JP2002129387A - チタン−ニッケル合金材の表面処理方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 チタン−ニッケル合金材の表面に生成された
酸化被膜を完全に除去するとともに、チタン−ニッケル
合金材の表面に陽極酸化被膜を生成することでチタン−
ニッケル合金材を他の材料に接着する際の接着性の向上
を図る。 【解決手段】 チタン−ニッケル合金材１をフッ酸と硝
酸の混合水溶液の常温浴に所定時間浸漬して表面に生成
された酸化被膜２を除去し、酸化被膜２を除去したチタ
ン−ニッケル合金材１を水酸化ナトリウム溶液で陽極酸
化処理し、チタン−ニッケル合金材の表面に陽極酸化被
膜を生成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、次世代航空機構
造、衛生及び宇宙ステーション等の宇宙機器、超高層建
築、公共インフラストラクチャ及び高速車両等に適用さ
れる構造用知的複合材料に用いられるチタン−ニッケル
合金材の表面処理方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】チタン−ニッケル合金製品には、予め定
めた形状から別の形状に変形させた場合に、変形した形
状に熱を加えることで変形後の形状が変形前の形状に戻
る特性を有するものがある。このような特性を有するチ
タン−ニッケル合金は、携帯電話アンテナ、炊飯器圧力
蓋、コーヒーメーカー、女性用下着（ブラジャーワイヤ
ー）等に用いられている。

【０００３】現在量産されているチタン−ニッケル合金
材においては、チタン−ニッケル合金材の熱処理時に表
面に生成される酸化被膜が、構造的に緻密で強固である
ため、この酸化被膜を一般的なチタン合金材に用いられ
ている表面処理方法によって除去することができない。

【０００４】一方、チタン−ニッケル合金箔は、知的複
合材料等のように材料内部に埋め込んで使用されること
があり、チタン−ニッケル合金箔と複合材料の高強度樹
脂とを高い接着強度で接着することが必要であるが、チ
タン−ニッケル合金材に生成される酸化被膜が、チタン
−ニッケル合金材と複合材料の高強度樹脂を高い接着強
度で接着することの障害となっている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】現在の技術水準では、
チタン−ニッケル合金材の表面に生成された酸化被膜を
除去することができないので、チタン−ニッケル合金材
と複合材料の高強度樹脂を高い接着強度で接着するため
に、チタン−ニッケル合金材の表面に生成された酸化被
膜の上に非金属コーティング等の比較的密着性がよいが
強度を必要としないコーティングを施すようにしてい
る。

【０００６】しかしながら、チタン−ニッケル合金材を
知的複合材料等のように材料内部に埋め込んで使用する
場合や、チタン−ニッケル合金材に接着力の高いコーテ
ィングが要求される場合、チタン−ニッケル合金材の表
面に生成された酸化被膜を除去することが要望されてい
る。

【０００７】本発明は、上記した点に考慮してなされた
もので、チタン−ニッケル合金材の熱処理時に生成され
る酸化被膜を完全に除去するとともに、酸化被膜を除去
した後に別の酸化被膜を形成することで接着特性とコー
ティング特性を向上させるチタン−ニッケル合金材の表
面処理方法を提供することを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明のチタン−ニッケ
ル合金材の表面処理方法は、チタン−ニッケル合金材を
フッ酸と硝酸の混合水溶液の常温浴に所定時間浸漬して
表面に生成された酸化被膜を除去し、酸化被膜を除去し
たチタン−ニッケル合金材を水酸化ナトリウム溶液で陽
極酸化処理してチタン−ニッケル合金材の表面に陽極酸
化被膜を生成し、チタン−ニッケル合金材の接着特性と
コーティング特性を向上させることができる。

【０００９】本発明のチタン−ニッケル合金材の表面処
理方法は、チタン−ニッケル合金材を３％濃度のフッ酸
と１０〜１５％濃度の硝酸の混合水溶液の常温浴に所定
時間浸漬することでチタン−ニッケル合金材の表面の酸
化被膜を除去することができる。

【００１０】本発明のチタン−ニッケル合金材の表面処
理方法は、酸化被膜を除去したチタン−ニッケル合金材
を水酸化ナトリウム溶液で陽極酸化処理してチタン−ニ
ッケル合金材の表面に陽極酸化被膜を生成することで、
チタン−ニッケル合金材の接着特性とコーティング特性
を向上させることができる。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面を
参照して説明する。図１は本発明のチタン−ニッケル合
金材の表面処理方法のブロック図を示し、本発明のチタ
ン−ニッケル合金材の表面処理方法は、チタン−ニッケ
ル合金材の表面の酸化被膜を除去するために、チタン−
ニッケル合金材をフッ酸と硝酸の混合水溶液の常温浴に
所定時間浸漬し、チタン−ニッケル合金材の接着特性と
コーティング特性を向上させるために、酸化被膜を除去
したチタン−ニッケル合金材を水酸化ナトリウム溶液で
陽極酸化処理してチタン−ニッケル合金材の表面に陽極
酸化被膜を生成する。

【００１２】本発明のチタン−ニッケル合金材の表面処
理方法においては、チタン−ニッケル合金材の表面の酸
化被膜を除去するために、チタン−ニッケル合金材１を
下記する処理条件１で処理した。

【００１３】 チタン−ニッケル合金材の処理条件１ 試料 チタン−ニッケル合金箔 処理液 （１）３％濃度フッ酸と５％濃度の硝酸の混合水溶液 （２）３％濃度フッ酸と１０％濃度の硝酸の混合水溶液 （３）３％濃度フッ酸と１５％濃度の硝酸の混合水溶液 処理液温度 室温 処理時間（１）１分間浸漬 （２）３分間浸漬 （３）５分間浸漬 処理条件１の実験結果を図２に示す。図２において、チ
タン−ニッケル合金箔１に付着した酸化被膜（斜線部
分）を符号２で示し、チタン−ニッケル合金箔１の酸化
被膜２が除去された部位（白抜き部分）を符号３で示
す。

【００１４】チタン−ニッケル合金箔１の酸化被膜２
は、３％濃度フッ酸と５％濃度の硝酸の混合水溶液に室
温で３分間浸漬しても一部が除去されるだけであり、３
％濃度フッ酸と１０％濃度の硝酸の混合水溶液に室温で
１分間浸漬すると一部が除去され、室温で５分間浸漬す
ると完全に除去され、３％濃度フッ酸と１５％濃度の硝
酸の混合水溶液に室温で１分間浸漬すると一部が除去さ
れ、室温で３分間浸漬すると完全に除去された。

【００１５】図３はチタン−ニッケル合金箔１の酸洗前
の表面粗さを示す図であり、図４はチタン−ニッケル合
金箔１の酸洗を行い被膜を除去した後の表面粗さを示す
図である。

【００１６】チタン−ニッケル合金箔１は、酸洗前の段
階では、表面に酸化被膜２が付着しており、表面粗さ
は、Ｒａが０．０７〜０．０９、Ｒｔが０．４５〜０．
６７であり、酸洗後の段階では、酸化被膜２が除去さ
れ、Ｒａが０．２２〜０．３７、Ｒｔが２．３７〜５．
１２である。

【００１７】本発明のチタン−ニッケル合金材の表面処
理方法は、チタン−ニッケル合金材と他の材料を接着す
る場合の接着性向上のために、チタン−ニッケル合金材
１を下記する処理条件２で処理した。

【００１８】チタン−ニッケル合金材の処理条件２ 処理液 １０％〜１５％ＮａＯＨ 処理液温度 １０〜２０℃ 電圧 １０〜２０Ｖ 電解時間 ３０〜６０秒 なお、処理液であるＮａＯＨの濃度を１０％以下にする
と、処理時間が長くなって品質のばらつきが多くなり、
ＮａＯＨの濃度を１５％以上にすると、母材であるチタ
ン−ニッケル合金材の溶出または浸食が大きいので安定
した処理ができない。

【００１９】図５は、陽極酸化処理したチタン−ニッケ
ル合金材の表面粗さを示す図であり、酸化被膜２を除去
したチタン−ニッケル合金箔１の表面に別の陽極酸化被
膜が生成されており、表面粗さは、Ｒａが０．０３３〜
０．４５、Ｒｔが３．８０〜４．３０である。

【００２０】図６は、本発明による処理方法で処理され
たチタン−ニッケル合金箔および従来の方法で処理され
たチタン−ニッケル合金箔をＡＳＴＭ Ｄ３１６７によ
り測定した引き剥がし強度を示すグラフである。

【００２１】図６において、タイプＡは、１．２％濃度
フッ酸と３５％濃度の硝酸の混合水溶液で酸洗いし、リ
ン酸３ナトリウム，弗化ナトリウムおよび弗化水素の混
合溶液で化成被膜処理したチタン−ニッケル合金箔、タ
イプＢは、１．２％濃度フッ酸と３５％濃度の硝酸の混
合水溶液で酸洗いしたチタン−ニッケル合金箔、タイプ
Ｃは本発明の処理条件１の処理液（３）と処理時間
（２）の条件で処理されたチタン−ニッケル合金箔、タ
イプＤは、本発明の処理条件１の処理液（３）と処理時
間（２）の処理と処理条件２で処理されたチタン−ニッ
ケル合金箔を示す。

【００２２】図６に示す測定結果によれば、処理条件１
の処理液（３）と処理時間（２）の処理により酸洗いし
たチタン−ニッケル合金箔（タイプＣ）は、従来のタイ
プＡのチタン−ニッケル合金箔およびタイプＢのチタン
−ニッケル合金箔と平均荷重および平均強度においてほ
とんど差がないが、処理条件１の処理液（３）と処理時
間（２）の処理と処理条件２で処理したチタン−ニッケ
ル合金箔（タイプＤ）は、従来のタイプＡ、タイプＢお
よび本発明のタイプＣのチタン−ニッケル合金箔と比較
して、平均荷重および平均強度が約２倍である。

【００２３】

【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、チタ
ン−ニッケル合金材をフッ酸と硝酸の混合水溶液の常温
浴に所定時間浸漬することで、チタン−ニッケル合金材
の表面に生成された酸化被膜を完全に除去することがで
き、酸化被膜を除去したチタン−ニッケル合金材を水酸
化ナトリウム溶液で陽極酸化処理して、チタン−ニッケ
ル合金材の表面に陽極酸化被膜を生成することで、チタ
ン−ニッケル合金材を他の材料に接着する際の接着性の
向上を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のチタン−ニッケル合金材の表面処理方
法の工程順を示すブロック図。

【図２】本発明のチタン−ニッケル合金材の表面処理方
法で表面処理されたチタン−ニッケル合金材の酸洗い前
後の外観を示す写真。

【図３】図２のチタン−ニッケル合金材の酸洗い前の表
面粗さを示す図。

【図４】図２のチタン−ニッケル合金材の酸洗い後の表
面粗さを示す図。

【図５】本発明のチタン−ニッケル合金材の表面処理方
法で表面処理されたチタン−ニッケル合金材の陽極酸化
処理後の表面粗さを示す図。

【図６】本発明のチタン−ニッケル合金材の表面処理方
法で表面処理されたチタン−ニッケル合金材の引き剥が
し強度を示す図。

【符号の説明】

１ チタン−ニッケル合金箔 ２ 酸化被膜 ３ チタン−ニッケル合金箔の酸化被膜が除去された部
位

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】チタン−ニッケル合金材をフッ酸と硝酸の
   混合水溶液の常温浴に所定時間浸漬して表面に生成され
   た酸化被膜を除去し、酸化被膜を除去したチタン−ニッ
   ケル合金材を水酸化ナトリウム溶液で陽極酸化処理し、
   チタン−ニッケル合金材の表面に陽極酸化被膜を生成す
   ることを特徴とするチタン−ニッケル合金材の表面処理
   方法。
2. 【請求項２】フッ酸と硝酸の混合水溶液は、３％濃度の
   フッ酸と１０〜１５％濃度の硝酸であることを特徴とす
   る請求項１に記載のチタン−ニッケル合金材の表面処理
   方法。
3. 【請求項３】チタン−ニッケル合金材の浸漬時間は、３
   分から５分であることを特徴とする請求項１または２に
   記載のチタン−ニッケル合金材の表面処理方法。
4. 【請求項４】水酸化ナトリウム溶液は、１０〜１５％濃
   度の水酸化ナトリウムを有することを特徴とする請求項
   １ないし３のいずれかに記載のチタン−ニッケル合金材
   の表面処理方法。
5. 【請求項５】陽極酸化処理は、電解液温度１０〜２０
   ℃、電圧１０〜２０Ｖ、電解時間３０〜６０秒で行われ
   ることを特徴とする請求項１ないし４のいずれかに記載
   のチタン−ニッケル合金材の表面処理方法。
6. 【請求項６】チタン−ニッケル合金材を３％濃度のフッ
   酸と１０〜１５％濃度の硝酸の混合水溶液の常温浴に３
   分から５分浸漬してチタン−ニッケル合金材の表面の酸
   化被膜を除去することを特徴とするチタン−ニッケル合
   金材の表面処理方法。
7. 【請求項７】酸化被膜を除去したチタン−ニッケル合金
   材を１０〜１５％濃度の水酸化ナトリウム溶液で陽極酸
   化処理してチタン−ニッケル合金材の表面に陽極酸化被
   膜を生成することを特徴とするチタン−ニッケル合金材
   の表面処理方法。
8. 【請求項８】陽極酸化処理は、電解液温度１０〜２０
   ℃、電圧１０〜２０Ｖ、電解時間３０〜６０秒で行われ
   ることを特徴とする請求項７に記載のチタン−ニッケル
   合金材の表面処理方法。