JP2002153960A - 遠心鋳造用取鍋 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋳鉄管を遠心鋳造する際に、取鍋からシュー
トに注ぐ溶湯の単位時間あたりの流出量を変化させて
も、取鍋に設けられた垢押え板の下部が常に溶湯の湯面
よりも内側に存在するようにする。 【解決手段】 三角取鍋６に旋回可能に支持している垢
押え板１５の開閉度をシリンダ１７によって制御可能と
し、三角取鍋６の傾動角に応じてシリンダ１７を作動さ
せる。溶湯の単位時間あたりの流出量を変化にかかわら
ず、常に垢押え板１５の下部が溶湯５の湯面よりも内側
に存在するように、垢押え板１５の開閉度をシリンダ１
７によって調節する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は遠心鋳造用取鍋に関
する。

【０００２】

【従来の技術】鋳鉄管を製造する方法の一つとして遠心
鋳造法がある。遠心鋳造法は高速回転している筒状の回
転金枠に鋳鉄の溶湯を供給し、供給された溶湯に遠心力
を作用させて管体を鋳造する方法である。図４ではその
遠心鋳造法の一例を示す。

【０００３】図４に示すように、遠心鋳造装置１があ
り、この遠心鋳造装置１において管体の内外面を形成す
る部分は筒状をしている水冷ジャケット構造（図示は省
略する）の回転金枠２の内周面と筒状をしているコア３
の外周面とから構成されている。回転金枠２は高速回転
可能であり、コア３は回転金枠２に対して定位置になる
ようにコアセッター４に取付けられている。鋳鉄の溶湯
５が、三角取鍋６からシュート７に注がれ、トラフ８を
経て、トラフ８の先端部分であるスポート９より回転金
枠２に供給されるように、回転金枠２、三角取鍋６及び
シュート７が適宜の位置に設置されて遠心鋳造装置１を
構成している。シュート７は三角取鍋６より溶湯５を受
ける曲面部分であり、トラフ８はシュート７が受けた溶
湯５を回転金枠２に供給する緩やかな傾斜をした直部で
ある。

【０００４】図５に示すように、三角取鍋６における鋳
鉄の溶湯５の湯面には、材料にもともと含まれていた異
物などの不純物であるスラグ１０が浮揚している。この
ため、何ら対策を施さないと、三角取鍋６を傾動させて
溶湯５をシュート７に供給する際に、このスラグ１０が
溶湯５に混入した状態でシュート７に注がれることにな
る。このようなスラグ１０の混入を防ぐために、三角取
鍋６の注湯口付近には垢押え板１１が設けられている。

【０００５】この垢押え板１１は、上部に軸１２を通さ
れることによって三角取鍋６に旋回可能に支持され、自
重、またはおもりを負荷されることによって、三角取鍋
６の傾動角に関係なく常に鉛直下向きとなるように構成
されている。また、垢押え板１１は、垢押え板１１が旋
回しても三角取鍋６に触れることなく、かつ三角取鍋６
を傾動させると溶湯５の注湯が開始されるまでに垢押え
板１１の下端部が湯面に接触するように、垢押え板１１
の下部から決まった位置に軸１２を通されて三角取鍋６
に取り付けられている。

【０００６】図７に示すように、三角取鍋６を傾動させ
て溶湯５をシュート７に供給するときに、垢押え板１１
は、上述したように、常に鉛直下向きになるように構成
されており、この垢押え板１１の下部が溶湯５に浸か
り、溶湯５の湯面に浮揚しているスラグ１０が溶湯５の
注湯口に向けて流れていこうとする動きをせきとめ、溶
湯５とスラグ１０とを分離し、スラグ１０が溶湯５に混
入した状態でシュート７に注がれることを防止すること
ができる。このようにして三角取鍋６における溶湯５に
浮揚しているスラグ１０の混入を防いだ状態で、溶湯５
は、三角取鍋６からシュート７に注がれ、トラフ８を経
て、トラフ８の先端部分であるスポート９より高速回転
している回転金枠２の内周面に供給される。

【０００７】図６には、回転金枠２への注湯時間とその
単位時間あたりの溶湯５の流出量との関係を示す。三角
取鍋６の傾動角を調整し、注湯開始直後及び注湯終了直
前では溶湯５の単位時間あたりの流出量を下げ、その間
では溶湯５の単位時間あたりの流出量を上げる。このよ
うにして、スポート９より流し出される溶湯５の単位時
間あたりの流出量に多少の差をつけて、溶湯５を流し出
す勢いを変えることによって、溶湯５を回転金枠２に過
不足無く供給する。

【０００８】回転金枠２に供給された溶湯５には遠心力
が作用し、均一な管厚の鋳鉄管１３を形成することがで
きる。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】上述したように、溶湯
５を流し出す勢いを変えて回転金枠２に供給する際に、
図６に示すように、単位時間あたりの流出量を多くする
ときには、図８に示すように、三角取鍋６を大きく傾動
させる。このとき、溶湯５は勢い良くシュート７に注が
れるのであるが、この溶湯５の勢いにより垢押え板１１
は軸１２を中心に旋回し、垢押え板１１の下部は溶湯５
によってその流れの方向に押し上げられるように溶湯５
の湯面から外に出る。したがって、垢押え板１１はスラ
グ１０をせきとめることができなくなり、スラグ１０の
一部については溶湯５とともにシュート７に注がれてし
まう。その結果、スラグ１０を含んだままで回転金枠２
に供給された溶湯５はそのまま凝固してしまい、管の品
質に悪影響を与えてしまう。

【００１０】そこで本発明は、このような課題を解決し
て、溶湯の単位時間あたりの流出量を変化させても垢押
え板の下部が常に溶湯の湯面よりも内側に存在するよう
にして、回転金枠に供給される溶湯へのスラグの混入を
防止することを目的とする。

【００１１】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に請求項１記載の発明は、遠心鋳造装置における回転金
枠内に溶湯を供給可能である取鍋であって、前記取鍋に
垢押え板を旋回可能に支持し、前記垢押え板の開閉度を
アクチュエータによって制御可能とした遠心鋳造用取鍋
である。

【００１２】このような構成によれば、取鍋の傾動角に
応じて、アクチュエータを作動させることで垢押え板の
開閉度を調節することができ、また作動しているアクチ
ュエータを停止するとその保持力によって垢押え板はそ
の位置で固定されるので、溶湯の単位時間あたりの流出
量が多い場合においても、垢押え板は溶湯の勢いに抗す
ることができ、垢押え板の下部が溶湯の湯面から外に出
ることなくスラグをせきとめることができる。したがっ
て、溶湯とスラグとを分離して、スラグが溶湯に混入し
た状態でシュートに注がれることを防止することができ
るので、スラグの混入による管の品質への悪影響を無く
すことができる。

【００１３】さらに、溶湯の単位時間あたりの流出量が
多いときには、アクチュエータを作動させて垢押え板を
旋回させることによって、垢押え板の下部が溶湯に浸か
り過ぎないようにすることができる。したがって、取鍋
を傾動させたときの溶湯の単位時間あたりの流出量の増
加を垢押え板が妨げないようにすることができるので、
溶湯を回転金枠内に過不足なく供給することができ、管
厚の均一な管を鋳造することができる。

【００１４】

【発明の実施の形態】図１に示すように、垢押え板１５
は、その両端の軸部１４が三角取鍋６に通されることに
よって旋回可能に支持されている。軸部１４は、垢押え
板１５が旋回しても三角取鍋６に触れることなく、かつ
三角取鍋６を傾動させると溶湯５の注湯が開始されるま
でに垢押え板１５の下端部が湯面に接触するように、決
まった位置に設けられている。

【００１５】リンク１６の一端部は、垢押え板１５に対
してくの字形状に角度をつけられた状態で軸部１４に適
宜の方法で固定されている。このリンク１６と垢押え板
１５とはこの角度を保ったまま一体となって軸部１４を
中心に旋回可能である。

【００１６】リンク１６の他端部は、アクチュエータと
しての役割を果たすシリンダ１７における伸縮部１８の
先端に、軸１９によって旋回可能に支持されている。ま
た、このシリンダ１７は、三角取鍋６と同様に傾動する
台２０に旋回可能に支持されており、シリンダ１７と三
角取鍋６との相対的な位置は変わらないように構成され
ている。

【００１７】以上のような構成であると、シリンダ１７
を作動させることによって生じる力は、シリンダ１７の
伸縮部１８の先端部に旋回可能に支持されているリンク
１６を介して垢押え板１５に伝達され、軸部１４を中心
にして垢押え板１５を旋回させることができる。

【００１８】三角取鍋６を徐々に傾動させていき、溶湯
５の単位時間あたりの流出量が多くなったときの三角取
鍋６の様子を図２に示す。図２に示すように、シリンダ
１７を作動させることによって垢押え板１５の開閉度を
調節し、溶湯５が勢い良く注がれるときに垢押え板１５
の下部が溶湯５の湯面に僅かに入り込んだ状態に維持す
る。すると、三角取鍋６の注湯口側へ向かって浮揚しな
がら移動してきたスラグ１０は、垢押え板１５に接触し
てそれ以上この方向へ移動することを遮られ、ここで溶
湯５と分離される。このとき、作動しているシリンダ１
７を停止させるとその保持力によって垢押え板１５はそ
の位置で固定されるので、垢押え板１５が勢いの良い溶
湯５の流れによって軸部１４を中心にして旋回してしま
うことがない。

【００１９】また、上記において図６〜図８を用いて説
明したように、溶湯５を回転金枠２に過不足無く供給す
るために、スポート９より流し出される溶湯５の単位時
間あたりの流出量に多少の差をつけて、溶湯５を流し出
す勢いを変えることが行われているが、その場合には、
垢押え板１５の先端が湯面から溶湯５の内部に深く入り
込みすぎることによって溶湯５を流し出すときの勢いが
弱くならないようにしなければならない。

【００２０】そこで、シリンダ１７を作動させて垢押え
板１５の開閉度を調節し、溶湯５の流出量の多少にかか
わらず垢押え板１５の下部のみが溶湯５の湯面に僅かに
入り込んでいるだけの状態に維持することで、勢い良く
流し出されている溶湯５の流れの妨げになりにくくする
ことができる。

【００２１】図３に示すように、図２の状態から溶湯５
の流出量を低下させてその湯面が徐々に低い位置まで下
がっても、シリンダ１７を作動させることによって垢押
え板１５の下端部を常にその湯面に合わせることができ
る。したがって、溶湯５の湯面位置が変化をしても、ス
ラグ１０が溶湯５に混入した状態でシュート７に注がれ
ることを防止することができる。

【００２２】以上により、三角取鍋６の注湯口付近にス
ラグ１０が溜まるため、これを適宜の方法でまとめて除
去し、次いで、新たに溶湯５を加えて鋳造作業を続ける
ことができる。

【００２３】また、上述した本発明の実施の形態におい
て、アクチュエータの一例としてシリンダを用いたが、
これに限るものではなく、例えば回転式のアクチュエー
タなどを用いることもできる。

【００２４】本発明の実施例として、図１に示したよう
な垢押え板が設けられている三角取鍋を使用して、鋳鉄
の溶湯６５キログラムを、内径が１１８ミリメートルで
全長が４メートルの回転金枠に供給した。その際に、溶
湯の供給の開始時期には単位時間あたりの流出量を１５
キログラム毎秒、溶湯の供給の中盤時期には単位時間あ
たりの流出量を１００キログラム毎秒、溶湯の供給の終
了時期には単位時間あたりの流出量を１５キログラム毎
秒として、溶湯の単位時間あたりの流出量を段階的に変
化させた。このとき、Ｇ−Ｎｏ．＝７５として遠心鋳造
を行った。

【００２５】シリンダを作動させて、溶湯の供給の開始
時期及び終了時期には垢押え板を立った姿勢とさせてそ
の下部が溶湯の湯面の内側に存在するようにその開閉度
を調節し、溶湯の供給の中盤時期には垢押え板を斜め方
向の姿勢とさせその下部が溶湯の湯面の内側に存在し、
かつ溶湯の流れの妨げにならない状態になるように垢押
え板の開閉度を調節した。その結果として、形成された
鋳鉄管においてスラグの混入が認められなかった。

【００２６】

【発明の効果】以上のように本発明によると、取鍋の傾
動角に応じて、アクチュエータを作動させることで垢押
え板の開閉度を調節することができ、作動しているアク
チュエータを停止させるとその保持力によって垢押え板
はその位置で固定されるので、垢押え板が勢いの良い溶
湯の流れによって軸部を中心にして旋回してしまうこと
がない。したがって、溶湯の単位時間あたりの流出量が
多い場合においても、垢押え板は溶湯の勢いに抗するこ
とができ、垢押え板の下部が溶湯の湯面の外に出ること
なく、取鍋の注湯口側へ向かって浮揚しながら移動して
きたスラグをせきとめることができる。その結果、溶湯
とスラグとを分離して、スラグが溶湯に混入した状態で
シュートに注がれることを防止することができるので、
スラグの混入による管の品質への悪影響を無くすことが
できる。

【００２７】さらに、溶湯の単位時間あたりの流出量が
多いときは、アクチュエータを作動させて垢押え板を旋
回させることによって、垢押え板の下部が溶湯に浸かり
過ぎないようにすることができる。したがって、取鍋を
傾動させたときの溶湯の単位時間あたりの流出量の増加
を垢押え板が妨げないようにすることができるので、溶
湯を回転金枠内に過不足なく供給することができ、管厚
の均一な管を鋳造することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施の形態にかかる遠心鋳造用取鍋を
示す断面図である。

【図２】同遠心鋳造用取鍋を傾動させたときを示す断面
図である。

【図３】図２の遠心鋳造装置をさらに傾動させたときを
示す断面図である。

【図４】遠心鋳造装置の概要を示す断面図である。

【図５】従来の遠心鋳造用取鍋を示す断面図である。

【図６】溶湯の注湯時間と単位時間あたりの流出量との
関係を示す図である。

【図７】図５の遠心鋳造用取鍋を傾動させたときを示す
断面図である。

【図８】図７の遠心鋳造用取鍋をさらに傾動させたとき
を示す断面図である。

【符号の説明】

１ 遠心鋳造装置 ２ 回転金枠 ５ 溶湯 ６ 取鍋 １５ 垢押え板 １７ シリンダ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】遠心鋳造装置における回転金枠内に溶湯を
   供給可能である取鍋であって、前記取鍋に垢押え板を旋
   回可能に支持し、前記垢押え板の開閉度をアクチュエー
   タによって制御可能としたことを特徴とする遠心鋳造用
   取鍋。