JP2015112784A - ファブリック強化樹脂成形体の製造方法及びファブリック強化樹脂成形体 - Google Patents

ファブリック強化樹脂成形体の製造方法及びファブリック強化樹脂成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】成形後に反りが発生しにくいファブリック強化樹脂成形体の製造方法及びファブリック強化樹脂成形体を提供する。【解決手段】2本以上の芯鞘型複合紡糸繊維を加熱延伸し、各繊維の鞘材を融合一体化することにより得られ、長手方向における断面が前記鞘材中に芯材が島状に存在する海島構造であり、示差走査熱量計を使用し、昇温速度を30℃/分として、融解熱量法により測定した芯材の結晶化度が60%以上である複合繊維により形成したファブリック又はこのファブリックを用いたシート材を加熱する工程(加熱工程S1)と、加熱したファブリック又はシート材を、金型を用いて、冷間にて、圧縮成形又は真空成形する工程(成形工程S2)とを行って、所定形状のファブリック強化樹脂成形体を得る。【選択図】図1

Description

本発明は、ファブリック強化樹脂成形体の製造方法及びファブリック強化樹脂成形体に関する。より詳しくは、補強材として織物、編み物及び不織布などのファブリックを用いた樹脂成形体を製造する方法及びこの方法で製造された樹脂成形体に関する。
近年、旅行用スーツケースには、軽量などの理由から、樹脂成形品が多用されている。一方、樹脂製のスーツケースは、飛行機に搭乗する際に手荷物として預けると、貨物として扱われるため、輸送途中で傷つき、割れ、破損及び穴あきなどが起こることがある。このような高い強度が要求される樹脂成形体には、従来、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics:FRP)が用いられている。
また、補強材として織物を用いた織物強化樹脂成形体も提案されている(特許文献1,2参照)。例えば、特許文献1,2には、炭素繊維やアラミド繊維を平織した織物シートに、熱硬化性エポキシ樹脂を含浸させて圧縮成形した樹脂成形体が開示されている。
特開平5−208471号公報 特開2009−184239号公報
しかしながら、繊維強化プラスチックを用いた樹脂成形体は、加熱成形後に成形体に反りが生じやすく、保形性に問題がある。この成形後の「反り」の問題は、深絞り成形した場合に特に顕著である。また、特許文献1,2に記載されているような織物シートを用いたファブリック強化樹脂成形体は、前述した保形性に加えて、補強材が高価であるため製造コストが増加するという問題もある。
そこで、本発明は、成形後に反りが発生しにくいファブリック強化樹脂成形体の製造方法及びファブリック強化樹脂成形体を提供することを主目的とする。
繊維強化プラスチックは、加熱成形時に補強材である繊維が部分的に延伸されるが、この補強繊維に加えられた部分的な延伸ひずみが成形後に緩和することにより、成形体に反りが生じるものと考えられる。そこで、本発明者は、補強材及び成形方法について鋭意実験検討を行い、芯鞘型複合紡糸繊維により形成したファブリックを用いて、特定の方法で成形することにより、反りの発生しないファブリック強化樹脂成形体が得られることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明に係るファブリック強化樹脂成形体の製造方法は、2本以上の芯鞘型複合紡糸繊維を加熱延伸し、各繊維の鞘材を融合一体化することにより得られ、長手方向における断面が前記鞘材中に芯材が島状に存在する海島構造であり、示差走査熱量計を使用し、昇温速度を30℃/分として、融解熱量法により測定した芯材の結晶化度が60%以上である複合繊維により形成したファブリック又は前記ファブリックを用いたシート材を加熱する工程と、加熱したファブリック又はシート材を、金型を用いて、冷間にて、圧縮成形又は真空成形する工程と、を有する。
本発明のファブリック強化樹脂成形体の製造方法では、複合繊維は、前記鞘材を融点が130℃以下のポリオレフィン系樹脂とし、前記芯材を前記鞘材よりも融点が20℃以上高い結晶性熱可塑性樹脂としてもよい。
また、複合繊維には、例えば120℃における引張りヤング率が7cN/dtex以上のものを使用することができる。
一方、前記加熱する工程では、前記ファブリック又はシート材を、前記鞘材の融点以上かつ前記芯材の融点未満の温度にすればよい。
前記シート材には、例えば、前記ファブリックを複数枚積層して前記鞘材が溶融する温度で熱圧着したもの、或いは、1又は2枚以上の前記ファブリックと、前記鞘材と同種の樹脂からなる樹脂シートとを積層し、前記鞘材が溶融する温度で熱圧着したものを用いることができる。
また、前記ファブリックは、例えば平織織布である。
本発明に係るファブリック強化樹脂成形体は、2本以上の芯鞘型複合紡糸繊維を加熱延伸し、各繊維の鞘材を融合一体化することにより得られ、長手方向における断面が前記鞘材中に芯材が島状に存在する海島構造であり、示差走査熱量計を使用し、昇温速度を30℃/分として、融解熱量法により測定した芯材の結晶化度が60%以上である複合繊維により形成したファブリック又は前記ファブリックを用いたシート材を加熱した後、金型を用いて、冷間にて、圧縮成形又は真空成形して得たものである。
ここでいう「ファブリック」には、織物、編み物及び不織布などの繊維を用いて形成された布類全般を含み、「ファブリック強化樹脂成形体」は、これらの布によって強化された樹脂成形体を指す。
本発明によれば、2本以上の芯鞘型複合紡糸繊維を加熱延伸して各繊維の鞘材を融合一体化した複合繊維により形成したファブリックを用いているため、成形後に反りが発生しにくいファブリック強化樹脂成形体を製造することができる。
本発明の実施形態のファブリック強化樹脂成形体の製造方法を示すフローチャート図である。 A〜Cは図1に示すファブリック強化樹脂成形体の製造方法をその工程順に示す模式図である。 芯鞘型複合紡糸繊維(原糸)の構造を模式的に示す断面図である。 図3に示す原糸3を加熱延伸して得た複合繊維の構造例を模式的に示す断面図である。 図4に示す複合繊維10を用いたファブリック(平織織布)を模式的に示す斜視図である。 本発明の実施形態のファブリック強化樹脂成形体の構成例を示す斜視図である。 A及びBは反りの評価方法を示す模式図である。
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
図1は本発明の実施形態に係るファブリック強化樹脂成形体の製造方法を示すフローチャート図であり、図2A〜Cは図1に示すファブリック強化樹脂成形体の製造方法をその工程順に示す模式図である。図1及び図2に示すように、本実施形態のファブリック強化樹脂成形体(以下、単に樹脂成形体ともいう。)の製造方法では、2本以上の芯鞘型複合紡糸繊維を加熱延伸して得た複合繊維により形成したファブリック11又はシート材12を加熱する工程(加熱工程S1)と、加熱したファブリック11又はシート材12を成形する工程(成形工程S2)とを行う。
[芯鞘型複合紡糸繊維]
本実施形態の樹脂成形体の製造方法で用いる複合繊維の原糸は、芯鞘型複合紡糸繊維であり、溶融紡糸などにより形成することができる。図3は芯鞘型複合紡糸繊維(原糸)の構造を模式的に示す断面図である。図3に示す芯鞘型複合紡糸繊維(原糸)3の鞘材2には、比較的低温で成形でき、熱効率において経済的な点から、融点が130℃以下のポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
具体的には、鞘材2には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレン酢酸ビニルなどのエチレン系樹脂、エチレン及びブテンなどのαオレフィンとプロピレンとの2元系又は3元系共重合体であるランダム又はブロック共重合ポリプロピレンなどを用いることができる。これらのポリオレフィン系樹脂のなかでも、融点が明確で温度に対してシャープな溶融挙動を示す点から、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンが好適である。
一方、芯鞘型複合紡糸繊維(原糸)3の芯材1は、成形体において補強材として機能することから、結晶性の樹脂を用いることが好ましく、更に、繊維製造時から成形体の状態においても溶融しないことが必要である。具体的には、原糸3の芯材1には、融点が鞘材2よりも20℃以上高い結晶性熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。このような条件を満たす芯材1としては、アイソタクチックポリプロピレン(i−PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びナイロンなどが挙げられる。
[複合繊維]
本実施形態の樹脂成形体の製造方法で用いる複合繊維は、前述した芯鞘型複合紡糸繊維(原糸)3を、複数本束ねて加熱延伸することにより得られる。図4は複合繊維の構造例を模式的に示す断面図である。図4に示すように、原糸3を加熱延伸すると、各原糸3の鞘材2が融合一体化し、長手方向における断面において、海成分である鞘材2中に芯材1が島状に存在する海島構造の複合繊維が得られる。ここで、「海島構造」とは、ポリマーブレンドにおける相分離構造を指し、例えば島成分が相互に連結している相互連結型や厚さ方向に海成分及び島成分が分布している層状構造も含む。
ここで、原糸3の延伸条件は、特に限定されるものではないが、繊維物性向上の観点から、延伸温度は145℃以上とすることが好ましい。一方、延伸倍率は、芯材1の結晶化度を高める観点からは、高い方が好ましいが、延伸倍率が高すぎると、結晶配向が乱れて結晶化度が低下する。そこで、芯材1の結晶化度を高めるには、1段よりも多段で延伸することが望ましい。1段で延伸する場合、一気に大きな延伸倍率がかかるため、加熱槽に被延伸物が侵入する前に延伸が開始され、特にネック(くびれ)延伸が極端に開始され、結果として配向結晶が生じにくくなるためである。
例えば、2段延伸により複合繊維10を形成する場合は、1段目を温水で行い、2段目を高飽和水蒸気中で行うことが好ましい。また、その場合、芯材(島成分)1の結晶化度向上の観点から、2段目の延伸倍率を1.5〜2.5倍に設定することが好ましい。2段目の延伸倍率が1.5倍未満の場合、1段目に形成した配向結晶が乱れて、結晶化度が低下することがある。また、2段目の延伸倍率が2.5倍を超えると、糸切れが発生したり、配向結晶が壊れて、結晶化度が低下したりすることがある。
なお、2段延伸により複合繊維10を形成する場合における1段目の延伸倍率は、特に限定されるものではないが、例えば4.0〜10.0倍とすることができる。また、原糸3の延伸は2段に限定されるものではなく、3段以上で行ってもよい。
そして、本実施形態の樹脂成形体の製造方法で用いる複合繊維の芯材(島成分)1は、示差走査熱量計を使用し、昇温速度を30℃/分として、融解熱量法により測定した結晶化度が60%以上である。芯材(島成分)1の結晶化度が60%未満の場合、成形時に歪みが発生して、成形体に反りが生じる。一方、芯材(島成分)1の結晶化度を60%以上にすることにより、成形時発生する歪みを小さくし、反りのない樹脂成形体を製造することができる。
ここで規定する複合繊維の芯材(島成分)1の結晶化度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した芯材1の融解熱量から算出した値である。結晶化度の算出にあたっては、芯材1を構成する樹脂の完全結晶における融解熱量文献値(209J/g、昇温速度10℃/分)を結晶化度100%とした。また、芯材1の測定量は約10mgとし、室温から芯材1の融点よりも30〜40℃高い温度まで、昇温速度30℃/分で、昇温走査した。
DSCを用いて樹脂の融点を測定する場合は、一般に、昇温速度は10℃/分に設定されるが、延伸物のような配向結晶化が生じているものの融解熱量を測定し、繊維に内在している結晶化度の差異を求める場合、昇温速度が遅いと、昇温中に結晶化が進行し、測定前と異なる状態の融解熱量を測定することになる。そこで、本実施形態においては、芯材(島成分)1の結晶化度は、昇温速度を30℃/分として測定した値で規定した。
更に、本実施形態の樹脂成形体の製造方法で用いる複合繊維10は、120℃における引張りヤング率が7cN/dtex以上であることが好ましい。これにより、成形時に発生する歪みを小さくすることができる。
[ファブリック11・シート材12]
本実施形態の樹脂成形体の製造方法で用いるファブリックは、前述した複合繊維を用いて製造されたものであり、例えば、織物、編み物又は不織布である。また、本実施形態で用いるファブリックは、前述した複合繊維を用いていればよく、異種繊維種が混繊されていてもよい。図5はファブリックの一例である平織織布を模式的に示す斜視図である。ファブリック11の組織は、特に限定されるものではなく、図5に示す平織の他、斜文織、朱子織、これらの原組織の変形組織など用途に応じて適宜選択することができる。また、ファブリックの製造方法も、特に限定されるものではなく、公知の方法を適用することができる。
更に、本実施形態の樹脂成形体の製造方法では、前述したファブリックを単体で使用することもできるが、複数枚のファブリックを積層し、鞘材(海成分)2が溶融する温度で熱圧着したシート材、1又は2枚以上のファブリックと、鞘材(海成分)2と同種の樹脂からなる樹脂シートとを積層し、鞘材2が溶融する温度で熱圧着したシート材を使用することが好ましい。
このようにファブリックを熱圧着してシート化することにより、芯材(島成分)1の結晶化度を高めることができると共に、加熱工程S1及び成形工程S2における操作性を向上させることができる。また、ファブリックに樹脂シートを積層したシート材は、ファブリックの特徴である透湿性や通気性を低下させることができるため、家電などの透水を嫌う用途への適用が可能となると共に、真空成形法の適用も可能となる。
なお、本実施形態の樹脂成形体の製造方法では、前述したファブリック又はシート材の片面又は両面に、ポリオレフィン、ポリエステル又はABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂からなるフィルムを貼り合わせてもよい。これにより、樹脂成形体の表面を着色したり、模様などの意匠性を付与したりすることが可能となる。
[加熱工程S1]
図2A及び図2Bに示すように、加熱工程S1では、ファブリック11又はこのファブリックを用いたシート材12を、必要に応じて裁断や積層した後、加熱する。その際、加熱方法は、特に限定されるものではなく、オーブンやホットプレートなど公知の加熱装置を使用することができる。また、必要に応じて、金属板などで挟持した状態で、ファブリック11又はシート材12を加熱してもよい。これにより、熱収縮を防止することができる。ファブリック11又はシート材12の加熱温度は、鞘材(海成分)2の融点以上かつ芯材(島成分)1の融点未満の温度とすることが好ましい。これにより、形状保持性(保形性)が良好なファブリック強化樹脂成形体を得ることができる。
[成形工程S2]
図6は本実施形態の方法で製造されるファブリック強化樹脂成形体の構成例を示す斜視図である。図2Cに示すように、前述した加熱工程S1で加熱したファブリック11又はシート材12を、金型13a,13bを用いて、冷間にて、圧縮成形又は真空成形する。これにより、例えば図6に示される深絞り成形体20などの略箱状体をはじめとし、各種形状のファブリック強化樹脂成形体を製造することができる。
圧縮成形及び真空成形する際の条件は、特に限定されるものではないが、例えば、圧力を1〜5MPa、ファブリック11又はシート材12の温度を120〜150℃、冷却時間を30〜60秒とする。なお、本実施形態の樹脂成形体の製造方法では、冷間にて成形を行っているが、これは形状保持性(保形性)が良好なファブリック強化樹脂成形体を、効率よく製造するためである。
以上詳述したように、本実施形態の樹脂成形体の製造方法では、2本以上の芯鞘型複合紡糸繊維を加熱延伸し、各繊維の鞘材を融合一体化して得た複合繊維により形成したファブリックを用いているため、炭素繊維やアラミド繊維を用いた織物に樹脂を含浸させた複合シートに比べて、補強材(芯材)とマトリクス樹脂(鞘材)とが隙間なく一体化された樹脂成形体が得られる。これにより、成形体の強度を高めることができる。
また、本実施形態の樹脂成形体の製造方法では、芯材の融点よりも低い温度で予備加熱を行った後、冷間成形を行っているため、ファブリックを構成する各繊維に歪みが生じることを防止できる。その結果、成形体の保形性を向上させることができる。本実施形態の樹脂成形体の製造方法は、織物、編み物及び不織布を用いた樹脂成形体の製造に好適であるが、強化材として伸縮性に劣る織物を用いた場合に特に効果が大きい。
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。本実施例においては、以下に示す方法及び条件で作製した複合繊維により形成した平織織布を用いて樹脂成形体を製造し、その性能を評価した。
<複合繊維A>
芯材にアイソタクチックポリプロピレン(i−PP)[メルトフローレイト(MFR)=18g/10分(230℃、21.18N)、融点=165℃]を使用し、鞘材に直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)[メルトフローレイト(MFR)=8g/10分(190℃、21.18N)、融点=117℃]を使用した。これらの材料を、ホール数が240ホールの細孔を有する鞘芯複合紡糸ノズルを用いて、紡糸温度270℃にて、紡糸ノズルヘッド部に備え付けの溶融樹脂ギヤポンプで所定量の吐出樹脂量に計量しつつ紡糸速度60m/分で紡糸し、鞘と芯の断面積比(鞘/芯比)が35/65で、繊度が24,163dtexの芯鞘型複合紡糸繊維を作製した。
引き続き、得られた芯鞘型複合紡糸繊維(240本)をスピンドロー方式(紡糸延伸直結法)にて、第1延伸ローラー(G1)=60m/分、第1延槽伸温度=95℃(温水)、第2延伸ローラー(G2)速度=405m/分、第2延伸槽温度=153℃(高圧飽和水蒸気)、第3延伸ローラー(G3)速度=805m/分で、第1延伸倍率(G2/G1速度比)=6.75倍、第2延伸倍率(G3/G2速度比)=1.99倍、全延伸倍率(G3/G1速度比)=13.42倍の条件で2段延伸した。この延伸工程により、鞘材であるLLDPEが溶融し、芯材(i−PP)を包埋して一体化した海島構造の延伸複合繊維Aを得た。
この延伸複合繊維Aの物性は、繊度=1828dtex、引張りヤング率=93cN/dtex(室温引張り試験)、13.2cN/dtex(120℃熱間引張り試験)であった。また、得られた延伸複合繊維Aについて、示差走査熱量計(DSC)にて、昇温速度30℃/分の条件で、芯材(i−PP)の融解熱量を測定し、i−PP樹脂の完全結晶体の融解熱量との対比から結晶化度を算出した。その結果、芯材(i−PP)の結晶化度は72%であった。
<複合繊維B>
ギヤポンプの吐出樹脂量を調整し、紡糸速度を40m/分とし、紡糸繊度を17,809dtexとした以外は、前述した複合繊維Aと同様の方法及び条件で、鞘芯複合紡糸繊維(原糸)を作製した。その後、第1延伸ローラー(G1)を40m/分、第1延槽伸温度を145℃ (高圧飽和水蒸気)、第2延伸ローラー(G2)速度を400m/分とし、全延伸倍率(G2/G1速度比)=10.00倍の条件で1段延伸した以外は、前述した複合繊維Aと同様の方法及び条件で海島構造の延伸複合繊維Bを得た。
この延伸複合繊維Bの物性は、繊度=1808dtex、引張りヤング率=59cN/dtex(室温引張り試験)、7.1cN/dtex(120℃熱間引張り試験)であった。また、複合繊維Aと同様の方法で測定し、算出した芯材(i−PP)の結晶化度は60%であった。
<複合繊維C>
ギヤポンプの吐出樹脂量を調整し、紡糸繊度を12,544dtexとした以外は、前述した複合繊維Aと同様の方法及び条件で、芯鞘型複合紡糸繊維(原糸)を作製した。その後、第2延伸ローラー(G2)速度を300m/分 、第2延伸槽温度を145℃(高圧飽和水蒸気)、第3延伸ローラー(G3)速度を420m/分とし、第1延伸倍率(G2/G1速度比)を5.00倍、第2延伸倍率(G3/G2速度比)を1.40倍、全延伸倍率(G3/G1速度比)を7.00倍とした以外は、前述した複合繊維Aと同様の方法及び条件で2段延伸し、海島構造の延伸複合繊維Cを得た。
この延伸複合繊維Cの物性は、繊度=1814dtex、引張りヤング率=36cN/dtex(室温引張り試験)、4.9cN/dtex(120℃熱間引張り試験)であった。また、複合繊維Aと同様の方法で測定し、算出した芯材(i−PP)の結晶化度は52%であった。この複合繊維Cは、熱間引張り試験でのヤング率及び結晶化度において、前述した複合繊維A及び複合繊維Bよりも極めて低い物性を示し、耐熱物性が劣ることが推測された。これは、延伸倍率が実施例の繊維より低いことが原因しているものと推測される。
<複合繊維D>
ギヤポンプの吐出樹脂量を調整し、紡糸繊度を25,045dtexとした以外は、前述した複合繊維Aと同様の方法及び条件で、芯鞘型複合紡糸繊維(原糸)を作製した。その後、第2延伸ローラー(G2)速度を600m/分、第3延伸ローラー(G3)速度を838m/分とし、第1延伸倍率(G2/G1速度比)を10.00倍、第2延伸倍率(G3/G2速度比)を1.40倍、全延伸倍率(G3/G1速度比)を13.97倍とした以外は、前述した複合繊維Aと同様の方法及び条件で2段延伸し、海島構造の延伸複合繊維Dを得た。
この延伸複合繊維Dの物性は、繊度=1820dtex、引張りヤング率=82cN/dtex(室温引張り試験)、6.8cN/dtex(120℃熱間引張り試験)であった。また、複合繊維Aと同様の方法で測定し、算出した芯材(i−PP)の結晶化度は58%であった。この複合繊維Dは、熱間引張り試験でのヤング率及び結晶化度において、前述した複合繊維A及び複合繊維Bよりも低い物性を示し、耐熱物性に劣ることが推測された。このことから、高倍率延伸すれば耐熱性向上を実現できるとは限らず、1段目より高温延伸である2段目の延伸倍率が低いため、1段目の延伸で形成した配向結晶を成長させるのではなく、むしろ破壊していることが推測される。
<複合繊維E>
ギヤポンプの吐出樹脂量を調整し、紡糸繊度を24,959dtexとした以外は、前述した複合繊維Bと同様の方法及び条件で、芯鞘型複合紡糸繊維(原糸)を作製した。その後、第2延伸ローラー(G2)速度を560m/分とし 、全延伸倍率(G2/G1速度比)=14.00倍の条件で延伸した以外は、前述した複合繊維Bと同様の方法及び条件で1段延伸し、海島構造の延伸複合繊維Eを得た。
この延伸複合繊維Eの物性は、繊度=1810dtex、引張りヤング率=71cN/dtex(室温引張り試験)、6.5cN/dtex(120℃熱間引張り試験)であった。また、複合繊維Aと同様の方法で測定し、算出した芯材(i−PP)の結晶化度は57%であった。この複合繊維Eは、熱間引張り試験でのヤング率及び結晶化度において、前述した複合繊維A及び複合繊維Bよりも低い物性を示し、耐熱物性に劣ることが推測された。このことから、前述した複合繊維Dと同様に、高倍率延伸すれば配向の促進及び結晶化度の増大の促進ができる訳ではなく、1段で大きな倍率の延伸を行うと、芯材(i−PP)のネック(くびれ)変形を伴う延伸が増大し、配向結晶化が抑制されることが推測される。
<複合繊維F>
鞘材にエチレン―プロピレンランダム共重合体(co−PP)[メルトフローレイト(MFR)=5g/10分(190℃、21.18N)、融点=125℃]を使用したこと、及びギヤポンプの吐出樹脂量を調整して紡糸繊度を24,100dtexとしたこと以外は、前述した複合繊維Aと同様の方法及び条件で、鞘芯複合紡糸繊維(原糸)を作製した。その後、前述した複合繊維Aと同様の方法及び条件で2段延伸し、海島構造の延伸複合繊維Fを得た。
この延伸複合繊維Fの物性は、繊度=1820dtex、引張りヤング率=95cN/dtex(室温引張り試験)、95cN/dtex(120℃熱間引張り試験)であった。また、複合繊維Aと同様の方法で測定し、算出した芯材(i−PP)の結晶化度は71%であった。
これら複合繊維A〜Fについて、上記以外の製造条件及び繊維物性を下記表1にまとめて示す。
Figure 2015112784
なお、上記表1に示す「引張り強度」は、以下に示す方法にて測定した値である。
(1)室温
JIS L1013で規定される方法に準じて、試料長100mm、引張り速度100mm/分の条件で、株式会社島津製作所社製 オートグラフAG−100kN ISを用いて、1試料当たり5回の測定を行った。そして、その平均値から、強度(cN/dtex)、伸度(%)、ヤング率(cN/dtex)を求めた。
(2)120℃
加熱炉を使用して120℃雰囲気下で1時間調整した後、試料をセットして、3分後(試料の温度が約2分後に120℃に達する)に、JIS L1013で規定される方法に準じて、試料長100mm、引張り速度100mm/分の条件で、株式会社島津製作所社製 オートグラフAG−100kN ISを用いて、1試料当たり5回の測定を行った。そして、その平均値から、強度(cN/dtex)、伸度(%)、ヤング率(cN/dtex)を求めた。
(実施例1)
(1)ファブリックの作製
複合繊維Aを2本合糸して3656dtexとし、織機にて、縦横方向の原糸打ち密度をそれぞれ8.33本/25mmとして平織織布を作製した。得られた織布の面密度は244g/mであった。
(2)シート材の作製
得られた平織織布を、縦横長さ1.5mの大きさに裁断し、これを3枚積層して、加熱平板(縦2m×横2m)ホットプレス機にて熱圧着ファブリックシートを作製した。シート作製の前準備として、縦横長さ1.8m、厚さ1.5mmのアルミニウム板を予めホットプレス機で所定の温度に予熱した。そして、このアルミニウム板に前述した平織織布を載せて、所定条件で熱圧着した。プレス圧解除後にアルミニウム板ごと取り出し、別途準備しておいた冷却用のアルミニウム板をこれに載せてシートを急冷した後、シートのみを取り外すことによって熱圧着ファブリックシートを作製した。その際、ホットプレス条件は、平板温度120℃、加圧1.6MPa、加圧保持時間45秒とした。また、得られた熱圧着ファブリックシートは、厚さ1.1mm、面密度681g/mであった。
(3)圧縮成形試験
圧縮成形試験では、雄金型には、縦500mm、横700mm、高さ120mm、上部端部曲率R80mm、底部端部曲率R10mmの凸形状を有する金型を使用した。一方、雌金型には、雄金型に対応する凹形状を有する金型を使用し、雄雌金型をプレス機に装着して圧縮成形試験に使用した。なお各金型は、型内通水冷却管に冷水又は温水を通水することにより、金型温度を30℃〜70℃の範囲に維持できる状態で使用した。
前述したファブリックシートの上下面を、遠赤外線(IR)ヒーターにより、表面温度が120℃〜130℃になるまで予め加熱した。所定温度に到達後、ファブリックシートを素早く圧縮試験金型に挿入し、雄雌金型のクリアランスが1mmの状態で4秒間圧縮成形した後、60秒間冷間成形を維持した。冷間成形が終了した後、脱型し、箱状成形体を得た。
次に、この箱状成形体を、室温で24時間放置後、反り及び変形などの形状を目視観察すると共に、底面に対する側壁面の反りの程度を反り角度α(°)として測定した。図7A及び図7Bは反りの評価方法を示す模式図である。反り角度α(°)は、図7Aに示すように箱状成形体の底部と側壁部とがなす角度θが90°のときをα=0°とし、図7Bに示すように側壁部が内側に反っている場合を+θ°、底側に反っている場合を−θ°として求めた。その結果、得られた箱状成形体には、反り及び変形は認められず、反り角度αは0°であり、良好な成形性であった。
(実施例2)
織布に加えて、面密度200g/mのLLDPE樹脂製[メルトフローレイト(MFR)=8g/10分(190℃、21.18N)、融点=117℃]シートを片面に積層した以外は、前述した実施例1と同様の方法及び条件で、熱圧着ファブリックシートを作製した。得られた熱圧着ファブリックシートは、厚さ1.3mm、面密度865g/mであった。
次に、前述した方法で作製した熱圧着ファブリックシートを、織布側の面が金型の雄側に接するように設置し、実施例1と同様の方法及び条件で圧縮成形試験を行った。その結果、室温で24時間放置後の目視観察において、箱状成形体に反りや変形は認められず、反り角度αは0°であり、良好な成形性であった。
(実施例3)
織布に加えて、面密度200g/mのLLDPE樹脂製[メルトフローレイト(MFR)=8g/10分(190℃、21.18N)、融点=117℃]シートを介してPET樹脂製シートを片面に積層した以外は、前述した実施例1と同様の方法及び条件で、熱圧着ファブリックシートを作製した。得られた熱圧着ファブリックシートは、厚さ1.3mm、面密度865g/mであった。
次に、前述した方法で作製した熱圧着ファブリックシートを、織布側の面が金型の雄側に接するように設置し、実施例1と同様の方法及び条件で圧縮成形試験を行った。その結果、室温で24時間放置後の目視観察において、箱状成形体に反りや変形は認められず、反り角度αは0°であり、良好な成形性であった。
(実施例4)
実施例1と同様の方法で作製した織布を、加熱平板ホットプレスは行わずに3枚積層して、732g/m相当の面密度とし、実施例1と同様の方法及び条件で圧縮成形試験を行った。その結果、室温で24時間放置後の目視観察において、箱状成形体に反りや変形は認められず、反り角度αは0°であり、良好な成形性であった。
(実施例5)
複合繊維Bを2本合糸して3616dtexとした以外は、前述した実施例1と同様の方法及び条件で、平織織布を作製した。得られた織布の面密度は241g/mであった。この織布を用いて、前述した実施例1と同様の方法及び条件で、熱圧着ファブリックシートを作製した。得られた熱圧着ファブリックシートは、厚さ1.1mm、面密度670g/mであった。
次に、前述した方法で作製した熱圧着ファブリックシートを用いて、実施例1と同様の方法及び条件で圧縮成形試験を行った。その結果、室温で24時間放置後の目視観察において、箱状成形体に反りや変形は認められず、反り角度αは0°であり、良好な成形性であった。
(実施例6)
実施例5で作製した平織織布を使用し、実施例2と同様の方法及び条件で、熱圧着ファブリックシートを作製した。得られた熱圧着ファブリックシートは、厚さ1.3mm、面密度853g/mであった。次に、前述した方法で作製した熱圧着ファブリックシートを、織布側の面が金型の雄側に接するように設置し、実施例1と同様の方法及び条件で圧縮成形試験を行った。その結果、室温で24時間放置後の目視観察において、箱状成形体に反りや変形は認められず、反り角度αは0°であり、良好な成形性であった。
(実施例7)
実施例5と同様の方法で作製した織布を、加熱平板ホットプレスは行わずに3枚積層して、723g/m相当の面密度とし、実施例1と同様の方法及び条件で圧縮成形試験を行った。その結果、室温で24時間放置後の目視観察において、箱状成形体に反りや変形は認められず、反り角度αは0°であり、良好な成形性であった。
(実施例8)
複合繊維Fを2本合糸して3640dtexとした以外は、前述した実施例1と同様の方法及び条件で、平織織布を作製した。得られた織布の面密度は242g/mであった。この織布を用いて、前述した実施例1と同様の方法及び条件で、熱圧着ファブリックシートを作製した。得られた熱圧着ファブリックシートは、厚さ1.1mm、面密度681g/mであった。
次に、前述した方法で作製した熱圧着ファブリックシートを用いて、実施例1と同様の方法及び条件で圧縮成形試験を行った。その結果、室温で24時間放置後の目視観察において、箱状成形体に反りや変形は認められず、反り角度αは0°であり、良好な成形性であった。
(実施例9)
実施例8で作製した平織織布を使用し、実施例2と同様の方法及び条件で、熱圧着ファブリックシートを作製した。得られた熱圧着ファブリックシートは、厚さ1.3mm、面密度865g/mであった。次に、前述した方法で作製した熱圧着ファブリックシートを、織布側の面が金型の雄側に接するように設置し、実施例1と同様の方法及び条件で圧縮成形試験を行った。その結果、室温で24時間放置後の目視観察において、箱状成形体に反りや変形は認められず、反り角度αは0°であり、良好な成形性であった。
(実施例10)
実施例8で作製した平織織布を使用し、実施例3と同様の方法及び条件で、熱圧着ファブリックシートを作製した。得られた熱圧着ファブリックシートは、厚さ1.4mm、面密度916g/mであった。次に、前述した方法で作製した熱圧着ファブリックシートを、織布側の面が金型の雄側に接するように設置し、実施例1と同様の方法及び条件で圧縮成形試験を行った。その結果、室温で24時間放置後の目視観察において、箱状成形体に反りや変形は認められず、反り角度αは0°であり、良好な成形性であった。
(実施例11)
実施例8と同様の方法で作製した織布を、加熱平板ホットプレスは行わずに3枚積層して、732g/m相当の面密度とし、実施例1と同様の方法及び条件で圧縮成形試験を行った。その結果、室温で24時間放置後の目視観察において、箱状成形体に反りや変形は認められず、反り角度αは0°であり、良好な成形性であった。
(比較例1)
複合繊維Cを2本合糸し、3628dtexとした以外は、実施例1と同様の方法及び条件で平織織布を作製した。得られた織布の面密度は、242g/mであった。次に、この織布を使用して実施例1と同様の方法及び条件で、熱圧着ファブリックシートを作製した。得られた熱圧着ファブリックシートは、厚さ1.1mm、面密度670g/mであった。
次に、前述した方法で作製した熱圧着ファブリックシートについて、実施例1と同様の方法及び条件で圧縮成形試験を行った。その結果、得られた箱状成形体は、室温で24時間放置後の目視観察において、側壁面の内側への反りが認められ、反り角度αは+10°であった。また、比較例1の箱状成形体は、底部がコーナー部を中心に内側へ変形しており、実施例に比べて成形性が劣っていた。この底部の変形は、複合繊維Cは、芯材の結晶化度が52%と本発明の範囲よりも低かったため、成形時に更に延伸され、その際発生した歪が室温での放置に伴い徐々に緩和されて、特に雄側の金型に接していた繊維シートの収縮により、発生したものと推測される。
(比較例2)
織布に加えて、面密度200g/mのLLDPE樹脂製[メルトフローレイト(MFR)=8g/10分(190℃、21.18N)、融点=117℃]シートを片面に積層した以外は、前述した比較例1と同様の方法及び条件で、熱圧着ファブリックシートを作製した。得られた熱圧着ファブリックシートは、厚さ1.3mm、面密度856g/mであった。
次に、前述した方法で作製した熱圧着ファブリックシートを、織布側の面が金型の雄側に接するように設置し、実施例1と同様の方法及び条件で圧縮成形試験を行った。その結果、得られた箱状成形体は、室温で24時間放置後の目視観察において、側壁面に内側への非常に大きな反りが認められた。その反り角度αは+19°であり、比較例1の箱状成形体よりも更に反りが大きくなっていた。これは、複合繊維Cは、芯材の結晶化度が52%と本発明の範囲よりも低く、更に、樹脂製シートの融点近傍で成形を行ったため、無配向状態の樹脂製シートと、織布中の芯材(i−PP)との間に収縮差が発生し、この差により反りが大きくなったものと推察される。加えて、比較例2の箱状成形体は、実施例に比べて成形性が明らかに劣っていた。
(比較例3)
複合繊維Dを2本合糸して3640dtexとした以外は、実施例1と同様の方法及び条件で、平織織布を作製した。得られた織布の面密度は243g/mであった。次に、この織布を使用して実施例1と同様の方法及び条件で、熱圧着ファブリックシートを作製した。得られた熱圧着ファブリックシートは、厚さ1.1mm、面密度670g/mであった。
次に、前述した方法で作製した熱圧着ファブリックシートについて、実施例1と同様の方法及び条件で圧縮成形試験を行った。その結果、得られた箱状成形体は、室温で24時間放置後の目視観察において、少量であるが側壁面の内側への反りが認められ、その反り角度αは+2°であった。また、比較例3の箱状成形体は、底部がコーナー部を中心に内側に反っており、実施例に比べて成形性が劣っていた。この底部の変形の原因としては、複合繊維Dの芯材の結晶化度が58%と本発明の範囲よりも低かったためであると思われる。
(比較例4)
織布に加えて、面密度200g/mのLLDPE樹脂製[メルトフローレイト(MFR)=8g/10分(190℃、21.18N)、融点=117℃]シートを片面に積層した以外は、前述した比較例3と同様の方法及び条件で、熱圧着ファブリックシートを作製した。得られた熱圧着ファブリックシートは、厚さ1.3mm、面密度855g/mであった。
次に、前述した方法で作製した熱圧着ファブリックシートを、織布側の面が金型の雄側に接するように設置し、実施例1と同様の方法及び条件で圧縮成形試験を行った。その結果、得られた箱状成形体は、室温で24時間放置後の目視観察において、側壁面に内側への大きな反りが認められた。その反り角度αは+8°であり、比較例3の箱状成形体よりも更に反りが大きくなっていた。また、比較例4の箱状成形体は、実施例に比べて成形性が明らかに劣るものであった。
(比較例5)
複合繊維Eを2本合糸して3620dtexとした以外は、実施例1と同様の方法及び条件で平織織布を作製した。得られた織布の面密度は241g/mであった。次に、この織布を使用して実施例1と同様の方法及び条件で、熱圧着ファブリックシートを作製した。得られた熱圧着ファブリックシートは、厚さ1.1mm、面密度669g/mであった。
次に、前述した方法で作製した熱圧着ファブリックシートについて、実施例1と同様の方法及び条件で圧縮成形試験を行った。その結果、得られた箱状成形体は、室温で24時間放置後の目視観察において、少量であるが側壁面に内側への反りが認められ、その反り角度αは+4°であった。また、比較例5の箱状成形体は、底部がコーナー部を中心に内側に反っており、実施例に比べて成形性が劣っていた。
(比較例6)
織布に加えて、面密度200g/mのLLDPE樹脂製[メルトフローレイト(MFR)=8g/10分(190℃、21.18N)、融点=117℃]シートを片面に積層した以外は、前述した比較例5と同様の方法及び条件で、熱圧着ファブリックシートを作製した。得られた熱圧着ファブリックシートは、厚さ1.3mm、面密度853g/mであった。
次に、前述した方法で作製した熱圧着ファブリックシートを、織布側の面が金型の雄側に接するように設置し、実施例1と同様の方法及び条件で圧縮成形試験を行った。その結果、得られた箱状成形体は、室温で24時間放置後の目視観察において、側壁面に内側への大きな反りが認められた。その反り角度αは+9°であり、比較例5の場合より更に反りが大きくなっていた。また比較例6の箱状成形体は、実施例に比べて成形性が明らかに劣るものであった。
以上の結果を、下記表2及び表3にまとめて示す。
Figure 2015112784
Figure 2015112784
上記表2に示す実施例1〜11の熱圧着ファブリックシートを用いた箱状成形体は、上記表3に示す比較例1〜6の熱圧着ファブリックシートを用いた箱状成形体に比べて、反りの発生がなく、成形性にも優れていた。この結果から、本発明によれば、成形後に反りが発生しにくいファブリック強化樹脂成形体を製造できることが確認された。
1 芯材(島成分)
2 鞘材(海成分)
3 芯鞘型複合紡糸繊維(原糸)
10 複合繊維
11 ファブリック
12 シート材
13a,13b 金型
20 樹脂成形体

Claims (8)

  1. 2本以上の芯鞘型複合紡糸繊維を加熱延伸し、各繊維の鞘材を融合一体化することにより得られ、長手方向における断面が前記鞘材中に芯材が島状に存在する海島構造であり、示差走査熱量計を使用し、昇温速度を30℃/分として、融解熱量法により測定した前記芯材の結晶化度が60%以上である複合繊維により形成したファブリック又は前記ファブリックを用いたシート材を加熱する工程と、
    加熱したファブリック又はシート材を、金型を用いて、冷間にて、圧縮成形又は真空成形する工程と、
    を有するファブリック強化樹脂成形体の製造方法。
  2. 前記複合繊維は、前記鞘材が融点が130℃以下のポリオレフィン系樹脂であり、前記芯材が前記鞘材よりも融点が20℃以上高い結晶性熱可塑性樹脂である請求項1に記載のファブリック強化樹脂成形体の製造方法。
  3. 前記複合繊維は、120℃における引張りヤング率が7cN/dtex以上である請求項1又は2に記載のファブリック強化樹脂成形体の製造方法。
  4. 前記加熱する工程では、前記ファブリック又はシート材を、前記鞘材の融点以上かつ前記芯材の融点未満の温度にする請求項1〜3のいずれか1項に記載のファブリック強化樹脂成形体の製造方法。
  5. 前記シート材は、前記ファブリックを複数枚積層して前記鞘材が溶融する温度で熱圧着したものである請求項1〜4のいずれか1項に記載のファブリック強化樹脂成形体の製造方法。
  6. 前記シート材は、1又は2枚以上の前記ファブリックと、前記鞘材と同種の樹脂からなる樹脂シートとを積層し、前記鞘材が溶融する温度で熱圧着したものである請求項1〜4のいずれか1項に記載のファブリック強化樹脂成形体の製造方法。
  7. 前記ファブリックは、平織織布である請求項1〜6のいずれか1項に記載のファブリック強化樹脂成形体の製造方法。
  8. 2本以上の芯鞘型複合紡糸繊維を加熱延伸し、各繊維の鞘材を融合一体化することにより得られ、長手方向における断面が前記鞘材中に芯材が島状に存在する海島構造であり、示差走査熱量計を使用し、昇温速度を30℃/分として、融解熱量法により測定した前記芯材の結晶化度が60%以上である複合繊維により形成したファブリック又は前記ファブリックを用いたシート材を加熱した後、金型を用いて、冷間にて、圧縮成形又は真空成形して得たファブリック強化樹脂成形体。
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