JP2002179924A - 成形用材料の製造方法および成形品の製造方法 - Google Patents

成形用材料の製造方法および成形品の製造方法

Info

Publication number
JP2002179924A
JP2002179924A JP2000376381A JP2000376381A JP2002179924A JP 2002179924 A JP2002179924 A JP 2002179924A JP 2000376381 A JP2000376381 A JP 2000376381A JP 2000376381 A JP2000376381 A JP 2000376381A JP 2002179924 A JP2002179924 A JP 2002179924A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin
molding
molding material
conductor
treating agent
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000376381A
Other languages
English (en)
Inventor
Eisuke Wadahara
英輔 和田原
Soichi Ishibashi
壮一 石橋
Atsuki Tsuchiya
敦岐 土谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toray Industries Inc filed Critical Toray Industries Inc
Priority to JP2000376381A priority Critical patent/JP2002179924A/ja
Publication of JP2002179924A publication Critical patent/JP2002179924A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Injection Moulding Of Plastics Or The Like (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は、優れた導電性、成形性(成形時の流
動性、成形の容易さなど)を兼ね備えた成形用材料の製
造方法および成形品の製造方法を提供せんとするもので
ある。 【解決手段】本発明の成形用材料の製造方法は、導電体
の表面に処理剤を付着させて複合導電体を得た後、該複
合導電体と樹脂とを混合する際に、該樹脂として、該処
理剤0.5〜3重量%と該樹脂97〜99.5重量%と
を混合した場合に、該処理剤と該樹脂とが相溶せずに、
該処理剤が該樹脂によって被覆されて海/島構造を形成
する性質を有する樹脂を選択して使用することを特徴と
するものである。また、本発明の成形品の製造方法は、
かかる成形用材料を用いて成形することを特徴とするも
のである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れた導電性、成
形性(成形時の流動性、成形の容易さなど)を兼ね備え
ることができる成形用材料の製造方法および成形品の製
造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、樹脂に導電性材料(例えば炭
素繊維など)を配合することによって、所望の導電性を
有する樹脂組成物の提案が行われている。これに対して
近年、更に高い導電性を得るために、導電性材料の配合
量の増量、複数の導電性材料の併用、組成物のマトリッ
クス樹脂の形態制御、導電性材料の表面処理などの各種
試みが行われてきた。
【0003】前述の導電性材料の増量による高導電化に
おいては、組成物の高粘度化、衝撃強度などの力学的特
性の大幅な低下、更には得られた成形品の外観品位の低
下といった問題点が生じる場合がほとんどであった。
【0004】また、前述の複数の導電性材料の併用によ
る高導電化としては、導電性繊維とカーボンブラックと
を併用する技術が例として挙げられ、例えば特開昭59
−217395号公報、特公平3−44583号公報、
特開平6−240049号公報、特公平8−19256
号公報、特開平9−87417号公報などで提案されて
いる。しかし、これらの提案のいずれも、力学的特性の
低下、成形性(例えば成形時の流動性)の低下などの問
題が生じるため、高い導電性と成形性とを同時に満足さ
せるものではなかった。
【0005】更に、前述の組成物のマトリックス樹脂の
形態制御による高導電化としては、マトリックス樹脂と
して複数の樹脂を併用する技術が例として挙げられ、例
えば特開昭50−32240号公報、特開昭62−47
49号公報、特開昭63−207855号公報、特開平
1−263156号公報、特開平2−113068号公
報、特開平5−287143号公報、特開平8−127
68号公報などでは、海/島構造、海/海構造、三次元
網目構造などを形成したマトリックス樹脂のうち、海構
造または島構造を形成するマトリックス樹脂や一種のマ
トリックス樹脂に導電性材料を偏在化させることによ
り、見かけ上の導電性材料の配合量を増量することによ
る高導電化に関する記載がある。しかし、これらの提案
のいずれも、マトリックス樹脂の一種に導電性材料を偏
在化させることが必要であり、特に成形方法などの制限
といった問題点が存在する。更に、一種のマトリックス
樹脂に多量の導電性材料を偏在化させることによる材料
の不均一性、力学的特性の低下などの問題点が生じ、特
に微小領域における高い導電性、力学的特性、成形性
(成形の容易さ)を兼ね備えるものではなかった。
【0006】一方、前述の導電性材料の表面処理による
高導電化としては、各種繊維の表面に無電解メッキなど
により金属を被覆する技術が例として挙げられ、例えば
特開平1−271439号公報、特開平11−1171
79号公報などには、金属被覆した炭素繊維を使用する
旨の記載がある。しかし、この提案によっても、やはり
補強繊維と金属との接着強度も十分でないため、各種繊
維と金属とが剥離して、期待する導電性が得られないと
いった問題があった。
【0007】その他に、炭素繊維の表面に特定のサイジ
ング剤を付着させる技術も例として挙げられ、例えば特
開平3−26726号公報、特開平5−106164号
公報などには、サイジング剤への導電性材料の配合や、
サイジング剤そのものの導電性を良好にすることによ
り、サイジング剤自体をマトリックス樹脂より高導電化
することによる組成物を高導電化する旨の記載がある。
しかし、サイジング剤自体を樹脂のレベルである程度導
電化しても、樹脂よりも大幅に導電性に優れる導電性材
料を用いた成形品の場合にはその改善程度はごく微少で
あり、導電性に関しては満足できるものではなかった。
【0008】つまり、以上の提案によると、電磁波シー
ルド性を高く発現するレベルの高導電性を発現し、かつ
成形時の流動性や成形の容易さなどの成形性を満足でき
る成形品や成形用材料を得ることができないでいた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる従来
技術の背景に鑑み、優れた導電性、成形性(成形時の流
動性、成形の容易さなど)を兼ね備えることができる成
形用材料の製造方法および成形品の製造方法を提供せん
とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を
解決するために、次のような手段を採用するものであ
る。すなわち、本発明の成形用材料の製造方法は、導電
体の表面に処理剤を付着させて複合導電体を得た後、該
複合導電体と樹脂とを混合する際に、該樹脂として、該
処理剤0.5〜3重量%と該樹脂97〜99.5重量%
とを混合した場合に、該処理剤と該樹脂とが相溶せず
に、該処理剤が該樹脂によって被覆されて海/島構造を
形成する性質を有する樹脂を選択して使用することを特
徴とするものである。
【0011】また、本発明の成形品の製造方法は、かか
る成形用材料を用いて成形することを特徴とするもので
ある。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明は、前記課題、即ち、優れ
た導電性、成形性を兼ね備えることができる成形用材料
の製造方法について鋭意検討し、特定な条件を満たす処
理剤と樹脂を選択して用いて成形用材料をつくってみた
ところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したも
のである。
【0013】すなわち、本発明の成形用材料は、処理剤
と樹脂とが、下記条件を満たす性質を有するものである
ことが特徴である。
【0014】すなわち、該処理剤0.5〜3重量%と該
樹脂97〜99.5重量%とを混合させた場合に、該処
理剤と該樹脂とが相溶せずに、該処理剤が該樹脂によっ
て被覆されて海/島構造を形成する性質を有することが
必須条件である。
【0015】ここで、処理剤とは、付着させる対象物の
取り扱い性や、組み合わせる樹脂などとの親和性の向上
などの機能を対象物に付与するものを指し、本発明にお
いても、導電体の表面に付着させるものを総じて処理剤
と称する。しかし、一般的に処理剤は、特に成形品にお
ける力学的特性の面から、組み合わせる樹脂と高い親和
性を有する、即ち、処理剤と樹脂とのみからなる混合物
においては、両者が相溶して、海/島構造を形成せずに
一相構造を形成するものが殆どであった。
【0016】そこで本発明では、成形用材料または成形
品を製造するにあたり、処理剤と樹脂との親和性を特定
範囲まで低くしてみたところ、即ち、前記処理剤と樹脂
との組み合わせを選定する指標として、上述の必須条件
を採用してみたところ、本発明の課題を解決することを
見出した。
【0017】つまり、本発明の樹脂は、処理剤と樹脂と
のみからなる混合物において、処理剤が樹脂によって被
覆されて海/島構造(より具体的には、処理剤が島構造
を、樹脂が海構造を形成している構造)を形成する性質
を有するものである。なお、本発明における海/島構造
とは、一般的なポリマーアロイまたはポリマーブレンド
における海/島構造のように、その海部分の領域に複数
の島部分が形成される構造の他に、海部分が島部分を包
み込むように配置される構造も本発明の海/島構造に含
まれる。好ましい海/島構造の形態としては、樹脂中に
処理剤が分散した構造であり、その分散した構造が粒子
状である相溶形態が挙げられる。このように海/島構造
のうちの島構造が粒子状であることは、両者の表面エネ
ルギー差が大きいことを意味し、処理剤と樹脂との親和
性がより低いことを意味するため好ましい。
【0018】かかる処理剤と樹脂とのみの混合物を得る
際、樹脂が2種以上である場合は、その中で最も配合量
の多い樹脂で代表させてかかる混合物を得てもよい。ま
た、樹脂単独で既に海/島構造を形成している場合は、
その海構造に相当する樹脂で、樹脂で代表させてかかる
混合物を得てもよし、既に海/海構造を形成している場
合は、その何れでも、一方の樹脂をで代表させて掛かる
混合物を得てもよい。
【0019】前述の処理剤と樹脂とのみの混合物とは、
処理剤0.5〜3重量%と樹脂97〜99.5重量%と
を後述の混合方法により混合したものを、後述の成形方
法により、2〜5分間の成形可能温度における熱履歴を
与えた上で成形することにより得られたものを指す。こ
こで、処理剤の重量としては、処理剤が溶液中に分散し
たものである場合は、脱水または脱溶媒した後の処理剤
の純分のみの重量を指す。
【0020】かかる混合方法とは、例えば押出機や熱ロ
ールを用いた溶融法、溶媒などに樹脂と処理剤とを溶解
した後、脱溶媒するWet法、樹脂と処理剤の溶液から
脱水または脱溶媒して処理剤成分のみとしたものを粉末
にして混合するドライブレンド法などが挙げられる。ま
た、かかる成形方法とは、例えば射出成形、押出成形、
プレス成形、注入成形などが挙げられるが、何れの成形
法においても、成形する際には、少なくとも2〜5分
間、成形可能な温度における熱履歴を与える。本発明で
は、特にドライブレンド法にて混合し、成形時にせん断
力が十分付与できる射出成形にて、2分間の滞留時間を
与えて成形された混合物にて評価するのが好ましい。
【0021】前記の樹脂と処理剤とを混合した混合物に
おける処理剤の島構造(ドメイン)の平均ドメイン径は
0.1μm以上であることが好ましい。平均ドメイン径
が0.1μm未満の島構造(ドメイン)を形成できない
処理剤の場合、処理剤と樹脂との親和性がある程度ある
ことを意味し、本発明の課題である導電性が十分に発現
しない場合がある。より好ましい平均ドメイン径は、
0.3μm以上、更に好ましくは0.6μm以上、とり
わけ1μm以上である平均ドメイン径を有するのが好ま
しい。
【0022】上述の本発明の処理剤と樹脂とのみからな
る混合物が海/島構造を形成し、処理剤がその島構造で
ある場合に、本発明の課題を解決できる理由の詳細は未
だ定かではないが、現在のところは下述の様に推察され
る。つまり、成形品中において、絶縁体である処理剤が
導電体の表面に付着し、成形品となっても絶縁被膜を形
成し続けた状態である場合には導電性に劣るが、前記必
須条件を満たす処理剤と樹脂との組み合わせの場合に
は、成形の過程で導電体の表面から処理剤が樹脂中に分
散し、成形品中において導電体の表面に残存しないこと
により導電体を直接接触させ、その接触を阻害しないた
めに導電性に優れると推察される。
【0023】ここで、処理剤が存在しない場合が最も導
電性に優れるようにも考えられるが、実際にはそうでは
なく、処理剤として樹脂と同一のものを用いた場合は、
本発明の課題である導電性に優れた成形品を得ることが
できない。これは、処理剤を樹脂と同一なものとした場
合は、その溶融粘度の高さにより導電体の均一な分散性
に劣ることによると考えられる。ここで、前記必須条件
を満たす場合には、処理剤の方が樹脂よりも適度に低い
溶融粘度を有することを一般的には意味し、樹脂よりも
溶融粘度が適度に低いこのような処理剤が、導電体の均
一な分散に寄与していることが推察される。
【0024】つまり、本発明の課題を解決する処理剤と
は、樹脂との親和性および溶融粘度差が特定の範囲にあ
るものであり、本発明では、その親和性および溶融粘度
差を同時に代表させる指標として、処理剤と樹脂とのみ
の混合物における相溶形態を採用し、その混合物が海/
島構造を形成して、その島構造を形成する処理剤を導電
体の表面に付着させることにより本発明の課題を解決で
きることを見出したものである。即ち、本発明の処理剤
は、従来のように大量に配合される2種の樹脂による海
/島構造の一方に導電体を偏在化させることを利用した
のものとは技術的発想が根本的に異なる新しい指針に基
づく技術である。
【0025】かかる処理剤と樹脂とのみの混合物におけ
る海/島構造の形成、および島構造を形成した場合の平
均ドメイン径とは、下記手順にて行った観察、または測
定した値の数平均値とする。 (1)処理剤と樹脂とのみを上述の方法にて混合した混
合物から、任意に10面切り出す(または削り出す)。
ここで、切り出す(または削り出す)断面としては、前
記混合物を成形した際の樹脂の流れ方向に対して直行す
る断面であることが好ましい。即ち、同じドメイン径な
らば、前記流れ方向に対して直交する断面における測定
値を用いて定義されたドメイン径の方が、本発明の効果
がより好適に発揮される。かかる流れ方向とは、前記混
合物を成形した際の樹脂が最も長く流動した方向を指
す。 (2)前述の各断面を平滑に研磨する。ここで研磨する
際に水を用いると、処理剤が水溶性の場合は途中で脱落
する可能性があるので、できるだけ乾式研磨にて行うの
が好ましい。 (3)次いで、各断面を光学顕微鏡を用いて観察し、海
/島構造が形成されているかどうか観察する。特に光学
顕微鏡では海/島構造が不明瞭である場合には、位相差
顕微鏡、偏光顕微鏡、走査型または透過型電子顕微鏡を
用いて観察・測定することが好適である。なお、各種電
子顕微鏡を用いる場合には、重金属染色などにより処理
剤または樹脂の何れか一方のみを選択的に染色またはエ
ッチング後、観察するのがよい。選択的に染色する染色
剤としては、樹脂が二重結合を有するものにはオスミウ
ム酸(OsO4)が、ベンゼン環を有するものにはルテ
ニウム酸(RuO4)が、アミド基を有するものにはリ
ンタングステン酸(PTA)などが有効である場合が多
い。本発明では、クロロスルフォン酸など、その他の染
色剤や染料を適宜、単独または組み合わせて染色しても
よい。また、酸、アルカリ、溶媒、イオンなど各種エッ
チングする方法も有効で、染色剤または染料と組み合わ
せて用いるとより効果的である場合が多い。場合によっ
ては、破壊させた混合物の破壊面を走査型電子顕微鏡に
て観察することによっても海/島構造を観察することが
できるケースもある。なお、先の研磨にて処理剤が脱落
した場合には、その脱落により形成された穴またはくぼ
みを海/島構造の痕跡とし、その穴またはくぼみをドメ
インとする。 (4)前記断面内に島構造(ドメイン)が観察され、そ
のドメインが100個未満しか観察されない場合はそれ
らすべてのドメインを選択し、100個以上ドメインが
観察される場合は任意に100個のドメインを選択す
る。 (5)選択されたドメインについて、それぞれのドメイ
ン径を測定し、その数平均値を算出する。かかるドメイ
ン径とは、ドメイン内(一部でもドメイン外を通る直線
は対象外とする)での最大の直線距離のことを指す。
【0026】かかる処理剤と樹脂とのみの混合物に関す
る海/島構造の形成についての評価に供する処理剤や樹
脂としては、導電体に付着させる前の処理剤を用いて
も、導電体に処理剤を付着させたものから抽出した処理
剤を用いてもよいし、成形用材料または成形品にする前
の樹脂を用いても、成形用材料または成形品から抽出し
た樹脂を用いて評価してもよい。
【0027】導電体から処理剤を抽出して測定する場合
には、導電体が不溶で且つ処理剤が可溶な溶媒、例えば
クロロホルム、メタノール、塩化メチレン、メチルエチ
ルケトン、水などに処理剤が付着した導電体を浸漬する
(場合によっては更に加熱や振動付与する)ことにより
処理剤を抽出し、処理剤の溶解した溶液を脱溶媒または
脱水して上述の評価に供する。
【0028】成形用材料または成形品から樹脂を抽出し
て測定する場合には、導電体および処理剤が不溶で且つ
樹脂が可溶な溶媒、例えばo−クロロフェノール、蟻
酸、硫酸、塩化メチレン、四塩化炭素、テトラヒドロフ
ラン、ジオキサン、アセトニトリル、シクロヘキサノ
ン、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン、キシレ
ン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、水、それら
の混合物などに成形用材料または成形品を浸漬する(場
合によっては更に加熱や振動付与する)ことにより樹脂
を抽出し、樹脂の溶解した溶液を脱溶媒または脱水して
上述の評価に供する。
【0029】かかる処理剤は、導電体に対して0.05
〜20重量%の範囲で付着しているのが好ましい。これ
より少なくい場合でも、これより多い場合でも、優れた
導電性が得られにくく好ましくない。より好ましくは
0.1〜9重量%、更に好ましくは0.15〜3重量
%、とりわけ0.2〜1.5重量%の範囲が好ましい。
【0030】かかる導電体とその表面に付着した処理剤
からなる複合導電体は、成形用材料または成形品100
重量%中に、4〜50重量%の範囲で含有されることが
好ましい。かかる複合導電体が4重量%未満であると、
所望の導電性が得にくく、50重量%を越えると、成形
時の流動性が低下し、成形性に劣る。より好ましくは複
合導電体が8〜40重量%、更に望ましくは15〜30
重量%の範囲である。
【0031】本発明の処理剤としては、処理剤と樹脂と
のみの混合物において、前記必須条件を満たす処理剤が
含まれていれば特に制限はなく、前記必須条件を満たす
ものを単独で用いても、前記必須条件を満たさないもの
と併用して用いてもよい。
【0032】導電体への処理剤の付着を均一なものにす
るために、表面張力を低下させることが有効であるが、
そのために更に界面活性剤、有機溶媒、潤滑剤、消泡剤
などの表面張力低下剤を付与することができる。かかる
表面張力低下剤の付与方法としては、それらを予め導電
体に付与させた後に処理剤を付着させたり、処理剤の溶
液に表面張力低下剤の溶液を配合して処理剤と共に付着
させたりすることができる。
【0033】かかる界面活性剤とは、例えばアルキル硫
酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウ
ム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシア
ルキレンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンス
ルホン酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤や、ポ
リエチレングリコールやポリプロピレングリコール、ま
たはその共重合体などを含むポリアルキレングリコール
類、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエ
チレングリコールアルキルフェニルエーテルなどのノニ
オン系界面活性剤が挙げられ、その中でもポリアルキレ
ングリコール類(特にポリエチレングリコール)、ビス
フェノールAエチレンオキシド付加物などのノニオン系
界面活性剤が好ましい。
【0034】かかる有機溶媒とは、例えばメタノール、
エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルア
ルコール、イソブタノール、n−ブタノール、イソアミ
ルアルコールなどのアルコール類や、ジメチルホルムア
ルデヒド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラ
ン、ジオキサン、アセトニトリル、シクロヘキサノン、
メチルエチルケトン、アセトン、トルエン、キシレン、
酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル
アセテート、イソホロン、ブチルセロソルブなどが挙げ
られる。
【0035】かかる潤滑剤とは、例えばキャンディラワ
ックス、カルナウバワックス、木ロウなどの植物系、み
つろう、ラノリン、鯨ロウなどの動物系、モンタンワッ
クス、石油ワックスなどの鉱物系などのワックス、テト
ラエチレンペンタミンジステアレート、ブチルステアレ
ートなどの脂肪酸系滑剤などが挙げられる。
【0036】これら界面活性剤を使用する場合は、その
添加は少量で十分であり、導電体に対して0.01〜3
重量%または処理液に対して0.05〜6%の範囲が好
ましい。有機溶媒を使用する場合は、その添加量は処理
溶液に対して0.1〜40重量%の範囲が好ましい。潤
滑剤を使用する場合は、その添加は少量で十分であり、
導電体に対して0.01〜3重量%または処理液に対し
て0.05〜6%の範囲が好ましい。
【0037】また、本発明の導電体を用いた成形品に、
優れた力学的特性や高い集束性などを付与するために
は、導電体と樹脂との密着性・接着性を高くすること
や、導電体の集束能を高くすることが有効であるが、そ
のために更に、カップリング剤、接着性向上剤、集束剤
などを予め導電体に付与することができる。前記カップ
リング剤、接着性向上剤、集束剤などの付与方法として
は、それらを予め導電体に付与させた後に処理剤を付着
させたり、処理剤を導電体に付着させた後にそれらを付
着させたり、処理剤の溶液にそれらの溶液を混合して処
理剤と共に付着させたりすることができる。特に集束性
を付与する場合には、処理剤を付着させた後に集束剤を
付与すると、その効果が最大限に発現されるため好まし
い。
【0038】かかるカップリング剤としては、例えばシ
ランカップリング剤、アルミネートカップリング剤、チ
タネートカップリング剤などが挙げられ、かかる接着性
向上剤または集束剤としては、エポキシ系、ウレタン
系、エーテル系、エステル系、アミド系、アクリル系、
オレフィン系、ビニル系、スチレン系、フェノール系樹
脂、液晶性樹脂などが挙げられ、中でもエポキシ系、ウ
レタン系、エーテル系、エステル系、アミド系樹脂が好
ましい。
【0039】これらカップリング剤、接着性向上剤、集
束剤を付与する場合は、導電体に対して0.01〜20
重量%の範囲が好ましい。これより少なくても多くて
も、所望の効果が得られにくい。より好ましくは0.1
〜10重量%の範囲であり、更に好ましくは0.2〜6
重量%の範囲である。
【0040】本発明の処理剤、表面張力低下剤、カップ
リング剤、接着性向上剤、集束剤などは、溶媒または水
溶液または水エマルジョンまたはそれらの混合液による
溶液の状態にて導電体に接触または浸漬させ、その後に
水および/または溶媒を乾燥させることにより導電体に
付着してもよいが、作業環境の面から溶媒を含まない水
溶液または水系エマルジョン溶液を用いて導電体に付着
させるのが好ましい。なお、処理剤、表面張力低下剤、
カップリング剤、接着性向上剤、集束剤などの付着量
は、溶液の濃度により調整することができる。
【0041】また、本発明の処理剤は、導電体に付着さ
せる全ての付着物の総量に対して5重量%以上であるの
が好ましい。これより少なくい場合は、所望の導電性が
得られにくいため好ましくない。より好ましくは30重
量%以上、更に好ましくは60重量%以上、とりわけ8
0重量%以上であるのが好ましい。
【0042】本発明の導電体とは、導電性を有している
ものをいい、例えば金属(粒子状、フレーク状、リボン
状など)、金属酸化物(粒子状、ウィスカー状など)、
天然黒鉛や人造黒鉛やピッチマイクロビーズなどのグラ
ファイト(粒子状、膨張粒子状、鱗片状、繊維状な
ど)、カーボンブラックやアモルファスカーボンなどの
カーボン(粒子状、繊維状など)、導電性高分子など、
そのもの自体が導電性を有するものが挙げられる。ま
た、絶縁体、半導体、導電体の表面に導電体を被覆した
ものなどが挙げられ、かかる被覆される導電体とは、導
電性を有しているものを差し、例えば金属、金属酸化
物、グラファイト、カーボンなどが挙げられるが、その
中でも最も導電性の高い金属が好ましい。これら導電体
は単独で使用しても、2種類以上を併用しても、導電体
と絶縁体または半導体とを併用してもよい。本発明の導
電体は、これらの中でも、導電性、力学的特性、樹脂中
での分散性、コストなどのバランスから、導電性繊維お
よび/または導電性粉末の形態であるのが好ましい。
【0043】かかる導電性繊維とは、絶縁性繊維でない
繊維全般を指し、例えば炭素繊維、金属繊維(ステンレ
ス鋼繊維、銅繊維など)などの単独で導電性を示す繊維
の他に、絶縁性繊維であるガラス繊維、有機繊維(アラ
ミド繊維、PBO繊維、ポリフェニレンサルファイド繊
維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、
ポリエチレン繊維など)、無機繊維(シリコンカーバイ
ド繊維、シリコンナイトライド繊維など)や、導電性繊
維(金属繊維、炭素繊維)に導電体(金属、金属酸化物
など)を被覆した繊維も導電性繊維に含まれる。また、
前記導電性繊維を2種類以上併用することも、導電性繊
維とガラス繊維やアラミド繊維などの絶縁性繊維とを併
用することもできる。その中でも価格、力学的特性、導
電性、比重のバランスに優れる炭素繊維が好ましい。
【0044】これら導電性繊維は、平均単繊維直径が
0.01〜100μmの範囲である。平均単繊維直径が
0.01μm未満では、導電性繊維として製造すること
が困難になるだけでなく、所望の力学的特性を得られな
い場合がある。一方、平均単繊維直径が100μmを超
えると、特に所望の導電化を得ることができない場合が
ある。より好ましくは1〜50μm、更に好ましくは2
〜13μm、とりわけ4〜9μmの範囲であるのが好ま
しい。導電性繊維が後述の気相成長系炭素繊維では、ア
スペクト比が5〜1000の範囲であり、かつ平均単繊
維直径が0.01〜1μmの範囲、好ましくは0.1〜
0.5μmの範囲であると、その導電性付与効果が高い
ため好ましい。
【0045】本発明の炭素繊維とは、例えば、ポリアク
リロニトリル(PAN)系、ピッチ(等方性、メソフェ
ーズなど)系、セルロース(ビスコースレーヨン、酢酸
セルロースなど)系、気相成長(炭化水素など)系など
からつくられた炭素繊維や黒鉛繊維、それらをニッケ
ル、イッテルビウム、金、銀、銅などの金属を、メッキ
法(電解、無電解)、CVD法、PVD法、イオンプレ
ーティング法、蒸着法などにより少なくとも1層以上被
覆して構成された金属被覆炭素繊維や、これらを2種類
以上ブレンドして構成されたものを指す。かかる炭素繊
維としては、強度と弾性率などの力学的特性と価格との
バランスに優れるPAN系炭素繊維および/または高い
導電性を有する気相成長系炭素繊維が好ましい。
【0046】ここで、気相成長系炭素繊維とは、気相で
結晶を成長させる製造方法により得られる一般的には不
連続な炭素繊維、黒鉛繊維、ナノチューブを指し、針状
やコイル状やチューブ状の形態など任意の形態をとるこ
とができる。かかる製造方法としては、例えば特開平5
−221622号公報などに開示されているように、ベ
ンゼン、メタン、一酸化炭素などの炭素化合物と、触媒
であるフェロセン、メタロセンなどの鉄系、ニッケル系
の有機遷移金属化合物とを水素などのキャリアガス中で
焼成(一般的には800〜1300℃)する方法が挙げ
られる。
【0047】本発明のチョップド導電性繊維は、上記の
導電性繊維を1〜26mmの範囲で切断されていること
が好ましい。チョップド導電性繊維が1mm未満である
と、切断時に集束させた導電性繊維が開繊しやすくな
り、毛羽・毛玉が発生し、チョップド導電性繊維として
集束性に問題を有する場合がある。また26mmを超え
ると、樹脂と混練する際、押出機供給口(ホッパー、供
給配管など)で詰まったり、ブリッジしやすくなり、押
出機への供給に問題を有する場合がある。より好ましい
切断長さは2〜13mm、更に好ましくは3〜10mm
の範囲である。
【0048】本発明の樹脂としては、熱硬化性樹脂およ
び熱可塑性樹脂のどちらも使用することができるが、熱
可塑性樹脂である場合、得られた成形品の衝撃強度に優
れ、かつ成形効率の高いプレス成形や射出成形が可能で
あるため好ましい。
【0049】かかる熱硬化性樹脂としては、例えば、不
飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノ
ール(レゾール型)、ユリア・メラミン、ポリイミド等
や、これらの共重合体、変性体、および、2種類以上ブ
レンドした樹脂などを使用することができる。また、更
に耐衝撃性向上のために、上記熱硬化性樹脂にエラスト
マーもしくはゴム成分を添加した樹脂であってもよい。
【0050】かかる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポ
リエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテ
レフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレ
ート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PE
N)、液晶ポリエステル等のポリエステルや、ポリエチ
レン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン
等のポリオレフィンや、スチレン系樹脂の他や、ポリオ
キシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカ
ーボネート(PC)、ポリメチレンメタクリレート(P
MMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレン
スルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PP
E)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PA
I)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン
(PSU)、ポリエーテルスルホン、ポリケトン(P
K)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエ
ーテルケトン(PEEK)、ポリアリレート(PA
R)、ポリエーテルニトリル(PEN)、フェノール
(ノボラック型など)フェノキシ樹脂、フッ素樹脂、更
にポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン
系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン
系、ポリイソプレン系、フッ素系等の熱可塑エラストマ
ー等や、これらの共重合体、変性体、および2種類以上
ブレンドした樹脂などであってもよい。また、更に耐衝
撃性向上のために、上記熱可塑性樹脂にその他のエラス
トマーもしくはゴム成分を添加した樹脂であってもよ
い。
【0051】本発明における樹脂としては、スチレン系
樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル
樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニ
レンスルフィド樹脂、ポリオレフィン樹脂、液晶性樹脂
およびフェノール系樹脂から選ばれる少なくとも1種の
熱可塑性樹脂がより好ましい。
【0052】本発明の熱可塑性樹脂としては、結晶性の
熱可塑性樹脂(以下、結晶性樹脂と記す)よりも、非晶
性の熱可塑性樹脂(以下、非晶性樹脂と記す)の方が本
発明の効果を最大限に利用できる場合が多い。一般的に
非晶性樹脂は、結晶性樹脂より寸法安定性に優れ、耐衝
撃性にも優れるが、溶融粘度が高いため、優れた導電性
を得るために必要な量の導電体を単に配合すると、成形
性だけでなくコスト、比重にも著しく劣るのが一般的で
あった。しかし、熱可塑性樹脂として非晶性樹脂を使用
した場合でも、本発明の複合導電体を用いることによ
り、導電体の配合量を低減することができ、上記の成形
性の問題を大幅に改善することができるだけでなく、コ
スト、比重をも改善でき、本発明の効果が最大限に発現
される。
【0053】前記非晶性樹脂としては、スチレン系樹
脂、ポリカーボネート樹脂およびポリフェニレンエーテ
ル樹脂の少なくとも1種類が配合されていることが好ま
しい。
【0054】かかるスチレン系樹脂とは、スチレンおよ
び/またはその誘導体(これらを総称して芳香族ビニル
系単量体と称する場合がある)から生成した単位を含有
する。
【0055】かかるスチレン系樹脂としては、スチレン
系(共)重合体、ゴム強化スチレン(共)重合体が挙げ
られる。スチレン系(共)重合体としては芳香族ビニル
系単量体の1種または2種以上を重合した重合体、芳香
族ビニル系単量体の1種または2種以上とそれと共重合
可能な単量体の1種または2種以上を共重合した共重合
体が挙げられる。また、ゴム強化スチレン(共)重合体
としては、スチレン単量体を含有する(共)重合体がゴ
ム質重合体にグラフトした構造をとるものと、スチレン
単量体を含有する(共)重合体がゴム質重合体に非グラ
フトした構造をとるものとが挙げられる。
【0056】本発明において好ましいスチレン系樹脂と
しては、PS(ポリスチレン)等のスチレン系重合体、
HIPS(高衝撃ポリスチレン)等のゴム強化スチレン
系重合体、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合
体)等のスチレン系共重合体、AES(アクリロニトリ
ル/エチレン・プロピレン・非共役ジエンゴム/スチレ
ン共重合体)、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン
/スチレン共重合体)、MBS(メタクリル酸メチル/
ブタジエン/スチレン共重合体)、ASA(アクリロニ
トリル/スチレン/アクリルゴム共重合体)などのゴム
強化(共)重合体等が挙げられ、なかでも特にPS(ポ
リスチレン)等のスチレン系重合体、AS(アクリロニ
トリル/スチレン共重合体)等のスチレン系共重合体、
ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重
合体)、ASA(アクリロニトリル/スチレン/アクリ
ルゴム共重合体)が好ましい。
【0057】これら非晶性樹脂は2種以上を併用しても
よく、具体的には、ABS樹脂またはASA樹脂または
AS樹脂とPC樹脂との組み合わせ、PPE樹脂とPS
樹脂またはHIPS樹脂との組み合わせ、PC樹脂とP
S樹脂またはHIPS樹脂との組み合わせなどの例を好
ましく挙げることができる。
【0058】また、その他の特性、例えば耐薬品性、成
形時の流動性などを付与させるために、これら非晶性樹
脂、または2種類以上の非晶性樹脂を併用したものの一
部(通常、樹脂成分の70重量%以下、好ましくは60
重量%以下、特に好ましくは50重量%以下)を結晶性
樹脂に置き換えることが可能である。このような結晶性
樹脂としては、例えばポリアミド樹脂、ポリエステル樹
脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオレフィン樹
脂、液晶性樹脂などが挙げられ、具体的には、PC樹脂
またはPC樹脂とABS樹脂との組み合わせまたはPC
樹脂とASA樹脂との組み合わせとPBT樹脂および/
またはPET樹脂との組み合わせ、ABS樹脂とポリア
ミド樹脂との組み合わせ、PC樹脂とポリアミド樹脂と
の組み合わせ、PC樹脂またはPC樹脂とABS樹脂と
の組み合わせまたはPC樹脂とASA樹脂との組み合わ
せと液晶性樹脂との組み合わせ、PPE樹脂とポリアミ
ド樹脂との組み合わせ、PPE樹脂とPS樹脂またはH
IPS樹脂との組み合わせと液晶性樹脂との組み合わせ
などの例を好ましく挙げることができる。
【0059】一方、結晶性樹脂を使用した場合にも、本
発明の複合導電体の更なる分散性向上と、成形用材料の
更なる生産性の向上を達成することができる。前記結晶
性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、
ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオレフィン樹脂、
液晶性樹脂、フェノール樹脂の少なくとも1種類が配合
されていることが好ましい。これら結晶性樹脂は2種以
上を併用してもよく、具体的には、ポリアミド樹脂と液
晶性樹脂との組み合わせ、ポリエステル樹脂と液晶性樹
脂との組み合わせ、ポリプロピレン樹脂と液晶性樹脂と
の組み合わせなどの例を好ましく挙げることができる。
本発明における結晶性の熱可塑性樹脂として、特に好ま
しくは導電体との界面接着性の面から、ポリアミド樹
脂、ポリエステル樹脂を使用するのがよい。
【0060】ここで、高い難燃性を成形品に付与する場
合には、上述の樹脂等にフェノール系樹脂を配合するの
が好ましい。かかるフェノール系樹脂とは、少なくとも
フェノール性水酸基を有する成分を単独もしくは共重合
されたものを指し、例えば各種フェノール樹脂(フェノ
ールノボラック、クレゾールノボラック、オクチルフェ
ノール、フェニルフェノール、ナフトールノボラック、
フェノールアラルキル、ナフトールアラルキル、フェノ
ールレゾールなど)や変性フェノール樹脂(アルキルベ
ンゼン変性(特にキシレン変性)、カシュー変性、テル
ペン変性など)などが挙げられる。好ましいフェノール
系重合体としては、フェノールノボラック樹脂、フェノ
ールアラルキル樹脂などが挙げられる。
【0061】本発明における処理剤と樹脂との好ましい
組み合わせとしては、例えば、それぞれ下記A郡と下記
B郡とから選ばれるものが挙げられる。
【0062】(A郡)飽和ポリエステル系樹脂、ポリエ
ーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂から選ばれる少なくと
も1種の熱可塑性樹脂 (B郡)スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ
フェニレンエーテル樹脂から選ばれる少なくとも1種の
熱可塑性樹脂 これらの組み合わせによると、上述の条件(1)を満た
しやすく、本発明の課題である優れた導電性が発現しや
すいため好ましい。
【0063】処理剤としてのかかる飽和ポリエステル系
樹脂とは、例えば実質的に多塩基酸と多価アルコールと
の重縮合物、環状ラクトンの開環重合物、ヒドロキシカ
ルボン酸の重縮合物、二塩基酸とグリコールとの重縮合
物、これらの共重合体や混合物などが挙げられる。処理
剤としての本発明の飽和ポリエステル系樹脂は、その中
でもジカルボン酸とグリコールとの重縮合物であるのが
好ましく、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イ
ソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸およびそれらの誘
導体から選ばれる少なくとも1種を含むジカルボン酸
と、グリコール成分として、エチレングリコール、プロ
ピレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブタン
ジオールおよびそれらの誘導体から選ばれる少なくとも
1種を含むグリコールとの重縮合物が好ましい。とりわ
け、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボ
ン酸、それらの誘導体から選ばれる少なくとも1種を含
むジカルボン酸と、エチレングリコールおよびその誘導
体から選ばれる少なくとも1種を含むグリコールとの重
縮合物が好ましい。特にジカルボン酸成分の30mol
%以上(より好ましくは50mol%以上、更に好まし
くは70mol%以上)がテレフタル酸および/または
イソフタル酸であるのが好ましく、グリコール成分の3
0mol%以上(より好ましくは50mol%以上、更
に好ましくは70mol%以上)がエチレングリコール
であり、3価以上のアルコール成分を用いる場合には7
0mol%以下(より好ましくは30mol%以下、更
に好ましくは0mol%)であるのが好ましい。
【0064】これらの飽和ポリエステル系樹脂を処理剤
として用いる場合、導電体への付与プロセス上、完全水
溶性、部分水溶性、溶媒可溶性ポリエステル系樹脂のい
ずれかであるのが好ましい。なお、ここでいう溶媒と
は、例えばイソプロピルアルコール、ブチルセロソル
ブ、シクロヘキサノン、イソホロンなどが代表的な例と
して挙げられ、それらの混合物、それら以外の溶媒との
混合物、それらと水との混合物も含まれる。
【0065】その中でも、特に作業環境上から完全水溶
性ポリエステル系樹脂であるのが好ましい。かかる完全
水溶性ポリエステル樹脂としては、分子鎖中または末端
基にポリアルキレンオキシド鎖、スルホン酸基またはそ
の塩、カルボキシル基またはその塩、アミノ基またはそ
の塩などを導入することにより達成でき、その中でもス
ルホン酸基またはその塩の導入が本発明の効果を最大限
に発現できるため好ましく、その塩としてはアルカリ金
属塩が好ましい。
【0066】かかる飽和ポリエステル系樹脂の重合度に
関しては特に制限はないが、上述のようにある程度の流
動性を有することにより導電体の均一な分散が達成で
き、且つ成形温度においても著しい分解が発生せずに、
変性した処理剤が導電体の表面に絶縁被膜を形成しにく
いものがよく、還元粘度ηsp/Cが0.3〜2の範囲
である飽和ポリエステル系樹脂が好ましい。より好まし
くはηsp/Cが0.4〜1.2、更に好ましくは0.
45〜0.9、とりわけηsp/C0.5〜0.7の範
囲である飽和ポリエステル系樹脂が好ましい。なお、還
元粘度ηsp/Cとは、絶乾状態の飽和ポリエステル系
樹脂を、フェノール/テトラクロロエタン=6:4の混
合溶媒にて溶液濃度C=0.4g/100mlになるよ
うに溶かした試料溶液について、30℃の恒温槽内でウ
ベローデ型粘度計で2つの標線間を流れる秒数を測定
し、フェノール/テトラクロロエタン6:4の混合溶媒
に対する前記試料溶液の秒数比で表される相対粘度ηr
elから1を減じた比粘度ηspを溶液粘度C(=0.
4)で除した値を指す。
【0067】処理剤としてのかかるポリエーテル系樹脂
とは、その分子鎖中にエーテル構造を有する樹脂を指
し、その分子鎖中にポリアルキレンオキシド構造を有す
る樹脂を代表例として挙げることができる。このような
ポリエーテル系樹脂としては、例えば、少なくとも数平
均分子量200〜6000のポリ(アルキレンオキシ
ド)グリコールおよびそれらの誘導体を前駆体として重
合したものが用いられる。かかるポリ(アルキレンオキ
シド)グリコールの誘導体としては、ポリ(アルキレン
オキシド)グリコールの両末端をジアミンまたはジカル
ボン酸に変性したものなどを使用することができる。但
し、かかるポリ(アルキレンオキシド)グリコール誘導
体としては、グリシジル化およびイソシアネート化ポリ
アルキレンオキシド誘導体は含まないのがよい。前記グ
リシジル化およびイソシアネート化ポリアルキレンオキ
シド誘導体を含むものを重合して処理剤とし、導電体に
付着させた後、樹脂と組み合わせて成形用材料または成
形品とした場合、そのグリシジル基の開環反応に起因す
ると考えられる導電体表面での絶縁性膜の形成や、樹脂
の分解、分子量低下または成形時の増粘などの成形性の
低下が懸念される。同様の理由で、かかるポリエーテル
系樹脂は、架橋剤などにて架橋されていないのが好まし
く、本発明のポリエーテル系樹脂と、エポキシ樹脂、メ
ラミン樹脂、イソシアネート樹脂、ユリア樹脂などの架
橋剤とを混合しないのがよい。また、ポリエーテル系樹
脂の前駆体として、グリシジル成分、イソシアネート成
分、尿素成分などの架橋性のものを含まないのがよい。
【0068】また、前記アルキレンオキシド構造を有す
るポリエーテル系樹脂としては、前駆体としてポリ(ア
ルキレンオキシド)グリコールおよびそれらの誘導体の
他にも、更に炭素原子数6以上のアミノカルボン酸また
はラクタムもしくは炭素原子数6以上のジアミンとジカ
ルボン酸の塩(好ましくは、カプロラクタム、12アミ
ノドデカン酸、ヘキサメチレンジアミン−アジピン酸
塩)、および/または炭素原子数4〜20のジカルボン
酸(好ましくは、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4
−シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、アジピン
酸、ドデカンジカルボン酸)、および/または炭素原子
数4〜20のジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミ
ンなどの脂肪族、パラアミノシクロヘキシルメタンなど
の脂環族、メタキシリレンジアミンなどの芳香族のジア
ミン)を前駆体とするのがよく、中でもカプロラクタ
ム、炭素原子数6〜12のジアミンが好ましく用いられ
る。
【0069】処理剤としてのかかるポリアミド系樹脂と
は、例えばアミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカ
ルボン酸を主たる原料とした重合体、それらの共重合体
や混合物などが挙げられる これらのポリアミド系樹脂
を処理剤として用いる場合、導電体への付与プロセス
上、アルコール可溶性、完全水溶性、部分水溶性ポリア
ミド樹脂のいずれかであるのが好ましい。
【0070】かかるアルコール可溶性ポリアミドとして
は、例えばナイロン6/66/610、ナイロン6/6
6/612、ナイロン6/66/610/12コポリマ
ー、アミド基中の水素をメトキシメチル基などで置換さ
れたナイロン8などが代表的な例として挙げられ、特に
アルコールに溶解させた場合の溶液安定性に優れるナイ
ロン6/66/612、ナイロン6/66/610/1
2コポリマー、ナイロン8が好ましい。なお、ここでい
うアルコールとは、例えばメタノール、エタノール、
(イソ)プロパノール、(イソ)ブタノールなどが代表
的な例として挙げられ、それらの混合物、それら以外の
有機溶媒との混合物、それらと水との混合物も含まれ
る。
【0071】処理剤としてポリアミド系樹脂を用いる場
合、特に作業環境上から、完全水溶性ポリアミド系樹脂
であるのが好ましい。かかる完全水溶性ポリアミド系樹
脂としては、分子鎖中にアルキレンオキシド成分や第3
級アミン成分を含有するポリアミド系樹脂などが代表的
な例として挙げられる。ポリアルキレンオキシド成分を
ポリアミド系樹脂の分子鎖中に導入するものとしては、
例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコ
ールなどの一部ををジアミンまたはジカルボン酸に変性
して共重合したもの等が挙げられる。第3級アミンをポ
リアミド系樹脂の分子鎖中に導入するものとしては、主
鎖に導入する場合には例えばアミノエチルピペラジン、
ビスアミノプロピルピペラジンが、側鎖に導入する場合
には例えばα−ジメチルアミノε−カプロラクタムが挙
げられる。これらの中でもポリアミド系樹脂の分子鎖中
にポリアルキレンオキシド成分を含有し、且つ第3級ア
ミン成分を含有しない完全水溶性ポリアミド系樹脂が本
発明の効果を最大限に発現できるため好ましい。第3級
アミン成分を含有する完全水溶性ポリアミド系樹脂であ
る場合、成形品を成形する温度での流動性が十分でな
く、導電体の均一な分散が達成できない場合がある。
【0072】かかるポリアミド系樹脂の重合度に関して
は特に制限はないが、上述のようにある程度の流動性を
有することにより導電体の均一な分散が達成でき、且つ
成形温度においても著しい分解が発生せずに、変性した
処理剤が導電体の表面に絶縁被膜を形成しにくいものが
よく、硫酸相対粘度ηrが2〜3.5の範囲であるポリ
アミド樹脂が好ましい。より好ましくはηrが2.2〜
3.2、更に好ましくはηrが2.3〜3、とりわけ、
ηrが2.4〜2.8の範囲であるのが好ましい。な
お、硫酸相対粘度ηrは、98%硫酸で溶液濃度が1g
/100mlになるように溶かした後、25℃の恒温槽
内でオストワルド粘度計で流下速度を測定し、98%硫
酸に対する試料溶液の流下秒数比を指す。
【0073】前述の飽和ポリエステル系樹脂の還元粘度
ηsp/Cまたはポリアミド系樹脂の硫酸相対粘度ηr
は、導電体に付着させる前の処理剤から測定してもよい
し、導電体に処理剤を付着させた後に抽出した処理剤か
ら測定してもよい。
【0074】本発明における成形用材料または成形品
は、高い難燃性を得るために更に難燃剤を含有していて
もよい。ここで難燃剤とは、ハロゲン化合物、アンチモ
ン化合物の少なくとも1種、または非ハロゲン系である
リン化合物、窒素化合物、シリコーン化合物、フッ素化
合物、金属水酸化物の少なくとも1種である。
【0075】本発明で使用されるリン化合物とは、リン
を含有する有機または無機化合物であれば特に制限はな
く、例えばポリリン酸アンモニウム、ポリホスファゼ
ン、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホ
スフィンオキシド、赤リンなどが挙げられ、これらを単
独で用いても併用してもよい。中でもポリリン酸アンモ
ニウム、芳香族ホスフェート、赤リンが好ましい。リン
化合物の中でもリン原子の含有量が高いことにより少量
の添加量で高い難燃性を得られる赤リンがとりわけ好ま
しい。
【0076】本発明の成形用材料または成形品は、その
目的に応じて更に充填材(マイカ、タルク、カオリン、
セリサイト、ベントナイト、ゾノトライト、セピオライ
ト、スメクタイト、モンモリロナイト、ワラステナイ
ト、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフ
レーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリ
ブデン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、ポリ
リン酸カルシウム、グラファイト、硫酸バリウム、硫酸
マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸亜カルシウム、ホウ
酸アルミニウムウィスカ、チタン酸カリウムウィスカ、
高分子など)、導電性付与材(金属系、金属酸化物系な
ど)、難燃剤(ハロゲン系(臭素化樹脂など)、アンチ
モン系(三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなど)、
リン系、有機酸金属塩系(有ホウ酸金属塩、カルボン酸
金属塩、芳香族スルホンイミド金属塩など)、無機系
(硼酸亜鉛、亜鉛、酸化亜鉛、ジルコニウム化合物な
ど)、窒素系(シアヌル酸、イソシアヌル酸、メラミ
ン、メラミンシアヌレート、メラミンホスフェート、窒
素化グアニジンなど)、フッ素系(PTFEなど)、シ
リコーン系(ポリオルガノシロキサンなど)、金属水酸
化物系(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムな
ど)など)、難燃助剤(酸化カドミウム、酸化亜鉛、酸
化第一銅、酸化第二銅、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化
コバルト、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化スズお
よび酸化チタンなど)、顔料、染料、滑剤、離型剤、相
溶化剤、分散剤、結晶核剤(マイカ、タルク、カオリン
など)、可塑剤(リン酸エステルなど)、熱安定剤、酸
化防止剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、流動性改質剤、
発泡剤、抗菌剤、制振剤、防臭剤、摺動性改質剤、帯電
防止剤(ポリエーテルエステルアミドなど)等の任意の
添加剤を、単独でも、2種類以上ブレンドしたものでも
使用することができる。
【0077】本発明の成形用材料は、例えば射出成形
(射出圧縮成形、ガスアシスト射出成形、インサート成
形など)、ブロー成形、回転成形、押出成形、プレス成
形、トランスファー成形(RTM成形、RIM成形、S
CRIMP成形)、フィラメントワインディング成形、
オートクレーブ成形、ハンドレイアップ成形などの成形
方法によって成形されて成形品を提供することができる
が、最も望ましい成形法は、生産性の高い射出成形によ
り成形するのがよい。かかる成形に用いられる成形用材
料の形態としては、ペレット、スタンパブルシート、プ
リプレグ、SMC、BMC等を使用することができる
が、最も望ましい成形用材料は、射出成形に用いられる
ペレットである。前記ペレットは、一般的には、所望量
の樹脂と導電体である粒子、ウィスカー、繊維のチョッ
プド糸、もしくは連続繊維を押出機中で混練し、押出、
ペレタイズすることによって得られたものを指す。特に
導電体として導電性繊維を用いた場合、前述のペレット
は、ペレットの長手方向の長さより、ペレット中の繊維
長さの方が短くなるが、本発明でいうペレットには、長
繊維ペレットも含まれる。長繊維ペレットとは、特公昭
63−37694号公報に示されるような、繊維がペレ
ットの長手方向に、ほぼ平行に配列し、ペレット中の繊
維長さが、ペレット長さと同一もしくはそれ以上である
ものを指す。この場合、樹脂は繊維束中に含浸されてい
ても、繊維束に被覆されていてもよい。特に樹脂が被覆
された長繊維ペレットの場合、繊維束には被覆されたも
のと同じか、あるいは被覆された樹脂よりも低粘度(も
しくは低分子量)の樹脂が、予め含浸されていてもよ
い。
【0078】本発明の成形用材料からなる成形品が、優
れた導電性、力学的特性を兼ね備えるためには、成形品
中の導電体のアスペクト比を長くすることが有効である
が、そのためには、特に導電体として導電性繊維を用い
た場合、前述のペレットの中でも長繊維ペレットを用い
て成形するのが望ましい。
【0079】本発明における成形品は、優れた導電性を
付与できるため、体積固有抵抗値が50Ω・cm以下で
ある成形品として用いられるのが好ましい。成形品とし
ては、その体積固有抵抗値が50Ω・cmを越える場
合、電磁波シールド材等の用途には適応しにくく、用途
が限定される場合がある。本発明の成形用材料より得ら
れる成形品は、その体積固有抵抗値が、望ましくは50
Ω・cm以下であるものがよい。好ましくは30Ω・c
m以下、更に好ましくは10Ω・cm以下、とりわけ2
Ω・cm以下が好ましい。
【0080】また、本発明における成形品は、優れた導
電性を付与できるため、表面抵抗値が6logΩ/□以
下である成形品として用いられるのが好ましい。成形品
としては、その表面抵抗値が6logΩ/□を越える場
合、帯電防止材等の用途には適応しにくく、用途が限定
される場合がある。本発明の成形用材料より得られる成
形品は、その表面抵抗値が、望ましくは5logΩ/□
以下であるものがよい。好ましくは4logΩ/□以
下、更に好ましくは3logΩ/□以下、とりわけ2l
ogΩ/□以下が好ましい。
【0081】更に、本発明における成形品は、優れた導
電性を付与できるため、1GHzにおける電界シールド
性が17dB以上である成形品として用いられるのが好
ましい。成形品としては、その電界シールド性が17d
B未満の場合、電磁波シールド材等の用途には適応しに
くく、用途が限定される場合がある。本発明の成形用材
料より得られる成形品は、その電界シールド性が、望ま
しくは1GHzにおいて19dB以上であるものがよ
い。好ましくは1GHzにおいて22dB以上、更に好
ましくは24dB以上、とりわけ29dB以上が好まし
い。
【0082】前述の体積固有抵抗値、表面抵抗値、およ
び電界シールド性など導電性が必要な成形品において、
成形品の導電性と原料コスト低減とを同時に満足させる
ためには、成形品において、導電体の添加量を低く抑え
るのが好ましいが、その場合は導電性が低下する。その
場合でも、導電性繊維とカーボン粉末および/またはグ
ラファイト粉末とを併用することにより、効率のよい導
電化が達成されることから、特に優れた導電性が必要な
場合には、導電性繊維とカーボン粉末および/またはグ
ラファイト粉末とを併用することが好ましい。
【0083】本発明における成形品は、優れた導電性だ
けではなく、難燃剤を配合した場合には高い難燃性(特
にドリップ防止性)を付与できるため、UL−94規格
において、1.6mm(1/16インチ)厚での難燃性
がV−0またはそれより良好なものが得られる成形品と
して用いられるのが好ましい。
【0084】ここで、V−0の難燃性とは、UL−94
規格(UnderwritersLaboratori
es Inc.で考案された米国燃焼試験法)におい
て、燃焼時間やその状態、延焼の有無、滴下(ドリッ
プ)の有無やその滴下物の燃焼性などにより規定されて
いるV−0の条件を満たした難燃性を指す。また、V−
0よりも良好な難燃性とは、前記V−0クラスにおける
規定値よりも更に少ない燃焼時間を示す難燃性や、試験
片の厚みがより薄い場合においてV−0の規定条件を満
たす難燃性を指す。
【0085】本発明における成形品の用途としては、優
れた導電性、力学的特性(特に剛性)が求められる電子
・電気機器用、OA機器用、精密機器用、自動車用の部
材、例えばハウジング、ケーシング、カバー、トレーな
どが好ましい例として挙げられ、特に軽量化と電磁波シ
ールド性の要求が高い携帯用の電子・電気機器のハウジ
ングなどがとりわけ好ましい例として挙げられる。より
具体的には、大型ディスプレイ、ノート型パソコン、携
帯用電話機、PHS、PDA(電子手帳などの携帯情報
端末)、ビデオカメラ、ビデオカメラ、デジタルスチル
カメラ、携帯用ラジオカセット再生機、インバーターな
どのハウジング、ケーシングなどである。
【0086】また、優れた導電性を有しているため、導
電体の少量添加で帯電/放電防止性を付与することがで
き、それらの特性が必要とされる部材、例えばICトレ
ー、シリコンウェーハー運搬用バスケットなどへの適応
にも有用である。
【0087】
【実施例】以下、実施例によって本発明を更に詳細に説
明するが、下記実施例は本発明を制限するものではな
く、前・後記の主旨を逸脱しない範囲で変更実施するこ
とは、全て本発明の技術範囲に包含される。
【0088】本発明の処理剤と樹脂とのみの混合物に関
する評価項目およびその方法を下記する。 (1)混合物の形態とそのドメイン径 樹脂97.5重量%と処理剤(場合によっては、処理剤
の溶液から脱水または脱溶媒して処理剤成分のみとした
もの)2.5重量%とをドライブレンドしたものを射出
成形した樹脂と処理剤とのみの混合物を、下記手順にて
観察、測定を行った。
【0089】(a)混合物から、その流れ方向に対して
直行する断面を10面切り出す(または削り出す)。こ
こで流れ方向とは、前記混合物を成形した際の樹脂が最
も長く流動した方向を指す。
【0090】(b)前述の各断面を平滑に研磨する。
【0091】(c)光学顕微鏡で観察する。光学顕微鏡
で海/島構造が判断できない場合は、各断面を重金属染
色などにより樹脂または処理剤の何れか一方のみを選択
的に染色またはエッチング後、透過型電子顕微鏡を用い
て観察する。先の研磨にて処理剤が脱落した場合には、
その脱落により形成された穴またはくぼみを海/島構造
の痕跡とする。
【0092】(d)前記断面内に島構造(ドメイン)ま
たは島構造が脱落した穴またはくぼみの痕跡が観察さ
れ、そのドメインが100個未満しか観察されない場合
はそれらすべてのドメインを選択し、100個以上ドメ
インが観察される場合は任意に100個のドメインを選
択する。
【0093】(e)選択されたドメインについて、それ
ぞれのドメイン径を測定し、その数平均値を算出する。
かかるドメイン径とは、ドメイン内(一部でもドメイン
外を通る直線は対象外とする)での最大の直線距離のこ
とを指す。
【0094】本発明の導電体を用いた成形用材料および
成形品に関する評価項目およびその方法を下記する。 (2)体積固有抵抗値 まず、幅12.7mm×長さ65mm×厚さ2mmの試
験片を、長さ方向の辺の内で幅方向の辺の極近傍に位置
するファンゲートにて射出成形した。次いで、成形した
試験片の幅×厚さ面に導電性ペースト(藤倉化成(株)
製ドータイト)を塗布し、十分に導電性ペーストを乾燥
させてから、絶乾状態(水分率0.05%以下)で測定
に供した。測定に際しては、幅×厚さ面を電極に圧着
し、電極間の電気抵抗値をデジタルマルチメーター(ア
ドバンテスト社製R6581)にて測定した。前記電気
抵抗値から測定機器、治具等の接触抵抗を減じた値に、
導電性ペースト塗布面の面積を乗じ、次いで、その値を
試験片長さで除したものを固有抵抗値とした(単位はΩ
・cm)。なお、本測定では10サンプル測定し、それ
らの平均値を用いた。 (3)表面抵抗値 表面抵抗値の測定方法について、図により説明する。ま
ず、図1は、表面抵抗値を測定する試験片(長さ80m
m×幅80mm×厚み3mm)の平面図である。この試
験片は、導電体として導電性繊維を用いた場合、そのの
配向性の影響を最小限にするため、フィルムゲートにて
成形する。その試験片に、幅20mm×長さ20mmの
範囲で導電性ペースト(藤倉化成(株)製ドータイト)
を、図1に示す4箇所に塗布するが、ここで隣り合う塗
布部分が、お互いに幅方向に20mm、長さ方向に20
mmの距離を有し、4箇所の塗布部分に囲まれる導電性
ペーストが塗布されていない幅20mm×長さ20mm
の範囲の中心点が成形品の中心点となるように塗布す
る。この導電性ペーストを塗布した試験片について絶乾
状態(水分率0.05%以下)にて測定に供した。ここ
で、測定に際しては、導電性ペーストを塗布した範囲
(1)−(2)間、(3)−(4)間の電気抵抗値の平
均値を長さ方向の表面抵抗値とし、(1)−(3)間、
(2)−(4)間の電気抵抗値の平均値を幅方向の表面
抵抗値とし、長さ方向と幅方向との平均値をその試験片
における表面抵抗値とした。ここで、1は導電性ペース
ト塗布範囲(1)を、2は導電性ペースト塗布範囲
(2)を、3は導電性ペースト塗布範囲(3)を、4は
導電性ペースト塗布範囲(4)をそれぞれ示す。この測
定を10個の試験片について行い、それらの平均値にて
評価した(単位はlogΩ/□)。なお、電気抵抗値の
測定には、デジタルマルチメーター(アドバンテスト社
製R6581)を用いた。 (4)電界シールド性 電界シールド性の測定方法について、図により説明す
る。まず、図2は、電界シールド性を測定するハウジン
グの斜視図である。6は電界シールド性測定試験片の切
り出し位置(幅150mm×長さ150mm×厚さ1m
m)を示し、7は電界シールド性を測定するハウジング
(平面部:幅155mm×長さ190mm×厚さ1m
m、立ち壁:高さ12mm)を示す。なお、このハウジ
ングは直径1.5mmのピンゲートで成形され、このピ
ンゲートのレイアウトは図3に示す8箇所で、ピンゲー
ト(8)と(9)との間隔は105mm、ピンゲート
(10)と(12)、(13)と(15)との間隔は1
30mm、ピンゲート(11)と(14)との間隔は9
5mm、ピンゲート(10)と(13)、(12)と
(15)との間隔は115mmである。ここで、8はピ
ンゲート(8)を、9はピンゲート(9)を、10はピ
ンゲート(10)を、11はピンゲート(11)を、1
2はピンゲート(12)を、13はピンゲート(13)
を、14はピンゲート(14)を、15はピンゲート
(15)をそれぞれ示し、16は電界シールド性測定試
験片を示す。この切り出した試験片の板厚面の全周に導
電性ペースト(藤倉化成(株)製ドータイト)を塗布
し、絶乾状態(水分率0.05%以下)にて測定に供し
た。ここで、周波数1GHzにおける値をその試験片に
おける電界シールド性とした。この測定を5個の試験片
について行い、それらの平均値にて評価した(単位はd
B)。なお、測定はアドバンテスト法にて行い、シール
ドボックスはTR−17301A(アドバンテスト社
製)、スペクトルアナライザーはR3361B(アドバ
ンテスト社製)を用い、周波数10MHz〜1GHzの
範囲で測定した。 (5)難燃性 UL−94規格に沿った難燃性試験にて評価した。用い
た試験片の板厚は1.6mm(1/16インチ)厚で、
試験片の長辺方向全長に渡るフィルムゲートにて射出成
形して試験片を得た。 (6)剛性 ASTM D 790(スパン間距離L/厚さD=1
6)に沿った曲げ弾性率にて評価した(単位はGP
a)。用いた試験片の板厚は6.4mm(1/4イン
チ)厚で、水分率0.05%以下で試験に供した。な
お、本測定では5サンプル測定し、それらの平均値を用
いた。 (7)Izod衝撃強度 ASTM D 256に沿ったモールドノッチ有りIz
od衝撃強度にて評価した(単位はJ/m)。用いた試
験片の板厚は3.2mm(1/8インチ)厚で、水分率
0.05%以下で試験に供した。なお、本測定では10
サンプル測定し、それらの平均値を用いた。
【0095】最後に、上記評価項目の導電性、力学的特
性、成形性のバランスを、◎:特に優れる、○:優れ
る、△:優れない、×:著しく劣る、の4段階にて総合
的に評価した。 実施例1〜6、比較例1〜4 連続した導電性繊維束を、張力をかけながら所望の濃度
に調整した処理剤の水溶液または水系エマルジョン中に
浸漬し、処理剤の水溶液または水系エマルジョンで導電
性繊維束の各々フィラメントが濡れた状態の導電性繊維
束を6mmにカートリッジカッターで切断する。次い
で、切断された導電性繊維束を金網上に受け取り、その
金網を振動(振動数16サイクル/秒、振幅6mm)さ
せながら120℃の熱風にて10分間乾燥し、チョップ
ド導電性繊維を得る。得られたチョップド導電性繊維に
おける処理剤の付着量は、チョップド導電性繊維を10
0重量%とすると、3重量%であった。
【0096】ここで、導電性繊維に付着させた処理剤
(場合によっては表面張力低下剤など)の付着量は熱分
解法にて測定した。具体的には、水分率0.05%以下
に乾燥している処理剤が付着している導電性繊維の重量
W1と、その導電性繊維を窒素雰囲気下で450℃×1
5分間加熱、窒素雰囲気下で25℃×15分間冷却、湿
度50%雰囲気下で25℃×10分間調湿した後の重量
W2とを用いて、(W1−W2)×100/W1から算出し
た(単位は重量%)。
【0097】水分率0.05%以下に十分乾燥した所望
量の樹脂を2軸押出機(バレル温度300℃、スクリュ
ー直径40mm、ダイス直径5mm×3、回転数100
rpm)のメインホッパーから投入し、十分溶融・混練
された状態で押し出しながら、水分率0.05%以下に
十分乾燥した所望量のチョップド導電性繊維をサイドホ
ッパーから投入し、樹脂を導電性繊維束中に含浸させ
る。このようにして得られた不連続の導電性繊維束を含
有するガットを冷却後、カッターで5mmに切断して、
ペレットを得た。
【0098】用いた成分の種類、およびその配合量は表
1に示した通りである。得られたペレットを80℃にて
5時間以上真空中で乾燥させた後、バレル温度320
℃、金型温度80℃にて射出成形して(1)〜(7)項
記載の各試験に供した。評価結果を表1に示す。 実施例7、8 連続した導電性繊維束を、張力をかけながら所望の濃度
に調整した表面張力低下剤の水溶液または水系エマルジ
ョン中に浸漬した後に乾燥して、表面張力低下剤を導電
性繊維束の各々フィラメントに付着させる。更にその導
電性繊維束を、張力をかけながら処理剤の水溶液または
水系エマルジョン中に浸漬し、処理剤の水溶液または水
系エマルジョンで導電性繊維束の各々フィラメントが濡
れた状態の導電性繊維束を6mmにカートリッジカッタ
ーで切断する。次いで、実施例1と同じ方法でチョップ
ド導電性繊維を得る。得られたチョップド導電性繊維に
おける表面張力低下剤、処理剤の付着量は、チョップド
導電性繊維を100重量%とすると、それぞれ0.5重
量%、2.5重量%であった。
【0099】一方、水分率0.05%以下に十分乾燥し
た所望量のカーボン粉末、難燃剤、その他の成分と、樹
脂とを2軸押出機(実施例7はバレル温度260℃、実
施例8は300℃、スクリュー直径40mm、ダイス直
径3mm×5、回転数200rpm)にて十分溶融・混
練しながら押し出し、カーボン粉末、難燃剤などが樹脂
中に均一したマスターペレットを用意する。
【0100】更に、所望比率にてドライブレンドした樹
脂と前記マスターペレットとを、2軸押出機(実施例7
はバレル温度260℃、実施例8は300℃、スクリュ
ー直径40mm、ダイス直径5mm×3、回転数100
rpm)のメインホッパーから投入し、十分溶融・混練
された状態で押し出しながら、水分率0.05%以下に
十分乾燥した所望量のチョップド導電性繊維をサイドホ
ッパーから投入し、少なくとも樹脂を含む各成分を導電
性繊維束中に含浸させる。このようにして得られた不連
続の導電性繊維束を含有するガットを冷却後、カッター
で5mmに切断して、ペレットを得た。
【0101】用いた成分の種類、およびその配合量は表
1に示した通りである。得られたペレットを80℃にて
5時間以上真空中で乾燥させた後、実施例7はバレル温
度280度、実施例8はバレル温度320℃、金型温度
80℃にて射出成形して(1)〜(7)項記載の各試験
に供した。評価結果を表1に示す。 実施例9、比較例5 連続した導電性繊維束を張力をかけながら、所望の濃度
に調整した処理剤の水溶液または水系エマルジョン中に
浸漬した後に乾燥させてボビンに巻き取り、処理剤が導
電性繊維束の各々フィラメントに付着した連続導電性繊
維を得る。得られた連続導電性繊維束における処理剤の
付着量は、導電性繊維を100重量%とすると、1重量
%であった。
【0102】水分率0.05%以下に十分乾燥した所望
量の樹脂を1軸押出機(バレル温度300℃)にて、そ
の先端に取り付けたクロスヘッドダイ中に十分溶融・混
練された状態で押し出しながら、水分率0.05%以下
に十分乾燥した前記導電性繊維束も連続して前記クロス
ヘッドダイ中に供給し、樹脂を導電性繊維束中に十分含
浸させる。ここでクロスヘッドダイとは、そのダイ中で
導電性繊維束を開繊させながら溶融樹脂等をその中に含
浸させる装置のことをいう。このようにして得られた連
続した導電性繊維束を含有するストランドを冷却後、カ
ッターで7mmに切断して、長繊維ペレットを得た。
【0103】導電性繊維、処理剤、その他の成分の種類
およびその配合率は表2に示した通りである。得られた
ペレットを80℃にて5時間以上真空中で乾燥させた
後、シリンダ温度は340℃、金型温度は80℃にて射
出成形して(1)〜(7)項記載の各試験の射出成形に
供した。評価結果を表2に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】なお、表1、2における各成分の表記は下
記に基づいた。 <導電体> MF :ステンレス鋼繊維、フィラメント数=5100
本、平均単繊維直径=8μm、引張破断伸度=1.5% NiCF:PAN系ニッケル被覆炭素繊維、湿式紡糸、
フィラメント数=12000本、平均単繊維直径=8μ
m、引張破断伸度=1.5%、ニッケル膜厚=0.5μ
m CF1:PAN系炭素繊維、湿式紡糸、フィラメント数
=12000本、平均単繊維直径=5μm、引張破断伸
度=1.9%、Lc=1.9nm、O/C=0.09 CF2:PAN系炭素繊維、乾湿式紡糸、フィラメント
数=24000本、平均単繊維直径=7μm、引張破断
伸度=2.0%、Lc=1.7nm、O/C=0.06 <処理剤> PA1:水溶性ポリアミド(ポリエーテル)樹脂[硫酸
相対粘度ηr=2.5、水溶化成分:ポリエチレンオキ
サイド成分のみ] PA2:水溶性ポリアミド樹脂[硫酸相対粘度ηr=
2.3、水溶化成分:第3級アミン成分のみ] ES1:水溶性飽和ポリエステル樹脂[還元粘度ηsp
/C=0.5、水溶化成分:スルホン酸アルカリ金属塩
のみ] ES2:水溶性飽和ポリエステル樹脂[還元粘度ηsp
/C=0.2、水溶化成分:ポリエチレンオキシド成分
のみ] Ep :エポキシ樹脂[油化シェルエポキシ(株)製E
p828とEp1001との等量混合物を乳化剤を用い
て水分散した混合エポキシ樹脂] PU :水溶性ポリウレタン樹脂[1、6−ヘキサメチ
レンカーボネートジオールとヘキサメチレンジイソシア
ネートとを重合した自己乳化型ポリウレタン樹脂] <表面張力低下剤> BPEO:界面活性剤[ビスフェノールAエチレンオキ
サイド(10〜30mol%)付加物] <樹脂> PC :ポリカーボネート樹脂[日本GEプラスチック
ス製レキサン121] P/A:ポリカーボネートとアクリロニトリル・スチレ
ン・ブタジエン共重合樹脂とのポリマーブレンド樹脂
[バイエル製バイブレンドFR2000] <その他の成分> CB :カーボンブラック[ファーネスブラック] RP :赤リン[燐化学工業(株)製ノーバエクセル1
40] AP :芳香族ホスフェート[大八化学工業製PX−2
00] 表1、2の結果から以下のことが明らかである。 1.処理剤の効果 海/島構造を形成する処理剤が付着していない導電性繊
維を用いた比較例1〜4(比較例5)に比べて、本発明
の処理剤が付着している導電性繊維を用いた実施例4、
6(実施例9)は、体積固有抵抗、表面抵抗を著しく低
く、また電界シールド性を著しく高くすることができ、
大幅に導電性に優れた成形品を得ることができる。ま
た、剛性も、ほぼ同じレベルにすることができ、その優
位性は明らかである。 2.表面張力低下剤の効果 表面張力低下剤に更に処理剤を付着させた導電性繊維を
用いた実施例7は、処理剤のみを付着させた導電性繊維
を用いた実施例4より僅かながら高い導電性と力学的特
性とを発現している。これは、表面張力低下剤により処
理剤のが、より均一に導電性繊維に付着できたことによ
ると推察される。 3.長繊維ペレットの効果 通常のペレットを用いた実施例6に比べて、長繊維ペレ
ットを用いた実施例9は、体積固有抵抗、表面抵抗をよ
り低く、また電界シールド性をより高くすることがで
き、導電性に優れた成形品を得ることができる。これ
は、実施例6よりも実施例9の方が、成形品中の導電性
繊維の長さを長くできることによる。つまり、実施例9
の成形品中の重量的平均繊維長さは0.397mmであ
ったのに対して、実施例6の場合には、得られた成形品
中の重量平均繊維長は0.232mmであったことによ
る。なお、重量的平均繊維長さの算出方法について
は、”複合材料入門”D.Hull著、p.65、培風
館に詳細な記載がある。
【0107】これらの比較から、導電性に及ぼす混合物
中の導電性繊維の長さの重要性は明らかであり、本発明
で用いられる成形用材料または成形品としては、繊維長
さをできるだけ長くしたペレット、とりわけ長繊維ペレ
ットの形態をとることがより好ましい。
【0108】
【発明の効果】本発明によれば、優れた導電性と成形性
とを兼ね備える成形用材料を提供することができ、かか
る成形用材料にれば、低比重で、且つ優れた導電性、力
学的特性、外観品位、難燃性を兼ね備えるので、特に電
気・電子機器用、OA機器用、精密機器用、自動車用の
ハウジング、ケーシング、トレーなどの幅広い産業分野
に好適な成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例において、表面抵抗値を測定す
る試験片の平面図である。
【図2】本発明の実施例において、電界シールド性を測
定するハウジングの斜視図である。
【図3】本発明の実施例において、電界シールド性を測
定する試験片の平面図である。
【符号の説明】
1:導電性ペースト塗布範囲(1) 2:導電性ペースト塗布範囲(2) 3:導電性ペースト塗布範囲(3) 4:導電性ペースト塗布範囲(4) 5:表面抵抗値を測定する試験片 6:電界シールド性測定試験片の切り出す位置 7:電界シールド性を測定するハウジング 8:ピンゲート(8) 9:ピンゲート(9) 10:ピンゲート(10) 11:ピンゲート(11) 12:ピンゲート(12) 13:ピンゲート(13) 14:ピンゲート(14) 15:ピンゲート(15) 16:電界シールド性測定試験片
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08K 5/00 C08K 5/00 9/04 9/04 // B29K 25:00 B29K 25:00 67:00 67:00 69:00 69:00 71:00 71:00 77:00 77:00 Fターム(参考) 4F071 AA02 AA03 AA12 AA12X AA15 AA20 AA21 AA22 AA22X AA24 AA26 AA33X AA34 AA34X AA40 AA41 AA42 AA45 AA46 AA49 AA50 AA51 AA53 AA54 AA60 AA62 AA64 AA69 AA77 AB03 AB06 AB07 AB12 AB18 AB26 AB28 AD01 AE15 BA01 BB05 BC04 4F206 AA13 AA24 AA28 AA29 AA32 AA49 AC01 AH17 AH33 JA07 JF01 JF06 JL02 4J002 AA011 AA021 AC031 AC061 BB031 BB032 BB121 BB171 BC031 BC061 BD041 BD121 BD123 BG061 BG102 BN061 BN121 BN141 BN151 BN161 CB001 CC031 CC161 CC181 CD001 CF002 CF051 CF061 CF071 CF081 CF161 CF181 CF211 CG001 CH024 CH051 CH071 CH091 CJ001 CK021 CL001 CL002 CL062 CM041 CN011 CN012 CN031 CP033 CQ013 DA016 DA026 DA027 DA036 DA037 DA058 DA066 DA076 DA108 DC006 DE046 DE078 DE108 DE128 DE148 DH058 DJ006 DK008 DL006 EG008 ER028 EU188 EV189 EV259 EV288 EW048 EW128 EW138 EW148 EW158 EY018 FA016 FA036 FA042 FA046 FB082 FB086 FB092 FB096 FB162 FB166 FB262 FB266 FD010 FD020 FD112 FD116 FD133 FD138 FD314 FD319

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電体の表面に処理剤を付着させて複合
    導電体を得た後、該複合導電体と樹脂とを混合する際
    に、該樹脂として、該処理剤0.5〜3重量%と該樹脂
    97〜99.5重量%とを混合した場合に、該処理剤と
    該樹脂とが相溶せずに、該処理剤が該樹脂によって被覆
    されて海/島構造を形成する性質を有する樹脂を選択し
    て使用することを特徴とする成形用材料の製造方法。
  2. 【請求項2】 該海/島構造が、該樹脂中に該処理剤が
    分散した構造であり、その分散した構造が粒子状である
    請求項1に記載の成形用材料の製造方法。
  3. 【請求項3】 該複合導電体100重量%中に、該処理
    剤を0.1〜20重量%の範囲で付着させる請求項1ま
    たは2に記載の成形用材料の製造方法。
  4. 【請求項4】 該成形用材料100重量%中に、該複合
    導電体を4〜50重量%の範囲で含有させる請求項1〜
    3のいずれかに記載の成形用材料の製造方法。
  5. 【請求項5】 該導電体に、表面張力低下剤を付着させ
    て複合導電体を得る請求項1〜4のいずれかに記載の成
    形用材料の製造方法。
  6. 【請求項6】 該導電体に、カップリング剤、接着性向
    上剤および集束剤から選ばれた少なくとも1種を付着さ
    せて複合導電体を得る請求項1〜5のいずれかに記載の
    成形用材料の製造方法。
  7. 【請求項7】 該導電体が、導電性繊維である請求項1
    〜6のいずれかに記載の成形用材料の製造方法。
  8. 【請求項8】 該導電性繊維が、1〜26mmの範囲で
    切断されてなるチョップド導電性繊維である請求項7に
    記載の成形用材料の製造方法。
  9. 【請求項9】 該導電性繊維が、炭素繊維である請求項
    7または8に記載の成形用材料の製造方法。
  10. 【請求項10】 該処理剤と該樹脂との組み合わせが、
    それぞれ下記A群とB群とから選ばれた組合せである請
    求項1〜9のいずれかに記載の成形用材料の製造方法。 (A群)飽和ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹
    脂、ポリアミド系樹脂から選ばれた少なくとも1種の熱
    可塑性樹脂。 (B群)スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ
    フェニレンエーテル樹脂から選ばれた少なくとも1種の
    熱可塑性樹脂。
  11. 【請求項11】 該成形用材料が、カーボン粉末および
    /またはグラファイト粉末を含有する請求項1〜10の
    いずれかに記載の成形用材料の製造方法。
  12. 【請求項12】 該成形用材料が、難燃剤を含有する請
    求項1〜11のいずれかに記載の成形用材料の製造方
    法。
  13. 【請求項13】 該成形用材料が、ペレットである請求
    項1〜12のいずれかに記載の成形用材料の製造方法。
  14. 【請求項14】 請求項1〜13のいずれかに記載の成
    形用材料を用いて成形することを特徴とする成形品の製
    造方法。
  15. 【請求項15】 該成形する方法が、射出成形法である
    ことを特徴とする成形品の製造方法。
  16. 【請求項16】 該成形品が、電気・電子機器用、OA
    機器用、精密機器用または自動車用のいずれかの用途分
    野におけるハウジング、ケーシングまたはトレーである
    請求項14または15に記載の成形品の製造方法。
JP2000376381A 2000-12-11 2000-12-11 成形用材料の製造方法および成形品の製造方法 Pending JP2002179924A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000376381A JP2002179924A (ja) 2000-12-11 2000-12-11 成形用材料の製造方法および成形品の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000376381A JP2002179924A (ja) 2000-12-11 2000-12-11 成形用材料の製造方法および成形品の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002179924A true JP2002179924A (ja) 2002-06-26

Family

ID=18845247

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000376381A Pending JP2002179924A (ja) 2000-12-11 2000-12-11 成形用材料の製造方法および成形品の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2002179924A (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008502779A (ja) * 2004-06-15 2008-01-31 シーメンス パワー ジェネレーション インコーポレイテッド グラフトされた表面官能基を有する高熱伝導性材料
JP2014133842A (ja) * 2013-01-11 2014-07-24 Yazaki Corp 導電性樹脂組成物
WO2015046441A1 (ja) * 2013-09-27 2015-04-02 ユーエムジー・エービーエス株式会社 強化熱可塑性樹脂組成物および成形品
JP2016527704A (ja) * 2013-05-31 2016-09-08 ブルスウォン マテリアル カンパニー リミテッド 無電解及び電解連続工程によって製造された銅及びニッケルメッキ炭素繊維を用いた電磁波遮蔽複合材の製造方法及び電磁波遮蔽複合材
WO2017056693A1 (ja) * 2015-09-30 2017-04-06 帝人株式会社 プレス成形体、及び複合材料
JP2018104658A (ja) * 2016-12-28 2018-07-05 富士ゼロックス株式会社 樹脂組成物、及び樹脂成形体

Cited By (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008502779A (ja) * 2004-06-15 2008-01-31 シーメンス パワー ジェネレーション インコーポレイテッド グラフトされた表面官能基を有する高熱伝導性材料
JP2014133842A (ja) * 2013-01-11 2014-07-24 Yazaki Corp 導電性樹脂組成物
JP2016527704A (ja) * 2013-05-31 2016-09-08 ブルスウォン マテリアル カンパニー リミテッド 無電解及び電解連続工程によって製造された銅及びニッケルメッキ炭素繊維を用いた電磁波遮蔽複合材の製造方法及び電磁波遮蔽複合材
WO2015046441A1 (ja) * 2013-09-27 2015-04-02 ユーエムジー・エービーエス株式会社 強化熱可塑性樹脂組成物および成形品
JP2015067706A (ja) * 2013-09-27 2015-04-13 ユーエムジー・エービーエス株式会社 強化熱可塑性樹脂組成物および成形品
KR20160040309A (ko) * 2013-09-27 2016-04-12 유엠지 에이비에스 가부시키가이샤 강화 열 가소성 수지 조성물 및 성형품
KR101652217B1 (ko) 2013-09-27 2016-08-30 유엠지 에이비에스 가부시키가이샤 강화 열 가소성 수지 조성물 및 성형품
US9803081B2 (en) 2013-09-27 2017-10-31 Umg Abs, Ltd. Reinforced thermoplastic resin composition and molded article
WO2017056693A1 (ja) * 2015-09-30 2017-04-06 帝人株式会社 プレス成形体、及び複合材料
JP6190986B1 (ja) * 2015-09-30 2017-08-30 帝人株式会社 プレス成形体、及び複合材料
US10407552B2 (en) 2015-09-30 2019-09-10 Teijin Limited Press-molded product and composite material
JP2018104658A (ja) * 2016-12-28 2018-07-05 富士ゼロックス株式会社 樹脂組成物、及び樹脂成形体

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100649503B1 (ko) 탄소 섬유 강화 수지 조성물, 성형 재료 및 그의 성형품
JP2002088259A (ja) 成形材料その製造方法およびその成形品
JP2003012939A (ja) カーボン含有樹脂組成物、成形材料および成形体
JP2013177560A (ja) 炭素繊維強化成形品の製造方法および炭素繊維強化成形品
KR20160114045A (ko) 폴리아릴렌술파이드 수지 조성물
TW202039649A (zh) 玻璃纖維強化樹脂成形品
JP5310296B2 (ja) ポリアミド樹脂組成物からなるペレットおよび難燃性樹脂成形品
JP4724900B2 (ja) 難燃性ポリアミド樹脂組成物およびその成形品
JP2002231051A (ja) 導電性樹脂組成物およびその成形品
JP2002317384A (ja) 長繊維ペレット用導電性繊維束およびそれからなる長繊維ペレット、ならびにそれを用いた成形品
JPH10195311A (ja) 熱可塑性樹脂成形品、および成形品用材料、成形品の製造方法
JP2001040229A (ja) 難燃性樹脂組成物、およびその成形品
JP2006335890A (ja) 再生樹脂組成物および再生樹脂組成物の製造方法
JP2002179924A (ja) 成形用材料の製造方法および成形品の製造方法
JP2000309060A (ja) 長繊維強化成形材料、およびその成形品
JP2002338794A (ja) 導電性樹脂組成物およびそれからなる成形材料または成形体
JP2004026982A (ja) 炭素繊維強化熱可塑性樹脂組成物、成形材料およびその成形品
JP2002146679A (ja) 炭素繊維束、樹脂組成物、成形材料およびそれを用いた成形品
JP2004285147A (ja) 成形材料およびその成形品
JP2002155471A (ja) 炭素繊維およびそれを用いた樹脂組成物、成形材料ならびに成形品
JP5224686B2 (ja) 導電性熱可塑性樹脂組成物の成形用混合物およびこれを成形してなる成形品
JP4674066B2 (ja) 電磁波遮蔽性熱可塑性樹脂組成物
JP2001067933A (ja) 導電性樹脂組成物およびその成形品
JP2002179934A (ja) 熱可塑性樹脂組成物およびその成形体
JP4810734B2 (ja) 炭素繊維強化樹脂組成物、成形材料およびその成形品

Legal Events

Date Code Title Description
RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20061010