JP2001073225A - 発色性の良いポリケトン繊維およびその製造方法 - Google Patents

発色性の良いポリケトン繊維およびその製造方法

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JP2001073225A
JP2001073225A JP24151199A JP24151199A JP2001073225A JP 2001073225 A JP2001073225 A JP 2001073225A JP 24151199 A JP24151199 A JP 24151199A JP 24151199 A JP24151199 A JP 24151199A JP 2001073225 A JP2001073225 A JP 2001073225A
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polyketone
fiber
polymer
mol
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Tatsu Taniguchi
龍 谷口
Jinichiro Kato
仁一郎 加藤
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Asahi Kasei Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた繊維物性、高温時の寸法安定性を有
し、かつカチオン染料にて染色可能であり、カチオン染
料で染色した際に鮮明で深い発色性を示し、産業用資材
用繊維のみならず衣料用繊維に適したポリケトン繊維を
提供する。 【解決手段】 ポリケトン繊維を構成するポリケトンポ
リマーが、繰り返し単位の90〜99.9モル%が特定
の単位からなり、かつ、特定の繰り返し単位を0.1〜
10モル%含有するポリマーであるポリケトン繊維およ
びその製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は強度、伸度等の繊維
物性および高温時の繊維物性に優れ、かつ、カチオン染
料により鮮明に染色可能であり、さらに溶剤への溶解
性、紡糸性、延伸性、後加工性等の生産性、工程通過性
に優れるポリケトン繊維及び該繊維の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、一酸化炭素とエチレン、プロペン
のようなオレフィンをパラジウムやニッケルを触媒とし
て重合させることにより、一酸化炭素とオレフィンが実
質完全に交互共重合した脂肪族ポリケトンポリマーが得
られることが見い出され(工業材料、12月号、第5ペ
ージ、1997年)、以後ポリケトンポリマーの繊維化
の検討が行われている。ポリケトン繊維は、従来のポリ
オレフィン繊維に比べて融点が高く、また高強度・高弾
性率の繊維が得られることが知られており、この優れた
物性を活かして産業用途および衣料用途への展開が検討
されている。
【0003】衣料用途においてポリケトン繊維を使用す
る場合には、染色を行い任意の色調に繊維を発色せしめ
る必要がある。これまで、ポリケトン繊維は分散染料に
よって染色可能であることが知られている(米国特許第
5597389号明細書)。しかしながら、これまで開
示されているエチレン/一酸化炭素コポリマーやエチレ
ン/プロペン/一酸化炭素ターポリマーからなるポリケ
トン繊維は、分散染料に染色可能であるものの、その発
色レベルは不十分で鮮明な色彩、深い色彩を発現するこ
とは困難であった。さらには繊維のガラス転移温度が室
温以下であることから、染色堅牢性も不十分であり染色
後の還元洗浄により退色が起こったり、洗濯堅牢性、ド
ライクリーニング堅牢性等の基本的な堅牢特性にも問題
があり、実用上衣料用途への展開は極めて困難であっ
た。
【0004】エチレン/一酸化炭素の交互共重合ポリマ
ーは融点が高く、また溶剤に対する溶解性も低いため繊
維化が困難な素材である。このため、共重合によりポリ
ケトンポリマーを改質し、溶融紡糸あるいは湿式紡糸を
行う方法が検討されてきている(特開平1−12461
7号公報、特開平2−112413号公報、Poly
m.Prepr.(Am.Chem.Soc.,Di
v.Polym.Chem.),36,1,291−2
92、Prog.Polym.Sci.,Vol.2
2,8,1547−1605(1997))。しかしな
がら、これらの文献で開示されている共重合ポリケトン
繊維は、いずれも高温下での物性に問題があった。特に
これら共重合ポリケトン繊維では、高温下での弾性率が
著しく低下したり、寸法安定性が悪く熱処理よって大き
く収縮するため、高温時の加工や使用を受ける産業用資
材用途、特にタイヤコード用途では加工温度や使用環境
を制限しなければならず、極めて限られた用途にしか使
用することが出来なかった。また、これら第三成分を共
重合したポリケトンターポリマーは重合速度が遅い、重
合収量が少ないなどの問題があった。特に高重合度のポ
リマーを重合する場合においては、重合時間が著しく長
くなる上に得られるポリマーの量も少ないため、工業的
な価格でターポリマーを製造することが出来なかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、カチ
オン染料にて染色可能であり、カチオン染料で染色した
際に鮮明で深い発色性を示し、また室温下・高温下にお
ける強度、弾性率、寸法安定性等の繊維物性にも優れる
ポリケトン繊維を安価に生産性よく提供することであ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために鋭意検討した結果、ポリケトンポリマ
ーに特定の構造式で表される構造単位を導入することに
より、上記課題が解決し得ることを見出し本発明に至っ
た。即ち本発明は、ポリケトン繊維を構成するポリケト
ンポリマーが、繰り返し単位の90〜99.9モル%が
下記構造式1で表される単位からなり、かつ、下記構造
式2または3で表される繰り返し単位を0.1〜10モ
ル%含有するポリマーであることを特徴とするポリケト
ン繊維、である。
【0007】
【化3】 (ここで構造式中のR1 、R2 、R3 は、それぞれ水素
原子またはメチル基であり、R’は、炭素数1〜10の
有機基、アミド基含有炭素数1〜10の有機基であり、
Xは、水素原子、金属元素、アンモニウム、ホスホニウ
ムの群から選ばれる少なくとも1種の基である。)
【0008】本発明の繊維に用いるポリマーの主たる繰
り返し単位は構造式1で表されるエチレンと一酸化炭素
の交互共重合体である。エチレンと一酸化炭素の共重合
ポリマーからなる繊維は強度、接着性、寸法安定性、耐
クリープ特性に優れ、また、融点が260℃と高く、高
温時でも優れた繊維物性を発現することが出来る。ポリ
ケトンポリマー中のこの繰り返し単位の割合は、繊維の
力学物性および耐熱性の点から90モル%以上であるこ
とが好ましく、さらに好ましくは97モル%以上である
ことが望ましい。この基本骨格中には部分的にケトン基
同士、エチレン同士の単位がつながっていてもよいが、
90モル%以上がエチレンと一酸化炭素が交互共重合し
てなる脂肪族ポリケトンポリマーであることが好まし
い。耐光性、耐熱性、高温時の物性低下の観点からエチ
レンと一酸化炭素が交互共重合した部分の含有率は多け
れば多いほどよく、好ましくは97モル%以上、最も好
ましくは100モル%である。
【0009】本発明のポリケトン繊維はカチオン染料に
て染色可能である。一般にカチオン染料にて染色可能で
あるためには、繊維中にカルボン酸やスルホン酸、ホス
ホン酸等のアニオン基を含有させる必要がある。本発明
者らは、とりわけスルホン酸基を含有する化合物を共重
合したポリケトンが、カチオン染料にて鮮明にかつ堅牢
性よく染色可能であることを見出した。すなわち、ポリ
ケトンポリマーを構成する繰り返し単位の0.1〜10
モル%は構造式2または3で表される単位である。従来
のポリケトン繊維では分散染料がポリケトンポリマーと
染料分子との間の分子間力という極めて弱い力で染着し
ているのに対して、カチオン染料はポリケトン繊維のア
ニオン基とイオン結合力により染着しているため、非常
に強い親和力を有し、得られる染色物は極めて優れた染
色堅牢性を示す。また、カチオン染料自体が分散染料に
比べて鮮明でメタリック調の美麗な発色性を有するた
め、従来の分散染料で染色した繊維では到底発現するこ
との出来なかったより深い鮮明な色彩の発現が可能とな
る。また、驚くべきことにスルホン基を有する本発明の
繊維では分散染料により染色した際の染色堅牢性までも
が向上する。
【0010】構造式2または3の繰り返し単位は、下記
構造式4または5で表される化合物(以下「ビニルスル
ホン酸化合物」と略することがある)と一酸化炭素との
交互共重合によって得ることが出来る。
【化4】 (ここで構造式中のR1 、R2 、R3 は、それぞれ水素
原子またはメチル基であり、R’は、炭素数1〜10の
有機基、アミド基含有炭素数1〜10の有機基であり、
Xは、水素原子、金属元素、アンモニウム、ホスホニウ
ムの群から選ばれる少なくとも1種の基である。)
【0011】ビニルスルホン酸化合物の具体例として
は、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルス
ルホン酸、p―ビニルベンゼンスルホン酸、2―スルホ
エチルメタアクリレート、2―アクリルアミドプロパン
スルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパン
スルホン酸、2―アクリルアミド―n―ブタンスルホン
酸、2―アクリルアミド―n―ヘキサンスルホン酸、2
―アクリルアミド―n―オクタンスルホン酸、2―アク
リルアミド―n―ドデカンスルホン酸、4―メタアクリ
ルアミドベンゼンスルホン酸およびこれら化合物のアル
カリ金属塩、アルカリ土類金属塩、その他の金属元素
塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられ、必
要に応じてはこれらの化合物を複数共重合してもよい。
一酸化炭素との共重合性、重合速度、重合収率の点でア
ルカリ金属塩であることが好ましい。
【0012】上記の構造式2または3の繰り返し単位の
割合は、多ければ多いほど、カチオン染料への染色性、
ポリケトンポリマーの溶剤に対する溶解性が高くなる
が、10モル%より多くなるとポリマーの熱安定性が低
下したり、強度・弾性率等の繊維物性や高温下での繊維
物性、寸法安定性が低下する。一方、共重合割合が0.
1モル%より少ない場合はカチオン染料の染色性、ポリ
ケトンの溶剤に対する溶解性向上が不十分である。構造
式2または3の繰り返し単位の割合は、好ましくは0.
2〜5モル%、さらに好ましくは0.5〜3モル%であ
る。また、必要に応じてプロペン、ブテン、ヘキセン等
のオレフィンやメタクリル酸メチル等のアクリル酸誘導
体、スチレン、ビニルナフタレン、酢酸ビニル、6−ク
ロロヘキセン、N−ビニルピロリドン等のエチレン性不
飽和炭化水素を有する化合物を共重合してもよい。
【0013】本発明の繊維の融点は、共重合組成によっ
て異なるが、高温下での繊維物性、寸法安定性、耐熱
性、熱セット性の観点から230℃以上であることが好
ましく、更に好ましくは240℃以上、より好ましくは
250℃以上、特に好ましくは260℃以上であること
が望ましい。本発明の繊維の結晶化度は50%以上であ
ることが好ましい。繊維の結晶化度が高いほど強度が高
くなり、高温下の繊維物性、寸法安定性に優れるため、
好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、
特に好ましくは70%以上の結晶化度を有することが望
ましい。また、本発明の繊維の結晶配向度は80%以上
であることが好ましい。繊維の結晶配向度が高いほど強
度、弾性率、高温下の寸法安定性に優れるため、好まし
くは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好
ましくは95%以上の結晶配向度を有することが望まし
い。
【0014】また、高温時の繊維の弾性率は高いほど材
料の加工性、剛性、寸法安定性が高くなるため、この値
が高いほど耐熱性の優れた材料といえる。繊維の弾性率
は温度により変化し、また使用条件等により求められる
性能が異なるため、一律な数値で定義することは困難で
あるが、産業用資材用途、特にタイヤコード用途への適
性を考慮すると、周波数110Hzの動的粘弾性測定に
おける貯蔵弾性率が180℃のときに80g/d以上で
あることが好ましく、さらには100g/d以上である
ことが特に好ましい。ここで貯蔵弾性率とは、得られた
繊維の繊維軸方向の動的な引っ張りひずみに対する動的
な弾性率であり(講座レオロジー(日本レオロジー学会
編)p37)、周波数110Hzでの貯蔵弾性率の値
は、通常の繊維の引っ張り試験で測定される引っ張り弾
性率とはほぼ一致する。この値は後述する本願明細書の
実施例の項に示した測定方法により測定される。繊維の
乾熱収縮率は低いほど形状変化や残留応力が少なく寸法
安定性が優れるため、この値は小さいほど耐熱性に優れ
た材料といえる。本発明の繊維の乾熱収縮率としては、
180℃における乾熱収縮率が4%以下であることが好
ましく、さらには3%以下であることがより好ましい。
【0015】また本発明の繊維は、目的に応じて、酸化
防止剤、クエンチング剤、ラジカル捕捉剤、重金属不活
性化剤、ゲル化抑制剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、顔料
等の添加剤、ポリケトン以外のポリマー等を含んでいて
もよい。添加物質の形状はどのような形態でもよいが、
ポリアクリロニトリルやセルロース等の本発明の溶剤に
溶解可能な物質を繊維中に分子オーダーで分散させても
よく、また、溶剤に不溶性の物質を粒子状で分散せしめ
てもよい。粒子状で分散させる場合には、繊維物性、工
程通過性の観点から粒子径は0.001〜10μmの範
囲にすることが好ましく、粒径0.01〜1μmの範囲
であることがさらに好ましい。本発明で使用するポリマ
ーの極限粘度は0.3以上であることが好ましい。これ
は、極限粘度が0.3未満では分子量が低すぎて繊維化
することが困難となるからである。得られる繊維の強度
と溶解性、紡糸性のかねあいから、好ましくは0.5〜
20、最も好ましくは2〜15の範囲である。
【0016】次に本発明の繊維の製造方法について説明
する。本発明に用いるポリケトンの製造方法について
は、従来公知の方法をそのまま、あるいは修正して用い
ることが出来る。触媒としては、例えば、パラジウム、
ニッケル、コバルト等の第VIII族遷移金属化合物と公知
のリン系二座配位子及び、pKaが4以下の酸のアニオ
ン等を用いて、エチレン、一酸化炭素の混合ガスおよび
ビニルスルホン酸化合物をメタノール等の有機溶剤中で
反応させて重合を行うことが出来る。本発明者らは、こ
の時、ビニルスルホン酸化合物を第VIII族遷移金属化合
物1モル当たり、1〜10000モル添加すると、重合
速度および重合収量が著しく増大し、安定かつ効率的に
ポリケトンポリマーが得られるようになることを見い出
した。
【0017】添加するビニルスルホン酸化合物の量は第
VIII族遷移金属化合物に対して1倍モル以下であると重
合性向上の効果が少なく、また10000倍モル以上添
加すると重合速度が低下したり、得られるポリマーの耐
熱性が低下するので、ビニルスルホン酸化合物の添加量
としては、好ましくは1〜10000倍モル、より好ま
しくは10〜5000倍モル、特に好ましくは100〜
1000倍モルである。添加するビニルスルホン酸化合
物は、重合性および得られるポリマーの純度の観点か
ら、メタノール等の重合に用いる有機溶剤に可溶である
ことが好ましい。また、重合活性、重合収量の点からビ
ニルスルホン酸化合物はカリウム塩、ナトリウム塩等の
アルカリ金属塩であることが好ましい。
【0018】第VIII族遷移金属化合物の量はポリケトン
ポリマー中に1000ppm、好ましくは100ppm
以下しか含有されないように仕込みの量を設定する。リ
ン系二座配位子は第VIII族遷移金属化合物1モル当たり
0.1〜20モル、好ましくは1〜3モルの範囲で使用
することが重合活性の観点から好ましい。また、pKa
が4以下の酸は、第VIII族遷移金属化合物1グラム原子
当たり0.01〜150当量が好ましく、特に好ましく
は1〜50当量の範囲である。また、重合は温度が50
〜150℃、圧力が4〜10MPaで、通常10分〜2
0日間行うことが好ましい。また、重合中の触媒活性を
維持するために、また得られたポリケトンの熱安定性を
向上させるために、1,4−ベンゾキノン、1,4−ナ
フトキノン等のキノン類を第VIII族遷移金属化合物1モ
ルに対して、0.1〜100モルの範囲で添加してもよ
い。
【0019】重合後のポリケトンは、濾過した後、触
媒、キノン、未反応モノマー等を洗い流すために、洗浄
を行った後、乾燥してポリケトンポリマーを単離する。
このようにして得られたポリケトンポリマーを繊維化す
ることで本発明のポリケトン繊維を製造することが出来
る。ポリケトン繊維の製造方法としては特に限定され
ず、従来公知の溶融紡糸法あるいは湿式紡糸法をそのま
ま、あるいは修正して用いることが出来る。ポリケトン
ポリマーの熱劣化、溶剤の毒性・爆発性・回収性、工程
の安定性、製造コスト、得られる繊維の物性等との兼ね
合いからハロゲン化亜鉛水溶液を溶剤とする湿式紡糸方
法により製造することが好ましい。
【0020】以下、ハロゲン化亜鉛系溶剤を例に、本発
明の繊維の紡糸方法を説明する。ポリケトンポリマーの
ドープは、前述のポリマーを少なくとも20重量%以上
の亜鉛塩を含有する水溶液に溶解し、ポリケトンドープ
とする。このドープを紡糸口金から押し出し、続いて得
られた繊維状物から実質的に溶剤を除去した後に、延伸
をすることによって実用的な繊維物性、染色性を有する
ポリケトン繊維が製造される。ポリケトンの溶解に用い
られる亜鉛塩は、水に可溶であることが必要である。使
用可能な亜鉛塩としては、例えば、酸化亜鉛、塩化亜
鉛、臭化亜鉛、よう化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、亜塩
素酸亜鉛等がある。好ましくは、水に対して50重量%
以上の溶解度を持つ亜鉛塩である。水に対して50重量
%以上の溶解度を持つ亜鉛塩とは、水に亜鉛塩を溶解し
たとき50重量%以上の濃度の亜鉛塩水溶液が作成可能
な亜鉛塩である。亜鉛塩水溶液の濃度は、以下の式で定
義される値である。 亜鉛塩水溶液の濃度(重量%)=〔亜鉛塩の重量/(亜
鉛塩の重量+水の重量)〕×100 水に対して50重量%以上の溶解度を持つ亜鉛塩の水溶
液は、ポリケトンポリマーをより高濃度に溶解すること
が可能となる。このような亜鉛塩としては、例えば、塩
化亜鉛、臭化亜鉛、よう化亜鉛、硝酸亜鉛、亜塩素酸亜
鉛等が挙げられる。ポリケトンポリマーの溶解性、溶媒
のコスト、水溶液の安定性の点で塩化亜鉛、臭化亜鉛、
よう化亜鉛がさらに好ましく、塩化亜鉛が最も好まし
い。
【0021】亜鉛塩水溶液の濃度は、特に制限はないが
ポリケトンポリマーに対する溶解性の点からは高い方が
好ましい。亜鉛塩水溶液の濃度が低いとポリケトンポリ
マーの濃度や重合度が制限され、製造コストや繊維の強
度に対して不利となる。ただし、亜鉛塩水溶液の濃度が
高すぎると水溶液の粘度が高くなり溶解作業に時間がか
かったり、結晶の析出が起こるためにポリマー溶液が不
均一になる、ドープの移送が困難になる、回収コストが
高くなる、などの問題が生じる場合がある。亜鉛水溶液
の濃度は、ポリケトンポリマーの組成、亜鉛塩の種類や
水溶液の温度により適正範囲が異なる。例えば、ポリマ
ーを溶解するに際しての塩化亜鉛水溶液の好ましい濃度
としては、50〜80℃では、40重量%以上、85重
量%以下であり、ドープの安定性、紡糸性、回収コスト
等の観点から80℃において70重量%以下であること
が特に好ましい。
【0022】亜鉛塩の水溶液は、溶解性向上、コストダ
ウンやドープの安定性等を目的として、該亜鉛塩を複数
混合したものであってもよい。また、必要に応じては塩
化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等のアル
カリ金属あるいはアルカリ土類金属のハロゲン化物を5
0重量%以下で含んでいてもよい。また、溶解性を阻害
しない範囲で他の無機物、有機物を10重量%以下で含
んでいてもよい。亜鉛塩水溶液ドープ中のポリマー濃度
は0.005〜70重量%であることが好ましい。尚、
ドープとは、ポリマーを溶剤に溶解させた溶液を指す言
葉であり、ここではポリケトンポリマーを亜鉛塩水溶液
に溶解させた溶液を指すものである。ポリマー濃度が
0.005重量%未満では濃度が低すぎて、凝固時に繊
維になりにくい欠点を有する他、繊維の製造コストが高
くなりすぎる欠点を有する。また、70重量%を越える
ともはやポリマーが溶剤に溶解しなくなる。溶解性、紡
糸のしやすさ、繊維の製造コストの観点から、好ましく
は0.5〜40重量%、更に好ましくは1〜30重量%
である。
【0023】ドープの製造方法には特に制限はないが、
以下好ましい例を挙げて説明する。ドープは、ポリケト
ンポリマーを亜鉛塩水溶液に撹拌しながら一気にあるい
は数回に分けて添加して製造する。ポリケトンの形態と
しては、粉、チップ等特に制限はないが、溶解速度、重
合過程で生成したゲル化物量が少ないというの観点から
粉末が好ましい。脂肪族ポリケトンポリマーを合成する
と粉末の形態で得られることが知られている。この粉末
は、かさ密度が高く表面が凹凸に富んでいるので、比表
面積が大きく溶剤に触れやすいので溶解性に優れてい
る。これに対し、チップ等の一旦溶融させて付形したも
のは比表面積が少なく溶剤に触れる面積が少なくなって
いる他、溶融過程でゲル化物が生成する畏れがあるの
で、重合で得られたポリマーをそのまま粉で用いること
が推奨される。
【0024】溶解する時の温度は特に制限はないが、溶
解速度、溶媒の安定性の観点から通常は5〜90℃の範
囲で溶解することが好ましい。さらに適正の範囲は亜鉛
塩の種類やポリマーの分子量及び濃度により適宜決めら
れる。溶解方法としては、撹拌羽根による撹拌、1軸ま
たは2軸押出機を用いた撹拌、超音波を用いた撹拌等を
用いることができる。また、ポリケトンポリマーが粉状
である場合には溶解時に気泡が生成し易いため、真空下
あるいは減圧下で溶解することが望ましい。また、得ら
れたドープは溶解完了後すぐに紡糸に用いてもよく、ま
た必要に応じては静置脱泡あるいは熟成させてから紡糸
に用いてもよい。こうして得られたポリケトンの溶液は
ごみ、ゲル化物、未溶解ポリマー、触媒残渣等を除去す
るために、必要に応じてフィルターを通して紡糸、フィ
ルム化等に供することのできるドープとなる。得られた
ドープには必要に応じて、酸化防止剤、耐光安定剤、艶
消し剤等を添加してもよい。
【0025】こうして得られたポリケトンポリマードー
プを紡糸口金(紡口)から押し出し、続いて得られた繊
維状物から実質的に溶剤を除去してポリケトンポリマー
繊維を得ることができる。該繊維状物から溶剤を除去す
る方法としては、ドープに用いた溶剤以外の溶剤に通し
て凝固させる方法が用いられる。紡糸口金から押し出さ
れたドープを、ドープに用いた溶剤よりも少なくともポ
リマーに対して溶解性の低い溶剤(凝固浴)に押し出す
ことが推奨される。紡口の位置としては、紡口を凝固浴
に浸ける方法、すなわち浸漬法であっても、紡口を空気
中に置いて紡口から出た繊維状物が空気相を経て凝固浴
に入る方法、いわゆるエアギャップ法であってもよい。
【0026】ここで述べるドープに用いた溶剤よりも少
なくともポリマーに対して溶解性の低い溶剤とは必ずし
もポリマーの貧溶剤である必要はなく、良溶剤であって
もドープに用いた溶剤よりもポリマーに対して溶解性が
低ければよい。また、必要に応じて多段階で、得られた
繊維をよりポリマーに対して溶解性の低い溶剤に通して
もよい。このような、ドープに用いた溶剤よりも少なく
ともポリマーに対して溶解性の低い溶剤としては、ドー
プに用いる亜鉛塩水溶液よりも濃度の低い亜鉛塩水溶液
または水が最も好ましい。すなわち、好ましい具体的な
方法としては、紡糸口金を通った繊維状物をより濃度の
低い該亜鉛塩水溶液浴を通しながら繊維状物から徐々に
該亜鉛塩を抜いて凝固させ、最終的に水に通して完全に
凝固させる方法である。もちろん、紡口を通った繊維状
物を直接水に通して凝固させてもよい。
【0027】紡口の形状は丸紡口でも、三角やY型、星
型などの異形紡口でもどのようなものでも構わないが、
光沢、繊維物性、工程通過性、後加工通過性、成形性等
の観点から丸紡口が好ましい。また、必要に応じて紡口
孔が紡口面よりも凹状にへこんだ紡口や、凸状に突出し
た突起紡口などを使用してもよい。使用可能な紡口の直
径は紡糸速度、繊度等必要に応じてどのような大きさで
も構わないが、通常の産業用資材用繊維の場合、丸紡口
の場合で0.01mm〜10mm、好ましくは0.03
〜5mmの範囲である。繊維状物を凝固浴に通す場合
は、一定速度で引き取りながら通すことが好ましい。巻
き取り速度としては0.001〜1000m/min、
紡糸ドラフトとしては0.01〜1000である。
【0028】紡糸速度や凝固温度によっては、凝固浴中
で凝固糸中の亜鉛塩を十分に除去出来ない場合もあるの
で、必要に応じては凝固浴を出た凝固糸をさらに洗浄し
てもよい。洗浄には亜鉛塩を溶解する能力を有する液体
であればどのようなものを用いてもよいが、安全性、溶
液のコスト、回収のコスト等を考慮すると、水系の溶液
が好ましく、亜鉛塩の溶解性の観点からは水もしくは硫
酸、塩酸、リン酸等の酸性水溶液が特に好ましい。特に
本発明のポリケトン繊維はスルホン酸基を有するため、
スルホン酸亜鉛塩として亜鉛が残存しやすいため、洗浄
を十分に行う必要がある。繊維中に含有される亜鉛量
が、0.01〜5000ppm、好ましく0.01〜1
000ppm、特に好ましくは0.01〜100ppm
の範囲になるように洗浄条件を選定することが望まし
い。
【0029】また、本発明の繊維はスルホン酸基を有す
るため、場合によっては繊維中にスルホン酸としての酸
が残存して繊維の耐熱性が低下することがあるため、必
要に応じては洗浄後に水酸化ナトリウム、炭酸水素ナト
リウム水溶液等のアルカリ性水溶液で洗浄し、酸を中和
することが推奨される。こうして凝固された実質的に該
亜鉛塩を含まない繊維は、乾燥後延伸あるいは乾燥させ
ながら延伸を行って延伸糸を得ることが出来る。乾燥方
法としては、いったん凝固糸を巻き取ったもの(チー
ズ、あるいはケークやパーン)を乾燥機中で乾燥するバ
ッチ乾燥法であっても、また、凝固糸を紡糸後そのまま
連続して、あるいはいったん巻き取った後に、加熱した
ロールやプレート上あるいは加熱気体中を走行させて乾
燥する連続乾燥法であってもよい。糸の均一性や製造コ
ストの観点からは連続乾燥法が好ましい。乾燥温度は特
に制約はないが、60℃〜260℃の範囲が好ましい。
また、100℃以上の温度で乾燥する際には糸の周囲に
不活性気体を流すことが好ましい。また、必要に応じて
は乾燥しながら同時に緩和や延伸などの処理をしてもよ
い。
【0030】加熱延伸方法としては、加熱したロールは
プレート上あるいは加熱気体中を走行させる方法や、走
行糸にレーザーやマイクロ波、遠赤外線を照射する方法
等従来公知の装置、方法をそのまま採用することが出来
る。延伸倍率は凝固糸の紡糸条件、乾燥条件等により変
化するが、好ましくは3倍以上、さらに好ましくは5倍
以上、特に好ましくは10倍以上の延伸を行うことが望
ましい。延伸段数は何段であってもよく、必要に応じて
多段延伸を行ってもよい。多段延伸を行う場合には延伸
温度を徐々に高くしていく方法が好ましい。延伸温度は
糸を有効に延伸可能であればどのような温度でもよく、
好ましい範囲としては80℃〜300℃、さらに好まし
くは融点−50℃〜融点の範囲である。ここで延伸温度
とは延伸時の糸温度の最高到達温度を意味する。延伸温
度が糸の融点より高くなると糸の融解による毛羽や糸切
れ、単糸間の融着が起こりやすくなる。延伸時には、必
要に応じて糸の周囲に窒素、アルゴン等の不活性気体を
流してもよい。
【0031】このようにして得られた繊維は、そのまま
繊維製品に適用することが出来るが、必要に応じてカチ
オン染料により染色することが出来る。カチオン染料に
よる染色方法としては従来公知の方法をそのまま、ある
いは手を加えて適用することが出来る。染色条件として
は例えば、pH3〜8のカチオン染料および染料分散
剤、染色助剤等を混合分散した染色液を含有する容器中
に、繊維あるいは布帛を投入し50〜130℃の温度下
で10分〜1日間の処理をして染色する。使用可能な染
料としては、例えば、メチン系カチオン染料やアゾ系カ
チオン染料、アントラキノン系カチオン染料等の従来公
知の染料をそのまま、あるいはそれらを複合して使用す
ることが出来る。なお、本発明において繊維製品とは、
本発明のポリケトン繊維のみから構成される糸、中空
糸、多孔糸、綿、紐、編物、織物、不織布およびこれら
を使用した衣類、医療用器具、生活資材、タイヤコー
ド、ベルト、コンクリート補強材料等はもちろんのこ
と、該ポリケトン繊維を少なくとも一部に使用した繊維
製品が含まれる。
【0032】本発明のポリケトン繊維は、カチオン染料
にて鮮明にかつ堅牢性よく染色することが可能となり、
従来のポリケトン繊維では適用出来なかった衣料用途、
特に鮮明な発色性、高い染色堅牢性の要求されるアウタ
ー用途やインナー用途への展開が可能となる。また、羊
毛やアクリル繊維、カチオン染料可染性ポリエステル繊
維等のカチオン染料可染性繊維との交織・交編等による
複合繊維製品へも適用出来るようになる。さらには、従
来のポリケトン繊維に対して分散染料に対する染色堅牢
性が向上し、分散染料染色においても実用的な染色堅牢
性を有するポリケトン繊維製品およびポリエステル繊維
やポリアミド繊維等の分散染料可染性繊維との交織・交
編による複合繊維製品も提供出来るようになる。また、
エチレン/一酸化炭素の交互共重合ポリマーからなる繊
維と同等の繊維物性、耐熱性、高温時の優れた繊維物
性、寸法安定性を有し、高温での加工処理や使用を受け
る産業用資材にも適しており、さらにはスルホン酸基を
有することから様々な素材との接着性(特にゴム接着
性)にも優れ、特にタイヤコードに適している。さらに
は、重合速度が速く短時間に多量のポリマーが得られる
ために安価なポリケトンポリマーを安定して提供出来
る。また、本発明のポリケトンドープは、三次元架橋化
や分解等のポリマー変性が少なく、また溶解性に優れ均
一でムラがなく、紡糸性、延伸性等の工程通過性に優
れ、欠陥の無い繊維が得られる。また、ドープの安全性
や溶剤の回収効率が高く、回収コスト、製造コストが安
価に出来るとともに、製造設備も簡易で安価なものにな
るため、本発明の繊維を安価に生産性よく提供すること
が可能となる。
【0033】
【実施例】本発明を、下記の実施例などにより更に詳し
く説明するがそれらは本発明の範囲を限定するものでは
ない。実施例の説明中に用いられる各測定値の測定方法
は次の通りである。 (1)重合速度 重合で得られたポリマー量をM(g)、重合に要した時
間をT(hr)とする。使用した第VIII族遷移金属化合
物の重量をm(mg)として、下式により求めた。 重合速度 = M/T/m (2)極限粘度 極限粘度[η]は次の定義式に基づいて求められる値で
ある。 定義式中のt及びTは、純度98%以上のm−クレゾー
ル及び該m−クレゾールに溶解したポリケトンの希釈溶
液の60℃での粘度管の流過時間である。またCは、上
記溶液100ml中のグラム単位による溶質重量値であ
る。
【0034】(3)強伸度、弾性率 JIS−L−1013に準じて測定した。 (4)高温時の弾性率 繊維30mmの両端をたるみがないように結んだものを
試料とし、動的粘弾性測定装置(RheoVibron
DDV−01FP:ORIENTEC(株)社製)にて
以下の条件で測定した。 周波数:110Hz 温度:20℃から260℃まで昇温速度5℃/分で昇温
した。 測定インターバル:1℃ 加振振幅:16μm・単一波形 プリロード荷重:0.1g/d 180℃における貯蔵弾性率(E’)の値を高温時の弾
性率として採用した。 (5)乾熱収縮率 JIS−L−1013に準じて180℃における値を測
定した。
【0035】(6)融点 パーキンエルマー社製示差熱測定装置Pyris1を用
いて下記条件で測定を行った。 測定温度 : 30℃→300℃ 昇温速度 : 20℃/分 雰囲気 : 窒素、流量=200mL/分 得られる吸発熱曲線において200〜300℃の範囲に
観測される最大の吸熱ピークのピークトップ温度を融点
とした。 (7)結晶化度 融点測定で200℃〜300℃の範囲で得られる最大の
吸熱ピークの面積から計算される熱量ΔH(J/g)よ
り下記式により算出した。 結晶化度 = ΔH/225 × 100 (%)
【0036】(8)結晶配向度 株式会社リガク製イメージングプレートX線回折装置R
INT2000を用いて下記の条件で繊維の回折像を取
り込んだ。 X線源 : CuKα線 出力 : 40KV 152mA カメラ長 : 94.5mm 測定時間 : 3分得られた画像の2θ=21°付近に
観察される(110)面を円周方向にスキ ャンして得られる強度分布の半値幅Hから下記式により
算出した。 結晶配向度=〔(180−H)/180〕×100 (%) (9)溶解下限濃度 塩化亜鉛濃度C重量%(C=50〜75)の溶剤中に、
ポリケトンポリマーをポリマー濃度が5重量%となるよ
うに添加し、80℃加熱下3時間攪拌し溶解を行った。
ポリマーが完全に溶解した下限の濃度Cmin を溶解下限
濃度とした。
【0037】(10)カチオン染料吸尽率 試料はポリケトン繊維の一口編地を用い、炭酸ナトリウ
ムを1g/リットル、スコアロールFC−250(花王
社製:商品名)を2g/リットルの濃度で含有している
温水を用いて、70℃、10分間精練処理し、染液を添
加して40℃から95℃まで昇温速度1℃/分で昇温
後、さらにそのまま95℃で30分間保持して染色を行
った。染料はCATHILON RED GTLH(保
土ヶ谷化学社製:商品名)を使用し、pH調製のため酢
酸0.5ml/リットル、ぼう硝3g/リットルを添加
し、1%owf、浴比1:30で染色後、30分間水洗
を行った後に、60℃、10分間タンブラー乾燥機で乾
燥を行った。染料吸尽率は、染料原液をアセトン水溶液
(アセトン/水=1/1容量比)により所定の希釈度で
希釈調製した溶液の吸光度をA、染色後の染液をアセト
ン水溶液(アセトン/水=1/1容量比)により所定の
希釈度で希釈調製した溶液の吸光度aを分光光度計(日
本分光社製、V―530型)から求め、以下の式に代入
して求めた。吸光度は当該染料の最大吸収波長である5
10nmでの値を採用した。 染料吸尽率=〔(A−a)/A〕×100(%)
【0038】(11)発色性 上記(10)での染色により得られた布帛を下記の条件
で測色を行った。測色は、分光光度計(DCI社製スペ
クトラフラッシュ500)を用いて、K/Sを評価し
た。この値は、染色後のサンプル布の分光反射率Rを測
定し、以下に示すクベルカ―ムンク(Kubelka―
Munk)の式から求め、本発明ではK/Sを有彩色の
深色度と定義した。Rは当該染料の最大吸収波長である
510nmでの値を採用した。 K/S=(1−R)2 /2R この値が大きいほど、深色効果が大きいこと、すなわ
ち、よく発色されていることを示す。
【0039】
【実施例1】2リットルのオートクレーブにメタノール
1リットルを加え、更に酢酸パラジウム15mg、ビス
(2−メトキシフェニル)ホスフィノプロパン33m
g、トリフルオロ酢酸152mgを予めメタノール10
ミリリリットル中で撹拌し調整した触媒液を加えた。更
に、アリルスルホン酸ナトリウム40gを加えた後、一
酸化炭素とエチレンを1:1モル含む混合ガスを充填
し、5MPaの圧力を維持するように連続的に、この混
合ガスを追加しながら、75℃で3.5時間反応を行っ
た。反応後、圧力を解放し、得られた白色ポリマーを繰
り返しメタノールで洗浄後、単離した。収量は、174
gであった。得られたポリケトンは、核磁気共鳴スペク
トル、イオンクロマト分析、プラズマ発光分析等の分析
により、繰り返し単位の98.2モル%がエチレンと一
酸化炭素が交互共重合し、1.8モル%がアリルスルホ
ン酸ナトリウムと一酸化炭素が交互共重合したターポリ
マーであった。また、その極限粘度は5.5であった。
【0040】得られたターポリマーを、75℃の65重
量%の塩化亜鉛水溶液に撹拌しながら加えた。ポリマー
は極めて容易に溶解し、溶解時間60分以内でポリマー
濃度10重量%のドープを得た。得られたドープを80
℃に加温し、20μmのフィルターでろ過した後に、紡
口径0.10mm、L/D=1、50ホールの紡口より
10mmのエアーギャップを通した後に10重量%の塩
化亜鉛を含有する水溶液中に吐出量2.5cc/分の速
度で押し出し、凝固させた。凝固糸を引き続き濃度2%
の硫酸水溶液で洗浄後、さらに2%の炭酸水素ナトリウ
ム水溶液で洗浄し、3.2m/分の速度で巻き取った。
得られた糸状物を200℃にて乾燥して未延伸糸を得
た。得られた未延伸糸を220℃で1段目の延伸を行っ
た後に、引き続き240℃で2段目の延伸を行い延伸糸
を得た。得られた繊維は強度伸度等の力学物性および高
温下での繊維物性に優れるものであった。また、カチオ
ン染料染色により染色した布帛は鮮明で美麗な色彩を有
していた。得られた繊維の性質および布帛の染色性を表
1に下記の実施例2〜4および比較例1〜3と共にまと
めて示す。
【0041】
【実施例2】アリルスルホン酸ナトリウムの添加量を2
0gとする以外は実施例1と同様の処方で重合を行っ
た。収量は149g、極限粘度は5.9であった。この
ポリマーはアリルスルホン酸ナトリウムと一酸化炭素の
交互共重合成分を0.8モル%含むエチレン/一酸化炭
素/アリルスルホン酸ナトリウムターポリマーであっ
た。このターポリマーを溶剤の塩化亜鉛濃度を68重量
%とする以外は実施例1と同様の処方で溶解、紡糸、延
伸を行った。
【0042】
【実施例3】アリルスルホン酸ナトリウムの添加量を1
00gとする以外は実施例1と同様の処方で重合を行っ
た。収量は175g、極限粘度は4.8であった。この
ポリマーはアリルスルホン酸ナトリウムと一酸化炭素の
交互共重合成分を5.3モル%含むエチレン/一酸化炭
素/アリルスルホン酸ナトリウムターポリマーであっ
た。このターポリマーを実施例1と同様の処方で溶解、
紡糸、延伸、染色を行った。
【0043】
【実施例4】重合温度を80℃とし、ベンゾキノンを
1.44gを添加する以外は実施例1と同様にして重合
を行い、極限粘度3.9のポリマー255gを得た。こ
のポリマーはアリルスルホン酸ナトリウムと一酸化炭素
の交互共重合成分を2.6モル%含むエチレン/一酸化
炭素/アリルスルホン酸ナトリウムターポリマーであっ
た。このターポリマーを実施例1と同様の処方で溶解、
紡糸、延伸、染色を行った。
【0044】
【比較例1】アリルスルホン酸ナトリウムを添加しない
以外は実施例1と同様の処方で重合を行い、エチレン/
一酸化炭素完全交互共重合コポリマーを得た。収量は8
5g、極限粘度は6.1であった。このコポリマーを溶
剤の塩化亜鉛濃度を70重量%とする以外は実施例1と
同様の処方で溶解、紡糸を行ったところ、紡糸性は不良
で、凝固浴中で単糸切れが多発し、紡糸開始後30分後
にはフィルター詰まりのため、紡糸不能となった。そこ
で、塩化亜鉛濃度を75重量%として実施例1と同様の
処方で溶解、紡糸、延伸、染色を行った。繊維物性はま
ずまずであったが、カチオン染料染色で全く染色するこ
とが出来なかった。
【0045】
【比較例2】アリルスルホン酸ナトリウムの添加量を5
gとする以外は実施例1と同様の処方で重合を行い、ア
リルスルホン酸ナトリウムを0.05モル%含有するエ
チレン/一酸化炭素/アリルスルホン酸ナトリウムター
ポリマーを得た。収量は121g、極限粘度は5.8で
あった。このポリマーを塩化亜鉛濃度を75重量%とし
て実施例1と同様の処方で溶解、紡糸、延伸、染色を行
った。得られた繊維の物性はまずまずであったが、カチ
オン染料によりほとんど染色されず、染色物は薄い褪せ
た色調であった。
【0046】
【比較例3】実施例1において添加するアリルスルホン
酸ナトリウムに代えプロペンを用い、その添加量を10
0gとする以外は同様の処方で重合を行った。収量は5
4g、極限粘度は3.7であった。得られたポリマーは
プロペンと一酸化炭素の交互共重合成分を4.2モル%
含むエチレン/一酸化炭素/プロペンターポリマーであ
った。このターポリマーを実施例1と同様の処方で溶
解、紡糸、延伸、染色を行った。この繊維も比較例1同
様にカチオン染料にて染色することが出来なかった。
【0047】
【表1】
【0048】
【発明の効果】本発明は、カチオン染料により鮮明に染
色可能であり、優れた発色性を有するポリケトン繊維を
提供するものである。さらには、従来の共重合ポリケト
ン繊維に比べて強度・伸度等の繊維物性、特に寸法安定
性等の高温時の繊維物性に優れるポリケトン繊維が得ら
れる。これにより、従来の技術では得られなかった鮮明
で深い色彩のポリケトン繊維および繊維製品が得られ、
また優れた強度、耐熱性を併せ持つことから、アウター
分野やスポーツ用ウェア等の衣料用分野への適用が期待
される。また、高温時の弾性率や寸法安定性に優れ、ス
ルホン基を有することによりゴム接着性にも優れるた
め、産業用資材用途、特にタイヤコードの分野での適用
も期待される。また、本発明の繊維に用いられるポリマ
ーは重合速度が非常に速く、重合収量も多いことから従
来のポリケトンポリマーでは得ることの出来なかった高
効率で安価な重合が可能となる。さらには本発明の繊維
に用いるポリケトンポリマーはポリケトンの溶剤に対し
て優れた溶解性を示し、安定で取り扱い性の良いドープ
が得られるようになり、高品質のドープを低コストで、
かつ生産性よく製造することが可能となる。
フロントページの続き Fターム(参考) 4J002 CJ001 FD096 GK01 4J005 AB01 BB02 4L035 AA09 BB03 BB08 BB89 BB91 DD20 EE08 EE20 FF01

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリケトン繊維を構成するポリケトンポ
    リマーが、繰り返し単位の90〜99.9モル%が下記
    構造式1で表される単位からなり、かつ、構造式2また
    は3で表される繰り返し単位を0.1〜10モル%含有
    するポリマーであることを特徴とするポリケトン繊維。 【化1】 (ここで構造式中のR1 、R2 、R3 は、それぞれ水素
    原子またはメチル基であり、R’は、炭素数1〜10の
    有機基、アミド基含有炭素数1〜10の有機基であり、
    Xは、水素原子、金属元素、アンモニウム、ホスホニウ
    ムの群から選ばれる少なくとも1種の基である。)
  2. 【請求項2】 ポリケトン繊維を構成するポリケトンポ
    リマーが、繰り返し単位の97〜99.9モル%が構造
    式1で表される単位であり、かつ、構造式2または3で
    表される繰り返し単位を0.1〜3モル%含有するポリ
    マーであることを特徴とする請求項1記載のポリケトン
    繊維。
  3. 【請求項3】 ポリケトン繊維の結晶化度が50%以
    上、結晶配向度が80%以上であることを特徴とする請
    求項1または2記載のポリケトン繊維。
  4. 【請求項4】 主たる繰り返し単位が構造式1で表され
    る単位であり、かつ、構造式2または3で表される繰り
    返し単位を0.1〜10モル%含有することを特徴とす
    るポリケトンポリマーが、ハロゲン化亜鉛を10〜70
    重量%含有する水溶液に溶解していることを特徴とする
    ドープ。
  5. 【請求項5】 重合開始時および/または重合途中に下
    記構造式4または5で表される化合物を第VIII族遷移金
    属化合物に対して1〜10000倍モル添加することを
    特徴とするポリケトンの製造法。 【化2】 (ここで構造式中のR1 、R2 、R3 は、それぞれ水素
    原子またはメチル基であり、R’は、炭素数1〜10の
    有機基、アミド基含有炭素数1〜10の有機基であり、
    Xは、水素原子、金属元素、アンモニウム、ホスホニウ
    ムの群から選ばれる少なくとも1種の基である。)
  6. 【請求項6】 ポリケトンポリマーを10〜80重量%
    の亜鉛塩を含有する水溶液に溶解し、該溶液を紡糸口金
    から押し出し、続いて得られた繊維状物から実質的に溶
    剤を除去した後に、熱延伸をすることを特徴とする請求
    項1〜3のいずれかに記載のポリケトン繊維の製造方
    法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜3のいずれかに記載の繊維を
    含む繊維製品。
  8. 【請求項8】 カチオン染料および/または分散染料に
    より染色されていることを特徴とする請求項1〜3、7
    のいずれかに記載のポリケトン繊維およびそれを用いた
    繊維製品
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JP2003027333A (ja) * 2001-07-19 2003-01-29 Asahi Kasei Corp ポリケトン繊維

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