JP2001055622A - ポリケトンドープおよび繊維およびその製造方法 - Google Patents

ポリケトンドープおよび繊維およびその製造方法

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JP2001055622A
JP2001055622A JP11227035A JP22703599A JP2001055622A JP 2001055622 A JP2001055622 A JP 2001055622A JP 11227035 A JP11227035 A JP 11227035A JP 22703599 A JP22703599 A JP 22703599A JP 2001055622 A JP2001055622 A JP 2001055622A
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fiber
polyketone
dope
solvent
polymer
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Tatsu Taniguchi
龍 谷口
Jinichiro Kato
仁一郎 加藤
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 特定の構造の繰り返し単位を0.1〜3
モル%含有するポリケトンを、ハロゲン化亜鉛の水溶液
溶媒に溶解したポリケトンドープ、および該ドープから
得られた繊維並びにその製造方法。 【効果】 低亜鉛塩濃度でポリマー変性のない安定で均
一な紡糸性・延伸性に優れるポリケトンドープ、および
高温下での繊維物性に優れ、耐熱性の要求される産業用
資材用途、とりわけタイヤコードに適したポリケトン繊
維を安価に生産性よく提供することが出来る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は安定性、紡糸性、延
伸性に優れるポリケトンドープおよび高温時の繊維物性
に優れるポリケトン繊維および該繊維の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、一酸化炭素とエチレン、プロペン
のようなオレフィンとをパラジウムやニッケルを触媒と
して重合させることにより、一酸化炭素とオレフィンが
実質完全に交互共重合した脂肪族ポリケトンポリマーが
得られることが見い出され(工業材料、12月号、第5
ページ、1997年)、以後ポリケトンポリマーの繊維
化の検討が行われている。ポリケトン繊維の特長として
は、高強度・高弾性率の繊維が得られること、従来のポ
リオレフィン繊維に比べて融点が高く耐熱性に優れるこ
とから、産業用資材用途、とりわけ自動車用タイヤコー
ドへの展開が期待されている。従来、高強度・高弾性率
等の力学性能の要求される産業用繊維分野では、エチレ
ンと一酸化炭素の完全交互共重合ポリマーを用いた湿式
紡糸法により得られた繊維が検討されてきた。
【0003】例えば、特開平2−112413号公報、
特開平4−228613号公報、特表平4−50534
4号公報、特開平2−112413号公報、特開平4−
228613号公報、特表平7−508317号公報、
特表平8−507328号公報には、ヘキサフルオロイ
ソプロパノール、m−クレゾール、レゾルシン/水、フ
ェノール/アセトン、ヒドロキノン/プロピレンカーボ
ネート、レゾルシン/プロピレンカーボネート等の溶媒
を用いる方法が開示されている。しかしながら、これま
で開示されている湿式紡糸法はいずれも毒性や爆発性が
あるなどして安全性、取り扱い性に問題があり、また製
造コストが極めて高価で、実用的な製造法ではなかっ
た。
【0004】これら有機溶媒系湿式紡糸法の問題を解決
すべく、本発明者らは濃厚金属塩水溶液を溶媒として湿
式紡糸を行う方法を見い出した(特願平10−2365
95号公報、特願平11−72091号公報、特願平1
1−77220号公報、特願平11−159258号公
報、特願平11−167370号公報)。この溶媒系は
揮発性、爆発性がなく、回収も容易であることから安全
性、コストの点から実用性の高い製造法である。
【0005】このようにこれまで有機・無機のポリケト
ンの溶媒が見い出されているが、エチレンと一酸化炭素
の交互共重合ポリマーは規則性・結晶性が高いことか
ら、これらの溶媒に対する溶解性が低く、溶解時の温度
を高くしたり溶媒の濃度を高くする必要があったり、溶
解時間を長くする必要があった。しかしながらこれらの
処方を行うとポリケトンポリマーの変成が起こりやすく
なったり、更には工程通過性や糸物性の低下が起こりや
すくなるなどの問題がある。例えばm−クレゾール溶媒
の場合には、溶解温度を高くするとポリケトンポリマー
の三次元架橋が起こりやすくなり、紡糸時や延伸時に糸
切れが起こったり、最終繊維物性が低下する問題や、ポ
リマーの分解が起こりドープや繊維が着色したり、最終
繊維物性が低下する問題などがあった。また、溶媒の濃
度を高くしたり溶解時間を長くした場合にも前述の三次
元架橋化や分解の問題が起こり易くなったり、溶媒の原
料コストや溶媒の回収・再利用コストが高くなる、繊維
中に溶媒が残り易くなって紡糸性、延伸性が低下し製造
工程中での糸切れの増大や最終繊維物性の低下が起こる
問題などがあった。さらには、ポリケトンポリマーの分
子量が高い場合や、ポリマー濃度が高い場合には溶解性
がさらに低下するため、完全にポリマーを溶解すること
が出来ず、超高分子量のポリケトンポリマーや超高濃度
のポリケトンポリマーのドープを、均質で安定して得る
ことは極めて困難であった。
【0006】一方、これまでエチレンと一酸化炭素以外
にその他の化合物を共重合した共重合ポリケトンポリマ
ーの繊維化についても検討がなされてきている(特開平
1−124617号公報、特開平2−112413号公
報、Polym.Prepr.(Am.Chem.So
c.,Div.Polym.Chem.),36,1,
291−292、Prog.Polym.Sci.,V
ol.22,8,1547−1605(1997))。
しかしながら、これらの文献で開示されている共重合ポ
リケトン繊維は溶融紡糸法あるいは有機溶媒による湿式
紡糸法等で製造されているが、いずれも高温下での物性
に問題があった。特にこれら共重合ポリケトン繊維で
は、エチレン/一酸化炭素共重合ポリマーに比べて融点
が低く耐熱性に問題があるため、高温時の加工や使用を
受ける産業用資材用途、特にタイヤコード用途では加工
温度や使用環境を制限しなければならず、極めて限られ
た用途にしか使用することが出来なかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、低亜
鉛塩濃度でも均一かつ速やかに溶解可能であり、安定で
均質な紡糸性・延伸性に優れたポリケトン亜鉛塩ドープ
を提供し、さらには強度・伸度等の繊維物性に優れるこ
とはもちろんのこと高温時の繊維性能にも優れたポリケ
トン繊維を安価に生産性よく提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、繰り返し単位
の97〜99.9モル%が構造式1の単位であり、0.
1〜3モル%が下記の構造式2〜8から選ばれる少なく
とも1種の単位から構成されていることを特徴とするポ
リケトンポリマーを、ハロゲン化亜鉛濃度が10〜70
重量%の水溶液溶媒に溶解していることを特徴とするド
ープおよびそのドープから製造されるポリケトン繊維お
よびその製造方法である。
【化2】 (ここで、構造式中のR1 、R2 、R3 は水素またはメ
チル基、R’は炭素数1〜10の有機基、R”は炭素数
1〜10の炭化水素基、X、Yは水素原子、アルカリ金
属、アンモニウム、ホスホニウム、炭化水素の群から選
ばれる少なくとも1種の化合物基。)
【0009】本発明の繊維に用いるポリマーは、その繰
り返し単位の97〜99.9モル%はエチレンと一酸化
炭素の交互共重合体(構造式1)である。エチレンと一
酸化炭素の交互共重合ポリマーからなる繊維は強度、接
着性、寸法安定性、耐クリープ特性に優れ、また、融点
が高く、高温時でも優れた繊維物性を発現することが出
来る。この基本骨格中には部分的にケトン基同士、エチ
レン同士の単位がつながっていてもよいが、90モル%
以上がエチレンと一酸化炭素が交互共重合してなるポリ
ケトンポリマーであることが望ましい。耐光性、耐熱
性、高温時の物性の低下の観点からエチレンと一酸化炭
素が交互共重合した部分の含有率は多ければ多いほどよ
く、好ましくは97モル%以上、最も好ましくは100
モル%である。
【0010】また、本発明のポリケトンポリマーは、そ
の繰り返し単位の0.1〜3モル%は構造式2〜8から
選ばれる少なくとも1種の単位から構成されている。こ
こで構造式中のR1 、R2 、R3 は水素またはメチル
基、R’は炭素数1〜10の有機基、R”は炭素数1〜
10の炭化水素基、X、Yは水素原子、アルカリ金属、
アンモニウム、ホスホニウム、炭化水素の群から選ばれ
る少なくとも1種の化合物基である。炭素数1〜10の
有機基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピ
レン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘプ
チレン基、フェニル基、ベンジル基等の炭化水素基が挙
げられ、これらの炭化水素の一部もしくは全部、あるい
は水素原子の一部もしくは全部がエステル基、エーテル
基、カルボニル基、アミノ基、アミド基、ハロゲン原子
等で置換されていてもよい。
【0011】構造式2、3で表される繰り返し単位の具
体例としては、ビニルアルコール、ヒドロキシエチル
(メタ)アクリレート等のオキシアルキル(メタ)アク
リル酸エステル、ヒドロキシスチレンおよびその誘導
体、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル等のオキシア
ルキルビニルエーエル、メチルビニルエーテル等のアル
キルビニルエーテル等の化合物と一酸化炭素との交互共
重合体単位が挙げられる。また、酢酸ビニル等のビニル
エステル類と一酸化炭素との交互共重合体を加水分解し
て水酸基を生成せしめてもよい。ハロゲン化亜鉛水溶液
への溶解性向上の点から、水酸基を有していることが好
ましく、共重合性、重合収率の点でヒドロキシエチルメ
タクリレートと一酸化炭素との交互共重合体が好まし
い。
【0012】構造式4、5で表される繰り返し単位の具
体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、アン
ジェリカ酸等の(メタ)アクリル酸およびその誘導体、
(メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリ
レート、4−カルボキシフェニル(メタ)アクリレート
などの(メタ)アクリル酸エステルおよびその誘導体等
と一酸化炭素との交互共重合体単位が挙げられる。ハロ
ゲン化亜鉛水溶液への溶解性向上の点から、カルボン酸
基を有していることが好ましい。また、構造式6、7で
表される繰り返し単位の具体例としては、(メタ)アク
リルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,
N−ジメチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミ
ドおよびその誘導体等と一酸化炭素との交互共重合体単
位が挙げられる。
【0013】構造式2〜7で表される繰り返し単位は、
いずれもヘテロ原子を有しているため、極性溶媒である
ハロゲン化亜鉛水溶液に対する親和性が高くなり、小量
の共重合であっても溶解性の向上効果が高い。共重合の
割合は多ければ多いほどハロゲン化亜鉛溶媒に対する溶
解性が高くなるが、3モル%より多くなるとポリマーの
熱安定性が低下したり、強度・弾性率等の繊維物性や高
温下での繊維物性、寸法安定性が低下する。一方、共重
合割合が0.1モル%より少ない場合は溶解性向上の効
果が不十分であるため、好ましくは0.1〜3モル%、
さらに好ましくは0.2〜1モル%の範囲である。
【0014】構造式8で表される繰り返し単位の具体例
としては、プロペン、ブテン、ヘキセン、シクロヘキセ
ン、ペンテン、シクロペンテン、オクテン、ノネン等の
オレフィンと一酸化炭素との交互共重合体単位が挙げら
れる。これらオレフィンとエチレン、一酸化炭素とのタ
ーポリマーについては、これまでプロペン共重合を中心
に溶融紡糸法および湿式紡糸法での繊維化の検討がなさ
れてきているが、プロペンの共重合割合が多く、ポリケ
トン繊維の特長の一つである高温時の繊維物性が大きく
低下し、産業用資材としての用途が極めて限られてしま
っていた。このように、共重合に用いる化合物の選定と
共重合割合の設計は非常に重要である。共重合にオレフ
ィンの炭素数は、多いほど亜鉛塩溶媒に対する溶解性が
高くなるが、多すぎると繊維物性、特に高温時の繊維物
性や寸法安定性が低下するため、10以下であることが
好ましく、一酸化炭素との反応性、繊維物性の観点から
プロペンが特に好ましい。
【0015】構造式8の繰り返し単位の割合は、多けれ
ば多いほど亜鉛塩溶媒に対する溶解性が高くなるが、3
モル%より多くなるとポリマーの熱安定性が大きく低下
したり、強度・弾性率等の繊維物性や高温下での繊維物
性、寸法安定性が低下する。一方、共重合割合が0.1
モル%より少ない場合は溶解性向上の効果が不十分であ
る。構造式8の繰り返し単位の割合は好ましくは0.1
〜3モル%、さらに好ましくは0.5〜2モル%、特に
好ましくは1〜1.5モル%の範囲である。また、繊維
性能に悪影響を与えない範囲で必要に応じてスチレン、
スチレンスルホン酸Na、ビニルナフタレン、酢酸ビニ
ル、6−クロロヘキセン、N−ビニルピロリドン等のエ
チレン性不飽和炭化水素を有する化合物を共重合しても
よい。
【0016】本発明のドープで使用するポリマーの極限
粘度は0.3以上であることが好ましい。これは、極限
粘度が0.3未満では分子量が低すぎて繊維化すること
が困難となるからである。得られる繊維の強度とドープ
への溶解性、紡糸性のかねあいから、好ましくは0.5
〜15、最も好ましくは2〜10の範囲である。本発明
のドープは、少なくとも10〜70重量%のハロゲン化
亜鉛を含有する水溶液溶媒に前述の共重合ポリケトンポ
リマーを溶解したものである。ポリケトンポリマーの溶
解に用いられるハロゲン化亜鉛は、水に可溶であること
が必要である。使用可能な化合物としては、例えば、塩
化亜鉛、臭化亜鉛、よう化亜鉛等の亜鉛塩がある。好ま
しくは、水に対して50重量%以上の溶解度を持つ亜鉛
塩である。水に対して50重量%以上の溶解度を持つ亜
鉛塩とは、水に亜鉛塩を溶解したとき50重量%以上の
濃度の亜鉛塩水溶液が作成可能な亜鉛塩である。亜鉛塩
水溶液の濃度は、以下の式で定義される値である。
【0017】
【式1】 水に対して50重量%以上の溶解度を持つ亜鉛塩の水溶
液は、ポリケトンポリマーをより高濃度に溶解すること
が可能となる。ポリケトンポリマーの溶解性、溶媒のコ
スト、水溶液の安定性の点で塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛が好
ましく、塩化亜鉛が最も好ましい。
【0018】ハロゲン化亜鉛の濃度は、特に制限はない
が、ポリケトンポリマーの溶解性の点からは高い方が好
ましい。ハロゲン化亜鉛の濃度が低いとポリケトンポリ
マーの濃度や重合度が制限され、製造コストや繊維の強
度に対して不利となる。ただし、ハロゲン化亜鉛の濃度
が高すぎると水溶液の粘度が高くなり溶解作業に時間が
かかったり、結晶の析出が起こるためにポリマー溶液が
不均一になる、ドープの移送が困難になる、回収コスト
が高くなる、などの問題が生じる場合がある。ハロゲン
化亜鉛水溶液の濃度は、ポリケトンポリマーの組成、亜
鉛塩の種類や水溶液の温度により適正範囲が異なる。例
えば、ポリマーを溶解するにおいての塩化亜鉛水溶液の
好ましい濃度としては、50〜80℃では、10〜70
重量%であり、ドープの安定性、紡糸性、回収コスト等
の観点から80℃において20〜65重量%であること
が特に好ましい。
【0019】亜鉛塩の水溶液は、溶解性向上、コストダ
ウンやドープの安定性等を目的として、ハロゲン化亜鉛
を複数種混合したものであってもよい。また、必要に応
じては塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム
等のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属のハロゲン
化物を60重量%以下で含んでいてもよい。また、溶解
性を阻害しない範囲で他の無機物、有機物を10重量%
以下で含んでいてもよい。亜鉛塩水溶液ドープ中のポリ
マー濃度は0.005〜70重量%であることが好まし
い。尚、ドープとは、ポリマーを溶媒に溶解させた溶液
を指す言葉であり、ここではポリケトンポリマーを亜鉛
塩水溶液に溶解させた溶液を指すものである。ポリマー
濃度が0.005重量%未満では濃度が低すぎて、凝固
時に繊維になりにくい欠点を有する他、繊維の製造コス
トが高くなりすぎる欠点を有する。また、70重量%を
越えるともはやポリマーが溶媒に溶解しなくなる。溶解
性、紡糸のしやすさ、繊維の製造コストの観点から、好
ましくは0.5〜40重量%、更に好ましくは1〜30
重量%である。
【0020】このポリケトンハロゲン化亜鉛ドープを紡
糸口金から押し出し、続いて得られた繊維状物から実質
的に溶媒を除去した後に、熱延伸をすることによって本
発明のポリケトン繊維が得ることが出来る。本発明のポ
リケトン繊維の融点は、共重合組成によって異なるが、
高温下での繊維物性、寸法安定性、耐熱性の観点から2
40℃以上であることが好ましく、250℃以上である
ことが更に好ましく、260℃以上であることが特に望
ましい。
【0021】本発明の繊維の結晶化度は50%以上であ
る。繊維の結晶化度が高いほど強度が高くなり、高温下
の繊維物性、寸法安定性に優れる。好ましくは50%以
上、さらに好ましくは60%以上、特に好ましくは70
%以上の結晶化度を有することが望ましい。本発明の繊
維の結晶配向度は80%以上である。繊維の結晶配向度
が高いほど弾性率、高温下の寸法安定性に優れる。好ま
しくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に
好ましくは95%以上の結晶配向度を有することが望ま
しい。
【0022】高温時の繊維の弾性率は高いほど材料の加
工性、剛性、寸法安定性が高くなるため、この値が高い
ほど耐熱性の優れた材料といえる。繊維の弾性率は温度
により変化し、また使用条件等により求められる性能が
異なるため、一律な数値で定義することは困難である
が、産業用資材用途、特にタイヤコード用途への適性を
考慮すると、周波数110Hzの動的粘弾性測定におけ
る貯蔵弾性率が180℃のときに80g/d以上である
ことが好ましく、さらには100g/d以上であること
が特に好ましい。ここで貯蔵弾性率とは、得られた繊維
の繊維軸方向の動的な引っ張りひずみに対する動的な弾
性率であり(講座レオロジー(日本レオロジー学会編)
p37)、周波数110Hzでの貯蔵弾性率の値は、通
常の繊維の引っ張り試験で測定される引っ張り弾性率と
はほぼ一致する。この値は本件明細書の実施例に示した
測定方法により測定される。繊維の乾熱収縮率は低いほ
ど形状変化や残留応力が少なく寸法安定性が優れるた
め、この値は小さいほど耐熱性に優れた材料といえる。
本発明の繊維の乾熱収縮率としては、180℃における
乾熱収縮率が4%以下であることが好ましく、さらには
3%以下であることがより好ましい。
【0023】また、本発明の繊維の亜鉛含有量は0.0
1〜5000ppmの範囲であることが望ましい。本発
明の繊維は、亜鉛塩を含む溶媒にポリマーを溶解した後
に繊維化するため、紡糸直後の繊維中には亜鉛が含有さ
れる。亜鉛含有量が多すぎると延伸性、繊維物性とりわ
け強度が低下するため、温水、酸水溶液等で洗浄して繊
維中の亜鉛を除去する必要がある。特に、ポリケトンポ
リマーが水酸基末端、カルボン酸末端を有する化合物を
含有する場合には、繊維中に亜鉛が残りやすいため洗浄
を十分に行う必要がある。繊維中に含有される亜鉛量と
しては0.01〜5000ppm、好ましく0.01〜
1000ppm、特に好ましくは0.01〜100pp
mである。
【0024】また本発明の繊維は、目的に応じて酸化防
止剤、クエンチング剤、ラジカル捕捉剤、重金属不活性
化剤、ゲル化抑制剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、顔料等
の添加剤、ポリケトン以外のポリマー等を含んでいても
よい。添加物質の形状はどのような形態でもよい。例え
ば、ポリアクリロニトリルやセルロース等の本発明の溶
媒に溶解可能な物質を繊維中に分子オーダーで分散させ
てもよく、また、溶媒に不溶性の物質を粒子状で分散せ
しめてもよい。粒子状で分散させる場合には、繊維物
性、工程通過性の観点から粒子径は0.001〜10μ
mの範囲にすることが好ましく、粒径0.01〜1μm
の範囲であることがさらに好ましい。
【0025】次に本発明のポリケトンドープ、およびポ
リケトン繊維の製造方法について説明する。ドープはポ
リケトンポリマーを亜鉛塩水溶液溶媒に撹拌しながら一
気にあるいは数回に分けて添加して製造する。ポリケト
ンの形態としては、粉末、チップ等特に制限はないが、
溶解速度、重合過程で生成したゲル化物量が少ないとい
うの観点から粉末が好ましい。脂肪族ポリケトンポリマ
ーを合成すると粉末の形態で得られることが知られてい
る。この粉末は、かさ密度が高く表面が凹凸に富んでい
るので、比表面積が大きく溶媒に触れやすいので溶解性
に優れている。これに対し、チップ等の一旦溶融させて
付形したものは比表面積が少なく溶媒に触れる面積が少
なくなっている他、溶融過程でゲル化物が生成する畏れ
があるので、重合で得られたポリマーをそのまま粉末で
用いることが推奨される。
【0026】溶解する時の温度は特に制限はないが、溶
解速度、溶媒の安定性の観点から通常は5〜90℃の範
囲で溶解することが好ましい。さらに適正の範囲は亜鉛
塩の種類やポリマーの分子量及び濃度により適宜決めら
れる。溶解方法としては、撹拌羽根による撹拌、1軸ま
たは2軸押出機を用いた撹拌、超音波を用いた撹拌等を
用いることができる。また、ポリケトンポリマーが粉状
である場合には溶解時に気泡が生成し易いため、真空下
あるいは減圧下で溶解することが望ましい。また、得ら
れたドープは溶解完了後すぐに紡糸に用いてもよく、ま
た必要に応じては静置脱泡あるいは熟成させてから紡糸
に用いてもよい。
【0027】こうして得られたポリケトンの溶液はご
み、ゲル化物、未溶解ポリマー、触媒残渣等を除去する
ために、必要に応じてフィルターを通して紡糸、フィル
ム化等に供することのできるドープとなる。得られたド
ープには必要に応じて、酸化防止剤、耐光安定剤、艶消
し剤等を添加してもよい。こうして得られたポリケトン
ポリマードープを紡糸口金(紡口)から押し出し、続い
て得られた繊維状物から実質的に溶媒を除去してポリケ
トンポリマー繊維を得ることができる。該繊維状物から
溶媒を除去する方法としては、ドープに用いた溶媒以外
の溶剤に通して凝固させる方法が用いられる。紡糸口金
から押し出されたドープを、ドープに用いた溶媒よりも
少なくともポリマーに対して溶解性の低い溶剤(凝固
浴)に押し出すことが推奨される。紡口の位置として
は、紡口を凝固浴に浸ける方法、すなわち浸漬法であっ
ても、紡口を空気中に置いて紡口から出た繊維状物が空
気相を経て凝固浴に入る方法、いわゆるエアギャップ法
であってもよい。
【0028】ここで述べるドープに用いた溶媒よりも少
なくともポリマーに対して溶解性の低い溶剤については
必ずしもポリマーの貧溶媒である必要はなく、良溶媒で
あってもドープに用いた溶媒よりもポリマーに対して溶
解性が低ければよい。また、必要に応じて多段階で、得
られた繊維をよりポリマーに対して溶解性の低い溶剤に
通してもよい。このような、ドープに用いた溶媒よりも
少なくともポリマーに対して溶解性の低い溶剤として
は、ドープに用いる亜鉛塩水溶液よりも濃度の低い亜鉛
塩水溶液または水が最も好ましい。すなわち、好ましい
具体的な方法としては、紡糸口金を通った繊維状物をよ
り濃度の低い該亜鉛塩水溶液浴を通しながら繊維状物か
ら徐々に該亜鉛塩を抜いて凝固させ、最終的に水に通し
て完全に凝固させる方法である。もちろん、紡口を通っ
た繊維状物を直接水に通して凝固させてもよい。
【0029】紡口は、丸紡口でも、三角やY型、星型な
どの異形紡口でもどのようなものでも構わないが、光
沢、繊維物性、工程通過性、後加工通過性、成形性等の
観点から丸紡口が好ましい。また、必要に応じて紡口孔
が紡口面よりも凹状にへこんだ紡口や、凸状に突出した
突起紡口などを使用してもよい。使用可能な紡口の直径
は、紡糸速度、繊度等必要に応じてどのような大きさで
も構わないが、通常の産業用資材用繊維の場合、丸紡口
の場合で0.01mm〜10mm、好ましくは0.03
〜5mmの範囲である。繊維状物を凝固浴に通す場合
は、一定速度で引き取りながら通すことが好ましい。巻
き取り速度としては0.001〜1000m/min、
紡糸ドラフトとしては0.01〜1000である。
【0030】紡糸速度や凝固温度によっては、凝固浴中
で凝固糸中の亜鉛塩を十分に除去できない場合もあるの
で、必要に応じては凝固浴を出た凝固糸をさらに洗浄し
てもよい。洗浄には亜鉛塩を溶解する能力を有する液体
であればどのようなものを用いてもよいが、安全性、溶
液のコスト、回収のコスト等を考慮すると、水系の溶液
が好ましく、亜鉛塩の溶解性の観点からは水もしくは硫
酸、塩酸、リン酸等の酸性水溶液が特に好ましい。水酸
基、カルボン酸基を有する化合物を共重合したポリケト
ンポリマーを使用した場合には、亜鉛塩やその他の金属
等が繊維中に残存し易くなるため、洗浄をより十分に行
う必要がある。また、酸性水溶液が残存すると繊維の耐
熱性が低下することがあるため、必要に応じては洗浄後
に水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液
等のアルカリ性水溶液で中和してもよい。
【0031】こうして凝固され実質的に亜鉛を含まない
繊維は、乾燥後延伸あるいは乾燥させながら延伸を行っ
て延伸糸を得ることが出来る。乾燥方法としては、いっ
たん凝固糸を巻き取ったもの(チーズ、あるいはケーク
やパーン)を乾燥機中で乾燥するバッチ乾燥法であって
も、また、凝固糸を紡糸後そのまま連続して、あるいは
いったん巻き取った後に、加熱したロールやプレート上
あるいは加熱気体中を走行させて乾燥する連続乾燥法で
あってもよい。糸の均一性や製造コストの観点からは連
続乾燥法が好ましい。乾燥温度は特に制約はないが、6
0℃〜260℃の範囲が好ましい。また、100℃以上
の温度で乾燥する際には糸の周囲に不活性気体を流すこ
とが好ましい。また、必要に応じては乾燥しながら同時
に緩和や延伸などの処理をしてもよい。
【0032】加熱延伸方法としては、加熱したロールや
プレート上あるいは加熱気体中を走行させる方法や、走
行糸にレーザーやマイクロ波、遠赤外線を照射する方法
等従来公知の装置、方法をそのままあるいは改良して採
用することが出来る。延伸倍率は、凝固糸の紡糸条件、
乾燥条件等により変化するが、好ましくは3倍以上、さ
らに好ましくは5倍以上、特に好ましくは10倍以上の
延伸を行うことが望ましい。延伸段数は何段であっても
よく、必要に応じて多段延伸を行ってもよい。多段延伸
を行う場合には延伸温度を徐々に高くしていく方法が好
ましい。延伸温度は糸を有効に延伸可能であればどのよ
うな温度でもよく、好ましい範囲としては80℃〜30
0℃、さらに好ましくは融点−50℃〜融点の範囲であ
る。ここで延伸温度とは延伸時の糸温度の最高到達温度
を意味する。延伸温度が糸の融点より高くなると糸の融
解による毛羽や糸切れ、単糸間の融着が起こりやすくな
る。
【0033】本発明のポリケトンドープは、ゲル化や分
解等のポリマー変性が少なく、また溶解性に優れ、均一
でムラがなく、紡糸性、延伸性等の工程通過性に優れ、
欠陥の無い繊維が得られる。また、得られる繊維は強度
・弾性率等の繊維物性に優れ、特に高温時に優れた繊維
物性、寸法安定性を有し、高温環境での加工処理や使用
を受ける産業用資材、特にタイヤコードに適している。
また、本発明のドープは、安全性、回収効率が高く、回
収コスト、製造コストが安価に出来るとともに、製造設
備も簡易で安価なものになるため、本発明の繊維を安価
に生産性よく提供することが可能となる。
【0034】
【実施例】本発明を下記の実施例などにより更に詳しく
説明するが、それらは本発明の範囲を限定するものでは
ない。実施例の説明中に用いられる各測定値の測定方法
は次の通りである。 (1)極限粘度 極限粘度[η]は次の定義式に基づいて求められる値で
ある。
【式2】 定義式中のt及びTは純度98%以上のm−クレゾール
とm−クレゾールに溶解したポリケトンの希釈溶液の6
0℃での粘度管の流過時間である。また、Cは上記溶液
100ml中のグラム単位による溶質重量値である。
【0035】(2)強伸度、弾性率 JIS−L−1013に準じて測定した。 (3)高温時の弾性率 繊維30mmの両端をたるみがないように結んだものを
試料とし、動的粘弾性測定装置(RheoVibron
DDV−01FP:ORIENTEC(株)社製)にて
以下の条件で測定した。 周波数 :110Hz 温度 :20℃から260℃まで昇温速度5℃
/分で昇温した。 測定インターバル:1℃ 加振振幅 :16μm・単一波形 プリロード荷重:荷重が0.1g/dとなるよう試料デ
ニールに応じて変更した。 180℃における貯蔵弾性率(E’)の値を高温時の弾
性率として採用した。
【0036】(4)乾熱収縮率 JIS−L−1013に準じて180℃における値を測
定した。 (5)融点 パーキンエルマー社製示差熱測定装置Pyris1を用
いて下記条件で測定を行った。 測定温度 : 30℃→300℃ 昇温速度 : 20℃/分 雰囲気 : 窒素、流量=200mL/分 得られる吸発熱曲線において200℃〜300℃の範囲
に観測される最大の吸熱ピークのピークトップ温度を融
点とした。
【0037】(6)結晶化度 融点測定で200℃〜300℃の範囲で得られる最大の
吸熱ピークの面積から計算される熱量ΔH(J/g)よ
り下記式により算出した。 結晶化度 = (ΔH/225)×100 (%) (7)結晶配向度 株式会社リガク製イメージングプレートX線回折装置R
INT2000を用いて下記の条件で繊維の回折像を取
り込んだ。 X線源 : CuKα線 出力 : 40KV 152mA カメラ長 : 94.5mm 測定時間 : 3分 得られた画像の2θ=21°付近に観察される(11
0)面を円周方向にスキャンして得られる強度分布の半
値幅Hから下記式により算出した。 結晶配向度 = 〔(180−H)/180〕×100 (%)
【0038】(8)繊維中の亜鉛含有量 高周波プラズマ発光分光分析により、公知の方法を用い
て測定した。 (9)溶解下限濃度 塩化亜鉛濃度C重量%(C=50〜75)の溶媒中に、
ポリケトンポリマーをポリマー濃度が5重量%となるよ
うに添加し、80℃加熱下3時間攪拌し溶解を行った。
ポリマーが完全に溶解した下限の濃度Cmin を溶解下限
濃度とした。
【0039】
【実施例1】2リットルのオートクレーブにメタノール
1リットルを加え、更に酢酸パラジウム15mg、ビス
(2−メトキシフェニル)ホスフィノプロパン33m
g、トリフルオロ酢酸152mgを予めメタノール10
ミリリリットル中で撹拌し調整した触媒液を加えた。更
に、2−ヒドロキシエチルメタクリレート20gを加え
た後、一酸化炭素とエチレンを1:1モル含む混合ガス
を充填し、5MPaの圧力を維持するように連続的に、
この混合ガスを追加しながら、80℃で3.5時間反応
を行った。
【0040】反応後、圧力を解放し、得られた白色ポリ
マーを繰り返しメタノールで洗浄した後、単離した。収
量は、88gであった。得られたポリケトンは、核磁気
共鳴スペクトル、赤外吸収スペクトル等の分析により、
繰り返し単位の99.5モル%がエチレンと一酸化炭素
が交互共重合し、0.2モル%が2−ヒドロキシエチル
メタクリレートと一酸化炭素が交互共重合したターポリ
マーであった。また、その極限粘度は5.3であった。
【0041】得られたターポリマーを75℃で撹拌しな
がら、65重量%の塩化亜鉛水溶液溶媒に加えた。ポリ
マーは極めて容易に溶解し、溶解時間60分以内でポリ
マー濃度10重量%のドープを得た。得られたドープを
80℃に加温し、20μmのフィルターでろ過した後
に、紡口径0.10mm、L/D=1、50ホールの紡
口より10mmのエアーギャップを通した後に10℃の
水中に吐出量2.5cc/分の速度で押し出し、凝固さ
せた。凝固糸を引き続き濃度2%の硫酸水溶液で洗浄
後、巻き取り速度3.2m/分で巻き取った。得られた
糸状物を200℃にて乾燥して未延伸糸を得た。得られ
た未延伸糸を220℃で1段目の延伸を行った後に、引
き続き240℃で2段目の延伸を行いトータルで14倍
の延伸を行った。得られた繊維の性質および性能を表1
に示す。
【0042】
【実施例2】2−ヒドロキシエチルメタクリレートに変
えてメタクリル酸メチル20gを加える以外は実施例1
と同様の処方で重合を行った。収量は81g、極限粘度
は4.9であった。このポリマーはメタクリル酸メチル
と一酸化炭素の交互共重合成分を0.3モル%含むエチ
レン/一酸化炭素/メタクリル酸メチルターポリマーで
あった。このターポリマーを、溶媒の塩化亜鉛濃度を6
8重量%とする以外は実施例1と同様の処方で溶解、紡
糸、延伸を行った。得られた繊維の性質および性能を表
1に示す。
【0043】
【実施例3】2−ヒドロキシエチルメタアクリレートに
変えてプロペン15gを加える以外は実施例1と同様の
処方で重合を行った。収量は96g、極限粘度は4.4
であった。このポリマーはプロペンと一酸化炭素の交互
共重合成分を1.4モル%含むエチレン/一酸化炭素/
プロペンターポリマーであった。このターポリマーを実
施例1と同様の処方で溶解、紡糸、延伸を行った。得ら
れた繊維の性質および性能を表1に示す。
【0044】
【実施例4】プロペンを30g加える以外は実施例3と
同様にして重合を行った。収量は87g、極限粘度は
4.0であった。このポリマーはプロペンと一酸化炭素
の交互共重合成分を3モル%含むエチレン/一酸化炭素
/プロペンターポリマーであった。このターポリマーを
実施例1と同様にして溶解、紡糸、延伸を行った。得ら
れた繊維の性質および性能を表1に示す。
【0045】
【比較例1】2−ヒドロキシエチルメタアクリレートを
添加しない以外は実施例1と同様の処方で重合を行い、
エチレン/一酸化炭素完全交互共重合コポリマーを得
た。このポリマーの極限粘度は5.8であった。このコ
ポリマーを溶媒の塩化亜鉛濃度を70重量%とする以外
は実施例1と同様の処方で溶解、紡糸を行った。紡糸性
は不良で、凝固浴中で単糸切れが発生し、紡糸開始後3
0分後にはフィルター詰まりのため、紡糸不能となっ
た。
【0046】
【比較例2】実施例3において添加するプロペンの量を
80gとする以外は同様の処方で重合を行った。収量は
54g、極限粘度は3.7であった。得られたポリマー
はプロペンと一酸化炭素の交互共重合成分を4.2モル
%含むエチレン/一酸化炭素/プロペンターポリマーで
あった。このターポリマーを実施例1と同様の処方で溶
解、紡糸、延伸を行った。得られた繊維の性質および性
能を表1に示す。
【0047】
【比較例3】実施例1において延伸条件を220℃、
1.5倍とする以外は同様の処方で重合、溶解、紡糸、
延伸を行った。得られた繊維の物性は実用に適さないレ
ベルであった。得られた繊維の性質および性能を表1に
示す。
【0048】
【比較例4】実施例1において、凝固後の2%硫酸洗浄
を行わない以外は同様の処方で紡糸、延伸を行った。こ
の繊維は乾燥、延伸の熱処理によって茶褐色に変色し
た。得られた繊維の性質および性能を表1に示す。
【0049】
【比較例5】実施例3で重合したポリマーにカルシウム
ヒドロキシアパタイトを1重量%添加し、ホモミキサー
中で粉砕混合した。得られた微粉末状ポリマーを250
℃で溶融し、紡口径0.25mmφのモノホール紡口か
ら押し出した。溶融開始後5分後から著しい押し出し圧
力の上昇があり、紡糸不可能であった。
【0050】
【表1】
【0051】
【発明の効果】本発明により、溶解性に優れかつポリマ
ーの劣化がなく均一で、かつ紡糸性、延伸性に優れたポ
リケトンハロゲン化亜鉛ドープ、および繊維物性、寸法
安定性に優れるポリケトン繊維およびその製造方法を提
供できた。従来の技術では得ることの出来なかった優れ
た高温時の弾性率と寸法安定性を有するポリケトン繊維
を容易にかつ安価に安定して得られるようになり、高性
能の繊維物性や高温時の寸法安定性が必要な産業用資材
用途、特にタイヤコードの分野での適用が期待される。
また、本発明のドープは優れた溶解性を示し、これまで
以上にポリマーの劣化がなく安定で均一なドープ、取り
扱い性の良いドープが得られるようになり、従来の技術
では実現することの出来ない低コストで、かつ生産性よ
く製造することが可能となる。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繰り返し単位の97〜99.9モル%が
    構造式1の単位であり、0.1〜3モル%が下記の構造
    式2〜8から選ばれる少なくとも1種の単位から構成さ
    れていることを特徴とするポリケトンポリマーが、ハロ
    ゲン化亜鉛濃度が10〜70重量%の水溶液溶媒に溶解
    していることを特徴とするドープ。 【化1】 (ここで構造式中のR1 、R2 、R3 は水素またはメチ
    ル基、R’は炭素数1〜10の有機基、R”は炭素数1
    〜10の炭化水素基、X、Yは水素原子、アルカリ金
    属、アンモニウム、ホスホニウム、炭化水素の群から選
    ばれる少なくとも1種の化合物基。)
  2. 【請求項2】 溶媒が、少なくとも1種のハロゲン化亜
    鉛、および少なくとも1種の該ハロゲン化亜鉛以外のハ
    ロゲン化アルカリ金属塩またはハロゲン化アルカリ土類
    金属塩を含有する水溶液であることを特徴とする請求項
    1記載のドープ。
  3. 【請求項3】 繰り返し単位の97〜99.9モル%が
    前記構造式1の単位であり、0.1〜3モル%が前記構
    造式2〜8から選ばれる少なくとも1種の単位から構成
    されてたポリケトン繊維であって、かつ、結晶化度が5
    0%以上、結晶配向度が80%以上であることを特徴と
    するポリケトン繊維。
  4. 【請求項4】 180℃における弾性率が80g/d以
    上であることを特徴とする請求項3記載のポリケトン繊
    維。
  5. 【請求項5】 亜鉛元素含有量が0.01〜5000p
    pmであることを特徴とする請求項3または4記載のポ
    リケトン繊維。
  6. 【請求項6】 ポリケトン繊維が、その極限粘度が2以
    上であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記
    載のポリケトン繊維。
  7. 【請求項7】 請求項1または2記載のドープを紡糸口
    金から押し出し、続いて得られた繊維状物から実質的に
    溶媒を除去した後に、熱延伸をすることを特徴とする請
    求項3〜6記載のポリケトン繊維の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項3〜6記載のポリケトン繊維を含
    有することを特徴とする繊維製品。
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Cited By (4)

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