JP2002060958A - 耐酸化性の優れた錫めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

耐酸化性の優れた錫めっき鋼板およびその製造方法

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JP2002060958A JP2000240733A JP2000240733A JP2002060958A JP 2002060958 A JP2002060958 A JP 2002060958A JP 2000240733 A JP2000240733 A JP 2000240733A JP 2000240733 A JP2000240733 A JP 2000240733A JP 2002060958 A JP2002060958 A JP 2002060958A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 一般消費者が安全性に不安を持つクロムを使
用せずに、耐酸化性の優れた錫めっき鋼板およびその製
造方法を提供する。 【解決手段】 錫表面にマグネシウムイオンを含むポリ
メタリン酸塩皮膜を形成せしめる。マグネシウムイオン
の量は0.1〜10mg/m2 、ポリメタリン酸塩皮膜
は2〜40mg/m2 が望ましい。耐酸化性の優れた錫
めっき鋼板は、鋼帯を電気錫めっきした後、またはさら
に加熱溶融処理をした後、リン酸イオンとマグネシウム
イオンとを含むpH2〜3.5の水溶液を塗布し、95
〜200℃に加熱することによって得られる。処理液の
全マグネシウム濃度は0.1〜3g/lが好ましく、ナ
トリウム、カリウム、アンモニウムの共存は悪影響を与
えない。さらに水洗することも好ましく、より光沢、耐
酸化性の優れた皮膜となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、食缶をはじめとし
て玩具、装飾などに用いられるブリキ等の錫めっき鋼板
およびその製造方法に関するものである。より詳しく
は、錫めっき上にポリメタリン酸塩皮膜を有すること
で、表面錫の酸化物成長を抑制し、黄変などの外観不良
を起こさない、食品安全性にも優れた化成処理皮膜を有
する錫めっき鋼板およびその製造方法を提供するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】飲料缶や食缶に用いられる表面処理鋼板
は、錫めっき鋼板、鉄−ニッケル合金層を下地に有する
薄錫めっき鋼板、ニッケルめっき鋼板、クロムめっき鋼
板などがあり、通常はその表面に塗装や樹脂ラミネート
が施される。缶内面側の塗装は、内容物によって鋼板の
腐食が生じるのを防ぐことと、溶出した金属によって内
容物の味や外観が変化するのを防ぐのがその目的であ
る。電解クロムめっき鋼板(TFS)やクロメート処理
したニッケルめっき鋼板は、表面のクロム(III)酸
化物層のために塗膜や樹脂フィルムとの密着性が高い。
錫めっき鋼板も表面にクロメート処理を施すのが普通で
あるが、クロム(III)酸化物層は緻密でないために
酸素に対するバリア性が不十分で、時間とともに錫の表
面が酸化されてSnOやSnO2 層が成長する。錫酸化
物層はもろいために凝集破壊しやすく、これが塗膜や積
層樹脂の密着性不良の原因となっている。
【0003】一方、錫めっき鋼板であるブリキには、果
実缶用途のように内面も塗装せずに使用される場合もあ
る。これは、缶内面側の錫の一部が果実やシロップ中の
酸とヘッドスペース中の酸素によって酸化溶解すること
で内容物の酸化を防止するという役目を担っている。こ
のような目的で使用されるブリキも、表面にはクロメー
ト処理が施されている。クロメート処理を行わないと錫
酸化物層の成長が速く、黄色がかって見える黄変(イエ
ローステイン)と呼ばれる現象を生じるためである。
【0004】ブリキ等の缶用鋼板の場合、クロメート処
理に用いられる溶液は6価クロムを主成分としている
が、化学的または電気化学的反応によって、クロメート
皮膜中には3価の酸化クロムあるいはさらに金属クロム
を含有し、6価クロムは完全に洗浄されている。したが
って、この化成処理皮膜が内容物中に溶出しても、それ
を食した人体には6価クロムの害はないのであるが、昨
今、消費者は実際に害があるか否かということよりも、
有害物質と疑わしいものは避ける傾向が強くなってきて
いる。そこで、可能であれば一般消費者がより安全性に
確信を持てる物質によって錫表面に化成処理を施すこと
が望ましい。さらに言えば、作業環境の観点からも6価
クロムの使用は避けるに越したことはない。
【0005】従来から、ブリキ等のリン酸塩系の化成処
理の検討は行われてきた。特開昭49−28539号公
報に錫めっきにリン酸カルシウムやリン酸マグネシウム
を塗布する表面処理法が開示されており、塗布の方法と
して電解法が好ましいが、スプレー及び浸漬法によって
もよい、と述べられている。特開昭52−75626号
公報では錫めっき鋼板をリン酸塩溶液中で陰極電解の
後、陽極電解する方法が提示されている。また、金属材
料の耐食性、塗料密着性を高める表面処理方法として、
Ca,Sr,Ba,Zn,Ti,Zr,Sn,Pb,S
b,Bi,Cr,Mn,Fe,CoおよびNiからなる
群から選んだ少なくとも1種の金属イオンとオルソリン
酸とからなる処理液を金属材料の表面に塗布、100〜
800℃に加熱する方法、および前記処理液にAlおよ
びMgの少なくとも1種の金属イオンとオルソリン酸か
らなる処理液とを混合してなる処理液を金属材料の表面
に塗布、100〜500℃に加熱する方法が特開昭62
−33780号公報に開示されている。
【0006】しかしながら、従来から提案されているリ
ン酸塩系の化成処理方法には問題がないわけではない。
本発明者らは、特開昭49−28539号公報に記載さ
れた方法に従って錫めっき、加熱溶融処理を施した鋼板
にリン酸カルシウムやリン酸マグネシウム溶液中での陰
極電解処理をおこない、50℃、相対湿度85%の雰囲
気中で2週間保管したところ、表面錫の酸化層成長が、
クロメート処理したものと比べて約3倍多く、黄変が見
られた。また、本発明者らがスプレー及び浸漬法を試み
たところ、当該発明の主目的である疵つき防止には効果
が認められたが、表面錫の酸化防止や耐食性向上に対し
ては効果がなかった。
【0007】これに対し、錫めっき鋼板をリン酸塩溶液
中で陰極電解の後、陽極電解する方法によれば、表面の
錫が溶解し、リン酸イオンと塩をつくって良好な皮膜の
形成が行われる。ただし、陽極電解を行う処理液が、鋼
板から錫や鉄が溶解することによって劣化しやすいとい
う欠点がある。また、特開昭62−33780号公報に
よれば、金属材料の表面に塗布する処理液の成分として
Ca,Sr,Ba,Zn,Ti,Zr,Sn,Pb,S
b,Bi,Cr,Mn,Fe,CoおよびNiからなる
群から選んだ少なくとも1種の金属イオンが必須であ
る。ところが、これらの金属イオンのうち、安全性の観
点からブリキに適用できるのは、Ca,Sn,Feの3
種のみと考えられる。これら3種の金属イオンにして
も、少なくとも錫めっきの耐酸化性を高める皮膜の形成
という点では効果が認められないばかりでなく、2種の
処理液の準備が煩雑で、コスト的にも大変不利である。
【0008】この、特開昭62−33780号公報では
皮膜量として0.05〜10g/m 2 が推奨されてお
り、0.05g/m2 未満では十分な耐食性が得られな
いと記載されている。このように錫めっきの化成処理皮
膜としては厚い皮膜を形成使用とする場合、コスト的に
不利であるし、高温での乾燥が必要となる。したがっ
て、200℃以上に加熱すると錫−鉄合金化反応が進ん
だり、232℃以上では溶融してしまう錫めっき上への
処理としては適当であるとは言い難い。さらに、厚い化
成処理皮膜は、錫めっきの特徴である美しい光沢が失わ
れてしまうという問題もある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
問題点に鑑み、迅速、簡便でコスト面でのメリットも大
きい耐酸化性の優れた錫めっき鋼板およびその製造方法
を提供することをその課題とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、迅速、簡便で
コスト面でのメリットも大きい耐酸化性の優れた錫めっ
き鋼板およびその製造方法であって、その主旨とすると
ころは、以下の通りである。 (1)鋼板上に下層として金属錫層、上層としてマグネ
シウムイオンを含むポリメタリン酸塩皮膜を有すること
を特徴とする耐酸化性の優れた錫めっき鋼板。 (2)鋼板と金属錫層の間に鉄−錫合金層を、さらに有
することを特徴とする前記(1)に記載の耐酸化性の優
れた錫めっき鋼板。
【0011】(3)金属錫層が0.4〜23g/m2
下の錫からなることを特徴とする前記(1)または
(2)に記載の耐酸化性の優れた錫めっき鋼板。 (4)ポリメタリン酸塩皮膜中のマグネシウムイオン
が、0.1〜10mg/m 2 であることを特徴とする前
記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の耐酸化性の優
れた錫めっき鋼板。
【0012】(5)ポリメタリン酸塩皮膜が2〜40m
g/m2 であることを特徴とする前記(1)〜(4)の
いずれか1項に記載の耐酸化性の優れた錫めっき鋼板。 (6)鋼板の両面または片面に電気錫めっきした後、リ
ン酸イオンとマグネシウムイオンとを含むpH2〜3.
5の水溶液を塗布するか、もしくは該水溶液中に浸漬、
液切りし、その後、95〜200℃に加熱することを特
徴とする耐酸化性の優れた錫めっき鋼板の製造方法。
【0013】(7)鋼板の両面または片面に電気錫めっ
きし、さらに、加熱溶融処理をした後、リン酸イオンと
マグネシウムイオンとを含むpH2〜3.5の水溶液を
塗布するか、もしくは、該水溶液中に浸漬、液切りし、
その後、95〜200℃に加熱することを特徴とする耐
酸化性の優れた錫めっき鋼板の製造方法。 (8)前記リン酸イオンとマグネシウムイオンとを含む
pH2〜3.5の水溶液中の全マグネシウム濃度が0.
1〜3g/lであることを特徴とする前記(6)または
(7)のいずれかに記載の耐酸化性の優れた錫めっき鋼
板の製造方法。
【0014】(9)前記リン酸イオンとマグネシウムイ
オンとを含むpH2〜3.5の水溶液が、ナトリウムイ
オン、カリウムイオン、アンモニウムイオンのうち1種
または2種以上を含有することを特徴とする前記(6)
〜(8)のいずれか1項に記載の耐酸化性の優れた錫め
っき鋼板の製造方法。 (10)95〜200℃に加熱処理した後、さらに、水
洗、乾燥することを特徴とする前記(6)〜(9)のい
ずれか1項に記載の耐酸化性の優れた錫めっき鋼板の製
造方法にある。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明は、種々検討の結果、マグ
ネシウムイオンを含有する極薄いポリメタリン酸塩皮膜
を表面に有する錫めっき鋼板が、表面の酸化物成長が少
なく、高温・高湿下でも黄変しにくいという知見を得た
ことによるものである。また、その簡便かつ低コストで
実施できる製造方法として、鋼帯の両面または片面に電
気錫めっきした後、またはさらに加熱溶融処理をした
後、マグネシウムイオンとリン酸イオンとを含むpH2
〜3.5の水溶液中に浸漬、液切りして、95〜200
℃に加熱する方法を見出したものである。
【0016】以下、本発明の内容について詳細に説明す
る。まず、本発明において使用される鋼板は、特に限定
するものではなく、通常、缶用、缶蓋用に使われるもの
でよく、加工方法や程度に応じて適当な調質度(テンパ
ー)のものを選択すればよい。本発明は錫めっき鋼板の
使用を前提としている。金属錫層は0.4g/m2 以上
23g/m2 以下が好ましい。0.4g/m2 未満では
錫めっき特有の外観が得にくいし、溶接缶とする場合に
は溶接性の確保という点からこの程度の金属錫量が望ま
れる。一方、23g/m2 を超えても構わないが、外
観、耐食性などの特性は飽和してしまうためメリットは
なく、コスト的に不利になる。錫めっきの下地にニッケ
ルめっきやFe−Ni合金めっきが施されていたり、錫
めっき後にリフロー処理が施されてFe−Sn合金層が
存在していても差し支えない。
【0017】金属錫の上層としてマグネシウムイオンを
含むポリメタリン酸塩皮膜が必須である。ポリメタリン
酸塩は、リン酸水素塩を加熱脱水による重合で得られる
物質である。この皮膜の存在によって、錫表面の耐酸化
性、耐食性が保たれる。ポリメタリン酸塩皮膜は2mg
/m2 以上40mg/m2 以下であることが好ましい。
2mg/m2 未満では皮膜の連続性が確保できず、十分
な耐酸化性が得られない。
【0018】一方、40mg/m2 を超える皮膜の形成
は困難で、生産性を考慮して乾燥時間5秒以内で皮膜形
成使用とすると、200℃を超える乾燥温度が必要とな
るが、錫めっき鋼板の場合、Fe−Sn合金層が成長し
てしまい、加工性、外観が著しく劣るようになる。23
2℃を超えると錫が溶融してしまうので、上層の化成処
理皮膜は連続性を確保できない。200℃以下で乾燥す
ると時間がかかり、生産性が悪くなるばかりでなく、緻
密な連続性の高い皮膜が形成されないため、耐酸化性が
むしろ劣ることになる。膜厚が厚いと、脱水がうまく行
われないためではないかと推定している。
【0019】ポリメタリン酸塩皮膜中には、マグネシウ
ムイオンを含むことが耐酸化性の向上の点から望まれ
る。ポリメタリン酸塩皮膜中のマグネシウムイオンの量
は、0.1mg/m2 以上10mg/m2 以下が好まし
い。0.1mg/m2 より少ないと、耐酸化性の向上効
果が十分に発揮されない。一方、10mg/m2 を超え
ると効果が飽和してしまうので、経済的な理由から避け
た方がよい。本発明の処理をおこなう前の鋼板表面の清
浄化処理については限定するものではないが、従来缶用
表面処理鋼板のめっき前処理としておこなわれてきた電
解アルカリ脱脂、希硫酸浸漬酸洗をおこなうことが良好
な錫めっき鋼板を得るために推奨される。
【0020】表面の清浄化処理をおこなった後、鋼板の
両面または片面に電気錫めっきを施す。電気錫めっきの
方法は特に限定するものではない。フェノールスルホン
酸浴、メタンスルホン酸浴、硫酸浴、ハロゲン浴、アル
カリ浴など、それぞれの業者が従来ブリキの製造に用い
てきた方法を変更することなく適用できる。錫めっき
後、用途によっては電析錫の加熱溶融処理(リフロー処
理)を施す。リフロー処理の際にも表面の金属錫が酸化
して錫酸化物が生じる。着色するほど厚い酸化錫層が生
じる場合以外、リフロー処理で生成する程度の酸化錫層
は通常問題にならないが、化成処理前に酸洗やアルカリ
洗浄によって、酸化錫層を除去すれば、化成処理の一層
の均一化が期待できて好ましい。酸洗の場合は希硫酸、
アルカリ洗浄の場合は炭酸ナトリウム溶液を使用すると
よい。
【0021】鋼帯の両面または片面に電気錫めっきした
後、またはさらに加熱溶融処理をした後、リン酸イオン
とマグネシウムイオンとを含むpH2〜3.5の水溶液
中に浸漬する。pHが2より低いと、錫表面を少量なが
ら溶解しやすく、特にこの後の工程である加熱処理にお
いてその傾向が顕著となるので好ましくない。一方、p
Hが3.5より高いと、リン酸マグネシウムまたはリン
酸水素マグネシウムが沈殿して溶液中に分散する。この
状態で錫表面の処理をおこなうと、耐食性の良い皮膜が
形成されない。
【0022】処理溶液中の全マグネシウム濃度は、0.
1g/l以上3g/l以下であることが好ましい。0.
1g/lより低いと形成される皮膜の耐食性が不十分
で、高温高湿下では錫の酸化層が成長しやすい。一方、
3g/lを超えると経済的に不利であるだけでなく、高
温乾燥後、皮膜状にならないリン酸塩の結晶が多量に析
出し、外観が悪く、水洗してその結晶を除去しても、残
留した皮膜の耐食性が不十分である。高温乾燥後に水洗
の工程を入れない場合の処理液の全マグネシウム濃度は
0.8g/l以下とする方が良好な皮膜が得られる。処
理液の温度は、常温から70℃の範囲では、得られる鋼
板の特性に影響しない。
【0023】浸漬時間はあまり性能に影響しないが、錫
めっきラインの場合、0.5秒から2秒程度の範囲とな
るのが普通であり、この範囲で何ら問題はない。錫めっ
きされた鋼板を、上記の溶液に浸漬した後、余分な処理
溶液を除去するためと、乾燥を促進するためにゴム等の
ロールまたはエアで液切りする。錫めっき表面にリン酸
塩処理液を付与する方法としては浸漬のほか、処理液を
ロール等で塗布する方法もあり、適宜選択すればよい。
【0024】鋼板を処理液に浸漬または塗布後、95〜
200℃に加熱する。乾燥温度を95℃から200℃に
限定したのは、次の理由による。95℃より低い温度で
乾燥しても、耐食性の良い皮膜が形成されない。95℃
以上に加熱することによって、リン酸塩溶液の乾燥とと
もに脱水、ポリメタリン酸塩皮膜の形成がおこなわれ
る。一方、200℃を超えると、鋼板の鉄とめっきした
錫との合金化反応が速やかに進行してしまうので好まし
くない。加熱時間の影響は認められない。所定の温度に
到達すれば、同時に良好な皮膜が形成される。
【0025】前記の処理液に、pH調整のために加えら
れたナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウム
イオンが0.02〜2g/lの範囲にわたって溶解して
いても差し支えない。しかし、カルシウムイオン、錫イ
オン、鉄イオンなどが存在すると、ポリメタリン酸マグ
ネシウム皮膜の形成を阻害するので、極力低濃度に保つ
ことが望まれる。上記のような種々の処理の後、特に高
濃度の処理液を使用した場合はさらに水洗、乾燥するこ
とが好ましい。余分な水溶性のリン酸塩の結晶を除去す
ることで、光沢が向上するとともに、耐酸化性も向上す
る。高湿下でリン酸塩の結晶が吸湿し、錫めっき表面の
酸化を促進するのを防止できるためと推定している。
【0026】
【実施例】以下、本発明の実施例および比較例について
説明する。板厚0.20mmの缶用冷延鋼板を、前処理
として電解アルカリ脱脂、水洗、希硫酸浸漬酸洗、水洗
した。フェノールスルホン酸浴を用いて電気錫めっきを
施し、めっき液の10倍希釈液をフラックスとして塗布
・乾燥後、リフロー処理した。本発明に従って、この鋼
板に化成処理を施した。また、比較のために本発明の範
囲外の条件でも化成処理をおこなった。得られた表面処
理鋼板のマグネシウム付着量、表面光沢、耐酸化性の測
定をおこなった。表面光沢は、鋼板の圧延方向での60
゜鏡面光沢度(Gs60゜)を測定した。Gs60゜が
700以上あれば、錫めっき特有の美しい光沢と見なせ
たので、この光沢度を合格レベルとした。耐酸化性は、
処理した鋼板を、50℃、相対湿度85%の雰囲気中に
2週間置き、錫の酸化物の量を電量法によって求めた。
錫の酸化物には酸化錫(II)と酸化錫(IV)とがあ
って、電量法ではそれらを定量的に区別することができ
ないため、定法に従って還元に要した電気量で表示し
た。比較例10の電解クロメート処理並の5mC/cm
2 を合格ラインとした。
【0027】処理条件と得られた鋼板の特性を表1に示
す。本発明の範囲の処理条件で処理して得られた本発明
の範囲の鋼板である実施例1〜12は、いずれも表面光
沢、耐酸化性に優れていた。比較例1は処理溶液のpH
が低い例である。高温乾燥時に錫がエッチングされ、光
沢が劣化するとともに、耐酸化性も不十分であった。比
較例2は処理溶液のpHが高い例である。リン酸塩が溶
解せず、処理液は白濁したままであった。良好な皮膜は
形成されず、耐酸化性は不良だった。比較例3は処理溶
液のマグネシウムイオン濃度が非常に低い例である。皮
膜形成が不十分で、耐酸化性は不良だった。
【0028】また、比較例4は処理溶液のマグネシウム
イオン濃度が高い例である。高温乾燥の後、水洗しても
皮膜が白く光沢が劣化していた。耐酸化性も若干劣って
いた。比較例5は処理溶液塗布後の乾燥温度が高い例で
あった。処理液による錫表面のエッチングと鉄−錫の合
金化の進行のため、光沢が低下した。比較例6は処理液
の乾燥温度が低い例である。リン酸塩の脱水によるポリ
メタリン酸塩皮膜が形成されず、耐酸化性が不良だっ
た。比較例7,8,9は、処理液にそれぞれカルシウム
イオン、鉄イオン、錫イオンが共存する例である。ポリ
メタリン酸塩皮膜は形成されるが、そのうちのマグネシ
ウム塩が少ないために耐酸化性が不十分であった。
【0029】
【表1】
【0030】
【発明の効果】本発明の錫めっき鋼板は、クロムを一切
含まず、耐酸化性も優れるため、消費者の缶の有害物に
対するあいまいな不安を払拭し、安心して美麗な缶詰を
供給することに貢献する。また、本発明の方法によって
化成処理を施すことにより、処理工程における6価クロ
ムの使用を完全に回避できるので、作業環境や廃水処理
も含めて環境に対する負荷を最小限に抑えることが可能
であり、低濃度の処理液による、迅速簡便な方法のた
め、低コストで実施でき、経済的なメリットも大であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 黒崎 將夫 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 Fターム(参考) 4K024 AA07 AB01 BA03 BB22 BC01 DB02 DB05 GA02 GA16 4K026 AA02 AA10 AA12 AA22 BA03 BB01 BB10 CA13 CA18 CA23 DA02 DA03 DA11 DA12 DA15 DA16 EB11

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板上に下層として金属錫層、上層とし
    てマグネシウムイオンを含むポリメタリン酸塩皮膜を有
    することを特徴とする耐酸化性の優れた錫めっき鋼板。
  2. 【請求項2】 鋼板と金属錫層の間に鉄−錫合金層を、
    さらに有することを特徴とする請求項1に記載の耐酸化
    性の優れた錫めっき鋼板。
  3. 【請求項3】 金属錫層が0.4〜23g/m2 以下の
    錫からなることを特徴とする請求項1または2に記載の
    耐酸化性の優れた錫めっき鋼板。
  4. 【請求項4】 ポリメタリン酸塩皮膜中のマグネシウム
    イオンが、0.1〜10mg/m2 であることを特徴と
    する請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐酸化性の優
    れた錫めっき鋼板。
  5. 【請求項5】 ポリメタリン酸塩皮膜が2〜40mg/
    2 であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1
    項に記載の耐酸化性の優れた錫めっき鋼板。
  6. 【請求項6】 鋼板の両面または片面に電気錫めっきし
    た後、リン酸イオンとマグネシウムイオンとを含むpH
    2〜3.5の水溶液を塗布するか、もしくは該水溶液中
    に浸漬、液切りし、その後、95〜200℃に加熱する
    ことを特徴とする耐酸化性の優れた錫めっき鋼板の製造
    方法。
  7. 【請求項7】 鋼板の両面または片面に電気錫めっき
    し、さらに、加熱溶融処理をした後、リン酸イオンとマ
    グネシウムイオンとを含むpH2〜3.5の水溶液を塗
    布するか、もしくは、該水溶液中に浸漬、液切りし、そ
    の後、95〜200℃に加熱することを特徴とする耐酸
    化性の優れた錫めっき鋼板の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記リン酸イオンとマグネシウムイオン
    とを含むpH2〜3.5の水溶液中の全マグネシウム濃
    度が0.1〜3g/lであることを特徴とする請求項6
    または7のいずれかに記載の耐酸化性の優れた錫めっき
    鋼板の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記リン酸イオンとマグネシウムイオン
    とを含むpH2〜3.5の水溶液が、ナトリウムイオ
    ン、カリウムイオン、アンモニウムイオンのうち1種ま
    たは2種以上を含有することを特徴とする請求項6〜8
    のいずれか1項に記載の耐酸化性の優れた錫めっき鋼板
    の製造方法。
  10. 【請求項10】 95〜200℃に加熱処理した後、さ
    らに、水洗、乾燥することを特徴とする請求項6〜9の
    いずれか1項に記載の耐酸化性の優れた錫めっき鋼板の
    製造方法。
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