JP2005146474A - ポリビニルアルコール系複合繊維およびその製造方法 - Google Patents

ポリビニルアルコール系複合繊維およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 機械特性や染色性に極めて優れたPVA系複合繊維およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 下記(A)成分および(B)成分で構成され、繊維中に占める(B)成分の比率が5〜50質量%であるポリビニルアルコール系複合繊維。
(A)重合度1200以上、ケン化度99モル%以上のポリビニルアルコール成分、
(B)ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、グリセリン、エチレングリコールから選択される少なくとも1種の有機溶媒に対し、120℃において5〜80質量%の溶解性を有し、かつ融点が140℃〜250℃であるポリアミド成分、
【選択図】なし

Description

本発明は、特定のポリビニルアルコール(以下、PVAと称す)成分と特定のポリアミド成分とを主たる構成成分とするPVA系複合繊維に関し、特にPVA成分と特定の有機溶媒に溶解性を有するポリアミド成分とから構成された、機械特性や染色性に極めて優れたPVA系複合繊維およびその製造方法に関するものである。
従来、PVA系繊維は高強度かつ高弾性率であり、かつ耐光性や耐薬品性等の諸性能に優れるため、産業資材分野を中心に広く利用されている。しかしながら、PVA系繊維は元来染色性に乏しく、衣料用途は勿論のこと産業資材用途においても適用範囲に一部制限を受けるという問題があった。PVA系繊維の染色は、一般的には硫化染料、金属錯塩染料、バット染料、直接染料などを使用して行われるが、いずれも色相の鮮明性や濃色化、染色堅牢度などに問題があった。
PVA系繊維の染色性を改良する試みは古くから行われており、例えば青化ビニリデン化合物を添加した直接染料による濃色化方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、ポリエステルやナイロンの添加による染色性改良方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、これら染色性改良に用いた添加剤はPVAとの相溶性に乏しいため分散性が悪く、したがって染色斑が生じやすいという問題があった。また高温で処理するため繊維性能が劣化しやすく、さらに染色のために特別な工程や時間が必要となるため作業効率にも問題があった。
さらに分散染料により染色可能で平均粒径が0.05〜5μmである微粒子を1〜40重量%含有せしめ、PVA系繊維に分散染料に対する可染性を付与する方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながらこの方法では、微粒子を配合することによる繊維性能の低下などの問題があった。
一方、PVA系繊維の紡糸原液中での着色や繊維化工程内で染色する方法も提案されている(例えば、特許文献4参照。)。紡糸原液に顔料を添加する原液着色法によれば、難染性の合成繊維の着色が可能であり、均一な着色ができること、耐光性、耐摩耗性などの堅牢度の優れた着色繊維が得られること、さらに染色のための特別な工程が不要であること、染色における熱履歴などで強度低下を生じないなどのメリットが得られる。しかしながら、その一方で繊維の製造装置は汚染されやすく、色銘柄の切替が困難であるなど、実用性の面で問題があった。
特公昭36−014565号公報 特公昭43−010172号公報 特開平11−229233号公報 特開2002−242084号公報
以上述べたように、従来のPVA系繊維は、染色性に乏しかったり、あるいは染色性が改善された場合においても実用性の面で不十分という問題があり、それらの問題点が解決されたPVA系繊維の開発が望まれていた。
上記目的を達成すべく本願発明者等は鋭意検討を重ねた結果、特定のPVA成分と特定の有機溶媒に溶解性を有するポリアミド成分からなるポリマーを用い、有機溶媒中で混合溶解して均一な紡糸原液とし、さらに固化過程を経ることにより、染色性や染色の均一性、染色堅牢度に優れ、さらには強度をはじめとする機械的特性にも極めて優れたPVA系複合繊維が得られることを見出した。
すなわち本発明は、下記(A)成分および(B)成分で構成され、繊維中に占める(B)成分の比率が5〜50質量%であるポリビニルアルコール系複合繊維である。
(A)重合度1200以上、ケン化度99モル%以上のポリビニルアルコール成分、
(B)ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、グリセリン、エチレングリコールから選択される少なくとも1種の有機溶媒に対し、120℃において5〜80質量%の溶解性を有し、かつ融点が140℃〜250℃であるポリアミド成分、
そして本発明は好ましくは(B)成分がカプロラクタム、アジピン酸、1,6−ヘキサメチレンジアミンを主たる構成単位とするコポリアミドである上記のPVA系複合繊維である。
さらに本発明は上記(A)成分および(B)成分を有機溶媒中で混合溶解した均一な紡糸原液とせしめ、固化過程を経てなるPVA系複合繊維の製造方法に関する。
本発明のPVA系複合繊維は、極めて優れた機械的特性、染色性、耐水性を有しており、従来のPVA系繊維やナイロン繊維等にはない有用性を有している。本発明のPVA系複合繊維及びそれからなる繊維構造体は、例えば戦闘服や消防服等の衣料分野(特に防護衣料分野)、カーテン、カーペット等のリビング資材分野、カーシート、エアーフィルター等幅広い分野で使用可能であり、特にその高品位な染色性を生かした衣料分野あるいはリビング分野に好適である。
本発明の複合繊維を形成する(A)成分であるPVA成分は重合度1200以上、ケン化度99モル%以上、好ましくは99.5モル%以上のビニルアルコールユニットを主体構成単位とするポリマーであり、得られる複合繊維の力学的性質、耐水性の点からは高重合度で高ケン化度のものが好ましい。PVA成分のケン化度が99モル%を下回ると、得られる複合繊維の機械的性能及び耐熱性が低下するので好ましくない。またPVA成分の重合度は、得られる複合繊維の機械的性能等の点から1200以上であることが必要であるが、繊維の紡糸性等の点からは10000以下であることが好ましい。
本発明の複合繊維に用いられる(A)成分は所望によりエチレン、酢酸ビニル、イタコン酸、ビニルアミン、アクリルアミド、ピバリン酸ビニル、無水マレイン酸、スルホン酸含有ビニル化合物などの構成単位により一部変性されていてもかまわない。しかしながら、使用するPVA成分の結晶性が高いほど、本発明の複合繊維の機械的性能や耐水性も向上することから、結晶化を進行させるためにもビニルアルコールユニットが99モル%以上のポリマーがより好適に使用される。
本発明の複合繊維を形成する(B)成分としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、グリセリン、エチレングリコールから選択される少なくとも1種の有機溶媒に対し、120℃において5〜80質量%の溶解性を有するポリアミドを選択することが必要である。上記した有機溶媒に対する溶解性が5質量%を下回るようなポリアミドでは複合繊維の形成が困難となったり、また複合繊維が得られたとしても本発明の目的とする染色性や機械的特性といった諸性能が発現しない。一方、溶解性が80質量%を越えるようなポリアミドでは、得られる複合繊維が耐薬品性に劣るものとなる。好ましくは10〜70質量%、より好ましくは15〜60質量%である。
さらに本発明で使用する(B)成分は、融点が140〜250℃のポリアミドであることが、本発明の複合繊維が目的とする染色性や機械的特性を得るうえで必要である。融点が140℃を下回ると、複合繊維を染色する工程において膠着などの問題点が生じたり、複合繊維の機械的特性が低下する。逆に融点が250℃を上回るようなポリアミドでは、複合繊維を形成する際の延伸性が損なわれやすく、そのため複合繊維の力学物性が劣るものとなる。好ましくは150〜240℃、より好ましくは160〜230℃である。
本発明で使用する(B)成分の種類に特に制限はなく、ε−カプロラクタム、ラクリルラクタムなどのラクタム類、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、デカン2酸、ドデカン2酸、テレフタル酸、イソフタル酸などのジカルボン酸、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、メタキシリレンジアミンなどのジアミン類などポリアミド形成性モノマーの1種類以上を組み合せて重縮合または開環重合することによって得られるが、本発明の複合繊維に用いられるポリアミドとしては、上記した有機溶媒に対する溶解性、融点、および経済性の観点から、ε−カプロラクタム、アジピン酸、1,6−ヘキサメチレンジアミンを組み合せて重合することによって得られるコポリアミドが最も好ましい。
本発明の複合繊維に用いられる(B)成分の重合度に特に制限はないが、濃硫酸中で測定した極限粘度が0.5〜3.0(dl/g)の範囲であることが好ましく、0.8〜3.0(dl/g)の範囲であることがさらに好ましい。極限粘度が0.5(dl/g)を下回ると複合繊維の機械的特性が低下するので好ましくない。また3.0(dl/g)を上回ると、粘度が高くなり過ぎて繊維形成性(紡糸性)が低下するので好ましくない。
本発明の複合繊維では、繊維中に占める(B)成分の比率が5〜50質量%の範囲であることが重要である。(B)成分の比率が5質量%を下回ると、本発明の目的とする優れた染色性が発現する複合繊維が得られない。逆に(B)成分の比率が50質量%を上回る場合、本来PVA系繊維が有している強度等の機械的特性が損なわれる。好ましくは10〜40質量%、より好ましくは15〜30質量%の範囲である。
従来のPVA系繊維は、PVAポリマーのみを水あるいは有機溶剤を溶媒とする紡糸原液から繊維化されることが一般的である。本発明では紡糸原液構成溶媒として後述する有機溶剤を用い、(A)成分であるPVA成分と、特定の溶媒に対する溶解性に基づいて選択された(B)成分であるポリアミド成分とから均一な紡糸原液を形成させることに特徴を有する。上記した(A)成分および(B)成分は同一の有機溶媒中で加熱溶解され、混合されて均一な紡糸原液となる。ポリマー溶解濃度は(A)成分であるPVAポリマーの重合度、ケン化度、および(B)成分であるポリアミドポリマーの重合度等によって異なるが3〜30質量%であることが好ましい。一般に高重合度のPVAポリマーやポリアミドポリマーが用いられる場合にはポリマー溶解濃度は低濃度とし、PVAポリマーやポリアミドポリマーが低重合度の場合にはポリマー溶解濃度は高濃度となるように調整し、調整後の紡糸原液粘度が紡糸される温度において数十〜数百ポイズになることが好ましい。
紡糸原液を構成する溶媒(紡糸原液構成溶媒)としては、例えばジメチルスルホキシド(以下、DMSOと略記)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどの極性溶媒やグリセリン、エチレングリコールなどの多価アルコール類、およびこれらとロダン塩、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛などの膨潤性金属塩の混合物、さらにはこれら溶媒同士、あるいはこれら溶媒と水との混合物などが例示され、有機溶剤系の紡糸原液が用いられる。この中でも、とりわけDMSOが低温溶解性、低毒性、低腐食性などの点で最も好ましい。もちろん、本発明の効果を損なわない範囲であれば、紡糸原液にはPVA成分、ポリアミド成分及び紡糸原液構成溶媒以外の添加剤(安定化剤、酸化防止剤など)やポリマーが含まれていてもよい。
本発明の複合繊維の紡糸は、湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により行われるのが好ましい。紡糸口金と凝固浴との間に0.1〜数cmのエアギャップを設けた乾湿式紡糸法は、特に紡糸原液と固化浴の温度差が大きい場合には好適であり、一方紡糸口金が固化浴と接触している湿式紡糸法は低粘度原液を紡糸する場合に好適で、さらに口金のホール数が多くなっても膠着なしに紡糸できる利点を有している。かかる湿式紡糸法を用いるか、あるいは乾湿式紡糸法を用いるかは原液の状態や紡糸条件により選択すればよい。なお本発明でいう固化とは、流動性のある紡糸原液が流動性のない固体に変化することをいい、原液組成が変化せずに固化するゲル化と原液組成が変化して固化する凝固のいずれも包含する。
紡糸原液の吐出時の液温は50〜150℃の範囲が好ましく、紡糸原液がゲル化したり、分解や着色を起こさない範囲とすることが好ましい。また原液が吐出される口金は通常のPVA系繊維を紡糸する際に用いられているものと同様の寸法の口金を用いることができる。
固化浴の液体(固化液構成溶媒)は特に制限はないが、本発明においては、例えばメタノール、エタノール、プロパノ−ル、ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルなどの脂肪酸エステル類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族類やこれらの2種以上の混合物など、PVA成分やポリアミド成分に対して固化能を有する有機溶剤が固化液を構成する溶媒として好適である。上記した溶媒の中でも、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類が均一に固化させるために好ましく、紡糸原液構成溶媒として好適なDMSOとの蒸留分離性などを考慮すると、メタノールが最も好ましい。
繊維内部まで十分に固化を進行させるためには、固化液としては、上記の固化液構成溶媒と紡糸原液構成溶媒を混合したものを用いるのが好ましく、固化液構成溶媒/紡糸原液構成溶媒の混合質量比が95/5〜40/60であることが好ましく、より好ましくは90/10〜50/50、さらに好ましくは85/15〜55/45である。
固化浴の温度は特に限定はないが、通常−15〜30℃の範囲であり、均一固化および省エネルギーの点からは、固化浴温度を好ましくは−5〜25℃、より好ましくは0〜20℃、さらに好ましくは2〜18℃とするのがよい。固化浴の温度はこの温度範囲より高くても低くても、得られる繊維の引張強度が低下する場合が多い。また紡糸原液が高温に加熱されている場合、固化浴温度を低温に保つためには、固化浴を冷却するのが好ましい。
繊維の機械的性能、膠着防止の点からは、固化浴中や固化浴離浴後から乾燥工程までのいずれかの工程で1.5〜7.0倍、特に2.5〜5.5倍の湿延伸を施すのが好ましく、糸篠の膠着抑制のためには、毛羽の出ない範囲で湿延伸倍率を大きくすることが好ましい。湿延伸倍率を大きくするためには、二段以上の多段に分けて湿延伸を行うことも有効である。
本発明においては、紡糸原液を構成する溶媒(紡糸原液構成溶媒)を抽出するため、固化浴から離液した糸篠を抽出液に浸漬する抽出工程を通過させる必要がある。抽出液の種類に制限はないが、紡糸原液構成溶媒として好適なDMSOの抽出の場合には、メタノールを用いた抽出液を用いるのが好ましい。
このようにして固化過程と抽出工程を経た糸篠は乾燥工程に導けばよい。このとき必要に応じて油剤などを付与して乾燥してもよい。乾燥温度は210℃以下とするのが好ましく、具体的には乾燥初期は160℃以下の低温で乾燥し、後半を160℃より高温で乾燥する多段乾燥が好ましい。さらに乾熱延伸および必要に応じて乾熱収縮を施してPVA分子鎖を配向結晶化させ、繊維の強度や耐久性、耐熱性を高めるのが好ましい。繊維の機械的性能を高めるためには、150〜250℃の温度条件下で全延伸倍率7倍以上、さらに8倍以上、特に10倍以上となるような乾熱延伸を施すのが好ましい。なお本発明でいう全延伸倍率とは、湿延伸倍率と乾熱延伸倍率との積で表される倍率である。
本発明においては、上記に挙げた工程および処理以外の工程を任意の部分で導入してもかまわない。例えば架橋反応や疎水化反応などの後工程を導入することにより耐水性および洗濯耐久性を高めることができる。
本発明の複合繊維中における(A)成分、(B)成分の存在態様に特に制限はないが、本発明の複合繊維は(A)成分と(B)成分とが均一に混合溶解された紡糸原液から調製されるため、例えば繊維断面を電子顕微鏡で観察した場合、1ミクロン以上のオーダーで両成分が分離して存在することなく均整な繊維構造を有している。
本発明により得られる複合繊維の繊度は特に限定されず、例えば0.1〜50000dtex、特に1〜1000dtexの繊維が広く使用できる。繊維の繊度はノズル径や延伸倍率により制御することができる。繊維強度は5cN/dtex以上、さらに6cN/dtex以上、特に8cN/dtex以上であることが好ましく、伸度は1〜10%程度であるのが好ましい。
本発明の複合繊維は、高品位であることからあらゆる形態であらゆる用途に使用できる。例えばカットファイバー、フィラメント、紡績糸、紐状物、ロープ、フィブリル等の形態で使用でき、また該繊維を用いて布帛、例えば不織布、織編物等としてもかまわない。もちろん、他の繊維と併用して繊維構造体(布帛等)を得てもかまわない。例えばパルプ、綿等の天然繊維、さらにポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリアミド系繊維(ナイロン、アラミド等)、PVA系繊維等の合成繊維と併用してもよい。また必要に応じて本発明の繊維構造体を他の素材、たとえばフィルム、金属、樹脂等と複合することもできる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は本実施例により何等限定されるものではない。なお以下の実施例において、繊維原料や複合繊維の特性は下記の方法により測定または評価したものを示す。
[(B)成分であるポリアミドの極限粘度〔η〕 dl/g]
使用したポリアミド成分につき、濃硫酸中30℃にて0.05、0.1、0.2、0.4g/dlの濃度とした試料の固有粘度(ηinh)を測定し、これを濃度ゼロに外挿した値を極限粘度〔η〕とする。
ηinh=[ln(t1/t0)]/c
〔式中、ηinhは固有粘度(dl/g)、t0は溶媒の流下時間(秒)、t1は試料溶液の流下時間(秒)、cは溶液中の試料の濃度(g/dl)を表す〕
[(B)成分であるポリアミドの融点 ℃]
使用したポリアミド成分につき、DSC(示差走査熱量計;パーキンエルマー社製「DSC−7」)を使用して10℃/分の昇温速度にて結晶融解時に出現する吸熱ピーク温度を測定し求める。
[(B)成分であるポリアミドのDMSO溶解性 質量%]
使用したポリアミド成分につき、120℃に予熱し攪拌した所定量のDMSO中に添加した後、30分間攪拌した段階で完全に透明になるまで溶解する濃度の上限値をDMSOに対する溶解性として定義し求めた。
[繊維強度 cN/dtex、弾性率 cN/dtex、伸度 %]
得られた複合繊維に対し、JIS L1013に準じて測定する。
[酸性染料可染性]
得られた複合繊維を筒編地とし、濃度1g/lのアクチノールR100にて温度80℃にて精錬した後、住友化学(株)製「Aminyl Brill Red F−B」 2%omf、酢酸アンモニウム 5%omf、酢酸 2%omfを用いて90℃×40分の条件にて染色を行う。染色後Fix処理としてタンニン酸 3%omf、酢酸 2%omfを用いて70℃×20分処理し、さらに吐酒石1%を投入して70℃×20分処理する。このようにして得られた染色物の可染性を目視にて判定する。
[染色耐光堅牢度]
JIS L0842「カーボンアーク灯光による染色堅牢度試験方法」に従った。10時間照射を3級、20時間を4級、40時間を5級とし、ブルースケールの退色を規準として、グレースケールによりサンプルの退色を等級判定した。
[染色洗濯堅牢度]
JIS L0844「洗濯に対する染色堅ろう度試験方法」に従った。ラウンダメータ型洗濯試験機を用い、石鹸濃度0.5%、温度40℃、時間30分で処理した後、グレースケールにより洗濯前後の退色を等級判定した。
[実施例1]
(1)(A)成分として重合度1750、ケン化度99.8モル%のPVA〔(株)クラレ製「PVA−HC」〕、(B)成分のポリアミドとして〔η〕=1.4、融点193℃、DMSO溶解性が43質量%であるナイロン6−66コポリアミド〔宇部興産(株)製「宇部ナイロン5034」、ナイロン6/ナイロン66=80/20(質量比)〕をA:B=70:30(質量比)にてDMSOへ投入し、130℃で10時間窒素気流下240rpmで攪拌溶解し、ポリマー濃度が20質量%の透明な紡糸原液を得た。
(2)得られた紡糸原液を120℃まで冷却し、孔数1000ホール、孔径0.08mmの紡糸口金を通して、メタノール/DMSOの質量比が70/30、温度を0℃とした固化浴中に湿式紡糸した。次いで、常温のメタノール中でDMSOを抽出しながら3倍の湿延伸を施した。その後、150℃の熱風で乾燥し、230℃で6倍の乾熱延伸を施した後、ソーピングを施して複合繊維を得た。
(3)得られた複合繊維の強度、伸度、弾性率、酸性染料可染性、染色堅牢度の結果を表1に示す。得られた複合繊維の外観は良好で糸斑などは見られなかった。
[実施例2]
(A)成分と(B)成分の質量比を(A):(B)=80:20に変更した以外は実施例1と同様にして複合繊維を得た。結果を表1に示す。得られた複合繊維の外観は良好で糸斑などは見られなかった。
[実施例3]
(A)成分と(B)成分の質量比を(A):(B)=60:40に変更した以外は実施例1と同様にして複合繊維を得た。結果を表1に示す。得られた複合繊維の外観は良好で糸斑などは見られなかった。
[実施例4]
乾熱延伸の倍率を6.5倍とした以外は実施例1と同様にして複合繊維を得た。結果を表1に示す。得られた複合繊維の外観は良好で糸斑などは見られなかった。
[実施例5]
(B)成分のポリアミドとして〔η〕=1.4、融点173℃、DMSO溶解性が71質量%であるナイロン6−66コポリアミド〔宇部興産(株)製「宇部ナイロン5034」、ナイロン6/ナイロン66=60/40(質量比)〕を使用する以外は実施例1と同様の方法で複合繊維を得た。結果を表1に示す。得られた複合繊維の外観は良好で糸斑などは見られなかった。
[実施例6]
(A)成分を重合度2400、ケン化度99.8モル%のPVAに変更する以外は実施例1と同様にして複合繊維を得た。結果を表1に示す。得られた複合繊維の外観は良好で糸斑などは見られなかった。
[比較例1]
ポリアミドを使用することなく、PVAのみで繊維化を実施する以外は実施例1と同様繊維を製造し、PVA単独繊維を得た。結果を表2に示す。得られた繊維は酸性染料可染性に乏しかったため、堅牢性は評価できなかった。
[比較例2]
(A)成分と(B)成分の質量比を(A):(B)=98:2に変更した以外は実施例1と同様にして複合繊維を得た。結果を表2に示す。得られた複合繊維の外観は良好で糸斑など見られなかったが、酸性染料可染性に劣るものであり、堅牢性は評価できなかった。
[比較例3]
(A)成分と(B)成分の質量比を(A):(B)=30:70に変更した以外は実施例1と同様にして複合繊維を得た。結果を表2に示す。得られた複合繊維には糸斑が見られ、外観にも劣り、また機械特性に著しく劣るものであった。
[比較例4]
(B)成分として、〔η〕=1.05、融点220℃、DMSO溶解性が2%未満であるナイロン6〔宇部興産(株)製「1013」)を用いた以外は実施例1と同様にして紡糸原液の調製を試みた。しかしながら攪拌溶解温度を140℃に上昇してもナイロン6は溶解せず、紡糸を行うことができなかった。このナイロン6のジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、グリセリン、エチレングリコールに対する120℃での溶解性を測定したところ、いずれも5%未満であった。
[比較例5]
市販ナイロン6単独繊維を用いて評価した。結果を表2に示す。染色性は有するものの、PVA系繊維に比して機械特性が著しく劣るものであった。
Figure 2005146474
Figure 2005146474
表1の結果から明らかなように、本発明のPVA系複合繊維は、その極めて優れた機械的特性、染色可染性を兼ね備えている。一方、本発明の構成要件の一つである特定のポリアミド成分を有しない、あるいはその含有量が小さい比較例1〜2では、本発明の複合繊維が目的とする優れた染色性を有しておらず、その含有量が過大である比較例3ではPVA系繊維が本来有している高い機械特性が損なわれている。さらに比較例4に示したとおり、本発明の構成要件を満足しないポリアミド成分を用いても本発明の目的とする複合繊維は得られない。また比較例5に示した従来より知られているポリアミド繊維と比較しても、本発明のPVA系複合繊維が極めて高い機械特性を備えていることがわかる。
本発明の複合繊維および繊維構造体はあらゆる用途に使用でき、例えば戦闘服や消防服等の衣料分野(特に防護衣料分野)、カーテン、カーペット、毛布、布団側地、シーツカバー、中入綿等のリビング資材分野、カーシート、車輌バネ受け材、エアーフィルター等の産業資材分野などのあらゆる分野に使用できる。なかでも、本発明の複合繊維は高品位に染色し得ることから、衣料分野およびリビング分野に広く使用できる。

Claims (3)

  1. 下記(A)成分および(B)成分で構成され、繊維中に占める(B)成分の比率が5〜50質量%であるポリビニルアルコール系複合繊維。
    (A)重合度1200以上、ケン化度99モル%以上のポリビニルアルコール成分、
    (B)ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、グリセリン、エチレングリコールから選択される少なくとも1種の有機溶媒に対し、120℃において5〜80質量%の溶解性を有し、かつ融点が140℃〜250℃であるポリアミド成分、
  2. (B)成分がカプロラクタム、アジピン酸、1,6−ヘキサメチレンジアミンを主たる構成単位とするコポリアミドである請求項1記載のポリビニルアルコール系複合繊維。
  3. 請求項1または2記載の(A)成分および(B)成分を有機溶媒中で混合溶解した均一な紡糸原液とせしめ、固化過程を経てなるポリビニルアルコール系複合繊維の製造方法。
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