JP2581853B2 - ポリ−γ−グルタミン酸エステル繊維およびその製造法 - Google Patents

ポリ−γ−グルタミン酸エステル繊維およびその製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はポリ−γ−グルタミン酸
エステルの繊維およびその製造方法に関する。更に詳し
くは、特殊な微細構造をとることにより改善された機械
的性質を有する生分解性のポリ−γ−グルタミン酸エス
テル繊維および該繊維を工業的に製造する方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、プラスチックスで代表される高分
子材料は、長期性能安定性を求めて開発・生産されてき
たが、その廃棄物は自然環境のなかで分解されず、大き
な環境問題となっている。そこで、自然の中の微生物に
よって分解される生分解性高分子が注目されはじめた。
【0003】しかし、生分解高分子の成形体に関する公
知の報告はきわめて限定されたものである。その数少な
い例としてPolymer Communication Vol.29 112(1988)に
は、ポリ−3−ヒドロキシブチレートおよびポリ−3−
ヒドロキシブチレート−(4−ヒドロキシバリレート)
共重合体のフイルムの物性が示されているが、その引張
強度はたかだか4.5kg/mm2 程度であり、実用的な機
械的性質を有するには至っていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
の如き従来の生分解性の高分子材料の欠点を改良し、生
分解性と優れた機械的性質をあわせもつポリ−γ−グル
タミン酸エステル繊維およびその製造法を提供すること
にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上述の如き本発明の課題
は、下記式(1)で表わされる繰り返し単位を主成分と
するポリ−γ−グルタミン酸エステルからなる繊維であ
って、X線回折において繊維軸方向に面間隔0.59±
0.04nmの反射角を有する結晶構造を持ち、かつこの
反射に関して測定した配向度が80%以上である新規な
繊維によって達成される。
【0006】
【化2】
【0007】上記式(1)において、Rはエステル形成
基を示す。このエステル形成基Rとしては、例えば炭素
数1〜30、好ましくは炭素数1〜4、の直鎖あるいは
分岐した飽和あるいは不飽和の脂肪族、脂環族あるいは
芳香族の非置換または置換炭化水素残基が挙げられる。
【0008】置換炭化水素残基の場合の置換基として
は、以下の(a)〜(f)のものが挙げられる。 (a)ハロゲン基(クロロ基、ブロモ基およびフルオロ
基) (b)ニトロ基 (c)シアノ基 (d)カルボアルコキシ基、カルボアリーロキシ基およ
びカルボアラールコキシ基(但し、基中のアルキル基は
炭素数1〜4、アリール基は炭素数6〜10、アラルキ
ル基は合計炭素数が6〜10である。) (e)モノまたはジアルキルアミノ基(但し、アルキル
基は炭素数1〜5) (f)アシルアミノ基(アシル基は炭素数1〜5)。
【0009】これらのエステル形成基Rの代表的なもの
は、低級アルキル基、フェニル基、低級アルキル置換フ
ェニル基およびフェニル低級アルキル基である。このう
ち特に好ましいエステル形成基Rとしてベンジル基が挙
げられる。すなわちRがベンジル基のとき特に優れた繊
維形成能が発現される。
【0010】本発明の繊維を構成するポリ−γ−グルタ
ミン酸エステルは、下記式(4)で表わされる繰り返し
単位のポリ−γ−グルタミン酸におけるα位のカルボキ
シル基をエステル化することによって調製することがで
きるが、エステル化率は80%以上が好ましく、95%
以上がさらに好ましい。エステル化率が80%以下では
後述する湿式紡糸において紡糸の安定性が不良となる。
ここでエステル化率は、ポリマーの全繰り返し単位中に
含まれる上記式(1)の繰り返し単位の百分率で表わ
す。
【0011】
【化3】
【0012】かかるポリ−γ−グルタミン酸エステルの
製造法および性質については、第39回高分子学会年次大
会において窪田英俊らによって報告されている(Polyme
r Preprints,Japan Vol.39,No.3(1990)p856 参照)。
【0013】本発明に用いられるポリ−γ−グルタミン
酸エステルは、極限粘度0.5以上であることが好まし
く、1.0以上がさらに好ましい。極限粘度が0.5以
下では湿式紡糸時の曳糸性が乏しい。
【0014】本発明では、上記のポリ−γ−グルタミン
酸エステルは、該ポリマーが実質的に線状でありかつ該
ポリマーの特性が本質的に損われない範囲内で他の成分
を少量共重合したものであってもよい。
【0015】本発明に用いる上記ポリ−γ−グルタミン
酸エステルは、融解性を示し、例えば上記式(1)にお
けるRがベンジル基のとき、204℃の融点を有する。
しかし、融解と同時に熱分解が伴うため、通常の溶融成
型法を安定に実施することは困難である。従って濃厚溶
液からの成型が必要となるが、このポリ−γ−グルタミ
ン酸エステルは、エステル化率を100%に近づけるに
従って溶媒への溶解性が低下し、単独溶媒で濃厚溶液を
形成しうるものは知られていない。
【0016】本発明者らは鋭意研究の結果、ある特定の
ポリ−γ−グルタミン酸エステル組成物を湿式法により
紡糸し、延伸することにより、特殊な微細構造を有する
ポリ−γ−グルタミン酸エステル繊維を製造しうること
を見い出した。この特殊な微細構造を有するーポリ−γ
−グルタミン酸エステル繊維は、ポリ−γ−グルタミン
酸本来の生分解性のみならず、きわめて優れた機械的性
質を有するものである。
【0017】ここで言う特殊な微細構造は、ポリ−γ−
グルタミン酸エステル繊維の、X線回折により測定され
る結晶構造の分子鎖方向への繰り返し周期が0.59±
0.05nmであり、かつこの反射に関して測定した配向
度が80%以上であることを特徴とする。
【0018】本発明のポリ−γ−グルタミン酸エステル
繊維においては、繊維軸方向を子午方向としたとき、X
線回折強度が子午方向において2θ=15°付近に強い
ピークが存在し、この回折に対応する面間隔をもって分
子鎖方向への繰り返し周期とする。また、配向度はこの
強いピークに関する配向角から求める。
【0019】上記式(1)に示されるポリ−γ−グルタ
ミン酸エステルは、一般に結晶性が低く、ポリマーの固
体を加熱したのみでは前述したような繰り返し周期の結
晶構造は観測されない。従って本発明のポリ−γ−グル
タミン酸エステル繊維にあっては、高度に高分子高次構
造が制御されたことにより、新規な結晶構造が発現した
ものと言える。
【0020】本発明の繊維はかかる微細構造をとること
により、後述するような優れた機械的性質を発現するも
ので、面間隔あるいは配向度が上記範囲外のものは、機
械的性質の劣ったものとなる。すなわち、0.59±
0.05nmに対応するピークが存在しない繊維は結晶性
が低く、機械的性質が実用に耐えない。また、0.59
±0.05nmに対応するピークが存在しても、このピー
クに関して測定した配向度が80%以下では配向が不十
分であり、強度は0.8g/d以下、ヤング率も250
kg/mm2 以下となり充分な機械的性質を示さない。
【0021】以下、優れた機械的性質を有する、前述の
如き新規な微細構造のポリ−γ−グルタミン酸エステル
繊維を製造する方法について説明する。
【0022】本発明のポリ−γ−グルタミン酸エステル
繊維は、特定のポリ−γ−グルタミン酸エステル組成物
を、特定の条件下に湿式紡糸したのち、延伸することに
より製造される。
【0023】本発明のポリ−γ−グルタミン酸エステル
繊維の製造に用いる、ポリ−γ−グルタミン酸エステル
組成物(紡糸用ドープ)は、実質的にポリ−γ−グルタ
ミン酸エステル、アミド系溶媒および無機塩から構成さ
れ、下記式(2)および(3)の組成範囲を同時に満た
すものである。
【0024】 0.1<a/(a+b)<0.4 …(2) 0.06<c/a …(3) (上記式(2)および(3)において、aはポリ−γ−
グルタミン酸エステルの重量、bはアミド系溶媒の重
量、cは無機塩の重量を表わす)。
【0025】ここでいうアミド系溶媒とは、N−メチル
−2−ピロリドン(以下NMPと略称する)、ジメチル
ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチ
ル−2−イミダゾリジノンおよびその混合系であり、特
に好ましいアミド系溶媒はNMPである。また無機塩と
しては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲ
ン塩であり、特に塩化リチウム、塩化カルシウムが好ま
しい。
【0026】しかるに、組成物中のポリ−γ−グルタミ
ン酸エステルの量およびアミド系溶媒の量が0.1≧a
/(a+b)の場合は、湿式紡糸において、十分な曳糸
性が得られない。一方、a/(a+b)≧0.4の場合
は、得られた組成物の粘度がきわめて高くなり、流動性
の低下のために紡糸が困難となる。a/(a+b)の特
に好ましい範囲は、0.2<a/(a+b)<0.3、
である。
【0027】また、組成物中のポリ−γ−グルタミン酸
エステルに対する無機塩の重量比c/aが0.06以下
では溶解性が不十分であり、未溶解物やゲルが存在する
ため紡糸が困難となる。
【0028】本発明で用いるポリ−γ−グルタミン酸エ
ステル組成物は、湿式紡糸性を損わない限り、必要に応
じ、着色剤、充填剤、安定剤、その他の添加剤を含んで
もよい。
【0029】本発明で用いるポリ−γ−グルタミン酸エ
ステル組成物は、ポリ−γ−グルタミン酸エステルの粉
末と無機塩粉末を、所定の比率で混合し、固体のまま十
分混和させたのちアミド系溶媒を添加して溶解させるこ
とで調製することができる。溶解は80℃以下で行い、
窒素気流下で行なうことが好ましい。
【0030】上記の組成物は、常温において粘稠な液体
ないし半固体状であることが多いが、60℃以上に加熱
すると容易に流動する。しかし100℃以上に加熱する
と、ポリ−γ−グルタミン酸エステルの分解が徐々にお
こるため好ましくない。
【0031】本発明のポリ−γ−グルタミン酸エステル
繊維は、上記のポリ−γ−グルタミン酸エステル組成物
を、水性凝固浴中に紡糸する湿式紡糸法で製造される。
本発明で採用される湿式紡糸は、所定温度に調整した上
記ポリ−γ−グルタミン酸エステル組成物を紡糸ノズル
を通過させて直接水性凝固浴中に押し出すか、または空
気中に押し出した後直ちに水性凝固浴に導入すること
で、糸条を形成させるものである。
【0032】本発明の機械的性質の優れたポリ−γ−グ
ルタミン酸エステル繊維を製造するためには、水性凝固
浴の組成および温度について、特別の条件を満たすこと
が必要である。すなわち、本発明で用いられる凝固浴
は、主として水および無機塩を成分とし、この水性凝固
浴中の無機塩の濃度が10〜50重量%で、かつ温度が
50〜80℃の範囲内にあるという条件を同時に満たす
ものが、紡糸性および得られる未延伸糸の性質等の上か
ら好ましい。
【0033】これに対し、凝固浴温度が50℃未満で
は、ノズルから紡出した組成物の粘度が高く、曳糸性が
損なわれ安定して紡糸をすることが困難となる。また、
凝固浴温度が80℃を越える場合および無機塩濃度が5
0重量%を超える場合、紡出した組成物の凝固速度が遅
く糸条が安定して形成されないことが多い。また、無機
塩濃度が10重量%未満では凝固後の繊維がボイドを多
く含んだ構造となり、緻密な糸条を形成することが困難
である。
【0034】凝固浴中の無機塩の種類は特に限定するも
のではないが、紡糸用組成物に含む無機塩と同一のもの
でもよい。水に対する溶解性および経済性から、塩化カ
ルシウムが好ましい。また凝固浴中の無機塩以外は主と
して水であるが、これらのほかに水溶性の有機溶媒を含
有させてもよい。
【0035】本発明のポリ−γ−グルタミン酸エステル
繊維は、前述の条件を満たす水性凝固浴を用いること
で、後述する延伸過程で高倍率の延伸が可能となり、こ
の高倍率延伸により高度に制御された微細構造を発現す
るものである。
【0036】本発明のポリ−γ−グルタミン酸エステル
繊維の未延伸糸は、凝固後の糸条を水洗し、残留するア
ミド系溶媒および無機塩を除いたのち乾燥することで得
られる。かくして得られたポリ−γ−グルタミン酸エス
テル繊維の未延伸糸は低結晶性かつ低配向度で、強度、
ヤング率等の機械的性質の劣る繊維である。しかし、こ
の未延伸糸を特定の条件で延伸することにより前述した
特殊な微細構造が発現し、それに伴って機械的性質が飛
躍的に改善される。
【0037】本発明のポリ−γ−グルタミン酸エステル
繊維を製造するための延伸方法として、温水中延伸、乾
熱延伸およびその組合せを採用することができる。
【0038】温水中延伸においては、温水温度50〜9
5℃で延伸倍率1.5倍以上に延伸することが好まし
い。延伸倍率は3倍以上とすることが、さらに好まし
い。温水温度が50℃未満では延伸倍率が上がらないた
め好ましくない。また延伸倍率が1.5倍以下では、延
伸繊維の配向度が80%に到達しえない。温水中延伸に
用いる未延伸糸は、凝固後の繊維を水洗後乾燥前の含水
繊維および乾燥後の繊維のいずれでもよい。
【0039】乾熱延伸は、乾燥後の繊維を乾熱下、80
〜200℃の温度で、1.5倍以上の延伸倍率で延伸す
るものである。延伸倍率は3倍以上であることが特に好
ましい。延伸温度が80℃未満では延伸倍率が上がら
ず、また200℃を超えるとポリ−γ−グルタミン酸エ
ステルの熱劣化が伴うため好ましくない。また延伸倍率
が1.5倍以下では、延伸繊維の配向度が80%に到達
しえない。
【0040】さらに好ましい延伸の実施様態は、上述の
条件を満たす温水中延伸を行なった後、繊維を乾燥し、
引続き前述の条件を満たす乾熱延伸を行なう二段延伸で
ある。この二段延伸を採用することにより総合延伸倍率
は向上し、より効率的に分子配向が進行する。
【0041】延伸後のポリ−γ−グルタミン酸エステル
繊維は、高度な結晶配向を示し、強度2.0g/d以上
かつヤング率500kg/mm2 以上の優れた機械特性を有
する。
【0042】
【発明の効果】本発明のポリ−γ−グルタミン酸エステ
ル繊維は、特殊な微細構造の形成により、該ポリマーの
本来の機能である生分解性に加え、優れた機械特性をあ
わせもつ素材である。その繊維強度は、2.0g/d以
上、ヤング率は500kg/mm2 以上であり、従来知られ
ている生分解性高分子からの繊維と比較して、飛躍的に
改良されたものである。これらの特性を生かし、本発明
のポリ−γ−グルタミン酸エステル繊維は、広く産業用
繊維として用いることができ、工業的に有用である。
【0043】
【実施例】以下、実施例によって本発明の具体例を示
す。なお、本発明でいう、ポリマーの極限粘度、繊維の
面間隔および配向度、繊維の機械的性質の測定は、次の
方法によるものである。
【0044】a)極限粘度の測定 2重量%の塩化リチウム/NMP溶液を溶媒とし、35
℃で測定した。
【0045】b)面間隔の測定 面間隔(d)の測定は、X線回折において繊維軸を子午
方向にとったときの2θ=15°付近の強いピークにつ
いて次式より求めた。 dnm=0.154/2・sinθ
【0046】c)繊維の配向度の測定 配向度の測定はX線回折において繊維軸を子午方向にと
ったときのピークに関して、方位角方向にスキャンした
強度分布の半価巾をOA(度)としたとき、次式より求
める。 配向度(%)=OA/180×100
【0047】d)機械的性質の測定 繊維のヤング率、強度および伸度は、定速引張試験機に
より、長さ25mmの試料を毎分20mmの引張速度で定速
引張する方法で測定した。
【0048】
【実施例1】極限粘度2.38のポリ−γ−グルタミン
酸ベンジルエステル260重量部、N−メチル−2−ピ
ロリドン740重量部および塩化リチウム49重量部を
混合し、80℃で溶解させることで、ポリ−γ−グルタ
ミン酸エステル組成物を調製した。このときa/(a+
b)=0.26,c/a=0.19であった。
【0049】この組成物を、プランジャー型押出機を用
い、直径0.15mmの円形ノズルより70℃の40重量
%塩化カルシウム水溶液からなる凝固浴中に紡出し糸条
とした。このとき、吐出線速度は2.0m/分であっ
た。引続き、凝固浴を出た糸条を水洗し、溶剤および塩
を除いて未延伸糸を得た。この未延伸糸を60℃の温水
中で4倍に延伸したのち乾燥した。
【0050】得られたポリ−γ−グルタミン酸エステル
繊維は、繊度21デニール、引張強度2.02g/d、
伸度8.5%、ヤング率530kg/mm2 の優れた機械的
性質を有するものであった。広角X線測定の子午方向の
回折パターンは面間隔0.59nmの明瞭なピークを有
し、このピークに関して得られた配向度は86.2%で
あった。
【0051】
【実施例2】実施例1と全く同様の方法で未延伸糸を調
製し、これを温水中で延伸することなく定長で乾燥した
のち、100℃の熱板上で4倍の延伸を行なった。
【0052】得られたポリ−γ−グルタミン酸エステル
繊維は、繊度19デニール、引張強度2.05g/d、
伸度9.6%、ヤング率550kg/mm2 の優れた機械的
性質を有するものであった。広角X線測定の子午方向の
回折パターンは面間隔0.59nmの明瞭なピークを有
し、このピークに関して得られた配向度は86.3%で
あった。
【0053】
【実施例3】実施例1と全く同様の方法で未延伸糸を調
製し、これを80℃の温水中で3.5倍の延伸を行なっ
たのち定長で乾燥し、さらに140℃の熱板上で1.2
0倍延伸した。
【0054】得られたポリ−γ−グルタミン酸エステル
繊維は、繊度12デニール、引張強度2.59g/d、
伸度6.0%、ヤング率685kg/mm2 の優れた機械的
性質を有するものであった。広角X線測定の子午方向の
回折パターンは面間隔0.60nmの明瞭なピークを有
し、このピークに関して得られた配向度は86.2%で
あった。
【0055】
【比較例1】実施例1と全く同様の方法で未延伸糸を調
製し、これを延伸することなく定長で乾燥した。この繊
維は、繊度73デニール、引張強度0.34g/d、伸
度7.8%、ヤング率210kg/mm2 の脆弱なものであ
った。広角X線測定の子午方向の回折パターンは2θ=
19°(面間隔0.47nm)付近に微弱かつブロードな
ピークのみしか観測されなかった。
【0056】
【比較例2】極限粘度2.38のポリ−γ−グルタミン
酸ベンジルエステル260重量部、N−メチル−2−ピ
ロリドン740重量部および塩化リチウム13重量部を
混合し、80℃で溶解させることで、ポリ−γ−グルタ
ミン酸エステル組成物を調製した。このときa/(a+
b)=0.26,c/a=0.05であった。この組成
物は未溶解ゲルを多く含み、紡糸の孔づまりが頻発し糸
条を得ることができなかった。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記式(1)の繰り返し単位を主とするポ
    リ−γ−グルタミン酸エステルからなり、X線回折にお
    いて繊維軸方向に面間隔0.59±0.04nmの反射を
    有する結晶構造を持ち、かつこの反射に関して測定した
    配向度が80%以上であることを特徴とするポリ−γ−
    グルタミン酸エステル繊維。 【化1】 (上記式(1)において、Rはエステル形成基である)
  2. 【請求項2】ポリ−γ−グルタミン酸エステル、アミド
    系溶媒および無機塩からなり、かつ下記式(2),
    (3)を同時に満足する範囲の組成を有する組成物を、
    水性凝固浴を用いて湿式紡糸し延伸することにより、請
    求項1に記載の微細構造をもつポリ−γ−グルタミン酸
    エステル繊維を形成せしめることを特徴とするポリ−γ
    −グルタミン酸エステル繊維の製造方法。 0.1<a/(a+b)<0.4 (2) 0.06<c/a (3) (上記式(2)および(3)において、aはポリ−γ−
    グルタミン酸エステルの重量、bはアミド系溶媒の重
    量、cは無機塩の重量を表わす)
  3. 【請求項3】水性凝固浴の温度を50〜80℃の温度と
    なし、かつ該水性凝固浴中に10〜50重量%の濃度で
    無機塩を含有せしめることを特徴とする請求項2記載の
    ポリ−γ−グルタミン酸エステル繊維の製造方法。
  4. 【請求項4】50〜95℃の温度で温水中で1.5倍以
    上延伸することを特徴とする請求項2または3記載のポ
    リ−γ−グルタミン酸エステル繊維の製造方法。
  5. 【請求項5】80〜200℃の温度で乾熱下に1.5倍
    以上延伸することを特徴とする請求項2または3記載の
    ポリ−γ−グルタミン酸エステル繊維の製造方法。
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