JP7218499B2 - 網状構造体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、オフィスチェア、家具、ソファー、ベッド等寝具、電車・自動車・二輪車・ベビーカー・チャイルドシート・車椅子等の車両用座席、フロアーマットや衝突や挟まれ防止部材等の衝撃吸収用のマット等に用いられるクッション材に好適な網状構造体に関するものである。
現在、家具、ベッド等寝具、電車・自動車・二輪車等の車両用座席に用いられるクッション材として、発泡-架橋型ウレタンが広く使われている。
発泡-架橋型ウレタンはクッション材としての耐久性は良好だが、透湿透水性や通気性に劣り、蓄熱性があるため蒸れやすいという問題点がある。さらに、熱可塑性で無いためリサイクルが困難であり、そのため焼却処分される場合は焼却炉の損傷が大きくなったり、有毒ガス除去に経費が掛かかったりするなどの問題点が指摘されている。そこで埋め立て処分されることが多いが、地盤の安定化が困難なため埋め立て場所が限定され、経費も高くなる問題点もある。また、加工性は優れるが製造中に使用される薬品の公害問題やフォーム後の残留薬品やそれに伴う臭気など種々の問題が指摘されている。
特許文献1および2には、網状構造体が開示されている。これは、上述した発泡-架橋型ウレタンに由来する諸問題を解決でき、クッション性能にも優れているものである。しかし、ポリエステル系の網状構造体は高温加熱時または再溶融時に材料が脆化しやすいため、熱成形加工性やリサイクル性に課題があった。
特開平7-68061号公報 特開2004-244740号公報
本発明は、上記の従来技術の課題を背景になされたもので、耐加水分解性に優れた網状構造体を提供することを課題とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに到った。すなわち、本発明は以下の通りである。
1.ポリエステル系熱可塑性エラストマーからなる繊維径が0.1mm以上3.0mm以下の連続線状体で構成された三次元ランダムループ接合構造を有する網状構造体であって、見かけ密度が0.005g/cm3以上0.20g/cm3以下であり、酸価が32meq/kg以下である網状構造体。
2.酸価が28meq/kg以下である上記1に記載の網状構造体。
3.ポリエステル系熱可塑性エラストマーが、ポリエステルエーテルブロック共重合体またはポリエステルエステルブロック共重合体である上記1または2に記載の網状構造体。4.網状構造体を構成するポリエステル系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量が5万以上18万以下である上記1または2に記載の網状構造体。
5.網状構造体を構成するポリエステル系熱可塑性エラストマーの加熱溶融後の還元粘度保持率が95%以上である上記1または2に記載の網状構造体。
6.下記(1)で示されるQ/Nが、3以上200以下であり、下記(2)で示されるV/Qが、1以上30以下である上記1または2に記載の網状構造体の製造方法。
(1)吐出あたりのせん断量(Q/N、単位 cm3/rev)
Q:樹脂が、ノズルから出される1分間あたりの吐出量(cm3/min)
N:Qを出すためのスクリュー回転数(rev/min)
(2)配管内通過時間(V/Q、単位 min)
V:エクストルーダーにより溶融、押し出された樹脂がエクストルーダーを出た後、配管を経由しノズルから吐出されるまでの全容積(cm3
Q:樹脂が、ノズルから出される1分間あたりの吐出量(cm3/min)
本発明による網状構造体は、耐加水分解性に優れており、高温加熱や再溶融した場合も材料の分子量低下が少なく、熱成形加工性やリサイクル性に優れた網状構造体を提供できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーからなる繊維径が0.1mm以上3.0mm以下の連続線状体を曲がりくねらせランダムループを形成し、夫々のループを互いに溶融状態で接触せしめた三次元ランダムループ接合構造を有する網状構造体であって、見かけ密度が0.005g/cm以上0.20g/cm以下であり、酸価が32meq/kg以下である網状構造体およびその製造方法に関するものである。
本発明におけるポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリアルキレンジオールをソフトセグメントとするポリエステルエーテルブロック共重合体、または、脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするポリエステルエステルブロック共重合体が例示できる。
ポリエステルエーテルブロック共重合体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸または、これらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種と、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール、またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジオール成分の少なくとも1種、および数平均分子量が約300以上5000以下のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシド-プロピレンオキシド共重合体からなるグリコール等のポリアルキレンジオールのうち少なくとも1種から構成される三元ブロック共重合体である。
ポリエステルエステルブロック共重合体としては、上記ジカルボン酸とジオール及び数平均分子量が約300以上5000以下のポリラクトン等のポリエステルジオールのうち少なくとも各1種から構成される三元ブロック共重合体である。熱接着性、耐加水分解性、伸縮性、耐熱性等を考慮すると、ジカルボン酸としてはテレフタル酸、または、及びナフタレン2,6-ジカルボン酸、ジオール成分としては1,4-ブタンジオール、ポリアルキレンジオールとしてはポリテトラメチレングリコールの3元ブロック共重合体または、ポリエステルジオールとしてポリラクトンの3元ブロック共重合体が特に好ましい。特殊な例では、ポリシロキサン系のソフトセグメントを導入したものも使うことができる。
上記ポリエステル系熱可塑性エラストマーに非エラストマー成分をブレンドしたもの、共重合したもの、ポリオレフィン系成分をソフトセグメントにしたもの等も本発明のポリエステル系熱可塑性エラストマーに包含される。さらに、ポリエステル系熱可塑性エラストマーに各種添加剤等を必要に応じ添加したものも包含される。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーのソフトセグメント含有量としては、網状構造体の繰返し圧縮耐久性を高く維持する観点からは、好ましくは15重量%以上、より好ましくは25重量%以上であり、さらに好ましくは30重量%以上であり、特に好ましくは40重量%以上であり、一方、硬度確保と耐熱耐へたり性の観点からは、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。
本発明の網状構造体を構成するポリエステル系熱可塑性エラストマーからなる成分は、示差走査型熱量計にて測定した融解曲線において、融点以下に吸熱ピークを有することが好ましい。融点以下に吸熱ピークを有するものは、耐熱耐へたり性が吸熱ピークを有しないものより著しく向上する。例えば、本発明の好ましいポリエステル系熱可塑性エラストマーとして、ハードセグメントの酸成分に剛直性のあるテレフタル酸やナフタレン2,6-ジカルボン酸などを90モル%以上含有するもの、より好ましくはテレフタル酸やナフタレン2,6-ジカルボン酸の含有量は95モル%以上、特に好ましくは100モル%とグリコール成分をエステル交換後、必要な重合度まで重合し、次いで、ポリアルキレンジオールとして、好ましくは平均分子量が500以上5000以下、より好ましくは700以上3000以下、さらに好ましくは800以上1800以下のポリテトラメチレングリコールを15重量%以上80重量%以下、より好ましくは25重量%以上70重量%以下、さらに好ましくは30重量%以上70重量%以下、特に好ましくは40重量%以上70重量%以下を共重合量させた場合、ハードセグメントの酸成分に剛直性のあるテレフタル酸やナフタレン2,6-ジカルボン酸の含有量が多いとハードセグメントの結晶性が向上し、塑性変形しにくく、かつ、耐熱耐へたり性が向上するが、溶融熱接着後さらに融点より少なくとも10℃以上低い温度でアニーリング処理するとより耐熱耐へたり性が向上する。アニーリング処理は、融点より少なくとも10℃以上低い温度でサンプルを熱処理することができれば良いが、圧縮歪みを付与することでさらに耐熱耐へたり性が向上する。このような処理をしたクッション層を示差走査型熱量計で測定した融解曲線に室温以上融点以下の温度で吸熱ピークをより明確に発現する。なおアニーリングしない場合は融解曲線に室温以上融点以下に吸熱ピークを明確に発現しない。このことから類推すると、アニーリングによってハードセグメントが再配列された準安定中間相を形成し、耐熱耐へたり性が向上しているのではないかと考えられる。本発明における耐熱性向上効果の活用方法としては、ヒーターが用いられる車両用のクッションや床暖房された床の敷きマット等、比較的高温になり得る用途において、耐へたり性が良好となるため有用である。
本発明の網状構造体を構成するポリエステル系熱可塑性エラストマーの酸価は、32meq/kg以下であり、好ましくは28meq/kg以下であり、より好ましくは26meq/kg以下であり、さらに好ましくは24meq/kg以下であり、最も好ましくは22meq/kg以下である。酸価が大きいと、網状構造体が高温環境下に暴露された場合に、ポリマー末端の酸部位が酸触媒となってポリマーの加水分解を促進し、分子量が大幅に低下する。従前の網状構造体を構成するポリエステル系熱可塑性エラストマーの酸価は32meq/kgよりも大きく、高温環境下に暴露された場合、分子量が大幅に低下するため、溶融させる程度にまで高温に加熱して熱加工する用途や再溶融してリサイクルする用途への適用が困難であった。しかし、本発明の網状構造体を構成するポリエステル系熱可塑性エラストマーでは酸価を32meq/kg以下にすることで高温環境下に暴露された場合でも、分子量の低下が少なくなり、溶融させる程度にまで加熱して熱加工する用途や再溶融してリサイクルする用途に充分に適用できるようになった。なお、酸価の下限値は特に規定しないが、本発明に使用するポリエステル系熱可塑性エラストマーにおいては0.5meq/kg以上である。
本発明の網状構造体を構成するポリエステル系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、5万以上18万以下が好ましく、6万以上17万以下がより好ましく、7万以上16万以下がさらに好ましく、8万以上15万以下が最も好ましい。重量平均分子量が5万未満では、網状構造体が脆くなり、クッション性を損ねる可能性がある。また、18万を超えると溶融粘度が高くなり過ぎてしまい、可紡性が悪化し品位の良好な網状構造体を得ることが難しくなる場合がある。
本発明の網状構造体を構成するポリエステル系熱可塑性エラストマーの分子量分布は、8以下が好ましい。分子量分布が8を超えると、可紡性が悪化し品位の良好な網状構造体を得ることが難しくなる場合がある。分子量分布は7以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。なお、分子量分布の下限値は特に規定しないが、2以上が好ましく、3以上がより好ましい。
本発明の網状構造体は特開平7-68061号公報等に記載された公知の方法に基づき得られる。例えば、複数のオリフィスを持つ多列ノズルよりポリエステル系熱可塑性エラストマーをノズルオリフィスに分配し、該ポリエステル系熱可塑性エラストマーの融点より20℃以上120℃未満高い紡糸温度で、該ノズルより下方に向け吐出させ、溶融状態で互いに連続線状体を接触させて融着させ3次元構造を形成しつつ、引取りコンベアネットで挟み込み、冷却槽中の冷却水で冷却せしめた後、引出し、水切り後または乾燥して、両面または片面が平滑化した網状構造体を得る。片面のみを平滑化させる場合は、傾斜を持つ引取ネット上に吐出させて、溶融状態で互いに接触させて融着させ3次元構造を形成しつつ引取ネット面のみ形態を緩和させつつ冷却すると良い。得られた網状構造体をアニーリング処理することもできる。なお、網状構造体の乾燥処理をアニーリング処理としても良い。
本発明の網状構造体を得るためには、原料として用いるポリエステル系熱可塑性エラストマーの酸価が31meq/kg以下であることが好ましく、27meq/kg以下であることがより好ましく、25meq/kg以下であることがさらに好ましく、23meq/kg以下であることがよりさらに好ましく、21meq/kg以下であることが最も好ましい。酸価が31meq/kg以下のポリエステル系熱可塑性エラストマーは、公知の方法によって重合され、重合時の劣化が起こりにくいようにモノマーを仕込む時に酸化防止剤を添加する方法や、重合完了後の熱履歴を極力低くする方法を用いることによって得ることができる。
また、本発明の網状構造体を得るためには、原料として用いるポリエステル系熱可塑性エラストマーに酸化防止剤を添加することが好ましく、酸化防止剤の添加量としてはベースポリマーであるポリエステル系熱可塑性エラストマーに対して0.05重量部以上であることが好ましく、0.10重量部以上であることがより好ましく、0.15重量部以上であることがさらに好ましい。酸化防止剤としては、公知のフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、N-H型ヒンダードアミン系光安定剤、N-CH3型ヒンダードアミン系光安定剤の少なくとも1種類以上を添加することが望ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、1,3,5-トリス[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、Sumilizer
G 80、2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)メシチレンなどが挙げられる。
ホスファイト系酸化防止剤としては、3,9-ビス(オクタデシルオキシ)-2,4、8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサー3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)-6-[(2-エチルヘキシル)オキシ]-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、亜りん酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)、亜リン酸トリス(4-ノニルフェニル)、4,4’-Isopropylidenediphenol C12-15 alcohol phosphite、亜りん酸ジフェニル(2-エチルヘキシル)、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリイソデシル ホスファイト、亜りん酸トリフェニルなどが挙げられる。
チオエーテル系酸化防止剤としては、ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオン酸]2,2-ビス[[3-(ドデシルチオ)-1-オキソプロピルオキシ]メチル]-1,3-プロパンジイル、3,3’-チオビスプロピオン酸ジトリデシルなどが挙げられる。
また、本発明の網状構造体を得る手段としては、例えばポリエステル系熱可塑性エラストマー樹脂を溶融する際に、エクストルーダーを用いて加熱、せん断を与えるが、この際の吐出あたりのせん断量、Q/Nを所定の範囲にすることが好ましい。Q/Nは、Q:ノズルから出される1分間あたりの吐出量(cm3/min)を、N:スクリュー回転数(rev/min)で除して算出され、単位はcm3/revである。この数値が小さいと単位吐出量あたりにスクリューから受けるせん断が大きくなり、分子量低下に伴って酸価が大きくなる場合がある。Q/Nは3以上が好ましく、4以上がより好ましい。なお、Q/Nの上限値は特に規定しないが200以下が好ましく、180以下がさらに好ましい。
さらに、本発明の網状構造体を得る手段として、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの溶融後の「配管内通過時間」を短くする方法が挙げられる。「配管内通過時間」とは、エクストルーダーにより溶融された樹脂が、エクストルーダー出口から配管を通過してノズルから紡出されるまでの平均時間を指し、V/Qで算出される。ここでVは、エクストルーダー出口からノズル吐出孔までの全容積(cm3)を示し、Qはノズルから出される1分間あたりの吐出量(cm3/min)である(単位min)。「配管内通過時間」を短くすることで、溶融された樹脂が余分な熱を受ける時間が短くなり、劣化が起こりにくくなり、酸価を低く抑えることができる。「配管内通過時間」は、0.5min以上30min以内が好ましく、1min以上25min以内がより好ましい。「配管内通過時間」が0.5min未満となると溶融ポリマーの温度斑や溶融斑が発生する場合があり、30minを超えると劣化が起こり易くなる。
本発明の網状構造体を構成する連続線状体は、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂と組み合わせた複合線状としても良い。複合形態としては、線状体自身を複合化した場合として、シース・コア型、サイドバイサイド型、偏芯シース・コア型等の複合線状体が挙げられる。
本発明の網状構造体は、本発明の目的を損なわない範囲で、多層構造化しても良い。多層構造としては、表層と裏層を異なった繊度の線状体で構成することや、表層と裏層で異なった見掛け密度を持つ構造体で構成する等の構造体が挙げられる。多層化方法としては、網状構造体同士を積み重ねて側地等で固定する方法、加熱により溶融固着する方法、接着剤で接着させる方法、縫製やバンド等で拘束する方法等が挙げられる。
本発明の網状構造体を構成する連続線状体の断面形状は特に限定されないが、中空断面や異型断面、それらを組合わせた断面とすることで好ましい抗圧縮性やタッチを付与することができる。
本発明の網状構造体は、性能を低下させない範囲で樹脂製造過程から成形体に加工し、製品化する任意の段階で防臭抗菌、消臭、防黴、着色、芳香、難燃、吸放湿等の機能付与を薬剤添加等の処理加工ができる。
本発明の網状構造体は、性能を低下させない範囲で樹脂製造過程から成形体に加工し、製品化する任意の段階で滑剤を添加することができる。滑剤としては、炭化水素系ワックス、高級アルコール系ワックス、アミド系ワックス、エステル系ワックス、金属石鹸系等が選択される。滑剤は添加しなくても良く、添加する場合は0.5重量%以下であることが好ましい。
本発明の網状構造体は、あらゆる形状に成型したものを含む。例えば、板状、三角柱、多角体、円柱、球状やこれらを多数含む構造体も含まれる。これらの成型方法は、押し出し時に規制板を用いて成型しても良いし、カット、熱プレスなどの公知な方法で行うことが出来る。
成型加工されたものは、自動車用、鉄道用の座席、あるいは椅子、ベッド、ソファー、布団等のクッション、または枕等に用いることが出来る。
本発明の網状構造体を構成する連続線状体の繊維径は、繊維径が小さいとクッション材として使用する際に必要な硬度が保てなくなり、逆に繊維径が大きすぎると硬くなり過ぎてしまうため、適正な範囲に設定する必要がある。繊維径は0.1mm以上であり、0.2mm以上が好ましい。繊維径が0.1mm未満だと細すぎてしまい、緻密性やソフトな触感は良好となるが網状構造体として必要な硬度を確保することが困難である。また、繊維径は3.0mm以下であり、2.5mm以下が好ましい。繊維径が3.0mmを超えると網状構造体の硬度は十分に確保できるが、網状構造が粗くなり、他のクッション性能が劣る場合がある。
本発明の網状構造体の見かけ密度は、0.005g/cm3以上0.20g/cm3以下であり、0.01g/cm3以上0.18g/cm3以下が好ましく、0.02g/cm3以上0.15g/cm3以下がより好ましい。見かけ密度が0.005g/cm3より小さいとクッション材として使用する際に必要な硬度が保てなくなり、逆に0.20g/cm 3を越えると硬くなり過ぎてしまいクッション材に不適なものとなる場合がある。
本発明の網状構造体の厚みは、10mm以上が好ましく、20mm以上がより好ましい。厚みが10mm未満ではクッション材に使用すると薄すぎてしまい底付き感が出てしまう場合がある。厚みの上限は製造装置の関係から、300mm以下が好ましく、200mm以下がより好ましく、120mm以下がさらにに好ましい。
本発明の網状構造体は、網状構造体を加熱溶融した後の還元粘度保持率は95%以上であることが好ましく、96%以上であることがより好ましく、97%以上であることがさらに好ましい。還元粘度は単位濃度の高分子溶液における溶質高分子の粘度増加に対する貢献度を表す量であり、高分子溶液の粘性率をη、溶媒の粘性率をη、高分子溶液の溶質高分子の濃度をcとした場合、還元粘度ηsp/cは{(η-η)/η}/cの式で与えられ、高分子の分子量を相対的に比較するための尺度となるものである。
例えば、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが加水分解によって分子量低下した場合、加水分解後のポリエステル系熱可塑性エラストマーの還元粘度は加水分解前のポリエステル系熱可塑性エラストマーの還元粘度よりも小さくなる。網状構造体を加熱溶融した後の還元粘度保持率は、網状構造体を構成するポリエステル系熱可塑性エラストマーの還元粘度をA、所定の温度および時間で加熱溶融させた後の網状構造体を構成するポリエステル系熱可塑性エラストマーの還元粘度をBとした場合、B/A×100の式で表されるものであり、値が大きいほど加熱溶融後の分子量低下の程度が小さい、すなわち、耐加水分解性が高いという具合に、本発明の網状構造体の耐加水分解性を評価するための指標となるものである。網状構造体を加熱溶融した後の還元粘度保持率が95%より小さくなると、溶融する程度に高温で熱成型加工した場合や再溶融して新たな網状構造体を製造した場合に網状構造体のクッション性が損なわれる可能性があるので好ましくない。
かくして得られた本発明の網状構造体は、耐加水分解性に優れ、高温加熱処理した場合や再溶融した場合の分子量低下が少なく、熱成形加工性やリサイクル性に優れたものとなる。
以下に、実施例を例示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。実施例中における特性値の測定及び評価は下記のように行った。なお、試料の大きさは以下に記載の大きさを標準とするが、試料が不足する場合は可能な大きさの試料サイズを用いて測定を行った。
(1)ポリエステル系熱可塑性エラストマーの還元粘度
試料から0.020gをサンプリングし、フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン=6/4(重量比)混合溶媒10mlに70℃の温度で溶解させ、30℃の温度で粘度管測定を行うことでポリエステル系熱可塑性エラストマーの還元粘度(単位はdl/g)を測定した。なお、評価はN=2の平均で行った。
(2)網状構造体の還元粘度および加熱溶融後の還元粘度保持率
網状構造体から0.020gをサンプリングし、フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン=6/4(重量比)混合溶媒10mlに70℃の温度で溶解させ、30℃の温度で粘度管測定を行うことで網状構造体の還元粘度(A:単位はdl/g)を測定した(N=2の平均)。
次に、試料を、空気雰囲気下、融点+30℃の温度で20分間加熱溶融し、6時間空冷することで得た加熱溶融品の還元粘度(B:単位はdl/g)を上記と同様の方法で測定し(N=2の平均)、以下の式を用いて加熱溶融後の還元粘度保持率を算出した。

加熱用融合後の還元粘度保持率(%)=B/A×100
(3)繊維径
網状構造体を20cm×20cm×網状構造体の厚さの大きさに切断し、得られた網状構造体からそれぞれ10箇所の線状体を約5mmの長さで採集する。採集した線状体の繊維径は、光学顕微鏡を適当な倍率で繊維径測定箇所にピントを合わせて測定する。(n=10の平均値)
(4)試料厚みおよび見かけ密度
網状構造体を20cm×20cm×網状構造体の厚さの大きさに切断し、無荷重で24時間放置した後、高分子計器製FD-80N型測厚器にて4か所の高さを測定して平均値を試料厚みとする。試料重さは、上記試料を電子天秤に載せて計測する。また見掛け密度は、試料厚みから体積を求め、試料の重さを体積で除した値で示す。(それぞれn=4の平均値)
(5)融点(Tm)
TAインスツルメント社製 示差走査熱量計Q200を使用し、昇温速度20℃/分で測定した吸発熱曲線から吸熱ピーク(融解ピーク)温度を求めた。
(6)酸価
樹脂の酸価の定量は共鳴周波数500MHzの1H-NMR測定(プロトン型核磁気共鳴分光測定)にて行った。測定装置はBRUKER社製NMR装置AVANCE-500を用い、測定液の調製方法は以下の通りに行った。
網状構造体または網状構造体の原料であるポリエステル系熱可塑性エラストマー10~20mgを重クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール=1/1(体積比)0.12mlに溶解後、重クロロホルム0.48mlを加え、よく撹拌した後、その溶液をNMRチューブに充填しH-NMR測定を行った。(測定i)。
測定i終了後の溶液に、トリエチルアミンの濃度が0.2mol/Lとなるよう調製した重クロロホルム溶液を25μL加え、再度、1H-NMR測定を行った(測定ii)。ロック溶媒はいずれも重クロロホルムを用い、積算回数は128回とした。
酸価定量は以下の通り実施した。クロロホルムのピークを7.27ppmとした時、測定i、iiの8ppmのピークがテレフタル酸(A)、2ppmのピークが1,4-ブタンジオール(B)、3.5ppmのピークがポリテトラメチレングリコール(C)のピークであり、測定iの7.87~7.96ppmのピークがテレフタル酸のサテライトピーク(D)、測定iiの7.87~7.96ppmのピークがテレフタル酸末端およびテレフタル酸のサテライトピーク(E)として算出した。括弧内のA~Eを各ピークの積分値とし、酸価を下記式より求めた。
A/4×132 + B/4×88 + C/4×72 = (a)
酸価(eq/ton)=(E-D)/2×1000000/(a)
:単位meq/kg(n=2の平均値)。
[ポリエステル系熱可塑性エラストマー]
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとして、ジメチルテレフタレ-ト(DMT)と1,4-ブタンジオ-ル(1,4-BD)を少量の触媒と仕込み、常法によりエステル交換後、ポリテトラメチレングリコ-ル(PTMG)を添加して昇温減圧しつつ重縮合せしめポリエ-テルエステルブロック共重合エラストマ-を生成させ、A-1,2,4に関しては従来より重合後の熱履歴を低くする方法を用い(A-3に関しては従来どおり)、次いで酸化防止剤1%を添加混合練込み後ペレット化し、50℃48時間真空乾燥して得られた熱可塑性エラストマー原料の処方を表1に示す。
Figure 0007218499000001
[実施例1]
幅方向の幅1120mm、厚み方向の幅64mmのノズル有効面にオリフィスの形状は外径5.0mm、内径4.4mmでトリプルブリッジの中空形成性断面としたオリフィスを孔間ピッチ8mmの千鳥配列としたノズルに、得られたポリエステル系熱可塑性エラストマーA-1を溶融温度245℃にて、単孔吐出量3.2g/minの速度でノズル下方に吐出させ、スクリュー回転数は70rpm、Q/Nは48.7cm3/rev、配管内通過時間は1min、ノズル面30cm下に冷却水を配し、幅150cmのステンレス製エンドレスネットを平行に開口幅50mm間隔で一対の引取りコンベアを水面上に一部出るように配して、その水面上のコンベアネット上に、該溶融状態の吐出線状を曲がりくねらせル-プを形成して接触部分を融着させつつ3次元網状構造を形成し、該溶融状態の網状構造体の両面を引取りコンベアで挟み込みつつ2.5m/minの速度で冷却水中へ引込み、固化させることで厚み方向の両面をフラット化した後、所定の大きさに切断して110℃熱風にて15分間乾燥熱処理して、網状構造体を得た。得られた熱可塑性エラストマーからなる網状構造体の特性を表2に示す。得られた網状構造体は、断面形状が三角おむすび型の中空断面で中空率が36%、繊維径が1.0mmの線状体で形成しており、見かけ密度が0.030g/cm、表面が平坦化された厚みが49mm、酸価が27meq/kgであり、網状構造体を加熱溶融した後の還元粘度保持率は97%と高い値を維持していた。
[実施例2]
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしてA-2を用い、紡糸温度を240℃、ノズル面-冷却水間の距離を33cm、引き取り速度を2.0m/minにした以外、実施例1と同様にし、網状構造体を得た。得られた熱可塑性エラストマーからなる網状構造体の特性を表2に示す。得られた網状構造体は、断面形状が三角おむすび型の中空断面で中空率が38%、繊維径が0.8mmの線状体を形成しており、見かけ密度が0.037g/cm、表面が平坦化された厚みが48mm、酸価が24meq/kgであり、網状構造体を加熱溶融した後の還元粘度保持率は98%と高い値を維持していた。
[実施例3]
幅方向の幅600mm、厚み方向の幅60mmのノズル有効面にオリフィスの形状は外径1.0mmの円断面としたオリフィスを孔間ピッチ5mmの千鳥配列としたノズルを用い、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしてA-2を用い、紡糸温度を240℃、単孔吐量を1.3g/min、Q/Nを25.0cm3/rev、配管内通過時間を21min、ノズル面-冷却水距離を26cm、引き取り速度を1.4m/minにした以外、実施例1と同様にし、網状構造体を得た。得られた熱可塑性エラストマーからなる網状構造体の特性を表2に示す。得られた網状構造体は、円断面で繊維径が0.5mmの線状体を形成しており、見かけ密度が0.050g/cm、表面が平坦化された厚みが50mm、酸価が25meq/kgであり、網状構造体を加熱溶融した後の還元粘度保持率は98%と高い値を維持していた。
[実施例4]
幅方向の幅300mm、厚み方向の幅40mmのノズル有効面にオリフィスの形状は外径1.0mmの円断面としたオリフィスを孔間ピッチ5mmの千鳥配列としたノズルを用い、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしてA-4を用い、紡糸温度を220℃、単孔吐量を1.6g/min、スクリュー回転数は80rpm、Q/Nを9.7cm3/rev、配管内通過時間を16min、ノズル面-冷却水距離を27cm、引き取り速度を1.8m/min、ステンレス製エンドレスネットの開口幅30mm間隔にした以外、実施例1と同様にし、網状構造体を得た。得られた熱可塑性エラストマーからなる網状構造体の特性を表2に示す。得られた網状構造体は、円断面で繊維径が0.6mmの線状体を形成しており、見かけ密度が0.055g/cm、表面が平坦化された厚みが30mm、酸価が18meq/kgであり、網状構造体を加熱溶融した後の還元粘度保持率は99%と高い値を維持していた。
[比較例1]
幅方向の幅300mm、厚み方向の幅20mmのノズル有効面にオリフィスの形状は外径1.0mmの円断面としたオリフィスを孔間ピッチ5mmの千鳥配列としたノズルを用い、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしてA-2を用い、紡糸温度を240℃、単孔吐量を0.8g/min、スクリュー回転数は90rpm、Q/Nを2.3cm3/rev、配管内通過時間を35min、ノズル面-冷却水距離を24cm、引き取り速度を1.5m/minにした以外、実施例1と同様にし、網状構造体を得た。得られた熱可塑性エラストマーからなる網状構造体の特性を表2に示す。得られた網状構造体は、円断面で繊維径が0.4mmの線状体を形成しており、見かけ密度が0.065g/cm、表面が平坦化された厚みが15mm、酸価が34meq/kgであり、網状構造体を加熱溶融した後の還元粘度保持率は92%にまで低下した。
[比較例2]
幅方向の幅300mm、厚み方向の幅20mmのノズル有効面にオリフィスの形状は外径1.0mmの円断面としたオリフィスを孔間ピッチ5mmの千鳥配列としたノズルを用い、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしてA-3を用い、紡糸温度を240℃、単孔吐量を0.8g/min、スクリュー回転数は90rpm、Q/Nを2.3cm3/rev、配管内通過時間を35min、ノズル面-冷却水距離を23cm、引き取り速度を1.0m/minにした以外、実施例1と同様にし、網状構造体を得た。得られた熱可塑性エラストマーからなる網状構造体の特性を表2に示す。得られた網状構造体は、円断面で繊維径が0.4mmの線状体を形成しており、見かけ密度が0.063g/cm、表面が平坦化された厚みが13mm、酸価が52meq/kgであり、網状構造体を加熱溶融した後の還元粘度保持率は87%にまで低下した。
[比較例3]
幅方向の幅600mm、厚み方向の幅60mmのノズル有効面にオリフィスの形状は外径1.0mmの円断面としたオリフィスを孔間ピッチ5mmの千鳥配列としたノズルを用い、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしてA-3を用い、紡糸温度を240℃、単孔吐量を1.3g/min、Q/Nを25.0cm3/rev、配管内通過時間を21min、ノズル面-冷却水距離を25cm、引き取り速度を1.4m/minにした以外、実施例1と同様にし、網状構造体を得た。得られた熱可塑性エラストマーからなる網状構造体の特性を表2に示す。得られた網状構造体は、円断面で繊維径が0.5mmの線状体を形成しており、見かけ密度が0.050g/cm、表面が平坦化された厚みが50mm、酸価が45meq/kgであり、網状構造体を加熱溶融した後の還元粘度保持率は89%にまで低下した。
Figure 0007218499000002
本発明の網状構造体は、網状構造体が従来から有する快適な座り心地や通気性を損なわずに、従来品の課題であった高温加熱や再溶融した場合の材料の分子量低下を改良したものであり、熱成形加工性やリサイクル性が良好な、オフィスチェア、家具、ソファー、ベッド等寝具、電車・自動車・二輪車・ベビーカー・チャイルドシート等の車両用座席、フロアーマットや衝突や挟まれ防止部材等の衝撃吸収用のマット等に用いられるクッション材に好適な網状構造体を提供できるため、産業界に寄与すること大である。

Claims (1)

  1. ポリエステル系熱可塑性エラストマーからなる繊維径が0.1mm以上3.0mm以下の連続線状体で構成された三次元ランダムループ接合構造を有する網状構造体の製造方法であって、
    下記(1)で示されるQ/Nが、3以上200以下であり、下記(2)で示されるV/Qが、1以上30以下であり、見かけ密度が0.005g/cm以上0.20g/cm以下であり、酸価が32meq/kg以下である網状構造体の製造方法。
    (1)吐出あたりのせん断量(Q/N、単位:cm/rev)
    Q:樹脂が、ノズルから出される1分間あたりの吐出量(cm/min)
    N:Qを出すためのスクリュー回転数(rev/min)
    (2)配管内通過時間(V/Q、単位:min)
    V:エクストルーダーにより溶融、押し出された樹脂がエクストルーダーを出た後、配管を経由しノズルから吐出されるまでの全容積(cm
    Q:樹脂が、ノズルから出される1分間あたりの吐出量(cm/min)
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