JP3565297B2 - ポリベンザゾール繊維の製造方法および製造装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は高強度・高弾性率ポリベンゾオキサゾールの繊維の製造方法に関する。さらに詳しくは、高強度・高弾性率ポリベンゾオキサゾールの繊維を低い原単位で製造する方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来技術】
ポリベンザゾール繊維は現在市販されているスーパー繊維の代表であるポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維の2倍以上の強度と弾性率を持つ。したがって次世代のスーパー繊維として期待されている。ポリベンザゾール重合体のポリリン酸溶液から繊維を製造することは公知である。例えば、紡糸方法については米国特許5296185号、米国特許5294390号があり、乾燥方法については特開平7−197307号が、熱処理方法については米国特許5288445号が提案がなされている。またステープルの生産方法についても米国特許出願008/425493号が提案されている。基本的にはこれらの生産技術でポリベンザゾール繊維は生産し得るが、実際に多数錘を擁す生産ラインを運転する場合糸切れによる欠錘が発生し原単位を下げる問題を解決する必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ポリベンザゾールとポリリン酸から成る紡糸ドープを所謂、重合直接紡糸法で多数の紡糸錘を用いて製造するに際し、通常の湿式紡糸で行われるように糸切れの発生した錘のポリマー供給を止めるあるいは別途紡糸用ドープとして蓄えることは極めて困難である。なぜなら該錘にポリマー供給を停止すれば重合プロセスにおけるポリマー品質の変動を惹起するし、これを避けるため該錘分のポリマーを備蓄すると、ポリベンザゾールとポリリン酸からなる紡糸ドープは通常の湿式紡糸用のドープと異なり極めて粘度が高く容易に紡糸温度でも10万ポイズを越えるので別途備蓄した紡糸ドープを使用することは工業的なスケールでは困難であるからである。本発明ではこのような技術的困難を克服し、ポリベンザゾール繊維を、糸切れ欠錘に伴う原単位の低下を最小にするための高速製糸技術および設備を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ポリベンザゾール繊維の生産を高速でかつ安価に製造することを目的とし、鋭意研究し、解決手段を見いだした。即ち、ポリベンザゾール重合体を酸溶媒中で溶液重合し、重合溶液を直接紡糸ドープとして紡糸口金から押出し、得られたドープフィラメントを凝固・洗浄・乾燥させてポリベンザゾールフィラメントを製造する方法において、糸切れが発生した際に紡糸ドープの供給を止めることなくドープフィラメントを連続してステープル用製造工程に供することを特徴とするポリベンザゾール繊維の製造方法。
複数の紡糸錘から構成されたポリベンザゾールフィラメントの製造装置において、各錘の凝固浴の出口に配置された取引ロールの下部に凝固浴を通過した糸条をステープルケンスへ搬送するためのコンベアを設けることを特徴とするポリベンザゾール繊維の製造装置。
【0005】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明におけるポリベンザゾール繊維とは、ポリベンザゾールポリマーよりなる繊維をいい、ポリベンザゾール(PBZ)とは、ポリベンゾオキサゾール(PBO)ホモポリマー、ポリベンゾチアゾール(PBT)ホモポリマー及びそれらPBO、PBTのランダム、シーケンシャルあるいはブロック共重合ポリマーをいう。ここでポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール及びそれらのランダム、シーケンシャルあるいはブロック共重合ポリマーは、例えば Wolfe等の「Liquid Crystalline Polymer Compositions , Process and Products」米国特許第4703103号(1987年10月27日)、「Liquid Crystall−ine Polymer Compositions , Process and Products 」米国特許4533692号(1985年8月6日)、「Liquid Crystalline Poly(2,6−Benzothiazole) Composition, Process and Products」米国特許第4533724号(1985年8月6日)、「Liquid Crystalline Polymer Compositions , Process and Products 」米国特許第4533693号(1985年8月6日)、Evers の「Thermooxidative−ly Stable Articulated p−Benzobisoxazole and p−Benzobisthiazole Polymres 」米国特許第4539567号(1982年11月16日)、Tasi等の「Method for making Heterocyclic Block Copolymer」米国特許第4578432号(1986年3月25日)、等に記載されている。
PBZポリマーに含まれる構造単位としては、好ましくはライオトロピック液晶ポリマーから選択される。モノマー単位は構造式(a)〜(h)に記載されているモノマー単位からなり、さらに好ましくは、本質的に構造式(a)〜(c)から選択されたモノマー単位からなる。
【0006】
【化1】
【0007】
【化2】
【0008】
PBZポリマーのドープを形成するための好適な溶媒としては、クレゾールやそのポリマーを溶解し得る非酸化性の酸が含まれる。好適な酸溶媒の例としては、ポリリン酸、メタンスルホン酸および高濃度の硫酸あるいはそれらの混合物が挙げられる。さらに適する溶媒はポリリン酸及びメタンスルホン酸である。また最も適する溶媒は、ポリリン酸である。
【0009】
溶媒中のポリマー濃度は好ましくは少なくとも約7重量%であり、さらに好ましくは少なくとも10重量%、最も好ましくは少なくとも14重量%である。最大濃度は、例えばポリマーの溶解性やドープ粘度といった実際上の取扱い性により限定される。それらの限界要因のために、ポリマー濃度は通常では20重量%を超えることはない。
【0010】
好適なポリマーやコポリマーあるいはドープは公知の手法により合成される。例えば Wolfe等の米国特許第4533693号(1985年8月6日)、Sybert等の米国特許4772678号(1988年9月20日)、Harrisの米国特許第4847350号(1989年7月11日)に記載される方法で合成される。PBZポリマーは、Gregory 等の米国特許第5089591号(1992年2月18日)によると、脱水性の酸溶媒中での比較的高温、高剪断条件下において高い反応速度での高分子量化が可能である。
【0011】
このようにして重合されるドープは紡糸部に供給され、紡糸口金から通常100 ℃以上の温度で吐出される。口金細孔の配列は通常円周状、格子状に複数個配列されるが、その他の配列であってもよい。口金細孔数は特に限定されないが、紡糸口金面における紡糸細孔の配列は、吐出糸条間の融着などが発生しないような孔密度を保つ必要がある。
【0012】
該紡糸口金から非凝固性の気体中(いわゆるエアーギャップ)に吐出されたフィラメント状のドープはエアーギャップ中でドラフトを与えられる。該糸条の冷却効率を高めるためエアーギャップ中に、冷却風を用いて糸条を冷却するいわゆるクエンチチェンバーを設けることは特に早い紡糸速度を得るためには有効である。
【0013】
ついで該糸条は凝固液に導かれ凝固および/または抽出洗浄される。凝固液はリン酸水溶液が好ましく、リン酸水溶液は10%以上50%のリン酸濃度で、温度が30℃以上80℃以下であることがさらに好ましい。
【0014】
凝固・洗浄後の糸条の残リン濃度は10000ppm以下、好ましくは5000ppm以下が好ましい。また洗浄工程に中和工程が含まれ、中和薬剤としてアルカリ金属の塩基が用いられ、繊維中に残留するリンに対するアルカリ金属の原子比が0.5以上1.5以下とすることは、繊維の後加工中の物性保持の為特に好ましいが、必須ではない。
【0015】
凝固・洗浄工程を経た糸条は乾燥機内で乾燥される。前記好適な条件で紡糸・凝固・洗浄された紡出糸は200℃以上の高温度で繊維物性の低下を惹起するようなボイドを発生させることなく乾燥できる。勿論ステップワイズに温度を上昇させ乾燥することも可能である。乾燥機としては、熱ロール、オーブンその他の乾燥機が用いることができる。
【0016】
かかるポリベンザゾールフィラメントの製造方法を工業的な規模で生産に用いる場合、図1に示すように多数の紡糸口金を用いて生産する。このように多数の糸条は同一の生産ラインに同時に糸掛けされているので、一般的には糸切れが生じた場合、原単位を低下させないため紡糸ポンプ等の停止等により欠錘する。ポリベンザゾールの紡糸は高粘度で重合直接紡糸法を採用することが望ましい。この場合紡糸に要する紡糸ドープの必要量の減少に対応して重合供給量を変動させることは、ポリマーの安定性上好ましくない。またその問題を解決する方法として、糸切れ錘を放流したままにしておくことは原料の無駄使いとなり原単位が上昇する。
【0017】
本発明は、ポリマーの安定供給と生産性を両立させるため、凝固浴(2)出口に設けた引き取りロール(3)の下部にコンベア(5)を設置し、ポリベンザゾールフィラメントの製造時に糸切れが発生した錘の糸条は連続してコンベア上部の吸引装置(4)によりコンベア上に振り落とす。該コンベアは凝固浴と糸条を分離するためネットコンベアが好適である。該コンベア出口にはステープルケンス(6)が設けられており、糸切れ錘の糸条はケンスに引き取られる。勿論生産ライン全糸条の糸掛けに至る糸切れ本数が生産性を考慮して決定されているわけで、糸切れ本数が設定値に達したところでライン全糸条の再糸掛けが行われる。
【0018】
このようにして、一定期間ステープルケンスに引き取られた糸切れ錘の糸条はケンスを集め複数の糸条として別途オフラインの処理装置により上述のフィラメントの製造と同様に洗浄・乾燥される。好適にはオフライン処理機はステープルの製造装置で、乾燥後、糸条にクリンプを付与し、ロータリーカッターで切断されステープルを生産する。勿論加工の順番は変更しても良く、ステープルケンスを用いることなくコンベア上で洗浄・乾燥等の処理を施すことも可能である。本発明の必須の技術としては、フィラメント製造ラインと別の処理工程を設置し、ポリマー原単位を低下させる事にある。
【実施例】
以下に実施例を示すが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例>
米国特許4533693号示す方法により得られた、30℃のメタンスルホン酸溶液で測定した固有粘度が24.4dL/gのポリベンザゾール14.0(重量)%と五酸化リン含有率83.17%のポリリン酸からなる紡糸ドープを紡糸に用いた。ドープは金属網状の濾材を通過させ、次いで2軸からなる混練装置で混練と脱泡を行った後、昇圧させ、重合体溶液温度を170℃に保ち、孔数334を有する紡糸口金4錘から170℃で紡出し、温度60℃の冷却風を用いて吐出糸条を冷却した後、凝固浴中に導入した。紡糸速度は600m/分で、50℃、20%リン酸水溶液で凝固させ、引き取りロールで紡糸速度を与えた後、第2、第3の抽出浴中で糸条を洗浄した後、0.1規定の水酸化ナトリウム溶液に浸漬し中和処理した。さらに水洗浴で洗浄した後、乾燥機を用いて直ちに乾燥を行った。乾燥条件および得られた繊維の物性を同じく表1に示す。この4錘の糸条のうち一錘を人為的に糸切れさせた後、ロール下部に設けたネットコンベアに吸引機を用い振り落とした。ネットコンベアノの端部からケンスに落とした糸条を別途水洗・乾燥した。繊維の物性は表1に示すように、フィラメントの物性に見劣りしないものであった。
【0019】
別途ケンスに集めた繊維を水洗した後クリンパーで捲縮を与えた後44mmに切断し、乾燥しステープルを作成した。該ステープルを紡績工程を経て紡績糸にしたところ、製造工程において何等問題なく加工できまた得られた紡績糸は表1に示すように優れた糸物性を保持しており、本発明の方法で得られる紡績糸は製品として全く遜色が無く、生産方式として十分なものであることが分かる。したがって本発明の方法により1ライン中に多数錘が存在するような大量生産設備にあってもポリベンザゾール繊維が理論原単位に近い値で安価に製造できる。
【0020】
【表1】
【0021】
【発明の効果】
本発明により、ポリベンザゾール繊維が工業的規模で安価に製造可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造装置の概略図。
【符号の説明】
1.紡糸口金、2.凝固浴、3.引き取りロール、4.吸引装置、5.コンベア6.ステープルケンス
Claims (4)
- ポリベンザゾール重合体を酸溶媒中で溶液重合し、重合溶液を直接紡糸ドープとして紡糸口金から押出し、得られたドープフィラメントを凝固・洗浄・乾燥させてポリベンザゾールフィラメントを製造する方法において、糸切れが発生した際に紡糸ドープの供給を止めることなくドープフィラメントを連続してステープル用製造工程に供することを特徴とするポリベンザゾール繊維の製造方法。
- 複数の紡糸口金からドープフィラメントを押出し、糸切れが発生した錘のみを連続してステープル用製糸工程に供することを特徴とする請求項1記載のポリベンザゾール繊維の製造方法。
- 複数の紡糸錘から構成されたポリベンザゾールフィラメントの製造装置において、各錘の凝固浴の出口に配置された取引ロールの下部に凝固浴を通過した糸条をステープルケンスへ搬送するためのコンベアを設けることを特徴とするポリベンザゾール繊維の製造装置。
- 引取ロールとコンベアの間に凝固浴を通過した糸条の吸引装置を設けることを特徴とする請求項3記載のポリベンザゾール繊維の製造装置。
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