JP2001067933A - 導電性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents

導電性樹脂組成物およびその成形品

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JP2001067933A
JP2001067933A JP23655999A JP23655999A JP2001067933A JP 2001067933 A JP2001067933 A JP 2001067933A JP 23655999 A JP23655999 A JP 23655999A JP 23655999 A JP23655999 A JP 23655999A JP 2001067933 A JP2001067933 A JP 2001067933A
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conductive resin
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conductive
resin
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Eisuke Wadahara
英輔 和田原
Soichi Ishibashi
壮一 石橋
Yasunori Nagashima
泰憲 長嶋
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Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は、高い導電性、薄肉成形性(成形時の
流動性等)、および外観品位を兼ね備えた導電性樹脂組
成物およびその成形品を提供せんとするものである。 【解決手段】本発明の導電性樹脂組成物は、少なくとも
次の構成要素[A]、[B]、[C]からなる導電性樹
脂組成物からなり、該構成要素[B]が少なくとも次の
条件[B1]、[B2]のいずれか、もしくは両方を満
たすことを特徴とするものである。 [A]:導電性繊維 [B]:カーボンブラック [C]:樹脂 [B1]:Δν3/2が、46〜59cm-1の範囲であ
る [B2]:Δ(I3−I1)が、211〜233cm-1
範囲である Δν3/2:I3の半値における高波数側のみの幅 Δ(I3−I1):I3とI1のラマンシフトの幅 I1:ラマンシフト1360cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極大値 I3:ラマンシフト1580cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極大値

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高い導電性、薄肉
成形性(成形時の流動性等)、および外観品位を兼ね備
えた導電性樹脂組成物およびその成形品に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】従来から、樹脂に導電性繊維(もしくは
カーボンブラック)を配合することによって、所望の導
電性を有する導電性樹脂組成物、およびその成形品を得
ることは公知である。
【0003】前述の導電性繊維(もしくはカーボンブラ
ック)を配合してなる導電性樹脂組成物、およびその成
形品は、一般的に0.25Ω・cmよりも高い体積固有
抵抗値を示し、それ以下が好ましいと考えられている電
磁波シールド材等の用途においては適用されることは少
なかった。この様に0.25Ω・cm以下の体積固有抵
抗値が求められる場合、導電性繊維(もしくはカーボン
ブラック)の増量、あるいは導電性繊維とカーボンブラ
ックを併用する等が試みられてきた。
【0004】導電性繊維(もしくはカーボンブラック)
の増量による高導電化は、導電性樹脂組成物、およびそ
の成形品のいたずらな高コスト化、高比重化を招き、し
かも衝撃強度、および成形時の流動性の大幅な低下、更
には成形品外観品位をも損なうといった問題が生じる場
合がほとんどである。前述の組成物の高粘度化に関する
問題に対しては、例えば特開平7−330987号公報
で、各種のカーボンブラックを物理的に大量に配合する
技術が提案されており、導電性繊維とカーボンブラック
を併用する技術としては、例えば特開平9−87417
号公報や特開平8−269228号公報で提案されてい
る。しかし、これらの提案は、いずれも高導電化と成形
性とを同時に満足させるものではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる従来
技術の背景に鑑み、高い導電性、薄肉成形性(成形時の
流動性等)、および外観品位を兼ね備えた導電性樹脂組
成物およびその成形品を提供せんとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を
解決するために、つぎのような手段を採用するものであ
る。すなわち、本発明の導電性樹脂組成物は、少なくと
も次の構成要素[A]、[B]、[C]からなる導電性
樹脂組成物において、該構成要素[B]が少なくとも次
の条件[B1]、[B2]のいずれか、もしくは両方を
満たすことを特徴とするものである。 [A]:導電性繊維 [B]:カーボンブラック [C]:樹脂 [B1]:Δν3/2が、46〜59cm-1の範囲であ
る [B2]:Δ(I3−I1)が、211〜233cm-1
範囲である Δν3/2:I3の半値における高波数側のみの幅 Δ(I3−I1):I3とI1のラマンシフトの幅 I1:ラマンシフト1360cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極大値 I3:ラマンシフト1580cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極大値 また、本発明の導電性樹脂成形品は、かかる導電性樹脂
組成物を用いて射出成形されたものであることを特徴と
するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明は、前記課題、すなわち、
高い導電性、高い薄肉成形性(成形時の流動性等)、お
よび高い外観品位を兼ね備えた導電性樹脂組成物につい
て、鋭意検討し、特定条件を満たすカーボンブラックと
導電性繊維とを組み合わせて使用して導電性樹脂組成物
をつくってみたところ、かかる課題を一挙に解決するこ
とを究明したものである。
【0008】本発明における導電性樹脂組成物は、少な
くとも次の構成要素[A]、[B]、[C]からなる導
電性樹脂組成物であり、該構成要素[B]が少なくとも
次の条件[B1]、[B2]のいずれか、もしくは両方
を満たす。 [A]:導電性繊維 [B]:カーボンブラック [C]:樹脂 [B1]:Δν3/2が、46〜59cm-1の範囲であ
る [B2]:Δ(I3−I1)が、211〜233cm-1
範囲である かかる構成要素[A]は、導電性繊維であればよく、例
えば、PAN系、ピッチ系、レーヨン系等からつくられ
た炭素繊維や、ステンレス鋼繊維、銅繊維等の金属繊維
等を挙げることができる。また、炭素繊維、S−ガラス
やE−ガラス等のガラス繊維の他に、ボロン繊維やシリ
コンカーバイド繊維やシリコンナイトライド繊維等の無
機繊維、アラミド繊維やPBO繊維やポリステル繊維や
アクリル繊維やナイロン繊維やポリフェニレンサルファ
イド繊維等の有機繊維などに、金属を被覆して構成され
てなる金属被覆繊維も例として挙げられる。前記金属被
覆繊維の場合、被覆する金属は、ニッケル、銅、銀、金
等を使用することができ、前記金属は少なくとも1層、
場合によっては複数層にて繊維に被覆される。
【0009】金属の繊維への被覆方法については、特に
制限はないが、好ましくは電解や無電解によるメッキ、
CVDやPVDや蒸着等により高い密着強度で被覆され
ているのがよい。本発明では、これら導電性繊維を単独
で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0010】本発明で用いられる導電性繊維の平均繊維
径は1〜20μmであることが好ましく、2〜17μm
であることがより好ましく、3〜12μmであることが
更に好ましい。平均繊維径が1μm未満では、樹脂の導
電性繊維束中への含浸が困難となり、成形品中での導電
性繊維の分散性に劣るなどの問題を生じる。一方、平均
繊維径が20μmを超えると、導電性繊維の力学的特性
に劣り、所望の補強効果が得られない。
【0011】かかる導電性繊維は、シランカップリング
剤、アルミネートカップリング剤、チタネートカップリ
ング剤等で、表面処理されたり、また、ウレタン系樹
脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系
樹脂、オレフィン系樹脂、アミド系樹脂、アクリル系樹
脂、フェノール系樹脂、液晶性樹脂等で、集束処理され
たものも使用することができる。
【0012】かかる構成要素[A]は、炭素繊維である
ことが好ましい。中でも、高い強度と弾性率を兼ね備
え、比重の小さいPAN系炭素繊維を使用するのがよ
い。
【0013】かかる炭素繊維の平均繊維径は1〜15μ
mであることが好ましく、3〜10μmであることが更
に好ましい。平均繊維径が1μm未満でも、15μmを
超えても、力学的特性に優れる炭素繊維が得られず、所
望の補強効果が得られないだけでなく、導電性にも劣る
ため好ましくない。
【0014】かかる炭素繊維は更に、引張破断伸度は少
なくとも1.5%以上の炭素繊維がよい。引張破断伸度
が1.5%未満である場合、成形工程で構成要素[A]
が切断されやすく、樹脂組成物およびその成形品中の導
電性繊維長さを大きくすることができないため、高い導
電性が達成できないだけでなく、力学的特性(特に衝撃
強度)にも大きく劣る。かかる樹脂組成物およびその成
形品に高い導電性、および耐衝撃性を同時に付与するた
めには、引張破断伸度が望ましくは1.5%以上、より
望ましくは引張破断伸度が1.7%以上、特に望ましく
は引張破断伸度が1.9%以上の炭素繊維を用いるのが
よい。前記炭素繊維の引張破断伸度に上限はないが、望
ましくは5%未満である。
【0015】本発明における構成要素[A]は炭素繊維
と金属被覆繊維との両方からなることも好ましいが、そ
の場合には、構成要素[A]100重量%中に炭素繊維
が50〜100重量%、金属被覆繊維が0〜50重量%
の範囲で配合されているのがよい。炭素繊維は金属被覆
繊維に比べて、樹脂との接着性に優れるため、50重量
%未満であると、導電性樹脂組成物の力学的特性(特に
衝撃強度)が大きく低下する。また、金属被覆繊維は金
属が被覆されていることにより、炭素繊維に比べて、樹
脂との接着性に劣る、比重が大きい、価格が高い、とい
った問題を有する。そのため、導電性樹脂組成物に金属
被覆繊維を50重量%を越えて配合すると、力学的特性
(特に衝撃強度)が低下する、比重が大きくなる、価格
が高くなるといった問題が生じる。したがって、より望
ましくは炭素繊維が55〜95重量%、金属被覆繊維が
5〜45重量%であり、特に望ましくは炭素繊維が60
〜90重量%、金属被覆繊維が10〜40重量%である
組成がよい。
【0016】ここで金属被覆繊維とは、金属が被覆され
た繊維をいうが、被覆する金属としては、特にニッケル
または/および銅が、少なくとも1層被覆されているの
が好ましい。かかる被覆される繊維としては、強度、弾
性率が高いレベルでバランスがとれ、且つ比重の小さい
炭素繊維が好ましい。金属の繊維への被覆方法は、金属
と繊維との密着強度の面からメッキまたはCVDが好ま
しい。
【0017】かかる構成要素[B]のカーボンブラック
としては、少なくとも次の条件[B1]、[B2]のい
ずれか、もしくは両方を満たすものを選択して使用す
る。 [B1]:Δν3/2が、46〜59cm-1の範囲であ
る [B2]:Δ(I3−I1)が、211〜233cm-1
範囲である 本発明で用いる符号は次に示す通りである。 Δν3/2:I3の半値における高波数側のみの幅 Δ(I3−I1):I3とI1のラマンシフトの幅 I1:ラマンシフト1360cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極大値 I2:ラマンシフト1480cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極小値 I3:ラマンシフト1580cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極大値 なお、前記I1、I2 、I3は、ベースライン補正後のラ
マン散乱強度についてのものである。上記ベースライン
補正とは、600cm-1〜2200cm-1のラマンシフ
ト範囲において、ラマンスペクトルのベースラインを直
線近似し、その近似直線からの距離をラマン散乱強度と
し、測定時のベースラインの傾きを補正する操作のこと
をいう。
【0018】一般的に、カーボンブラックの分散性等の
基本的な特性は、その製造条件により大きく変化し、前
記製造条件はカーボンブラックの結晶構造に大きく影響
を及ぼす。炭素材料であるカーボンブラックは、ラマン
スペクトルの測定により、その結晶構造(ここではグラ
ファイト構造)の発達具合が推定が可能となる。つま
り、カーボンブラックの基本的特性は、ラマンスペクト
ルを測定するだけで、簡易に把握できるといえる。
【0019】すなわち、本発明におけるカーボンブラッ
クは、該条件[B1]、[B2]のいずれか、もしくは
両方を満たすものを選択して、これを使用するところに
特徴を有する。
【0020】本発明は、かかる特定な構成を有するカー
ボンブラックを用いた場合、特異的に高い導電性、薄肉
成形性(特に成形時の流動性)、および外観品位を兼ね
備えた導電性樹脂組成物を提供することができることを
究明したものである。すなわち、本発明では、特定なラ
マンスペクトルを有するカーボンブラックのみが、上記
高導電性、薄肉成形性、および外観品位を同時に満足す
るという優れた効果を達成することを見出したものであ
る。前記ラマンスペクトルによる選定は、カーボンブラ
ックの様々な特性を各々測定することなく、簡便に、か
つ、正確に選定することができることから、工業的見地
からも非常に有意義である。
【0021】かかるカーボンブラックとしては、その一
つの選択要件は、Δν3/2 が46〜59cm-1の範囲
であるが、より望ましくは47〜58cm-1の範囲、更
に望ましくは48〜57cm-1の範囲にあるものを使用
するのがよい。すなわち、このΔν3/2が46〜59
cm-1の範囲外のカーボンブラックを用いた場合には、
高い導電性はある程度達成できるものの、薄肉成形性
(成形時の流動性)、外観品位に著しく劣るものとな
り、導電性と薄肉成形性と外観品位とを兼ね備えた導電
性樹脂組成物が得られない。特に、Δν3/2が46c
-1の未満であるカーボンブラックの場合は、導電性は
ともかく、成形時の流動性が著しく劣るものとなる。
【0022】また、本発明で用いられるカーボンブラッ
クとしての別の選択方法の一つは、Δ(I3−I1)が、
211〜233cm-1の範囲であり、より望ましくは2
12〜232cm-1の範囲、更に望ましくは213〜2
31cm-1の範囲にあるカーボンブラックを選択して使
用するのがよい。
【0023】かかるカーボンブラック、つまりΔ(I3
−I1)が、211〜233cm-1の範囲にあるカーボ
ンブラックと、その範囲外のカーボンブラックとの効果
的な違いは、前記方法で選択したもの場合と同様であ
り、該範囲外のものは、高い導電性はある程度達成でき
るものの、成形時の流動性に著しく劣り、導電性と薄肉
成形性を兼ね備えた導電性樹脂組成物が得られない。流
動性において、該範囲内のものに比して、範囲外の場合
には極めて低い流動性を示す点で、更に流動性にシビア
な性質を示すカーボンブラックを選ぶことができる。
【0024】該構成要素[B]のより好ましいカーボン
ブラックとしては、更に少なくとも次の条件[B3]、
[B4]のいずれか、もしくは両方を満たすものを選択
して使用するのが好ましい。 [B3]:ラマン散乱強度比I2 /I1 が、0.65〜
0.75の範囲である [B4]:ラマン散乱強度比I2 /I3 が、0.57〜
0.67の範囲である すなわち、本発明におけるより好ましいカーボンブラッ
クは、更に該条件[B3]、[B4]のいずれか、もし
くは両方を満たすものを選択して、これを使用するとこ
ろに特徴を有する。
【0025】かかるカーボンブラックとしては、その一
つの選択要件は、I2 /I1 が、0.65〜0.75で
あるが、望ましくは0.66〜0.74、さらに望まし
くは0.67〜0.73の範囲にあるものを使用するの
がよい。すなわち、このI2/I1 が、0.65〜0.
75の範囲外のカーボンブラックを用いた場合には、高
い導電性はある程度達成できるものの、薄肉成形性(成
形時の流動性)、外観品位に著しく劣るものとなり、導
電性と薄肉成形性と外観品位とを兼ね備えた導電性樹脂
組成物が得られない。特に、I2 /I1 が0.65未満
であるカーボンブラックの場合は、導電性はともかく、
成形時の流動性が大きく劣るものとなる。
【0026】また、かかるカーボンブラックとしての別
の選択方法の一つは、ラマンシフト1480cm-1付近
に現れるラマン散乱強度の極小値I2 と、ラマンシフト
1580cm-1付近に現れるラマン散乱強度の極大値I
3 とのラマン散乱強度比I2/I3 が、0.57〜0.
67、望ましくは0.58〜0.66、更に望ましくは
0.59〜0.65の範囲にあるカーボンブラックを選
択して使用するのがよい。
【0027】かかるカーボンブラック、つまりI2 /I
3 が、0.57〜0.67の範囲にあるカーボンブラッ
クと、その範囲外のカーボンブラックとの効果的な違い
は、前記方法で選択したもの場合と同様であり、該範囲
外のものは、高い導電性はある程度達成できるものの、
成形時の流動性に著しく劣り、導電性と薄肉成形性を兼
ね備えた導電性樹脂組成物が得られない。流動性におい
て、該範囲内のものに比して、範囲外の場合には極めて
低い流動性を示す点で、更に流動性にシビアな性質を示
すカーボンブラックを選ぶことができる。
【0028】本発明において、さらに好ましい構成要素
[B]のカーボンブラックとして、少なくとも該条件
[B1]、[B2]、[B3]、[B4]のすべてを満
たすカーボンブラックを挙げることができる。該条件す
べてを満たす特定のカーボンブラックは、さらに優れた
高導電化と高薄肉成形性を兼ね備えた導電性樹脂組成物
を確実に提供することができるものである。この選択方
法で選んだカーボンブラックを用いた場合は、先に説明
した方法で選択したものに比して、同等の流動性の差異
で示される上に、確実に本発明の課題を満足する導電性
樹脂組成物を提供することができる利点がある。
【0029】ラマンスペクトルの測定法は、レーザーラ
マン分光法により測定する。ラマンスペクトルの測定
は、樹脂に配合する前のカーボンブラックから測定して
もよいし、樹脂組成物、もしくは、その成形品中からカ
ーボンブラックを分離した後に測定してもよい。前者か
ら測定する場合は、マクロラマン(レーザースポット径
が100μm程度)、後者から測定する場合は、顕微ラ
マン(レーザースポット径が5μm程度)にて測定を行
うのが好ましい。本発明では、JobinYvon社製
Ramaonor T−64000を用いて測定を行っ
た。
【0030】樹脂成形品からのカーボンブラックの分離
は、配合物の比重差を利用して行うのがよい。かかるカ
ーボンブラックの分離手法の具体的手段の一例を以下に
記述する。
【0031】まず、樹脂成形品をカーボンブラックを侵
さずに樹脂を溶解する溶媒に浸漬し、完全に樹脂を溶解
させる。その後、5000rpmにて30分間遠心分離
を行い、更に遠心分離後の上澄み液を30000rpm
にて30分間超遠心分離を行う。超遠心分離後の上澄み
液を、PTFEフィルター(0.2μm)で濾過するこ
とによりカーボンブラックを分離する。この場合のラマ
ンスペクトルの測定は、顕微ラマンにより上記分離によ
る回収物中の黒色微粒子部分について行うのが好まし
い。
【0032】前記構成要素[B]は、上述の各条件の範
囲であるカーボンブラックであれば、種類は特に限定さ
れず、例えば、ファーネスブラック(原料油を高温炉で
燃焼させて製造)、アセチレンブラック(アセチレンガ
スの発熱分解により製造)、サーマルブラック、チャン
ネルブラック等を使用することができ、これらを2種類
以上ブレンドしたカーボンブラックでもよい。供給・価
格の面から、生産量が多く低価格であるファーネスブラ
ックが好ましい。
【0033】かかる構成要素[C]とは樹脂であり、熱
可塑性、熱硬化性のどちらでも使用することができる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル、
ビニルエステル、エポキシ、フェノール(レゾール
型)、ユリア・メラミンポリイミド等や、これらの共重
合体、変性体、および、2種類以上ブレンドした樹脂な
ども使用することができる。
【0034】構成要素[C]としては、耐衝撃性に優
れ、かつ、生産性の高い射出成形が可能な熱可塑性樹脂
が好ましく使用される。熱可塑性樹脂としては、例え
ば、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフ
タレートや液晶ポリエステル等のポリエステル、ポリエ
チレン、ポリプロピレンやポリブチレン等のポリオレフ
ィンの他、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリカー
ボネイト、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル
共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共
重合体、アクリレート・スチレン・アクリロニトリル共
重合体、ポリメチレンメタクリレート、ポリ塩化ビニ
ル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテ
ル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミ
ド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテ
ルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フェノール
(ノボラック型)等や、これらの共重合体、変性体、お
よび、2種類以上ブレンドした樹脂なども使用すること
ができる。
【0035】かかる樹脂には、その目的に応じて、充填
材、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料、滑剤、離型剤、相
溶化剤、分散剤、結晶核剤、可塑剤、熱安定剤、酸化防
止剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、流動性改質剤、発泡
剤、抗菌剤、制振剤、防臭剤、摺動性改質剤、導電性付
与剤、帯電防止剤、耐衝撃性改質剤等の任意の添加剤を
使用することができる。
【0036】かかる構成要素[C]の熱可塑性樹脂とし
ては、強化繊維との界面接着性に優れ、成形品の力学的
特性(特に衝撃強度)に優れるポリアミド樹脂を使用す
るのがより好ましい。かかるポリアミド樹脂としては、
アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を
主たる原料とするナイロンである。その原料の代表例と
しては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカ
ン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息
香酸などのアミノ酸、ε−アミノカプロラクタム、ω−
ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミ
ン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレ
ンジアミン、ノナンメチレンジアミン、ウンデカメチレ
ンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−ト
リメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメ
チルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレン
ジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシリレンジア
ミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、
1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−ア
ミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシク
ロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタ
ン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メ
タン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロ
パン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチ
ルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミ
ン、および、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、
セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル
酸、フタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテ
レフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウム
スルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキ
サヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族の
ジカルボン酸などを採用することができる。本発明にお
いては、これらの原料から誘導されるナイロンホモポリ
マーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で使
用することができる。
【0037】本発明において、ポリアミド樹脂として好
ましく用いられるものは、150℃以上の融点を有する
上に、耐熱性や強度に優れたナイロン樹脂であり、具体
的な例としてはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリ
ヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテト
ラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメ
チレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチ
レンドデカミド(ナイロン612)、ポリノナンメチレ
ンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリヘキサメチ
レンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド
コポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレ
ンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナ
イロン6T/6)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミ
ド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン6I/
6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチ
レンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6
T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチ
レンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6
I)、ポリドデカミド/ポリヘキサメチレンテレフタラ
ミドコポリマー(ナイロン12/6T)、ポリヘキサメ
チレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミ
ド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー
(ナイロン66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンテ
レフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド
コポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレ
ンテレフタルアミド/ポリ(2−メチルペンタメチレン
テレフタルアミド)コポリマー(ナイロン6T/M5
T)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、
およびこれらの混合物ないし共重合体などである。
【0038】また、特性(特に衝撃強度)改良の必要性
に応じて、無水マレイン酸などによる酸変性オレフィン
系重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/
1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジ
エン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、
エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン
/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体および
エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、
ABSなどのオレフィン系共重合体、ポリエステルポリ
エーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラ
ストマーなどのエラストマーから選ばれる1種または2
種以上の混合物を添加して、所望の特性をさらに付与し
た樹脂も使用することもできる。
【0039】これらのポリアミド樹脂の重合度に関して
は、特に制限はないが、硫酸相対粘度ηrが1.5〜
5.0の範囲であるのが好ましい。より好ましくは1.
8〜4.0の範囲であり、更に好ましくは2.0〜3.
0の範囲のものが使用される。ηrが1.5未満のもの
だと、流動性には優れるものの、熱可塑性樹脂自体の力
学的特性(特に衝撃強度や伸度など)に大きく劣る。ま
た、ηrが5.0を越えるものだと、特に薄肉成形性
(成形時の流動性)に著しく劣り、薄肉成形品を成形し
た場合、成形品表面にフローマークや構成要素[A]の
浮き等が発生し、表面平滑性が損なわれると共に、強い
ウェルドラインが発生し、外観品位が大きく劣る可能性
がでてくる。このようなポリアミド樹脂を使用した場
合、成形時の流動性が著しく損なわれる結果、前述の構
成要素[B]の効果をも損なう恐れがでてくるので好ま
しくない。ここで、硫酸相対粘度ηrは、98%硫酸で
溶液濃度が1g/100mlになるように溶かした後、
25℃の恒温槽内でオストワルド粘度計で流下速度を測
定し、98%硫酸に対する試料溶液の粘度比(流下秒数
比)で表される。
【0040】本発明で使用するポリアミド樹脂としてよ
り好ましく用いられるものとしては、ナイロン6、ナイ
ロン66、ナイロン6/ナイロン66の共重合体、それ
らの混合物、および/もしくは芳香族含有ポリアミド樹
脂が挙げられる。
【0041】ナイロン6、ナイロン66などの脂肪族ポ
リアミド樹脂を用いた場合、本発明の一つの効果である
薄肉成形性(成形時の流動性)を一層高く発現すること
ができる。特にナイロン6を使用した場合は、とりわけ
薄肉成形性に優れるため好ましい。該脂肪族ポリアミド
樹脂の重合度に関しては、硫酸相対粘度ηrが、1.5
〜2.7の範囲のものが好ましい。更に好ましくは1.
8〜2.6の範囲であり、とりわけ好ましくは2.0〜
2.5の範囲である。
【0042】かかる芳香族含有ポリアミドとは、分子鎖
中に芳香環を有しているものを指し、一般的にはジアミ
ン、もしくはジカルボン酸などの原料の内、一方が芳香
環を有し、他方がα、ω−直鎖脂肪族であるものなどを
指す。かかる芳香族含有ポリアミド樹脂として更に有用
なものとしては、ナイロンXD6、ナイロン6T/6
I、またはナイロン66/6I/6コポリマー、および
それらの混合物などが挙げられ、一層有用なものとして
は、メタキシリレンジアミドとアジピン酸との縮重合体
であるポリメタキシリレンアジパミドが挙げられる。
【0043】本発明で使用するポリアミド樹脂として、
ナイロン6およびポリメタキシリレンアジパミド好まし
く用いられる。ナイロン6を使用した場合、薄肉成形性
(成形時の流動性)を更に一層高く発現することができ
る。また、ポリメタキシリレンアジパミドを使用した場
合、成形後の成形品収縮が抑制され、ヒケやウェルド部
の膨らみなど外観上の欠陥を最小限に留めることがで
き、外観品位に優れる。
【0044】特にナイロン6などの脂肪族ポリアミド樹
脂とポリメタキシリレンアジパミドなどの芳香族含有ポ
リアミド樹脂とを併用する場合、その配合比率は、構成
要素[C]を100重量%とした場合、脂肪族ポリアミ
ド樹脂10〜100重量%に対して芳香族含有ポリアミ
ド樹脂0〜90重量%が好ましく、より好ましくは脂肪
族ポリアミド樹脂30〜100重量%に対して芳香族含
有ポリアミド樹脂0〜70重量%、更に好ましくは脂肪
族ポリアミド樹脂60〜100重量%に対して芳香族含
有ポリアミド樹脂0〜40重量%である。脂肪族ポリア
ミド樹脂の配合比率が該範囲を超えて少なすぎたり、多
すぎたりする場合、衝撃強度、強度などの力学的特性の
バランスのとれた材料が得られないので好ましくない。
特に、芳香族含有ポリアミド樹脂が該範囲を超えて配合
された場合、成形性の外観欠点を十分に抑制できるもの
の、薄肉流動性が損なわれ、前述の構成要素[B]の効
果をも損なう可能性がでてくる。
【0045】なお、該導電性樹脂組成物を100重量%
とした場合は、芳香族含有ポリアミド樹脂が3〜30重
量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは5〜
20重量%の範囲、更に好ましくは7〜15重量%の範
囲である。
【0046】脂肪族ポリアミド樹脂と芳香族含有ポリア
ミド樹脂とを併用する場合、それらの混合形態に関して
特に制限はないが、両成分がお互いに相溶し、両樹脂が
海島構造などの相分離した形態をとらないことが本発明
の効果を十分に発現するため好ましい。また、それらの
混合方法に関しても特にその制限はないが、両樹脂成分
を十分に相溶させるために、2軸押出機を用いて混合す
る方法を利用するのが好ましい。なお、両樹脂の混合に
おいて、導電性繊維は同時に混合されても、別途混合さ
れてもよい。
【0047】かかる構成要素[C]の樹脂としては、薄
肉成形性(成形時の流動性)の面から、フェノール系重
合体が含まれてもよい。特に、ポリアミド樹脂、とりわ
けナイロン6、もしくはナイロン66とフェノール系重
合体とが混合されていると、本発明の一つの効果である
薄肉成形性(成形時の流動性)をより高く発現すること
ができる。かかるフェノール系重合体の例としては、ノ
ボラック型、レゾール型等のフェノール樹脂、およびフ
ェノール共重合体等を挙げることができる。本発明で用
いられるフェノール系重合体として最も有用なものとし
ては、フェノール、もしくはフェノールの置換基誘導体
(前駆体a)と、二重結合を2個有する脂肪族炭化水素
(前駆体b)の縮合反応により得られるものを挙げるこ
とができる。前記縮合反応は、強酸、もしくはルイス酸
の存在下に行うことができる。また、フェノール系重合
体は、前駆体aと、系内で前駆体bを生成する化合物を
同様の条件で反応させて得ることもできる。
【0048】該前駆体aとしては、フェノールのベンゼ
ン核上に、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基より選ば
れる置換基を1〜3個有するものが好ましく用いられ
る。具体的には、クレゾール、キシレノール、エチルフ
ェノール、ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、
ノニルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノー
ル、クロロフェノール、ブロモフェノール、クロロクレ
ゾール、ヒドロキノン、レゾルシノール、オルシノール
などの例が挙げることができ、これらを複数種用いても
よい。特に好ましいものとしては、フェノール、クレゾ
ールが挙げられる。
【0049】該前駆体bとしては、環状構造を有してい
なくても、有していてもよい。環状構造を有していない
ものとしては、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエ
ン、ヘキサジエンなどの例を挙げることができる。環状
構造を有するものとしては、単環性の化合物では、シク
ロヘキサジエン、ビニルシクロヘキセン、シクロヘプタ
ジエン、シクロオクタジエン、C1016の分子式で表さ
れる単環式モノテルペン(ジペンテン、リモネン、テル
ピノレン、テルピネン、フェランドレン)など、二環性
の化合物では、2,5−ノルボルナジエン、テトラヒド
ロインデン、C1524の分子式で表される二環式セスキ
テルペン(カジネン、セリネン、カリオフィレン)な
ど、三環性の化合物では、ジシクロペンタジエンなどの
例を挙げることができ、これらを複数種用いてもよい。
該前駆体bとしては、炭素数6〜15のものが好まし
く、また環状構造を有するものが好ましい。環状構造を
有するものは、分子鎖が比較的剛直になり、力学的特性
に対して有利に寄与する。特に好ましいものとしては、
1016の分子式で表される単環式モノテルペン、ジシ
クロペンタジエンが挙げられる。また、系内で前駆体b
を生成する化合物としては、異性化によりジペンテンを
生成するピネン、カンフェンなどの例を挙げることがで
き、これらを複数種用いてもよい。
【0050】本発明で用いられるフェノール系重合体と
して特に優れたものとしては、前駆体aを2分子に対し
て、前駆体bを1分子付加した、極性の比較的高いもの
が挙げられる。特に、ポリアミド樹脂、とりわけナイロ
ン6、もしくはナイロン66と混合した場合、親和性に
優れるため好ましい。
【0051】これらフェノール系重合体は、重量平均分
子量が200以上1000以下であることが好ましい。
分子量が200未満であると、熱安定性に劣るため、成
形中に揮発し、成形品中にボイドなどの欠点を発生させ
る。一方、分子量が1000を超えると、薄肉成形性
(成形時の流動性)に劣り、本発明の効果を充分に発現
できないため、好ましくない。ここで、重量平均分子量
は、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC)を用い、検出
器としてレーザーを用いた低角度光散乱光度計(LAL
LS)を使用して測定した。
【0052】構成要素[C]に、これらフェノール系重
合体を配合する場合の配合率は、導電性樹脂組成物全量
を100重量%とした場合、0.5〜10重量%が好ま
しく、特に好ましくは1〜8重量%である。フェノール
系重合体の配合率が少なすぎたり、多すぎたりする場
合、薄肉成形品における成形性、衝撃強度、強度などの
力学的特性のバランスのとれた材料が得られないので好
ましくない。
【0053】同様に、かかる構成要素[C]の樹脂とし
ては、薄肉成形性(成形時の流動性)の面から、液晶性
樹脂が含まれてもよい。ポリアミド樹脂、とりわけナイ
ロン6、もしくはナイロン66と液晶性樹脂とが混合さ
れていると、本発明の一つの効果である成形時の流動性
を一層高く発現することができる。かかる液晶性樹脂と
は、溶融時に異方性を形成し得る熱可塑性樹脂のことを
指す。液晶性樹脂としては、液晶ポリエステル、液晶ポ
リエステルアミド、液晶ポリカーボネート、液晶ポリエ
ステルエラストマーなどの例が挙げられ、なかでも分子
鎖中にエステル結合を有するものが好ましく、特に液晶
ポリエステル、液晶ポリエステルアミドなどが好ましく
用いられる。但し、ポリアミド樹脂と液晶性樹脂とを混
合する場合には、ポリアミド樹脂の末端基(特にアミド
基)を、例えば酸無水物やエポキシ化合物などで封止し
ておくのが好ましい。
【0054】本発明に好ましく使用できる液晶性樹脂は
芳香族オキシカルボニル単位としてp−ヒドロキシ安息
香酸からなる構造単位を含む液晶性ポリエステルであ
り、また、エチレンジオキシ単位を必須成分とする液晶
性ポリエステルも好ましく使用できる。さらに好ましく
は下記構造単位(I) 、(III) 、(IV)からなるポリエステ
ルあるいは(I) 、(II)、(III) 、(IV)の構造単位からな
るポリエステルであり、最も好ましいのは(I) 、(II)、
(III) 、(IV)の構造単位からなるポリエステルである。
【0055】
【化1】 (ただし式中のR1
【0056】
【化2】 の(a)〜(j)から選ばれた一種以上の基を示し、R
2
【0057】
【化3】 の(A)〜(F)から選ばれた一種以上の基を示す。ま
た、式中Xは水素原子または塩素原子を示す。) なお、構造単位(II)および(III) の合計と構造単位(IV)
は実質的に等モルであることが好ましい。
【0058】上記構造単位(I) はp−ヒドロキシ安息香
酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4
´−ジヒドロキシビフェニル、3,3´,5,5´−テ
トラメチル−4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイ
ドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイ
ドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロ
キシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよ
び4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ば
れた一種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した
構造単位を、構造単位(III) はエチレングリコールから
生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イ
ソフタル酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸、2,
6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキ
シ)エタン−4,4´−ジカルボン酸、1,2−ビス
(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボ
ン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸
から選ばれた一種以上の芳香族ジカルボン酸から生成し
た構造単位を各々示す。これらのうちR1
【0059】
【化4】 であり、R2
【0060】
【化5】 であるものが特に好ましい。
【0061】上記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)
の共重合量は任意である。しかし、本発明の特性を発揮
させるためには次の共重合量であることが好ましい。
【0062】すなわち、上記構造単位(I)、(II)、(II
I)、(IV)からなる共重合体の場合は、上記構造単位(I)
および(II)の合計は構造単位(I)、(II)および(III)の合
計に対して30〜95モル%が好ましく、40〜93モ
ル%がより好ましい。また、構造単位(III)は構造単位
(I)、(II)および(III)の合計に対して70〜5モル%が
好ましく、60〜7モル%がより好ましい。また、構造
単位(I)と(II)のモル比[(I)/(II)]は好ましくは75
/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜
93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)お
よび(III)の合計と実質的に等モルであることが好まし
い。
【0063】一方、上記構造単位(II) を含まない場合
は流動性の点から上記構造単位(I)は構造単位(I)および
(III)の合計に対して40〜90モル%であることが
好ましく、60〜88モル%であることが特に好まし
く、構造単位(IV)は構造単位(III)と実質的に等モ
ルであることが好ましい。
【0064】また液晶性ポリエステルアミドとしては、
上記構造単位(I)〜(IV)以外にp−アミノフェノールか
ら生成したp−イミノフェノキシ単位を含有した異方性
溶融相を形成するポリエステルアミドが好ましい。
【0065】なお、上記好ましく用いることができる液
晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドは、上記
構造単位(I)〜(IV)を構成する成分以外に3,3’−ジ
フェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボ
ン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライ
ン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカ
ルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカ
ルボン酸、クロルハイドロキノン、3,4’−ジヒドロ
キシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルス
ルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィ
ド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4’
−ジヒドロキシビフェニルなどの芳香族ジオール、プロ
ピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−
ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−
シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメ
タノールなどの脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒド
ロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの
芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノ安息香酸
などを液晶性を損なわない程度の範囲でさらに共重合せ
しめることができる。
【0066】本発明で使用する液晶性樹脂は、ペンタフ
ルオロフェノール中で対数粘度を測定することが可能で
ある。その際、0.1g/dlの濃度で60℃で測定し
た値で0.5〜15.0dl/gが好ましく、1.0〜
3.0dl/gが特に好ましい。
【0067】また、本発明における液晶性樹脂の溶融粘
度は0.5〜500Pa・sが好ましく、特に1〜25
0Pa・sがより好ましい。また、流動性により優れた
組成物を得ようとする場合には、溶融粘度を100Pa
・s以下とすることが好ましい。
【0068】なお、この溶融粘度は融点(Tm)+10
℃の条件で、ずり速度1,000(1/秒)の条件下で
高化式フローテスターによって測定した値である。
【0069】ここで、融点(Tm)とは示差熱量測定に
おいて、重合を完了したポリマを室温から20℃/分の
昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(T
m1)の観測後、Tm1 +20℃の温度で5分間保持し
た後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した
後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測され
る吸熱ピーク温度(Tm2 )を指す。
【0070】液晶性樹脂の融点は、特に限定されない
が、ポリアミド樹脂への分散性の点から好ましくは34
0℃以下、より好ましくは330℃以下である。
【0071】本発明において使用する上記液晶性ポリエ
ステルの製造方法は、特に制限がなく、例えば、上記液
晶ポリエステルの製造においては、次の製造方法が好ま
しく挙げられる。 (1)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセ
トキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族
ジヒドロキシ化合物のジアシル化物と2,6−ナフタレ
ンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳
香族ジカルボン酸から脱酢酸縮重合反応によって製造す
る方法。 (2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒド
ロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒド
ロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレ
フタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無
水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化し
た後、脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。 (3)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよ
び4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン
などの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレン
ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香
族ジカルボン酸のジフェニルエステルから脱フェノール
重縮合反応により製造する方法。 (4)p−ヒドロキシ安息香酸および2,6−ナフタレ
ンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳
香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを
反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、
4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンな
どの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重
縮合反応により製造する方法。 (5)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル
のポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエ
チル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス
(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で(1)ま
たは(2)の方法により製造する方法。
【0072】液晶性ポリエステルの重縮合反応は無触媒
でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネー
ト、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチ
モン、金属マグネシウムなどの金属化合物を使用するこ
ともできる。
【0073】構成要素[C]に、これら液晶性樹脂を配
合する場合の配合率は、該導電性樹脂組成物全量を10
0重量%とした場合、0.3〜15重量%が好ましく、
特に好ましくは0.5〜10重量%である。液晶性樹脂
の配合率が少なすぎたり、多すぎたりする場合、薄肉成
形品における導電性、薄肉成形性、且つ衝撃強度、強度
などの力学的特性のバランスのとれた材料が得られない
ので好ましくない。
【0074】本発明の導電性樹脂組成物は、その体積固
有抵抗値が、0.25Ω・cm以下であるものが好まし
い。すなわち、かかる体積固有抵抗値が0.25Ω・c
mを越える場合、電磁波シールド材等の用途には適応し
にくく、用途が限定される。より好ましい体積固有抵抗
値は0.23Ω・cmであり、更に好ましい体積固有抵
抗値は0.20Ω・cmである。前記体積固有抵抗値
は、樹脂組成物からなる成形品から測定する。ここでい
う体積固有抵抗値とは、直方体形状を有している試験片
の導電ペーストを塗布された両端部の電気抵抗値から、
測定機器、治具などの接触抵抗値を減じた値について、
前記試験片の端部面積を乗じ、試験片長さで除すことに
より算出する。本発明では、単位はΩ・cmを用いた。
【0075】なお、かかる導電性樹脂組成物において、
成形品の導電性と外観品位とを同時に満足させるために
は、構成要素[A]の添加量を低く抑えるのがよく、構
成要素[B]により高導電化が容易になる。
【0076】本発明の導電性樹脂組成物は、該導電性樹
脂組成物100重量%に対して、構成要素[A]は5〜
50重量%、構成要素[B]は0.5〜15重量%の範
囲で配合されていることが好ましい。構成要素[A]が
5重量%未満であると、所望の導電性が得にくく、50
重量%を越えると、成形時の流動性が低下し、薄肉成形
性に劣る。また、構成要素[B]が0.5重量%未満で
あると、所望の導電性を得にくく、15重量%を越える
と、成形時の流動性が低下し、薄肉成形性に劣る。より
望ましくは構成要素[A]が8〜45重量%、構成要素
[B]が0.8〜12重量%であり、更に望ましくは構
成要素[A]が10〜40重量%、構成要素[B]が
1.0〜10重量%である組成がよい。
【0077】本発明の導電性樹脂組成物には、構成要素
[D]として赤リンが配合されていてもよい。赤リンは
そのままでは不安定であり、また、水に徐々に溶解した
り、水と徐々に反応する性質を有するので、赤リンとし
ては、これを防止する処理を施したものがよい。このよ
うな赤リンの処理方法としては、特開平5−22980
6号公報に記載の赤リンの粉砕を行わず、赤リン表面に
水や酸素との反応性が高い破砕面を形成させずに赤リン
を微粒子化する方法、赤リンに水酸化アルミニウムまた
は水酸化マグネシウムを微量添加して赤リンの酸化を触
媒的に抑制する方法、赤リンをパラフィンやワックスで
被覆し、水分との接触を抑制する方法、ε−カプロラク
タムやトリオキサンと混合することにより安定化させる
方法、赤リンをフェノール系、メラミン系、エポキシ
系、不飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂で被覆す
ることにより安定化させる方法、赤リンを銅、ニッケ
ル、銀、鉄、アルミニウムおよびチタンなどの金属塩の
水溶液で処理して、赤リン表面に金属リン化合物を析出
させて安定化させる方法、赤リンを水酸化アルミニウ
ム、水酸化マグネシウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛な
どで被覆する方法、赤リン表面に鉄、コバルト、ニッケ
ル、マンガン、スズなどで無電解メッキ被覆することに
より安定化させる方法およびこれらを組合せた方法が挙
げられるが、好ましくは、赤リンの粉砕を行わずに赤リ
ン表面に破砕面を形成させずに赤リンを微粒子化する方
法、赤リンをフェノール系、メラミン系、エポキシ系、
不飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂で被覆するこ
とにより安定化させる方法、赤リンを水酸化アルミニウ
ム、水酸化マグネシウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛な
どで被覆することにより安定化させる方法であり、特に
好ましくは、赤リン表面に破砕面を形成させずに赤リン
を微粒子化する方法、赤リンをフェノール系、メラミン
系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系などの熱硬化性
樹脂で被覆することにより安定化させる方法である。こ
れらの熱硬化性樹脂の中で、フェノール系熱硬化性樹
脂、エポキシ系熱硬化性樹脂で被覆された赤リンが耐湿
性の面から好ましく使用することができ、特に好ましく
はフェノール系熱硬化性樹脂で被覆された赤リンであ
る。
【0078】また、赤リンの平均粒径は、難燃性、力学
的特性、耐湿熱特性およびリサイクル使用時の粉砕によ
る赤リンの化学的・物理的劣化を抑える点から、0.0
1〜35μmのものが好ましく、さらに好ましくは、
0.1〜30μmのものである。
【0079】なお赤リンの平均粒径は、一般的なレーザ
ー回折式粒度分布測定装置により測定することが可能で
ある。粒度分布測定装置には、湿式法と乾式法がある
が、いずれを用いてもかまわない。湿式法の場合は、赤
リンの分散溶媒として、水を使用することができる。こ
の時アルコールや中性洗剤により赤リン表面処理を行っ
てもよい。また分散剤として、ヘキサメタリン酸ナトリ
ウムやピロリン酸ナトリウムなどのリン酸塩を使用する
ことも可能である。また分散装置として超音波バスを使
用することも可能である。
【0080】また、本発明で使用される赤リンの平均粒
径は上記のごとくであるが、赤リン中に含有される粒径
の大きな赤リン、すなわち粒径が75μm以上の赤リン
は、難燃性、力学的特性、耐湿熱性、リサイクル性を著
しく低下させるため、粒径が75μm以上の赤リンは分
級などにより除去することが好ましい。粒径が75μm
の赤リン含量は、難燃性、力学的特性、耐湿熱性、リサ
イクル性の面から、10重量%以下が好ましく、さらに
好ましくは8重量%以下、特に好ましくは5重量%以下
である。下限に特に制限はないが、0に近いほど好まし
い。
【0081】ここで赤リンに含有される粒径が75μm
の赤リン含量は、75μmのメッシュにより分級するこ
とで測定することができる。すなわち赤リン100gを
75μmのメッシュで分級した時の残さ量Z(g)よ
り、粒径が75μm以上の赤リン含量はZ/100×1
00(%)より算出することができる。
【0082】また、本発明で使用される赤リンの熱水中
で抽出処理した時の導電率(ここで導電率は赤リン5g
に純水100mLを加え、例えばオートクレーブ中で、
121℃で100時間抽出処理し、赤リンろ過後のろ液
を250mLに希釈した抽出水の導電率を測定する)
は、得られる成形品の耐湿性、機械的強度、耐トラッキ
ング性、および表面性の点から通常0.1〜1000μ
S/cmであり、好ましくは0.1〜800μS/c
m、さらに好ましくは0.1〜500μS/cmであ
る。
【0083】また、本発明で使用される赤リンのホスフ
ィン発生量(ここでホスフィン発生量は、赤リン5gを
窒素置換した内容量500mLの例えば試験管などの容
器に入れ、10mmHgに減圧後、280℃で10分間
加熱処理し、25℃に冷却し、窒素ガスで試験管内のガ
スを希釈して760mmHgに戻したのちホスフィン
(リン化水素)検知管を用いて測定し、つぎの計算式で
求める。ホスフィン発生量(ppm)=検知管指示値
(ppm)×希釈倍率)は、得られる組成物の発生ガス
量、押出し、成形時の安定性、溶融滞留時機械的強度、
成形品の表面外観性、成形品による端子腐食などの点か
ら通常100ppm以下のものが用いられ、好ましくは
50ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下であ
る。
【0084】好ましい赤リンの市販品としては、燐化学
工業社製“ノーバエクセル”140、“ノーバエクセ
ル”F5等、およびそれら相当品が挙げられる。
【0085】本発明の導電性樹脂組成物には、構成要素
[E]として金属水酸化物が配合されていてもよい。本
発明で使用される金属水酸化物は、マグネシウム、カル
シウム、バリウム、亜鉛などのII族の金属、およびアル
ミニウムなどのIII 族の金属からなる水酸化物であり、
例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸
化バリウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、硫酸マ
グネシウムウイスカーなどが挙げられ、これらは単独で
も、混合して用いてもよい。本発明で使用される金属水
酸化物としては、耐熱性の面から水酸化マグネシウムが
好ましい。
【0086】本発明で使用される水酸化マグネシウムは
天然型であっても、合成型であってもよいが、好ましく
は平均結晶粒径の分布範囲が小さく、該構成要素[C]
中での分散性に優れる合成型のものがよい。水酸化マグ
ネシウムの平均結晶粒径は、力学的特性の低下を抑える
点から、0.2〜50μmが好ましい。更に好ましくは
0.5〜10μmであり、より好ましくは、0.7〜5
μmである。平均結晶粒径が0.2μm未満である場
合、該構成要素[C]とのコンパウンド時の押出機への
フィード性に劣るといった製造プロセス上での問題が生
じる場合がある。また、50μmを超える場合は、該構
成要素[C]中での分散性に劣り、難燃性に劣るといっ
た問題が生じる場合がある。
【0087】水酸化マグネシウムの一次結晶粒子の形状
は、六角板状、針状のいずれでもよく、それらの混合物
であってもよい。この場合の一次結晶粒子のアスペクト
比は200以下のものが好ましい。アスペクト比が20
0を越えると、一般的に特に衝撃強度の低下を招く場合
があるため好ましくない。また、成形時の流動性に優れ
るためには、一次結晶粒子の形状が六角板状で、特にc
軸が発達した球状に近い形状であることが好ましく、こ
の場合の一次結晶粒子のアスペクト比は100以下であ
る。
【0088】本発明で用いられる金属水酸化物として
は、表面処理剤で表面処理がしてあっても、無処理でも
よい。表面処理剤としては、例えば、ステアリン酸など
の飽和高級脂肪酸、オレイン酸などの不飽和高級脂肪
酸、そのアルカリ金属塩、オルトリン酸とステアリルア
ルコールとのモノ、またはジエステルであって、それら
の酸、またはアルカリ金属塩などのリン酸部分エステル
などが挙げられる。また、熱安定性向上のために、フェ
ノール系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエステ
ル系などの熱硬化性樹脂で被覆してもよく、構成要素
[C]との接着性向上のために、シランカップリング
剤、アルミネートカップリング剤、チタネートカップリ
ング剤、ウレタン系、アミド系などの高極性樹脂で被覆
してもよい。あるいは、成形品の表面白化現象を抑え、
耐酸性、および難燃性を更に向上させるために、金属元
素を表面に固溶させてもよい。金属元素としては、例え
ば、ニッケル、亜鉛、鉄などが挙げられる。より好まし
くは、成形中に構成要素[C]と化学的相互反応を起こ
さない表面処理剤で表面処理が施されているのがよい。
成形中に化学的相互反応を起こす表面処理が施されてい
る場合、成形時の流動性に劣り、本発明の効果を十分に
発現できない可能性がある。表面処理剤の表面処理量
は、金属水酸化物100重量部当たり0.1〜10重量
部が好ましく、0.5〜5重量部がより好ましい。
【0089】好ましい水酸化マグネシウムの市販品とし
ては、協和化学工業社製“キスマ5E”粉末品、粒状品
等、およびその相当品が挙げられる。
【0090】本発明では、各構成要素の他にも充填材と
して、例えば、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭
酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス
マイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラス
テナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウ
ム、グラファイト、チタン酸カリウムウィスカ、ホウ酸
アルミウィスカなどを使用できる。これらの充填材は単
独でも、2種類以上ブレンドしたものでもよい。本発明
で用いられる充填材としては、特にポリアミド樹脂を使
用した場合、構成要素[C]中での分散性、力学的特
性、価格のバランスから、ワラステナイト、もしくはチ
タン酸カリウムが好ましい。
【0091】本発明の導電性樹脂組成物は、例えば射出
成形(射出圧縮成形、ガスアシスト射出成形、インサー
ト成形など)、ブロー成形、押出成形、プレス成形、ト
ランスファー成形、フィラメントワインディング成形な
どの成形方法によって成形されるが、最も好ましい成形
法は、生産性の高い射出成形(射出圧縮成形、ガスアシ
スト射出成形、など)法により成形するのがよい。かか
る成形に用いられる成形材料の形態としては、ペレッ
ト、BMC、SMC、スタンパブルシート、プリプレグ
等を使用することができるが、最も好ましい成形材料は
ペレットである。
【0092】本発明でいうペレットとは、構成要素
[A]〜[C]、必要に応じて構成要素[D]、
[E]、およびその他の構成要素が、所望量配合される
ように、それぞれ、もしくは幾つかを必要回数だけ押出
機などを用いて混練し、押し出したものを所望長さに切
断したもの(以下、この一連の工程をコンパウンドと記
す)を指す。また、前記ペレットと、少なくとも構成要
素[A]を含むペレットとをドライブレンドすることに
よって得られたものも同様にペレットと呼ぶ。コンパウ
ンドに使用する構成要素[A]は、チョップド糸、ミル
ド糸のような不連続糸であっても連続糸であってもよ
い。
【0093】本発明の導電性樹脂組成物からなる導電性
樹脂成形品が、高い導電性、力学的特性(強度、剛性、
衝撃強度等)を兼ね備えるためには、成形品中の構成要
素[A]の長さを長くすることが有効であるが、そのた
めには、前述のペレットの中でも長繊維ペレットの形態
をとることが好ましい。
【0094】長繊維ペレットを用いて成形した場合、成
形品中での構成要素[A]の長さを長く維持することが
できるため、力学的特性の他に、特に本発明の課題であ
る導電性を飛躍的に向上させることができる。つまり、
通常のペレットでは高い導電性を達成できない場合で
も、長繊維ペレットを用いた場合には、体積固有抵抗が
0.25Ω・cm以下といった高い導電性の達成が可能
となる。特に、構成要素[A]の配合量が、本発明の導
電性樹脂組成物全量中の20重量%以下のような低い配
合率の場合には、通常のペレットに比べて導電性の発現
効果は顕著であり、このような範囲の構成要素[A]の
配合率で長繊維ペレットを用いることは、高い導電性を
達成するためには非常に有効である。もちろん、力学的
特性(特に衝撃強度)に関しても、同様にその向上効果
は絶大である。
【0095】一方、構成要素[A]の配合率が20重量
%を越えるような高い配合率の場合には、構成要素
[B]の効果により、通常のペレットでも導電性をある
程度達成することができる。但し、力学特性(特に衝撃
強度)に関しては、その向上効果は小さく、長繊維ペレ
ットの改善効果には及ばない。
【0096】本発明で用いられる長繊維ペレットのペレ
ット長さとしては、2〜26mmの範囲であることが好
ましい。より好ましくは4〜15mmの範囲であり、更
に好ましくは5〜10mmの範囲である。
【0097】本発明でいう長繊維ペレットとは、例えば
特公昭63−37694公報に示されるような、繊維が
ペレットの長手方向にほぼ平行に配列し、ペレット中の
繊維の長さがペレット長さとほぼ同一、もしくはそれ以
上であるペレットが含まれるものを指す。この場合、少
なくとも構成要素[C]を含む本発明中の各構成要素
は、構成要素[A]束中に含浸されていても、構成要素
[A]束に被覆されていてもよい。特に、被覆された長
繊維ペレットの場合、構成要素[A]束は、構成要素
[C]中で最も配合量が多い樹脂よりも溶融粘度が低い
樹脂(以下、構成要素[C1]と記す)で予め含浸さ
れ、構成要素[A]と構成要素[C1]との複合体を形
成した後に、少なくとも構成要素[C]を含む本発明中
の各構成要素で被覆されていることが好ましい。ここで
構成要素[C1]としては、例えば、フェノール系重合
体、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、液晶性樹脂、アル
コール(または水)可溶性樹脂、あるいは構成要素
[C]よりも低分子量の樹脂などを挙げることができ
る。
【0098】本発明において特に好ましいペレットの形
態としては、構成要素[B]、[C]、必要に応じて構
成要素[D]、[E]、その他の構成要素がコンパウン
ドされたペレットと、構成要素[C1]が予め構成要素
[A]束中に含浸された複合体に、少なくとも構成要素
[C]を含む本発明中の各各構成要素が該複合体に被覆
されている長繊維ペレットとを、ドライブレンドされた
ものを例として挙げることができる。特に構成要素
[B]は、構成要素[A]束中や、構成要素[A]のサ
イジング剤中や、構成要素[C1]中に予め混合されて
いてもよい。
【0099】前記ペレットを用いた射出成形による導電
性樹脂成形品において、高い導電性、力学的特性(特に
強度、衝撃強度)を同時に達成するためには、成形品中
の構成要素[A]の長さを長くすることが有効であるこ
とは前述の通りであるが、この場合、特に成形条件およ
び射出成形機、さらに金型の影響を考慮しなければなら
ない。成形条件に関していえば、背圧が低いほど、射出
速度が遅いほど、スクリュー回転数が遅いほど、成形品
中の構成要素[A]の長さが長くなる傾向があり、特に
背圧は、計量性が不安定にならない程度に、できるだけ
低く設定するのが好ましい。好ましい背圧は1〜10k
gf/cm2 である。射出成形機については、ノズル径
が太いほど、ノズルのテーパー角度が小さいほど、スク
リュー溝深さが深いほど、圧縮比が低いほど、成形品中
の構成要素[A]の長さが長くなる傾向がある。金型に
ついては、スプルー径を大きくするほど、ゲート径を大
きくするほど、成形品中の構成要素[A]の長さが長く
なる傾向がある。
【0100】本発明における導電性樹脂成形品は、高い
薄肉成形性、剛性だけではなく、構成要素[A]、
[B]、[D]、[E]に起因する高い難燃性(特にド
リップ防止)を兼ね備えているため、UL−94規格に
おいて、1/16インチ以下の厚みでの難燃性がV−0
以上である導電性樹脂成形品として用いるのがよい。望
ましくは1/24インチ以下の厚みでの難燃性がV−0
以上であり、特に望ましくは1/32インチ以下の厚み
での難燃性がV−0以上である導電性樹脂成形品として
用いるのがよい。
【0101】本発明における導電性成形品は、該構成要
素[A]として特に炭素繊維を用いた場合、高い導電性
だけではなく、主に炭素繊維に起因する高い衝撃強度を
兼ね備えているため、ASTM D 256規格におけ
るIzod衝撃強度が、1/8インチ厚で70〜250
J/mの範囲である導電性成形品として用いるのが最適
である。好ましくは80〜230J/mの範囲、特に好
ましくは90〜200J/mの範囲である導電性成形品
として用いるのが本発明の効果をより発揮できる。
【0102】本発明における導電性成形品は、該構成要
素[A]として特に炭素繊維を用いた場合、高い導電性
だけではなく、主に炭素繊維に起因する高い剛性を兼ね
備えているため、ASTM D 790規格(スパン間
距離L/板厚D=16)において、板厚1/4インチで
の曲げ剛性が8〜40GPaの範囲である導電性成形品
として用いるのが最適である。好ましくは10〜30G
Paの範囲、特に好ましくは12〜25GPaの範囲で
ある導電性成形品として用いるのが本発明の効果をより
発揮できる。
【0103】本発明における導電性成形品は、高い導電
性に加え、薄肉成形性(成形時の流動性)を兼ね備えて
いるので、従来の導電性成形品より肉厚を薄くすること
が可能であり、肉厚が0.3〜4mmの範囲である導電
性成形品として用いるのが最適である。好ましくは、肉
厚0.5〜3mm、更に好ましくは0.6〜2mm、と
りわけ好ましくは肉厚0.7〜1.6mmの範囲である
導電性成形品として用いるのが本発明の効果をより発揮
できる。ここでいう肉厚とは、成形品のうち、リブ部分
やボス部分などの突起物などを除いた平板部分の肉厚を
指す。
【0104】本発明における導電性成形品は、少量の導
電性繊維の配合によっても高い導電性を達成できるた
め、ASTM D 792規格における比重が、1.0
〜1.8の範囲である導電性成形品として用いるのが最
適である。好ましくは1.1〜1.7の範囲、特に好ま
しくは1.2〜1.6の範囲である導電性成形品として
用いるのが本発明の効果をより発揮できる。
【0105】本発明における導電性成形品の用途として
は、高い導電性、成形性、力学的特性(特に剛性)が求
められる電子・電気機器用部材などが挙げられる。本発
明の導電性成形品は、高い剛性、軽量化、電磁波シール
ド性などが達成できるため、特に携帯用の電子・電気機
器のハウジングなどの用途に有効である。より具体的に
は、大型ディスプレイ、ノート型パソコン、携帯用電話
機、PHS、PDA(電子手帳などの携帯情報端末)、
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯用ラジオカ
セット再生機などのハウジングなどに好んで使用され
る。
【0106】また、高い導電性を有しているため、導電
性繊維の少量添加で帯電/放電防止性を付与することが
でき、それらの特性が必要とされる部材、例えばICト
レー、シリコンウェーハー運搬用バスケットなどへの適
応にも有用である。
【0107】
【実施例】以下、実施例によって本発明を更に詳細に説
明するが、下記実施例は本発明を制限するものではな
く、前・後記の主旨を逸脱しない範囲で変更実施するこ
とは、全て本発明の技術範囲に包含される。
【0108】得られた導電性樹脂成形品の評価項目およ
びその方法を下記に示す。 (a)体積固有抵抗 ファンゲートにて射出成形した幅12.7mm×長さ6
5mm×厚さ2mmの試験片を、絶乾状態(水分率0.
1%以下)で測定に供した。まず、幅×厚さ面に導電性
ペースト(藤倉化成(株)製ドータイト)を塗布し、十
分に導電性ペーストを乾燥させてから、その面を電極に
圧着し、電極間の電気抵抗値をデジタルマルチメーター
(FLUKE社製)にて測定する。前記電気抵抗値から
測定機器、治具等の接触抵抗を減じた値に、導電性ペー
スト塗布面の面積を乗じ、次いで、その値を試験片長さ
で除したものを体積固有抵抗値とした(単位はΩ・c
m)。 (b)剛性 ASTM D 790(スパン間距離L/厚さD=1
6)に準拠した曲げ弾性率にて評価した(単位はGP
a)。用いた試験片の板厚は1/4インチ厚で、水分率
0.1%以下で試験に供した。なお射出成形は、シリン
ダ温度280℃、金型温度70℃にて行った。 (c)Izod衝撃強度 ASTM D 256に準拠したモールドノッチ有りI
zod衝撃強度にて評価した(単位はJ/m)。用いた
試験片の板厚は1/8インチ厚で、水分率0.1%以下
で試験に供した。なお射出成形は、シリンダ温度280
℃、金型温度70℃にて行った。 (d)薄肉成形性 幅150mm×長さ150mm×厚さ1mmの薄肉平板
を、ファンゲートにて射出成形する際の射出圧力で薄肉
成形性を代表させた(単位はkg/cm2)。射出圧力
が低いほど、薄肉成形性(射出成形時の流動性)に優れ
るといえる。なお射出成形は、射出成形機J150EI
I−P(日本製鋼所製、型締力150t)を用いて、シ
リンダ温度280℃、金型温度70℃にて行った。 (e)外観品位 (d)項にて成形した薄肉平板について、表面光沢、導
電性繊維の浮き・分散、色ムラの欠陥を相対的に評価し
た。◎(前述欠陥なし)、○(前述欠陥のいずれか1つ
有する)、△(前述欠陥をいずれか2つ有する)、×
(前述欠陥を全て有する) (実施例1〜4、比較例1〜4)所望量の構成要素
[B]、必要に応じて構成要素[D]、[E]と、構成
要素[C]とを2軸押出機にてコンパウンドし、各構成
要素が配合されたマスターペレットを用意する。次い
で、該マスターペレットを、1軸押出機にて、その先端
に取り付けたクロスヘッドダイ中に十分溶融混練された
状態で押し出し、同時に、構成要素[A]も連続して前
記クロスヘッドダイ中に供給することによって、少なく
とも構成要素[C]を含む各構成要素を、構成要素
[A]束中に十分含浸させる。前記クロスヘッドダイと
は、そのダイ中で繊維束を開繊させながら溶融樹脂等を
繊維束中に含浸させる装置のことをいう。このようにし
て得られた連続した構成要素[A]束を含有したストラ
ンドを冷却後、カッターで7mmに切断して、長繊維ペ
レットを得た。
【0109】各構成要素の種類およびその配合率は表1
に示した通りである。得られたペレットを80℃にて5
時間以上真空中で乾燥させた後、(a)〜(e)項記載
の各試験の射出成形に供した。評価結果を表1に示す。 (実施例5、比較例5)前記マスターペレットを2軸押
出機にて、メインホッパーから投入し、押し出しなが
ら、チョップド糸に加工された構成要素[A]をサイド
ホッパーから投入し、少なくとも構成要素[C]を含む
各構成要素を構成要素[A]束中に含浸させる。このよ
うにして得られた不連続の構成要素[A]を含有するガ
ットを冷却後、カッターで5mmに切断して、通常のペ
レットを得た。
【0110】各構成要素の種類、およびその配合率は表
1に示した通りである。得られたペレットを80℃にて
5時間以上真空中で乾燥させた後、(a)〜(e)項記
載の各試験の射出成形に供した。評価結果を表1に示
す。
【0111】
【表1】 なお、表1における各構成要素の表記は下記に準じる。 構成要素[A] CF1:PAN系炭素繊維[平均繊維直径=約7μm、
伸度=約1.5%] CF2:PAN系炭素繊維[平均繊維直径=約7μm、
伸度=約2.1%] NiCF:ニッケル被覆PAN系炭素繊維[上記CF2
にCVDにてニッケルを約0.3μm厚で被覆したも
の:平均繊維直径=約87.6μm、伸度=約2.1
%] 構成要素[B] CB1:カーボンブラック[Δν3/2=約49c
-1、Δ(I3−I1)=約229cm-1、I2 /I1
0.68、I2 /I3 =0.60] CB2:カーボンブラック[Δν3/2=約54c
-1、Δ(I3−I1)=約226cm-1、I2 /I1
0.69、I2 /I3 =0.60] CB3:カーボンブラック[Δν3/2=約41c
-1、Δ(I3−I1)=約241cm-1、I2 /I1
0.63、I2 /I3 =0.56] CB4:カーボンブラック[Δν3/2=約43c
-1、Δ(I3−I1)=約245cm-1、I2 /I1
0.35、I2 /I3 =0.39] 構成要素[C] Ny6:ナイロン6樹脂[東レ(株)製アミランCM1
001:ηr=約2.4] MXNy:半芳香族ポリアミド樹脂[三菱ガス化学
(株)製MXナイロン6001:ηr=約2.2] T/P:テルペン・フェノール樹脂[ヤスハラケミカル
(株)製YP90L] LCP:液晶性樹脂[p−ヒドロキシ安息香酸528重
量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル126重量
部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6d
l/gのポリエチレンテレフタレ−ト864重量部及び
無水酢酸586重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容
器に仕込み、重合を行うことにより得られる、芳香族オ
キシカルボニル単位42.5モル%、芳香族ジオキシ単
位7.5モル%、エチレンジオキシ単位50モル%、芳
香族ジカルボン酸単位57.5モル%からなる融点20
8℃、溶融粘度15Pa・sの液晶性樹脂] 構成要素[D] RP:赤リン[燐化学工業(株)製ノーバエクセル14
0:平均粒径=約30μm、フェノール系熱硬化性樹脂
被覆、導電率=約180〜200μS/cm] 構成要素[E] Mg:水酸化マグネシウム[協和化学工業(株)製キス
マ5E−U:合成型、平均結晶粒径=約1.0μm、ア
ミド系高極性樹脂被覆、粒状品] 表1の結果から以下のことが明らかである。 1.カーボンブラック配合の効果(実施例1、2と比較
例1、2との比較、および実施例5と比較例5との比
較) 1−1.長繊維ペレットの場合 カーボンブラックを配合していない比較例1に比べて、
本発明で用いられるカーボンブラックを配合している実
施例1、2は、体積固有抵抗を著しく低くすることがで
き、大幅に導電性に優れた成形品を得ることができる。
また、力学的特性(剛性、衝撃強度)も、ほぼ同じレベ
ルにすることができ、その優位性は明らかである。
【0112】また、カーボンファイバーとカーボンブラ
ックとの配合率の和で示されるカーボン総量が同一(2
5重量%)であるはずの比較例2に比べても、実施例
1、2は体積固有抵抗値を低くすることができ、その効
果の絶大さが理解できる。
【0113】実施例1、2は、構成要素[A]の配合量
を最小限に抑えることができるため、比較例1、2より
外観品位に優れるだけでなく、同じ導電性を得ようとし
た場合の材料コストの面からも大きな優位性を有する。 1−2.通常のペレットの場合 1−1項記載の長繊維ペレットの場合と同様に、カーボ
ンブラックを配合していない比較例5に比べて、本発明
で用いられるカーボンブラックを配合している実施例5
は、体積固有抵抗を著しく低くすることができ、大幅に
導電性に優れた成形品を得ることができる。また、力学
的特性(剛性、衝撃強度)も、ほぼ同じレベルにするこ
とができ、その優位性は明らかである。 2.カーボンブラック種類の効果(実施例1、2と比較
例3、4との比較) 2−1.長繊維ペレットの場合 本発明の範囲外であるカーボンブラックを配合している
比較例3に比べて、本発明の範囲に含まれるカーボンブ
ラックを配合している実施例1、2は、体積固有抵抗を
低くすることができ、導電性に優れた成形品を得ること
ができる。射出圧力についても、比較例3に比べて、実
施例1、2は射出圧力を低くすることができ、薄肉成形
性についても優れる。また、外観欠陥についても、比較
例3に比べて、実施例1、2は欠陥が少なく、外観品位
に優れた。
【0114】一方、比較例4は、実施例1、2と同等レ
ベルまで体積固有抵抗を低くすることができ、導電性に
優れた成形品を得ることができるが、(d)項記載の薄
肉平板については、充填すらすることができず、薄肉成
形性に著しく劣った。 3.長繊維ペレットの効果(実施例2と実施例5との比
較) 通常のペレットを用いた実施例5に比べて、長繊維ペレ
ットを用いた実施例2は、構成要素[A]の配合率が低
いにも関わらず、体積固有抵抗を低くすることができ、
導電性に優れた成形品を得ることができる。
【0115】これは、実施例5よりも実施例2の方が、
成形品中の構成要素[A]の長さを長くできることによ
る。つまり、実施例2の成形品中の重量的平均繊維長さ
は0.533mm(数mmの長い構成要素[A]が多く
存在)であったのに対して、実施例5の場合には、得ら
れた成形品中の重量平均繊維長は0.224mm(数m
m程度の長い構成要素[A]は皆無)であったことによ
る。なお、重量的平均繊維長さの算出方法について
は、”複合材料入門”D.Hull著、p.65、培風
館に詳細な記載がある。
【0116】これらの比較から、導電性に及ぼす樹脂成
形品中の構成要素[A]の長さの重要性は明らかであ
り、本発明で用いられる導電性樹脂組成物としては、長
繊維ペレットの形態をとることがより好ましい。 4.難燃性の効果 構成要素[B]、[D]、[E]を配合した実施例4
は、構成要素[A]の配合率が20重量%と少ないにも
関わらず、UL−94規格において、1/32インチ厚
でV−0と、極めて高い難燃性を示した。
【0117】
【発明の効果】本発明によれば、従来は達成が困難であ
った、高い導電性、力学的特性(強度、剛性、衝撃強度
等)、薄肉成形性(成形時の流動性等)、外観品位を兼
ね備えた導電性樹脂成形品を提供することができる。こ
のような導電性樹脂成形品は、特に電子機器類のハウジ
ング等を始め、前記特性を必要とする幅広い産業分野に
好適であり、その工業的な効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導電性樹脂組成物を構成するカーボン
ブラックの一例のラマンスペクトルである。
【符号の説明】 I1 :ラマンシフト1360cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極大値。 I2 :ラマンシフト1480cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極小値。 I3 :ラマンシフト1580cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極大値。 I3 /2:ラマンシフト1580cm-1付近に現れるラ
マン散乱強度の極大値の半値。 Δν3/2:I3の半値における高波数側のみの幅 Δ(I3−I1):I3とI1のラマンシフトの幅
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4J002 AA00W AA01W BB03W BB12W BB17W BC03W BC06W BD04W BG03X BN12W BN15W CB00W CC03W CC16W CC18W CD00W CF00W CF06W CF07W CF16W CF21W CG00W CH07W CH09W CL00W CL00X CL06X CL08W CM04W CN01W CN01X CN03W DA016 DA037 DA076 DC006 DJ006 DL006 FA04X FA046 FB07X FD01X FD010 FD116 GG00 GQ00 GQ02 GQ05 5G301 DA18 DA20 DA42 DA51 DA55 DD06 DD08 DD10

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも次の構成要素[A]、
    [B]、[C]からなる導電性樹脂組成物において、該
    構成要素[B]が少なくとも次の条件[B1]、[B
    2]のいずれか、もしくは両方を満たすことを特徴とす
    る導電性樹脂組成物。 [A]:導電性繊維 [B]:カーボンブラック [C]:樹脂 [B1]:Δν3/2が、46〜59cm-1の範囲であ
    る [B2]:Δ(I3−I1)が、211〜233cm-1
    範囲である Δν3/2:I3の半値における高波数側のみの幅 Δ(I3−I1):I3とI1のラマンシフトの幅 I1:ラマンシフト1360cm-1付近に現れるラマン
    散乱強度の極大値 I3:ラマンシフト1580cm-1付近に現れるラマン
    散乱強度の極大値
  2. 【請求項2】 該構成要素[B]が、少なくとも次の条
    件[B3]、[B4]のいずれか、もしくは両方を満た
    すことを特徴とする請求項1に記載の導電性樹脂組成
    物。 [B3]:ラマン散乱強度比I2 /I1 が、0.65〜
    0.75の範囲である [B4]:ラマン散乱強度比I2 /I3 が、0.57〜
    0.67の範囲である I2:ラマンシフト1480cm-1付近に現れるラマン
    散乱強度の極小値
  3. 【請求項3】 該導電性樹脂組成物が、0.25Ω・c
    m以下の体積固有抵抗値を有することを特徴とする請求
    項1または2に記載の導電性樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 該導電性樹脂組成物100重量%中に、
    構成要素[A]、[B]が、次の範囲で含有されている
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電
    性樹脂組成物。 [A]:5〜50重量% [B]:0.5〜15重量%
  5. 【請求項5】 該構成要素[A]が、炭素繊維であるこ
    とを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の導電性
    樹脂組成物。
  6. 【請求項6】 該構成要素[C]が熱可塑性樹脂である
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の導電
    性樹脂組成物。
  7. 【請求項7】 該熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂である
    ことを特徴とする請求項6に記載の導電性樹脂組成物。
  8. 【請求項8】 該構成要素[C]がフェノール系重合体
    であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載
    の導電性樹脂組成物。
  9. 【請求項9】 該構成要素[C]が液晶性樹脂であるこ
    とを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の導電性
    樹脂組成物。
  10. 【請求項10】 長繊維ペレットの形態をとることを特
    徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の導電性樹脂組
    成物。
  11. 【請求項11】 請求項1〜10のいずれかに記載の導
    電性樹脂組成物を用いて射出成形されたものであること
    を特徴とする導電性樹脂成形品。
  12. 【請求項12】 UL−94規格における難燃性が、1
    /16インチ厚以下でV−0以上であることを特徴とす
    る請求項11に記載の導電性樹脂成形品。
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