JP2002069668A - 耐チョーキング性に優れた塗装鋼板 - Google Patents

耐チョーキング性に優れた塗装鋼板

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JP2002069668A
JP2002069668A JP2000266561A JP2000266561A JP2002069668A JP 2002069668 A JP2002069668 A JP 2002069668A JP 2000266561 A JP2000266561 A JP 2000266561A JP 2000266561 A JP2000266561 A JP 2000266561A JP 2002069668 A JP2002069668 A JP 2002069668A
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coating film
steel sheet
film
rust
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JP2000266561A
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English (en)
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Fumishiro Kumon
史城 公文
Kazuyoshi Sugawara
和良 菅原
Hiroshi Tsuburaya
浩 圓谷
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
Nisshin Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 下塗り塗料に含まれる防錆顔料の配合量を節
減し、着色顔料無添加のクリア塗膜をトップ層として設
けることにより、耐チョーキング性に優れた塗装鋼板を
得る。 【構成】 この塗装鋼板は、Al:4〜10%,Mg:
1〜4%,必要に応じTi:0.002〜0.1%及び
B:0.001〜0.45%,残部が実質的にZnの組
成をもつZn−Al−Mg系めっき層が形成されためっ
き既往判を塗装原板とし、化成処理皮膜を介して塗膜が
設けられている。塗膜は、下塗り塗膜,クリア塗膜の2
層構成、下塗り塗膜,中塗り塗膜,クリア塗膜の3層構
成の何れであっても良いが、トップ層には着色顔料を含
まないクリア塗膜を設けることが好ましい。クリア塗膜
としては、たとえば着色顔料を含む他の塗膜と同じ樹脂
系塗料で形成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、内装材,外装材,
表装材等として広範な分野で使用される耐チョーキング
性に優れた塗装鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】外装材として使用される塗装鋼板は、溶
融亜鉛めっき鋼板,溶融Zn−Al系めっき鋼板等のめ
っき鋼板を塗装原板に使用し、塗布型クロメート処理等
の塗装前処理を経て、下塗り塗膜及び上塗り塗膜を形成
する2コート法で従来から製造されている。下塗り塗膜
には塗装原板に対する密着性及び耐食性の機能を付与す
るため防錆顔料を含む塗料、上塗り塗膜には塗装外観,
耐候性等を改善するために着色顔料を添加した塗料が使
用されている。しかし、ポリエステル樹脂系の塗料で上
塗り塗膜を形成した塗装鋼板を屋外に2〜3年放置する
と、塗膜表面の樹脂成分が太陽光の紫外線,熱,降雨,
大気中の酸素等の影響によって分解される。樹脂成分が
分解すると塗膜中に含まれている樹脂と顔料との結合力
がなくなり、塗膜面が粉状物で覆われた表面状態になり
意匠性が劣化するチョーキング現象が発生する。
【0003】チョーキング現象は、塗膜に含まれる顔料
の濃度が高いほど、顔料の白色度が高いほど顕著にな
る。チョーキング現象は、TiO2を多量に含むチタン
白等の白色度の高い塗料を塗布した塗装鋼板を屋外で使
用した場合、紫外線でTiO2を励起することにより発
生したラジカル(活性種)が周辺の樹脂を分解する塗膜
の光触媒劣化が原因であり、TiO2(白色顔料)添加
量の高い塗膜ほど顕著になる。また、飛来してくる大気
中の汚染物質による塗膜表面の汚れが短期間で発生す
る。大気中及び塗膜表面に付着した汚染物質は降雨によ
って取り込まれ、雨筋汚れ等となって塗膜の意匠性が著
しく損なわれる。なかでも、比較的安価で建材用途等に
多用されているポリエステル樹脂系塗料では、フッ素樹
脂系塗料に比較すると耐チョーキング性及び耐汚染性が
問題になる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】着色顔料を含まないク
リア塗膜を上塗り塗膜に代えて形成すると、着色顔料を
含む上塗り塗膜のように短期間で塗膜表面がチョーキン
グすることなく、汚れた場合でも塗膜表面を軽く拭き取
るだけで汚染物質や雨筋汚れを容易に除去できる。しか
し、下塗り塗膜に含ませたストロンチウムクロメート等
の防錆顔料による着色(黄色)がクリア塗膜を透過して
観察されるため、下塗り塗膜に対する防錆顔料の添加量
に制約が加わり、耐食性に劣る塗装鋼板となる。防錆顔
料の添加量に対する制約は、着色顔料及び防錆顔料を配
合した1コート用塗料でも同様であり、十分な耐食性の
ある塗装鋼板が得られない。
【0005】塗装原板の腐食を抑制する機能を下塗り塗
膜にもたせ且つチョーキング現象を抑制するためには、
優れた防錆能を発現するストロンチウムクロメート等の
クロム酸系防錆顔料を添加した下塗り塗膜を設け、防錆
顔料起因の着色を隠蔽する着色顔料を含む中塗り塗膜を
形成し、更に中塗り塗膜の上に着色顔料を含まないクリ
ア塗膜を形成した3コート塗装鋼板にする方法が考えら
れる。しかし、3コート塗装鋼板を2コート専用の連続
塗装ラインで製造する場合、塗装ラインを2回通板する
ことが余儀なくされ、製造コストが大幅に高くなる。ま
た、3コート専用の塗装ラインを用意しておくことも大
きな負担である。
【0006】クロム酸系以外の防錆顔料としては、塗膜
を黄色に着色することがないシリカ−カルシウム系,リ
ン酸塩系等のノンクロメート系防錆顔料が知られてい
る。しかし、ノンクロメート系防錆顔料は、クロム酸系
に比較すると防錆能に劣り、多量に配合してもクロム酸
系防錆顔料に匹敵する防錆効果が得られない。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような問
題を解消すべく案出されたものであり、耐食性に優れた
Zn−Al−Mg系めっき鋼板を塗装原板に使用するこ
とにより、塗膜に配合される防錆顔料を低減し、着色顔
料起因のチョーキング現象を抑制した塗装鋼板を提供す
ることを目的とする。
【0008】本発明の塗装鋼板は、その目的を達成する
ため、Al:4〜10質量%,Mg:1〜4質量%,必
要に応じTi:0.002〜0.1質量%及びB:0.
001〜0.45質量%,残部が実質的にZnの組成を
もつZn−Al−Mg系めっき層,化成処理皮膜及び塗
膜が下地鋼板の上に順次形成されていることを特徴とす
る。塗膜は、下塗り塗膜,クリア塗膜の2層構成、下塗
り塗膜,中塗り塗膜,クリア塗膜の3層構成の何れであ
っても良いが、トップ層には着色顔料を含まないクリア
塗膜を設けることが好ましい。クリア塗膜としては、た
とえば着色顔料を含む他の塗膜と同じ樹脂系塗料で形成
される。
【0009】
【作用】本発明で使用する塗装原板には、Al:4〜1
0質量%,Mg:1〜4質量%,必要に応じTi:0.
002〜0.1質量%及びB:0.001〜0.45質
量%,残部が実質的にZnの組成をもつZn−Al−M
g系めっき層が鋼板表面に形成されている。Zn−Al
−Mg系めっき鋼板自体は本出願人が開発しためっき鋼
板(特開平10−2267865号公報,特開平10−
306357号公報)であり、Al/Zn/Zn2Mg
三元共晶マトリックスに初晶Al又は初晶AlとZn単
相が混在した組織になっている。このZn−Al−Mg
系めっき層は、Al及びMgが難溶性の腐食生成物にな
ることから平坦部の耐食性はもとより、塗膜疵付き部や
切断端面近傍の塗膜下でも優れた耐食性を呈する。生成
した腐食生成物は、外部から侵入してくる腐食性イオン
に対するバリアとしても働く。また、Zn−Al−Mg
系めっき層にTi及びBを含ませると、中間相Zn11
2の生成・成長が抑えられ、耐食性及び塗装後の外観が
向上する。
【0010】本発明では、Zn−Al−Mg系めっき層
の優れた耐食性を活用し、塗装原板の上に形成される塗
膜に含まれる防錆顔料の低減、或いは防錆顔料無添加を
可能にしている。具体的には、防錆顔料の添加量を低く
抑え、或いは防錆顔料を添加することなく着色顔料を配
合した下塗り塗膜を形成し、その上に着色顔料を含まな
いクリア塗膜を形成しても、塗膜疵付き部や切断端面に
塗膜フクレや錆が発生しにくい。すなわち、防錆顔料を
低減又は省略しても必要な耐食性が確保されるため、防
錆顔料起因の着色が抑えられ、その着色を隠蔽するため
に必要な着色顔料の配合量も少なくなる。その結果、着
色顔料に由来するチョーキング現象がなく、耐チョーキ
ング性,耐食性,耐久性に優れた塗装鋼板が得られる。
また、塗膜を黄色に着色することがないノンクロメート
系防錆顔料を使用した場合でも、従来のクロム酸系防錆
顔料を含む塗膜を形成した塗装鋼板と同等の耐食性が発
現する。更には、クロメート処理に代えクロムフリーの
塗装前処理を施しても十分な耐食性が確保されるため、
クロムを全く含まない塗装鋼板が得られ、環境への悪影
響が軽減された塗装ラインが構築される。
【0011】
【実施の形態】下地鋼板としては、低炭素鋼,中炭素
鋼,高炭素鋼,低合金鋼,ステンレス鋼等が使用され
る。下地鋼板には、通常、連続溶融めっきラインでZn
−Al−Mg系めっき層が形成される。連続溶融めっき
ラインでは、下地鋼帯を常法に従って還元焼鈍炉に通板
し、還元焼鈍によって鋼板表面を活性化した後、スナウ
トを介して溶融めっき浴に導入する。溶融めっき浴から
引き上げられた鋼帯に付着している余剰の溶融めっき金
属をガスワイピング等で除去し、めっき目付け量が調整
された溶融めっき鋼帯を後工程に搬送する。
【0012】鋼板表面に形成されるZn−Al−Mg系
めっき層は、Al:4〜10質量%,Mg:1〜4質量
%,必要に応じTi:0.002〜0.1質量%及び
B:0.001〜0.45質量%,残部が実質的にZn
の組成に調整される。Zn−Al−Mg系めっき層の耐
食性は、4質量%以上のAl含有量及び1質量%以上の
Mg含有量で顕著になる。4質量%以上のAl含有量
は、MgO系のトップドロス発生防止にも有効である。
しかし、10質量%を超える過剰量のAlや4質量%を
超える過剰量のMgが含まれると、下地鋼とめっき層と
の界面にFe−Al系合金層が成長しやすく、加工性,
めっき密着性,塗膜密着性等が劣化する。また、0.0
02質量%以上のTi及び0.001質量%以上のMg
を添加すると、Zn11Mg2相の生成・成長が抑制さ
れ、光沢ムラのないめっき層表面となる。しかし、0.
1質量%を超えるTi含有量や0.045質量%を超え
るB含有量では、Ti−B系,Al−B系等の析出物に
よってめっき層表面に凹凸が生じ、塗装後の外観が損な
われる。
【0013】Zn−Al−Mg系めっき層が形成された
塗装原板は、塗装前処理が施された後、連続塗装ライン
に送られる。塗装前処理では、クロメート皮膜又はクロ
ムフリー皮膜を下地鋼板表面に形成することにより、塗
膜密着性を向上させる。クロメート皮膜は、耐食性及び
塗膜密着性を確保するためにCr換算付着量5〜100
mg/m2の割合で形成することが好ましい。また、チ
タン系,シリカ系,ジルコニウム系,マンガン系等のク
ロムフリー皮膜では、同様な理由から皮膜量10〜10
0mg/m2の割合で形成することが好ましい。
【0014】塗装前処理された塗装原板には2コート法
又は3コート法で塗膜が形成されるが、何れの方法によ
る場合でもトップ層には着色顔料を含まないクリア塗膜
を形成することが好ましい。下塗り塗膜及びクリア塗膜
の2層構成で塗膜を形成するとき、ポリエステル系,ウ
レタン系,アクリル系,エポキシ変性ポリエステル系,
シリコーン変性ポリエステル系等が下塗り塗料のベース
樹脂に使用される。ベース樹脂には、クロム酸ストロン
チウム,クロム酸カルシウム,クロム酸バリウム,クロ
ム酸亜鉛等のクロム酸系防錆顔料や、リン酸アルミニウ
ム,リン酸亜鉛,燐酸カルシウム,炭酸カルシウム,シ
リカ−カルシウム等のノンクロメート系防錆顔料を単独
で或いは2種以上を配合しても良い。また、塗装原板そ
れ自体で十分な耐食性を呈するため、下塗り塗膜への防
錆顔料添加を省略することもできる。常法に従って艶消
し剤,有機系骨材,無機系骨材,各種粉末等を下塗り塗
料に配合することも可能である。
【0015】クロム酸系防錆顔料として代表的に使用さ
れるクロム酸ストロンチウムの場合、クロム酸ストロン
チウムを不揮発分に対し10質量%以下の少量で十分な
防錆能が発現する。ノンクロメート系防錆顔料として、
たとえば多孔質シリカ粒子にカルシウムイオンをイオン
交換により結合させた腐食抑制剤(以下、シリカ−カル
シウム系と称する)を使用する場合、シリカ−カルシウ
ム系防錆顔料を不揮発分に対して2〜50質量%(より
好ましくは、5〜30質量%)の範囲で添加することが
好ましい。
【0016】下塗り塗膜は、5〜30μmの膜厚で塗装
原板の上に形成される。下塗り塗膜に配合される防錆顔
料を大幅に低減できるため、その分だけ着色顔料を増量
しても下塗り塗料の貯蔵安定性や造膜性が損なわれな
い。着色顔料には、酸化チタン,カーボンブラック,酸
化鉄,シアニンブルー,シアニングリーンやアルミニウ
ム粉末等が使用され、要求される色調に応じて通常10
〜80質量%の割合でベース樹脂に配合される。
【0017】調合された下塗り塗料は、乾燥膜厚が5〜
30μmとなる塗布量で塗装原板に塗布され、190〜
240℃×20〜60秒で焼き付けられる。形成された
下塗り塗膜は、塗装原板に対して優れた密着性を呈す
る。下塗り塗膜の上に乾燥膜厚0.1〜30μmとなる
塗布量でクリア塗膜が塗布され、190〜240℃×3
0〜90秒で焼き付けられる。
【0018】下塗り塗膜厚が5μm未満であると塗装原
版の隠蔽が不十分で、逆に30μmを超えると、焼き付
けした塗膜にワキ等の欠陥が生じるため、下塗り塗膜厚
は5〜30μmの範囲にする。下塗り塗料を190℃未
満で焼き付けると塗膜密着性が不十分で加工時に塗膜の
剥離が生じ、逆に240℃以上で焼き付けると加工性や
塗膜密着性の低下が生じることがあるので、下塗り塗料
の焼き付け温度は190〜240℃の範囲に設定する。
【0019】また、上塗り塗膜厚が0.1μm未満では
均一なクリア塗膜を形成することが困難で十分な耐チョ
ーキング性が得られず、逆に30μmを超えると焼き付
けたクリア塗膜にワキ等の欠陥が生じたりするため、上
塗り塗膜厚は0.1〜30μmの範囲にする。上塗り塗
料を190℃未満で焼き付けると塗膜密着性が不十分で
加工時に塗膜の剥離が生じ、逆に240℃以上で焼き付
けると加工性や塗膜密着性の低下が生じることがあるの
で、上塗り塗料の焼き付け温度は190〜240℃の範
囲に設定する。
【0020】必要とする色調を呈し、且つ下地隠蔽に十
分な量の着色顔料が下塗り塗膜に配合されるため、着色
顔料無添加のクリア塗膜を下塗り塗膜の上に直接形成し
ても、美麗な色調の塗膜面をもった塗装鋼板が得られ
る。中塗り塗料を設ける場合、下塗り塗膜に防錆顔料を
添加してより一層の耐食性向上が図られるが、この場合
でも下塗り塗膜に添加される防錆顔料が大幅に少なくで
きるため、着色顔料配合量を軽減しても必要とする色調
及び隠蔽能をもった中塗り塗膜が形成される。
【0021】クリア塗料には、ポリエステル系,ウレタ
ン系,アクリル系,エポキシ変性ポリエステル系,シリ
コーン変性ポリエステル系等のベース樹脂が使用され、
必要に応じ有機系骨材,無機系骨材,メタリック粉末,
潤滑剤,汚れ防止剤,防カビ剤,紫外線吸収剤,光安定
剤(酸化防止剤)、つや消し剤や各種の粉末等が添加さ
れる。ただし,着色顔料に起因するチョーキング現象を
防止する上で、クリア塗料には着色顔料を添加しない。
クリア塗料のベース樹脂としては、下塗り塗膜又は中塗
り塗膜に対するクリア塗膜の親和性を確保する上から、
下塗り塗膜又は中塗り塗膜と同じ樹脂を使用することが
好ましい。
【0022】
【実施例1】表1の組成をもつZn−Al−Mg系めっ
き層が片面当りめっき付着量120g/m2で形成され
た板厚0.4mmの溶融めっき鋼板をゼンジミア方式の
連続溶融めっきラインで製造した。各めっき鋼板に表面
調整処理を施して湯洗,水洗により洗浄し、乾燥した。
次いで、塗布型クロメート処理液[日本ペイント株式会
社製、商品名;サーフコートNRC300NS]をロー
ルコーターで塗布して、水洗することなく100℃で乾
燥させ、Cr換算付着量40mg/m2のクロメート皮
膜を形成した。比較のため、Zn−5%Al合金めっき
鋼板(比較例1),Zn−55%Alめっき鋼板(比較
例2)にも同様なクロメート処理を施した。
【0023】
【0024】クロメート処理された塗装原板にポリエス
テル系の下塗り塗料を塗布し、215℃で焼き付けるこ
とにより乾燥膜厚10μmの下塗り塗膜を形成した。下
塗り塗料にはポリエステル系のベース樹脂を使用し、塗
料固形分に対して5質量%のクロム酸ストロンチウム及
び35質量%の酸化チタン,カーボンブラック,酸化
鉄,シアニンブルー等(着色顔料)を配合し、その他に
シリカ粉末を配合することにより調合した。下塗り塗膜
の上にクリア塗料を塗装し、215℃で焼き付けること
により乾燥膜厚10μmのクリア塗膜を形成した。クリ
ア塗料には、下塗り塗料と同じポリエステル系をベース
樹脂として使用し、必要に応じて有機系骨材,無機系骨
材,潤滑剤等を添加した。
【0025】
【0026】作製された各塗装鋼板から試験片を切り出
し、次の腐食試験及びチョーキング試験に供した。促進腐食試験 試験片の切断端面及び裏面を塗料で補修し、更に平坦部
の塗膜にカッターナイフで塗膜に傷を付けた後、0.1
%NaCl腐食液噴霧(温度:35℃,硫酸でpH4に
調整)を1時間噴霧→温度50℃,相対湿度98%の恒
温恒湿雰囲気に3時間放置する湿潤処理を1サイクルと
する酸性雨複合腐食試験を600サイクル繰り返した。
酸性雨複合腐食試験の試験片を観察し、補修していない
切断端面に発生した塗膜フクレ及び切断端面の赤錆発生
率を測定した。また、塗膜傷付き部での錆発生率も測定
した。
【0027】補修してない切断端面における塗膜フクレ
幅が0.5mm以下を◎,塗膜フクレ幅が0.6〜1.
0mmを○、塗膜フクレ幅が1.1〜2.0mmを△、
2.0mmを超える塗膜フクレ幅を×として評価した。
赤錆発生率については、試験対象となる切断端面の面積
100に対して、耐食試験で切断端面に発生した赤錆の
比率を赤錆発生率として求めた。赤錆の発生が生じてい
ないものを◎,赤錆発生率が5%以下を○,6〜20%
を△,20%を超えるものを×と評価した。塗膜疵付き
部についても同様に白錆の発生状況を調査し、同様に白
錆が発生していないものを◎,白錆発生率が25%以下
を○,26〜50%を△,50%を超えるものを×で評
価した。
【0028】屋外曝露試験 切断端面及び裏面を塗料で補修した試験片を千葉県市川
市の東京湾岸から800mの内陸部の暴露試験場に3年
3ヶ月間放置し、補修してない切断端面に発生した塗膜
フクレの幅及び切断端面の赤錆発生率を測定した。塗膜
フクレ幅が0.5mm以下を◎,0.6〜1.Ommを
○,1.1〜2.0mmを△,2.0mmを超える塗膜
フクレ幅を×と評価した。切断端面の赤錆については、
赤錆の発生が検出できなかったものを◎,赤錆発生率が
5%以下をO.6〜20%以下を△,20%を超える赤
錆発生率を×と評価した。
【0029】チョーキング試験(白亜化の評価) 千葉県市川市の曝露試験場で3年3ヶ月間放置した試験
片の塗膜表面を自然乾燥し、幅25±10mmの透明粘着
テープを塗膜の上に置き、強く押しつけて指で擦った
後、テープを剥がし、テープを黒色の背景面上に置き、
直ちに拡散光の下でテープに付着した白亜の量をJIS
K5600−8−6に規定する参照画像と比較して、白
亜化の程度を評価した。JISK5600−8−6の参
照画像の等級1に相当する白亜化がほとんど生じてない
ものを◎,以下、等級2を○,等級3を△,等級4以上
を×で評価した。
【0030】表3の調査結果にみられるように、Zn−
Al−Mg系めっき鋼板を塗装原板とする試験番号1〜
6では、5質量%と比較的少ない配合量で防錆顔料を分
散させた下塗り塗膜を形成しているにも拘わらず、促進
腐食試験及び曝露試験の何れにおいても優れた耐食性が
得られ、塗膜フクレもほとんど観察されなかった。これ
に対し、Zn−5%Al合金めっき層(比較例1)及び
Zn−55%Al合金めっき層(比較例2)を形成した
塗装原板では、赤錆発生率が高く、切断端面や塗膜疵付
き部に塗膜フクレが生じていた。低い耐食性は、下塗り
塗膜に配合した防錆顔料の不足に原因がある。防錆顔料
を25〜50質量%に増量すると本発明例と同程度の耐
食性が得られたが、多量の防錆顔料に由来する色調(黄
色)を抑えるために着色顔料も増量する必要があり、下
塗り塗料の貯蔵安定性やクリア塗膜への悪影響が避けら
れなくなった。
【0031】本発明例の塗装原板では、下塗り塗料に配
合する防錆顔料を少なくしても従来の塗装鋼板を凌駕す
る優れた耐食性が発現される。防錆顔料の配合量が節減
されるため、十分な量の着色顔料を下塗り塗料に配合で
き、目標とする色調を呈し下地隠蔽能の高い下塗り塗膜
が形成される。したがって、下塗り塗膜の上に形成され
るクリア塗膜に着色顔料を添加する必要がなくなり、着
色顔料に起因したチョーキング現象が皆無であった。
【0032】
【0033】
【実施例2】原板番号1の塗装原板を使用し、下塗り塗
料に配合する防錆顔料の配合量を種々変える以外は実施
例1と同じ条件下で、下塗り塗膜及びクリア塗膜の2層
構成で塗装鋼板を製造した。得られた各塗装鋼板を実施
例1と同じ促進腐食試験に供し、赤錆発生率に及ぼす防
錆顔料の配合量の影響を調査した。図1の調査結果にみ
られるように、Zn−Al−Mg系めっき鋼板を塗装原
板にしている本発明例では、下塗り塗膜に防錆顔料を分
散させなくても、従来のZnAl合金めっき鋼板(比較
例1,2)に25〜50質量%の防錆顔料を配合した下
塗り塗膜が形成された塗装鋼板以上の優れた耐食性が得
られた。耐食性は防錆顔料の増量に応じて高い値を示し
たが、従来の配合量20〜30質量%まで多くする必要
なく5質量%の配合量でも十分に優れた耐食性を示し
た。
【0034】防錆顔料の配合割合を少なくしても必要な
耐食性が得られることから、着色顔料を50質量%に増
量しても下塗り塗料の貯蔵安定性が劣化することなく、
安定した色調及び下地隠蔽能のある下塗り塗膜が形成さ
れた。そのため、下塗り塗膜の上に設けられるトップ層
として着色顔料無添加のクリア塗料を使用でき、チョー
キング現象が防止された。これに対し、従来のZnAl
合金めっき鋼板(比較例1,2)では25質量%の防錆
顔料を配合した下塗り塗料が必要なため、下塗り塗料に
添加される着色顔料の配合量に制約が加わり、十分な色
調の塗膜面をもつ下塗り塗膜を形成できなかった。その
ため、上塗り塗膜に着色顔料を配合させることが余儀な
くされたが、結果として耐チョーキング性に劣る塗膜と
なった。因みに、酸化チタン,酸化鉄,シアニンブルー
(着色顔料)を35質量%配合した上塗り塗膜を形成し
た塗装鋼板を実施例1と同じチョーキング試験に曝す
と、試験開始から2年間で塗膜面に粉状物の生成が観察
された。
【0035】
【実施例3】表1の組成をもつZn−Al−Mg系めっ
き鋼鈑に表面調整処理を施して湯洗,水洗により洗浄
し、乾燥した。次いで、塗布型のチタン系ノンクロメー
ト処理液をロールコーターで塗布して、水洗することな
く100℃で乾燥させ、全皮膜量が75mg/m2チタ
ン系皮膜を形成した。比較のため、Zn−5%A1合金
めっき鋼板(比較例1),Zn−55%A1合金めっき
鋼板(比較例2)にも同様なチタン系ノンクロメート処
理を施した。
【0036】このようにして塗装前処理された塗装原板
にポリエステル系の下塗り塗料を塗布し、215℃で焼
き付けすることにより乾燥膜厚10μmの下塗り塗膜を
形成した。下塗り塗料にはポリエステル系のベース樹脂
を使用し、塗料固形分に対して25質量%のシリカ−カ
ルシウム系のノンクロメート系防錆顔料及び35質量%
の酸化チタン,カーボンブラック,酸化鉄,シアニンブ
ルー等(着色顔料)を配合し、その他にシリカ粉末を配
合することにより調合した。下塗り塗膜の上には、実施
例1と同じ条件下で、ポリエステル系のクリア塗膜の2
層構成で塗装鋼板を製造した。得られた各塗装鋼板を実
施例1と同じ促進試験及びチョーキング試験に供した。
【0037】表4の調査結果にみられるように、Zn−
Al−Mg系めっき鋼板を塗装原板とする試験番号9〜
14では、ノンクロメート系防錆顔料を分散させた下塗
り塗膜を形成しているにも拘わらず、促進試験及び暴露
試験の何れにおいても優れた耐食性が得られ、塗膜フク
レもほとんど観察されなかった。これに対し、Zn−5
%Al合金めっき層(比較例1)及びZn−55%Al
合金めっき層(比較例2)を形成した塗装原板では、赤
錆発生率が高く、切断端面部や塗膜疵付き部に塗膜フク
レが生じていた。低い耐食性は、下塗り塗膜に添加した
ノンクロメート系防錆顔料の防錆能の不足に原因があ
る。また、ノンクロメート系防錆顔料を50%に増量し
ても本発明例の耐食性を得ることができなかった。本発
明例の塗装原板では、下塗り塗料にノンクロメート系防
錆顔料を使用しても、或いは防錆顔料を省略しても従来
の塗装鋼板を凌駕する優れた耐食性が発揮されるため、
環境に悪影響を与えない塗装鋼板が得られる。
【0038】
【0039】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の塗装鋼
板は、Zn−Al−Mg系めっき層の優れた耐食性を活
用し、下塗り塗膜に配合される防錆顔料を節減しても、
或いは防錆顔料無添加の下塗り塗膜を形成しても、従来
の塗装鋼板に匹敵する優れた耐食性を呈し、切断端面や
塗膜疵付き部においても塗膜フクレ等の欠陥が発生しが
たい。そのため、必要とする色調の発現を下塗り塗膜に
求めることができ、耐チョーキング性にとって有害な着
色顔料をトップ層に配合する必要がなくなる。しかも、
クロムフリーの塗装前処理やノンクロメート系防錆顔料
の使用も可能になるため、環境に悪影響を与えない塗装
鋼板が得られる。このようにして得られた塗装鋼板は、
外装材,内装材,電気機器・電子機器等の表装材,自動
車用鋼板等として広範な分野で使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 下塗り塗膜に含まれる防錆顔料の配合量が切
断端面の赤錆発生率に及ぼす影響を、Zn−Al系とZ
n−Al−Mg系めっき鋼板とで対比したグラフ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C23C 22/24 C23C 22/24 (72)発明者 圓谷 浩 千葉県市川市高谷新町7番1号 日新製鋼 株式会社技術研究所内 Fターム(参考) 4D075 AE03 BB73X BB87Y CA43 DA06 DB05 DB07 DC03 EA05 EA43 4K026 AA02 AA13 AA22 BA06 BB01 BB08 BB10 CA20 EB08 4K027 AA02 AA05 AB09 AB28 AB44 AC52 4K044 AA02 AB02 BA10 BA15 BA17 BB04 BC04 CA11 CA16 CA53

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Al:4〜10質量%,Mg:1〜4質
    量%,残部が実質的にZnの組成をもつZn−Al−M
    g系めっき層,化成処理皮膜及び塗膜が下地鋼板の上に
    順次形成されていることを特徴とする耐チョーキング性
    に優れた塗装鋼板。
  2. 【請求項2】 Zn−Al−Mg系めっき層が更にT
    i:0.002〜0.1質量%,B:0.001〜0.
    45質量%を含む請求項1記載の塗装鋼板。
  3. 【請求項3】 塗膜のトップ層に、着色顔料を含まない
    クリア塗膜が形成されている請求項1又は2記載の塗装
    鋼板。
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