JP4603208B2 - ポリケトン繊維 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、着色物質(染料および/または顔料)を含有するポリケトン繊維に関するものである。更に詳しくは、有彩色または無彩色の染料および/または顔料を含有しながら、高結晶性および高配向度の構造を有し、高強度、高弾性率および高融点の特性を示すポリケトン着色繊維に関する。
【0002】
【従来技術】
一酸化炭素とオレフィンが完全交互共重合したポリケトン繊維は、高強度、高弾性率および高融点の特性を有し、産業資材分野、生活資材分野、衣料分野等の幅広い分野への展開が期待されている。特に、エチレンと一酸化炭素の交互共重合体を主たる繰り返し単位とするポリケトンは高い結晶性と融点を持ち、繊維化した場合に高結晶化度および高配向度の発達した繊維構造を有し、特に、高い強度、弾性率および融点を発現することができる材料である。
【0003】
しかしながら、このようなポリケトン繊維は、高結晶化度および高配向度の構造を有するがために、染料が繊維内部に浸透することが非常に困難であり、染色によって任意の色調に染めるのは非常に困難であった。
これまでポリケトン繊維の染色に関しては、米国特許第5597389号明細書において、ポリケトン繊維は分散染料によって染色可能であることが記載されている。しかしながら、この文献で記載されているのはエチレン−プロピレン−一酸化炭素のターポリマーからなるポリケトン繊維の染色技術である。この技術では、エチレン−一酸化炭素の交互共重合体を主成分とする高結晶性のポリケトン繊維を染色することは困難であり、染料を浸透させるのに極めて長い染色時間を要し、それでも十分な色彩を付与することは困難であるという問題があった。
【0004】
本発明者らは、アニオン基を有するポリケトン繊維はカチオン染料により染色可能であることを見い出した(特開2001−73225号公報)。しかしながら、ポリケトンを金属塩含有溶剤に溶解したドープを用いた湿式紡糸法でポリケトン繊維を製造した場合、溶剤に用いた金属がアニオン基と塩を形成し、繊維中に残存した金属を十分に除去するために長時間の酸洗浄処理が必要になるという問題、発色性を上げるためにはアニオン基の量を増やすと繊維の強度や耐熱性が低下するという問題、カチオン染料で染色すると染色釜が汚れやすく、廃液の回収も煩雑であるという問題があった。
【0005】
繊維を着色するかわりに、ポリマー段階で着色せしめる方法として、顔料をポリマー溶液またはポリマー融液に添加する方法が知られている。ポリケトンにおいては、ポリケトン樹脂に無機微粒子やカーブンブラックを配合する技術(米国特許第4851470号明細書、特開平2−302463号公報など)が開示されている。しかしながら、これらの技術はいずれも低結晶性および低融点のエチレン−プロピレン−一酸化炭素のターポリマーからなるポリケトンを溶融して添加物を混合するものである。エチレンと一酸化炭素の交互共重合体を主たる繰り返し単位とする高結晶性および高融点ポリケトン繊維は、溶融時に熱劣化を起こすので溶融成形法による繊維化ができない。そのため、この技術は本発明について何ら有用な知見を与えるものではなかった。
【0006】
高結晶性および高融点を有するポリケトン繊維の製造方法としては、ポリケトンを有機溶剤や濃厚塩溶液等に溶解した後に繊維化する湿式紡糸方法が知られている(例えば、特開平4−228613号公報、特表平4−505344号公報、特表平7−508317号公報、特表平8−507328号公報、国際公開99/18143号パンフレット、国際公開00/09611号パンフレット等)。 しかしながら、これら先行技術においても顔料や染料を添加したポリケトン着色繊維およびその製造方法に関する技術は一切開示されていない。
【0007】
ビスコースレーヨンやポリアクリロニトリル繊維等の製造に用いられる公知の湿式紡糸法において、ドープに顔料を添加して紡糸する、いわゆる原液着色紡糸法が知られている。しかしながら、本発明者らは、ポリケトンを金属塩溶剤で溶解したドープに顔料や染料を添加する方法を検討したところ、金属塩溶剤ドープに染料や顔料を添加するとこれらは凝集を起こし、紡糸性や延伸性が著しく低下し、実用的な強度を有するポリケトン繊維を得ることができないことがわかった。したがって、従来の原液着色紡糸法をそのままポリケトン繊維の製造に適用することができない。
【0008】
しかし、これまでの先行文献には、原液着色紡糸法における凝集問題や高強度のポリケトン繊維が得られない問題、およびこれらの問題に対する解決策に関する技術は一切開示されていない。
以上のように、エチレンと一酸化炭素の交互共重合体を主たる繰り返し単位とするポリケトン繊維において、高強度、高弾性率および高融点という特性を有しながら、無彩色または有彩色に着色したポリケトン繊維、およびそれを効率的に製造する技術についてはこれまで一切知られていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上述の問題を解決し、
(1)原糸の段階で着色したポリケトン繊維を提供すること、
(2)着色物質の凝集がなく、紡糸性および延伸性が良好で、高強度および高弾性率という優れた力学特性を有するポリケトン繊維を提供すること、および
(3)無彩色または有彩色に着色したポリケトン繊維を、長時間の染色処理や洗浄処理、廃液処理を行うことなく、効率的、かつ、生産性よく製造する方法を提供すること、
である。
【0010】
【発明を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を達成するために、ポリケトンの湿式紡糸法において、高度に結晶化する前に繊維内部に着色物質を微分散させる方法を検討し、1)ポリケトンを溶解する前の溶剤に着色物質を凝集することなく添加するか、2)凝固浴で固化し、膨潤した状態のポリケトン繊維に微粒子状または溶液状の着色物質を添加することによって高強度で高弾性率の着色したポリケトン繊維を工業的に製造できる可能性があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)繰り返し単位の95〜100質量%が1−オキソトリメチレンであるポリケトンから構成されたポリケトン繊維であって、染料および/または顔料をポリケトン繊維に対して0.1〜10質量%含有し、繊維中の染料および/または顔料微粒子の平均粒径が2μm以下であり、微粒子の最も長い部分の長さが5μm以上の粗大粒子の数が繊維断面10000μm2あたりに3個以下であることを特徴とするポリケトン繊維。
(2)染料および/または顔料微粒子の平均粒径が1μm以下であり、微粒子の最も長い部分の長さが5μm以上の粗大粒子の数が繊維断面10000μm2あたり1個以下であることを特徴とする(1)に記載のポリケトン繊維。
【0012】
(3)ポリケトン繊維の結晶化度が70%以上、結晶配向度が95%以上、かつ、融点が260℃以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリケトン繊維。
(4)ポリケトン繊維の引っ張り強度が10cN/dtex以上、かつ、引っ張り弾性率が250cN/dtex以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載のポリケトン繊維。
(5)ポリケトン繊維に対して0.02〜5質量%の紫外線吸収剤およびヒンダードアミン系光安定剤を含有し、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤の質量割合が1:1〜1:5であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1つに記載のポリケトン繊維。
【0013】
(6)繰り返し単位の95〜100質量%が1−オキソトリメチレンからなるポリケトンを、ハロゲン化亜鉛を10〜80質量%含有する溶剤に溶解してドープを製造し、ドープを紡糸口金より凝固浴中に押し出して固化せしめる工程を含むポリケトン繊維の製造法において、染料および/または顔料を平均粒径2μm以下で分散して含有するハロゲン化亜鉛溶剤を調製し、引き続き、前記のポリケトンをハロゲン化亜鉛を含有する溶剤に溶解してドープとし、このドープを平均孔径が5〜50μmのろ過層を1段以上通してから紡糸口金より凝固浴中に押し出すことを特徴とするポリケトン繊維の製造法。
(7)繰り返し単位の95〜100質量%が1−オキソトリメチレンからなるポリケトンをハロゲン化亜鉛を10〜80質量%含有する溶液に溶解してドープを製造し、紡糸口金より凝固浴中に押し出して固化せしめ、続いて、洗浄、乾燥を行った後に延伸する工程を含むポリケトン繊維の製造法において、凝固、洗浄および乾燥のいずれかの工程で、ポリケトン繊維の膨潤度が10質量%以上にある状態で、染料および/または顔料を平均粒径2μm以下で分散して含有する液体を付与することを特徴とするポリケトン繊維の製造法。
【0014】
本発明におけるポリケトン繊維は、繰り返し単位の95〜100質量%、好ましくは97質量%以上、より好ましくは100質量%が化学式(1)で示す、1−オキソトリメチレンから構成されたポリケトンからなる繊維である。
【0015】
【化1】
Figure 0004603208
【0016】
繰り返し単位中の1−オキソトリメチレンの割合が高いほど分子鎖の規則性が向上し、高結晶性で高配向度の繊維が得られ、結果として高強度、高弾性率および高耐熱性を有する高性能のポリケトン繊維が得られる。5質量%未満の範囲内で、一酸化炭素とエチレン以外の化合物、例えば、プロペンやヘキセン等のオレフィンやスチレン等を共重合した成分があってもよい。
本発明のポリケトン繊維は、染料および/または顔料をポリケトン繊維に対して0.1〜10質量%含有する。
【0017】
本発明において、染料とは、高分子学会編「化学繊維の染色と加工」地人書館出版 p.4に定義されているように、可視光線に対して強い吸収を示す有機化合物を意味し、そのものだけでは無色であっても、他のものと結合して同様な性質を示す主体をなすものも染料に含まれる。本発明で使用可能な染料には制限がなく、例えば、酸性染料、カチオン染料、直接染料、硫化染料、媒染染料、バット染料、アゾイック染料、反応性染料、蛍光白色染料、分散染料等の公知の染料が挙げられる。ポリケトン繊維中での分散性、熱延伸時の染料の耐熱性、得られるポリケトン繊維の力学物性および染色の堅牢性の観点から、直接染料、媒染染料、バット染料、アゾイック染料および分散染料が好ましく、分散染料がより好ましい。染料の具体的な例としては、直接染料としてはベンジン系アゾ染料、バット染料としてはアントラキノン系バット染料、分散染料としてはアゾ染料等が挙げられる。
【0018】
本発明において、顔料とは、日本顔料技術協会編「顔料便覧」誠文堂新光社出版 p.1に定義されているように、水や溶媒に溶けない、有色微粒子状の無機又は有機化合物で、展色料と混和して塗膜もしくは成型物に色を与えるものである。本発明に用いられる顔料には制限がなく、例えば、有彩色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、黒色顔料、白色顔料、体質顔料等の公知の顔料が挙げられる。顔料の具体的な例としては、有彩色顔料としては黄色酸化鉄(ベンガラ)やコバルトブルー、蛍光顔料としては昼光蛍光顔料、金属粉顔料としてはアルミニウム粉、黒色顔料としてはカーボンブラック、黒鉛、白色顔料としては酸化チタン、体質顔料としてはシリカ等が挙げられる。
【0019】
なお、本明細書において、染料および顔料をまとめて、着色物質、と呼ぶことがある。
本発明のポリケトン繊維中には、複数種類の染料または複数種類の顔料、さらには染料と顔料が混在したものが存在してもよい。
ポリケトン繊維に含まれる着色物質の割合は、ポリケトン繊維に対して0.1〜10質量%であることが重要であり、好ましくは0.2〜5質量%、より好ましくは0.3〜2質量%である。着色物質の割合が0.1質量%未満の場合、十分な発色性を有するポリケトン繊維を得ることが困難となる。また、着色物質の割合が10質量%を超えると、着色物質の存在によりポリケトン繊維の物性、特に強度が大きく低下する。
【0020】
着色物質はポリケトン繊維中では異物として存在し、その存在形態によっては微量であっても繊維物性を損なうことがある。特に、着色物質が繊維中で凝集して粗大粒子として存在する場合、強度が大きく低下する。このため、ポリケトン繊維中の着色物質の平均粒径は2μm以下であることが必要であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。
平均粒径が小さくても極く少数の粗大凝集物によって繊維強度が大きく損なわれるため、繊維中の着色物質粒子の最も長い部分の長さが5μm以上の粗大粒子の数が、ポリケトン繊維10000μm2当たり3個以下であることが必要であり、好ましくは10000μm2当たり1個以下、最も好ましくは10000μm2当たり0個である。
【0021】
本発明のポリケトン繊維をロープや縫い糸等の産業資材用途に幅広く活用するためには、力学物性に優れることが望まれる。そのためには、ポリケトン繊維の結晶化度が60%以上、結晶配向度が90%以上であることが好ましく、より好ましくは結晶化度が70%以上、結晶配向度が95%以上である。
ポリケトン繊維の特性としては、高融点、高強度、かつ、高弾性率を有することが好ましい。具体的には、融点は255℃以上であることが好ましく、より好ましくは260℃以上である。引っ張り強度は7cN/dtex以上であることが好ましく、より好ましくは10cN/dtex以上、最も好ましくは12cN/dtex以上である。引っ張り弾性率は200cN/dtex以上であることが好ましく、より好ましくは250cN/dtex、最も好ましくは300cN/dtex以上である。
【0022】
ポリケトン繊維の形態は、長繊維および短繊維のいずれであってもよい。長繊維の場合、マルチフィラメントおよびモノフィラメントのいずれであってもよく、捲縮や仮撚り等の加工を加えたものであってもよい。繊度には制限はないが、単糸繊度は0.5〜10dtex、総繊度は50〜10000dtexが好ましい。繊維の断面形状も制限はなく、円形、楕円、長方形、三角、アルファベット型等任意の形状とすることができる。
【0023】
本発明のポリケトン繊維には、必要に応じて、各種の添加剤、例えば、熱安定剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、油剤、界面活性剤などが含まれていてもよい。
着色物質として染料や有機顔料を用いた場合には、耐光堅牢性の観点から、紫外線吸収剤およびヒンダードアミン系光安定剤を含むことが好ましい。本発明で使用可能な紫外線吸収剤には制限はなく、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、修酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物パラアミノ安息香酸、サリチル酸系化合物、桂皮酸系化合物等の公知の化合物を使用することができる。これら紫外線吸収剤の割合は、ポリケトン繊維に対して0.01〜3質量%が好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤は、例えば、アデカスタブ(登録商標、旭電化社製)LA−77、Tinuvin(登録商標、チバスペシャリティケミカルス社製)144等、公知の化合物が使用可能である。ヒンダードアミン系光安定剤の量はポリケトン繊維に対して、0.01〜3質量%が好ましい。
【0024】
これら、安定剤は複数種類のものを配合して用いてもよい。紫外線吸収剤およびヒンダードアミン系光安定剤を併用することが好ましい。この場合、紫外線吸収剤:ヒンダードアミン系光安定剤の質量比率が1:1〜1:5であることが好ましく、両者の合計がポリケトン繊維に対して0.02〜5質量%であることが好ましい。
【0025】
次に、本発明のポリケトン繊維の製造法について説明する。
本発明のポリケトン繊維は、ポリケトンが溶剤に溶解されたドープを用いて製造される。
本発明に用いるポリケトンは、繰り返し単位の95〜100質量%が1−オキソトリメチレンであり、製造に際して、紡糸性および延伸性、得られるポリケトン繊維の力学特性などの観点から、極限粘度は2〜10であることが好ましい。
ポリケトンの溶剤としては、公知の有機溶剤および無機溶剤が使用できるが、溶剤の毒性、安全性、回収コスト、得られる繊維の物性の観点から金属塩溶液が好ましい。金属塩溶液としては、例えば、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属等を含有する溶液が挙げられ、ハロゲン化亜鉛を10〜80質量%含有する溶液(例えば、塩化亜鉛/塩化カルシウム/水=23/40/37の水溶液)が好ましく用いられる。この溶液にポリケトンを添加し60〜150℃で加熱、攪拌してポリケトンを溶解することによりドープが得られる。
【0026】
金属塩溶液を用いた湿式紡糸方法において、本発明の着色物質が微分散して存在するポリケトン繊維を得るためには、溶解から延伸の間のいずれかの工程で着色物質を平均粒径が2μm以下の状態で添加することが必要である。着色物資の添加位置としては、(1)ドープ調製工程での添加、(2)凝固、洗浄および乾燥工程のいずれかの工程での添加、または、(3)(1)および(2)の両方の工程で添加することが好ましい。
(1)ドープ調製工程での添加
ドープ調製工程で添加する場合、ドープ中で着色物質の凝集により粗大粒子が存在する場合や着色物質の平均粒径が大きい場合には、得られるポリケトン繊維の物性が損なわれるばかりか、紡糸時のフィルター詰まり、吐出不良、断糸が起こり、工程通過性が大きく損なわれる。このため、ドープに着色物質を添加する場合には着色物質を微分散化させることが重要であり、具体的にはドープ中の着色物質の平均粒径を2μm以下、好ましくは1μm以下にすること、および微粒子の最も長い部分の長さが5μm以上の粗大粒子を繊維断面10000μm2あたりに3個以下、好ましくは1個以下、より好ましくは0にすることが重要である。
【0027】
ドープ中に着色物質を微分散化させる場合は、一旦ドープを調製した後に着色物質を添加する方法では凝集物ができやすく、また、ポリケトンが不溶化して析出することがある。これを防止するために、(イ)着色物質を金属塩溶剤に分散せしめる方法、または(ロ)ポリケトンと着色物質との混合物を金属塩溶剤に添加する方法が好ましく、分散性、生産性の観点から(イ)の方法がより好ましい。この際の着色物質の添加量は、ポリケトンに対して0.1〜10質量%である。
【0028】
(イ)の方法においては、金属塩を溶解する溶液(金属塩水溶液を溶剤とする場合には水)に予め着色物質を平均粒径2μm以下に微分散化させておくと良好な分散性を有するドープを効率的に得ることができる。この場合、必要に応じて、着色物質の表面を表面処理剤で親溶剤化(水溶液の場合には親水化)したり、界面活性剤を添加することにより分散性を向上せしめ、粒子どうしの凝集を防止し、着色物質を平均粒径2μm以下に微分散させると共に、微粒子の最も長い部分の長さが5μm以上の粗大粒子の数が繊維断面10000μm2あたり3個以下、より好ましくは0にすることができる。
【0029】
表面処理剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等の公知の化合物が挙げられ、界面活性剤としては、公知のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を用いることができる。界面活性剤を用いる場合、界面活性剤の使用量は、着色物質に対して0.1〜5質量%が好ましい。
【0030】
また、着色物質として金属塩溶剤に溶解性のある物質を用いてもよく、例えば、金属塩水溶液溶剤に対して水溶性染料を用いると効率的に着色物質が均一に微分散したドープを得ることが可能となり好ましい。
このようにして得たポリケトンドープを、紡糸口金より凝固浴中に吐出し繊維状とした後、塩酸等の酸水溶液により金属塩を洗浄除去し、次いで、乾燥を行いポリケトン繊維中の液体を除去する。この際、紡糸口金より吐出前に1段以上のろ過工程を通して、予め粗大粒子や凝集粒子を除去することができる。ろ過の方法には制限はないが、平均孔径が5〜50μmのろ過層を1段以上通すことにより、微粒子の最も長い部分の長さが5μm以上の粗大粒子の数が繊維断面10000μm2あたりに3個以下、より好ましくは0にすることができる。
【0031】
(2)凝固工程、洗浄工程、乾燥工程での添加
本発明者らは、凝固浴中で繊維状となったポリケトン繊維はポリケトンに対して約2〜6倍もの溶液で膨潤した構造であり、ポリケトンが膨潤した段階で着色物質を付与すると、常温、常圧下で極めて容易に繊維中に着色物質が分散、浸透することを見いだした。この方法によれば、溶解機や押し出し装置、紡糸口金等の交換を行うことなく各種着色繊維の製造や無着色繊維の製造の切り替えが可能で、(1)の方法に比べて極めて生産性が高い優れた方法である。
【0032】
この方法において、着色物質を効率的、かつ、速やかに繊維中に付与するためには、ポリケトン繊維の膨潤度および着色物質の分散性が重要である。ポリケトン繊維の膨潤度とは、後述する方法で求められる値であり、液体で膨潤したポリケトン繊維中の、(液体量/ポリケトン繊維量)の割合の百分率である。
着色物質を付与する際のポリケトン繊維の膨潤度は10質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上、最も好ましくは100質量%以上である。膨潤度が10質量%未満の場合、着色物質が繊維中への浸透速度が遅くなり、効率的に着色繊維を製造することが困難となる。
【0033】
膨潤したポリケトン繊維中に着色物質を速やかに添加するためには、ポリケトン繊維を膨潤せしめている液体と親和性のよい液体に着色物質を溶解または分散せしめることが好ましい。例えば、ポリケトン繊維が水で膨潤している場合には、水、メタノール、アセトン等の親水性溶剤中に着色物質を溶液、乳化液または懸濁液として添加する方法が挙げられる。この際、着色物質の添加割合は、ポリケトン繊維に対して0.1〜10質量%であることが必要である。
【0034】
着色物質を添加する液体中の着色物質の平均粒径を2μm以下にする共に、長さが5μm以上の粗大粒子の数が繊維断面10000μm2あたりに3個以下、好ましくは0になるように、着色物質を界面活性剤で分散させることが特に重要である。界面活性剤を使用して着色物質を分散せしめる場合には、延伸性および得られるポリケトン繊維の強度の観点から、界面活性剤の総添加量をポリケトン繊維に対して好ましくは2質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下とする。また、必要に応じて、添加する液体を、平均孔径が5〜50μmのろ過層を通して粗大粒子の数が繊維断面10000μm2あたりに3個以下、好ましくは0にすることができる。
【0035】
このようにして得られた着色物質を含有するポリケトン繊維を乾燥および延伸する。乾燥方法には制限はないが、高結晶化度で高強度のポリケトン繊維を得るためには、乾燥条件として、100〜260℃、10〜120秒の処理が好ましく、160〜240℃、15〜60秒がより好ましい。さらに、引き続き200〜280℃の温度で5倍以上の熱延伸を行う。得られるポリケトン繊維の結晶構造、融点および繊維物性の観点から、総延伸倍率を好ましくは10倍以上、より好ましくは12倍以上とし、2段以上の多段延伸を行うことが好ましい。多段延伸を行う場合には、延伸段数が増えるに連れて延伸温度を徐々に高くしていくことが望ましい。
【0036】
【発明の実施の形態】
本発明を実施例などにより具体的に説明するが、それらは本発明の範囲を限定するものではない。
本発明に用いられる各測定値の測定方法は次の通りである。
(1)極限粘度
極限粘度[η]は次の定義式に基づいて求められる値である。
Figure 0004603208
定義式中のt及びTは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノール及びヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間である。Cは上記100ml中のグラム単位による溶質質量値である。
【0037】
(2)ポリケトンの組成
1H−NMR法により1−オキソトリメチレン基の量比を求める。
(3)ポリケトン繊維中の着色物質の含有量
3−A:染料
染料0.1gをヘキサフルオロイソプロパノール100mlに溶解後、アセトンを添加し、所定の濃度に希釈した溶液の吸光度をA、およびポリケトン繊維1.0gをヘキサフルオロイソプロパノール100mlに溶解後、アセトンを添加し所定の濃度に希釈した溶液の吸光度aを、分光光度計(日本分光(株)製V―530型)から求め、(a/A)/10を染料含有率とする。吸光度は染料の最大吸収波長での値(実施例で用いた染料については580nmでの値)を採用する。
3−B:顔料
高周波プラズマ発光分光分析により、公知の方法を用いて繊維中の顔料の元素の量を測定する。
実施例においては、Tiの元素量を測定した。
【0038】
(4)結晶化度
示差熱測定装置Pyris1(商標)(パーキンエルマー社製)を用いて、下記条件で測定を行う。試料として、糸長を5mmに切断した繊維を用いる。
試料の質量 : 1mg
測定温度 : 30℃→300℃
昇温速度 : 20℃/分
雰囲気 : 窒素、流量=200mL/分
得られた吸発熱曲線において、200〜300℃の範囲に観測される最大の吸熱ピークの面積から計算した熱量ΔH(J/g)を用いて下記式により結晶化度を算出する。
結晶化度 = (ΔH/225) × 100 (%)
【0039】
(5)結晶配向度
(株)リガク社製イメージングプレートX線回折装置、RINT(登録商標)2000を用いて下記の条件で繊維の回折像を取り込む、
X線源 : CuKα線
出力 : 40KV 152mA
カメラ長 : 94.5mm
測定時間 : 3分
得られた画像の2θ=21°付近に観察される(110)面を円周方向にスキャンして得られる強度分布の半値幅Hから下記式により結晶配向度を算出する。
結晶配向度=[(180−H)/180]×100 (%)
【0040】
(6)融点
(4)で得られる吸発熱曲線の200〜300℃の範囲に観測される最大の吸熱ピークのピークトップ温度を融点とする。
(7)引っ張り強度、引っ張り弾性率
JIS−L−1013に基づいて測定する。
弾性率は伸度0.1%における荷重と伸度0.2%における荷重から算出した初期弾性率の値を採用する。
【0041】
(8)膨潤度
ポリケトン繊維を遠心分離機(KOKUSAN−H−200(商標)、国産遠心器(株)社製)を用いて4500rpmにて10分間遠心脱水し、繊維表面や繊維間に付着した液体分を取り除く。このポリケトン繊維を105℃で5時間乾燥し、繊維内部の液体分を取り除く。乾燥前後の繊維の重量をそれぞれMa、Mdとして下式より膨潤度を算出する。
膨潤度 = [(Ma−Md)/Md] × 100 (%)
【0042】
(9)繊維中の着色物質の平均粒径
ポリケトン繊維を液体窒素に浸漬し、冷却した状態で切断し、繊維の縦断面切片を調製する。この試料を4酸化オスミウムで処理する。電子顕微鏡(JEM2000FX(商標)日本電子(株)社製)を用いて、得られた切片の倍率500〜50000倍の写真(画像)を撮影する。撮影したネガ画像を画像解析装置(IP1000−PC(商標)、旭化成(株)社製)を用いて、以下の方法で計測する。
スキャナー(JX−330(商標)、シャープ(株)社製)を使用して、ネガ画像を白黒256階調(ガンマ補正値は2.2)で取り込む。取り込み領域は撮影倍率によって選択する。取り込んだ256階調の画像に対し、2値化処理を行う。得られた2値化画像の粒子解析を行い、着色物質の円相当径を求める。
5視野計測した後に、計測した全着色物質の円相当径について算術平均値を計算し、平均粒径とする。
【0043】
(10)繊維中の粗大粒子の数
100μm四方の写真を(9)の装置、方法で2値化画像とし、粒子解析を行い各粒子の最大長を求め、最大長が5μm以上の粗大粒子の数を計測する。同時に各画像で計測する繊維断面積を求め、繊維断面積が10000μm2に満たない場合には、計測する繊維断面積が10000μm2以上となるまで複数の画像について計測を行う。全画像より計測された最大長が5μm以上の粒子数の和をN、繊維断面積の和をS(μm2)とし、下式により10000μm2あたりの粗大粒子の数を求める。
(N/S)×10000 (個/10000μm2
【0044】
(11)繊維中の安定剤の含有量
1H−NMR法により、ポリケトンと安定剤のピーク面積比より求める。
【0045】
【実施例1】
常法により、繰り返し単位の100質量%が1−オキソトリメチレンである極限粘度5.9のポリケトンを調製した。このポリケトンを、塩化カルシウム40質量%/塩化亜鉛22質量%を含有する水溶液に添加し、ポリマー濃度6.8質量%のドープを得た。得られたドープをホール数50の紡糸口金より2質量%の塩化カルシウム、1.1質量%の塩化亜鉛および0.1質量%の塩酸を含有する−2℃の水からなる凝固浴に吐出し、引き続き、塩酸洗浄、水洗浄を行い、膨潤度380%のポリケトン繊維を製造した。この膨潤したポリケトン繊維に、分散染料[カヤロン(登録商標)ポリエステルブルー 3R−SF(日本化薬(株)社製)]のアセトン溶液を0.3質量%(対ポリケトン)含浸せしめ、引き続き、安定剤[酸化防止剤:IRGANOX(登録商標)、565(チバスペシャリティケミカルス社製)、アデカスタブ(登録商標)、AO23(旭電化(株)社製)、紫外線吸収剤:アデカスタブ(登録商標)、LA31(旭電化(株)社製)、ヒンダードアミン光安定剤:アデカスタブ(登録商標、LA−63P(旭電化(株)社製)を0.025/0.025/0.1/0.2質量%(対ポリケトン)の割合で溶解した溶液]を含浸せしめ、水洗後、引き続き温度225℃で1分間の定長乾燥した。この繊維を225℃/240℃/253℃/257℃でそれぞれ7.0/1.5/1.3/1.25倍の多段延伸を行った。
【0046】
ポリケトン繊維中の染料の割合は0.27質量%、染料の平均粒径は0.01μm以下(電子顕微鏡で粒子状物が観察されず)であり、長さ5μm以上の粗大粒子は観察されなかった。この繊維は青色の色調であった。繊維の結晶化度は80.1%、結晶配向度は97.2%であった。また繊維の融点は268℃、強度は14.6cN/dtex、弾性率は377cN/dtexであり、非常に優れた物性を有するものであった。
表1および表2に、実施例1および以下に述べる実施例および比較例におけるポリケトン繊維の着色状態、構造および特性をまとめて示す。
【0047】
【実施例2】
実施例1において、分散染料の添加量を2質量%(対ポリケトン)とする以外は同様にして紡糸、乾燥、延伸を行った。このポリケトン繊維の染料の含有率は1.8質量%、平均粒径は0.02μmであり、濃青色の色調であった。この繊維の結晶化度は77%、結晶配向度は97.0%であった。繊維の融点は266℃、強度は10.2cN/dtex、弾性率は345cN/dtexであり、優れた物性を有するものであった。
【0048】
【実施例3】
平均粒径0.3μmの二酸化チタン微粒子からなる白色顔料(クロノスKA−35(商標)、チタン工業(株)社製)を4質量%の濃度で水に分散させた(チタン分散水)。この分散液に塩化カルシウムおよび塩化亜鉛を加え、塩化カルシウム40質量%/塩化亜鉛22質量%/チタン分散水38質量%からなる水溶液を調製した。この金属塩水溶液に、実施例1で調製したポリケトンを濃度6.8質量%となるよう添加してドープとした。ドープ中の二酸化チタン微粒子の分散性は良好で、このドープを20μm焼結フィルターでろ過した際にフィルター詰まりやろ過圧力の上昇は観察されなかった。
【0049】
ろ過されたドープを実施例1と同様にして凝固、洗浄を行い、膨潤ポリケトン繊維を得た。この膨潤したポリケトン繊維に、安定剤[酸化防止剤:IRGANOX(登録商標)565、チバスペシャリティケミカルス(株)社製]とアデカスタブ(登録商標) AO23、旭電化(株)社製]を0.025/0.025質量%(対ポリケトン)の割合で溶解した溶液]を含浸せしめ、引き続き温度225℃で1分間の定長乾燥した。この繊維を225℃/240℃/253℃/257℃でそれぞれ7.0/1.5/1.3/1.25倍の多段延伸を行った。
【0050】
得られたポリケトン繊維中の顔料の割合は0.25質量%、平均粒径は0.5μmであり、白度の高い色調であった。繊維の結晶化度は79.1%、結晶配向度は97.0%の構造であった。繊維の融点は266℃、強度は11.5cN/dtex、弾性率は355cN/dtexであり、優れた物性を有するものであった。
【0051】
【比較例1】
実施例1において、染料の添加割合をポリケトン繊維に対して15質量%とした以外は同様にして紡糸、乾燥、延伸を行った。この繊維は延伸性が不良で、1段目に225℃で2倍以上の延伸をすることができなかった。1.8倍の延伸によって得られたポリケトン繊維の強度は1.3cN/dtex、弾性率は35cN/dtexであり、実用的な性能を有する繊維を得ることができなかった。電子顕微鏡でこの繊維の断面を観察したところ、染料どうしの凝集物が多数確認され、長さが5μm以上の粗大粒子の数は3.3個/10000μm2と本発明の範囲外のものであった。
【0052】
【比較例2】
実施例1において、洗浄後の膨潤糸に紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤および分散染料を添加しない以外は同様にして、紡糸、乾燥、延伸を行った。得られたポリケトン繊維の結晶化度は80.3%、結晶配向度は97.8%であり、発達した構造を有する繊維であった。
このポリケトン繊維を、下記組成の染色液で120℃、40分間染色した。染色終了後、40℃の温水で10分間繊維表面の染料を洗い流した。
【0053】
(染色液組成)
染料:カヤロン(登録商標)ポリエステルブルー3RSF 、日本化薬(株)社製、染料owf:4%、浴比:1:50、分散剤:ニッカサンソルト(登録商標)7000、日華化学(株)社製、分散剤濃度:0.5g/リットル、酢酸0.25ml/リットル、酢酸ナトリウム1g/リットル。
得られたポリケトン繊維は、青みがかかっているものの、その色調は実施例1および2で得られた繊維と比較して不十分なものであった。この繊維中の染料の割合は0.05質量%と本発明の範囲外であった。
【0054】
【比較例3】
実施例3のドープ調製手順を、塩化カルシウム40質量%/塩化亜鉛22質量%/水38質量%からなる水溶液に、ポリケトンを濃度6.8質量%で溶解してドープとしたものに、平均粒径0.3μmの白色顔料を水に対して4質量%加える以外は同様にして紡糸を行った。
白色顔料の分散性は不良で、2時間の攪拌後にもドープ中に凝集粒子が残っていることが観察された。得られたドープを20μmの焼結フィルターでろ過し、引き続き、実施例1と同様にして紡糸を行った。紡糸性は不良で、吐出開始後より吐出圧力の上昇があり、断糸が多発し、連続的に紡糸を行うことが困難で、繊維を得ることができなかった。凝固浴中で凝固沈降した糸を、塩酸および水で洗浄し、100℃、10分間の乾燥後、顕微鏡で繊維断面を観察したところ、白色顔料の平均粒径は4.5μm、粗大粒子数は5.2個/10000μm2と本発明の範囲外のものあった。
【0055】
【比較例4】
実施例1において、ポリケトン繊維の乾燥終了後(膨潤度0.2%)に染料溶液を付与する以外は同様にして紡糸、乾燥、延伸を行った。得られたポリケトン繊維は、見かけ上、着色していたものの、軽い水洗で色が全くなくなり、無着色の繊維となった。
【0056】
【表1】
Figure 0004603208
【0057】
【表2】
Figure 0004603208
【0058】
【発明の効果】
本発明ポリケトン繊維は、無彩色または有彩色に着色したものであり、長時間の染色処理や洗浄処理、廃液処理が不要で生産性に優れた繊維である。また、高強度、高弾性率、高融点の優れた特性を具備しており、高い強度を有する着色繊維の求められる用途(産業用織物、産業用不織布、ロープ、漁網、産業用縫い糸、釣り糸、紡績糸等)に極めて有用である。

Claims (7)

  1. 繰り返し単位の95〜100質量%が1−オキソトリメチレンであるポリケトンから構成されたポリケトン繊維であって、染料および/または顔料をポリケトン繊維に対して0.1〜10質量%含有し、繊維中の染料および/または顔料微粒子の平均粒径が2μm以下であり、微粒子の最も長い部分の長さが5μm以上の粗大粒子の数が繊維断面10000μm2あたり3個以下であることを特徴とするポリケトン繊維。
  2. 染料および/または顔料微粒子の平均粒径が1μm以下であり、微粒子の最も長い部分の長さが5μm以上の粗大粒子の数が繊維断面10000μm2あたり1個以下である請求項1記載のポリケトン繊維。
  3. ポリケトン繊維の結晶化度が70%以上、結晶配向度が95%以上、かつ、融点が260℃以上である請求項1または2記載のポリケトン繊維。
  4. ポリケトン繊維の引っ張り強度が10cN/dtex以上、かつ、引っ張り弾性率が250cN/dtex以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリケトン繊維。
  5. ポリケトン繊維に対して0.02〜5質量%の紫外線吸収剤およびヒンダードアミン系光安定剤を含有し、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤の質量割合が1:1〜1:5である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリケトン繊維。
  6. 繰り返し単位の95〜100質量%が1−オキソトリメチレンからなるポリケトンを、ハロゲン化亜鉛を10〜80質量%含有する溶剤に溶解してドープを製造し、ドープを紡糸口金より凝固浴中に押し出して固化せしめる工程を含むポリケトン繊維の製造法において、以下の工程:
    染料および/または顔料を平均粒径2μm以下で分散して含有し、かつ、該染料および/または顔料に対して界面活性剤を0.1〜5質量%で含量するハロゲン化亜鉛溶剤を調製し、引き続き、
    前記のポリケトンをハロゲン化亜鉛を含有する溶剤に溶解してドープとし、
    このドープを平均孔径が5〜50μmのろ過層を1段以上通してから紡糸口金より凝固浴中に押し出す
    含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリケトン繊維の製造法。
  7. 繰り返し単位の95〜100質量%が1−オキソトリメチレンからなるポリケトンをハロゲン化亜鉛を10〜80質量%含有する溶液に溶解してドープを製造し、紡糸口金より凝固浴中に押し出して凝固(固化せしめ、続いて、洗浄、乾燥を行った後に延伸する工程を含むポリケトン繊維の製造法において、凝固、洗浄および乾燥のいずれかの工程で、ポリケトン繊維の膨潤度が100質量%以上にある状態で、染料および/または顔料を平均粒径2μm以下で分散して含有する液体を、該ポリケトン繊維に対して0.1〜10質量%の含有量になるように、付与することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリケトン繊維の製造法。
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