JP2002231051A - 導電性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents

導電性樹脂組成物およびその成形品

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JP2002231051A
JP2002231051A JP2001028180A JP2001028180A JP2002231051A JP 2002231051 A JP2002231051 A JP 2002231051A JP 2001028180 A JP2001028180 A JP 2001028180A JP 2001028180 A JP2001028180 A JP 2001028180A JP 2002231051 A JP2002231051 A JP 2002231051A
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resin composition
conductive resin
raman
conductive
molded article
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JP2001028180A
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Eisuke Wadahara
英輔 和田原
Soichi Ishibashi
壮一 石橋
Kenichi Yoshioka
健一 吉岡
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Toray Industries Inc
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、高い導電性、成形性(成形時の流
動性等)、および外観品位を兼ね備えた導電性樹脂組成
物およびその成形品を提供せんとするものである。 【解決手段】 本発明の導電性樹脂組成物は、少なくと
も次の構成要素[A]、[B]および[C]からなり、
構成要素[A]が少なくとも次の条件(A1)、(A
2)の何れか、または両方を満たすことを特徴とする。 [A]:不連続繊維状または針状黒鉛フィラー [B]:導電性繊維 [C]:樹脂 (A1):ラマン散乱強度比I2 /I1 が、0.3未満
であること。 (A2):ラマン散乱強度比I2 /I3 が、0.3未満
であること。 ただし、I1:ラマンシフト1360cm-1付近に現れ
るラマン散乱散乱強度の極大値 I2:ラマンシフト1480cm-1付近に現れるラマン
散乱散乱強度の極小値 I3:ラマンシフト1580cm-1付近に現れるラマン
散乱散乱強度の極大値 また、本発明の成形材料、成形品は、かかる導電性樹脂
組成物を加工、成形されたものであることを特徴とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高い導電性、成形
性(成形時の流動性等)、および外観品位を兼ね備えた
導電性樹脂組成物、成形品およびその成形品に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来から、樹脂に導電性材料(例えば炭
素繊維など)を配合することによって、所望の導電性を
有する樹脂組成物の提案が行われている。これに対して
近年、更に高い導電性を得るために、一般的な導電性材
料の配合の増量、特定の導電性材料の配合、複数の導電
性材料の併用などの各種試みが行われてきた。
【0003】前述の導電性材料の配合の増量による高導
電化においては、組成物の高粘度化、衝撃強度などの力
学的特性の大幅な低下、更には得られた成形品の外観品
位の低下といった問題点が生じる場合がほとんどであっ
た。
【0004】前述の特定の導電性材料の配合としては、
気相成長炭素繊維やナノチューブなどを樹脂に配合する
技術が例として挙げられ、例えば特開平6−49362
号公報、特開平7−102112号公報、特開2000
−248186号公報などで提案されている。しかし、
これら特定の導電性材料は非常に高価であり、それら単
独で高い導電性を得るためには、ある程度の配合量が必
要なため、結果的に樹脂組成物の価格が高くなるといっ
た問題点があった。
【0005】一方、前述の複数の導電性材料の併用によ
る高導電化としては、導電性繊維とカーボンブラックと
を併用する技術が例として挙げられ、例えば特開昭59
−217395号公報、特公平3−44583号公報、
特開平6−240049号公報、特公平8−19256
号公報、特開平9−87417号公報などで提案されて
いる。しかし、これらの提案の何れも、一般的な樹脂に
おいては、ある程度の導電性の向上はみられるものの、
力学的特性の低下、成形性(例えば成形時の流動性)の
低下などの問題が生じるため、高い導電性と成形性とを
同時に満足させるものではなかった。
【0006】更に、導電性材料の併用による高導電化と
しては、炭素繊維と特定の細径炭素繊維(気相成長炭素
繊維など)とを併用する技術も例として挙げられ、例え
ば特開平10−121334号公報、特開2000−4
4815号公報などで提案されている。しかし、本発明
者らが、炭素繊維と特定の細径炭素繊維とを、ある比率
で配合した樹脂組成物について検討した処、炭素繊維単
独の場合に比べて導電性が向上しない、場合によっては
導電性が低下することが判明した。つまり、高い導電性
を得るためには、両者の配合比率には厳密な規定が必要
であるが、これらの提案には、特定の配合比率による相
乗効果についての定量的な記載がない、またはそれらの
記載にある配合比率では優れた相乗効果が得られないこ
とが明らかになった。
【0007】つまり、以上の提案によると、電磁波シー
ルド性を高く発現するレベルの高導電性を発現し、かつ
成形時の流動性や成形の容易さなどの成形性を満足でき
る導電性樹脂組成物、成形材料、成形品を得ることがで
きないでいた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる従来
技術の背景に鑑み、高い導電性、成形性(成形時の流動
性等)、および外観品位を兼ね備えた導電性樹脂組成物
およびその成形品を提供せんとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を
解決するために、次のような手段を採用するものであ
る。即ち、本発明の導電性樹脂組成物は、少なくとも次
の構成要素[A]、[B]および[C]からなり、構成
要素[A]が少なくとも次の条件(A1)、(A2)の
何れか、または両方を満たすことを特徴とするものであ
る。
【0010】[A]:不連続繊維状または針状黒鉛フィ
ラー [B]:導電性繊維 [C]:樹脂 (A1):ラマン散乱強度比I2 /I1 が、0.3未満
であること。
【0011】(A2):ラマン散乱強度比I2 /I
3 が、0.3未満であること。
【0012】ただし、I1:ラマンシフト1360cm
-1付近に現れるラマン散乱散乱強度の極大値 I2:ラマンシフト1480cm-1付近に現れるラマン
散乱散乱強度の極小値 I3:ラマンシフト1580cm-1付近に現れるラマン
散乱散乱強度の極大値 また、本発明の成形材料、成形品は、かかる導電性樹脂
組成物を加工、成形されたものであることを特徴とす
る。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明は、前記課題、即ち、高い
導電性、高い成形性(成形時の流動性等)、および高い
外観品位を兼ね備えた導電性樹脂組成物について、鋭意
検討し、特定条件を満たす不連続繊維状または針状黒鉛
フィラーと導電性繊維とを組み合わせて使用して導電性
樹脂組成物をつくってみたところ、かかる課題を一挙に
解決することを究明したものである。
【0014】すなわち、本発明の導電性樹脂組成物は、
少なくとも次の構成要素[A]、[B]および[C]か
らなり、構成要素[A]として、少なくとも次の条件
(A1)、(A2)の何れか、または両方を満たすもの
を選択して使用する。
【0015】[A]:不連続繊維状または針状黒鉛フィ
ラー [B]:導電性繊維 [C]:樹脂 (A1):ラマン散乱強度比I2 /I1 が、0.3未満
であること。
【0016】(A2):ラマン散乱強度比I2 /I
3 が、0.3未満であること。
【0017】ただし、本発明で用いる符号は次に示す通
りである。
【0018】I1:ラマンシフト1360cm-1付近に
現れるラマン散乱散乱強度の極大値 I2:ラマンシフト1480cm-1付近に現れるラマン
散乱散乱強度の極小値 I3:ラマンシフト1580cm-1付近に現れるラマン
散乱散乱強度の極大値 なお、前記I1、I2 、I3は、ベースライン補正後のラ
マン散乱強度についてのものである。上記ベースライン
補正とは、600cm-1〜2200cm-1のラマンシフ
ト範囲内において、ラマンスペクトルのベースラインを
直線近似し、その近似直線からの距離をラマン散乱強度
とし、測定時のベースラインの傾きを補正する操作のこ
とをいう。
【0019】一般的に、不連続繊維状または針状黒鉛フ
ィラーの分散性やそのもの自体の導電性等の基本的な特
性は、その製造条件により大きく変化し、前記製造条件
は不連続繊維状または針状黒鉛フィラーの結晶構造に大
きく影響を及ぼす。炭素材料である不連続繊維状または
針状黒鉛フィラーは、ラマンスペクトルの測定により、
その結晶構造(ここではグラファイト構造)の発達具合
が推定が可能となる。つまり、不連続繊維状または針状
黒鉛フィラーの基本的特性は、ラマンスペクトルを測定
するだけで、簡易に把握できるといえる。
【0020】即ち、本発明における不連続繊維状または
針状黒鉛フィラーは、該条件(A1)、(A2)の何れ
か、または両方を満たすものを選択して、これを使用す
るところに特徴を有する。
【0021】本発明は、かかる特定な構成を有する不連
続繊維状または針状黒鉛フィラーを用いた場合、特異的
に高い導電性、成形性(特に成形時の流動性)、および
外観品位を兼ね備えた導電性樹脂組成物を提供すること
ができることを究明したものである。すなわち、本発明
では、特定なラマンスペクトルを有する不連続繊維状ま
たは針状黒鉛フィラーのみが、上記高導電性、成形性、
および外観品位を同時に満足するという優れた効果を達
成することを見出したものである。前記ラマンスペクト
ルによる選定は、不連続繊維状または針状黒鉛フィラー
の様々な特性を各々測定することなく、簡便に、かつ、
正確に選定することができることから、工業的見地から
も非常に有意義である。
【0022】かかる不連続繊維状または針状黒鉛フィラ
ーとしては、その一つの選択要件は、I2 /I1 が、
0.3未満であるが、望ましくは0.15以下、更に望
ましくは0.12以下、とりわけ0.1以下であるもの
を使用するのがよい。即ち、このI2 /I1 が、0.3
以上の不連続繊維状または針状黒鉛フィラーを用いた場
合には、ある程度の成形性は達成できるものの、導電性
に劣るものとなり、導電性と成形性と外観品位とを兼ね
備えた導電性樹脂組成物が得られない。
【0023】また、かかる不連続繊維状または針状黒鉛
フィラーとしての別の選択方法の一つは、ラマンシフト
1480cm-1付近に現れるラマン散乱強度の極小値I
2 と、ラマンシフト1580cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極大値I3 とのラマン散乱強度比I2 /I3
が、0.3未満、望ましくは0.1未満、更に望ましく
は0.01〜0.08の範囲内、とりわけ0.02〜
0.05の範囲内であるものを選択して使用するのがよ
い。かかる不連続繊維状または針状黒鉛フィラー、つま
りI2 /I3 が、0.3未満にある不連続繊維状または
針状黒鉛フィラーと、0.3以上のものとの違いは、前
記方法で選択したもの場合と同様であり、0.3以上の
ものは、高い成形性はある程度達成できるものの導電性
に劣り、導電性と成形性を兼ね備えた導電性樹脂組成物
が得られない。導電性において、前記範囲内のものに比
して、範囲外の場合には低い導電性を示す点で、更に導
電性にシビアな性質を示す不連続繊維状または針状黒鉛
フィラーを選ぶことができる。
【0024】ラマンスペクトルの測定法は、レーザーラ
マン分光法により測定する。ラマンスペクトルの測定
は、樹脂に配合する前の不連続繊維状または針状黒鉛フ
ィラーから測定してもよいし、樹脂組成物、または、そ
の成形品中から不連続繊維状または針状黒鉛フィラーを
分離した後に測定してもよい。前者から測定する場合
は、マクロラマン(レーザースポット径が100μm程
度)、後者から測定する場合は、顕微ラマン(レーザー
スポット径が5μm程度)にて測定を行うのが好まし
い。本発明では、JobinYvon社製Ramaon
or T−64000を用いて測定を行った。
【0025】成形品からの不連続繊維状または針状黒鉛
フィラーの分離は、配合物の比重差を利用して行うのが
よい。かかる不連続繊維状または針状黒鉛フィラーの分
離手法の具体的手段の一例を以下に記述する。
【0026】まず、成形品を不連続繊維状または針状黒
鉛フィラーを侵さずに樹脂を溶解する溶媒に浸漬し、完
全に樹脂を溶解させる。その後、5000rpmにて3
0分間遠心分離を行い、更に遠心分離後の上澄み液を3
0000rpmにて30分間超遠心分離を行う。超遠心
分離後の上澄み液を、PTFEフィルターなどで濾過す
ることにより不連続繊維状または針状黒鉛フィラーを分
離する。この場合のラマンスペクトルの測定は、顕微ラ
マンにより上記分離による回収物中の黒色部分について
行うのが好ましい。なお、上記分離した黒色部分のラマ
ンスペクトルの測定を、PTFEフィルターなど不連続
繊維状または針状黒鉛フィラー以外のものと一緒にした
場合、それらのラマンスペクトルは差し引くものとす
る。
【0027】前記構成要素[A]は、上述の各条件の範
囲内である不連続繊維状または針状黒鉛フィラーであれ
ば特に制限はされないが、その導電性付与効果の面か
ら、気相成長炭素繊維および/またはナノチューブであ
るのが好ましい。
【0028】ここでいう気相成長炭素繊維および/また
はナノチューブとは、気相で結晶を成長させる製造方法
(気相成長法)により得られる一般的には不連続な炭素
繊維や黒鉛繊維、および/または、気相成長法、アーク
放電法、レーザー蒸発法などにより得られる単層ナノチ
ューブや多層ナノチューブを指し、これらは、針状、コ
イル状、チューブ状の形態など任意の形態をとることが
できる。また、これらを2種類以上ブレンドしたもので
もよい。かかる構成要素[A]の製造方法は特に制限は
ないが、例えば特公表平2−503334号公報、特開
平11−256430号公報などに開示されている方法
などが挙げられる。
【0029】これら構成要素[A]は、平均単繊維直径
が1〜500nmの範囲内であるのが好ましい。1nm
未満では、繊維として製造することが困難になる場合が
ある。一方、500nmを超えると、特に所望の導電性
を得ることができない場合がある。より好ましくは3〜
100nm、更に好ましくは5〜40nm、とりわけ7
〜30nmの範囲内であるのが好ましい。
【0030】また、平均アスペクト比は1〜10000
の範囲内、好ましくは10〜5000の範囲内である
と、その導電性付与効果が高いため好ましい。
【0031】これら構成要素[A]は、導電性樹脂組成
物100重量%に対して、0.01〜5重量%の範囲内
であるのが好ましい。より好ましくは0.05〜0.7
重量%、更に好ましくは0.1〜0.45重量%、とり
わけ0.15〜0.35重量%の範囲内であるのが好ま
しい。0.01重量%未満では、所望の導電性を得られ
ない場合がある。一方、5重量%を超えると、成形時の
流動性に極端に劣り、本発明の効果である成形性が悪く
なるだけでなく、成形時に後述の構成要素[B]を切断
・折損する作用が著しく強く発現し、構成要素[A]を
含まずに構成要素[B]単独で配合したものより導電性
に劣る場合がある。
【0032】かかる構成要素[B]とは、絶縁性繊維で
ない繊維全般を指し、例えば炭素繊維、金属繊維(ステ
ンレス鋼繊維、銅繊維など)などの単独で導電性を示す
繊維の他に、絶縁性繊維であるガラス繊維、有機繊維
(アラミド繊維、PBO繊維、ポリフェニレンサルファ
イド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン
繊維、ポリエチレン繊維など)、無機繊維(シリコンカ
ーバイド繊維、シリコンナイトライド繊維など)や、導
電性繊維(金属繊維、炭素繊維)に導電体(金属、金属
酸化物など)を被覆した繊維も導電性繊維に含まれる。
また、前記導電性繊維を2種類以上併用することも、導
電性繊維とガラス繊維やアラミド繊維などの絶縁性繊維
とを併用することもできる。かかる導電性繊維として
は、価格、力学的特性、導電性、比重のバランスに優れ
る炭素繊維が好ましい。
【0033】かかる炭素繊維とは、例えば、PAN系、
ピッチ系からつくられた炭素繊維や黒鉛繊維、それらを
ニッケル、イッテルビウム、金、銀、銅などの金属を、
メッキ法(電解、無電解)、CVD法、PVD法、イオ
ンプレーティング法、蒸着法などにより少なくとも1層
以上被覆して構成された金属被覆炭素繊維や、これらを
2種類以上ブレンドして構成されたものを指す。2種類
以上併用する場合には、炭素繊維とガラス繊維やアラミ
ド繊維などの炭素繊維以外の繊維とを併用することもで
きる。かかる炭素繊維としては、強度と弾性率などの力
学的特性と価格とのバランスに優れるPAN系炭素繊維
が好ましい。
【0034】本発明で用いる炭素繊維としては、広角X
線回折法により測定された結晶サイズ(以下、Lcと記
す)が、1〜6nmの範囲内であることが好ましい。1
nm未満である場合、炭素繊維の炭化または黒鉛化が十
分ではなく、炭素繊維自体の導電性が低くなる。これに
起因して、得られた成形品の導電性が劣る場合がある。
一方、6nmを越える場合、炭素繊維の炭化もしくは黒
鉛化は十分であり、炭素繊維自体の導電性には優れるも
のの、脆く繊維折損しやすくなる。これに起因して、成
形品中の繊維長さが短くなり、優れた導電性が期待でき
ないため好ましくない。より好ましくは1.3〜4.5
nm、さらに好ましくは1.6〜3.5nmの範囲内で
ある。とりわけ好ましくは1.8〜2.8nmの範囲内
であるものがよい。なお、広角X線回折法によるLcの
測定は、日本学術振興会第117委員会、炭素、36、
p25(1963)に記載された方法にて行った。
【0035】これら構成要素[B]は、平均単繊維直径
が1〜20μmの範囲内であるのが好ましい。より好ま
しくは4〜15μm、更に好ましくは5〜11μm、と
りわけ6〜8μmの範囲内であるのが好ましい。1μm
未満では、所望の力学的特性を得られない場合がある。
一方、20μmを超えると、特に所望の導電性を得るこ
とができない場合がある。
【0036】これら構成要素[B]は、導電性樹脂組成
物100重量%に対して、5〜50重量%の範囲内であ
るのが好ましい。より好ましくは8〜40重量%、更に
好ましくは15〜35重量%、とりわけ20〜30重量
%の範囲内であるのが好ましい。5重量%未満では、所
望の導電性や力学的特性を得られない場合がある。一
方、50重量%を超えると、成形時の流動性に劣ること
により、成形性が悪くなるだけでなく、成形品の外観品
位にも劣る場合がある。
【0037】かかる構成要素[C]とは、熱硬化性樹脂
および熱可塑性樹脂のどちらも使用することができる
が、熱可塑性樹脂である場合、得られた成形品の衝撃強
度に優れ、かつ成形効率の高いプレス成形や射出成形が
可能であるため好ましい。
【0038】かかる熱硬化性樹脂としては、例えば、不
飽和ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ、フェノ
ール(レゾール型)、ユリア・メラミン、ポリイミド等
や、これらの共重合体、変性体、および、2種類以上ブ
レンドした樹脂などを使用することができる。また、更
に耐衝撃性向上のために、上記熱硬化性樹脂にエラスト
マーもしくはゴム成分を添加した樹脂であってもよい。
【0039】かかる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポ
リエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテ
レフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレ
ート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PE
N)、液晶ポリエステル等のポリエステルや、ポリエチ
レン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン
等のポリオレフィンや、スチレン系樹脂の他や、ポリオ
キシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカ
ーボネート(PC)、ポリメチレンメタクリレート(P
MMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレン
スルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PP
E)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PA
I)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン
(PSU)、ポリエーテルスルホン、ポリケトン(P
K)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエ
ーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン
(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテ
ルニトリル(PEN)、フェノール(ノボラック型な
ど)フェノキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなど
のフッ素系樹脂、更にポリスチレン系、ポリオレフィン
系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、
ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、フッ素系等の熱
可塑エラストマー等や、これらの共重合体、変性体、お
よび2種類以上ブレンドした樹脂などであってもよい。
また、更に耐衝撃性向上のために、上記熱可塑性樹脂に
その他のエラストマーもしくはゴム成分を添加した樹脂
であってもよい。
【0040】本発明における樹脂としては、スチレン系
樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル
樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニ
レンスルフィド樹脂、ポリオレフィン樹脂、液晶性樹脂
およびフェノール系樹脂の中から選ばれる少なくとも1
種の熱可塑性樹脂がより好ましい。より好ましくは、ス
チレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂およ
びフェノール系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種の
熱可塑性樹脂である。
【0041】かかるスチレン系樹脂とは、スチレンおよ
び/またはその誘導体(総称して芳香族ビニル系単量体
と称する場合がある)から生成した単位を含有する。
【0042】かかるスチレン系樹脂としては、スチレン
系(共)重合体、ゴム強化スチレン(共)重合体が挙げ
られる。スチレン系(共)重合体としては芳香族ビニル
系単量体の1種または2種以上を重合した重合体、芳香
族ビニル系単量体の1種または2種以上とそれと共重合
可能な単量体の1種または2種以上を共重合した共重合
体が挙げられる。また、ゴム強化スチレン(共)重合体
としては、スチレン単量体を含有する(共)重合体がゴ
ム質重合体にグラフトした構造をとるものと、スチレン
単量体を含有する(共)重合体がゴム質重合体に非グラ
フトした構造をとるものとが挙げられる。
【0043】本発明において好ましいスチレン系樹脂と
しては、PS(ポリスチレン)等のスチレン系重合体、
HIPS(高衝撃ポリスチレン)等のゴム強化スチレン
系重合体、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合
体)等のスチレン系共重合体、AES(アクリロニトリ
ル/エチレン・プロピレン・非共役ジエンゴム/スチレ
ン共重合体)、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン
/スチレン共重合体)、MBS(メタクリル酸メチル/
ブタジエン/スチレン共重合体)、ASA(アクリロニ
トリル/スチレン/アクリルゴム共重合体)などのゴム
強化(共)重合体等が挙げられ、なかでも特にPS(ポ
リスチレン)等のスチレン系重合体、AS(アクリロニ
トリル/スチレン共重合体)等のスチレン系共重合体、
ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重
合体)、ASA(アクリロニトリル/スチレン/アクリ
ルゴム共重合体)が好ましい。
【0044】かかるポリアミド樹脂としては、150℃
以上の融点を有する上に耐熱性や強度に優れたナイロン
樹脂であり、具体的な例としてはナイロン6、ナイロン
66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン61
2、ナイロン9T、ナイロン66/6、ナイロン66/
6T、ナイロン66/6I、ナイロン6/6T、ナイロ
ン6/6T、ナイロン12/6T、ナイロン6T/6
I、ナイロン66/6T/6I、ナイロン66/6/6
T、ナイロン66/6/6I、ナイロン6T/M5T、
ナイロンXD6、ポリメタキシリレンアジパミド、およ
びこれらの共重合体ないし混合物などを好ましく使用す
ることができる。また、特性(特に耐衝撃性)改良の必
要性に応じて、例えば、無水マレイン酸変性オレフィン
系重合体、ABS、ASAなどのオレフィン系共重合
体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエス
テルポリエステルエラストマーなどのエラストマーから
選ばれる1種または2種以上の混合物を添加して、所望
の特性をさらに付与したものも使用することもできる。
【0045】かかるポリエステル樹脂としては、実質的
に、ジカルボン酸とグリコールとの重縮合物、環状ラク
トンの開環重合物、ヒドロキシカルボン酸の重縮合物、
二塩基酸とグリコールとの重縮合物などが挙げられ、具
体的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロ
ピレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタ
レート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエ
チレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹
脂、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂
およびポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタ
ン−4、4'−ジカルボキシレート樹脂などのほか、ポ
リエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4、
4'−ジカルボキシレート樹脂などのほか、ポリエチレ
ンイソフタレート/テレフタレート樹脂、ポリブチレン
テレフタレート/イソフタレート樹脂、ポリブチレンテ
レフタレート/デカンジカルボキシレート樹脂およびポ
リシクロヘキサンジメチレンテレフタレート/イソフタ
レート樹脂などの共重合体や混合物を挙げることができ
る。
【0046】ここで、高い難燃性または高い成形性を成
形品に付与する場合には、上述の樹脂等にフェノール系
樹脂を配合するのが好ましい。かかるフェノール系樹脂
とは、少なくともフェノール性水酸基を有する成分を単
独もしくは共重合されたものを指し、例えば各種フェノ
ール樹脂(フェノールノボラック、クレゾールノボラッ
ク、オクチルフェノール、フェニルフェノール、ナフト
ールノボラック、フェノールアラルキル、ナフトールア
ラルキル、フェノールレゾールなど)や変性フェノール
樹脂(アルキルベンゼン変性(特にキシレン変性)、カ
シュー変性、テルペン変性など)などが挙げられる。好
ましいフェノール系重合体としては、フェノールノボラ
ック樹脂、フェノールアラルキル樹脂などが挙げられ
る。
【0047】本発明における炭素繊維樹脂組成物は、更
に高い導電性を効率よく且つ安価に得るために、構成要
素[D]として、少なくとも次の条件(D1)、(D
2)の何れか、または両方を満たすカーボン粉末を更に
含有していてもよい。 (D1):ラマン散乱強度比I2 /I1 が、0.55〜
0.80の範囲内であること。 (D2):ラマン散乱強度比I2 /I3 が、0.54〜
0.79の範囲内であること。
【0048】かかる特定なラマンスペクトルを有するカ
ーボン粉末を使用した場合、特異的に高い導電性、力学
的特性、成形性、および外観品位を兼ね備えた導電性樹
脂組成物を得ることができる。
【0049】かかるカーボン粉末の、その一つの選択要
件である条件(D1)は、I2 /I 1が、0.55〜
0.80であるが、望ましくは0.65〜0.75、さ
らに望ましくは0.67〜0.73の範囲内にあるもの
を使用するのがよい。とりわけ0.68〜0.72の範
囲内であるものが望ましい。すなわち、このI2 /I1
が、0.55〜0.80の範囲外のカーボン粉末を用い
た場合には、高い導電性は達成できるものの、成形時の
流動性に著しく劣るものとなり、導電性と成形性を兼ね
備えた導電性樹脂組成物が得られない。即ち、I2 /I
1が0.55未満であるカーボン粉末の場合は、導電性
はともかく、成形時の流動性に大きく劣るものとなる。
【0050】また、本発明のカーボン粉末の別の選択方
法の一つである条件(D2)が、0.54〜0.79、
望ましくは0.57〜0.67、更に望ましくは0.5
9〜0.65の範囲内にあるカーボン粉末を選択して使
用するのがよい。とりわけ0.60〜0.64の範囲内
であるものが望ましい。
【0051】かかるカーボン粉末、つまりI2 /I
3が、0.54〜0.79の範囲内にあるカーボン粉末
と、その範囲外のカーボン粉末との効果的な違いは、前
記方法で選択したもの場合と同様であり、該範囲外のも
のは、高い導電性は達成できるものの、成形時の流動性
に著しく劣り、導電性と成形性を兼ね備えた導電性樹脂
組成物が得られない。この条件にて選択されたカーボン
粉末は、さらに優れた高導電化と高成形性を兼ね備えた
導電性樹脂組成物を確実に提供することができる。
【0052】なお、ラマンスペクトルの測定法は、構成
要素[A]で記述した方法と同じ方法にて測定すること
ができる。
【0053】本発明における導電性樹脂組成物は、高い
難燃性を得るために、構成要素[E]として更に難燃剤
を含有していてもよい。ここで難燃剤とは、ハロゲン化
合物、アンチモン化合物の少なくとも1種、または非ハ
ロゲン系であるリン化合物、窒素化合物、シリコーン化
合物、フッ素化合物、金属水酸化物の少なくとも1種で
ある。
【0054】かかるリン化合物とは、リンを含有する有
機または無機化合物であれば特に制限はなく、例えばポ
リリン酸アンモニウム、ポリホスファゼン、ホスフェー
ト、ホスホネート、ホスフィネート、ホスフィンオキシ
ド、赤リンなどが挙げられ、これらを単独で用いても併
用してもよい。中でもポリリン酸アンモニウム、芳香族
ホスフェート、赤リンが好ましく、とりわけ、リン原子
の含有量が高いことにより少量の添加量で高い難燃性を
得られる赤リンが好ましい。
【0055】本発明の導電性樹脂組成物は、その目的に
応じて更に充填材(マイカ、タルク、カオリン、セリサ
イト、ベントナイト、ゾノトライト、セピオライト、ス
メクタイト、モンモリロナイト、ワラステナイト、シリ
カ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、
ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、
酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、ポリリン酸カ
ルシウム、グラファイト、硫酸バリウム、硫酸マグネシ
ウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸亜カルシウム、ホウ酸アルミ
ニウムウィスカ、チタン酸カリウムウィスカ、高分子な
ど)、導電性付与材(金属系、金属酸化物系など)、難
燃剤(ハロゲン系(臭素化樹脂など)、アンチモン系
(三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなど)、リン
系、有機酸金属塩系(有ホウ酸金属塩、カルボン酸金属
塩、芳香族スルホンイミド金属塩など)、無機系(硼酸
亜鉛、亜鉛、酸化亜鉛、ジルコニウム化合物など)、窒
素系(シアヌル酸、イソシアヌル酸、メラミン、メラミ
ンシアヌレート、メラミンホスフェート、窒素化グアニ
ジンなど)、フッ素系(PTFEなど)、シリコーン系
(ポリオルガノシロキサンなど)、金属水酸化物系(水
酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなど)など)、
難燃助剤(酸化カドミウム、酸化亜鉛、酸化第一銅、酸
化第二銅、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化コバルト、酸
化マンガン、酸化モリブデン、酸化スズおよび酸化チタ
ンなど)、顔料、染料、滑剤、離型剤、相溶化剤、分散
剤、結晶核剤(マイカ、タルク、カオリンなど)、可塑
剤(リン酸エステルなど)、熱安定剤、酸化防止剤、着
色防止剤、紫外線吸収剤、流動性改質剤、発泡剤、抗菌
剤、制振剤、防臭剤、摺動性改質剤、帯電防止剤(ポリ
エーテルエステルアミドなど)等の任意の添加剤を、単
独でも、2種類以上ブレンドしたものでも使用すること
ができる。
【0056】また、かかる充填材などは、膨潤化剤によ
り膨潤されていてもよいし、有機化剤により有機化され
ていてもよい。膨潤化剤、有機化剤としては、イオン交
換などにより充填材などを膨潤化または有機化し得るも
のなら特に制限はなく、具体的にはε−カプロラクタ
ム、12−アミノドデカン酸、12−アミノラウリン
酸、アルキルアンモニウム塩(ジメチルジアルキルアン
モニウムなど)などが挙げられる。特にポリアミド樹
脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、スチレ
ン系樹脂、アクリル系樹脂などに膨潤化または有機化さ
れた充填材(好ましくはモンモリロナイト、マイカ、サ
ポナイト、ヘクトライト、セピオライト、クレー)が配
合されていると、充填材のナノオーダーでの分散が可能
となり、より少ない配合量で所望の特性が得られるため
好ましい。
【0057】本発明の導電性樹脂組成物または成形材料
は、例えば射出成形(射出圧縮成形、ガスアシスト射出
成形、インサート成形など)、ブロー成形、回転成形、
押出成形、プレス成形、トランスファー成形(RTM成
形、RIM成形、SCRIMP成形)、フィラメントワ
インディング成形、オートクレーブ成形、ハンドレイア
ップ成形などの成形方法によって成形されて成形品を提
供することができるが、最も望ましい成形法は、生産性
の高い射出成形により成形するのがよい。
【0058】かかる成形に用いられる成形材料の形態と
しては、ペレット、スタンパブルシート、プリプレグ、
SMC、BMC等を使用することができるが、最も望ま
しい成形材料は、射出成形に用いられるペレットであ
る。前記ペレットは、一般的には、所望量の樹脂とフィ
ラーや繊維のチョップド糸または連続繊維とを押出機中
で混練し、押出、ペレタイズすることによって得られた
ものを指す。特に繊維を用いた場合、前述のペレット
は、ペレットの長手方向の長さより、ペレット中の繊維
長さの方が短くなるが、本発明でいうペレットには、長
繊維ペレットも含まれる。
【0059】かかる長繊維ペレットとは、特公昭63−
37694号公報に示されるような、繊維がペレットの
長手方向に、ほぼ平行に配列し、ペレット中の繊維長さ
が、ペレット長さと同一またはそれ以上であるものを指
す。この場合、樹脂は繊維束中に含浸されていても、繊
維束に被覆されていてもよい。特に樹脂が被覆された長
繊維ペレットの場合、繊維束には被覆されたものと同じ
か、あるいは被覆された樹脂よりも低粘度(または低分
子量)の樹脂が、予め含浸されていてもよい。
【0060】本発明の成形材料からなる成形品が、優れ
た導電性、力学的特性を兼ね備えるためには、成形品中
の炭素繊維のアスペクト比を長くすることが有効である
が、そのためには、前述のペレットの中でも長繊維ペレ
ットを用いて成形するのが望ましい。
【0061】本発明における成形品は、優れた導電性を
付与できるため、体積固有抵抗値が50Ω・cm以下で
ある成形品として用いられるのが好ましい。成形品とし
ては、その体積固有抵抗値が50Ω・cmを越える場
合、電磁波シールド材等の用途には適応しにくく、用途
が限定される場合がある。本発明の成形材料より得られ
る成形品は、その体積固有抵抗値が、望ましくは30Ω
・cm以下であるものがよい。好ましくは10Ω・cm
以下、更に好ましくは1Ω・cm以下、とりわけ0.4
Ω・cm以下が好ましい。
【0062】本発明における成形品は、優れた導電性だ
けではなく、難燃剤を配合した場合には高い難燃性(特
にドリップ防止性)を付与できるため、UL−94規格
において、1.6mm(1/16インチ)厚での難燃性
がV−0またはそれより良好なものが得られる成形品と
して用いられるのが好ましい。
【0063】ここで、V−0の難燃性とは、UL−94
規格(Underwriters LaboratoriesInc.で考案された米
国燃焼試験法)において、燃焼時間やその状態、延焼の
有無、滴下(ドリップ)の有無やその滴下物の燃焼性な
どにより規定されているV−0の条件を満たした難燃性
を指す。また、V−0よりも良好な難燃性とは、前記V
−0クラスにおける規定値よりも更に少ない燃焼時間を
示す難燃性や、試験片の厚みがより薄い場合においてV
−0の規定条件を満たす難燃性を指す。
【0064】本発明における成形品の用途としては、優
れた導電性、力学的特性(特に剛性)が求められる電子
・電気機器用、OA機器用、精密機器用、自動車用の部
材、例えばハウジング、ケーシング、カバー、トレーな
どが好ましい例として挙げられ、特に導電性(電磁波シ
ールド性)と高い剛性(軽量化)との要求が高い携帯用
の電子・電気機器のハウジングなどがとりわけ好ましい
例として挙げられる。より具体的には、大型ディスプレ
イ、ノート型パソコン、携帯用電話機、PHS、PDA
(電子手帳などの携帯情報端末)、ビデオカメラ、ビデ
オカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯用ラジオカセッ
ト再生機、インバーターなどのハウジング、ケーシング
などである。
【0065】また、優れた導電性を有しているため、炭
素繊維の少量添加で帯電/放電防止性を付与することが
でき、それらの特性が必要とされる部材、例えばICト
レー、シリコンウェーハー運搬用バスケットなどへの適
応にも有用である。
【0066】
【実施例】以下、実施例によって本発明を更に詳細に説
明する。
【0067】本発明の構成要素を用いた導電性樹脂組成
物または成形材料からなる成形品に関する評価項目およ
びその方法を下記する。 (1)体積固有抵抗値 まず、幅12.7mm×長さ65mm×厚さ2mmの試
験片を、長さ方向の辺の内で幅方向の辺の極近傍に位置
するファンゲートにて射出成形した。次いで、成形した
試験片の幅×厚さ面に導電性ペースト(藤倉化成(株)
製ドータイト)を塗布し、十分に導電性ペーストを乾燥
させてから、絶乾状態(水分率0.05%以下)で測定
に供した。測定に際しては、幅×厚さ面を電極に圧着
し、電極間の電気抵抗値をデジタルマルチメーター(ア
ドバンテスト社製R6581)にて測定した。前記電気
抵抗値から測定機器、治具等の接触抵抗を減じた値に、
導電性ペースト塗布面の面積を乗じ、次いで、その値を
試験片長さで除したものを固有抵抗値とした(単位はΩ
・cm)。なお、本測定では10サンプル測定し、それ
らの平均値を用いた。 (2)剛性 ASTM D 790(スパン間距離L/厚さD=1
6)に基づいた曲げ弾性率にて評価した(単位はGP
a)。用いた試験片の板厚は6.4mm(1/4イン
チ)厚で、水分率0.05%以下で試験に供した。な
お、本測定では5サンプル測定し、それらの平均値を用
いた。 (3)Izod衝撃強度 ASTM D 256に基づいたモールドノッチ有りI
zod衝撃強度にて評価した(単位はJ/m)。用いた
試験片の板厚は3.2mm(1/8インチ)厚で、水分
率0.05%以下で試験に供した。なお、本測定では1
0サンプル測定し、それらの平均値を用いた。 (4)難燃性 UL−94規格に基づいた難燃性試験にて評価した。用
いた試験片の板厚は0.8mm(1/32インチ)厚
で、試験片の長辺方向全長に渡るフィルムゲートにて射
出成形して試験片を得た。
【0068】最後に、上記評価項目の導電性、力学的特
性、成形性のバランスを、○○:特に優れる、○:優れ
る、△:優れない、×:著しく劣る、の4段階にて総合
的に評価した。 実施例1、比較例1 水分率0.05%以下に十分乾燥した所望量の構成要素
[A]、[C]を2軸押出機のメインホッパーから投入
し、十分溶融・混練された状態で押し出しながら、水分
率0.05%以下に十分乾燥した所望量の6mm長にチ
ョップ化された構成要素[B]をサイドホッパーから投
入し、樹脂を炭素繊維中に含浸させる。このようにして
得られた不連続の炭素繊維を含有するガットを冷却後、
カッターで5mmに切断して、ペレットを得た。
【0069】各構成要素、その他の成分の種類およびそ
の配合率は表1に示した通りである。得られたペレット
を100℃にて5時間以上真空中で乾燥させた後、バレ
ル温度320℃、金型温度80℃にて射出成形して
(1)〜(3)項記載の各試験に供した。評価結果を表
1に示す。 実施例2〜5、比較例2、3 水分率0.05%以下に十分乾燥した所望量の構成要素
[A]、[C]、必要に応じて構成要素[D]、
[E]、その他の成分とを2軸押出機にて十分溶融・混
練しながら押し出し、構成要素[A]、[D]、
[E]、その他の成分などが、構成要素[C]中に均一
したマスターペレットを用意する。
【0070】前記マスターペレットを1軸押出機にて、
その先端に取り付けたクロスヘッドダイ中に十分溶融・
混練された状態で押し出しながら、水分率0.05%以
下に十分乾燥した連続繊維状の構成要素[B]束も連続
して前記クロスヘッドダイ中に供給し、構成要素
[A]、[C]をはじめとする各構成要素を、構成要素
[B]束中に十分含浸させる。ここでクロスヘッドダイ
とは、そのダイ中で連続した繊維束を開繊させながら溶
融樹脂等をその中に含浸させる装置のことをいう。この
ようにして得られた連続繊維状の構成要素[B]束を含
有するストランドを冷却後、カッターで7mmに切断し
て、長繊維ペレットを得た。
【0071】各構成要素、その他の成分の種類およびそ
の配合率は表1に示した通りである。得られたペレット
を80℃にて5時間以上真空中で乾燥させた後、シリン
ダ温度は260℃、金型温度は70℃にて射出成形して
(1)〜(4)項記載の各試験の射出成形に供した。評
価結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】なお、表1における各成分の表記は下記に
基づいた。 構成要素[A] NT:気相成長多層ナノチューブ[I2/I1=0.1、
2/I3=0.03]構成要素[B] CF1:PAN系炭素繊維[平均単繊維直径=7μm、
Lc=1.7nm] CF2:PAN系炭素繊維[平均単繊維直径=7μm、
Lc=1.9nm] 構成要素[C] PA :ポリアミド樹脂[ナイロン66/6/6I共重
合体、融点230℃] PC :ポリカーボネート樹脂[日本GEプラスチック
ス製レキサン121] 構成要素[D] CB :カーボンブラック[I2/I1=0.69、I2
/I3=0.60] 構成要素[E] RP :赤リン[燐化学工業(株)製ノーバエクセル1
40] 表1の結果から以下のことが明らかである。 1.構成要素[A]の効果 構成要素[A]を用いていない比較例1(比較例2)に
比べて、ラマン散乱強度比I2/I1およびI2/I3が本
発明の条件(A1)および(A2)の範囲内である構成
要素[A]を用いた実施例1(実施例2)は、体積固有
抵抗を低くすることができ、大幅に導電性に優れた成形
品を得ることができる。
【0074】更に、先の実施例2は、ラマン散乱強度比
2/I1およびI2/I3が本発明の条件(A1)および
(A2)の範囲外であるカーボンブラック(構成要素
[D]に相当する)を単独で多量に配合した比較例3に
比べて、導電性および力学的特性に優れ、その優位性は
明らかである。 2.構成要素[A]の添加量の効果 本発明の構成要素[A]を2重量%と多量に用いた実施
例5に比べて、本発明の構成要素[A]を0.5重量%
と極少量だけ用いた実施例2は、導電性、力学的特性と
もに同等であり、高価な構成要素[A]の量を最小限に
抑えることができ、材料コストの面から実施例5に対し
て優位性を有するため、本発明のより好ましい形態とい
える。 3.構成要素[A]および[D]の併用の効果 構成要素[A]および[D]を併用した実施例3、4
は、構成要素[A]のみ、または構成要素[D]のみを
単独で用いた場合よりも、より高い導電性付与効果を発
現しており、これらを併用することは本発明のより好ま
しい形態といえる。 4.長繊維ペレットの効果 通常のペレットを用いた実施例1に比べて、長繊維ペレ
ットを用いた実施例2は、体積固有抵抗をより低くする
ことができ、導電性に優れた成形品を得ることができ
る。これは、実施例1よりも実施例2の方が、成形品中
の導電性繊維の長さを長くできることによる。つまり、
実施例2の成形品中の重量的平均繊維長さは0.50m
mであったのに対して、実施例1の場合には、得られた
成形品中の重量平均繊維長は0.31mmであったこと
による。
【0075】これらの比較から、導電性に及ぼす導電性
繊維の長さの重要性は明らかであり、本発明の導電性樹
脂組成物としては、繊維長さをできるだけ長くしたペレ
ット、とりわけ長繊維ペレットの形態の成形材料をとる
ことがより好ましい。
【0076】
【発明の効果】本発明の各構成要素によれば、優れた導
電性と成形性とを兼ね備える導電性樹脂組成物を提供す
ることができ、かかる樹脂組成物、成形材料によれば、
低比重で、且つ優れた導電性、力学的特性、外観品位、
難燃性を兼ね備える成形品を得ることができるので、特
に電気・電子機器用、OA機器用、精密機器用、自動車
用のハウジング、ケーシング、トレーなどの幅広い産業
分野に好適な成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導電性樹脂組成物を構成する不連続繊
維状または針状黒鉛フィラーの一例のラマンスペクトル
である。
【符号の説明】
1 :ラマンシフト1360cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極大値。 I2 :ラマンシフト1480cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極小値。 I3 :ラマンシフト1580cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極大値。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08K 7/06 C08K 7/06 C08L 71/12 C08L 71/12 101/00 101/00 H05K 9/00 H05K 9/00 X Fターム(参考) 4F071 AA01 AA14 AA22 AA41 AA43 AA50 AA54 AA55 AB03 AB25 AE15 BA01 BB03 BB05 BB06 BC07 4J002 AA001 BB011 BB032 BC021 BG032 CC031 CF001 CF002 CG001 CH071 CL001 CL031 CL062 CM022 CN011 CN012 DA016 DA017 DA026 DA058 DA077 DA087 DJ007 FA042 FA046 FA047 FB072 FB077 FD010 FD110 FD112 FD116 FD117 FD130 FD138 FD200 5E321 AA01 BB32 BB33 BB34 BB60 GG05 5G301 DA18 DA19 DA42 DA43 DA51 DA53 DA55 DD06

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも次の構成要素[A]、[B]
    および[C]からなる導電性樹脂組成物において、構成
    要素[A]が少なくとも次の条件(A1)、(A2)の
    何れか、または両方を満たすことを特徴とする導電性樹
    脂組成物。 [A]:不連続繊維状または針状黒鉛フィラー [B]:導電性繊維 [C]:樹脂 (A1):ラマン散乱強度比I2 /I1 が、0.3未満
    であること。 (A2):ラマン散乱強度比I2 /I3 が、0.3未満
    であること。 ただし、I1:ラマンシフト1360cm-1付近に現れ
    るラマン散乱散乱強度の極大値 I2:ラマンシフト1480cm-1付近に現れるラマン
    散乱散乱強度の極小値 I3:ラマンシフト1580cm-1付近に現れるラマン
    散乱散乱強度の極大値
  2. 【請求項2】 導電性樹脂組成物100重量%中に、構
    成要素[A]および[B]が、次の範囲内で含有されて
    いる請求項1に記載の導電性樹脂組成物。 [A]:0.01〜5重量% [B]:5〜50重量%
  3. 【請求項3】 構成要素[A]が、平均単繊維直径が1
    〜500nmの範囲内である気相成長炭素繊維および/
    またはナノチューブである請求項1または2に記載の導
    電性樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 構成要素[B]が、炭素繊維である請求
    項1〜3のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 構成要素[C]が、少なくともスチレン
    系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテ
    ル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェ
    ニレンスルフィド樹脂、ポリオレフィン樹脂、液晶性樹
    脂およびフェノール系樹脂の中から選ばれる少なくとも
    1種である請求項1〜4のいずれかに記載の導電性樹脂
    組成物。
  6. 【請求項6】 導電性樹脂組成物が、さらに構成要素
    [D]として、カーボン粉末を含有する請求項1〜5の
    いずれかに記載の導電性樹脂組成物。 (D1):ラマン散乱強度比I2 /I1 が、0.55〜
    0.80の範囲内であること。 (D2):ラマン散乱強度比I2 /I3 が、0.54〜
    0.79の範囲内であること。
  7. 【請求項7】 導電性樹脂組成物が、さらに構成要素
    [E]として、更に難燃剤を含有する請求項1〜6のい
    ずれかに記載の導電性樹脂組成物。
  8. 【請求項8】 難燃剤が、赤リンである請求項7に記載
    の導電性樹脂組成物。
  9. 【請求項9】 請求項1〜8のいずれかに記載の導電性
    樹脂組成物が、ペレットの形態を有する成形材料。
  10. 【請求項10】 ペレットが、長繊維ペレットである請
    求項9に記載の成形材料。
  11. 【請求項11】 請求項1〜8のいずれかに記載の導電
    性樹脂組成物または請求項9ならびに10に記載の成形
    材料のいずれかで構成されていることを特徴とする成形
    品。
  12. 【請求項12】 導電性樹脂組成物または成形材料が、
    射出成形されたものである請求項11に記載の成形品。
  13. 【請求項13】 成形品が、50Ω・cm以下の体積固
    有抵抗値を有する請求項11または12に記載の成形
    品。
  14. 【請求項14】 UL−94規格における難燃性が、
    1.6mm厚(1/16インチ)以下でV−0以上であ
    る請求項11〜13のいずれかに記載の成形品。
  15. 【請求項15】 成形品が、電気・電子機器、OA機
    器、家電機器、または自動車におけるハウジング、ケー
    シング、カバー、トレーもしくはそれらの部品のうちの
    いずれかに用いられている請求項11〜14のいずれか
    に記載の成形品。
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