JP3612198B2 - 連続鋳造タンディッシュ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融金属を連続鋳造する多ストランドミル用連続鋳造タンディッシュに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶鋼を代表とする溶融金属は、転炉あるいは電気炉等での精錬を完了した後、主に連続鋳造法によって鋳造し、鋳片とする。精錬を完了した溶融金属は取鍋と呼ばれる溶融金属容器に収容され、次いでタンディッシュと呼ばれる中間容器を経て連続鋳造鋳型内に注入され、鋳型の下方に引抜かれる過程で四周から凝固が進行し、最終的に凝固が完了した鋳片となる。タンディッシュを用いる理由は、複数ストランドへ同時に溶融金属を分配するため、及び連続鋳造においては鋳造は取鍋1ヒート分の鋳造が完了しても鋳造を中断せず、取鍋複数ヒートにわたって鋳造を連続することが行われるが、取鍋交換時に鋳型への溶融金属の供給が中断することを防止するための中間容器として機能するためである。
【0003】
タンディッシュは溶融金属を中間的に収容する容器であり、その内表面は耐火物で覆われ、底部に溶融金属を連続鋳造鋳型内に注入するための耐火物製の注入孔を有する。同時に多数の鋳型による鋳造を行う多ストランドミルにおいては、タンディッシュの注入孔は鋳型の数だけ存在し、一列に並んで注入孔列を形成する。各注入孔においては、通常、注入流路の開閉及び注入流の流量を制御するためのバルブに相当する耐火物製ストッパーあるいはスライディングノズルが設置される。
【0004】
溶融金属容器からタンディッシュ湯落ち部への溶融金属流は大きな運動エネルギーを有するので、この運動エネルギーを有効に消滅しないとタンディッシュ内に有害な溶融金属流動が発生することとなる。特に多数の注入孔が一列に並ぶ多ストランドミルにおいては、湯落ち部における溶融金属流の運動エネルギーが減衰されずにタンディッシュ底部を高速で流れると、湯落ち部に近い注入孔には高温の溶融金属が供給され、湯落ち部から遠い注入孔には時間遅れで到着した温度の低い溶融金属が供給されることとなる。ストランド毎に鋳型内の溶融金属の温度が異なると、温度の高いストランドは鋳片の中心偏析異常のような品質異常や鋳造中に鋳片が破れて溶融金属が漏出するブレークアウト事故の発生を招き、温度の低いストランドはノズル閉塞等の事故の発生を招くこととなる。このような問題を解決するため、従来は、図6に示すようなT型タンディッシュを採用していた。T型タンディッシュの突出部が溶融金属湯落ち部であり、鋳型への注入孔列が存在する部分から隔離されているために溶融金属容器からの溶融金属流の運動エネルギーが注入孔列部分まで伝達されにくい。また、突出部の底部を注入孔列の底部よりも低く配置し、更に湯落ち部と注入孔列部との間に堰を設けることにより、溶融金属容器からの溶融金属流の運動エネルギーを湯落ち部内で完全に消滅させる工夫がされていた。
【0005】
従来は、1回の連続鋳造が完了すると、次の連続鋳造の開始までの間にタンディッシュを入れ替え、それまで使用していたタンディッシュは冷却して耐火物の修築を行う。1回の連続鋳造で耐火物の寿命が尽きていない場合であっても、冷却する過程でタンディッシュ内の表面部の耐火物はスポーリングを起こすので、表面部の耐火物は全面的に修築する必要があった。
【0006】
もしタンディッシュ内の耐火物を複数の連続鋳造で使用することができれば、耐火物コストを低減することができる。ただし、この場合でも鋳型への注入孔とストッパーは交換する必要があるので、連続鋳造が終了した時点でタンディッシュ内に残された残存溶融物(溶融金属容器から混入したスラグ、タンディッシュ内溶融金属表面の保温材等)はタンディッシュ内から排出する必要がある。タンディッシュを180°反転して内部の残存溶融物を排出する方法を採用したのでは、反転のための大規模な設備が必要となるので、タンディッシュ底部付近に開閉可能な残存溶融物排出孔を設け、タンディッシュをわずかに傾斜させて該残存溶融物排出孔から残存溶融物を排出できれば有利である。
【0007】
ところが、タンディッシュ形状が従来からのようにT型でかつ湯落ち部の底部が注入孔列の底部よりも低い位置にあり、更に湯落ち部と注入孔列部との間が堰で区切られていると、タンディッシュをわずかに傾けたのみでは残存溶融物のすべてを排出することが不可能であり、タンディッシュを複数回の連続鋳造で使用することができなかった。
【0008】
鋳片の断面サイズの大きいスラブ連続鋳造装置、あるいはブルーム連続鋳造装置においては、注入孔は連続鋳造鋳型内まで延び、鋳型内の溶融金属浴内に浸漬する浸漬ノズルを用い、注入時に溶融金属が周囲の雰囲気と接触して酸化が進行することを防止する。しかし、小断面のビレット連続鋳造装置においては、鋳型の断面サイズが小さいため、浸漬ノズルを鋳型内に装入することが困難であり、タンディッシュ底部の注入孔から下方の鋳型内への注入流が周辺雰囲気に曝されるオープン注入を採用せざるをえない。
【0009】
オープン注入を行う場合、注入流は安定した整流であることが必須である。注入流が整流でなく、飛散を伴う場合、飛沫の表面からの酸化の進行、鋳型内溶湯表面の不安定化によって製造した鋳片の表面品質欠陥が増大する。また飛沫が鋳型の壁面に付着・成長すると、鋳型直下で凝固シェルが破断して内部の溶湯が外部に漏出するブレークアウトが発生する原因となる。また、鋳型の壁面への飛沫の付着により、鋳型内溶湯表面レベル検出器の誤動作に伴う溶湯表面レベル変動が増大したり尻抜けが発生する原因となる。
【0010】
多ストランドミルの注入孔のうち、タンディッシュの妻壁に最も近い注入孔については、妻壁にはね返った溶融金属流が該注入孔を直撃するため、注入孔内に不安定な渦流が発生し、これがために鋳型へのオープン注入の注入流が整流ではなくなるという問題を有していた。
【0011】
また上記のように、オープン注入を行う場合、注入孔から鋳型への溶融金属流を整流化する必要がある。注入孔付近に設置したストッパー等の手段を用いてストランド毎の溶融金属流の流量制御を行うと整流化が損なわれるため、ストッパー等は注入中は全開とし、注入流量制御は基本的にタンディッシュ内の溶融金属の静圧と注入孔の直径とのみによって決定される。従って、タンディッシュ内の溶融金属表面に表面波が発生するとこの表面波によって注入孔の静圧が変動するため、注入流量の変動が発生する原因となる。オープン注入を採用する多ストランドミル用連続鋳造タンディッシュにおいては、従来のタンディッシュではタンディッシュ内溶融金属表面の表面波を防止することができず、注入流量の変動が発生していた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
1回の連続鋳造が完了した後、同じタンディッシュを冷却せずに次の連続鋳造でも使用するためには、鋳型への各注入孔に配設したストッパー等の機能によって注入流を遮断した後、タンディッシュ内に残留しているスラグなどの溶融物を排除する必要がある。タンディッシュ底部の1箇所にスライディングノズル又はストッパー等の開閉機能を有する残留溶融物排出孔を設け、この残留溶融物排出孔からすべての残留溶融物を排出しようとする場合、タンディッシュが従来のようにT型であって、T型の突出部が溶融金属の湯落ち部であり、該突出部の底部がタンディッシュ内の底部のうちで最も低い部位である場合、残留溶融物排出孔はこの突出部内に設ける必要がある。しかし、該突出部は溶融金属容器からの注入流を受け入れる部位でもあるため、注入流による激しい攪拌を受けることからスライディングノズルを設置するスペースが取れず、ストッパーの折損等の事故も避けることができない。そのため、タンディッシュの連続使用を多ストランドミルで実現しようとする場合、T型の突出部を設けない形状とすることが好ましい。
【0013】
また、連続鋳造完了時にタンディッシュ内のすべての溶融金属を注入孔から注入するため、タンディッシュ底部は平坦な面とすることが必要である。従って、タンディッシュ底部の1箇所にスライディングノズル又はストッパー等の開閉機能を有する残留溶融物排出孔を設け、この残留溶融物排出孔からすべての残留溶融物を排出しようとする場合、排出性を良好にするためには、わずかにタンディッシュを傾け、そのときにタンディッシュ底部のうち最も低い位置となる部分に残留溶融物排出孔を設けることが有効である。残留溶融物排出孔はタンディッシュ長手方向の端部に配置してもよい。この場合、多ストランドミルにおいては鋳型への注入孔が横方向に一列に並ぶので、タンディッシュは縦横比の大きい形状となるため、タンディッシュを傾斜させるためのストロークが長くなる。従って、ストロークを長く取れない場合は、残留溶融物排出孔はタンディッシュの長手方向の中央部でかつ注入孔列の反対側に配置し、図5に示すように注入孔列の反対側のタンディッシュ壁が中央部で外側に膨れた形状とすれば、タンディッシュをその長手方向を回転軸として回転して傾斜させることにより、わずかな傾斜ストロークで残留溶融物排出孔から溶融物を排出させることができる。
【0014】
この場合、溶融金属容器からの湯落ち部の配置は、残留溶融物排出孔から距離を置いて配置することが好ましい。また、タンディッシュの僅かな傾斜でタンディッシュ内のすべての残留溶融物を排除する必要があるため、タンディッシュ底部には四周を堰で囲まれた湯溜り部が形成されてはならない。ただし、鋳型への注入孔については、わずかな湯溜り部が形成されることはやむを得ない。
【0015】
上記のごとくして設計されたタンディッシュにおいては、従来のT型タンディッシュのように溶融金属容器からの湯落ち部の運動エネルギーを消滅させるための機構が存在しないため、このままではタンディッシュ内溶融金属の激しい流動の発生が避けられない。このため、多ストランドミルにおいては、湯落ち部に近い注入孔には未だ温度の高い溶融金属が供給され、湯落ち部から遠い注入孔には温度が低下した溶融金属が提供され、前述した問題が発生することとなる。本発明は、この問題を解決することを第1の目的とする。
【0016】
次に、残留溶融物排出孔をタンディッシュの長手方向中央部に設け、湯落ち部を残留溶融物排出孔から離す目的でタンディッシュの長手方向中央部から偏って配置した場合、タンディッシュ内の溶融金属流動の左右対称性がくずれ、湯落ち部から妻壁までの距離が短い側の注入孔に過剰に溶融金属が供給され、各注入孔への溶融金属の分配が均等ではなくなり、ストランド毎の鋳造速度の不均一が生じる原因となる。本発明は、この問題を解決することを第2の目的とする。
【0017】
本発明は更に、オープン注入を採用した場合、溶融金属がタンディッシュの妻壁にはね返って妻壁に最も近い注入孔の注入に悪影響を及ぼすことを防止することを第3の目的とする。
【0018】
本発明は、オープン注入を採用した場合の、タンディッシュ内溶融金属表面の表面波に基づく注入流の不安定を防止することを第4の目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は第1の目的を達成するためになされたものである。即ち、その要旨とするところは、タンディッシュ底部は平坦であって、かつ溶融金属容器からの溶融金属湯落ち部のための突出部を有しない多ストランドミル用連続鋳造タンディッシュにおいて、溶融金属容器からの溶融金属湯落ち部と鋳型への注入孔列の内、湯落ち部に最も近接した注入孔との間のタンディッシュ底部にはタンディッシュの長手方向に沿った堰であって高さが150mm以上250mm以下である堰を有することを特徴とする連続鋳造タンディッシュである。
【0020】
これにより、湯落ち部に最も近い注入孔に湯落ち部から直接溶融金属が到達しなくなるので、温度の高い溶融金属が供給される弊害が改善される。また、湯落ち部の四周が堰で囲まれた形状にはなっていないので、タンディッシュ内に湯溜り部が形成されず、残留溶融物を1つの排出孔から排出することが可能になる。
請求項1に記載された第2の発明は、第2の目的を達成するためになされたものである。即ち、溶融金属湯落ち部はタンディッシュの長手方向中心部から偏った部位にあり、前記タンディッシュの長手方向に沿った堰は溶融金属湯落ち部が偏った側の該堰の端部に溶融金属湯落ち部側に折れ曲がった突出部を有するL字型をなすことを特徴とする上記第1の発明の連続鋳造タンディッシュである。
【0021】
これにより、溶融金属が過剰に供給されやすい湯落ち部が偏っている側のタンディッシュ底部の溶融金属流が、L字型の堰の突出部に衝突して抵抗を受け、タンディッシュ長手方向の左右の溶融金属流の流量が均一化され、各注入孔への溶融金属の分配が均等化される。
【0022】
請求項2に記載された第3の発明は、第3の目的を達成するためになされたものである。即ち、鋳型への溶湯注入時に溶湯流が周辺雰囲気に曝されるオープン注入を行うための多ストランドミル用連続鋳造タンディッシュであって、タンディッシュ妻壁に最も近い注入孔の近傍のタンディッシュ底部には、該注入孔から該注入孔に近い妻壁に向かう方向及び該注入孔から該注入孔に遠い長辺側の壁に向かう方向の2方向に堰を有し、該堰はL字型をなすことを特徴とする連続鋳造タンディッシュである。
【0023】
これにより、湯落ち部からタンディッシュの長手方向に平行に流れる溶融金属流が、妻壁にはね返って妻壁に沿って下降し、妻壁に最も近い注入孔を直撃する流れが妨げられ、該注入孔からの注入流が乱れて整流でなくなる弊害が防止できる。
【0024】
請求項3に記載された第4の発明は、第4の目的を達成するためになされたものである。即ち、鋳型への溶湯注入時に溶湯流が周辺雰囲気に曝されるオープン注入を行うための多ストランドミル用連続鋳造タンディッシュにおいて、タンディッシュの両長辺側の壁間に架橋するごとく配設される堰であって、該堰の下端はタンディッシュ底部から離れた上方に位置し、且つ、溶融金属表面から深さ100mm〜250mmの範囲にあり、更に、該堰は鋳造中にタンディッシュ内溶融金属表面を含む高さにある堰を有することを特徴とする連続鋳造タンディッシュである。
【0025】
タンディッシュの長手方向に伝播する表面波には、タンディッシュの長さによって決定される固有周期を有する固有振動が存在する。溶融金属容器からタンディッシュへの溶融金属の注入を行うと、注入に基づく攪拌エネルギーが元となって上記固有振動が増幅され、タンディッシュ内の溶融金属表面が一定の周期で振動を開始する。このような表面波が発生すると、各注入孔の静圧が時間的に変動することとなり、注入孔から鋳型への注入流の流量が時間的な変動を起こすこととなる。上記第4の発明により、このタンディッシュ内の固有振動表面波の発生を防止することができる。即ち、タンディッシュ内溶融金属表面の表面波は、溶融金属表面近傍における溶融金属のタンディッシュ長手方向の周期的移動を伴うが、本発明においては、タンディッシュの両長壁間に架橋するごとく配設される堰であって、該堰は鋳造中にタンディッシュ内溶融金属表面が通常存在する位置にあるので、溶融金属表面におけるタンディッシュ長手方向の溶融金属の移動が妨げられるため、前記固有振動を減衰させることが可能だからである。また、本発明の堰の下端はタンディッシュ底部から離れた上方に位置するため、湯落ち部から放出された溶融金属のタンディッシュ内での流動は前記堰によっては撹乱を受けず、更に連続鋳造終了時に残存溶融物を排出するに際しても該堰が排出の妨げになることもない。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明は、ストランド数が4ストランド以上の多ストランド連続鋳造ミルにおいて効果を発揮する。多ストランド連続鋳造ミルにおいて、連続鋳造鋳型は横1列に並び、タンディッシュの注入孔は各ストランドの鋳型の上方に配置されるため、タンディッシュは横に長い形状となる。本発明の、溶融金属湯落ち部のための突出部を有しない船形のタンディッシュにおいては、上記注入孔列をタンディッシュの一方の長辺の壁側に偏して配置し、湯落ち部は他方の長辺の壁に偏して配置することが好ましい。更に、タンディッシュからの残留溶融物排出孔がタンディッシュ長手方向中央部に配置されている場合は、湯落ち部の溶融金属流動によって排出孔のストッパーが破損することを防止するため、湯落ち部はタンディッシュ長手方向中央部からいずれか一方の端部側に偏した配置とすることが好ましい。タンディッシュ底部は、パーマレンガの上に流し込み耐火物製のコーティングが施される。
【0027】
本第1の発明のタンディッシュの長手方向に沿った堰は、図1に示すように、タンディッシュの長手方向に平行に配置することが好ましい。これにより、堰は各注入孔と干渉せずに配置することができる。堰の高さは150mm以上250mm以下とする。堰の高さが150mm未満の場合、堰を乗り越えて注入孔列に直接到達する溶融金属流が多くなりすぎ、湯落ち部に最も近い注入孔に温度の高い溶融金属が直接供給されることとなって、当該注入孔に対応するストランドの鋳片の中心偏析などの品質異常、ブレークアウト事故の発生を起すこととなる。堰の高さが250mmを超えると、特定ストランドのみに対する新鮮な溶融金属の供給が遅れるという現象が発生する。前記堰の高さは前記範囲の適当な高さに保ち、該堰の上を乗り越える溶融金属流を適度に保持することが、各ストランドに新鮮な溶融金属を均等に配分するうえで必要である。
【0028】
堰の長さは、1500mm〜2500mmの範囲、最も好ましくは2000mmが適切である。その理由は、隣り合ったストランドの間の間隔は通常約1000mmであり、堰の長さをストランド間隔の1.5倍〜2.5倍、好ましくは2倍の長さとすることで、湯落ち部からの直送流が回避できるためである。堰の幅は80mm前後が適切である。理由は、堰が他の支えなしに湯落ち部攪拌エネルギーに耐えて自立できる幅として80mm前後は必要だからである。また、堰と湯落ち部、注入孔列との配置上留意すべき点は、堰の幅を必要以上に厚くしないことである。その理由は、湯落ち部と注入孔列部の間のスペースが少なすぎると、攪拌エネルギーの減衰効果が悪くなるからである。
【0029】
堰を形成するのに用いる耐火物は、アルミナ含有量80%以上の流し込み耐火物で適切である。堰と底部耐火物との接続については、粘土質のパッチング材で堰の根元を押さえ、転倒防止を図ることができる。湯落ち部と注入孔列との間の間隔が狭く、堰の幅が十分に確保できない場合は、堰を支える方法として図8に示すような構造を採用することも可能である。
【0030】
本第2の発明のL字型の堰は、図2に示すように配置される。本発明については、図7に平面図を示した。なお、図7に示す堰の形状をL型からI型に変更すれば、第1の発明を示す図となる。突出部の堰の高さは、タンディッシュ長手方向に平行な部分の堰と同じ高さとすることが好ましいが、異なる高さとすることもできる。突出部の長さは、湯落ち部がタンディッシュ長手方向でどの程度偏って配置されるかによって定まり、偏心による流量分配比が例えば5:3のときは、堰の突出部の長さは堰からタンディッシュ壁までの距離と突出部から壁までの距離の比を5:3にすることが適切である。堰の耐火物の材質、堰の構造は上記第1の発明の堰と同一とすることが適切である。
【0031】
本第3の発明の堰は、図3に示すように配置される。堰の高さは50mmから150mmの間が適切である。L字型の堰の各辺の長さは、150mmから250mmが適切である。堰の耐火物の材質、堰の構造については、上記第1の発明と同様とするのが好ましい。
【0032】
本第4の発明の堰は、図4に示すように配置される。堰は、図4(a)に示すように湯落ち部とタンディッシュ妻壁との距離が短い側に1つ設置することで十分な効果を有するが、図4(b)に示すように湯落ち部の両側に各1つ配置することでより高い効果を得ることもできる。堰は、タンディッシュ内溶融金属表面を含み、堰の下部の位置は溶融金属表面から深さ100mm〜250mmの範囲にあることが望ましい。堰の下部の位置が溶融金属表面から深さ100mm未満であると、堰がタンディッシュ内表面波を減衰するには十分ではなく、250mmを超えると湯落ち部から各注入孔に供給される溶融金属の流れを妨害し、各注入孔への適切な溶融金属流動が得られなくなる。堰の耐火物の材質、堰の構造は上記第1の発明の堰と同一とすることが適切である。
【0033】
【実施例】
鋼のビレット連続鋳造装置において本発明を適用した。連続鋳造装置は8ストランドミルであり、鋳型サイズは125mm×125mm、鋳造速度は2.6〜3.2m/minの条件で鋳造を行った。タンディッシュ容量は35トンであり、転炉精錬法で精練した溶鋼を240トンの容量の取鍋に受け、この取鍋からタンディッシュ3へはロングノズル7を介して溶鋼を注入する。8個の注入孔はタンディッシュの片側に1列に並び、隣り合った注入孔の間の間隔は1100mmである。取鍋からの溶鋼の湯落ち部は、注入孔列と反対側の、タンディッシュ長手方向中央部から1.1m偏った位置に配置した。湯落ち部は、注入孔列から最短距離で630mm離れた位置に配置されている。注入孔5の上方にはそれぞれ図示しない耐火物製のストッパーを配置し、注入流のオンオフ制御を行う。注入孔5の下には鋳型内まで達する浸漬ノズルを採用せず、オープン注入法を採用している。
【0034】
本発明例No.1は、図1に示すように本第1の発明の堰を有する。堰の高さは200mm、長さは2000mm、幅は80mmとし、堰の中心は注入孔列から300mm離れた位置に配置した。
【0035】
本発明例No.2は、図2に示すように本第2の発明の堰を有する。堰のL字型の長い辺は、上記発明例No.1と同一であり、この堰にL字型の短い辺を付加している。短い辺の高さは長い辺と同じ200mm、突き出した長さは200mmである。突き出し部の先端からタンディッシュの長い辺の壁までの距離は300mmである。
【0036】
本発明例No.3は、図3に示すように本第2及び第3の発明の堰を有する。湯落ち部のL字型堰は上記発明例No.2と同じ形状であり、タンディッシュ両端の最も妻壁に近い2つの注入孔の近傍には第3の発明のL字型堰を設けた。第3の発明の堰は、高さが100mm、各辺の長さが200mmであり、堰の製造については第1の発明と同等である。
【0037】
本発明例No.4は、図4(a)に示すように第2から第4の発明の堰を有する。前記発明例No.3と同じ堰を有し、更に第4の発明の堰を付加した。第4の発明の堰は、湯落ち部から1000mmの位置に配置し、堰の下端は溶融金属表面から400mm下方である。なお、溶融金属の深さは500mmである。
【0038】
比較例は、図5に示すように、前記発明例と同様のタンディッシュにおいて、本発明の堰を有しないものである。
【0039】
表1に本発明例及び比較例のタンディッシュを用いた鋳造結果を示す。鋳片品質指数は、鋳片の中心偏析不良及び表面疵に基づく手入れの発生頻度を表す指数であり、ブレークアウト発生率は、各ストランド毎にブレークアウトが発生する頻度を表す指数であり、いずれも無次元化された指数である。どちらも数字が小さいほど良好な成績であることを示す。湯落ち部はタンディッシュにおいて偏心しており、第3ストランドと第4ストランドとの中間に位置する。
【0040】
【表1】
【0041】
比較例においては、鋳片品質指数、ブレークアウト発生率ともに高い数字を示している。特に湯落ち部に最も近い第3、4ストランドの成績が不良である。それに対し、本発明例No.1においては、各ストランドとも比較例に対して成績の改善が見られる。本発明例No.2は、No.1と比較し、第1、2ストランドの鋳片品質指数の改善が見られる。L字型堰によってタンディッシュ左右への溶融金属の分配が改善されたためである。また、No.2においては第3、4ストランドのブレークアウト発生率も改善されている。本発明例No.3は、No.2と比較し、タンディッシュ両端の第1、8ストランドの鋳片品質指数の改善が見られる。第3の発明の堰の効果に基づく。本発明例No.4は、No.3と比較し、特に第2〜4ストランドの鋳片品質指数が改善され、ブレークアウト発生率はどのストランドでもゼロに改善された。本発明のすべての堰の効果が総合されたためである。
【0042】
【発明の効果】
本発明により、タンディッシュ耐火物を複数回使用するための多ストランドミル用連続鋳造タンディッシュにおいて、溶融金属容器からタンディッシュへの溶融金属流の大きな運動エネルギーを有効に消滅して安定な鋳造を行い、連続鋳造鋳片の品質の安定化を図り、ブレークアウト事故の低減を図り、またオープン注入を実施する場合の鋳造の安定化を図ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本第1の発明の連続鋳造タンディッシュを示す斜視図(一部断面)である。
【図2】本第2の発明の連続鋳造タンディッシュを示す斜視図(一部断面)である。
【図3】本第2、第3の発明の連続鋳造タンディッシュを示す斜視図(一部断面)である。
【図4】本第2〜第4の発明の連続鋳造タンディッシュを示す斜視図(一部断面)であり、(a)は本第4の発明の堰が1個の例、(b)は本第4の発明の堰が2個の例である。
【図5】従来の連続鋳造タンディッシュを示す斜視図(一部断面)である。
【図6】従来の連続鋳造タンディッシュを示す斜視図(一部断面)である。
【図7】本第2の発明の連続鋳造タンディッシュを示す平面図である。
【図8】本発明の連続鋳造タンディッシュを示す斜視図である。
【符号の説明】
1 連続鋳造タンディッシュ
2 長辺側の壁
3 妻壁
4 底部
5 注入孔
6 残留溶融物排出孔
7 ロングノズル
8 溶融金属表面
9 湯落ち部
10 第1の発明の堰
11 第2の発明の堰
12 第3の発明の堰
13 第4の発明の堰
14 突出部
15 湯落ち部の堰
16 溶融金属流
Claims (3)
- タンディッシュ底部は平坦であって、かつ溶融金属容器からの溶融金属湯落ち部のための突出部を有しない多ストランドミル用連続鋳造タンディッシュにおいて、溶融金属容器からの溶融金属湯落ち部と鋳型への注入孔列との間のタンディッシュ底部にはタンディッシュの長手方向に沿った堰であって高さが150mm以上250mm以下である堰を有することを特徴とする連続鋳造タンディッシュであって、溶融金属湯落ち部はタンディッシュの長手方向中心部から偏った部位にあり、前記タンディッシュの長手方向に沿った堰は溶融金属湯落ち部が偏った側の該堰の端部に溶融金属湯落ち部側に折れ曲がった突出部を有するL字型をなすことを特徴とする連続鋳造タンディッシュ。
- 鋳型への溶湯注入時に溶湯流が周辺雰囲気に曝されるオープン注入を行うための多ストランドミル用連続鋳造タンディッシュであって、タンディッシュ妻壁に最も近い注入孔の近傍のタンディッシュ底部には、該注入孔から該注入孔に近い妻壁に向かう方向及び該注入孔から該注入孔に遠い長辺側の壁に向かう方向の2方向に堰を有し、該堰はL字型をなすことを特徴とする連続鋳造タンディッシュ。
- 鋳型への溶湯注入時に溶湯流が周辺雰囲気に曝されるオープン注入を行うための多ストランドミル用連続鋳造タンディッシュにおいて、
タンディッシュの両長辺側の壁間に架橋するごとく配設される堰であって、該堰の下端はタンディッシュ底部から離れた上方に位置し、且つ、溶融金属表面から深さ100mm〜250mmの範囲にあり、更に、該堰は鋳造中にタンディッシュ内溶融金属表面を含む高さにある堰を有することを特徴とする連続鋳造タンディッシュ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP34014297A JP3612198B2 (ja) | 1997-12-10 | 1997-12-10 | 連続鋳造タンディッシュ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP34014297A JP3612198B2 (ja) | 1997-12-10 | 1997-12-10 | 連続鋳造タンディッシュ |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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