JP2023092474A - ポリエステル繊維成型体 - Google Patents

ポリエステル繊維成型体 Download PDF

Info

Publication number
JP2023092474A
JP2023092474A JP2022195437A JP2022195437A JP2023092474A JP 2023092474 A JP2023092474 A JP 2023092474A JP 2022195437 A JP2022195437 A JP 2022195437A JP 2022195437 A JP2022195437 A JP 2022195437A JP 2023092474 A JP2023092474 A JP 2023092474A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fiber
polyethylene terephthalate
heat
base material
molding
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022195437A
Other languages
English (en)
Inventor
慎吾 武知
Shingo Takechi
大士 勝田
Hiroshi Katsuta
秀和 鹿野
Hidekazu Kano
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toray Industries Inc filed Critical Toray Industries Inc
Publication of JP2023092474A publication Critical patent/JP2023092474A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Multicomponent Fibers (AREA)

Abstract

【課題】通気性と柔軟性、70℃耐ヘタリ性、ケミカルリサイクルの観点でもリサイクル性に優れる、高品位で低環境負荷の繊維成型体を提供すること。【解決手段】25%圧縮時の硬さが200g/cm2以下であり、70℃耐ヘタリ性が60%以上であり、ポリエチレンテレフタレートおよび/または共重合ポリエチレンテレフタレートを主体とする母材繊維と、共重合ポリエチレンテレフタレートを主体とする熱接着繊維とを主たる構成成分とし、母材繊維と熱接着繊維が交叉した状態で熱融着により形成された固着点と、熱接着繊維同士が交叉した状態で熱融着により形成された固着点を有し、3次元繊維網目構造を有する、繊維成型体を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、車両用クッション材に好適で、ケミカルリサイクルの観点でもリサイクル性に優れるポリエステル繊維成型体に関する。
車両用のクッション材には、安価で成型が容易であり、かつ弾力性や70℃以上の環境下での耐ヘタリ性に優れるポリウレタンフォームが多く使用されている。
しかし、ポリウレタンフォームはリサイクル困難であり、また焼却時に有害なガスが発生するため、地球環境的な観点から問題があった。
そこで、リサイクル性に優れる、ポリエステル繊維からなる成型体で代替する試みが行われてきた。例えば、特許文献1には、熱可塑性エラストマーを用いて非弾性ポリエステル繊維を溶融接着させ、繊維成型体を得る技術が開示されている。
また、特許文献2には、熱可塑性エラストマーを用いてポリトリメチレンテレフタレートと非弾性ポリエステルを溶融接着させ、繊維成型体を得る技術が開示されている。
また、特許文献3には、構成するポリマーの融点やガラス転移温度を適正化した熱接着繊維を用いてポリエステル繊維を溶融接着させ、高温での耐ヘタリ性に優れる繊維成型体を得る技術が開示されている。
さらに、特許文献4には、高次構造を適正化したポリエステル繊維と非熱可塑性繊維を、熱接着繊維で溶融接着させ、柔軟性と70℃耐ヘタリ性に優れる繊維成型体を得る技術が開示されている。
特開平5-156561号公報 特開2007-98013号公報 特開2000-129537号公報 特開2003-201660号公報
しかし、特許文献1に記載されている方法では、通気性に優れるが柔軟性には劣り、更なる柔軟性向上が求められていた。
特許文献2に記載されている方法では、通気性と柔軟性に優れるが、ポリトリメチレンテレフタレートと熱可塑性エラストマー、非弾性ポリエステルと複数のポリエステル骨格を有する樹脂を用いるため、ケミカルリサイクルの観点で不利であり、依然としてリサイクル性に課題があった。
特許文献3に記載されている方法では、通気性に優れ、70℃耐ヘタリ性に優れた繊維成型体が得られるが、柔軟性には劣り、更なる柔軟性向上が求められていた。
特許文献4に記載されている方法では、通気性と柔軟性、70℃耐ヘタリ性に優れるが、非熱可塑性繊維を含むため、ケミカルリサイクルの観点で不利であり、依然としてリサイクル性に課題があった。
そこで、本発明の目的は、通気性と柔軟性、70℃耐ヘタリ性、ケミカルリサイクルの観点でもリサイクル性に優れる繊維成型体を提供することにある。
前記目的は、以下の手段により達成される。すなわち、
(1)25%圧縮時の硬さが200g/cm以下であり、70℃耐ヘタリ性が60%以上であり、ポリエチレンテレフタレートおよび/または共重合ポリエチレンテレフタレートを主体とする母材繊維と、共重合ポリエチレンテレフタレートを主体とする熱接着繊維とを主たる構成成分とし、母材繊維と熱接着繊維が交叉した状態で熱融着により形成された固着点と、熱接着繊維同士が交叉した状態で熱融着により形成された固着点を有し、3次元繊維網目構造を有する、繊維成型体。
(2)前記熱接着繊維のガラス転移温度が80℃以上であることを特徴とする、上記(1)に記載の繊維成型体。
(3)前記熱接着繊維が芯鞘複合繊維かつ、ガラス転移温度が80℃以上であり、繊維表面に露出する鞘成分が共重合ポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする、上記(1)に記載の繊維成型体。
(4)前記母材繊維のガラス転移温度が90℃以上であり、ヤング率が2000N/mm以下であることを特徴とする、上記(1)~(3)のいずれかに記載の繊維成型体。
(5)前記母材繊維のガラス転移温度が90℃以上であり、ヤング率が2000N/mm以下であり、面指数(100)と(010)の円周方向にスキャンして得られる強度分布ピークの角度差が10度以上であることを特徴とする、上記(1)~(3)のいずれかに記載の繊維成型体。
(6)前記(1)~(3)のいずれかに記載の繊維成型体を用いることを特徴とする、クッション材。
本発明の繊維成型体は、通気性と柔軟性、70℃耐ヘタリ性、ケミカルリサイクルの観点でもリサイクル性に優れ、高品位で低環境負荷の繊維成型体を提供することができる。
繊維成型体の微細構造の一例を示す拡大断面図である。
本発明の繊維成型体は、ポリエチレンテレフタレートおよび/または共重合ポリエチレンテレフタレートを主体とする母材繊維と、共重合ポリエチレンテレフタレートを主体とする熱接着繊維とを主たる構成成分とするため、ケミカルリサイクルの観点でもリサイクル性に優れる。
繊維成型体において「主たる構成成分」とは、繊維成型体において母材繊維と熱接着繊維の合計が重量比で80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上を占めることである。
母材繊維における「主体とする」とは、母材繊維においてポリエチレンテレフタレートおよび/または共重合ポリエチレンテレフタレートが重量比で70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上を占めることである。
熱接着繊維における「主体とする」とは、熱接着繊維において共重合ポリエチレンテレフタレートが重量比で30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上を占めることである。
また、熱接着繊維においても、共重合ポリエチレンテレフタレートの割合が高くなることがケミカルリサイクルの観点から好ましく、例えば、後述する熱接着繊維が複合繊維の場合には、共重合ポリエチレンテレフタレートの占める割合は、重量比で70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上がよりさらに好ましい。
本発明の繊維成型体において、ポリエチレンテレフタレートおよび共重合ポリエチレンテレフタレートの占める割合が高くなると、ケミカルリサイクルの観点で有利であるため好ましく、ポリエチレンテレフタレートおよび共重合ポリエチレンテレフタレートを100%用いることは特に好ましい。
本発明における共重合ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコールをジオール成分として、次のような成分を共重合して得られるものである。
好ましい共重合成分としては、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸類、フタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸な、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、どの芳香族ジカルボン酸類、オキシ安息香酸の如きオキシ酸類、および/またはジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、ビスフェノールAのEO付加物(BPA-EO)などのうちから1種または2種以上の共重合成分が挙げられる。
本発明の繊維成型体は、母材繊維と熱接着繊維が交叉した状態で熱融着により形成された固着点(図1(i))と、熱接着繊維同士が交叉した状態で熱融着により形成された固着点(図1(ii))とを有し、3次元繊維網目構造を形成しているため、空気や水蒸気が通過できる空隙を多数有し、通気性に優れる。
本発明における、固着点とは、繊維同士が融着し、部分的に一体化している状態を指す。該固着点は、光学顕微鏡にて500倍前後の倍率で確認でき、繊維成型体の断面を観察して評価する。
本発明の繊維成型体は、繰り返し圧縮残留歪みが15%以下であることが好ましく、12%以下がより好ましく、8%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。繊維成型体をクッション材に用いるためには、人が座ったり、荷物を載せたりするような繰り返しの圧縮に対して良好な回復性を有していなければならず、繰り返し圧縮残留歪みが15%を超える場合、ヘタリが発生し易く、座り心地だけではなく見栄えも悪くなってしまう。
なお、本発明における繰り返し圧縮残留歪みは、立方体(3×3×3cm以上)に切り出した繊維成型体に、100回/分の圧縮速度で、サンプルの厚みの50%までの圧縮を3万回繰り返した後、無荷重の状態で30分放置した際の厚みL(cm)を測定し、[(10-L)/10×100](%)の式より求まる値である。
本発明の繊維成型体は、25%圧縮時の硬さが200g/cm以下であり、好ましくは150g/cm以下であり、より好ましくは100g/cm以下である。25%圧縮時の硬さが200g/cm以下であれば柔軟性に優れるため、クッション材として好ましく用いることができる。
なお、本発明における25%圧縮時の硬さは、JIS K6400-2:2012(硬さ及び圧縮応力-ひずみ特性の求め方)に準じ、繊維成型体を25%圧縮した時の応力を求めた際の値である。
本発明の繊維成型体は、70℃耐ヘタリ性が60%以上であり、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。例えば、車両用クッション材は60℃以上の高温になるような条件の下で荷重を受けるが、70℃耐ヘタリ性が60%未満の場合、高温雰囲気下で荷重を受けたとき繊維成型体がヘタリ易く、歪み回復しないため、本発明の所期の効果を十分に得ることができない。
なお、本発明における70℃耐ヘタリ性は、立方体(3×3×3cm以上)に切り出した繊維成型体に、平行平面板を用いて厚み方向に厚さ50%になるまで圧縮し、その状態で70℃乾熱中に22時間保持後、平行平面板より外して歪みを開放して圧縮作用をやめ、更に常温中(30℃)で24時間放置した後の厚み(L)を用い、[(1-(10-L)/10)×100](%)の式より求まる値である。
本発明の繊維成型体の密度は、20~100kg/mの範囲とすることが好ましい。20kg/m以上とすることで圧縮回復率と圧縮応力比が向上し、十分に安定した座り心地が得られる。また、100kg/m以下とすることで十分な弾力性を得ることができる。
本発明における母材繊維の横断面の形状としては、円形であっても異形であっても良く、丸断面や三角断面、四角断面など各種多角形断面、中空断面、放射状断面などを例示できる。
本発明における母材繊維のガラス転移温度は90℃以上であることが好ましく、95℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。母材繊維のガラス転移温度が90℃未満では、例えば70℃などの高温雰囲気下で荷重を受けた際に容易に塑性変形を生じ、その結果、高熱での耐ヘタリ性が著しく劣り、本発明の所期の効果を十分に得ることができない。
また、本発明における母材繊維のヤング率は2000N/mm以下であることが好ましく、より好ましくは300~1800N/mmであり、さらに好ましくは500~1300N/mmである。母材繊維のヤング率を上記範囲とすることで、十分な柔軟性を得ることができる。
本発明における母材繊維は、広角X線散乱において面指数(100)と(010)の円周方向にスキャンして得られる強度分布ピークの角度差が10度以上であることが好ましい。これは、本発明における母材繊維の結晶が、繊維軸に対して傾いて存在していることを示しており、繊維径方向に該ピーク角度差は15度以上がより好ましく、20度以上が更に好ましく、25度以上が最も好ましい。なお、ポリエチレンテレフタレート繊維は、通常延伸されており、上記ピーク角度差は10度以下となる。
本発明における母材繊維は、小角X線散乱において層線状散乱像を呈することが好ましい。これは、本発明における母材繊維が、繊維軸に対して積層した高次構造を有していることを示しており、該周期構造の距離は5~20nmが好ましく、10~15nmがより好ましい。なお、ポリエチレンテレフタレート繊維は、通常延伸されており、小角X線散乱において層線状4点散乱を呈する。
本発明における母材繊維の比重は、1.360以上が好ましく、1.370以上がより好ましく、1.375以上がさらに好ましい。母材繊維の比重を上記範囲とすることで、結晶化度が高く、十分な高温での耐ヘタリ性を得ることができる。
また、本発明における母材繊維は、ヤング率が2000N/mm以下、小角X線散乱において層線状散乱像を示し、非晶配向度が0.45以下の要件を満たすことが好ましく、これらの要件を満たす母材繊維を用いることで、繰返し圧縮残留歪を抑えつつ、十分な柔軟性を得ることができる。
このように本発明における母材繊維は、従来のポリエチレンテレフタレートや共重合ポリエチレンテレフタレート繊維と比べて柔軟であるが、これは上記の小角X線散乱における層線状散乱像に反映される高次構造により、所謂ハードエラスチック性が発現している為と考えられ、従来公知の未延伸糸、部分配向糸、延伸糸、加工糸や半延伸糸を用いても、本発明の所期の効果は得られない。
上記ハードエラスチック性とは、主にポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンにおいて数多く報告されている、結晶性高分子の高次構造に由来して発現する特異的な弾性挙動を指し、例えば、Journal of Polymer Science:Macromolecular Reviews Vol.11 p.209-275に詳しい。
結晶性高分子の高次構造は、紡出時に形成される未延伸糸の繊維構造に大きく影響され、上述の小角X線散乱における層線状散乱像に反映される高次構造を形成するには、口金から吐出されたポリマー融液が固化する過程で適切な外力と温度勾配を与えて、配向結晶化させることが肝要である。具体的には、冷却速度を制御し十分に熱結晶化が進行する時間を確保しつつ、高ドラフト比で引取り、適度に配向させることで、本発明の母材繊維として好適に用いることができる未延伸糸が得られる。また、ポリエチレンテレフタレートあるいは共重合ポリエチレンテレフタレート原料中の高分子量成分、タイ分子鎖を増大させることも有効である。
例えば、原料にポリエチレンテレフタレートを用いた場合、IVは0.6以上が好ましい。高IV原料を用いることで、微細かつ均一な繊維構造が形成される傾向にある。一方、高IV原料を用いると、押出機および口金の圧力が高くなり、圧力が高まりすぎて紡糸が困難になる。そこで、原料は、IVが異なる2種類以上の原料をブレンドして用いても良く、例えば、一般的な繊維グレードの原料に、フィルムグレードなどの高IV原料を添加することで、タイ分子鎖を増やし配向を促進しながらも、一般的な紡糸条件における紡糸性を担保することができる。
また、上述の小角X線散乱における層線状散乱像に反映される高次構造の形成には、未延伸糸の熱処理条件にも大きく影響され、未延伸糸の構造を損なうことなく結晶化や結晶構造の秩序性を高めることが肝要である。具体的には、非晶部の配向緩和に伴う収縮変形を規制するために適度な張力を維持しつつ、熱処理を行って構造の安定化と秩序性を高めることで、本発明における母材繊維として好適に用いることができる未延伸糸が得られる。
例えば、原料にポリエチレンテレフタレートを用いた場合、熱処理温度は50~200℃の範囲が好ましい。また、熱処理は、多段工程を採用しても良く、例えば、50~110℃の範囲で熱処理を加えた後に、120~200℃の範囲で熱処理を加えることで、品質と工程通過性を高度に両立することができる。
本発明の熱接着繊維は、成型する際に接着剤として作用する繊維であり、成型温度において溶融あるいは軟化して、母材繊維間に介在して接着、あるいは熱接着繊維同士で接着して、本発明の繊維成型体の形態である3次元繊維網目構造を形成しうるものである。従って、成型加工において溶融あるいは軟化して接着に寄与できる共重合ポリエチレンテレフタレートが繊維表面に露出して配置されることが好ましい。
本発明における熱接着繊維の横断面の形状としては、円形であっても異形であっても良いが、力学特性とプロセス性などの観点から複合繊維であることが好ましく、海島型、芯鞘型、サイドバイサイド型が例示できるが、とくに芯鞘型が好ましい。芯鞘複合繊維における、芯/鞘比率は重量比で30/70~70/30が好ましく、40/60~60/40がより好ましい。複合繊維の場合、共重合ポリエチレンテレフタレート以外の成分としては、用途に応じて、線形成可能な合成ポリマーを適宜選択できる。
本発明における熱接着繊維のガラス転移温度は80℃以上であることが好ましく、85℃以上であることがより好ましく、90℃以上であることがさらに好ましい。熱接着繊維のガラス転移温度が80℃未満では、捲縮の熱セット性が悪化する傾向がみられ、成型体の作製時や高温環境下で捲縮形態が著しく変形し、本発明の所期の効果を十分に得ることができない。なお、熱接着繊維が複合繊維の場合のようにガラス転移温度が複数存在する場合は、最も低いガラス転移温度が上記範囲であることが好ましい。
本発明における熱接着繊維の融点は、200℃以下であることが好ましい。熱接着繊維の融点が200℃を超えると、繊維成型体を作製するときの成形温度を高く設定する必要が生じるため、母材繊維の軟化も生じ易く、繊維成型体の風合いが損なわれる傾向にある。なお、熱接着繊維が複合繊維の場合のように融点が複数ある場合は、最も低い融点が上記温度範囲を満たすことが好ましい。
母材繊維および熱接着繊維のカット長は、20~100mmの範囲とすることが好ましい。20mm以上とすることで繊維同士の立体的な絡み合いが十分となり高い弾力性を得ることが出来る。また、100mm以下とすることで繊維の分散性を損なうことなく、均一な構造を有する繊維成型体を得ることができる。
母材繊維および熱接着繊維の繊度は、3~30dtexであることが好ましい。3dtex以上とすることで、繊維同士の係合および係合解除をスムーズかつ容易に行うことができる。また、30dtex以下とすることで、熱融着により形成される固定点の数が増え、繊維成型体の弾力性を高めることができる。
また、母材繊維および熱接着繊維は、上記範囲でそれぞれ繊維長や繊度の異なる繊維を用いることができる。繊度の異なる繊維を適切に組み合わせることで、より高品位の繊維成型体を得ることができる。
本発明の繊維成型体における熱接着繊維の好ましい含有量は、10~80重量%が好ましく、20~70重量%がより好ましい。10重量%未満では、繊維成型体中に熱融着して形成される固着点が少なくなり、歪が加わったときに応力分散が十分に進まずに塑性変形が生じ易く、耐ヘタリ性が低下する傾向にあるため好ましくない。一方、80重量%を超えると、繊維成型体中における柔軟成分である母材繊維が少なくなり、本発明の繊維成型体の特徴である柔軟性が十分に発揮されない。
本発明の繊維成型体の作製方法としては、母材繊維と熱接着繊維を一定の混率で混ぜ、カード機で開繊した後、ウェブを積層して一定の密度となるように圧縮し、熱処理機内において熱成形、例えば200℃の熱風で30分間熱成形し、冷却することで得る方法が例示できる。
本発明の繊維成型体は、柔軟かつ高温環境下での変形が少ないことから、例えば車両用の内装材や高温洗濯可能なベッドマットやペット用マットなどの各種用途に使用することができるが、特に車両用クッション材として好ましく用いることができる。
以下、実施例を挙げて、本発明の繊維成型体について具体的に説明する。
A.繊度
繊維を100mかせ取りし、かせの質量(g)に100を乗じることにより総繊度(dtex)を算出し、1水準につき5回測定を行い、その算術平均値より求めた。
B.ヤング率
JIS L1013:2021(引張強さ及び伸び率)の試験法に準じて荷重伸長曲線を測定し、得られた荷重曲線をJIS L1013:2021(初期引張抵抗度)に準じて平均値を求めた。
C.比重
JIS L1013:2021(比重および密度)の試験法に準じて測定した。
D.ガラス転移温度
TA Instruments社製温度変調DSCを用い、試料約5mgを窒素雰囲気下、0℃から300℃まで2℃/minの昇温速度、温度変調振幅±1℃、温度変調周期40秒で測定した。
E.密度
平板状に調整されたクッション構造体の目付(kg/m)を測定し、0.5g/cmの荷重下での厚み(cm)を測定し、密度(kg/m)を算出した。
F.広角X線散乱測定
以下の条件で散乱像を取得し、面指数(100)と(010)の円周方向にスキャンして、強度分布ピークの角度差を測定した。
X線発生装置:Bruker AXS社製
X線源:CuKα線
カメラ長:170mm。
G.小角X線散乱測定
以下の条件で散乱像を取得し、判定した。
X線発生装置:(株)リガク製RU-200型
X線源:CuKα線
カメラ長:400mm。
H.25%圧縮時の硬さ
JIS K6400-2:2012(硬さ及び圧縮応力-ひずみ特性の求め方)に準じ、繊維成型体を25%圧縮した時の応力を求めた。
I.繰返し圧縮残留歪み
立方体(10×10×10cm)に切り出した繊維成型体に、100回/分の圧縮速度で、サンプルの厚みの50%までの圧縮を3万回繰り返した後、無荷重の状態で30分放置した際の厚みL(cm)を測定し、[(10-L)/10×100](%)の式より、繰返し圧縮残留歪を求めた。
J.70℃耐ヘタリ性
立方体(10×10×10cm)に切り出した繊維成型体に、平行平面板を用いた厚み方向に厚さ50%になるまで圧縮し、その状態で70℃乾熱中に22時間保持後、平行平面板より外して歪みを開放して圧縮作用をやめ、更に常温中(約30℃)で24時間放置した後の厚み(L)と処理前の厚み(L0)を用い、[(1-(L-10)/10)×100](%)の式より、70℃耐ヘタリ性を求めた。
(実施例1)
IVが0.68のポリエチレンテレフタレート(PET)とIVが1.00のPETを、80/20の重量分率でドライブレンドし、150℃で12時間真空乾燥した後、紡糸温度290℃にて溶融紡糸した。溶融紡糸では二軸押出機にて溶融して押出し、ギアーポンプで計量しつつ紡糸口金まで導き、孔径が0.3mmφの丸孔を30孔有した口金から紡出した。その後、3000m/分の速度で巻き取り、285dtexの未延伸糸を得た。
上記未延伸糸を18本合糸して5130dtexとし、第1ローラーと第2ローラーの間に設置された、浴長1m、浴温93℃の熱水中を20%弛緩させつつ通過させ、前処理糸を得た。続いて、得られた前処理糸を、雰囲気温度180℃の熱風乾燥機で10分間の熱処理を行い、熱処理糸を得た。
得られた熱処理糸を、さらに27本まとめて、180℃の熱ドラムに4周巻き付け、仕上げ油剤を付与し、クリンパーにて捲縮を付与した。ついで、雰囲気温度70℃の乾燥機で10分間熱処理を行い、油剤を付与した後に58mmの長さにカットし、単糸繊度12dtexの母材繊維を得た。得られた母材繊維の広角X線散乱を測定したところ、面指数(100)と(010)の円周方向にスキャンして得られる強度分布プロットのピークの角度差は20度であった。また、得られた母材繊維の小角X線散乱を測定したところ、層線状散乱を示していた。
イソフタル酸ジメチルを40重量%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートを鞘成分として260℃で溶融し、ポリエチレンテレフタレートを芯成分として300℃で溶融し、芯鞘型複合繊維(芯/鞘=50/50)を溶融紡糸した。溶融紡糸では二軸押出機にて溶融して押出し、ギアーポンプで計量しつつ紡糸口金まで導き、1350m/分の速度で巻き取った。次いで。該未延伸糸を合糸して80℃温浴中で3.0倍に延伸後、仕上げ油剤を付与し、クリンパーにて捲縮を付与して51mmの長さにカットし、単糸繊度4.0dtexの熱接着繊維を得た。
母材繊維を70重量%と熱接着繊維を30重量%混繊し、カードで開繊後、積層して目付4000g/cmのウェブとし、厚み10cmまで圧縮して200℃の熱風で30分間熱成形後、冷却して繊維成型体を得た。得られた繊維成型体の断面を光学顕微鏡で観察し、繊維同士が交叉した点で熱固着点が形成され、3次元繊維網目構造を有する繊維成型体が得られていることが分かった。繊維成型体の評価結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、とイソフタル酸ジメチルと2,6-ナフタレンジカルボン酸を30重量%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートを用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で繊維成型体を得た。繊維成型体の評価結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例2において、共重合ポリエチレンテレフタレートを260℃で溶融紡糸した単独糸を用いたこと以外は、実施例2と同じ方法で繊維成型体を得た。繊維成型体の評価結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1において、2,6-ナフタレンジカルボン酸を60重量%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートを用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で繊維成型体を得た。繊維成型体の評価結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例4において、熱処理糸の熱処理時間を30分間としたこと以外は、実施例4と同じ方法で繊維成型体を得た。繊維成型体の評価結果を表1に示す。得られた母材繊維の広角X線散乱を測定したところ、面指数(100)と(010)の円周方向にスキャンして得られる強度分布ピークの角度差は20度であった。また、得られた母材繊維の小角X線散乱を測定したところ、層線状散乱を示していた。
(実施例6)
実施例4において、熱処理糸の熱処理時間を24時間としたこと以外は、実施例4と同じ方法で繊維成型体を得た。繊維成型体の評価結果を表1に示す。得られた母材繊維の広角X線散乱を測定したところ、面指数(100)と(010)の円周方向にスキャンして得られる強度分布ピークの角度差は20度であった。また、得られた母材繊維の小角X線散乱を測定したところ、層線状散乱を示していた。
(実施例7)
実施例6において、母材繊維の紡糸速度を2500m/分としたこと以外は、実施例1と同じ方法で繊維成型体を得た。繊維成型体の評価結果を表1に示す。なお、得られた母材繊維の広角X線散乱を測定したところ、面指数(100)と(010)の円周方向にスキャンして得られる強度分布ピークの角度差は30度であった。また、得られた母材繊維の小角X線散乱を測定したところ、層線状散乱を示していた。
(比較例1)
実施例1において、母材繊維の原料にIVが0.68のポリエチレンテレフタレートを単独で用いたこと以外は、実施例1と同じ方法で繊維成型体を得た。繊維成型体の評価結果を表2に示す。なお、得られた母材繊維の広角X線散乱を測定したところ、面指数(100)と(010)の円周方向にスキャンして得られる強度分布ピークの角度差は35度であった。また、得られた母材繊維の小角X線散乱を測定したところ、層線状散乱を示していた。
(比較例2)
実施例1において、母材繊維の紡糸速度を1500m/分としたこと以外は、実施例1と同じ方法で繊維成型体を得た。繊維成型体の評価結果を表2に示す。しかし、母材繊維が脆く、繊維成型体を得ることはできなかった。なお、得られた母材繊維の広角X線散乱を測定したところ、面指数(100)と(010)の円周方向にスキャンして得られる強度分布ピークの角度差は35度であった。また、得られた母材繊維の小角X線散乱を測定したところ、層線状散乱を示していた。
(比較例3)
実施例1において、母材繊維の紡糸速度を4000m/分としたこと以外は、実施例1と同じ方法で繊維成型体を得た。繊維成型体の評価結果を表2に示す。なお、得られた母材繊維の広角X線散乱を測定したところ、面指数(100)と(010)の円周方向にスキャンして得られる強度分布ピークの角度差は認められなかった。また、得られた母材繊維の小角X線散乱を測定したところ、層線状散乱を示していた。
(比較例4)
実施例1と同じ未延伸糸を用いて、同様に合糸を行い、第1ローラーと第2ローラーの間に設置された、浴長1m、浴温93℃の熱水中で3.0倍に延伸後、180℃の熱ドラムに4周巻き付け、次いで仕上げ油剤を付与し、クリンパーにて捲縮を付与し母材繊維を得たこと以外は、実施例1と同じ方法で繊維成型体を得た。繊維成型体の評価結果を表2に示す。なお、得られた母材繊維の広角X線散乱を測定したところ、面指数(100)と(010)の円周方向にスキャンして得られる強度分布ピークの角度差は認められなかった。また、得られた母材繊維の小角X線散乱を測定したところ、層線状4点散乱を示していた。
(比較例5)
比較例4において、熱処理糸の熱処理時間を30分間としたこと以外は、比較例4と同じ方法で繊維成型体を得た。繊維成型体の評価結果を表2に示す。なお、得られた母材繊維の広角X線散乱を測定したところ、面指数(100)と(010)の円周方向にスキャンして得られる強度分布ピークの角度差は認められなかった。また、得られた母材繊維の小角X線散乱を測定したところ、層線状4点散乱を示していた。
Figure 2023092474000001
Figure 2023092474000002
本発明の繊維成型体は、通気性と柔軟性、70℃耐ヘタリ性、ケミカルリサイクルの観点でもリサイクル性に優れ、クッション材として好適に用いることができる。
1:母材繊維
2:熱接着繊維
3:固着点

Claims (6)

  1. 25%圧縮時の硬さが200g/cm以下であり、70℃耐ヘタリ性が60%以上であり、ポリエチレンテレフタレートおよび/または共重合ポリエチレンテレフタレートを主体とする母材繊維と、共重合ポリエチレンテレフタレートを主体とする熱接着繊維とを主たる構成成分とし、母材繊維と熱接着繊維が交叉した状態で熱融着により形成された固着点と、熱接着繊維同士が交叉した状態で熱融着により形成された固着点を有し、3次元繊維網目構造を有する、繊維成型体。
  2. 前記熱接着繊維のガラス転移温度が80℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載の繊維成型体。
  3. 前記熱接着繊維が芯鞘複合繊維かつ、ガラス転移温度が80℃以上であり、繊維表面に露出する鞘成分が共重合ポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする、請求項1に記載の繊維成型体。
  4. 前記母材繊維のガラス転移温度が90℃以上であり、ヤング率が2000N/mm以下であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の繊維成型体。
  5. 前記母材繊維のガラス転移温度が90℃以上であり、ヤング率が2000N/mm以下であり、面指数(100)と(010)の円周方向にスキャンして得られる強度分布ピークの角度差が10度以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の繊維成型体。
  6. 請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維成型体を用いることを特徴とする、クッション材。
JP2022195437A 2021-12-21 2022-12-07 ポリエステル繊維成型体 Pending JP2023092474A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021206875 2021-12-21
JP2021206875 2021-12-21

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023092474A true JP2023092474A (ja) 2023-07-03

Family

ID=86995631

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022195437A Pending JP2023092474A (ja) 2021-12-21 2022-12-07 ポリエステル繊維成型体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023092474A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5726876B2 (ja) 非晶性熱融着性繊維、繊維構造体および耐熱性成形体
JP5355225B2 (ja) ポリ乳酸系長繊維不織布およびその製造方法
JP2013011051A (ja) ポリ乳酸系複合繊維及びこれを用いた不織布とクッション材、並びにその製造方法
KR20100128368A (ko) 열융착 고탄성 복합섬유 및 그 제조방법
KR101437782B1 (ko) 고탄력성 폴리에스터 직물 및 그 제조방법
JP2023092474A (ja) ポリエステル繊維成型体
JP4312066B2 (ja) 耐熱性ポリ乳酸系長繊維不織布
EP2261410B1 (en) Polylactic acid filament nonwoven fabric and production method thereof
JP4487973B2 (ja) ポリエステル樹脂組成物
JP2013076201A (ja) 振動吸収性の高い弾性網状構造体
JP7218499B2 (ja) 網状構造体の製造方法
JP3092679B2 (ja) クッション材
JP3879289B2 (ja) クッション材用ポリエステル短繊維の製造方法およびクッション材の製造方法
JP2013139654A (ja) 冷感に優れた混繊糸
JP5273995B2 (ja) ポリプロピレン繊維を含む複合材料および成形体
JP2000345457A (ja) ファイバーボールの製造方法
JP6537431B2 (ja) 芯鞘複合バインダー繊維
JPH1037056A (ja) 熱成形用不織布
JP4628808B2 (ja) 低収縮性熱接着性繊維
JP4269387B2 (ja) 熱接着繊維およびクッション材
JPH04178425A (ja) 低融点結晶性ポリエステル及びその製造方法、並びにポリエステル系熱接着性繊維
JP2000096417A (ja) 成形用長繊維不織布、その製造方法、同不織布を用いてなる容器形状品
JP2001207360A (ja) 玉状綿及び繊維構造体
JPH1181118A (ja) 繊維成型体およびその製造方法
JP2004270044A (ja) 熱接着性繊維