JP7289931B2 - ポリエチレン原糸、その製造方法、およびこれを含む冷感性生地 - Google Patents

ポリエチレン原糸、その製造方法、およびこれを含む冷感性生地 Download PDF

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Description

本発明は、ポリエチレン原糸、その製造方法、およびこれを含む冷感性生地に関するものである。具体的に、本発明は、涼しさ(cooling feeling)または冷感(cooling sensation)だけでなく、柔らかな触感(soft tactile sensation)を使用者に提供することができ、優れたピリング抵抗性(pilling resistance)、耐摩耗性(abrasion resistance)、裁断性(cuttability)および縫製性(sewability)を有する冷感性生地の製造を可能にする、向上した製織性(weavability)を有するポリエチレン原糸、その製造方法およびこれを含む冷感性生地に関するものである。
地球温暖化の進行につれて、蒸暑さの克服に利用できる生地の必要性が増大している。蒸暑さの克服に利用できる生地を開発することにおいて考慮できる要素としては、(i)蒸暑さの要因の除去、および(ii)使用者の皮膚からの熱の除去などがある。
蒸暑さの要因の除去に焦点を合わせた方法として、繊維表面に無機化合物を付与することによって光を反射させる方法(例えば、JP4227837B参照)、無機微粒子を繊維の内部および表面に分散することによって光を散乱させる方法(例えば、JP2004-292982A参照)などが提案されたことがある。しかし、このような外部要因の遮断は、追加的な蒸暑さを防止することができるのに過ぎず、すでに暑さを感じる使用者に対しては有意味な解決策になれないだけでなく、生地の触感が低下するという限界がある。
一方、使用者の皮膚から熱を除去することができる方法として、汗の蒸発熱を用いるために生地の吸湿性を向上させる方法(例えば、JP2002-266206A参照)、皮膚から生地への熱伝達を増加させるために、皮膚と生地との接触の面積を増加させる方法(例えば、JP2009-24272A参照)などが提案されたことがある。
しかし、汗の蒸発熱を用いる方法の場合、生地の機能は湿度、使用者の体質などの外部因子に大きく依存するため、その一貫性が保障されないという問題があり、皮膚と生地との接触の面積を増加させる方法の場合、前記接触面積が増加するほど生地の通気性が低下するため、所望されるだけの冷却効果(cooling effect)を得ることができない。
したがって、生地自体の熱伝導度を向上させることによって、皮膚から生地への熱伝達を増加させるのが好ましいことがある。このために、JP2010-236130Aは高い熱伝導度を有する超高強力ポリエチレン繊維(Dyneema(登録商標)SK60)を用いて生地を製造することを提案している。
しかし、JP2010-236130Aで使用されたDyneema(登録商標)SK60繊維は、600,000g/mol以上の重量平均分子量を有する超高分子量ポリエチレン(Ultra High Molecular Weight Polyethylene:UHMWPE)繊維であって、高い熱伝導度を示すといえども、UHMWPEの高い溶融粘度(melt viscosity)のために、ゲル紡糸方式によってのみ製造できるので、環境問題が誘発され有機溶媒の回収に莫大な費用がかかるという問題がある。そして、Dyneema(登録商標)SK60繊維は、28g/d以上の高い強度、759g/d以上の高い引張モジュラス、および3~4%の低い破断伸度を有し、その強伸度曲線にて、1g/dの強度での伸度が0.5%未満であるため、その製織性が良くなく、その剛軟度(stiffness)が過度に高くて使用者皮膚との接触を前提とする冷感性生地の製造に使用されるには不適である。さらに、Dyneema(登録商標)SK60繊維は120J/mを超過する高い強靭性(toughness)を有するため、これを用いて製造された生地の裁断性および縫製性が低下するという問題がある。
したがって、本発明は、前述のような関連技術の制限および短所に起因した問題点を防止することができるポリエチレン原糸、その製造方法、およびこれを含む冷感性生地に関するものである。
本発明の一観点は、涼しさ、または冷感だけでなく、柔らかな触感を使用者に提供することができ、優れたピリング抵抗性、耐摩耗性、裁断性および縫製性を有する生地の製造を可能にする、向上した製織性を有するポリエチレン原糸を提供することである。
本発明の他の観点は、涼しさまたは冷感だけでなく柔らかな触感を使用者に提供することができ、優れたピリング抵抗性、耐摩耗性、裁断性および縫製性を有する生地の製造を可能にする向上した製織性を有するポリエチレン原糸を製造する方法を提供することである。
本発明のまた他の観点は、涼しさまたは冷感だけでなく柔らかな触感を使用者に提供することができ、優れたピリング抵抗性、耐摩耗性、裁断性および縫製性を有する生地を提供することである。
前記で言及された本発明の観点以外にも、本発明の他の特徴および利点について、以下で説明されるか、または、そのような説明から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解されるはずである。
前記のような本発明の一観点によって、
ポリエチレン原糸であって、常温で測定して得られた前記ポリエチレン原糸の強伸度曲線にて、(i)1g/dの強度での伸度が0.5~3%であり、(ii)3g/dの強度での伸度が5.5~10%であり、(iii)4g/dの強度での伸度と、最大強度での伸度との差が5.5~25%であり、前記ポリエチレン原糸は常温で55~120J/mの強靭性を有する、ポリエチレン原糸が提供される。
前記ポリエチレン原糸は、4g/d超過で6g/d以下の引張強度、15~80g/dの引張モジュラス、14~55%の破断伸度、および60~85%の結晶化度を有することができる。
前記ポリエチレン原糸は、50,000~99,000g/molの重量平均分子量(Mw)、および5~9の多分散指数(Polydispersity Index)(PDI)を有することができる。
前記ポリエチレン原糸は75~450デニール(denier)の総繊度を有することができ、前記ポリエチレン原糸は、1~5デニール(denier)の繊度をそれぞれ有する複数のフィラメントを含むことができる。
前記ポリエチレン原糸は円形断面を有することができる。
本発明の他の観点によって、
前記ポリエチレン原糸から形成された冷感性生地であって、20℃にて、前記冷感性生地は、0.0001W/cm・℃以上の厚さ方向熱伝導度、0.001W/cm・℃以上の厚さ方向熱伝達係数、および0.1W/cm以上の接触冷感(Qmax)を有する、冷感性生地が提供される。
ASTM D 4970-07によって測定される前記冷感性生地のピリング抵抗性は4等級以上であり、KS K ISO 12947-2:2014に規定されたマーチンデール法(Martindale method)によって測定される前記冷感性生地の耐摩耗性は5000サイクル(cycles)以上であり得る。
前記冷感性生地の面密度は75~800g/mであり得る。
本発明のまた他の観点によって、
0.941~0.965g/cmの密度、50,000~99,000g/molの重量平均分子量(Mw)、5.5~9の多分散指数(PDI)、および6~21g/10minの溶融指数(Melt Index:MI)(190℃で)を有するポリエチレンを溶融させる段階;
複数のホールを有する口金を通じて、前記溶融されたポリエチレンを押し出す段階;
前記溶融されたポリエチレンが前記口金のホールから吐出される際に形成される複数のフィラメントを冷却させる段階;および
前記冷却されたフィラメントからなるマルチフィラメントを延伸する段階を含む、ポリエチレン原糸の製造方法が提供される。
前記延伸段階は2.5~8.5の延伸比で行うことができる。
前記のような本発明に関する一般的叙述は、本発明を例示するか説明するためのものに過ぎず、本発明の権利範囲を制限しない。
本発明の冷感性生地用ポリエチレン原糸は、高い熱伝導度、適切な範囲に調整された強靭性、および優れた製織性を有し、環境問題を誘発せずとも比較的に低廉な費用で容易に製造できる。
また、本発明のポリエチレン原糸から製織された冷感性生地は、(i)湿度などといった外部因子と関係なく使用者に冷感を一貫して提供することができ、(ii)通気性の犠牲なく使用者に十分な冷感を持続的に提供することができ、(iii)使用者に柔らかな触感を提供することができ、(iv)高いピリング抵抗性および耐摩耗性を有することによって最終製品の耐久性を向上させることができ、(v)優れた裁断性および縫製性を有することによって最終製品の生産性を向上させることができる。
添付した図面は本発明の理解を助け本明細書の一部を構成するためのものであって、本発明の実施形態を例示し、発明の詳細な説明と共に本発明の原理を説明する。
本発明の一実施形態によるポリエチレン原糸製造装置を概略的に示す。 冷感性生地の接触冷感(Qmax)を測定する装置を概略的に示す。 冷感性生地の厚さ方向の熱伝導度および熱伝達係数を測定する装置を概略的に示す。
以下、添付された図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下で説明される実施形態は、本発明の明確な理解を助けるための例示的目的で提示されるものに過ぎず、本発明の権利範囲を制限しない。
使用者が十分な冷感を感じることができるようにするために、冷感性生地の製造に使用される原糸は高い熱伝導度を有する高分子原糸であるのが好ましい。
固体の場合、一般に、自由電子の移動と‘フォノン(phonon)’という格子振動(lattice vibration)を通じて熱が伝達される。金属の場合には、主に、自由電子の移動によって熱が固体内で伝達される。これに反し、高分子のような非金属物質の場合には、主にフォノン(phonon)を通じて熱が固体内で(特に、共有結合を通じて連結された分子鎖の方向に)伝達される。
使用者が十分な冷感を感じることができる程度に生地の熱伝導度を向上させるためには、高分子原糸の結晶化度を60%以上に増加させることによって、前記高分子原糸におけるフォノンを通じた熱伝達能力を強化させる必要がある。
本発明によれば、このように高い結晶化度を有する高分子原糸を製造するために、高密度ポリエチレン(HDPE)が使用される。0.910~0.925g/cmの密度を有する低密度ポリエチレン(LDPE)から製造された原糸、および、0.915~0.930g/cmの密度を有する線状低密度ポリエチレン(LLDPE)から製造された原糸に比べて、0.941~0.965g/cmの密度を有する高密度ポリエチレン(HDPE)から製造された原糸は、相対的に高い結晶化度を有するためである。
一方、高密度ポリエチレン(HDPE)原糸は、その重量平均分子量(Mw)によって、超高分子量ポリエチレン(Ultra High Molecular Weight Polyethylene:UHMWPE)原糸と、高分子量ポリエチレン(High Molecular Weight Polyethylene:HMWPE)原糸とに分類される。UHMWPEは、一般に600,000g/mol以上の重量平均分子量(Mw)を有する線状ポリエチレンを指して称するものであるのに対し、HMWPEは、一般に20,000~250,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する線状ポリエチレンを指称する。
前述のように、Dyneema(登録商標)といったUHMWPE原糸は、UHMWPEの高い溶融粘度のために、ゲル紡糸方式によってのみ製造されるので、環境問題が誘発され有機溶媒の回収に莫大な費用がかかるという問題がある。
HMWPEは、UHMWPEに比べて相対的に低い溶融粘度を有しているので溶融紡糸が可能であり、その結果、UHMWPE原糸に結びついている環境問題および高費用の問題点が克服できる。したがって、本発明の冷感性生地用ポリエチレン原糸は、HMWPEから形成される原糸である。
常温(ambient temperature)で測定して得られた本発明のポリエチレン原糸の強伸度曲線で、
(i)“1g/dの強度での伸度”は0.5~3%であり、
(ii)“3g/dの強度での伸度”は5.5~10%であり、
(iii)“4g/dの強度での伸度と、最大強度(即ち、引張強度)での伸度との差”は5.5~25%である。
また、本発明のポリエチレン原糸は常温で55~120J/mの強靭性を有する。
前記ポリエチレン原糸における前記“1g/dの強度での伸度”が過度に低ければ、その原糸から製織される生地が過度にこわばっていて(即ち、生地の剛軟度が過度に高くて)、使用者に悪い触感を引き起こす。したがって、前記ポリエチレン原糸における前記“1g/dの強度での伸度”は0.5%以上であるのが好ましい。
但し、前記ポリエチレン原糸における前記“1g/dの強度での伸度”が過度に高ければ、生地を製織する際に前記原糸が伸びるという現象が発生するようになり、このため、生地の密度を要求される密度に合わせにくい。したがって、前記ポリエチレン原糸における前記“1g/dの強度での伸度”は3%以下であるのが好ましい。
具体的に、前記ポリエチレン原糸における前記“1g/dの強度での伸度”は、0.5~3%、あるいは1.0~3.0%、あるいは1.0~2.0%、あるいは1.4~2.0%であり得る。
前記ポリエチレン原糸における前記“3g/dの強度での伸度”が過度に低ければ、所定の大きさの張力が加えられる生地製織工程で糸切れが引き起こされる危険が大きい。したがって、前記ポリエチレン原糸における前記“3g/dの強度での伸度”は5.5%以上であるのが好ましい。
但し、前記ポリエチレン原糸における前記“3g/dの強度での伸度”が過度に高ければ、生地を製織する時にクリンプ(crimp)が不充分に発現されて、低い引裂き強度および低い耐久性を有する生地が引き起こされる。したがって、前記ポリエチレン原糸における前記“3g/dの強度での伸度”は10%以下であるのが好ましい。
具体的に、前記ポリエチレン原糸における前記“3g/dの強度での伸度”は、5.5~10%、あるいは6.0~9.0%、あるいは6.0~8.5%であり得る。
前記強靭性は、強伸度曲線(x軸:伸度、y軸:強度)とx軸との間の面積(積分値)であって、前記“4g/dの強度での伸度と、最大強度での伸度との差”が、大きいほど大きくなる傾向を有する。
前記ポリエチレン原糸における前記“4g/dの強度での伸度と最大強度での伸度との差”が、過度に小さいか、または、前記ポリエチレン原糸の強靭性が過度に小さければ、その原糸から製織された生地のピリング抵抗性および耐摩耗性が満足なものでない。即ち、前記ポリエチレン原糸が、5.5%以上の“4g/dの強度での伸度と、最大強度での伸度との差”、および、55J/m以上の強靭性を有することによって、これを用いて製造された冷感性生地が、4等級以上のピリング抵抗性(ASTM D 4970-07によって測定)、および、5000cycles以上の耐摩耗性(KS K ISO 12947-2:2014に規定されたマーチンデール法(Martindale method)によって測定)を有することができる。
但し、前記ポリエチレン原糸の前記“4g/dの強度での伸度と最大強度での伸度の差”が過度に大きいか前記ポリエチレン原糸の強靭性が過度に大きければ、前記原糸から製織される生地の裁断性および縫製性が良くなく、最終製品の生産性が低下する。さらに、これを克服するために高価の特殊裁断機および縫製機を使用することは、生産費用の増加が招来される。したがって、前記ポリエチレン原糸における前記“4g/dの強度での伸度と最大強度での伸度との差”は25%以下であるのが好ましい。そして、前記ポリエチレン原糸の強靭性は120J/m以下であるのが好ましい。
具体的に、前記ポリエチレン原糸の前記“4g/dの強度での伸度と最大強度での伸度との差”は、5.5~25%、あるいは9.0~20%、あるいは9.5~15%であり得る。
前記ポリエチレン原糸は、常温で55~120J/m、あるいは60~100J/m、あるいは65~95J/mの強靭性を有することができる。
また、本発明の一実施形態によるポリエチレン原糸は、4g/d超過で6g/d以下の引張強度、15~80g/dの引張モジュラス、14~55%の破断伸度、および60~85%の結晶化度を有する。好ましくは、前記ポリエチレン原糸は、4.5g/d~5.5g/dの引張強度、40~60g/dの引張モジュラス、20~35%の破断伸度、および70~80%の結晶化度を有する。
引張強度が6g/dを超過するか、引張モジュラスが80g/dを超過するか、破断伸度が14%未満であれば、前記ポリエチレン原糸の製織性が良くないだけでなく、これを用いて製造された生地が過度にこわばっていて、使用者が不便さを感じるようになる。逆に、引張強度が4g/d以下であるか、引張モジュラスが15g/d未満であるか、破断伸度が55%を超過すれば、このようなポリエチレン原糸から製造された生地を使用者が持続的に使用する場合、前記生地に毛羽(pills)が誘発され、さらには生地の破損がもたらされる。
ポリエチレン原糸の結晶化度が60%未満であれば、その熱伝導度が低くて、それから製造された生地は、使用者に十分な冷感を提供することができない。即ち、前記ポリエチレン原糸が60~85%の結晶化度を有することによって、これを用いて製造された冷感性生地が、20℃にて、0.0001W/cm・℃以上の厚さ方向熱伝導度、0.001W/cm・℃以上の厚さ方向熱伝達係数、および0.1W/cm以上の接触冷感(Qmax)を有することができる。
本発明の一実施形態によるポリエチレン原糸は、50,000~99,000g/molの重量平均分子量(Mw)および5~9、あるいは5.5~7.0の多分散指数(Polydispersity Index)(PDI)を有する。
前記多分散指数(PDI)は、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比率(Mw/Mn)であって、分子量分布指数(MWD)と称されることもある。ポリエチレン原糸の重量平均分子量(Mw)および多分散指数(PDI)は、その原料として使用されるポリエチレンの物性と密接な関連がある。
本発明のポリエチレン原糸は、1~5のDPF(Denier Per Filament)を有することができる。即ち、前記ポリエチレン原糸は、1~5デニールの繊度をそれぞれ有する複数のフィラメントを含むことができる。また、本発明のポリエチレン原糸は75~450デニールの総繊度を有することができる。
所定の総繊度を有するポリエチレン原糸において各フィラメントの繊度が5デニールを超過すれば、前記ポリエチレン原糸から製造された生地の平滑性が不足することとなり、身体との接触面積が小さくなることによって、使用者に十分な冷感性を提供することができない。一般に、DPFは、口金の各ホール当り吐出量(以下、“単孔吐出量”)と延伸比を通じて調節できる。
本発明のポリエチレン原糸は、円形(circular)断面または異形(non-circular)断面を有することができるが、使用者に均一な冷感性を提供することができるという点から、円形断面を有するのが好ましい。
前述のポリエチレン原糸から製造された本発明の冷感性生地は、75~800g/mの単位面積当り重量(即ち、面密度)を有する織物(woven fabric)または編物(knitted fabric)であり得る。生地の面密度が75g/m未満であれば生地の稠密性が不足することとなって生地内に多くの空隙が存在するようになり、このような空隙は生地の冷感性を低下させる。これに対して、生地の面密度が800g/mを超過すれば、過度に稠密な生地構造によって生地が非常にこわばるようになり、使用者が感じる触感に問題が発生し、高い重量によって使用上の問題点が誘発される。
本発明の一実施形態によれば、本発明の冷感性生地は、下記式1による400~2,000のカバーファクターを有する織物であり得る。
[式1]
CF=(W*W 1/2)+(F*F 1/2
上記式1中、CFはカバーファクターであり、Wは経糸密度(ea/inch)であり、Wは経糸繊度(denier)であり、Fは緯糸密度(ea/inch)であり、Fは緯糸繊度(denier)である。
前記カバーファクターが400未満であれば、生地の稠密性が不足であり生地内の過度に多い空隙によって生地の冷感性が低下するという問題がある。これに対して、前記カバーファクターが2,000を超過すれば、生地の稠密性が過度に高まって生地の触感が悪くなり、高い生地重量によって使用上の問題が引き起こされうる。
本発明の冷感性生地は、20℃にて、
(i)0.0001W/cm・℃以上、あるいは0.0003~0.0005W/cm・℃の厚さ方向熱伝導度、
(ii)0.001W/cm・℃以上、あるいは0.01~0.02W/cm・℃の厚さ方向熱伝達係数、および
(iii)0.1W/cm以上、あるいは0.1~0.3W/cm、あるいは0.1~0.2W/cmの接触冷感(Qmax)を有する。
前記生地の熱伝導度、熱伝達係数、および接触冷感(Qmax)を測定する方法は後述する。
ASTM D 4970-07によって測定される本発明の冷感性生地のピリング抵抗性は4等級以上であり、KS K ISO 12947-2:2014に規定されたマーチンデール法(Martindale method)によって測定される、本発明の冷感性生地の耐摩耗性は、5000cycles以上である。
前述の強伸度特性、強靭性、引張強度、引張モジュラス、破断伸度、および結晶化度を有するポリエチレン原糸を製造するためには、(i)紡糸温度、(ii)口金のL/D、(iii)溶融されたポリエチレンの口金からの吐出線速度、(iv)口金から多段延伸部[具体的には、多段延伸部の一番目のゴデットローラー部]までの距離、(v)冷却条件、および(vi)紡糸速度などといった工程因子が精密に制御されなければならないだけでなく、本発明に適した物性を有する原料が選択される必要がある。
以下、図1を参照して本発明の冷感性生地用ポリエチレン原糸を製造する方法を具体的に説明する。
まず、チップ(chip)の形態のポリエチレンをエクストルーダー(extruder)100に投入して溶融させる。
本発明のポリエチレン原糸の製造のために原料として使用されるポリエチレンは、0.941~0.965g/cmの密度、50,000~99,000g/molの重量平均分子量(Mw)、および6~21g/10minの溶融指数(MI)(190℃で)を有する。また、紡糸過程にて多分散指数が減少しうるという点を考慮して、原料として使用される本発明のポリエチレンは、ターゲット多分散指数(即ち、原糸の多分散指数)より多少高い5.5~9の多分散指数(PDI)を有する。
高い冷感性を提供する生地を製造するためには、前記ポリエチレン原糸が60~85%の高い結晶化度を有しなければならず、このように高い結晶化度を有するポリエチレン原糸を製造するためには、0.941~0.965g/cmの密度を有する高密度ポリエチレン(HDPE)の使用が好ましい。
原料として使用されるポリエチレンの重量平均分子量(Mw)が50,000g/mol未満である場合には、最終的に得られるポリエチレン原糸が4g/dを超過する強度および15g/d以上の引張モジュラスを発現しにくくなり、その結果、生地に毛羽が誘発される。逆に、前記ポリエチレンの重量平均分子量(Mw)が99,000g/molを超過する場合には、過度に高い強度および引張モジュラスのためにポリエチレン原糸の製織性が良くなく、その剛軟度が過度に高くて使用者の皮膚との接触を前提とする冷感性生地の製造に使用されるのに不適である。
原料として使用されるポリエチレンの多分散指数(PDI)が5.5未満であれば、相対的に狭い分子量分布のために、流れ性が良くなく、溶融押出時の加工性が低下して紡糸工程中に、吐出の不均一による糸切れが引き起こされる。逆に、前記HDPEのPDIが9を超過すれば、広い分子量分布のために、溶融流れ性および溶融押出時の加工性は良くなるが、低分子量ポリエチレンが過度に多く含まれていることから、最終的に得られるポリエチレン原糸が、4g/dを超過する強度および15g/d以上の引張モジュラスを有しにくくなり、その結果、生地上に毛羽が相対的に容易に誘発される。
原料として使用されるポリエチレンの溶融指数(MI)が6g/10min未満であれば、溶融されたポリエチレンの高い粘度および低い流れ性に起因して、エクストルーダー100内にて円滑な流れ性を確保するのが難しく、押出物の均一性および加工性が低下して、紡糸工程中に糸切れが発生する危険が大きくなる。これに対して、前記ポリエチレンの溶融指数(MI)が21g/10minを超過する場合、エクストルーダー100内での流れ性は相対的に良好になるが、最終的に得られるポリエチレン原糸が、4g/dを超過する強度および15g/d以上の引張モジュラスを有しにくい。
任意選択的に、ポリエチレンにフルオロ系ポリマーを添加することができる。
前記フルオロ系ポリマーの添加方法としては、(i)ポリエチレンおよびフルオロ系ポリマーを含むマスターバッチ(master batch)をポリエチレンチップと共にエクストルーダー100に投入した後、その中で溶融させる方法、または、(ii)ポリエチレンチップをエクストルーダー100に投入しながら、サイドフィーダー(side feeder)を通じてフルオロ系ポリマーを前記エクストルーダー100に投入した後、これらを共に溶融させる方法などがある。
前記ポリエチレンにフルオロ系ポリマーを添加することによって、紡糸工程および多段延伸工程中の糸切れ発生をさらに抑制して生産性をさらに向上させることができる。非限定的な例として、ポリエチレンに添加される前記フルオロ系ポリマーは、テトラフルオロエチレン共重合体であり得る。前記フルオロ系ポリマーは、最終生産された原糸内におけるフルオロ(fluorine;フッ素)の含量が50~2500ppmとなるようにする量で前記ポリエチレンに添加できる。
前述の物性を有するポリエチレンがエクストルーダー100に投入されて溶融された後、溶融されたポリエチレンが、前記エクストルーダー100内のスクリュー(図示せず)によって口金200に運搬され、前記口金200に形成された複数のホールを通じて押し出される。
前記口金200のホールの個数は、製造される原糸のDPFおよび総繊度に応じて決定されうる。例えば、75デニールの総繊度を有する原糸を製造する場合、前記口金200は20~75個のホールを有することができる。そして、450デニールの総繊度を有する原糸を製造する場合、前記口金200は、90~450個、好ましくは100~400個のホールを有することができる。
前記エクストルーダー100内での溶融工程、および口金200を通じた押出工程は、150~315℃、好ましくは250~315℃、さらに好ましくは265~310℃で行われるのが好ましい。即ち、エクストルーダー100および口金200が、150~315℃、好ましくは250~315℃、さらに好ましくは265~310℃で維持されるのが好ましい。
前記紡糸温度が150℃未満である場合、低い紡糸温度のために、ポリエチレンの均一な溶融が行われず、紡糸が困難でありうる。これに対して、紡糸温度が315℃を超過する場合、ポリエチレンの熱分解が引き起こされて、所望の強度を発現しないのでありうる。
前記口金200のホール直径(D)に対するホール長さ(L)の比率であるL/Dは、3~40であり得る。L/Dが3未満であれば、溶融押出時にダイスウェル(dieswell)現象が発生し、ポリエチレンの弾性挙動の制御が難しくなることから、紡糸性が良くないものとなる。そして、前記L/Dが40を超過する場合には、口金200を通過する溶融ポリエチレンのネッキング(necking)現象による糸切れと共に、圧力降下による吐出不均一の現象が発生しうる。
溶融されたポリエチレンが口金200のホールから吐出されると、紡糸温度と室温との間の差によってポリエチレンの固化が開始される際に、半固化状態のフィラメント11が形成される。本明細書では、半固化状態のフィラメントはもちろんのこと、完全に固化されたフィラメントの全てを“フィラメント”と総称する。
複数の前記フィラメント11は、冷却部(quenching zone)300にて冷却されることによって完全に固化される。前記フィラメント11の冷却は空冷方式で行うことができる。
前記冷却部300での前記フィラメント11の冷却は、0.2~1m/sec風速の冷却風を用いて、15~40℃に冷却されるように行われるのが好ましい。前記冷却温度が15℃未満であれば過冷却によって伸度が不足して延伸過程にて糸切れが発生しうるのであり、前記冷却温度が40℃を超過すれば固化の不均一によって、フィラメント11間の繊度偏差が大きくなり、延伸過程で糸切れが発生しうる。
次いで、集束部400に、前記冷却および完全固化がなされたフィラメント11を集束させてマルチフィラメント10を形成させる。
図1に例示された通り、本発明の方法は、前記マルチフィラメント10を形成させる前に、オイルローラー(OR)あるいはオイルジェット(oil jet)を用いて、前記冷却されたフィラメント11に油剤を付与する段階をさらに含むことができる。前記油剤付与段階はMO(Metered Oiling)方式を通じて行われてもよい。
任意選択的に、前記集束機400を通じたマルチフィラメント10の形成の段階と油剤付与段階が同時に行われてもよい。
図1に例示された通り、本発明のポリエチレン原糸は、直接紡糸延伸(direct spinning drawing、DSD)工程を通じて製造できる。前記マルチフィラメント10が複数のゴデットローラー部(GR1...GRn)を含む多段延伸部500に直接伝達されて、2.5~8.5、好ましくは3.5~7.5の総延伸比にて多段延伸された後、ワインダー600に巻き取られる。
代替案的に、前記マルチフィラメント10を未延伸糸として一旦巻き取った後に、前記未延伸糸を延伸することによって本発明のポリエチレン原糸が製造されてもよい。本発明のポリエチレン原糸は、ポリエチレンを溶融紡糸して未延伸糸を一旦製造した後に、前記未延伸糸を延伸する2段階の工程を通じて製造されてもよい。
延伸工程にて適用される総延伸比が、3.5未満、特に2.5未満であれば、(i)最終的に得られるポリエチレン原糸が60%以上の結晶化度を有することができないことから、前記原糸から製造される生地が十分な冷感を使用者に提供することができないのであり、また、(ii)前記ポリエチレン原糸が4g/d超過の強度、15g/d以上の引張モジュラス、および55%以下の破断伸度を有することができないことから、前記原糸から製造される生地上に毛羽が誘発されうる。
逆に、前記総延伸比が7.5を超過すれば、特に8.5を超過すれば、最終的に得られるポリエチレン原糸が6g/d以下の強度、80g/d以下の引張モジュラス、および14%以上の破断伸度を有することができないことから、前記ポリエチレン原糸の製織性が良くないだけでなく、これを用いて製造された生地が過度にこわばっていて使用者が不便さを感じるようになる。
本発明の溶融紡糸の紡糸速度を決定する一番目のゴデットローラー部GR1の線速度が決定されれば、前記多段延伸部500にて2.5~8.5、好ましくは3.5~7.5の総延伸比が前記マルチフィラメント10に適用されるように、残りのゴデットローラー部の線速度が適切に決定される。
本発明の一実施形態によれば、前記多段延伸部500のゴデットローラー部(GR1...GRn)の温度を、40~140℃の範囲で適切に設定することによって、前記多段延伸部500を通じてポリエチレン原糸の熱固定(heat-setting)を行うことができる。
例えば、一番目のゴデットローラー部GR1の温度は40~80℃であり、最後のゴデットローラー部GRnの温度は110~140℃であってもよい。前記一番目および最後のゴデットローラー部GR1、GRnを除いた、残りのゴデットローラー部のそれぞれの温度は、その直ぐ前段のゴデットローラー部の温度と同一に設定するか、それよりも高く設定されうる。前記最後のゴデットローラー部GRnの温度は、直前の段のゴデットローラー部の温度と同一に設定するか、それよりも高く設定されうるが、それより多少低く設定されてもよい。
多段延伸部500によって前記マルチフィラメント10の多段延伸と熱固定が同時に行われ、多段延伸されたマルチフィラメント10がワインダー600に巻き取られることによって、本発明の冷感性生地用ポリエチレン原糸が完成される。
以下、具体的な実施例を通じて本発明を具体的に説明する。但し、下記の実施例は、本発明の理解を助けるためのものに過ぎず、これによって本発明の権利範囲が制限されてはならない。
実施例1
図1に例示した装置を用いて、200個のフィラメントを含み、総繊度が400デニールであるポリエチレン原糸を製造した。具体的に、0.961g/cmの密度、87,660g/molの重量平均分子量(Mw)、6.4の多分散指数(PDI)、および11.9g/10minの溶融指数(MI at 190℃)を有するポリエチレンチップを、エクストルーダー100に投入して溶融させた。溶融されたポリエチレンは、200個のホールを有する口金200を通じて押し出された。口金200についてのホール直径(D)に対するホール長さ(L)の比率であるL/Dは6であった。口金温度は265℃であった。
口金200から吐出される際に形成されたフィラメント11は、冷却部300で0.45m/secの風速の冷却風によって30℃に最終冷却され、集束機400によって、マルチフィラメント10として集束されて多段延伸部500に移動した。
前記多段延伸部500は、総(トータル)5段のゴデットローラー部から構成され、前記ゴデットローラー部の温度は70~115℃に設定されるとともに、後段のゴデットローラー部の温度は、直前の段のゴデットローラー部の温度と同じに、または、より高く設定された。
前記マルチフィラメント10が、前記多段延伸部500によって7.5の総延伸比で延伸された後に、ワインダー600に巻き取られることによって、ポリエチレン原糸が得られた。
実施例2
0.958g/cmの密度、98,290g/molの重量平均分子量(Mw)、8.4の多分散指数(PDI)、および6.1g/10minの溶融指数(MI at 190℃)を有するポリエチレンチップが使用され、口金温度が275℃であったということを除いては、実施例1と同様の方法でポリエチレン原糸を得た。
実施例3
0.948g/cmの密度、78,620g/molの重量平均分子量(Mw)、8.2の多分散指数(PDI)、および15.5g/10minの溶融指数(MI at 190℃)を有するポリエチレンチップが使用され、口金温度は255℃であり、総延伸比は6.8であったということを除いては、実施例1と同様の方法でポリエチレン原糸を得た。
比較例1
0.962g/cmの密度、98,550g/molの重量平均分子量(Mw)、4.9の多分散指数(PDI)、および6.1g/10minの溶融指数(MI at 190℃)を有するポリエチレンチップが使用され、口金温度は285℃であったということを除いては、実施例1と同様の方法でポリエチレン原糸を得た。
比較例2
0.961g/cmの密度、98,230g/molの重量平均分子量(Mw)、7.0の多分散指数(PDI)、および2.9g/10minの溶融指数(MI at 190℃)を有するポリエチレンチップが使用され、口金温度は290℃であり、総延伸比は8.6であったということを除いては、実施例1と同様の方法でポリエチレン原糸を得た。
比較例3
0.961g/cmの密度、180,550g/molの重量平均分子量(Mw)、6.4の多分散指数(PDI)、および0.6g/10minの溶融指数(MI at 190℃)を有するポリエチレンチップが使用され、口金温度は300℃であり、総8段のゴデットローラー部から構成された多段延伸部500を通じて14の総延伸比で延伸され、ゴデットローラー部の温度は75~125℃に設定されたということを除いては、実施例1と同様の方法でポリエチレン原糸を得た。
試験例1
前記実施例1~3および比較例1~3によってそれぞれ製造されたポリエチレン原糸についての、強伸度特性、強靭性、引張強度、引張モジュラス、破断伸度、結晶化度、および多分散指数(PDI)を、下記のようにそれぞれ測定し、その結果を下記の表1および表2に示した。
(1)ポリエチレン原糸の強伸度特性、引張強度、引張モジュラス、および破断伸度、および強靭性
:インストロン社(Instron Engineering Corp, Canton, Mass)の万能引張試験器を用いて、ASTM D885方法によってポリエチレン原糸の常温での強伸度曲線(x軸:伸度、y軸:強度)を得た(サンプル長さ:250mm、引張速度:300mm/min、初期ロード(load):0.05g/d)。
前記強伸度曲線から前記ポリエチレン原糸についての、“1g/dの強度での伸度”、“3g/dの強度での伸度”、“4g/dの強度での伸度と最大強度での伸度との差”、引張強度、引張モジュラス、および破断伸度をそれぞれ求めた。また、前記強伸度曲線(x軸:伸度、y軸:強度)とx軸との間の面積を、積分を通じて算出することによってポリエチレン原糸の強靭性を求めた。
(2)ポリエチレン原糸の結晶化度
:XRD機器(X-ray Diffractometer)[製造会社:PANalytical社、モデル名:EMPYREAN]を用いて前記ポリエチレン原糸の結晶化度を測定した。具体的に、前記ポリエチレン原糸を切断して2.5cmの長さを有するサンプルを準備し、前記サンプルをサンプルホルダーに固定させた後、下記の条件下で測定を実施した。
-光源(X-ray Source):Cu-Kα radiation
-電力(Power):45KVx25mA
-モード:連続スキャンモード
-スキャン角度範囲:10~40°
-スキャン速度:0.1°/sec
(3)ポリエチレン原糸の多分散指数(PDI)
:前記ポリエチレン原糸を下記の溶媒に完全に溶解させた後、下記のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いてポリエチレン原糸の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)をそれぞれ求めた後、前記数平均分子量(Mn)に対する前記重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)を算出することによって、ポリエチレン原糸の多分散指数(PDI)を求めた。
-分析機器:PL-GPC 220 system
-カラム:2×PLGEL MIXED-B(7.5×300mm)
-カラム温度:160℃
-溶媒:トリクロロベンゼン(TCB)+0.04wt.%ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)(0.1% CaClでもって乾燥した後)
-溶解条件:160℃、1~4時間、溶解後にガラスフィルター(0.7μm)を通過した溶液を測定
-インジェクター・検出器(Injector、Detector)温度:160℃
-検出器(Detector):RI Detector
-流速:1.0mL/min
-注入量:200μL
-標準試料:ポリスチレン
Figure 0007289931000001
Figure 0007289931000002
実施例4
前記実施例1のポリエチレン原糸を、経糸および緯糸として使用して平織を行うことによって、30本/インチ(ea/inch)の経糸密度および30本/インチ(ea/inch)の緯糸密度を有する織物を製造した。
実施例5
前記実施例1のポリエチレン原糸の代わりに前記実施例2のポリエチレン原糸を使用したということを除いては、前記実施例4と同様の方法で織物を製造した。
実施例6
前記実施例1のポリエチレン原糸の代わりに前記実施例3のポリエチレン原糸を使用したということを除いては、前記実施例4と同様の方法で織物を製造した。
比較例4
前記実施例1のポリエチレン原糸の代わりに前記比較例1のポリエチレン原糸を使用したということを除いては、前記実施例4と同様の方法で織物を製造した。
比較例5
前記実施例1のポリエチレン原糸の代わりに前記比較例2のポリエチレン原糸を使用したということを除いては、前記実施例4と同様の方法で織物を製造した。
比較例6
前記実施例1のポリエチレン原糸の代わりに前記比較例3のポリエチレン原糸を使用したということを除いては、前記実施例4と同様の方法で織物を製造した。
試験例2
前記実施例4~6および比較例4~6によってそれぞれ製造された織物(生地)についての、接触冷感(Qmax)、熱伝導度(厚さ方向)、熱伝達係数(厚さ方向)、ピリング抵抗性、耐摩耗性、および剛軟度を、それぞれ下記のように測定し、その結果を下記の表3および表4に示した。
(1)生地の接触冷感(Qmax
:20cm×20cmサイズの生地サンプルを準備した後、20±2℃の温度および65±2%相対湿度(RH)の条件下で24時間放置した。次いで、20±2℃の温度および65±2%相対湿度(RH)のテスト環境にて、KES-F7 THERMO LABO II(Kato Tech Co., LTD.)装置を用いて、生地の接触冷感(Qmax)を測定した。
具体的に、図2に例示されたように、20℃に維持されるベースプレート(‘Water-Box’とも称される)21上に、前記生地サンプル23を載せておき、30℃に加熱されたT-Box 22a(接触面積:3cm×3cm)を、前記生地サンプル23上に1秒間のみ載せておいた。即ち、一面がベースプレート21と接触している前記生地サンプル23の他面をT-Box 22aに瞬間的に接触させた。前記T-Box 22aによって前記生地サンプル23に加えられた接触圧力は6gf/cmであった。次いで、前記装置に連結されたモニター(図示せず)に表示されたQmax値を記録した。このようなテストを10回繰り返し、得られたQmax値の算術平均値を算出した。
(2)生地の熱伝導度および熱伝達係数
:20cm×20cmサイズの生地サンプルを準備した後、20±2℃の温度および65±2%のRHの条件下で24時間放置した。次いで、20±2℃の温度および65±2%のRHのテスト環境でKES-F7 THERMO LABO II(Kato Tech Co., LTD.)装置を用いて生地の熱伝導度および熱伝達係数を求めた。
具体的に、図3に例示されたように、20℃で維持されるベースプレート21上に前記生地サンプル23を載せておき、30℃で加熱されたBT-Box 22b(接触面積:5cm×5cm)を前記生地サンプル23上に1分間載せておいた。前記BT-Box 22bが前記生地サンプル23と接触する間にもその温度が30℃で維持されるように前記BT-Box 22bに熱が持続的に供給された。前記BT-Box 22bの温度維持のために供給された熱量[即ち、熱流損失((heat flow loss))]が前記装置に連結されたモニター(図示せず)に表示された。このようなテストを5回繰り返し、得られた熱流損失値の算術平均値を算出した。次いで、生地の熱伝導度および熱伝達係数を下記の式2および式3を用いて算出した。
[式2]K=(W*D)/(A*ΔT)
[式3]k=K/D
ここで、Kは熱伝導度(W/cm・℃)であり、Dは生地サンプル23の厚さ(cm)であり、Aは前記BT-Box22bの接触面積(=25cm)であり、ΔTは生地サンプル23の両面の温度差(=10℃)であり、Wは熱流損失(Watt)であり、kは熱伝達係数(W/cm・℃)である。
(3)生地の剛軟度(stiffness)
:ASTM D 4032による剛軟度測定装置を用いてCircular Bend法で生地の剛軟度を測定した。剛軟度(kgf)が低いほど、生地が、柔らかな特性を有する。
(4)生地のピリング抵抗性
:マーチンデール試験器(Martindale tester)を用いて、ASTM D 4970-07によって生地のピリング抵抗性を測定した(摩擦運動回数:総200回)。ピリング抵抗性等級基準は次の通りである。
-1等級:ピリングが非常に甚だしい
-2等級:ピリングが甚だしい
-3等級:ピリングが中間程度ある
-4等級:ピリングが若干ある
-5等級:ピリングが全くない
(5)生地の耐摩耗性
:マーチンデール試験器(Martindale tester)を用いて、KS K ISO 12947-2:2014に規定されたマーチンデール法(Martindale method)によって生地の耐摩耗性を測定した。具体的に、生地で二筋の糸が切れるまでの回数(cycles;サイクル)を測定した。
Figure 0007289931000003
Figure 0007289931000004
100:エクストルーダー
200:口金
300:冷却部(quenching zone)
11:フィラメント
OR:オイルローラー
400:集束部
10:マルチフィラメント
500:多段延伸部
GR1:一番目のゴデットローラー部
GRn:最後のゴデットローラー部
600:ワインダー
21:ベースプレート
22a:T-Box
22b:BT-Box
23:生地サンプル

Claims (10)

  1. ポリエチレン原糸であって、
    0.941~0.965g/cm の密度、50,000~99,000g/molの重量平均分子量(Mw)、5.5~9の多分散指数(PDI)、および温度190℃下で測定したときの溶融指数が6~21g/10minであるポリエチレンを溶融紡糸してなるフィラメントを含み、
    常温で測定して得られた前記ポリエチレン原糸について、ASTM D885法によって常温、初期ロード0.05g/d、サンプル長さ250mm、引張速度300mm/minの条件下で測定した強伸度曲線で、(i)1g/dの強度での伸度が0.5~3%であり、(ii)3g/dの強度での伸度が5.5~10%であり、(iii)4g/d強度での伸度と最大強度での伸度の差が5.5~25%であり、
    前記ポリエチレン原糸は常温で55~120J/mの強靭性を有する、
    ポリエチレン原糸。
  2. 前記ポリエチレン原糸は、4g/d超過で6g/d以下の引張強度、15~80g/dの引張モジュラス、14~55%の破断伸度、および60~85%の結晶化度を有する、
    請求項1に記載のポリエチレン原糸。
  3. 前記ポリエチレン原糸は、50,000~99,000g/molの重量平均分子量(Mw)および5~9の多分散指数(Polydispersity Index)(PDI)を有する、
    請求項1に記載のポリエチレン原糸。
  4. 前記ポリエチレン原糸は75~450デニール(denier)の総繊度を有し、
    前記ポリエチレン原糸は1~5デニール(denier)の繊度をそれぞれ有する複数のフィラメントを含む、
    請求項1に記載のポリエチレン原糸。
  5. 前記ポリエチレン原糸は円形断面を有する、請求項1に記載のポリエチレン原糸。
  6. 請求項1~5のうちのいずれか一項のポリエチレン原糸から形成された冷感性生地において、
    20℃にて、前記冷感性生地は0.0001W/cm・℃以上の厚さ方向熱伝導度、0.001W/cm・℃以上の厚さ方向熱伝達係数、および20±2℃の温度および65±2%の相対湿度(RH)の条件下で24時間放置した後、KES-F7 THERMO LABO II(Kato Tech Co., LTD.)装置を利用して測定された0.1W/cm以上の接触冷感(Qmax)を有する、冷感性生地。
  7. ASTM D 4970-07によって測定される前記冷感性生地のピリング抵抗性は4等級以上であり、
    KS K ISO 12947-2:2014に規定されたマーチンデール法(Martindale method)によって測定される前記冷感性生地の耐摩耗性は5000サイクル(cycles)以上である、
    請求項6に記載の冷感性生地。
  8. 前記冷感性生地の面密度は75~800g/mである、請求項6に記載の冷感性生地。
  9. 0.941~0.965g/cmの密度、50,000~99,000g/molの重量平均分子量(Mw)、5.5~9の多分散指数(PDI)、および6~21g/10minの溶融指数(Melt Index:MI)(190℃で)を有するポリエチレンを溶融させる段階;
    複数のホールを有する口金を通じて、前記溶融されたポリエチレンを押し出す段階;
    前記溶融されたポリエチレンが前記口金のホールから吐出される際に形成される複数のフィラメントを冷却させる段階;および
    前記冷却されたフィラメントからなるマルチフィラメントを延伸する段階
    を含む、
    ポリエチレン原糸の製造方法。
  10. 前記延伸段階は2.5~8.5の延伸比で行われる、請求項9に記載のポリエチレン原糸の製造方法。
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