JP4177543B2 - 耐酸化性の優れた錫めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

耐酸化性の優れた錫めっき鋼板およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4177543B2
JP4177543B2 JP2000240733A JP2000240733A JP4177543B2 JP 4177543 B2 JP4177543 B2 JP 4177543B2 JP 2000240733 A JP2000240733 A JP 2000240733A JP 2000240733 A JP2000240733 A JP 2000240733A JP 4177543 B2 JP4177543 B2 JP 4177543B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
tin
steel sheet
oxidation resistance
plated steel
ions
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2000240733A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2002060958A (ja
Inventor
博充 伊達
洋 金井
將夫 黒崎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2000240733A priority Critical patent/JP4177543B2/ja
Publication of JP2002060958A publication Critical patent/JP2002060958A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4177543B2 publication Critical patent/JP4177543B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Electroplating Methods And Accessories (AREA)
  • Chemical Treatment Of Metals (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食缶をはじめとして玩具、装飾などに用いられるブリキ等の錫めっき鋼板およびその製造方法に関するものである。より詳しくは、錫めっき上にポリメタリン酸塩皮膜を有することで、表面錫の酸化物成長を抑制し、黄変などの外観不良を起こさない、食品安全性にも優れた化成処理皮膜を有する錫めっき鋼板およびその製造方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
飲料缶や食缶に用いられる表面処理鋼板は、錫めっき鋼板、鉄−ニッケル合金層を下地に有する薄錫めっき鋼板、ニッケルめっき鋼板、クロムめっき鋼板などがあり、通常はその表面に塗装や樹脂ラミネートが施される。缶内面側の塗装は、内容物によって鋼板の腐食が生じるのを防ぐことと、溶出した金属によって内容物の味や外観が変化するのを防ぐのがその目的である。電解クロムめっき鋼板(TFS)やクロメート処理したニッケルめっき鋼板は、表面のクロム(III)酸化物層のために塗膜や樹脂フィルムとの密着性が高い。錫めっき鋼板も表面にクロメート処理を施すのが普通であるが、クロム(III)酸化物層は緻密でないために酸素に対するバリア性が不十分で、時間とともに錫の表面が酸化されてSnOやSnO2 層が成長する。錫酸化物層はもろいために凝集破壊しやすく、これが塗膜や積層樹脂の密着性不良の原因となっている。
【0003】
一方、錫めっき鋼板であるブリキには、果実缶用途のように内面も塗装せずに使用される場合もある。これは、缶内面側の錫の一部が果実やシロップ中の酸とヘッドスペース中の酸素によって酸化溶解することで内容物の酸化を防止するという役目を担っている。このような目的で使用されるブリキも、表面にはクロメート処理が施されている。クロメート処理を行わないと錫酸化物層の成長が速く、黄色がかって見える黄変(イエローステイン)と呼ばれる現象を生じるためである。
【0004】
ブリキ等の缶用鋼板の場合、クロメート処理に用いられる溶液は6価クロムを主成分としているが、化学的または電気化学的反応によって、クロメート皮膜中には3価の酸化クロムあるいはさらに金属クロムを含有し、6価クロムは完全に洗浄されている。したがって、この化成処理皮膜が内容物中に溶出しても、それを食した人体には6価クロムの害はないのであるが、昨今、消費者は実際に害があるか否かということよりも、有害物質と疑わしいものは避ける傾向が強くなってきている。そこで、可能であれば一般消費者がより安全性に確信を持てる物質によって錫表面に化成処理を施すことが望ましい。さらに言えば、作業環境の観点からも6価クロムの使用は避けるに越したことはない。
【0005】
従来から、ブリキ等のリン酸塩系の化成処理の検討は行われてきた。特開昭49−28539号公報に錫めっきにリン酸カルシウムやリン酸マグネシウムを塗布する表面処理法が開示されており、塗布の方法として電解法が好ましいが、スプレー及び浸漬法によってもよい、と述べられている。特開昭52−75626号公報では錫めっき鋼板をリン酸塩溶液中で陰極電解の後、陽極電解する方法が提示されている。また、金属材料の耐食性、塗料密着性を高める表面処理方法として、Ca,Sr,Ba,Zn,Ti,Zr,Sn,Pb,Sb,Bi,Cr,Mn,Fe,CoおよびNiからなる群から選んだ少なくとも1種の金属イオンとオルソリン酸とからなる処理液を金属材料の表面に塗布、100〜800℃に加熱する方法、および前記処理液にAlおよびMgの少なくとも1種の金属イオンとオルソリン酸からなる処理液とを混合してなる処理液を金属材料の表面に塗布、100〜500℃に加熱する方法が特開昭62−33780号公報に開示されている。
【0006】
しかしながら、従来から提案されているリン酸塩系の化成処理方法には問題がないわけではない。本発明者らは、特開昭49−28539号公報に記載された方法に従って錫めっき、加熱溶融処理を施した鋼板にリン酸カルシウムやリン酸マグネシウム溶液中での陰極電解処理をおこない、50℃、相対湿度85%の雰囲気中で2週間保管したところ、表面錫の酸化層成長が、クロメート処理したものと比べて約3倍多く、黄変が見られた。また、本発明者らがスプレー及び浸漬法を試みたところ、当該発明の主目的である疵つき防止には効果が認められたが、表面錫の酸化防止や耐食性向上に対しては効果がなかった。
【0007】
これに対し、錫めっき鋼板をリン酸塩溶液中で陰極電解の後、陽極電解する方法によれば、表面の錫が溶解し、リン酸イオンと塩をつくって良好な皮膜の形成が行われる。ただし、陽極電解を行う処理液が、鋼板から錫や鉄が溶解することによって劣化しやすいという欠点がある。
また、特開昭62−33780号公報によれば、金属材料の表面に塗布する処理液の成分としてCa,Sr,Ba,Zn,Ti,Zr,Sn,Pb,Sb,Bi,Cr,Mn,Fe,CoおよびNiからなる群から選んだ少なくとも1種の金属イオンが必須である。ところが、これらの金属イオンのうち、安全性の観点からブリキに適用できるのは、Ca,Sn,Feの3種のみと考えられる。これら3種の金属イオンにしても、少なくとも錫めっきの耐酸化性を高める皮膜の形成という点では効果が認められないばかりでなく、2種の処理液の準備が煩雑で、コスト的にも大変不利である。
【0008】
この、特開昭62−33780号公報では皮膜量として0.05〜10g/m2 が推奨されており、0.05g/m2 未満では十分な耐食性が得られないと記載されている。このように錫めっきの化成処理皮膜としては厚い皮膜を形成使用とする場合、コスト的に不利であるし、高温での乾燥が必要となる。したがって、200℃以上に加熱すると錫−鉄合金化反応が進んだり、232℃以上では溶融してしまう錫めっき上への処理としては適当であるとは言い難い。さらに、厚い化成処理皮膜は、錫めっきの特徴である美しい光沢が失われてしまうという問題もある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような問題点に鑑み、迅速、簡便でコスト面でのメリットも大きい耐酸化性の優れた錫めっき鋼板およびその製造方法を提供することをその課題とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、迅速、簡便でコスト面でのメリットも大きい耐酸化性の優れた錫めっき鋼板およびその製造方法であって、その主旨とするところは、以下の通りである。
(1)鋼板上に下層として金属錫層、上層としてマグネシウムイオンを含むポリメタリン酸塩皮膜を3〜40mg/m 2 有することを特徴とする耐酸化性の優れた錫めっき鋼板。(2)鋼板と金属錫層の間に鉄−錫合金層を、さらに有することを特徴とする前記(1)に記載の耐酸化性の優れた錫めっき鋼板。
【0011】
(3)金属錫層が0.4〜23g/m2 以下の錫からなることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の耐酸化性の優れた錫めっき鋼板。
(4)ポリメタリン酸塩皮膜中のマグネシウムイオンが、0.1〜10mg/m2 であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の耐酸化性の優れた錫めっき鋼板。
【0012】
(5)鋼板の圧延方向で測定した60゜鏡面光沢度(Gs60゜)が700以上であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の耐酸化性の優れた錫めっき鋼板。
(6)鋼板の両面または片面に電気錫めっきした後、リン酸イオンとマグネシウムイオンとを含むpH2〜3.5の水溶液を塗布するか、もしくは該水溶液中に浸漬、液切りし、その後、95〜200℃に加熱を行い、ポリメタリン酸塩皮膜を3〜40mg/m 2 設けることを特徴とする耐酸化性の優れた錫めっき鋼板の製造方法。
【0013】
(7)鋼板の両面または片面に電気錫めっきし、さらに、加熱溶融処理をした後、リン酸イオンとマグネシウムイオンとを含むpH2〜3.5の水溶液を塗布するか、もしくは、該水溶液中に浸漬、液切りし、その後、95〜200℃に加熱を行い、ポリメタリン酸塩皮膜を3〜40mg/m 2 設けることを特徴とする耐酸化性の優れた錫めっき鋼板の製造方法。
(8)前記リン酸イオンとマグネシウムイオンとを含むpH2〜3.5の水溶液中の全マグネシウム濃度が0.1〜3g/lであることを特徴とする前記(6)または(7)のいずれかに記載の耐酸化性の優れた錫めっき鋼板の製造方法。
【0014】
(9)前記リン酸イオンとマグネシウムイオンとを含むpH2〜3.5の水溶液が、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンのうち1種または2種以上を含有することを特徴とする前記(6)〜(8)のいずれか1項に記載の耐酸化性の優れた錫めっき鋼板の製造方法。
(10)95〜200℃に加熱処理した後、さらに、水洗、乾燥することを特徴とする前記(6)〜(9)のいずれか1項に記載の耐酸化性の優れた錫めっき鋼板の製造方法にある。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、種々検討の結果、マグネシウムイオンを含有する極薄いポリメタリン酸塩皮膜を表面に有する錫めっき鋼板が、表面の酸化物成長が少なく、高温・高湿下でも黄変しにくいという知見を得たことによるものである。また、その簡便かつ低コストで実施できる製造方法として、鋼帯の両面または片面に電気錫めっきした後、またはさらに加熱溶融処理をした後、マグネシウムイオンとリン酸イオンとを含むpH2〜3.5の水溶液中に浸漬、液切りして、95〜200℃に加熱する方法を見出したものである。
【0016】
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
まず、本発明において使用される鋼板は、特に限定するものではなく、通常、缶用、缶蓋用に使われるものでよく、加工方法や程度に応じて適当な調質度(テンパー)のものを選択すればよい。
本発明は錫めっき鋼板の使用を前提としている。金属錫層は0.4g/m2 以上23g/m2 以下が好ましい。0.4g/m2 未満では錫めっき特有の外観が得にくいし、溶接缶とする場合には溶接性の確保という点からこの程度の金属錫量が望まれる。一方、23g/m2 を超えても構わないが、外観、耐食性などの特性は飽和してしまうためメリットはなく、コスト的に不利になる。錫めっきの下地にニッケルめっきやFe−Ni合金めっきが施されていたり、錫めっき後にリフロー処理が施されてFe−Sn合金層が存在していても差し支えない。
【0017】
金属錫の上層としてマグネシウムイオンを含むポリメタリン酸塩皮膜が必須である。ポリメタリン酸塩は、リン酸水素塩を加熱脱水による重合で得られる物質である。この皮膜の存在によって、錫表面の耐酸化性、耐食性が保たれる。ポリメタリン酸塩皮膜は3mg/m2以上40mg/m2以下である。3mg/m2未満では皮膜の連続性が確保できず、十分な耐酸化性が得られない。尚、後述する実施例の表1のNo.3の記載に基づき、下限値を3mg/m 2 とする。
【0018】
一方、40mg/m2 を超える皮膜の形成は困難で、生産性を考慮して乾燥時間5秒以内で皮膜形成使用とすると、200℃を超える乾燥温度が必要となるが、錫めっき鋼板の場合、Fe−Sn合金層が成長してしまい、加工性、外観が著しく劣るようになる。232℃を超えると錫が溶融してしまうので、上層の化成処理皮膜は連続性を確保できない。200℃以下で乾燥すると時間がかかり、生産性が悪くなるばかりでなく、緻密な連続性の高い皮膜が形成されないため、耐酸化性がむしろ劣ることになる。膜厚が厚いと、脱水がうまく行われないためではないかと推定している。
【0019】
ポリメタリン酸塩皮膜中には、マグネシウムイオンを含むことが耐酸化性の向上の点から望まれる。ポリメタリン酸塩皮膜中のマグネシウムイオンの量は、0.1mg/m2 以上10mg/m2 以下が好ましい。0.1mg/m2 より少ないと、耐酸化性の向上効果が十分に発揮されない。一方、10mg/m2 を超えると効果が飽和してしまうので、経済的な理由から避けた方がよい。
本発明の処理をおこなう前の鋼板表面の清浄化処理については限定するものではないが、従来缶用表面処理鋼板のめっき前処理としておこなわれてきた電解アルカリ脱脂、希硫酸浸漬酸洗をおこなうことが良好な錫めっき鋼板を得るために推奨される。
【0020】
表面の清浄化処理をおこなった後、鋼板の両面または片面に電気錫めっきを施す。電気錫めっきの方法は特に限定するものではない。フェノールスルホン酸浴、メタンスルホン酸浴、硫酸浴、ハロゲン浴、アルカリ浴など、それぞれの業者が従来ブリキの製造に用いてきた方法を変更することなく適用できる。錫めっき後、用途によっては電析錫の加熱溶融処理(リフロー処理)を施す。リフロー処理の際にも表面の金属錫が酸化して錫酸化物が生じる。着色するほど厚い酸化錫層が生じる場合以外、リフロー処理で生成する程度の酸化錫層は通常問題にならないが、化成処理前に酸洗やアルカリ洗浄によって、酸化錫層を除去すれば、化成処理の一層の均一化が期待できて好ましい。酸洗の場合は希硫酸、アルカリ洗浄の場合は炭酸ナトリウム溶液を使用するとよい。
【0021】
鋼帯の両面または片面に電気錫めっきした後、またはさらに加熱溶融処理をした後、リン酸イオンとマグネシウムイオンとを含むpH2〜3.5の水溶液中に浸漬する。pHが2より低いと、錫表面を少量ながら溶解しやすく、特にこの後の工程である加熱処理においてその傾向が顕著となるので好ましくない。一方、pHが3.5より高いと、リン酸マグネシウムまたはリン酸水素マグネシウムが沈殿して溶液中に分散する。この状態で錫表面の処理をおこなうと、耐食性の良い皮膜が形成されない。
【0022】
処理溶液中の全マグネシウム濃度は、0.1g/l以上3g/l以下であることが好ましい。0.1g/lより低いと形成される皮膜の耐食性が不十分で、高温高湿下では錫の酸化層が成長しやすい。一方、3g/lを超えると経済的に不利であるだけでなく、高温乾燥後、皮膜状にならないリン酸塩の結晶が多量に析出し、外観が悪く、水洗してその結晶を除去しても、残留した皮膜の耐食性が不十分である。高温乾燥後に水洗の工程を入れない場合の処理液の全マグネシウム濃度は0.8g/l以下とする方が良好な皮膜が得られる。処理液の温度は、常温から70℃の範囲では、得られる鋼板の特性に影響しない。
【0023】
浸漬時間はあまり性能に影響しないが、錫めっきラインの場合、0.5秒から2秒程度の範囲となるのが普通であり、この範囲で何ら問題はない。錫めっきされた鋼板を、上記の溶液に浸漬した後、余分な処理溶液を除去するためと、乾燥を促進するためにゴム等のロールまたはエアで液切りする。
錫めっき表面にリン酸塩処理液を付与する方法としては浸漬のほか、処理液をロール等で塗布する方法もあり、適宜選択すればよい。
【0024】
鋼板を処理液に浸漬または塗布後、95〜200℃に加熱する。乾燥温度を95℃から200℃に限定したのは、次の理由による。95℃より低い温度で乾燥しても、耐食性の良い皮膜が形成されない。95℃以上に加熱することによって、リン酸塩溶液の乾燥とともに脱水、ポリメタリン酸塩皮膜の形成がおこなわれる。一方、200℃を超えると、鋼板の鉄とめっきした錫との合金化反応が速やかに進行してしまうので好ましくない。加熱時間の影響は認められない。所定の温度に到達すれば、同時に良好な皮膜が形成される。
【0025】
前記の処理液に、pH調整のために加えられたナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンが0.02〜2g/lの範囲にわたって溶解していても差し支えない。しかし、カルシウムイオン、錫イオン、鉄イオンなどが存在すると、ポリメタリン酸マグネシウム皮膜の形成を阻害するので、極力低濃度に保つことが望まれる。
上記のような種々の処理の後、特に高濃度の処理液を使用した場合はさらに水洗、乾燥することが好ましい。余分な水溶性のリン酸塩の結晶を除去することで、光沢が向上するとともに、耐酸化性も向上する。高湿下でリン酸塩の結晶が吸湿し、錫めっき表面の酸化を促進するのを防止できるためと推定している。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
板厚0.20mmの缶用冷延鋼板を、前処理として電解アルカリ脱脂、水洗、希硫酸浸漬酸洗、水洗した。フェノールスルホン酸浴を用いて電気錫めっきを施し、めっき液の10倍希釈液をフラックスとして塗布・乾燥後、リフロー処理した。本発明に従って、この鋼板に化成処理を施した。また、比較のために本発明の範囲外の条件でも化成処理をおこなった。
得られた表面処理鋼板のマグネシウム付着量、表面光沢、耐酸化性の測定をおこなった。表面光沢は、鋼板の圧延方向での60゜鏡面光沢度(Gs60゜)を測定した。Gs60゜が700以上あれば、錫めっき特有の美しい光沢と見なせたので、この光沢度を合格レベルとした。
耐酸化性は、処理した鋼板を、50℃、相対湿度85%の雰囲気中に2週間置き、錫の酸化物の量を電量法によって求めた。錫の酸化物には酸化錫(II)と酸化錫(IV)とがあって、電量法ではそれらを定量的に区別することができないため、定法に従って還元に要した電気量で表示した。比較例10の電解クロメート処理並の5mC/cm2 を合格ラインとした。
【0027】
処理条件と得られた鋼板の特性を表1に示す。
本発明の範囲の処理条件で処理して得られた本発明の範囲の鋼板である実施例No.1〜12は、いずれも表面光沢、耐酸化性に優れていた。No.13は処理溶液のpHが低い比較例である。高温乾燥時に錫がエッチングされ、光沢が劣化するとともに、耐酸化性も不十分であった。No.14は処理溶液のpHが高い比較例である。リン酸塩が溶解せず、処理液は白濁したままであった。良好な皮膜は形成されず、耐酸化性は不良だった。No.15は処理溶液のマグネシウムイオン濃度が非常に低い比較例である。皮膜形成が不十分で、耐酸化性は不良だった。
【0028】
また、No.16は処理溶液のマグネシウムイオン濃度が高い比較例である。高温乾燥の後、水洗しても皮膜が白く光沢が劣化していた。耐酸化性も若干劣っていた。No.17は処理溶液塗布後の乾燥温度が高い比較例であった。処理液による錫表面のエッチングと鉄−錫の合金化の進行のため、光沢が低下した。No.18は処理液の乾燥温度が低い比較例である。リン酸塩の脱水によるポリメタリン酸塩皮膜が形成されず、耐酸化性が不良だった。No.19,20,21は、処理液にそれぞれカルシウムイオン、鉄イオン、錫イオンが共存する比較例である。ポリメタリン酸塩皮膜は形成されるが、そのうちのマグネシウム塩が少ないために耐酸化性が不十分であった。
【0029】
【表1】
Figure 0004177543
【0030】
【発明の効果】
本発明の錫めっき鋼板は、クロムを一切含まず、耐酸化性も優れるため、消費者の缶の有害物に対するあいまいな不安を払拭し、安心して美麗な缶詰を供給することに貢献する。また、本発明の方法によって化成処理を施すことにより、処理工程における6価クロムの使用を完全に回避できるので、作業環境や廃水処理も含めて環境に対する負荷を最小限に抑えることが可能であり、低濃度の処理液による、迅速簡便な方法のため、低コストで実施でき、経済的なメリットも大である。

Claims (10)

  1. 鋼板上に下層として金属錫層、上層としてマグネシウムイオンを含むポリメタリン酸塩皮膜を3〜40mg/m 2 有することを特徴とする耐酸化性の優れた錫めっき鋼板。
  2. 鋼板と金属錫層の間に鉄−錫合金層を、さらに有することを特徴とする請求項1に記載の耐酸化性の優れた錫めっき鋼板。
  3. 金属錫層が0.4〜23g/m2以下の錫からなることを特徴とする請求項1または2に記載の耐酸化性の優れた錫めっき鋼板。
  4. ポリメタリン酸塩皮膜中のマグネシウムイオンが、0.1〜10mg/m2 であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐酸化性の優れた錫めっき鋼板。
  5. 鋼板の圧延方向で測定した60゜鏡面光沢度(Gs60゜)が700以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐酸化性の優れた錫めっき鋼板。
  6. 鋼板の両面または片面に電気錫めっきした後、リン酸イオンとマグネシウムイオンとを含むpH2〜3.5の水溶液を塗布するか、もしくは該水溶液中に浸漬、液切りし、その後、95〜200℃に加熱を行い、ポリメタリン酸塩皮膜を3〜40mg/m 2 設けることを特徴とする耐酸化性の優れた錫めっき鋼板の製造方法。
  7. 鋼板の両面または片面に電気錫めっきし、さらに、加熱溶融処理をした後、リン酸イオンとマグネシウムイオンとを含むpH2〜3.5の水溶液を塗布するか、もしくは、該水溶液中に浸漬、液切りし、その後、95〜200℃に加熱を行い、ポリメタリン酸塩皮膜を3〜40mg/m 2 設けることを特徴とする耐酸化性の優れた錫めっき鋼板の製造方法。
  8. 前記リン酸イオンとマグネシウムイオンとを含むpH2〜3.5の水溶液中の全マグネシウム濃度が0.1〜3g/lであることを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載の耐酸化性の優れた錫めっき鋼板の製造方法。
  9. 前記リン酸イオンとマグネシウムイオンとを含むpH2〜3.5の水溶液が、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンのうち1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の耐酸化性の優れた錫めっき鋼板の製造方法。
  10. 95〜200℃に加熱処理した後、さらに、水洗、乾燥することを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の耐酸化性の優れた錫めっき鋼板の製造方法。
JP2000240733A 2000-08-09 2000-08-09 耐酸化性の優れた錫めっき鋼板およびその製造方法 Expired - Fee Related JP4177543B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000240733A JP4177543B2 (ja) 2000-08-09 2000-08-09 耐酸化性の優れた錫めっき鋼板およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000240733A JP4177543B2 (ja) 2000-08-09 2000-08-09 耐酸化性の優れた錫めっき鋼板およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2002060958A JP2002060958A (ja) 2002-02-28
JP4177543B2 true JP4177543B2 (ja) 2008-11-05

Family

ID=18732046

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000240733A Expired - Fee Related JP4177543B2 (ja) 2000-08-09 2000-08-09 耐酸化性の優れた錫めっき鋼板およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4177543B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8197663B2 (en) * 2005-12-30 2012-06-12 Arkema Inc. High speed tin plating process
JP4864493B2 (ja) * 2006-03-07 2012-02-01 新日本製鐵株式会社 缶用めっき鋼板
US8404357B2 (en) 2007-08-23 2013-03-26 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation Environmentally-friendly steel sheet for a can or a container as well as laminated and pre-coated steel sheet by using it

Also Published As

Publication number Publication date
JP2002060958A (ja) 2002-02-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101108312B1 (ko) 캔용 도금 강판 및 그 제조 방법
JP4864493B2 (ja) 缶用めっき鋼板
TW200925321A (en) Environmentally friendly steel sheet for container material, process for producing the same, and environmentally friendly laminated steel sheet for container material and precoated steel sheet for container material each produced from that steel shee
JPS602396B2 (ja) 酸性錫めつき浴
TW201202485A (en) Process for production of steel sheet for container material which has reduced load on environments, steel sheet for container material which has reduced load on environments, and laminate steel sheet for container material and coated precoat steels
JP6119930B2 (ja) 容器用鋼板及び容器用鋼板の製造方法
US8518555B2 (en) Plated steel sheet for cans
JP4864254B2 (ja) 錫めっき鋼板およびその製造方法
TWI424098B (zh) 具優異耐蝕性之罐用鋼板
JP4177543B2 (ja) 耐酸化性の優れた錫めっき鋼板およびその製造方法
JP2942105B2 (ja) 湿潤下での経時塗料密着性に優れたスズめっき鋼板の製造法
WO2021261155A1 (ja) 表面処理鋼板、金属容器および表面処理鋼板の製造方法
JP6119931B2 (ja) 容器用鋼板及び容器用鋼板の製造方法
JP2002356785A (ja) 耐酸化性の優れた錫めっき鋼板およびその製造方法
JPH0472091A (ja) 2ピース缶用表面処理鋼板及びその製造方法
JP6156299B2 (ja) 容器用鋼板およびその製造方法
JP5858175B1 (ja) 電解クロメート処理鋼板の製造方法
WO2016121277A1 (ja) 表面処理鋼板の製造方法
JP4660598B2 (ja) レトルト後塗膜密着性に優れたスズめっき鋼板の製造方法
JP4720459B2 (ja) 表面処理鋼板およびその製造方法
JP2577246B2 (ja) 加工耐食性の優れた塗装下地用表面処理鋼板の製造方法
JPS6335718B2 (ja)
JPS5938315B2 (ja) 極薄鉄錫合金被覆鋼板の製造法
JP3140305B2 (ja) 塗料密着性の優れた錫めっき鋼板の製造法
JPS60211099A (ja) 溶接缶用テインフリ−スチ−ル及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060907

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20071213

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20071225

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080222

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20080819

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20080822

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110829

Year of fee payment: 3

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 4177543

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120829

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130829

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130829

Year of fee payment: 5

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130829

Year of fee payment: 5

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130829

Year of fee payment: 5

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130829

Year of fee payment: 5

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees