維を、凝固工程お
よび乾燥工程、延伸工程において紡口詰まり、毛羽や糸
切れ等の工程上の不具合なく、安定かつ効率的に製造す
ることが可能となる。この製造方法によって、高強度、
高弾性率、高耐熱性の優れた機械的特性、熱的特性を有
し、さらには毛羽や単糸切れ等の欠陥が少ない、繊度ム
ラが小さいという優れた均質性を有する、産業用資材、
特にタイヤコードとして有用なポリケトン繊維を安定か
つ安価に提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】50℃における本発明の製造法における適正範
囲(100≦K≦50000)を説明する図である。
【図2】80℃における本発明の製造法における適正範
囲(100≦K≦50000)を説明する図である。
【図3】130℃における本発明の製造法における適正
範囲(100≦K≦50000)を説明する図である。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 オレフィンと一酸化炭素が共重合してな
    るポリケトンポリマーを、溶質として少なくともハロゲ
    ン化亜鉛を15〜80重量%含有する溶剤に溶解したド
    ープを、紡糸口金より凝固浴中に吐出して湿式紡糸する
    ことを特徴とするポリケトン繊維の製造方法において、
    ポリケトンポリマーの極限粘度を[η](dl/g)、
    ドープ中のポリケトンポリマー濃度をPC(重量%)、
    紡糸時のドープ温度をT(℃)としたときに、[η]、
    PC、Tから以下の式1により表される紡糸性パラメー
    ターKが100≦K≦50000の範囲内で紡糸を行う
    ことを特徴とするポリケトン繊維の製造方法。 K=1×10-9×[η]3.9 ×PC4.9 ×e(4200/(T+273))・・・(式1) ただし、式中eはNapier数であり、[η]、P
    C、Tは以下の式の範囲内である。 1 ≦ [η] ≦ 20 2 ≦ PC ≦ 30 50 ≦ T ≦ 130
  2. 【請求項2】 請求項1記載のポリケトン繊維の製造方
    法において、紡糸口金より吐出されたドープが、一旦長
    さ0.1〜100mmのエアーギャップ部を経て凝固浴
    に入る工程を含むことを特徴とする請求項1記載のポリ
    ケトン繊維の製造方法。
  3. 【請求項3】 ポリケトンポリマードープがハロゲン化
    亜鉛以外に少なくともハロゲン化アルカリ金属を1〜2
    0重量%、および/または、ハロゲン化アルカリ土類金
    属を3〜55重量%含有する溶液を溶剤とするドープで
    あり、かつ、紡糸性パラメーターKが以下の式の範囲に
    て紡糸することを特徴とする請求項1または請求項2に
    記載のポリケトン繊維の製造方法。 300 ≦ K ≦ 50000
  4. 【請求項4】 ポリケトンポリマードープが塩化亜鉛を
    55〜75重量%、塩化ナトリウムを3〜15重量%含
    有する溶液を溶剤とするドープであり、かつ、紡糸性パ
    ラメーターKが以下の式の範囲にて紡糸することを特徴
    とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリケトン繊維
    の製造方法。 300 ≦ K ≦ 30000
  5. 【請求項5】 ポリケトンポリマードープが塩化亜鉛を
    15〜75重量%、塩化カルシウムを5〜55重量%含
    有する溶液を溶剤とするドープであり、かつ、紡糸性パ
    ラメーターKが以下の式の範囲にて紡糸することを特徴
    とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリケトン繊維
    の製造方法。 300 ≦ K ≦ 30000
  6. 【請求項6】 ポリケトンポリマードープが塩化亜鉛を
    60〜80重量%含有する溶液を溶剤とするドープであ
    り、かつ、紡糸性パラメーターKが以下の式の範囲にて
    紡糸することを特徴とする請求項1または2のいずれか
    に記載のポリケトン繊維の製造方法。 100 ≦ K ≦ 30000
  7. 【請求項7】 ドープ中のポリケトンポリマーの極限粘
    度およびポリマー濃度がそれぞれ、以下の式の範囲で紡
    糸することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載
    のポリケトン繊維の製造方法。 2 ≦ [η] ≦ 10 5 ≦ PC ≦ 20
  8. 【請求項8】 ポリケトンポリマーを構成する繰り返し
    単位の97重量%以上が1−オキソトリメチレンからな
    ることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポ
    リケトン繊維の製造方法。
  9. 【請求項9】 ポリケトンポリマーを構成する繰り返し
    単位が1−オキソトリメチレンのみからなることを特徴
    とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリケトン繊維
    の製造方法。
  10. 【請求項10】 凝固浴にて凝固したポリケトン凝固糸
    条を、水分率が10重量%以下になるまで乾燥を行った
    後に、少なくとも5倍以上の熱延伸を行う工程を含むこ
    とを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のポリケ
    トン繊維の製造方法。
  11. 【請求項11】 引っ張り強度が10cN/dtex以
    上、初期弾性率が200cN/dtex以上、長さ方向
    の繊度ムラが2%以下であることを特徴とするポリケト
    ン繊維。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003082542A (ja) * 2001-09-04 2003-03-19 Asahi Kasei Corp 紡績糸
KR20160139395A (ko) * 2015-05-27 2016-12-07 주식회사 효성 폴리케톤 섬유로 이루어지는 부직포 및 이의 제조방법

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