JP2002030659A - 接着防止材 - Google Patents

接着防止材

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JP2002030659A
JP2002030659A JP2000210815A JP2000210815A JP2002030659A JP 2002030659 A JP2002030659 A JP 2002030659A JP 2000210815 A JP2000210815 A JP 2000210815A JP 2000210815 A JP2000210815 A JP 2000210815A JP 2002030659 A JP2002030659 A JP 2002030659A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 例えば、水硬性組成物に埋設または接触した
H形鋼等の支持体(仮埋設物)をより簡単に引き抜くこ
とまたは分離除去できる組成物および接着防止材を提供
する。 【解決手段】 吸水剤と疎水性潤滑剤との混合重量比が
1:100〜100:1の範囲である混合物を含む接着
防止材または吸水性潤滑層と疎水性潤滑層とを含む接着
防止材を、支持体表面と水硬性組成物(硬化体)との間
に介在させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セメントなどの水
硬性組成物とH形鋼などの支持体との接着を防止する材
料に関するものである。より詳しくは、本発明は、例え
ば、水硬性組成物に埋設または接触したH形鋼や鋼矢板
などを、より簡単に引き抜くことまたは分離除去できる
ように、両者の摩擦や接着を抑制する水硬性組成物の硬
化物と支持体との接着を防止する材料に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】一般に、建築分野並びに土木分野の基礎
工事において土留め擁壁等の構造体としての地盤基礎構
造体を施工する際には、まず、掘削孔を形成するために
オーガーにより掘削を行なうが、掘削しながらセメント
ミルクや生コンクリート等の水硬性組成物が注入され
る。次に、掘削孔に注入された水硬性組成物に例えばH
形鋼を芯材(仮埋設物)として埋め込んだ(打ち込ん
だ)後、該水硬性組成物を硬化させることが行われてい
る。H形鋼は、目的工事が終了した後、借地のためや後
年に地下を再び工事(開発)する際の障害とならないよ
うに、該硬化物から引き抜かれて撤去されることが望ま
れている。
【0003】ところが、H形鋼と水硬性組成物の硬化物
とは強固に接着しており、工事終了後にH形鋼を撤去す
るために、H形鋼を該硬化物から引き抜く作業には、付
着強度(接着強度)に打ち勝つための相当な労力(引張
力)が必要であるので設備や経費、日数等がかかる。
【0004】そこで、上記の引き抜き作業を容易に行う
ために、従来より、i)H形鋼の表面にワックス等の潤滑
剤を予め塗布する方法や、H形鋼の表面に吸水性樹脂を
接着剤を用いて付着させる方法、或いは、ii)H形鋼の
表面に潤滑材を貼着する方法、さらには、iii)H形鋼を
被覆材で被覆する方法、等の各種方法が提案されてい
る。
【0005】上記i)の方法として、例えば、特許公報の
昭62−18597には、特定組成のワックスを用いる
ことが提案されている。また、例えば、特開昭64−5
8715号公報には、ポリエステル系樹脂やビニル系樹
脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等の展着剤と、吸
水性樹脂とからなる芯材(仮埋設物)引き抜き用表面処
理剤を用いることが提案されている。また、例えば、特
開昭63−165615号公報には、天然ゴムや合成ゴ
ム、プラスチック等の揮発性膜形成樹脂と、吸水性樹脂
とからなる水膨潤性膜を用いて、鋼材を引き抜く際の摩
擦抵抗力を低減する方法が提案されている。
【0006】また、上記 ii)の方法として、例えば、特
開平6−185054号公報には、超吸水性繊維からな
るシート状の潤滑材を鋼材の表面に貼着することが提案
されている。また、例えば、特開昭62−174418
号公報には、吸水性樹脂と水を必要とするバインダーと
からなる潤滑テープを用いて、鋼材を引き抜く際の摩擦
抵抗力を低減する方法が提案されている。
【0007】また、上記iii)の方法として、例えば、特
開平7−247549号公報には、吸水性樹脂を織布や
不織布等の基材に直接的に固着させてなるポリマーシー
トからなる袋状の潤滑材で仮埋設物を被覆することによ
って、該仮埋設物を引き抜く際の摩擦抵抗力を低減する
方法が提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、潤滑剤
をH形鋼等の芯材(仮埋設物)の表面に潤滑剤を直接塗
布する方法では、現場の条件などによって該芯材(仮埋
設物)が引き抜き回収できない場合がしばしばあり、芯
材(仮埋設物)引き抜き時の摩擦抵抗の低減効果(例え
ばソイルセメントとH形鋼との接着防止効果)は不十分
なものであり、過大な引抜き力が必要となるため引抜き
時の安全性にも問題が有った。
【0009】また、芯材(仮埋設物)の表面に潤滑材を
貼着する方法も、引き抜き時の摩擦抵抗の低減効果は不
十分なものであり、また該潤滑材の芯材(仮埋設物)表
面への貼着作業自体が貼り直しがきかず調整が困難で極
めて煩雑であるという問題もあった。更に、この従来の
吸水性樹脂とバインダーとからなる潤滑テープを得るた
めには、水を必要とする接合剤を使って吸水性樹脂を基
材に付着させる加工を行なっているが、取り扱いが煩雑
で水の除去に時間がかかり生産性が低下する問題があっ
た。また、超吸水性繊維の製造及びシート化についても
いくつもの工程が必要で煩雑であった。
【0010】また、吸水性樹脂を基材に直接的に固着さ
せたシートの袋状の潤滑材で仮埋設物を被覆する方法
は、例えば、該シートの袋が仮埋設物に密着していない
ため仮埋設物の表面を確認しづらく(袋が膨らんで形状
が見えない)、建て込み精度または作業性が低下する場
合があった。また、掘削孔への建て込み時に袋が破損し
仮埋設物の引抜性が低下する場合があり、その被覆作業
には、注意を要した。
【0011】それゆえ、作業性、安全性、芯材(仮埋設
物)のリサイクル性が良好で、H形鋼等の芯材(仮埋設
物)を引き抜く作業を容易にすることができる接着防止
材、つまり、芯材(仮埋設物)を水硬性組成物の硬化物
からより簡単に引き抜くことができるように、両者の接
着や摩擦を抑制すべく構成した接着防止材が求められて
いる。本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたもの
であり、その目的は、安全性、芯材(仮埋設物)のリサ
イクル性の向上と共に、接着防止材の高い接着防止効果
により引き抜く作業を改善することができる接着防止材
を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本願発明者は、上記従来
の問題点を解決すべく、接着防止材について鋭意検討し
た。その結果、物体間または、セメントなどの水硬性組
成物とH形鋼などの支持体(仮埋設物)との接着を防止
する材料であって、少なくとも、吸水性樹脂などの吸水
剤とワックスなどの疎水性潤滑剤とを含む、組成物また
は接着防止材を、物体間または、支持体と水硬性組成物
の硬化体との間に介在させることにより、物体間また
は、水硬性組成物と支持体との接着や摩擦を抑制し、例
えば水硬性組成物からの支持体(仮埋設物)の引抜きま
たは分離除去を容易にすることと、本発明の吸水剤と疎
水性潤滑材とを混合した組成物を物体の空隙に充填する
ことで水などの流動体の移動を止めることを見い出し、
本発明を完成させるに至った。
【0013】また、少なくとも、吸水剤を含む吸水性潤
滑層と、疎水性潤滑剤を含む疎水性潤滑層とを、有する
接着防止材をH形鋼表面と水硬性組成物の硬化体との間
に介在させることにより、水硬性組成物と支持体(仮埋
設物)との接着や摩擦を抑制し、水硬性組成物からの支
持体(仮埋設物)の引抜きまたは分離除去を容易にする
ことを見い出して、本発明を完成させるに至った。
【0014】本発明の組成物は、上記の課題を解決する
ために、少なくとも、吸水剤と疎水性潤滑剤とを含む組
成物であり、吸水剤と疎水性潤滑剤との重量組成比が
1:100〜100:1の範囲であることを特徴として
いる。
【0015】上記の構成によれば、物体間に存在する、
水を吸収した吸水剤および/または疎水性潤滑剤は、物
体間の接着防止および潤滑性、止水性(漏れ防止性)を
発現する。この吸水剤と疎水性潤滑剤との相乗効果によ
り、より高い物体間の接着防止を行うことができる。
【0016】また、より好ましい本発明の組成物は、上
記の課題を解決するために、吸水剤が、吸水性樹脂であ
ることを特徴とする。
【0017】上記の構成によれば、吸水性樹脂の吸水膨
潤性により柔軟で潤滑性に優れたゲルを形成するが、こ
のゲルの潤滑性能及び物体間の接着防止性能により、よ
り高い物体間の接着防止および空隙の止水を実現する。
【0018】また、さらに好ましい本発明の組成物は、
上記の課題を解決するために、疎水性潤滑剤が、半固形
状潤滑剤であることを特徴としている。
【0019】半固形状とは、JIS規格にある混和ちょ
う度(JIS K−2560)が3〜385の範囲であ
ることをいう。
【0020】上記半固形状潤滑剤の好ましい混和ちょう
度としては、3から385であるが、より好ましくは5
から250であり、さらに好ましくは10から170で
ある。混和ちょう度が3未満だと潤滑性が低下し鋼材に
対する粘着力も低下し脱落が起こり易くなる。さらに溶
融に時間がかかり溶融塗布が煩雑になるという問題が生
じる。また、混和ちょう度が385を超えると液ダレが
生じ周辺を汚染し粘着力も低下する問題が生じる。
【0021】上記の構成によれば、半固形状粘着剤の高
い潤滑性能により物体間の接着を更に確実に防止する。
また、半固形状粘着剤の高い粘着性により物体やシート
状基材表面への塗布や貼付けなどによる付着(密着)作
業を容易にし、取扱い性、生産性を向上させる。さら
に、吸水剤との混合が容易で、しかも吸水剤の沈降が起
こらず吸水剤が疎水性潤滑剤と均一に分散混合させるこ
とができる。
【0022】潤滑剤は、10℃から30℃の常温におい
て、液状潤滑剤、半固形状潤滑剤、固形状潤滑剤の大き
く3つに分類されるが、液状及び固形状の潤滑剤は物体
やシート状基材表面への塗布や貼付けなどによる付着
(密着)作業時に液ダレや脱落などの問題が生じる場合
がある。これに対し、例えば鉱油を配合して半固形状に
調製したワックスやグリースなどの常温において半固形
状である半固形状潤滑剤は、潤滑性能と共に粘着力(鋼
材やシート状基材に対する密着力)を有することから、
物体やシート状基材への無溶剤塗布などの塗布や貼付け
を容易にし、取扱い性、生産性を向上させる。また、特
にワックス系半固形状潤滑剤が特に好ましく、溶融塗布
が可能で加工性がさらに向上する。(グリースは加熱に
より劣化し易く熱安定性が低い) 本発明の第一の接着防止材は、上記の課題を解決するた
めに、水硬性組成物と支持体との接着を防止する材料で
あって、少なくとも、吸水剤と疎水性潤滑剤とを含む混
合物を含むことを特徴としている。
【0023】上記の構成によれば、支持体と水硬性組成
物との間に接着防止材を介在させることで支持体と水硬
性組成物との接着防止を実現する。
【0024】例えば、支持体であるH形鋼と水硬性組成
物であるソイルセメント硬化体との接着防止を実現し、
H形鋼の引抜き回収を容易にする。
【0025】また、より好ましい本発明の第一の接着防
止材は、上記の課題を解決するために、少なくとも、吸
水剤と疎水性潤滑剤とを含む混合物を支持体表面に直接
付着させることを特徴としている。
【0026】上記の構成によれば、支持体表面に接着防
止材を塗布などにより直接付着させることで支持体と水
硬性組成物との接着防止を実現する。また、例えば、塗
布により接着防止材を被覆したH形鋼は、H形鋼の輪郭
を明確にできることから狭い孔径の穴の中へも容易に投
入(建て込み)ができる。
【0027】また、本発明の第一接着防止材を用いた好
ましい支持体撤去工法は、上記の課題を解決するため
に、H形鋼等の支持体の表面の少なくとも一部を、吸水
剤と疎水性潤滑剤との混合物を含む接着防止材を塗布す
る工程、該支持体を水硬性組成物と接触させる工程、水
硬性組成物を硬化させる工程、および、支持体を撤去す
る工程を順に含むことを特徴としている。
【0028】上記の構成によれば、支持体と水硬性組成
物との接着防止を確実に実現する。
【0029】本発明の第二の接着防止材は、上記の課題
を解決するために、第一の接着防止材において、さら
に、シート状基材を含むことを特徴としている。
【0030】上記の構成によれば、支持体と水硬性組成
物との間にこの接着防止材を介在させることで支持体と
水硬性組成物との接着防止を実現する。
【0031】例えば、支持体であるH形鋼と水硬性組成
物であるソイルセメント硬化体との接着防止を実現し、
H形鋼の引抜き回収を容易にする。
【0032】また、より好ましい本発明の第二の接着防
止材は、上記の課題を解決するために、水硬性組成物層
の側にシート状基材層が配置され、支持体表面側に吸水
剤と疎水性潤滑剤とを含む混合物層が配置されているこ
とを特徴としている。
【0033】上記の構成によれば、下記の被覆作業性向
上と共に支持体と水硬性組成物との接着防止を更に確実
に実現する。
【0034】水硬性組成物側にこの接着防止材のシート
状基材層を配し、H形鋼等の支持体表面側に吸水性樹脂
と疎水性潤滑剤との混合物層を配置することが、該混合
物の密着力を利用して支持体表面に接着防止材を密着
(貼付け)させることができ特に好ましい。例えば、シ
ート状の接着防止材をH形鋼などの支持体に密着させる
利点としては、再剥離可能で接着防止材の取扱い性、
作業性が向上すること、被覆した支持体(例えばH形
鋼)の輪郭が明確で建て込み精度を向上させること、
施工時に接着防止材が破損しても支持体表面から接着防
止材は乖離し難く高い接着防止性を保持できることなど
が挙げられる。
【0035】また、本発明の第二の接着防止材を用いた
好ましい支持体撤去工法は、上記の課題を解決するため
に、H形鋼等の支持体の少なくとも一部に、吸水剤と疎
水性潤滑剤との混合物とシート状基材とを含む接着防止
材で被覆する工程、該支持体を水硬性組成物と接触させ
る工程、水硬性組成物を硬化させる工程、および、支持
体を撤去する工程を順に含むことを特徴としている。
【0036】上記の構成によれば、支持体と水硬性組成
物との接着防止を更に確実に実現する。
【0037】本発明の第三の接着防止材は、上記の課題
を解決するために、水硬性組成物と支持体との接着を防
止する材料であって、少なくとも、吸水剤を含む吸水性
潤滑層と、疎水性潤滑剤を含む疎水性潤滑層とを、有す
ることを特徴としている。
【0038】上記の構成によれば、水を吸収することに
より水硬性組成物(硬化物)と支持体との(両者)の接
着防止性能及び潤滑性能を発現する吸水性潤滑層と、そ
の両者の接着防止性能及び潤滑性能を有する疎水性潤滑
剤を含む疎水性潤滑層との相乗効果により、より高い両
者の接着防止を行うことができる。例えば、ソイルセメ
ント硬化体からのH形鋼の引抜き回収を容易に実現す
る。また、被覆作業も改善され、ソイルセメント中に被
覆したH形鋼を容易に投入できるようになる。
【0039】また、より好ましい本発明の第三の接着防
止材は、上記の課題を解決するために、吸水剤が、吸水
性樹脂であることを特徴とする。
【0040】上記の構成によれば、吸水性潤滑層は、吸
水性樹脂の吸水膨潤性により柔軟で潤滑性に優れたゲル
層を形成するが、このゲル層の潤滑性能及び上記水硬性
組成物(硬化物)と支持体との両者の分離性能により、
より高い両者の接着防止を実現する。
【0041】本発明の第四の接着防止材は、上記の課題
を解決するために、本発明の第三の接着防止材におい
て、吸水性潤滑層が、少なくともアルカリ水可溶性樹脂
を含む潤滑層であることを特徴とする。
【0042】吸水性潤滑層は、吸水性樹脂を基材に付着
させることが、加工及び経済性から好ましいが、接合剤
として疎水性の接合剤を用いると吸水性樹脂の吸水膨潤
性を阻害する場合があり、また、水溶性の接合剤を用い
ると雨などに濡れた時や硬化前の液状の水硬性組成物に
接触した時に、容易に吸水性樹脂が脱落して、何れも所
期の性能を発現しなくなる場合がある。これに対し、ア
ルカリ水可溶性樹脂は、例えば建て込み前などの使用前
において、雨などの水に接触しても容易に可溶化しない
ことや特有の高接着力を有することから吸水性樹脂の脱
落を防止できる。また一方、アルカリ水可溶性樹脂は、
アルカリ性を呈するセメント水などの水硬性組成物中で
は可溶化することから、例えば建て込み時の使用時にお
いて、吸水性樹脂の吸水膨潤を阻害しない(膨潤規制を
起こさない)という特徴を有している。
【0043】上記の構成によれば、アルカリ水可溶性樹
脂を含む吸水性潤滑層を用いることで、上記水硬性組成
物(硬化物)と、支持体との更に高い接着防止を実現す
る。
【0044】本発明の第五の接着防止材は、上記課題を
解決するために、本発明の第三の接着防止材において、
吸水性潤滑層が、少なくとも塗膜ガーレー剛軟度が10
00(mgf){N}以下の樹脂を含む潤滑層であることを
特徴としている。
【0045】上記構成によれば、塗膜ガーレー剛軟度が
1000(mgf){N}以下の柔らかい樹脂で吸水剤を付
着させているので、吸水性潤滑層の吸水剤が吸水すると
きの膨潤(ゲル化)規制が小さく、上記水硬性組成物
(硬化物)と、支持体との接着防止を容易に実現する。
【0046】本発明の第六の接着防止材は、上記課題を
解決するために、本発明の第一から第五の接着防止材に
おいて、疎水性潤滑剤が、半固形状潤滑剤であることを
特徴としている。
【0047】上記の構成によれば、下記の被覆作業性向
上と共に上記両者の更に確実な接着防止を実現する。ま
た、疎水性潤滑層の複合化を容易にする。
【0048】本発明の接着防止材の疎水性潤滑層側をH
形鋼等の支持体表面側に配することで、その密着力を利
用して支持体表面に接着防止材を密着(貼付け)させる
ことができ特に好ましい。例えば、シート状の接着防止
材をH形鋼などの支持体に密着させる利点としては、 半固形状潤滑剤特有の再剥離可能な密着性により、貼
り直しが自由に調整でき貼付け作業が極めて容易にする
ことができる。 土留め壁造成において、接着防止材をH形鋼(支持
体)に密着させることによりH形鋼表面(輪郭)を明確
に確認できるため、建て込み精度を高くすることができ
作業性を改善できる。 土留め壁造成において、本発明の接着防止材は、半固
形状潤滑剤の密着効果(粘着効果)により接着防止材を
H形鋼表面に密着させることができるため、接着防止材
自体が、かなり破損しても、接着防止材のH形鋼表面か
らの乖離が起こらず、セメントミルクのH形鋼表面への
流入(接触)を最小限に抑えることができる。従って、
H形鋼の引抜き回収を容易に実現する。などが挙げられ
る。この利点について詳述すると以下の様になる。 半固形状潤滑剤特有の再剥離可能な密着性により、貼
り直しが自由に調整でき貼付け作業が極めて容易にする
ことができる。上記従来のワックスなどの潤滑剤を支持
体に塗り付ける方法やテープ状潤滑材を貼り付ける方法
に比べ、より簡便である。 土留め壁造成において、従来の上記特開平7−247
549号公報の支持体であるH形鋼等の仮埋設物に、接
着防止材の被覆材を非接着状態で被覆する方法に比べ、
接着防止材をH形鋼(支持体)に密着させることにより
H形鋼表面やH形鋼の輪郭を明確に確認できるため、建
て込み(掘削孔へのH形鋼の投入)精度を高くすること
ができ作業性を改善できる。 土留め壁造成において、上記従来の非接着状態で被覆
材を被覆する方法では、例えば、掘削孔径の小さい場合
など、建て込み時に被覆材が掘削孔壁面に接触してナイ
フで切った後のような破損が数mに渡り起こる場合があ
った。この場合、切り口からセメントミルクが多量にH
形鋼表面へ流入(接触)し接着防止材がH形鋼表面から
乖離してしまうため、上記水硬性組成物の硬化物とH形
鋼(支持体)との両者の付着強度は増大してH形鋼の引
抜きが困難になる場合があった。しかしながら、本発明
の接着防止材は、半固形状潤滑剤の密着効果(粘着効
果)により接着防止材をH形鋼表面に密着させることが
できるため、接着防止材自体が、かなり破損しても、接
着防止材のH形鋼表面からの乖離が起こらず、セメント
ミルクのH形鋼表面への流入(接触)を最小限に抑える
ことができる。H形鋼(支持体)に接着防止材を密着さ
せることで、破損し易い厳しい条件下でも上記水硬性組
成物とH形鋼との両者の付着強度を格段に抑制すること
ができ、H形鋼の引抜き回収を容易に実現する。
【0049】また、鉱油を配合して半固形状に調製した
ワックスやグリースなどの常温において半固形状の半固
形状潤滑剤は、潤滑性能と共に粘着力(鋼材に対する密
着力)を有することから、吸水性潤滑層への無溶剤塗布
が可能で複合化を容易にする。また、特にワックス系半
固形状潤滑剤が特に好ましく、溶融塗布が可能で加工性
がさらに向上する。(グリースは加熱により劣化し易く
熱安定性が低い)上記半固形状潤滑剤の好ましい混和ち
ょう度としては、3から385であるが、より好ましく
は5から250であり、さらに好ましくは10から17
0である。混和ちょう度が3未満だと潤滑性が低下し鋼
材に対する粘着力も低下し脱落が起こり易くなる。さら
に溶融に時間がかかり溶融塗布が煩雑になるという問題
が生じる。また、混和ちょう度が385を超えると液ダ
レが生じ周辺を汚染し粘着力も低下する問題が生じる。
【0050】また、より好ましい本発明の第三から第六
の接着防止材は、上記の課題を解決するために、水硬性
組成物層の側に吸水性潤滑層が配置され、支持体表面側
に疎水性潤滑層が配置されていることを特徴としてい
る。
【0051】上記の構成によれば、吸水性潤滑層の吸水
膨潤を容易に発現することができ、さらに、疎水性潤滑
層の粘着性により支持体表面に接着防止材を容易に密着
(粘着)させることができるので、上記の作用効果を発
現し水硬性組成物(硬化物)と支持体との接着をさらに
防止することができる。
【0052】本発明の第七の接着防止材は、上記の課題
を解決するために、少なくとも、シート状基材と吸水剤
と塗膜ガーレー剛軟度が1000(mgf){N}以下の樹
脂とを含むことを特徴としている。
【0053】上記の構成によれば、水硬性組成物(硬化
物)と支持体との接着防止を容易に実現する。
【0054】本発明の第八の接着防止材は、上記の課題
を解決するために、本発明の第一から第七の接着防止材
において、吸水剤が、吸水性樹脂であることを特徴とす
る。
【0055】上記の構成によれば、吸水性樹脂と疎水性
潤滑剤とを含む混合物または吸水性潤滑層は、吸水性樹
脂成分の吸水膨潤性により柔軟で潤滑性に優れたゲル層
を形成するが、このゲル層の優れた、潤滑性能及び上記
水硬性組成物(硬化物)と支持体との分離性能により、
水硬性組成物(硬化物)と支持体との接着防止を容易に
実現する。
【0056】本発明の接着防止材の第一の用途は、本発
明の接着防止材を、土留め壁用の仮埋設物と硬化セメン
ト組成物との接着防止に使用する。
【0057】上記した接着防止材の接着防止性能によっ
て、土留め壁用の仮埋設物とセメント組成物の硬化物と
の接着を、より完全に防止する。
【0058】本発明の接着防止材の第二の用途は、本発
明の接着防止材を、仮埋設物と流動化処理土との接着防
止に使用する。
【0059】上記した接着防止材の接着防止性能によっ
て、仮埋設物と流動化処理土との接着を、より完全に防
止する。
【0060】本発明の組成物の第三の用途は、本発明の
組成物および接着防止材を止水や漏水防止に使用する。
【0061】特に本発明の該混合物を含む接着防止材
は、吸水性樹脂の特性による吸水によって体積膨張性を
有し、疎水性潤滑剤の特性によって、疎水性または撥水
性を有することから、鋼矢板のジョイント部や地盤、岩
盤、コンクリート等の隙間またはひび割れ部の止水や漏
水防止を確実に実現する。また、特に本発明の吸水剤と
疎水性潤滑材との混合物を含む接着防止材は加熱により
無溶剤で極めて低粘度(シャフ゛イ)の液状体とすることが
できるため、作業環境が安全でしかも注入施工が容易で
あるので作業性、施工性に優れている。更に、どんなに
細く小さい隙間にも注入ができる。
【0062】本発明の支持体撤去工法は、上記の課題を
解決するために、H形鋼等の支持体の少なくとも一部
を、本発明の接着防止材で被覆する工程、該支持体を水
硬性組成物と接触させる工程、水硬性組成物を硬化させ
る工程、および、支持体を撤去する工程を順に含むこと
を特徴としている。
【0063】上記の、被覆工程は、H形鋼等の支持体の
少なくとも一部を本発明の接着防止材で被覆するもので
あるが、好ましくは水硬性組成物と接触する面の大部分
を被覆する工程であり、例えばその比率として、50面
積%以上、好ましくは70面積%以上、より好ましくは
90面積%以上、特に好ましくは95面積%という割合
をあげることができる。
【0064】上記の構成によれば、水を吸収することに
より水硬性組成物(硬化物)と支持体との(両者)の接
着防止性能及び潤滑性能を発現する、吸水剤と疎水性潤
滑剤とを含む混合物の吸水剤成分または吸水性潤滑層
と、その両者の接着防止性能及び潤滑性能を有する、吸
水剤と疎水性潤滑剤とを含む混合物の疎水性潤滑剤成分
または疎水性潤滑層との相乗効果により、容易に支持体
を撤去することができる。
【0065】
【発明の実施の形態】本発明の第一の接着防止材の特徴
は、吸水剤と疎水性潤滑剤とを特定の混合比で混合し
た、吸水剤と疎水性潤滑剤とを含む混合物を用いるとこ
ろにある。これにより本発明の該混合物を含む接着防止
材は、これまでに無い、接着防止性、潤滑性、止水性、
作業性、安全性、支持体のリサイクル性、経済性等の多
くの面で同時進歩を成し遂げた材料である。
【0066】本発明の該混合物を含む接着防止材は、物
体間または、セメントなどの水硬性組成物とH形鋼など
の支持体(仮埋設物)との接着を防止する材料であっ
て、少なくとも、吸水性樹脂などの吸水剤とワックスな
どの疎水性潤滑剤との混合物を含む接着防止材を、物体
間または、支持体と水硬性組成物の硬化体との間に介在
させることにより、物体間または、水硬性組成物と支持
体との接着や摩擦を抑制し、例えば水硬性組成物からの
支持体(仮埋設物)の引抜きまたは分離除去を容易にす
ることと、本発明の該混合物を物体の空隙に充填するこ
とで水などの流動体の移動を止めること実現する。
【0067】本発明の該混合物を含む接着防止材を構成
する少なくとも、吸水剤と疎水性潤滑剤とを含む混合物
の重量組成比(混合比)は、1:100〜100:1の
範囲である。疎水性潤滑剤と親水性の吸水剤とを混合す
ると疎水性潤滑剤の疎水特性により吸水剤の吸水特性は
阻害されてしまうのでこの両者を混合する発想は普通浮
かばないが、本発明者等は疎水性潤滑剤が100重量部
に対して吸水剤が1重量部以上であれば驚くべき事に吸
水剤は水分の吸収が可能であり物体間の接着防止性、潤
滑性(摩擦低減性)、止水性を大きく向上させること
と、また吸水剤100重量部に対して疎水性潤滑剤が1
重量部以上であれば、吸水剤の物体表面への付着を可能
にすることを見出した。また、物体間の接着防止性、潤
滑性(摩擦低減性)、止水性、取り扱い性、加工性の観
点から上記吸水剤と疎水性潤滑剤とを含む該混合物の吸
水剤と疎水性潤滑剤との重量組成比(混合比)は、1:
10〜10:1の範囲がより好ましく、1:5〜5:1
の範囲が更に好ましく1:2〜2:1の範囲が特に好ま
しい。
【0068】本発明にかかる吸水剤は、脱イオン水に1
時間浸漬後に網ですくい上げ1分間20℃で風乾した後
の吸水量が乾燥自重の2倍以上となる材料である。例え
ば、吸水性樹脂や吸水性樹脂シート、吸水性繊維、パル
プ(繊維)、綿、レーヨン(繊維)、紙などが挙げられ
る。
【0069】本発明の該混合物を含む接着防止材におい
ては、疎水性潤滑剤と混合される吸水剤としては吸水性
樹脂が、最も好ましい。
【0070】上記の吸水性樹脂は、水を吸水することに
よって膨潤し、かつ、自重に対する脱イオン水の吸水倍
率が3倍以上の樹脂であればよく、特に限定されるもの
ではないが、該吸水倍率が10倍以上の樹脂がより好ま
しい。該吸水性樹脂としては、具体的には、例えば、ポ
リ(メタ)アクリル酸架橋体、ポリ(メタ)アクリル酸
塩架橋体、スルホン酸基を有するポリ(メタ)アクリル
酸エステル架橋体、ポリオキシアルキレン基を有するポ
リ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリ(メタ)ア
クリルアミド架橋体、(メタ)アクリル酸塩と(メタ)
アクリルアミドとの共重合架橋体、(メタ)アクリル酸
ヒドロキシアルキルと(メタ)アクリル酸塩との共重合
架橋体、ポリジオキソラン架橋体、架橋ポリエチレンオ
キシド、架橋ポリビニルピロリドン、スルホン化ポリス
チレン架橋体、架橋ポリビニルピリジン、デンプン−ポ
リ(メタ)アクリロニトリルグラフト共重合体のケン化
物、デンプン−ポリ(メタ)アクリル酸(塩)グラフト
架橋共重合体、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸
(塩)との反応生成物、架橋ポリビニルアルコールスル
ホン酸塩、ポリビニルアルコール−アクリル酸グラフト
共重合体、ポリイソブチレンマレイン酸(塩)架橋重合
体等が挙げられる。これら吸水性樹脂は、必要に応じ
て、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併
用してもよい。さらに、吸水性樹脂が備える各種性質
(吸水倍率等)を阻害しない程度に、他の樹脂を吸水性
樹脂と併用することもできる。
【0071】上記例示の吸水性樹脂のうち、ノニオン性
基および/またはスルホン酸(塩)基を有する吸水性樹
脂がより好ましく、アミド基またはヒドロキシアルキル
基を有する吸水性樹脂がさらに好ましい。該吸水性樹脂
としては、例えば、(メタ)アクリル酸塩と(メタ)ア
クリルアミドとの共重合架橋体、(メタ)アクリル酸ヒ
ドロキシアルキルと(メタ)アクリル酸塩との共重合架
橋体等が挙げられる。さらに、上記例示の吸水性樹脂の
うち、ポリオキシアルキレン基を有する水膨潤性樹脂が
特に好ましい。該吸水性樹脂としては、例えば、メトキ
シポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリル酸
エステルと(メタ)アクリル酸塩との共重合架橋体等が
挙げられる。メトキシポリオキシアルキレン基を有する
水膨潤性樹脂は、長期間にわたって、例えばセメント水
のアルカリ水に対する膨潤性に特に優れている。従っ
て、該吸水性樹脂を用いることにより、支持体を引き抜
く作業を極めて容易に行うことができる。
【0072】さらに、本発明にかかる吸水性樹脂とし
て、水溶性を有するエチレン性不飽和単量体と、必要に
応じて架橋剤とを含む単量体成分を重合することによっ
て得られる樹脂を用いることができる。エチレン性不飽
和単量体を(共)重合してなる吸水性樹脂は、水に対す
る膨潤性により優れており、かつ、一般的に安価であ
る。従って、該吸水性樹脂を用いることにより、支持体
(仮埋設物)を引き抜く作業を極めて容易に、かつ、よ
り一層経済的に行うことができる。尚、上記の架橋剤
は、特に限定されるものではない。また、直鎖状の高分
子に、架橋剤を添加して架橋することにより、或いは、
電子線を照射して架橋することにより、吸水性樹脂を形
成することも好ましい。
【0073】上記のエチレン性不飽和単量体としては、
具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタ
コン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコ
ン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、
2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスル
ホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、
2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、並び
に、これら単量体のアルカリ金属塩やアンモニウム塩;
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、
並びに、その四級化物;(メタ)アクリルアミド、N,
N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシ
エチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)ア
クリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミ
ド、(メタ)アクリロイルモルホリン等の(メタ)アク
リルアミド類、並びに、これら単量体の誘導体;2−ヒ
ドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ
プロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル
(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ
(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ
(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコー
ルモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレン
グリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレ
ングリコールモノ(メタ)アクリレート;N−ビニル−
2−ピロリドン、N−ビニルスクシンイミド等のN−ビ
ニル単量体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N
−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−
ビニル−N−メチルアセトアミド等のN−ビニルアミド
単量体;ビニルメチルエーテル;等が挙げられるが、特
に限定されるものではない。これらエチレン性不飽和単
量体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上
を併用してもよい。
【0074】上記例示のエチレン性不飽和単量体のう
ち、ノニオン性基および/またはスルホン酸(塩)基を
有するエチレン性不飽和単量体がより好ましい。該単量
体としては、例えば、2−(メタ)アクリルアミド−2
−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイ
ルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパ
ンスルホン酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシア
ルキル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレング
リコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。さ
らに、ポリオキシアルキレン基を有するエチレン性不飽
和単量体が特に好ましい。そして、メトキシポリエチレ
ングリコールモノ(メタ)アクリレートを含む単量体成
分を重合して得られる吸水性樹脂は、アルカリ水に対す
る膨潤性に特に優れている。従って、該吸水性樹脂を用
いることにより、例えば、支持体(仮埋設物)を引き抜
く作業を極めて容易に行うことができる。
【0075】さらに、単量体成分としてエチレン性不飽
和単量体を二種類以上併用する場合においては、該単量
体成分に占める、ノニオン性基および/またはスルホン
酸(塩)基を有するエチレン性不飽和単量体の割合を1
重量%以上にすることがより好ましく、10重量%以上
にすることがさらに好ましい。上記の割合が1重量%未
満である場合には、該単量体成分を重合して得られる吸
水性樹脂を用いても、支持体(仮埋設物)を引き抜く作
業の作業性をさらに向上させることができなくなるおそ
れがある。
【0076】単量体成分としてエチレン性不飽和単量体
を二種類以上併用する場合における、より好ましい組み
合わせとしては、例えば、アクリル酸ナトリウム等の
(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩とアクリルアミドと
の組み合わせ、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩とメ
トキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレー
トとの組み合わせ等が挙げられるが、特に限定されるも
のではない。
【0077】上記の単量体成分を重合することにより、
吸水性樹脂が得られるが、単量体成分の重合方法、つま
り、吸水性樹脂の製造方法は、特に限定されるものでは
ない。
【0078】また、吸水性樹脂の平均分子量や形状、平
均粒子径等は、水硬性組成物の組成やアルカリ水のp
H、作業環境、他の基材と複合する場合の基材(シート
状)との組み合わせ等に応じて設定すればよく、特に限
定されるものではないが、平均粒子径が2,000μm
以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましく
は200μm以下、特に好ましくは100μm以下であ
る吸水性樹脂を用いることがより望ましい。さらに特に
好ましい平均粒径は70μm以下である。該平均粒子径
の吸水性樹脂を用いることにより、疎水性潤滑剤との混
合において吸水性樹脂の分散性または混合性が良好とな
り、その混合物の接着防止性、取り扱い性がより一層向
上する。また、例えばシート状基材表面に付着形成させ
るときにその該混合物の層を容易に形成させることがで
きる。また、単位面積当たりの該混合物層に含まれる吸
水性樹脂の量を、均一な状態で多くすることが容易で接
着防止性能を更に向上させることができる。さらに、吸
水、膨潤時における吸水性樹脂の脱落も抑制し接着防止
性の低下を防ぐことができる本発明にかかる疎水性潤滑
剤は、水に難溶で潤滑性能を持つものであれば特に制限
はされるものではない。例えば、支持体(仮埋設物)を
水硬性組成物の硬化物から引き抜くまたは分離する際に
潤滑効果を発揮するものが挙げられる。
【0079】該疎水性潤滑剤としては、具体的には、例
えば、ワックス、グリース、タール、アスファルト、油
脂・油剤等が挙げられる。
【0080】ワックスは、水に不溶性の1価または2価
の高級アルコール類と脂肪酸とのエステルであると化学
的に定義されるが、具体的には、例えば、木ろう、綿ろ
う等の植物ろう;マッコウ鯨油、ミツろう、羊毛ろう等
の動物ろう;ツチ油、モンタンろう、オゾケライト、石
油ワックス、パラフィンろう、微晶ろう、ペトロラタ
ム;等の液体状または半固形状または固体状の各種ろう
が挙げられるが、特に限定されるものではない。上記例
示のワックスのうち、半固形状のワックスが、潤滑性、
塗布加工性、支持体と接着防止材との密着性(粘着性)
の観点から、より優れているので好ましい。さらに、半
固形状の石油ワックスが特に好ましい。
【0081】また、半固形状のワックスは、鉱油を配合
して得られるが、ワックスと鉱油との重量配合比がワッ
クス:鉱油=30:70から70:30までの範囲つま
り、ワックスが30重量%を超え、70重量%未満のも
のが、潤滑性、塗布加工性、支持体と接着防止材との密
着性(粘着性)の観点から特に好ましい。ワックスの重
量%が30重量%以下であると、30℃付近の常温にお
いて粘性が低下し液状に近づき(流動化)密着力が弱く
なったり、塗布加工時に液ダレの問題が生じる場合があ
る。また、70重量%以上であると、5℃以下の低温環
境下において、固くなり接着防止材の支持体への被覆に
支障をきたしたり、密着性が低下する場合がある。
【0082】また、上記ワックスには鉱油の他にポリブ
タジエンやポリエチレンなどの各種添加剤を添加しても
良く、例えば、ワックスと鉱油を合わせた全量に対して
1重量%から20重量%の範囲で添加することで密着力
向上などの性質の改善を行なうことができる。
【0083】グリースは、鉱油に脂肪酸金属塩を混和し
て得られる半固形状の潤滑剤であるが、具体的には、例
えば、鉱油やシリコーン油(シリコーングリース)、ジ
エステル油系などの基油に、脂肪酸カルシウム塩や脂肪
酸ナトリウム塩、脂肪酸リチウム塩等の脂肪酸塩からな
る金属セッケン、ベントナイト系、シリカゲル系、銅フ
タロシアニン系、アリル尿素系などの増稠剤を混和して
なるものが挙げられる。グリースは特に限定されるもの
ではないが、30℃付近の常温において流動化せず、か
つ、5℃以下の低温環境下においても、接着防止材の支
持体への被覆に支障をきたさない固さ(柔かさ)の範囲
のものが好ましい。
【0084】タールとしては、具体的には、例えば、木
タール、コールタール等が挙げられる。タールは、特に
限定されるものではないが、30℃付近の常温において
流動化せず、かつ、5℃以下の低温環境下においても、
接着防止材の支持体への被覆に支障をきたさない固さ
(柔かさ)の範囲のものが好ましい。
【0085】油脂・油剤としては、具体的には、例え
ば、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸等の脂肪酸
類;合成グリセリン、ポリグリセリン等の誘導体;分岐
高級アルコール等の高級アルコール類;大豆油、アマニ
油、ナタネ油、ヒマシ油、牛油、ラノリン、マーガリ
ン、重油;等が挙げられる。油脂・油剤は、特に限定さ
れるものではないが、30℃付近の常温において流動化
せず、かつ、5℃以下の低温環境下においても、接着防
止材の支持体への被覆に支障をきたさない固さ(柔か
さ)の範囲のものが好ましい。
【0086】これら潤滑剤は、一種類のみを用いてもよ
く、また、二種類以上を併用してもよい。上記例示の潤
滑剤のうち、半固形状のワックスおよびグリースが、潤
滑効果に、より一層優れており、かつ、揮発成分の含有
量が少ないので、より好ましい。さらに、半固形状のワ
ックスは、溶融塗布加工が可能であり、耐久性(経時安
定性)に優れており特に好ましい。
【0087】尚、半固形状とは混和ちょう度が3から3
85である状態で、好ましい疎水性潤滑剤としては、混
和ちょう度が3から385の範囲であり、より好ましく
は5から250の範囲であり、さらに好ましくは10か
ら170の範囲である疎水性半固形状潤滑剤である。混
和ちょう度が3未満だと潤滑性が低下し、例えば鋼材に
対する粘着力も低下し脱落が起こり易くなる。さらに溶
融に時間がかかり溶融塗布が煩雑になるという問題が生
じる。また、混和ちょう度が385を超えると液ダレが
生じ周辺を汚染し粘着力も低下する問題が生じる。尚、
混和ちょう度はJIS K2560の試験方法により求
められる。
【0088】尚、疎水性潤滑剤は、必要に応じて、該潤
滑剤の潤滑性を阻害しない程度で以て、例えば、界面活
性剤、パルプ繊維、防錆剤、酸化防止剤等の各種添加剤
を含んでいてもよい。
【0089】本発明の該混合物を含む接着防止材は、物
体間の接着防止や止水を容易に行なうことが出来るが、
中でもセメント組成物(コンクリート)などの水硬性組
成物とH形鋼などの支持体との間の接着を防ぎ、水硬性
組成物の硬化体と支持体との分離、撤去を極めて容易に
実現する。
【0090】本発明にかかる水硬性組成物としては、例
えば、セメント、各種コンクリート、各種モルタル、セ
メントミルク、ソイルセメント、埋め戻し土などに使わ
れるセメント成分を混合した流動化処理土、水ガラスな
どが挙げられるが、特に限定されるものではなく、一般
に建築分野並びに土木分野の基礎工事において、土留め
擁壁や土台等の地盤基礎構造体を施工する際に用いられ
る水硬性組成物がよく用いられる。該水硬性組成物は硬
化(水和)することによって硬化物となるが、本発明で
言う水硬性組成物とは、硬化前の流動化状態のものと、
硬化後の圧縮強度を発現した固い状態のものの両者を指
すものとする。尚、水硬性組成物に含まれるセメント、
水、混和材、混和剤、骨材、補強材等の種類や組み合わ
せ、即ち、水硬性組成物の組成は、特に限定されるもの
ではないが、水硬性組成物の硬化物の圧縮強度が9.8
N/cm2(1kgf/cm2)以上、好ましくは49N
/cm2(5kgf/cm2)以上、より好ましくは98
1N/cm2(10kgf/cm2)以上、特に好ましく
は294N/cm2(30kgf/cm2)以上であり、
その圧縮強度が大きくなればなるほど、本発明の接着防
止材の効果は従来の接着防止材のものと比較して、その
接着防止効果の優位差は増大する。
【0091】本発明にかかる支持体としては、例えば、
具体的には、例えば、H形鋼、I型鋼、鉄柱、コンクリ
ート杭、ポール、筒状のパイル(中空パイル)、長尺板
状の杭である鋼矢板(シートパイル)、波板、型枠、鉄
筋篭、杭頭処理用栓体等が挙げられるが、水硬性組成物
を外側及び/または中側(埋設状態)から支え保持する
ものであれば特に限定されるものではない。支持体は、
一般に建築分野並びに土木分野の基礎工事において、土
留め擁壁や土台等の地盤基礎構造体を施工する際によく
用いられ、使用後に水硬性組成物の硬化物から引き抜
く、または分離する必要があるものである。尚、支持体
の形状、長さ、材質等は、特に限定されるものではな
い。
【0092】また、支持体の形状については、作業性向
上などのために工事の所期の目的を達成させるのに支障
のない範囲で適宜変形させても良い。例えば、吊り上げ
た支持体(仮埋設物)であるH形鋼に、筒状の接着防止
材を下部から履かせ吊り上げて被覆する場合に、H形鋼
の下部のフランジの先端部分の角が引っかかり接着防止
材が破損する恐れがあるが、予めH形鋼の該先端の角を
溶融切断などにより、角を斜めに落しておいた(切る)
H形鋼は、引っかかり難くくなるので破損を防止するこ
とができる。従って、角を斜めに落した形状は、好まし
い。また、上記の角を斜めに落したH形鋼は、建て込み
(掘削孔への投入)時に高止まりしてオーガー機などで
強制的に押込む場合でも、その押し込みを容易にするこ
とができるので好ましい。また、支持体としては複数の
支持体を接続した接続支持体も含まれる。例えば2本の
H形鋼をボルトと継ぎ鋼板を使って長手方向(縦方向)
に接続した接続H形鋼が挙げられる。
【0093】上記の水硬性組成物と支持体とは、接触し
硬化すると強固に接着し、支持体の引抜きまたは分離除
去は困難であった。しかしながら、本発明の接着防止材
を水硬性組成物と支持体との両者の間に介在させること
で少なくとも、吸水剤と疎水性潤滑剤とを含む混合物の
優れた接着防止性、潤滑性、分離性により、両者の接着
を防止することができ水硬性組成物と支持体との引抜き
または分離除去を容易にすることができる。
【0094】本発明の吸水剤と疎水性潤滑剤との混合物
を含む接着防止材を水硬性組成物と支持体との間に介在
させる方法に特に制限はないが、予め支持体表面に直接
塗布などにより付着させることができる。
【0095】本発明の吸水剤と疎水性潤滑剤とを含む混
合物を支持体表面に付着させる方法としては、特に限定
されるものではないが、具体的には、例えば、疎水性潤
滑剤と吸水性樹脂との混合物を含む接着防止材を直接
(無溶剤)、支持体表面に、刷毛塗り、またはローラを
用いて塗布する方法;噴霧(スプレー)する方法;等を
採用すればよい。その際、疎水性潤滑剤と吸水性樹脂と
の混合物を含む接着防止材は加熱溶融(融点以上)する
ことが作業性の観点から好ましい。また、疎水性潤滑剤
と吸水性樹脂との混合物を含む接着防止材を有機溶剤等
の分散媒に分散(または溶解)してなる分散液(樹脂溶
液)を支持体表面に、噴霧(スプレー)する方法;該樹
脂分散液を刷毛塗り、またはローラを用いて塗布する方
法等を採用することもできる。上記例示の方法のうち、
疎水性潤滑剤と吸水性樹脂とを含む混合物を直接(無溶
剤)、シート状基材表面に、刷毛塗り、またはローラを
用いて塗布する方法が、作業上並びに製造上、容易であ
るので、より好ましく、無溶剤系なので乾燥も不要とな
る。
【0096】疎水性潤滑剤と吸水性樹脂とを混合する方
法は、特に限定されず、疎水性潤滑剤と吸水性樹脂とを
無溶剤で直接混合することができ、混ぜ棒、撹拌機、高
速撹拌機、ニーダー、その他のブレンダーなどの一般の
混合機を用いることができる。その際、混合時の温度を
疎水性潤滑剤の融点以上の温度条件下で混合することが
作業性の観点から好ましい。また、溶剤を用いる場合
は、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イ
ソプロピルアルコール、ベンゼン、トルエン、アセト
ン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル;エ
チレングリコール、エチレングリコールモノメチルエー
テル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテー
ト、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセ
テート等の、多価アルコールおよびその誘導体;等の有
機溶剤を使用できるが、特に限定されるものではない。
【0097】吸水剤と疎水性潤滑剤とを含む混合物層の
膜厚は、1μmから10,000μmの範囲が好まし
く、10μmから5,000μmの範囲がより好まし
く、100μmから2,000μmの範囲がさらに好ま
しい、300μmから1,000μmの範囲が特に好ま
しい。膜厚が10μm未満だと、水硬性組成物の硬化物
と支持体との分離性、潤滑性が低下し、接着防止材の支
持体への密着性も低下するので好ましくない。一方膜厚
が10000μmを超えると、作業性が低下するので好
ましくない。
【0098】本発明の第一接着防止材を用いる好ましい
支持体撤去工法は、まず、H形鋼等の支持体の表面に、
少なくとも、吸水剤と疎水性潤滑剤とを含む接着防止材
(混合物)を塗布し、例えばソイルセメントミルクの水
硬性組成物が注入された掘削孔の中に投入し該支持体を
水硬性組成物と接触させる。次に、水硬性組成物を硬化
させ、所定期間残置した後に支持体を引抜機で引抜き撤
去する工法である。この工法によれば支持体と水硬性組
成物との接着防止を確実に実現する。
【0099】また、固形状や半固形状、ペースト状、液
状の、塗布または注入可能な、吸水剤と疎水性潤滑剤と
を含む混合物は、凹凸のある箇所や狭い隙間の被覆(塗
布)、注入に有効である。本発明の第二の接着防止材
は、上記の塗布型の第一の接着防止材とは異なる形態の
ものであり、シート状基材の表面または裏面に上記の、
吸水剤と疎水性潤滑剤とを含む混合物を塗布などにより
付着させて得られるシート状の接着防止材で、取扱い
性、作業性、総工事費低減(経済性)等の観点からより
好ましい接着防止材となる。
【0100】また、本発明の吸水剤と疎水性潤滑剤とを
含む混合物が塗布される面は、i)支持体表面、ii) 上記
したシート状基材の表面および/または裏面となる面、
iii)耐水性付与剤で処理したシート状基材の裏面(耐
水性被膜が形成されていない面)および/または表面
(耐水性被膜が形成されている面)、からなる群より選
ばれる少なくとも一つの面である。このうち、例えば、
支持体(仮埋設物)と水硬性組成物との接着防止性(引
き抜き作業の容易性)や取り扱い性、雨水対策などから
鑑みて、上記の混合物層は、耐水性付与剤で処理したシ
ート状基材の裏面(耐水性被膜が形成されていない面)
に形成させることが、より好ましい。
【0101】本発明のシート状の接着防止材において、
該混合物を付着させるシート状基材は、地盤基礎構造体
を施工する際にかかる種々の外力、例えば、支持体や水
硬性組成物の重量がかかることによって生じる引張力や
剪断力;支持体を埋設するときに生じる衝撃力や引張
力、水硬性組成物との間の摩擦力;等に対して耐え得る
強度、つまり、上記外力がかかっても破損しない強度を
備えている材質が好ましい。
【0102】該シート状基材の材質としては、具体的に
は、例えば、割繊維不織布(例えばワリフ「商品名」
等)、カーペット、フェルト、石綿布、石綿フェルト、
ガラス繊維不織布、ガラス繊維強化プラスチック、ステ
ッチボンド不織布、ニードルパンチ不織布、等の不織布
類;フラットヤーンの繊維織物、綿織物、麻織物、帯状
織物、帯ひも、ポリプロピレン等からなる合成樹脂織
物、等の織物類;ポリエステル繊維と綿繊維とを混紡し
て得られる織物、等の混紡織物;ポリスチレン、ポリエ
チレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹
脂、フェノール樹脂、ゴムフォーム等からなる素材の内
部に、独立気泡および/または連続気泡が形成されてな
る発泡体;ウレタンゴムやシリコーンゴム、フッ素ゴ
ム、エーテルゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、ネオプ
レン(登録商標)(クロロプレンゴム)、ブタジエン−
アクリロニトリル共重合体、天然ゴム等からなるエラス
トマーシート、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエ
チレンテレフタレート、ポリアミド(ナイロン)、塩化
ビニル樹脂、アクリル樹脂等からなるプラスチックシー
ト、皮革シートや木材シート、防水加工を施した紙シー
ト、厚紙シート等の天然物シート、合成紙、アルミニウ
ムや鉄、銅、銀等からなる金属シート、ステンレス等か
らなる合金シート、ステンレス鋼繊維シート、セラミッ
クファイバーシート、アルミニウムや鉄、銅、銀等から
なる金属箔、ステンレス等からなる合金金属箔、等のシ
ート類;ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレン
テレフタレート、ポリアミド(ナイロン)、塩化ビニル
樹脂、アクリル樹脂等からなるネットまたはメッシュ、
アルミニウムや鉄、銅、銀等からなるネットまたはメッ
シュ、ステンレス等の合金からなるネットまたはメッシ
ュ、等のネット・メッシュ類;等が挙げられる。これら
材質は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上
を併用(複合)してもよい。
【0103】上記例示の材質のうち、透水性や加工性に
より優れると共に、廉価であることから、割繊維不織
布、ニードルパンチ不織布、フラットヤーンの繊維織
物、綿織物、麻織物、帯状織物、合成樹脂織物、およ
び、混紡織物が特に好ましい。
【0104】また、上記例示の材質のうち、透水性を備
えていない材質、例えば、シート類等に対しては、必要
に応じて、例えば切り目や孔等を形成してもよい。この
場合、切り目や孔の形状、大きさ、個数、形成位置は、
特に限定されるものではなく、上記外力がかかってもシ
ート状基材が破損しない強度を維持することができる範
囲内で以て、適宜設定することができる。
【0105】上記シート状基材の厚さは、材質に応じて
設定すればよく、特に限定されるものではないが、0.
01mm〜10mmの範囲内がより好ましく、0.05
mm〜8mmの範囲内がさらに好ましく、0.2mm〜
5mmの範囲内が特に好ましい。シート状基材の厚さが
10mmよりも厚いと、接着防止材(被覆材)の柔軟性
が低下するおそれがある。また、接着防止材(被覆材)
が嵩高くなるので、その取り扱い性や保管性が低下する
おそれがある。シート状基材の厚さが0.01mmより
も薄いと、外力に耐え得る強度を維持することができな
いおそれがある。
【0106】尚、上記シート状基材の坪量は、材質や厚
さに応じて設定すればよく、特に限定されるものではな
いが、10g/m2 〜10,000g/m2 の範囲内が
より好ましく、20g/m2 〜1,000g/m2 の範
囲内がさらに好ましい。
【0107】シート状基材の引張強度は、9.81N/
2.5cm(1kgf/2.5cm)以上であることが
より好ましく、98.1N/2.5cm(10kgf/
2.5cm)以上であることがさらに好ましく、294
N/2.5cm(30kgf/2.5cm)以上である
ことが特に好ましい。引張強度が9.81N/2.5c
m(1kgf/2.5cm)以上であれば、シート状基
材は、上記外力がかかっても破損しない強度を維持する
ことができる。シート状基材の引張強度が9.81N/
2.5cm(1kgf/2.5cm)未満であると、外
力がかかったときに破れたり裂けたりし易くなる。
【0108】上記の引張強度は、幅2.5cm、長さ2
0cmの大きさに裁断した後、脱イオン水に30分間浸
漬して充分に濡らした試験片(シート状基材)を用い、
JIS L 1096(一般織物試験方法)の引張試験
方法(引張強さ)に基づく低速伸長引張試験機を使用し
て、引張速度20mm/min、つかみ間隔10cmの
条件で以て測定した。該試験機によって得た測定値(単
位:N/2.5cm(kgf/2.5cm))が大きい
ほど、シート状基材の引張強度が大きいと判断できる。
【0109】予めアルカリ水可溶性樹脂やフッ素系樹
脂、シリコーン系樹脂等の撥水剤などの耐水性付与剤を
上記シート状基材に処理(塗布)しておくと、施工前、
施工中において、雨水の吸収によるシート状接着防止材
が支持体表面から剥離するのを防止することができる。
特に、アルカリ水可溶性樹脂(詳細は後述)を塗布した
ものは、アルカリ水可溶性樹脂が雨等の中性域または酸
性域のpHを示す水と接触しても容易に溶解しない(耐
水性被膜形成)ので、基材および上記混合物層を損傷し
ない。従って、作業中に降雨等があっても、性能を損な
うことがないのである。従って、例えば、支持体(仮埋
設物)を接着防止材(被覆材)で予め被覆しておき、該
被覆された支持体(仮埋設物)を作業現場に野積みする
こともできる。つまり、作業現場の状況に応じて、適
宜、作業の簡便化、合理化を図ることができるので、支
持体を迅速に施工することができる。
【0110】上記シート状基材の表面に耐水性被膜を形
成させる方法としては、例えば、シート状基材をアルカ
リ水可溶性樹脂溶液に短時間浸漬し引き上げて余分なア
ルカリ水可溶性樹脂溶液を除去し乾燥する方法やシート
状基材の表層にアルカリ水可溶性樹脂溶液を塗布加工し
乾燥する方法などが挙げられる。接着防止材を被覆した
支持体は、しばしば一晩中放置されるが、その放置中に
雨に降られると施工前にシート状接着防止材が吸水膨潤
して使用できなくなることを防止するのである。耐水性
被膜を形成することで、この接着防止材の事前の吸水膨
潤を防止することが確実に出来ることから、耐水性被膜
を形成することがさらに好ましい。一方、アルカリ水可
溶性樹脂は、アルカリ水と接触すると溶解する。つま
り、水硬性組成物と接触したときにアルカリ水可溶性樹
脂が溶解を開始し、シート状基材を透過した水硬性組成
物は吸水剤と疎水性潤滑剤とを含む混合物層に吸収さ
れ、水硬性組成物層と接着防止材との間に、膨潤したゲ
ル層を形成するようになる。従って、支持体(仮埋設
物)と水硬性組成物の硬化物との分離撤去を容易にする
ことができる。
【0111】上記吸水性樹脂と疎水性潤滑剤との混合物
と複合化されたシート状基材、つまり、シート状の接着
防止材(被覆材)は、支持体(例:H形鋼)を被覆する
ことができる形状並びに大きさに形成されていることが
より好ましいが、後段にて詳述するように、支持体を挿
入可能な袋状若しくは筒状に形成されていることが特に
好ましい。接着防止材を袋状若しくは筒状に形成するこ
とにより、大きくかつ重量物であるH形鋼などの仮埋設
物をより一層簡単にかつ迅速に被覆することができるの
で、作業現場における作業性をより一層向上させること
ができる。また、疎水性潤滑剤の粘着性を利用して支持
体表面に貼り付けるためのシート状の形状も好ましい。
特に2枚の吸水性潤滑層シートの間に疎水性潤滑層が形
成された3層シートの形状が作業性、安全性、廃材縮減
(剥離材不要)の観点から好ましい。
【0112】上記混合物の樹脂層は、シート状基材と水
硬性組成物の硬化物との間に、水を吸水して膨潤した含
水ゲル層が形成される。この吸水剤の吸水性樹脂と疎水
性潤滑剤からなる樹脂層を支持体と水硬性組成物の間に
配すると、支持体(仮埋設物)と水硬性組成物の硬化物
との間に、膨潤した吸水膨潤した含水ゲル層を形成する
ことができるので、両者の接着をより一層抑制すること
ができる。これにより、支持体(仮埋設物)を水硬性組
成物の硬化物から引き抜く際には、膨潤したゲル層が潤
滑効果を発揮することによって、該支持体(仮埋設物)
が滑り易くなる。従って、支持体(仮埋設物)を水硬性
組成物の硬化物から引き抜く作業における労力(引張
力)をより一層低減することができるので、該作業の作
業性を向上させることができる。さらに、該ゲル層を乾
燥させることにより、支持体(仮埋設物)と水硬性組成
物の硬化物との間に僅かな隙間を形成することができる
ので、上記作業の作業性をさらに一層向上させることが
できる。
【0113】また、シート状基材に対する該混合物層
(樹脂層)の割合、即ち、シート状基材の単位面積当た
りに対する吸水性樹脂と疎水性潤滑剤との混合物の付着
量は、両者の組成や組み合わせ、作業環境等に応じて設
定すればよく、特に限定されるものではないが、上記接
着防止性とシート基材への塗布生産性の両者を満足させ
る観点から、1g/m2 〜10,000g/m2 の範囲
内がより好ましく、10g/m2 〜1,000g/m2
の範囲内がさらに好ましく、20g/m2 〜500g/
2 の範囲内が特に好ましい。尚、シート状基材100
重量部に対するアルカリ水可溶性樹脂および吸水性樹脂
の割合は、上記接着防止性とシート基材への塗布生産性
の両者を満足させる観点から、1重量部〜10,000
重量部の範囲内がより好ましく、10重量部〜1,00
0重量部の範囲内がさらに好ましく、20重量部〜50
0重量部の範囲内が特に好ましい。
【0114】シート状基材表面に疎水性潤滑剤と吸水性
樹脂とを含む混合物層(樹脂層)を形成する方法は、特
に限定されるものではないが、具体的には、例えば、疎
水性潤滑剤と吸水性樹脂とを含む混合物を直接(無溶
剤)、シート状基材表面に、刷毛塗り、またはローラを
用いて塗布する方法;噴霧(スプレー)する方法;等を
採用すればよい。その際、疎水性潤滑剤と吸水性樹脂と
を含む混合物は加熱溶融(融点以上)することが作業性
の観点から好ましい。また、上記混合物をを有機溶剤等
の分散媒に分散(または溶解)してなる分散液(樹脂溶
液)をシート状基材表面に、噴霧(スプレー)する方
法;樹脂分散液を刷毛塗り、またはローラを用いて塗布
する方法;シート状基材に樹脂分散液を含浸させる方
法;等を採用すればよい。また、該疎水性潤滑剤溶液ま
たは該疎水性潤滑剤分散液をシート状基材表面に噴霧ま
たは塗布した後、該表面に吸水性樹脂を均一に撒布し、
さらにこの上に該溶液または分散液を噴霧または塗布す
る方法;等を採用することもできる。上記例示の方法の
うち、疎水性潤滑剤と吸水性樹脂とを含む混合物を直接
(無溶剤)、シート状基材表面に、刷毛塗り、またはロ
ーラを用いて塗布する方法が、作業上並びに製造上、容
易であるので、より好ましく、無溶剤系なので乾燥も不
要となる。さらに、加熱溶融した、疎水性潤滑剤と吸水
性樹脂とを含む混合物を上下のローラーのクリアランス
調整で付着量をコントロールしながら連続的に塗布加工
する方法が特に好ましい。これにより、シート状基材表
面(外面および/または内面)に上記混合物の樹脂層が
形成される。
【0115】そして、本発明のシート状の接着防止材に
おいては、支持体(仮埋設物)を被覆した状態において
外側となる面に、上記シート状基材が形成されているこ
とがより好ましい。つまり、水硬性組成物層の側にシー
ト状基材層が配される様にし、支持体側に吸水剤と疎水
性潤滑剤とを含む混合物層が配される様にすることが特
に好ましい。このように水硬性組成物層の側にシート状
基材層を配し、支持体表面側に該混合物層を配すること
により、粘着性を有する半固形状の疎水性潤滑剤を含む
上記混合物層は支持体表面に吸水剤と共に密着すること
から、建て込みの施工性の向上と、シート状接着防止材
(被覆材)の破損による接着防止性の低下を防ぐことが
できる。また、例えば、セメント水を吸収した吸水剤
(ゲル)と疎水性潤滑剤との潤滑性能が支持体表面で相
乗的に働き、支持体(仮埋設物)を引き抜く作業をより
一層容易に行うことができる。また、引き抜いた支持体
は低荷重で引き抜き撤去されるのでその支持体のダメー
ジ、変形が極めて少なく支持体のリサイクルを可能にす
る。
【0116】吸水剤と疎水性潤滑剤とを含む混合物層の
膜厚は、1μmから10,000μmの範囲が好まし
く、10μmから5,000μmの範囲がより好まし
く、100μmから2,000μmの範囲がさらに好ま
しい、300μmから1,000μmの範囲が特に好ま
しい。膜厚が10μm未満だと、水硬性組成物の硬化物
と支持体との分離性、潤滑性が低下し、接着防止材の支
持体への密着性も低下するので好ましくない。一方膜厚
が10000μmを超えると、得られる接着防止材の重
量や嵩が増大し取り扱い性(作業性)や製造時の加工性
が低下するので好ましくない。
【0117】シート状基材または支持体(仮埋設物)に
対する上記混合物の付着量、即ち、単位面積当たりに対
する付着量は、シート状基材、支持体(仮埋設物)の表
面の状態(凹凸等)、両者の組成や組み合わせ、作業環
境等に応じて設定すればよく、特に限定されるものでは
ないが、上記塗布加工性と上記密着性の両者を満足させ
る観点から、1g/m2 〜10,000g/m2 の範囲
内が好ましく、10g/m2 〜5,000g/m2 の範
囲内がより好ましく、100g/m2 〜2,000g/
2 の範囲内がさらに好ましく、300g/m2 〜1,
000g/m2の範囲内が特に好ましい。付着量が1g
/m2未満だと、水硬性組成物の硬化物と支持体との分
離性、潤滑性が低下し、接着防止材の支持体への密着性
も低下するので好ましくない。一方付着量が10,00
0g/m2 を超えると、得られる接着防止材の重量や嵩
が増大し取り扱い性(作業性)や製造時の加工性が低下
するので好ましくない。
【0118】尚、シート状基材100重量部に対する上
記混合物の割合は、上記塗布加工性と上記密着性の両者
を満足させる観点から、1重量部〜10,000重量部
の範囲内がより好ましく、10重量部〜2,000重量
部の範囲内がさらに好ましく、20重量部〜1,000
重量部の範囲内が特に好ましい。
【0119】次に、本発明の第三の接着防止材の特徴
は、吸水性潤滑層と疎水性潤滑層とを複合化(積層化)
し一体併用するところにある。これにより本発明の接着
防止材は、これまでに無い、接着防止性、作業性、安全
性、支持体のリサイクル性等の多くの面で同時進歩を成
し遂げた材料である。
【0120】本発明の第三の接着防止材の形態について
は、以下詳細に後述するが、例えば以下の様な形態が挙
げられる。
【0121】i)シート状基材に吸水剤が接合剤などを介
して形成された吸水性潤滑層シート(吸水性潤滑層)
の、少なくとも片面に疎水性潤滑剤を塗布などにより疎
水性潤滑層を形成させたもの、さらに、疎水性潤滑剤を
含む疎水性潤滑層の両面に吸水性潤滑層が形成されたも
のまたは2枚の吸水性潤滑層シートの間に疎水性潤滑層
が形成された3層シート(構成:吸水性潤滑層/疎水性
潤滑層/吸水性潤滑層)、ii)シート状基材の少なくと
も片面に疎水性潤滑剤を形成させた疎水性潤滑層シート
と吸水性潤滑層シートを複合化したもの、iii)支持体
表面に直接、疎水性潤滑剤を塗布することや疎水性潤滑
層シートの貼り合わせることなどにより疎水性潤滑層を
形成させた後に、吸水性樹脂などの吸水剤とアルカリ水
可溶性樹脂や天然ゴムなどの接合剤とを含む液状組成物
を疎水性潤滑層の上から塗布することや吸水性潤滑層シ
ートを疎水性潤滑層の上から貼り合わせることにより吸
水性潤滑層を形成させた形態のもの、または、支持体表
面に直接、吸水剤と接合剤とを含む液状組成物を塗布す
ることや吸水性潤滑層シートを貼り合わせることなどに
より吸水性潤滑層を形成させた後に、吸水性潤滑層の上
から疎水性潤滑剤を塗布することや疎水性潤滑層シート
を貼り合わることなどにより疎水性潤滑層を形成させた
形態のもの、iv)支持体表面に直接、上記疎水性潤滑層
及び上記吸水性潤滑層を交互に積層形成させたもの、な
どが挙げられる。中でも、シート状基材に吸水剤が塗布
などにより形成された吸水性潤滑層シート(吸水性潤滑
層)の、少なくとも片面に疎水性潤滑剤を塗布などによ
り疎水性潤滑層を形成させた形態のものが該接着防止
性、施工性、製造加工性、経済性等の観点から好まし
く、さらに、疎水性潤滑剤を含む疎水性潤滑層の両面に
吸水性潤滑層が形成されたものまたは2枚の吸水性潤滑
層シートの間に疎水性潤滑層が形成された3層シート
(構成:吸水性潤滑層/疎水性潤滑層/吸水性潤滑層)
が該接着防止性、施工性、製造加工性、経済性、廃材削
減等の観点か特に好ましい。
【0122】また、上記の接合剤としては、成膜可能な
ものであれば特に限定されず、各種の水溶性樹脂、疎水
性樹脂、アルカリ水可溶性樹脂、または天然ゴム、イソ
プレンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコ
ーンゴム、アクリルゴム、液状ゴム、エラストマー等の
ゴム系樹脂の中の柔軟な樹脂などが挙げられるが、中で
も接合剤としては、水溶性樹脂、アルカリ水可溶性樹脂
あるいは、吸水時の吸水性樹脂の膨潤を阻害する力の小
さい上記の柔軟な樹脂が好ましい。さらに、接着防止
性、低脱落性の観点からアルカリ水可溶性樹脂あるい
は、吸水時の吸水性樹脂の膨潤を阻害する力の小さい柔
軟な樹脂が好ましい。この柔軟な樹脂としては、下記の
塗膜ガーレー剛軟度が1000(mgf){N}以下の樹脂
が好ましく、700(mgf){N}以下の樹脂がより好ま
しく、500(mgf){N}以下の樹脂がさらに好まし
く、400(mgf){N}以下の樹脂が特に好ましい。具
体例としては塗膜ガーレー剛軟度が500(mgf){N}
以下の天然ゴム樹脂が挙げられる。塗膜ガーレー剛軟度
が1000(mgf){N}を超えると該樹脂は硬くなり吸
水性樹脂の吸水性、膨潤性を阻害し接着防止性を低下さ
せる。 (塗膜ガーレー剛軟度)塗膜ガーレー剛軟度は以下の方
法で測定し算出する。ガーレー剛軟度が250±50
(mgf){N}の厚み0.4〜0.5mmの不織布基材に
乾燥塗布量が250g/m2になる様に試料樹脂を塗布
する。この塗布された基材の柔軟度をJIS L109
6(一般織物試験方法)の6.20項、曲げ反ぱつ性
A法(ガーレー法)に基づいて測定し算出する。得られ
たガーレー剛軟度をその試料樹脂の塗膜ガーレー剛軟度
とする。
【0123】本発明の第三の接着防止材にかかる水硬性
組成物に関しては、上記の水硬性組成物に関する記載
(具体例、種類、圧縮強度等)と同じである。水硬性組
成物としてセメント、各種コンクリート、各種モルタ
ル、セメントミルク、ソイルセメント、埋め戻し土など
に使われるセメント成分を混合した流動化処理土、水ガ
ラスなどが挙げられる。
【0124】また、支持体に関しても、上記の支持体に
関する記載(具体例、種類、形状等)と同じである。支
持体としてH形鋼、I型鋼、鉄柱、コンクリート杭、ポ
ール、筒状のパイル(中空パイル)、長尺板状の杭であ
る鋼矢板(シートパイル)、波板、型枠、鉄筋篭、杭頭
処理用栓体などが挙げられる。
【0125】上記の水硬性組成物と支持体とは、接触し
硬化すると強固に接着し、支持体の引抜きまたは分離除
去は困難であった。しかしながら、本発明の第三の接着
防止材を水硬性組成物と支持体との両者の間に介在させ
ることで吸水性潤滑層と疎水性潤滑層の優れた潤滑性、
分離性により、両者の接着を防止することができ水硬性
組成物と支持体との引抜きまたは分離除去を容易にする
ことができる。
【0126】本発明にかかる吸水性潤滑層の主要な構成
材料となる吸水性潤滑層シートとしては、吸水重量にお
いて、脱イオン水中に重石を付けて1時間浸漬後に30
秒間風乾した後の重量が乾燥時の自重の2倍(g/g)
以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以
上、特に好ましくは20倍以上であり、自重の2倍以上
のものであれば特に制限はされない。吸水重量が自重の
2倍未満だと潤滑成分として働く水分または含水ゲルが
少ないために十分な潤滑及び分離効果が発現しない場合
がある。基本的に吸水重量(吸水倍率)は多いほど水硬
性組成物と支持体との接着を防止できる。
【0127】吸水性潤滑層となる吸水性潤滑層シートの
具体例としては、吸水重量が自重の2倍以上である、不
織布、織物、混紡織物、連続気泡が形成されてなる発泡
体、木材シート、紙シート、厚紙シート、合成紙等の多
孔性材料、吸水性繊維から作られた吸水性繊維シート、
または粒径の小さい吸水性樹脂とシート状基材とから少
なくとも構成される吸水性樹脂シート等である。これら
の吸水性潤滑層シートは、一種類のみを用いてもよく、
また、二種類以上を併用(複合)してもよい。上記材料
の中で、潤滑性能の観点から、吸水性繊維シートと吸水
性樹脂シートが好ましいが、吸水性樹脂を含む吸水性樹
脂シートがより好ましい。
【0128】吸水性樹脂シートは、疎水性樹脂の接合剤
や水溶性樹脂の接合剤、アルカリ水可溶性樹脂の接合
剤、天然又は合成のゴム系接合剤などの各種接合剤で吸
水性樹脂をシート状基材に付着させて作ることができる
が、吸水性樹脂を付着させる接合剤として好ましいもの
としては、吸水性樹脂の吸水膨潤性を阻害させない観点
から水溶性樹脂の接合剤やアルカリ水可溶性樹脂の接合
剤、下記の塗膜ガーレー剛軟度が1000(mgf){N}
以下、より好ましくは700(mgf){N}以下、さらに
好ましくは500(mgf){N}以下、特に好ましくは4
00(mgf){N}以下の柔軟な樹脂の接合剤が挙げられ
る。中でも、吸水性樹脂の脱落防止性も備えるアルカリ
水可溶性樹脂と塗膜ガーレー剛軟度が500(mgf)
{N}以下の疎水性樹脂が特に好ましい。具体例としては
塗膜ガーレー剛軟度が500(mgf){N}以下の天然ゴ
ム樹脂が挙げられる。塗膜ガーレー剛軟度が1000
(mgf){N}を超えると該樹脂は硬くなり吸水性樹脂の
吸水性、膨潤性を阻害し接着防止性を低下させる。
【0129】本発明にかかる吸水性樹脂シートを構成す
るシート状基材に関しては、上記のシート状基材の記載
(具体例、材質、種類、厚み、坪量、強度等)と同じで
ある。シート状基材として、各種の不織布や混紡織物等
の織物類などが挙げられる。
【0130】上記吸水性樹脂と複合化されたシート状基
材、つまり、接着防止材(被覆材)は、支持体(例:H
形鋼)を被覆することができる形状並びに大きさに形成
されていることがより好ましいが、後段にて詳述するよ
うに、支持体を挿入可能な袋状若しくは筒状に形成され
ていることが特に好ましい。接着防止材を袋状若しくは
筒状に形成することにより、大きくかつ重量物であるH
形鋼などの仮埋設物をより一層簡単にかつ迅速に被覆す
ることができるので、作業現場における作業性をより一
層向上させることができる。また、疎水性潤滑層の粘着
性を利用して支持体表面に貼り付けるためのシート状の
形状も好ましい。特に2枚の吸水性潤滑層シートの間に
疎水性潤滑層が形成された3層シートの形状が作業性、
安全性、廃材縮減(剥離材不要)の観点から好ましい。
【0131】吸水性潤滑層シートにおいて吸水性樹脂を
付着させる好適な接合剤であり、上記の好適な耐水性付
与剤となるアルカリ水可溶性樹脂は、中性ないし酸性を
呈する水には溶解せず、アルカリ水に溶解する樹脂であ
ればよく、特に限定されるものではないが、酸価が15
mgKOH/g以上であり、かつ、脱イオン水に対して
非膨潤性、即ち、自重に対する脱イオン水の吸水倍率が
2倍未満の樹脂が好適である。
【0132】該アルカリ水可溶性樹脂としては、例え
ば、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基等の置
換基を有する樹脂、フェノール性ヒドロキシル基を含む
ノボラック樹脂、および、ポリビニルフェノール樹脂が
より好ましく、α,β−不飽和カルボン酸系単量体とビ
ニル系単量体とを共重合して得られる樹脂が、アルカリ
水に対する溶解性、および経済性により優れると共に、
シート状基材表面に形成される吸水性樹脂とアルカリ水
可溶性樹脂との樹脂層の各種物性により優れるので、特
に好ましい。また、カルボン酸基を有する樹脂である、
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒド
ロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネー
ト、セルロースアセテートヘキサヒドロフタレート、ヒ
ドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレー
ト、ヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロ
フタレート等のセルロース誘導体を、アルカリ水可溶性
樹脂として用いることもできる。
【0133】α,β−不飽和カルボン酸系単量体として
は、具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等
のα,β−不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイ
ン酸、フマル酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸;無水
マレイン酸、無水イタコン酸等のα,β−不飽和ジカル
ボン酸無水物;マレイン酸モノエステル、フマル酸モノ
エステル、イタコン酸モノエステル等のα,β−不飽和
ジカルボン酸モノエステル;等が挙げられるが、特に限
定されるものではない。これらα,β−不飽和カルボン
酸系単量体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種
類以上を併用してもよい。上記例示のα,β−不飽和カ
ルボン酸系単量体のうち、アクリル酸、メタクリル酸
が、シート状基材表面に形成される吸水性樹脂とアルカ
リ水可溶性樹脂との樹脂層の柔軟性および靱性により優
れるので、さらに好ましい。
【0134】ビニル系単量体としては、具体的には、例
えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル
酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ステアリ
ル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタク
リル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ス
テアリル等の、炭素数1〜18の一価アルコールと(メ
タ)アクリル酸とのエステル;アクリロニトリル、メタ
クリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体;ア
クリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニ
ル系単量体;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル
酸ヒドロキシプロピル等の水酸基含有ビニル系単量体;
メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有ビニル系単
量体;アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛等の、α,β
−不飽和カルボン酸の金属塩;スチレン、α−メチルス
チレン等の芳香族ビニル系単量体;酢酸ビニル等の脂肪
族ビニル系単量体;塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビ
ニル、塩化ビニリデン等のハロゲン基含有ビニル系単量
体;アリルエーテル類;無水マレイン酸、マレイン酸モ
ノアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等
のマレイン酸誘導体;フマル酸モノアルキルエステル、
フマル酸ジアルキルエステル等のフマル酸誘導体;マレ
イミド、N−メチルマレイミド、N−ステアリルマレイ
ミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマ
レイミド等のマレイミド誘導体;イタコン酸モノアルキ
ルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、イタコン
アミド類、イタコンイミド類、イタコンアミドエステル
類等のイタコン酸誘導体;エチレン、プロピレン等のア
ルケン類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;等が
挙げられるが、特に限定されるものではない。これらビ
ニル系単量体は、一種類のみを用いてもよく、また、二
種類以上を併用してもよい。
【0135】上記例示のビニル系単量体のうち、アクリ
ル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル
が、シート状基材表面に形成される樹脂層の柔軟性、耐
候性および靱性により優れるので、さらに好ましい。ま
た、ビニル系単量体に占める(メタ)アクリル酸アルキ
ルエステルの割合を30重量%以上にすることにより、
上記樹脂層の柔軟性、耐候性および靱性がより一層向上
するので、特に好ましい。さらに、(メタ)アクリル酸
アルキルエステルが、炭素数1〜18の一価アルコール
と(メタ)アクリル酸とのエステルである場合には、上
記樹脂層の柔軟性、耐候性および靱性が特に向上するの
で、最も好ましい。
【0136】また、α,β−不飽和カルボン酸系単量体
およびビニル系単量体の合計量に占めるα,β−不飽和
カルボン酸系単量体の割合は、9重量%以上であること
がより好ましく、9重量%〜40重量%の範囲内がさら
に好ましい。α,β−不飽和カルボン酸系単量体の割合
を9重量%以上にすることにより、アルカリ水に対する
溶解性により一層優れたアルカリ水可溶性樹脂を得るこ
とができる。そして、α,β−不飽和カルボン酸系単量
体の割合を9重量%〜40重量%の範囲内にすることに
より、アルカリ水に対する溶解性と共に、柔軟性や耐候
性、靱性に特に優れたアルカリ水可溶性樹脂を得ること
ができる。
【0137】上記のα,β−不飽和カルボン酸系単量体
とビニル系単量体とを共重合することにより、アルカリ
水可溶性樹脂が得られる。共重合方法、つまり、アルカ
リ水可溶性樹脂の製造方法は、特に限定されるものでは
ない。また、アルカリ水可溶性樹脂の平均分子量は、水
硬性組成物の組成やアルカリ水のpH、作業環境等に応
じて設定すればよく、特に限定されるものではない。本
発明にかかるアルカリ水可溶性樹脂は、アルカリ水に対
する溶解性に優れているので、例えば吸水性樹脂を混合
する場合においては、吸水性樹脂が水を吸水して膨潤す
る際の体積膨張を阻害するおそれが無い。従って、吸水
性樹脂は、その吸水特性(性能)を充分に発揮すること
ができる。
【0138】本発明にかかるアルカリ水可溶性樹脂の酸
価は、15mgKOH/g以上であることが好ましい。
30mgKOH/g以上であることがより好ましく、5
0mgKOH/g以上であることがさらに好ましく、7
0mgKOH/g以上であることが特に好ましく、70
mgKOH/g〜500mgKOH/gの範囲内である
ことが最も好ましい。アルカリ水可溶性樹脂の酸価が1
5mgKOH/g未満である場合には、アルカリ水に対
する溶解性が乏しくなるので、支持体を引き抜く作業を
容易に行うことができなくなる(引き抜き性が低下す
る)おそれがある。また、アルカリ水可溶性樹脂の酸価
が500mgKOH/gを越える場合には、該アルカリ
水可溶性樹脂の耐水性が低下するので、シート状基材表
面に形成される樹脂層が、雨等の中性域または酸性域の
pHを示す水と接触すると、アルカリ水可溶性樹脂の溶
解または吸水性樹脂の膨潤が起こり損傷するおそれがあ
る。このため、接着防止材(被覆材)を被覆する作業や
支持体を埋設する作業に支障をきたすおそれがあると共
に、支持体の引き抜き性に悪影響を及ぼすおそれがあ
る。また、作業現場の温度変化によって該樹脂層がシー
ト状基材から剥離したり、べとついたりし易くなるおそ
れがある。尚、酸価の測定方法は、特に限定されるもの
ではない。
【0139】本発明にかかるアルカリ水可溶性樹脂は、
示差走査熱量測定(DSC (differential scanning ca
lorimetry))によって得られるDSC微分曲線のピーク
トップ(DSC曲線の変曲点)、つまり、ガラス転移温
度を、−80℃〜120℃の範囲内に1つ、より好まし
くは2つ以上有している。そして、アルカリ水可溶性樹
脂は、−30℃〜20℃の範囲内に低温側のガラス転移
温度を有する一方、40℃〜100℃の範囲内に高温側
のガラス転移温度を有していることがさらに好ましい。
尚、ガラス転移温度の測定方法、即ち、示差走査熱量測
定の測定条件は、特に限定されるものではない。低温側
のガラス転移温度が−30℃〜20℃の範囲内に存在す
ることにより、例えば冬季等、作業現場が低温であって
も上記樹脂層がシート状基材から剥離するおそれがなく
なる。また、高温側のガラス転移温度が40℃〜100
℃の範囲内に存在することにより、例えば夏期等、作業
現場が高温であっても上記樹脂層がべとつくおそれがな
くなる。従って、アルカリ水可溶性樹脂が、−30℃〜
20℃の範囲内に低温側のガラス転移温度を有する一
方、40℃〜100℃の範囲内に高温側のガラス転移温
度を有している場合には、作業現場の温度変化に左右さ
れない安定な樹脂層、即ち、剥離し難く、べとつき難い
樹脂層を形成することができる。
【0140】本発明の第三の接着防止材の吸水性潤滑層
においては、アルカリ水可溶性樹脂と吸水性樹脂とを併
用することが、最も好ましい実施の形態である。該吸水
性樹脂に関しては、上記した吸水性樹脂に関する記載
(具体例、種類、粒子径等)と同じである。例えば、ポ
リ(メタ)アクリル酸架橋体、ポリ(メタ)アクリル酸
塩架橋体、スルホン酸基を有するポリ(メタ)アクリル
酸エステル架橋体、ポリオキシアルキレン基を有するポ
リ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリ(メタ)ア
クリルアミド架橋体、(メタ)アクリル酸塩と(メタ)
アクリルアミドとの共重合架橋体、(メタ)アクリル酸
ヒドロキシアルキルと(メタ)アクリル酸塩との共重合
架橋体などが挙げられる。
【0141】シート状基材の表面にアルカリ水可溶性樹
脂を接合剤として吸水性樹脂を付着させて、アルカリ水
可溶性樹脂と吸水性樹脂とからなる樹脂層を形成させた
場合の様に、該樹脂層が吸水性樹脂を含む場合には、シ
ート状基材と水硬性組成物の硬化物との間に、水を吸水
して膨潤した含水ゲル層が形成される。この吸水性潤滑
層の吸水性樹脂とアルカリ水可溶性樹脂からなる樹脂層
を支持体と水硬性組成物の間に配置させると、支持体
(仮埋設物)と水硬性組成物の硬化物との間に、膨潤し
た吸水膨潤した含水ゲル層を形成することができるの
で、両者の接着をより一層抑制することができる。これ
により、支持体(仮埋設物)を水硬性組成物の硬化物か
ら引き抜く際には、膨潤したゲル層が潤滑効果を発揮す
ることによって、該支持体(仮埋設物)が滑り易くな
る。従って、支持体(仮埋設物)を水硬性組成物の硬化
物から引き抜く作業における労力(引張力)をより一層
低減することができるので、該作業の作業性を向上させ
ることができる。さらに、該ゲル層を乾燥させることに
より、支持体(仮埋設物)と水硬性組成物の硬化物との
間に僅かな隙間を形成することができるので、上記作業
の作業性をさらに一層向上させることができる。
【0142】アルカリ水可溶性樹脂と吸水性樹脂とを併
用(混合)する場合における両者の割合、即ち、樹脂層
におけるアルカリ水可溶性樹脂と吸水性樹脂との割合
は、両者の組成や組み合わせ、作業環境等に応じて設定
すればよく、特に限定されるものではないが、吸水性樹
脂の吸水膨潤性と付着性(非脱落性)の両者を満足させ
る観点から、重量比で1/99〜99/1の範囲内がよ
り好ましく、10/90〜90/10の範囲内がさらに
好ましく、25/75〜75/25の範囲内が特に好ま
しい。
【0143】また、シート状基材に対する樹脂層の割
合、即ち、シート状基材の単位面積当たりに対するアル
カリ水可溶性樹脂および吸水性樹脂の付着量は、両者の
組成や組み合わせ、作業環境等に応じて設定すればよ
く、特に限定されるものではないが、上記接着防止性と
シート基材への塗布生産性の両者を満足させる観点か
ら、1g/m2 〜10,000g/m2 の範囲内がより
好ましく、10g/m2 〜1,000g/m2 の範囲内
がさらに好ましく、20g/m2 〜500g/m2 の範
囲内が特に好ましい。尚、シート状基材100重量部に
対するアルカリ水可溶性樹脂および吸水性樹脂の割合
は、上記接着防止性とシート基材への塗布生産性の両者
を満足させる観点から、1重量部〜10,000重量部
の範囲内がより好ましく、10重量部〜1,000重量
部の範囲内がさらに好ましく、20重量部〜500重量
部の範囲内が特に好ましい。
【0144】シート状基材表面に樹脂層を形成する方法
は、特に限定されるものではないが、具体的には、例え
ば、アルカリ水可溶性樹脂と吸水性樹脂とを併用する場
合においては、両者を有機溶剤や水等の分散媒に分散
(または溶解)してなる分散液(樹脂溶液)をシート状
基材表面に、噴霧(スプレー)する方法;樹脂分散液を
刷毛塗り、またはローラを用いて塗布する方法;シート
状基材に樹脂分散液を含浸させる方法;等を採用すれば
よい。或いは、アルカリ水可溶性樹脂を含む溶液または
分散液をシート状基材表面に噴霧または塗布した後、該
表面に吸水性樹脂を均一に撒布し、さらにこの上に該溶
液または分散液を噴霧または塗布する方法;等を採用す
ることもできる。上記例示の方法のうち、アルカリ水可
溶性樹脂と吸水性樹脂とを有機溶剤や水等の分散媒に分
散(または溶解)してなる分散液(樹脂溶液)をシート
状基材表面に、噴霧(スプレー)または塗布する方法
が、作業上並びに製造上、容易であるので、より好まし
く、特に上下のローラーのクリアランス調整で付着量を
コントロールしながら連続的に塗布加工する方法が特に
好ましい。シート状基材に塗布された該分散液等は、必
要に応じて乾燥させればよい。これにより、シート状基
材表面(外面および/または内面)に樹脂層が形成され
る。尚、吸水性樹脂を用いない場合には、上記方法にお
いて吸水性樹脂を分散する工程や、吸水性樹脂を撒布す
る工程を省略すればよい。
【0145】そして、接着防止材においては、支持体
(仮埋設物)を被覆した状態において外側となる面に、
上記樹脂層が形成されていることがより好ましい。つま
り、水硬性組成物層の側に吸水性潤滑層が配される様に
することが特に好ましい。また、支持体側に疎水性潤滑
層が配される様にすることが特に好ましい。このように
水硬性組成物層の側に吸水性潤滑層が配置され、支持体
表面側に疎水性潤滑層が配置されることにより、吸水剤
を含む吸水性潤滑層は水硬性組成物の液を十分に吸水し
膨潤することができ、より一層上記の接着防止効果を発
現することができる。また、粘着性を有する半固形状の
疎水性潤滑剤を含む疎水性潤滑層は支持体表面に吸水性
潤滑層と共に密着することから、建て込みの施工性の向
上と、接着防止材(被覆材)の破損による接着防止性の
低下を防ぐことができる。また、吸水性潤滑層と疎水性
潤滑層との潤滑層能が相乗的に働き、支持体(仮埋設
物)を引き抜く作業をより一層容易に行うことができ
る。また、支持体と吸水性潤滑層との間に疎水性潤滑層
が配置するので、例えば、アルカリ水に溶解したアルカ
リ水可溶性樹脂(吸水性潤滑層の接合剤)が支持体(仮
埋設物)表面に付着することが少なくなるので、引き抜
いた支持体(仮埋設物)の表面を、綺麗な状態に保つこ
とができる。支持体のリサイクルを可能にする。また、
吸水性潤滑層の吸水剤や接合剤樹脂を省いたシート状基
材と、疎水性潤滑剤を含む疎水性潤滑層とを有した接着
防止材を使用する場合は、水硬性組成物層の側にシート
状基材層が配置され、支持体表面側に疎水性潤滑層が配
置されることにより、該接着防止材は支持体表面に密着
することから、建て込みの施工性の向上と、接着防止材
(被覆材)の破損による接着防止性の低下を防ぐことが
できる。
【0146】アルカリ水可溶性樹脂と吸水性樹脂とを含
む樹脂分散液の調製方法は、特に限定されるものではな
い。また、上記有機溶剤としては、具体的には、例え
ば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピ
ルアルコール、ベンゼン、トルエン、アセトン、メチル
エチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル;エチレングリ
コール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチ
レングリコールモノメチルエーテルアセテート、ポリプ
ロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等
の、多価アルコールおよびその誘導体;等が挙げられる
が、特に限定されるものではない。樹脂層の膜厚は、1
0μm程度あれば充分であるが、吸水性樹脂の粒子径等
に応じて設定すればよく、特に限定されるものではな
い。
【0147】上記樹脂層におけるアルカリ水可溶性樹脂
は、雨等の中性域または酸性域のpHを示す水と接触し
ても容易に溶解しない。つまり、アルカリ水可溶性樹脂
は耐水性に優れており、中性域または酸性域のpHを示
す水と接触しても損傷しない。従って、作業中に降雨等
があっても、性能を損なうことがない。また、構造体を
施工する際においては、作業現場で支持体(仮埋設物)
を接着防止材で被覆することができるが、例えば、支持
体(仮埋設物)を接着防止材(被覆材)で予め被覆して
おき、該被覆された支持体(仮埋設物)を作業現場に野
積みすることもできる。つまり、作業現場の状況に応じ
て、適宜、作業の簡便化、合理化を図ることができるの
で、構造体を迅速に施工することができる。さらに、必
要に応じて、上記樹脂層の表面に、耐水性付与剤からな
る耐水性被膜を形成(いわゆるトップコート)してもよ
い。該耐水性付与剤としては、例えば、ワックス、フッ
素系樹脂、シリコーン系樹脂、上記アルカリ水可溶性樹
脂等が挙げられる。上記樹脂層(吸水性潤滑層)の表面
に耐水性被膜を形成させる方法としては、例えば、吸水
性潤滑層シート即ち吸水性樹脂が付着したシート状基材
を上記アルカリ水可溶性樹脂溶液に短時間浸漬し引き上
げて余分なアルカリ水可溶性樹脂溶液を除去し乾燥する
方法や吸水性潤滑層シートの吸水性樹脂層の表層に上記
アルカリ水可溶性樹脂溶液を塗布加工し乾燥する方法な
どが挙げられる。接着防止材を被覆した支持体は、しば
しば一晩中放置されるが、その放置中に雨に降られると
施工前に接着防止材が吸水膨潤して使用できなくなる場
合がある。耐水性被膜を形成することで、この接着防止
材の事前の吸水膨潤を防止することがさらに確実に出来
ることから、耐水性被膜を形成することがさらに好まし
い。
【0148】一方、アルカリ水可溶性樹脂は、アルカリ
水と接触すると溶解する。つまり、樹脂層は、水硬性組
成物と接触したときにアルカリ水可溶性樹脂が溶解を開
始し、水硬性組成物と接着防止材との間に、例えば、膨
潤した吸水性樹脂のゲル層を形成するようになってい
る。従って、支持体(仮埋設物)を水硬性組成物の硬化
物から引き抜く作業の作業性を改善することができる。
【0149】上記の様に、少なくとも、アルカリ水可溶
性樹脂と吸水性樹脂とを混合して得られる上記の樹脂分
散液(塗布材料)を、シート状基材に塗布することによ
り接着防止性に優れた吸水性潤滑層シートが得られる
が、このアルカリ水可溶性樹脂と吸水性樹脂とを混合し
て得られる樹脂分散液は、吸水性潤滑層形成塗料として
も使用される。本発明において、吸水性潤滑層形成塗料
としては少なくとも吸水性樹脂を含んでいれば特に限定
されないが、少なくとも、アルカリ水可溶性樹脂と吸水
性樹脂とを含む吸水性潤滑層形成塗料が接着防止性の観
点から特に好ましい。吸水性潤滑層形成塗料は、シート
状の吸水性潤滑層シートでは被覆し難い、凹凸のある箇
所や狭い隙間の被覆(塗布)に有効である。
【0150】アルカリ水可溶性樹脂は、吸水性樹脂を支
持体表面やシート状基材表面に付着させて吸水性潤滑層
を形成させる接合材料として最適であるが、もう一つの
最適な接合剤として塗膜剛軟度が1000(mgf){N}
以下、好ましくは700(mgf){N}以下、より好まし
くは500(mgf){N}以下、さらに好ましくは400
(mgf){N}以下の樹脂が挙げられる。塗膜ガーレー剛
軟度が1000(mgf){N}以下の樹脂は優れた柔軟、
伸縮性によって吸水性樹脂の吸水膨潤を阻害しない特徴
を有しており、塗膜ガーレー剛軟度が1000(mgf)
{N}以下の疎水性樹脂は吸水性樹脂の脱落も抑制するこ
とができる。各種の塗膜ガーレー剛軟度が1000(m
gf){N}以下の樹脂の中でも塗膜ガーレー剛軟度が5
00(mgf){N}以下の天然ゴム樹脂が接合性能、接着
防止性、経済性、吸水性樹脂の脱落抑制等の観点から好
ましい。特に好ましい接着防止材は、少なくとも、塗膜
ガーレー剛軟度が1000(mgf){N}以下の樹脂を含
む接合剤と吸水性樹脂とを含む接着防止材である。接着
防止材の形態は、シート状と塗布型(液状)などの形態
がある。塗膜ガーレー剛軟度が1000(mgf){N}以
下の樹脂の塗布方法、塗布量、配合量などの諸条件は基
本的に上記アルカリ水可溶性樹脂の条件と同じである。
【0151】また、上記アルカリ水可溶性樹脂(前者)
と塗膜ガーレー剛軟度が1000(mgf){N}以下の樹
脂(後者)とを混合または積層して使用しても良い。そ
の混合または積層する場合の乾燥重量比は、前者重量:
後者重量=1:99〜99:1で好ましくは2:70〜
98:30重量比の範囲である。さらに、後者重量に対
して、前者重量が5〜50重量%を積層(後者樹脂の表
面に前者樹脂をトップコート)することが接着防止性、
雨対策等の観点から特に好ましい。また、重合組成を調
製して、塗膜ガーレー剛軟度が1000(mgf){N}以
下のアルカリ水可溶性樹脂を製造し、この柔軟なアルカ
リ水可溶性樹脂を使用することも好ましい。
【0152】本発明の第三の接着防止材にかかる疎水性
潤滑層は、少なくとも疎水性潤滑剤を含んだ潤滑層であ
れば特に制限はされない。
【0153】該疎水性潤滑剤は、上記した疎水性潤滑剤
と同様であり、支持体(仮埋設物)を水硬性組成物の硬
化物から引き抜くまたは分離する際に潤滑効果を発揮す
ることができるものであればよく、特に制限されるもの
ではない。
【0154】該疎水性潤滑剤としては、具体的には、例
えば、ワックス、グリース、タール、アスファルト、油
脂・油剤等が挙げられる。
【0155】ワックスは、水に不溶性の1価または2価
の高級アルコール類と脂肪酸とのエステルであると化学
的に定義されるが、具体的には、例えば、木ろう、綿ろ
う等の植物ろう;マッコウ鯨油、ミツろう、羊毛ろう等
の動物ろう;ツチ油、モンタンろう、オゾケライト、石
油ワックス、パラフィンろう、微晶ろう、ペトロラタ
ム;等の液体状または半固形状、固体状の各種ろうが挙
げられるが、特に限定されるものではない。上記例示の
ワックスのうち、半固形状のワックスが、潤滑性、塗布
加工性、支持体と接着防止材との密着性(粘着性)の観
点から、より優れているので好ましい。さらに、半固形
状の石油ワックスが特に好ましい。
【0156】また、半固形状のワックスは、一般に鉱油
を配合して得られるが、ワックスと鉱油との重量配合比
がワックス:鉱油=40:60から60:40までの範
囲つまり、ワックスが40重量%を超え、60重量%未
満のものが、潤滑性、塗布加工性、支持体と接着防止材
との密着性(粘着性)の観点から特に好ましい。ワック
スの重量%が40重量%以下であると、30℃付近の常
温において粘性が低下し液状に近づき(流動化)密着力
が弱くなったり、塗布加工時に液ダレの問題が生じる場
合がある。また、60重量%以上であると、5℃以下の
低温環境下において、固くなり接着防止材の支持体への
被覆に支障をきたしたり、密着性が低下する場合があ
る。
【0157】また、上記ワックスには鉱油の他にポリブ
タジエンやポリエチレンなどの各種添加剤を添加しても
良く、例えば、ワックスと鉱油を合わせた全量に対して
1重量%から20重量%の範囲で添加することで密着力
向上などの性質の改善を行なうことができる。
【0158】グリースは、鉱油に脂肪酸金属塩を混和し
て得られる半固形状の潤滑剤であるが、具体的には、例
えば、鉱油やシリコーン油(シリコーングリース)、ジ
エステル油系などの基油に、脂肪酸カルシウム塩や脂肪
酸ナトリウム塩、脂肪酸リチウム塩等の脂肪酸塩からな
る金属セッケン、ベントナイト系、シリカゲル系、銅フ
タロシアニン系、アリル尿素系などの増稠剤を混和して
なるものが挙げられる。グリースは特に限定されるもの
ではないが、30℃付近の常温において流動化せず、か
つ、5℃以下の低温環境下においても、接着防止材の支
持体への被覆に支障をきたさない固さ(柔かさ)の範囲
のものが好ましい。
【0159】タールとしては、具体的には、例えば、木
タール、コールタール等が挙げられる。タールは、特に
限定されるものではないが、30℃付近の常温において
流動化せず、かつ、5℃以下の低温環境下においても、
接着防止材の支持体への被覆に支障をきたさない固さ
(柔かさ)の範囲のものが好ましい。
【0160】油脂・油剤としては、具体的には、例え
ば、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸等の脂肪酸
類;合成グリセリン、ポリグリセリン等の誘導体;分岐
高級アルコール等の高級アルコール類;大豆油、アマニ
油、ナタネ油、ヒマシ油、牛油、ラノリン、マーガリ
ン、重油;等が挙げられる。油脂・油剤は、特に限定さ
れるものではないが、30℃付近の常温において流動化
せず、かつ、5℃以下の低温環境下においても、接着防
止材の支持体への被覆に支障をきたさない固さ(柔か
さ)の範囲のものが好ましい。
【0161】これら潤滑剤は、一種類のみを用いてもよ
く、また、二種類以上を併用してもよい。上記例示の潤
滑剤のうち、半固形状のワックスおよびグリースが、潤
滑効果に、より一層優れており、かつ、揮発成分の含有
量が少ないので、より好ましい。さらに、半固形状のワ
ックスは、溶融塗布加工が可能であり、耐久性(経時安
定性)に優れており特に好ましい。
【0162】尚、半固形状とは混和ちょう度が3から3
85である状態で、好ましい疎水性潤滑剤としては、混
和ちょう度が3から385であり、より好ましくは5か
ら250であり、さらに好ましくは10から170であ
る疎水性半固形状潤滑剤である。混和ちょう度が3未満
だと潤滑性が低下し鋼材に対する粘着力も低下し脱落が
起こり易くなる。さらに溶融に時間がかかり溶融塗布が
煩雑になるという問題が生じる。また、混和ちょう度が
385を超えると液ダレが生じ周辺を汚染し粘着力も低
下する問題が生じる。尚、混和ちょう度はJIS K2
560の試験方法により求められる。
【0163】また、疎水性潤滑層中には、他の潤滑剤や
界面活性剤などを含有させることもできる。この場合、
例えば、支持体(仮埋設物)の引き抜き性をさらに向上
させることができる。
【0164】そして、疎水性潤滑剤層は、上記潤滑剤に
加えて、必要に応じて、該潤滑剤の潤滑性を阻害しない
程度で以て、例えば、防錆剤や酸化防止剤等の各種添加
剤を含んでいてもよい。
【0165】吸水性潤滑層シート裏面および/またはシ
ート状基材表面に疎水性潤滑層を形成する方法は、特に
限定されるものではないが、具体的には、例えば、加熱
溶融した液(加熱溶融液)または疎水性潤滑剤等を有機
溶剤等の分散媒に分散してなる分散液(疎水性潤滑剤の
分散溶液)を、吸水性潤滑層シート裏面および/または
シート状基材表面に噴霧(スプレー)する方法;疎水性
潤滑剤の加熱溶融液または疎水性潤滑剤の分散溶液を刷
毛塗り又はローラを用いて塗布する方法;吸水性潤滑層
シートまたはシート状基材に加熱溶融液または分散溶液
を含浸させる方法;等を採用すればよい。上記方法の中
で、加熱溶融した疎水性潤滑剤を上下のローラーのクリ
アランス調整で付着量をコントロールしながら連続的に
塗布加工するという、ローラーを用いた方法が塗布加工
性、生産性、製品精度に優れるので特に好ましい。
【0166】疎水性潤滑剤の分散溶液を用いる場合の分
散溶液の調製方法は、特に限定されるものではない。ま
た、上記有機溶剤としては、具体的には、例えば、メチ
ルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコ
ール、ベンゼン、トルエン、アセトン、メチルエチルケ
トン、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられるが、特に
限定されるものではない。
【0167】潤滑剤層の膜厚は、1μmから10,00
0μmの範囲が好ましく、10μmから5,000μm
の範囲がより好ましく、100μmから2,000μm
の範囲がさらに好ましい、300μmから1,000μ
mの範囲が特に好ましい。膜厚が10μm未満だと、水
硬性組成物の硬化物と支持体との分離性、潤滑性が低下
し、接着防止材の支持体への密着性も低下するので好ま
しくない。一方膜厚が10000μmを超えると、得ら
れる接着防止材の重量や嵩が増大し取り扱い性や製造時
の加工性が低下するので好ましくない。
【0168】本発明にかかる疎水性潤滑層は、i)吸水性
潤滑層の裏面(吸水性樹脂が付着していない面)および
/または表面(吸水性樹脂が付着している面)、ii) 上
記したシート状基材と同じ基材の表面および/または裏
面となる面、iii)支持体表面からなる群より選ばれる
少なくとも一つの面に塗布などにより形成される。
【0169】このうち、例えば、支持体(仮埋設物)と
水硬性組成物との接着防止性(引き抜き作業の容易性)
や、作業性、塗布加工の生産性、経済性(作業にかかる
費用)などから鑑みて、疎水性潤滑層は、吸水性潤滑層
シートの裏面(吸水性樹脂が付着していない面)に形成
させることが、より好ましい。
【0170】吸水性潤滑層シート、シート状基材または
支持体(仮埋設物)に対する疎水性潤滑剤の付着量、即
ち、単位面積当たりに対する該潤滑剤の付着量は、吸水
性潤滑層シート、シート状基材、支持体(仮埋設物)の
表面の状態(凹凸等)、両者の組成や組み合わせ、作業
環境等に応じて設定すればよく、特に限定されるもので
はないが、上記塗布加工性と上記密着性の両者を満足さ
せる観点から、1g/m2 〜10,000g/m2 の範
囲内が好ましく、10g/m2 〜5,000g/m2
範囲内がより好ましく、100g/m2 〜2,000g
/m2 の範囲内がさらに好ましく、300g/m2
1,000g/m2 の範囲内が特に好ましい。
【0171】尚、シート状基材100重量部に対する潤
滑剤の割合は、上記塗布加工性と上記密着性の両者を満
足させる観点から、1重量部〜10,000重量部の範
囲内がより好ましく、10重量部〜2,000重量部の
範囲内がさらに好ましく、20重量部〜1,000重量
部の範囲内が特に好ましい。
【0172】本発明の第三の接着防止材は、上記したよ
うに i)吸水性潤滑層となる吸水性潤滑層シートの少な
くとも片面に疎水性潤滑層となる疎水性潤滑剤を塗布な
どにより形成させたもの、ii)シート状基材の少なくと
も片面に疎水性潤滑剤を形成させた疎水性潤滑層シート
と吸水性潤滑層シートを複合化したもの、iii)支持体
表面に直接、疎水性潤滑剤及び吸水性潤滑層シートを交
互に積層形成させたもの、などが好ましい形態として挙
げられる。
【0173】しかしながら、1)水硬性組成物と支持体
との接着防止性(引抜き・分離性、安全性、支持体密着
性)、2)支持体への被覆作業及び建て込み作業の簡便
化、3)接着防止材の製造加工性、4)経済性、などを
鑑みた結果、吸水性潤滑層シートの吸水性樹脂が付着し
ていない裏面に疎水性潤滑剤を形成させた接着防止材が
特に好ましい。
【0174】支持体(仮埋設物)を接着防止材(被覆
材)で被覆する際には、一つの支持体(仮埋設物)に対
して一つの接着防止材(被覆材)を用いることが望まし
いが、必要に応じて、一つの支持体(仮埋設物)に対し
て二つ以上の接着防止材(被覆)を用いることもでき
る。従って、支持体(仮埋設物)を接着防止材(被覆
材)で被覆する方法として、例えば、支持体(仮埋設
物)をシート状に形成された二枚の接着防止材(被覆
材)で貼り付ける方法等を採用することもできる。
【0175】尚、本発明において「被覆」とは、必ずし
も被覆材で支持体(仮埋設物)が見えなくなるように覆
い隠すことではなく、例えば、支持体(仮埋設物)を水
硬性組成物の硬化物から容易に引き抜くことができる程
度に、つまり、両者の接着を抑制することができる程度
に、支持体(仮埋設物)を接着防止材(被覆材)で覆う
ことを示している。
【0176】支持体(仮埋設物)を接着防止材(被覆
材)で被覆する方法としては、具体的には、例えば、縫
製加工などにより袋状若しくは筒状に形成された接着防
止材(被覆材)を、支持体(仮埋設物)の下部からを履
かせ吊り上げて被覆する方法;袋状若しくは筒状に形成
された接着防止材(被覆材)を支持体(仮埋設物)上部
から被せる方法;支持体(仮埋設物)をシート状に形成
された接着防止材(被覆材)で包み込む方法;支持体
(仮埋設物)に接着防止材(被覆材)を合わせ、挟み付
けるものやバンドなどの固定治具等を用いて固定する方
法;接着防止材(被覆材)の疎水性潤滑剤を含む上記混
合物層の密着性(粘着性)を利用してシート状の接着防
止材を貼り付ける方法;支持体表面に直接、上記混合物
を塗布する方法;接着防止材(被覆材)の疎水性潤滑層
の密着性(粘着性)を利用してシート状の接着防止材を
貼り付ける方法;支持体表面に直接、疎水性潤滑剤を塗
布することや、疎水性潤滑層シートの貼り合わせること
などにより疎水性潤滑層を形成させた後に、吸水性樹脂
などの吸水剤とアルカリ水可溶性樹脂や天然ゴムなどの
接合剤とを含む液状組成物を疎水性潤滑層の上から塗布
することや、吸水性潤滑層シートを疎水性潤滑層の上か
ら貼り合わせることにより吸水性潤滑層を形成させる方
法;支持体表面に直接、吸水剤と接合剤とを含む液状組
成物を塗布することや吸水性潤滑層シートを貼り合わせ
ることなどにより吸水性潤滑層を形成させた後に、吸水
性潤滑層の上から疎水性潤滑剤を塗布することや、疎水
性潤滑層シートを貼り合わることなどにより疎水性潤滑
層を形成させる方法等を採用することができるが、特に
限定されるものではない。
【0177】また、支持体(仮埋設物)を接着防止材
(被覆材)で被覆する際には、支持体(仮埋設物)の形
状に沿うようにして接着防止材(被覆材)を被覆させる
ことがより好ましい。これにより、被覆した支持体を建
て込む(埋設する)際の位置決め精度(打ち込み精度)
がより向上する。 例えば、袋状若しくは筒状に形成さ
れた接着防止材(被覆材)を、支持体(仮埋設物)の下
端から履かせて吊り上げ、接着防止材の袋若しくは筒の
内面に形成している混合物層中の疎水性潤滑剤の密着性
(粘着性)を利用して支持体の形状に沿って接着防止材
を密着させる方法または、袋状若しくは筒状に形成され
た接着防止材(被覆材)を支持体(仮埋設物)の下端か
ら履かせて吊り上げ、接着防止材の袋若しくは筒の内面
に形成している疎水性潤滑層の密着性(粘着性)を利用
して支持体の形状に沿って接着防止材を密着させる方法
が、より作業を簡便にかつ正確に行なう観点から好まし
い。
【0178】この方法において、具体例としては、クレ
ーンなどで吊り上げた支持体の下部から、内面に吸水性
樹脂と粘着性半固形状潤滑剤(グリース状ワックス)と
の混合物または粘着性半固形状潤滑剤のみが塗られた袋
状若しくは筒状の接着防止材を履かせ(靴下を履かせる
要領)、さらに該接着防止材を吊り上げて支持体全体を
被覆し、次に一旦該支持体を寝かせて自動または手動の
ローラーを用いたり足で踏みつけて該接着防止材を支持
体表面に疎水性潤滑剤成分の密着性(粘着性)を利用し
て密着させる方法が、より好ましい方法として挙げられ
る。該接着防止材を支持体表面に密着させる方法として
は、足の底(踏み付け)や足のインサイド面またはアウ
トサイド面で擦り付ける方法が作業性の観点から特に好
ましい。
【0179】また、該支持体を吊り下げた状態のまま
で、自動または手動の専用ローラー治具で該接着防止材
を密着させても良い。
【0180】また、建て込みと同時に手作業または、自
動または手動の専用ローラー治具を使って該接着防止材
を密着させる方法(支持体に密着させながら打ち込む方
法)も好ましい。
【0181】また、ローラーなどを用いて人為的に密着
させるのではなく、建て込み時などにおいて水硬性組成
物の水圧で自然に密着させることもできる。
【0182】尚、接着防止材(被覆材)を袋状若しくは
筒状に形成する方法としては、具体的には、例えば、2
つに接着防止材を合わせてその端部を接着剤を用いて接
着する方法;ヒートシールによって、その端部を融着さ
せる方法;その端部を縫い合わせる方法;針金や紐等で
縛る方法、等の種々の方法を採用することができる。こ
のように特に限定されるものではないが、製品の強度の
観点から縫い合せる縫製加工が特に好ましい。
【0183】また、本発明の接着防止材の好ましい形態
としては、上記したように、シート状基材の表面または
裏面に吸水剤と疎水性潤滑剤とを含む混合物層を形成さ
せたシート状の接着防止材、または吸水性潤滑層シート
の吸水性樹脂が付着していない裏面に疎水性潤滑剤を形
成させた接着防止材である。(図5)尚、密着性、接着
防止性の観点から、該混合物層は耐水性付与剤が付着し
ていない面に塗布などにより形成させることが好まし
い。
【0184】また、この2つの接着防止材の上記混合物
層または疎水性潤滑層が形成された面どうしを合わせた
3層の接着防止材(シート状基材または吸水性潤滑層/
上記混合物層または疎水性潤滑層/シート状基材または
吸水性潤滑層)が特に好ましい形態である(図6)。単
に裏面に該混合物層が形成した接着防止材製品は、該混
合物層の疎水性潤滑剤成分や疎水性潤滑層のべとつき
(粘着性)が製造、保管、輸送、作業時で問題となるた
め、離型紙などのカバー紙が必要となる。これに対し
て、この裏面どうしをあわせた接着防止材は上記離型紙
を不要にすることができ、現場での離型紙の廃棄処理を
軽減することができる。また、接着防止材を袋状または
筒状に加工する場合において、上記混合物を塗布などに
よりシート状基材表面または裏面に形成させると同時に
もう一つのシート状基材を混合物層の上から重ねて作製
した、2枚のシート状基材の間に吸水剤と疎水性潤滑剤
とを含む混合物層を形成させた上記3層シートは、事前
に2枚のシート状基材が重ね合わされているため、合わ
せ工程と縫製工程の2工程のうち、合わせ工程を省略す
ることができるため生産性を向上させることができる。
また、シート状基材に、上記混合物層を形成させるシー
ト状接着防止材の製造(加工)方法において、上記の、
シート状基材の表面または裏面に吸水剤と半固形状ワッ
クスなどの疎水性潤滑剤とを含む混合物を塗布加工する
際に、その塗布加工と同時に別のシート状基材の表面ま
たは裏面を貼り合わせていく加工方法、または吸水性潤
滑層と疎水性潤滑層とを複合化する接着防止材の製造
(加工)方法において、例えば、吸水性樹脂が基材表面
に付着した吸水性潤滑層シートの裏面に半固形状ワック
スなどの疎水性潤滑層を塗布加工する際に、その塗布加
工と同時に別の吸水性潤滑層シートの裏面を貼り合わせ
ていく加工方法が、塗布加工工程と貼り合わせ工程とを
同時に行なうことができ工程短縮による生産性を向上さ
せるので特に好ましい。
【0185】支持体(仮埋設物)を接着防止材(被覆
材)で被覆する時期は、特に限定されるものではなく、
作業現場に支持体(仮埋設物)を運び込むまでの間の適
当な時期であってもよく、作業現場で支持体(仮埋設
物)を保管している間の適当な時期であってもよく、支
持体(仮埋設物)を水硬性組成物と接触させる(埋設す
る)作業にかかるまでの間の適当な時期であってもよ
い。つまり、支持体(仮埋設物)は、水硬性組成物と接
触させる(埋設する)時点で、接着防止材(被覆材)で
被覆されていればよい。
【0186】また、袋状若しくは筒状に形成された接着
防止材(被覆材)を用いる場合においては、該接着防止
材(被覆材)は、水硬性組成物と接触させる(埋設す
る)時点で、これら形状に形成されていればよい。
【0187】耐水性を付与した接着防止材(被覆材)で
被覆された支持体(仮埋設物)は、作業現場に野積みす
ることができるので保管に手間がかからず好ましい。
【0188】また、作業現場において、例えば、支持体
(仮埋設物)表面に疎水性潤滑剤層を予め形成してお
き、施工直前に疎水性潤滑剤の粘着力を利用して吸水性
潤滑層シートを貼り付けることもできる。つまり、作業
現場の状況に応じて、適宜、作業の簡便化、合理化を図
ることができるので、迅速に施工することができる。
【0189】また、上記混合物層または疎水性潤滑層の
面どうしを貼合わさず混合物層または疎水性潤滑層が露
出する接着防止材を使用する場合は、混合物層または疎
水性潤滑層がべとついたり、他のものに付着することを
防止するために、必要に応じて、該混合物層または疎水
性潤滑層の表面に、被膜として紙やフィルムを積層する
ことができる。上記の紙、フィルムとしては、具体的に
は、例えば、剥離剤が塗布された離型紙、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹
脂;セロハン等の再生セルロース;等からなるフィルム
が挙げられるが、該潤滑剤の潤滑性を阻害しないフィル
ムであればよく、特に限定されるものではない。
【0190】支持体(仮埋設物)をシート状の接着防止
材(被覆材)で被覆する方法としては、より具体的に
は、例えば、図1(a)に示すように、クレーン6を用
いて支持体(仮埋設物)2を吊り上げると共に、該クレ
ーン6の先端部に設けられた滑車5に通した紐3を接着
防止材(被覆材)1に取り付け、次いで、袋状若しくは
筒状に形成された接着防止材(被覆材)1を、例えば作
業員4が紐3を引っ張ることにより、下方から履かせる
ようにして支持体(仮埋設物)2に挿入した後、同図
(b)に示すように、作業員4が紐3をさらに引っ張る
ことにより、該接着防止材(被覆材1)を引き上げて被
覆し固定する方法、または、作業員に代わって例えばク
レーン車に装備されているもう一つのクレーン(親フッ
ク)やウインチなどの吊り上げ機械で引き上げる方法、
さらに滑車やロープも使用せず、例えばクレーン車に装
備されているもう一つのクレーン(親フック)などの吊
り上げ機械のフックに直接に接着防止材を取り付けて直
接機械引き上げをする方法;袋または筒状に形成された
接着防止材(被覆材)を上方から被せるようにして支持
体(仮埋設物)に挿入し上端部を固定した後、クレーン
を用いて支持体(仮埋設物)を吊り上げ、次いで、接着
防止材(被覆材)の下端部に取り付けられた紐を例えば
作業員が引っ張ることにより、該接着防止材(被覆材)
を引き下げて被覆する方法;袋状若しくは筒状に形成さ
れた接着防止材(被覆材)を地面等に載置した後、該接
着防止材(被覆材)に支持体(仮埋設物)を挿入し、次
いで、接着防止材(被覆材)を引き上げて被覆し固定す
る方法;支持体(仮埋設物)を地面等に載置した後、該
支持体(仮埋設物)に袋状若しくは筒状に形成された接
着防止材(被覆材)を挿入し、次いで、支持体(仮埋設
物)を吊り上げると共に接着防止材(被覆材)を引き上
げて被覆し固定する方法;図2(a)に示すように、シ
ート状に形成された接着防止材(被覆材)10の上に支
持体(仮埋設物)2をクレーン6等を用いて載置した
後、同図(b)・(c)に示すように、該接着防止材
(被覆材)10で支持体(仮埋設物)2を包み込み、必
要であれば次いで、同図(d)に示すように、接着防止
材(被覆材)10を固定治具11を用いて固定する方
法;蛇腹状に折り畳んだ接着防止材(被覆材)の間に支
持体(仮埋設物)を挿入または挟み込んで固定する方
法;支持体(仮埋設物)の上部および下部に接着防止材
(被覆材)の両端部を固定する方法;支持体(仮埋設
物)の上部および下部に接着防止材(被覆材)の両端部
を固定すると共に、該接着防止材(被覆材)の中央部を
針金(番線)や紐、ベルト、ガムテープ等を用いて固定
する方法;支持体(仮埋設物)の上部に被覆材の一部分
を固定し、該接着防止材(被覆材)の残りの部分を支持
体(仮埋設物)に沿って垂らす方法;支持体(仮埋設
物)に、シート状の接着防止材を貼り付ける方法、好ま
しくはシート状基材または吸水性潤滑層/上記混合物層
または疎水性潤滑層/シート状基材または吸水性潤滑層
の3層から構成される接着防止材を貼りつける方法;等
を採用することができるが、特に限定されるものではな
い。
【0191】上記例示の方法のうち、袋状若しくは筒状
に形成された接着防止材(被覆材)を下方から履かせる
ようにして吊り上げ、支持体(仮埋設物)を被覆(挿
入)する方法、並びに、支持体(仮埋設物)をシート状
に形成された接着防止材(被覆材)で包み込む方法が、
より好ましい。中でも、袋状若しくは筒状に形成された
接着防止材(被覆材)を下方から履かせるようにして吊
り上げ、支持体(仮埋設物)を被覆(挿入)する方法が
被覆作業の作業性に優れているのでさらに好ましい。ま
た、この吊り上げ被覆作業において、滑車やロープも使
用せず、例えばクレーン車に装備されているもう一つの
クレーン(親フック)などの吊り上げ機械のフックに直
接に接着防止材の吊り紐(取っ手)を接続させて直接機
械吊り上げをする方法が、吊り上げ労力(人手)の軽減
ができることや、滑車、ロープの準備・取付け作業を省
けることから、作業時間の短縮をさらに実現するので特
に好ましい。
【0192】但し、支持体を吊り上げるスペースがなか
ったり近くに民家などがあって吊り上げ被覆ができない
場合や撤去する支持体の長さが短い場合など撤去条件に
制限があるときは、支持体(仮埋設物)に接着防止材を
貼りつける方法が最も好ましくなる。例えば、シート状
基材または吸水性潤滑層シート/吸水剤と半固形状潤滑
剤とを含む混合物層または半固形状潤滑剤層のみ/シー
ト状基材または吸水性潤滑層シートの3層から構成され
た接着防止材の2枚のシート状基材または吸水性潤滑層
シートを開き剥がしながら支持体の表面に半固形状潤滑
剤成分の粘着性を利用して密着させる(貼りつける)方
法が特に好ましい。例えば下記の作業手順で貼り付け被
覆することが最適である。 1.枕木の上にH形鋼をウエッブ(溝)が上を向く様に
(『H』状)寝かせる 2.接着防止材シートロールの端部の重なっている2枚
の布(シート状基材または吸水性潤滑層シート)を30
cm程度剥がす 3.剥がした布の粘着(密着)剤面が下に来る様にして
この接着防止材シートロールをH形鋼先端部の上に載せ
る 4.剥がした布の端部を作業員が持ち固定する。
【0193】また、剥がした布を左右のH鋼フランジの
角で少し(3cm程度)破り、布をH鋼フランジの角に引
っかけて端部を固定してもよい。 5.もう一方の剥がした布を別の作業員がH鋼に沿って
引っ張る 6.上記の様に布を引っ張ることで密着している2枚の
布は剥がされH鋼を覆う 7.H形鋼を覆った後に、布の中央線がH形鋼の中央線
と重なる様に布を整える 8.布の中央線を足で踏みつけ、布をH形鋼ウエッブ表
面に貼り付ける(踏み付け密着) 9.H形鋼ウエッブのコーナー部の布を空気がかまない
様に足で踏みつける 10.H形鋼フランジの内側部の布を足のアウトサイド
面で擦り付けて貼り付ける(足擦り密着) 11.H形鋼フランジの外側部の布を空気がかまない様
に手で押えるか足のインサイドまたは足の裏で擦り付け
て貼り付ける 12.クランプまたはワイヤーロープを使ってH形鋼を
裏返す 13.裏返したH形鋼に接着防止材シートを上記の作業
と同様にして貼り付ける(両面被覆) 14.必要であれば、H形鋼先端部に余った布は適当に
切り目を入れ(2個所)H形鋼ウエッブ及びフランジ内側
に折り込み、金属製の固定具(バインダークリップ等)で
固定する ※上部の接続支持体に貼り付ける場合は14.の作業は
不要。 ※必要であれば、上記作業後にハ゛インタ゛ークリッフ゜等の固定具
やガムテープ、ビニルテープ、ロープで更に巻いたり、
ホッチキス等で布の全端部を閉じる(綴じる)などして
貼付けを補強する。
【0194】尚、上記接着防止材シートロールは、現場
で長尺(例えば50m程度)の接着防止材シートロール
から必要な長さ分(例えば支持体(H形鋼)長さの1/2)
を裁断し、この接着防止材シートを再びロール状に巻き
取ったものを用いても良いし、事前に所定の長さに巻か
れた接着防止材シートロールを用いても良い。
【0195】上記の様に支持体に接着防止材を貼り付け
る場合は、手で腰をかがめながら貼り付けるよりも、上
記の踏み付け密着または足で行なう擦り付け密着の方法
で行なうことが、より短時間でしかも軽い労力で貼り付
けることが出来るので特に好ましい。
【0196】また、接着防止材を貼り付けた後に接着防
止材の端部(重ね合う部分)をハンディーミシン縫製
や、ホッチキス針(ステープル)、パテ塗り、粘着剤塗
り、塗料塗り等により閉じることが接着防止材を剥がれ
難くするので好ましい。さらに、接着防止材を貼り付け
た後にビニルテープやガムテープ等のテープや紐、ロー
プを巻き付けたり、支持体の形状に合わせて角材やベニ
ヤ板等の「かまし」を嵌め込んだりすることが接着防止
材の剥がれを完全に防止することができるのでさらに好
ましい。例えば、H形鋼に接着防止材を被覆した後にH
形鋼のウエッブ上(溝の部分)にH形鋼のフランジ間の
幅と同じ長さに切り出した細いベニヤ板を嵌め込む方法
が挙げられる。この方法によれば、接着防止材は支持体
表面に物理的に強固に固定される。
【0197】また、支持体表面に従来の接着防止材を塗
工する場合と比べて、上記本発明の接着防止材の貼り付
け方法は簡便で作業性に富む方法である。
【0198】尚、接着防止材(被覆材)を支持体(仮埋
設物)に固定する方法は、特に限定されるものではな
い。
【0199】また、上記固定治具11としては、具体的
には、例えば、洗濯挟み、金属製バインダークリップ等
のクリップ、ゴムホースまたは発泡断熱材等のチューブ
・ホース類の長さ方向に切り目が入ったバインダー(挟
み物)、針金(番線)、紐、ベルト、ガムテープ、切り
目を入れた(紙)カップ、ハンディーミシン(縫製)、
ホッチキス針(ステープル)、パテ、粘着剤、塗料等が
挙げられ特に限定されるものではないが、作業の簡便さ
の観点からゴムホースまたは断熱発泡体等のチューブ・
ホース類の長さ方向に切り目が入ったバインダー(挟み
物)が好ましく、中でも長さ方向に切り目が入ったチュ
ーブ状の発泡断熱材(保温材)が特に好ましい。この発
泡断熱材(保温材)は、単に接着防止材を固定する働き
だけではなく、接着防止材を支持体(仮埋設物)に被覆
する際または水硬性組成物と接触する際(建て込む際)
に、発泡断熱材のクッション性により支持体(仮埋設
物)の鋭利な角部で接着防止材を破損させないようにす
る働きがある。従って、発泡断熱材(保温材)で固定す
ることが特に好ましい。また、発泡断熱材(保温材)の
取付け位置は、部分的であってもよく、例えば、筒状の
接着防止材を被覆する直前の、吊り上げた支持体の下部
の角部にのみ取り付けることが、作業性、経済性の観点
から特に好ましい。
【0200】また、取り付けた発泡断熱材(保温材)を
より強固に固定するための補助バインダー(挟み物)を
発泡断熱材の上からさらに挟みつけることが施工時に発
泡断熱材の脱落を防止でき特に好ましい。
【0201】また、接着防止材を被覆した支持体の上か
らさらに、全体または一部を覆う袋状または筒状のシー
ト状物を被覆して固定する方法も挙げれる。この方法で
袋状または筒状のシート状物が吸水性潤滑層シートまた
は本発明の接着防止材であってもよく、この場合、更に
接着防止性能を向上させることができる。
【0202】また、接着防止材を支持体(仮埋設物)に
被覆する際の上記破損を防止する方法に関しては、上記
の発泡断熱材を用いる方法の他に、滑らかな曲線を持っ
た大きなキャップで例えば吊り上げたH形鋼の底部全体
を覆う方法やペーパーバックで同様に覆う方法などが挙
げられる。この滑らかな曲線を持ったキャップも好まし
い破損防止材料である。この滑らかな曲線を持ったキャ
ップは、例えば吊り上げたH形鋼(支持体)底部の角全
体を覆う大きさと、被覆時の抵抗力に耐え得る強度及び
引っかかりのない形状を持っていれば良い。
【0203】袋状に加工した本発明の接着防止材(被覆
材:内面に吸水剤と疎水性潤滑剤とを含む混合物層また
は疎水性潤滑層を形成)の実施する形態は、例えば、図
3に示すような形態が挙げられる。図3において、袋状
の接着防止材21の底部に対して、第2の補強材として
の先端カバー14を取り付けると、より袋(接着防止材
21)の底部の構造を強化することが可能となる。この
先端カバー14は、補強帯とともに接着防止材21に縫
い付けておくことが好ましい。また、図3に示すよう
に、先端カバー14の上端を接着止め14aにて接着防
止材21に固定することもできる。この先端カバー14
の素材としては特に限定されるものではなく、上述した
シート状基材に用いられる材質と同様のものを好適に用
いることができる。
【0204】また、上述したように袋状または筒状の形
状に加工するには、袋または筒の周囲を縫い合わせる方
法が好ましい。このとき、袋または筒の周囲は補強帯に
より補強しておくことが好ましい。たとえば、図3に示
すように、長方形状の袋状の形状に加工された接着防止
材21の四辺の周囲を所定の幅w0 を有するベルト状の
補強帯15を縫い合わせて補強し、底部についても補強
帯15aを縫い合わせて補強して、袋(接着防止材2
1)の形状をより一層安定化させることができる。
【0205】また、別のタイプとして、接着防止材21
の底部(補強帯15aの部分)の縫製を行なわず、さら
に補強帯15aや先端カバー14も無くしたところの筒
状の接着防止材は、上記混合物層または疎水性潤滑層の
密着効果による接着防止材の支持体への密着をより完全
なものにできることと、上記縫製加工を簡略化できるこ
とから、より好ましい。
【0206】尚、上記補強帯15および15aの材質お
よび幅w0 のサイズは特に限定されるものではない。た
とえば、本実施の形態では、補強帯15および15aと
してw0 =2.5cmのポリエステル製ベルトまたは5
cmのポリプロピレン製ベルトを用いている。 上記補
強帯15および15aは、袋または筒(接着防止材2
1)の周囲に沿って縫い合わせられることが好ましい
が、このときの縫い代の位置は特に限定されるものでは
なく、たとえば、本実施の形態では、袋の外側から見
て、1cm程度内側となるように位置している。
【0207】また、上記補強帯15における袋(接着防
止材21)の開口部側の端部は、そのまま延長した状態
で吊りひも16として形成しておくことができる。この
吊りひも16の長さl0 は特に限定されるものではな
く、たとえば、本実施の形態ではl0 =1m程度の長さ
である。この吊りひも16は、支持体(仮埋設物)に被
覆する際に袋を吊り下げたり吊り上げたりする作業を行
うために用いることができる。
【0208】なお、上記吊りひも16の端部も、折り返
し構造として補強しておくことが好ましい。たとえば、
本実施の形態では、折り返し部の長さ=10cm程度と
して縫い合わせておくと、吊りひも16の端部の構造を
強化できるため好ましい。
【0209】袋状や筒状の形状に加工された接着防止材
21の開口部には、図3に示すように、縛りひも17を
設けることができる。この縛りひも17で開口部を縛る
ことによって、支持体(仮埋設物)に対して袋(接着防
止材21)を安定して取り付けることができる。同様
に、折り返し構造となっている袋の底部にも縛りひも1
7を設けておくことができる。これによって、支持体
(仮埋設物)に対して袋をさらに安定して被覆すること
が可能となる。
【0210】上記縛りひも17のうち、開口部に設けら
れるものは、たとえば、図3に示すように、開口部の補
強帯15に沿って配置されている。すなわち、縛りひも
17は、長方形状の袋において長手方向に直交するよう
に位置している。
【0211】一方、上記縛りひも17のうち、底部に設
けられているものは、上記開口部に設けられているもの
と同様に、長方形状の袋の長手方法に直交するように位
置している。ここで、この底部に設けられている縛りひ
も17は、図3に示すように複数本設けられていてもよ
い(本実施の形態では、図3に示すように2本)。この
ように縛りひも17が複数設けられていれば、袋(接着
防止材21)を支持体(仮埋設物)に被覆する状態をよ
り一層安定化させることができる。
【0212】底部の縛りひも17は、上述した先端カバ
ー14上に配設されることになるが、この縛りひも17
の配設位置については、支持体(仮埋設物)の端部に対
して袋の底部を安定して被覆することができれば特に限
定されるものではない。たとえば、図3に示すように、
先端カバー14が長手方向にH=3mの長さを有してい
る形状である場合には、最底部からh=1mの位置に1
本目の縛りひも17を配設し、最底部から2mの位置、
すなわち、1本目の縛りひも17から見てh=1m離れ
た位置に2本目の縛りひも17を配設する手法が挙げら
れる。
【0213】このとき、各縛りひも17を袋に備えさせ
る構成としては特に限定されるものではない。たとえ
ば、本実施の形態では、袋(接着防止材21)の長手方
向の周囲に沿って設けられている補強帯15に、複数の
ひも通しを設けておく構成が挙げられる。
【0214】上記縛りひも17の長さは支持体(仮埋設
物)に被覆した状態の接着防止材21を縛ることができ
る長さであれば特に限定されるものではないが、縛りひ
も17を縛るためには、好ましくは、ひも通しに通して
袋に備えさせた状態で、該縛りひも17の両端部がそれ
ぞれ30cm程度の長さを有していることが好ましい。
【0215】たとえば、本実施の形態では、接着防止材
21の幅W=1.4mであるが、支持体(仮埋設物)に
上記接着防止材21を被覆した場合に、接着防止材21
の内径幅Kは、K=1.3m以上となる。このとき、縛
りひも17は、接着防止材21を縛ることができる長さ
でなければならないため、上記のように、両端部が30
cm程度の長さを有していることが好ましい。
【0216】なお、縛りひも17の材質は特に限定され
るものではなく、支持体(仮埋設物)に対して袋(接着
防止材21)を被覆することができるように縛るだけの
強度があればよい。本実施の形態では、縛りひも17と
しては、通常よく用いられている丸ひもを使用してい
る。
【0217】上記のような縛りひもは必要であれば用い
た方が良いが、袋(シート状の接着防止材)の内面に形
成された、吸水剤と疎水性潤滑剤とを含む混合物層また
は疎水性潤滑剤の密着力で接着防止材を支持体に安定し
て密着(被覆)させることができる場合には、縫製加工
の簡略化(生産性)の観点から縛りひもが無い方が、よ
り好ましい。
【0218】本発明にかかる接着防止材を支持体(仮埋
設物)に被覆する際には、H形鋼などの支持体(仮埋設
物)の下側となる端部に対して、接着防止材破損防止用
装着具(以下、装着具とする)を装着する被覆方法を用
いることが好ましい。この装着具は、少なくとも緩衝効
果を示す材質、すなわち緩衝材を備えてなるものであ
る。
【0219】この装着具を支持体(仮埋設物)の下側と
なる端部に装着しておけば、支持体(仮埋設物)に対し
てさらに接着防止材を被覆する際に、装着具の緩衝効果
により支持体(仮埋設物)の端部に接着防止材が引っ掛
かるなどして該接着防止材が破損するようなことがな
い。それゆえ、接着防止材が有する効果、すなわち、支
持体(仮埋設物)を容易に引き抜く(分離)効果をより
一層向上させることができる。
【0220】さらに、上記装着具を装着しない状態で接
着防止材を被覆した支持体(仮埋設物)を、例えば、ソ
イルセメントが充填された掘削孔の中に打ち込んだ場
合、底部の接着防止材が非常に破損し易くなる。すなわ
ち、上記の場合では、支持体(仮埋設物)の重量やソイ
ルセメントの圧力などにより支持体(仮埋設物)の下側
の端部と接着防止材の底部とが激しく接触する上に、硬
い金属からなる支持体(仮埋設物)の端部が剥き出しで
あるため、この端部と上記重量や圧力との効果により、
接着防止材はより一層破損し易くなる。
【0221】しかしながら、上記装着具を支持体(仮埋
設物)の下側となる端部に装着しておけば、支持体(仮
埋設物)の下側となる端部が剥き出しとならず、また、
支持体(仮埋設物)の下側の端部にかかる単位面積当た
りの重量やソイルセメントからの圧力を低減することが
できる。そのため、掘削孔への建て込み(打ち込み)の
際の接着防止材の破損をより効果的に抑制することがで
きる。それゆえ、接着防止材が有する効果をより一層向
上させることができる。
【0222】上記装着具の形状は、支持体(仮埋設物)
の下側となる端部が剥き出しにならず、また、支持体
(仮埋設物)の下側となる端部と接着防止材との間に設
けられた際に緩衝材としての役割を果たすことができる
ものであれば特に限定されるものではない。しかしなが
ら、上記装着具は、支持体(仮埋設物)の端部にはめ込
むことによって装着できるような形状であることが特に
好ましい。
【0223】たとえば、本実施の形態では、図4(a)
に示すように、少なくとも発泡体からなっている円筒形
状で、さらに、切り込み部18aを有する装着具18を
用いている。この装着具18は、図4(b)に示すよう
に、切り込み部18aを支持体22であるH形鋼の端部
へはめ込むだけで装着することが可能である。それゆ
え、装着具18の装着が非常に容易であり、支持体(仮
埋設物)22を掘削孔に打ち込む作業の煩雑化を伴うこ
とがない。
【0224】なお、上記装着具の装着においては、装着
が煩雑化したり、装着のために特殊な設備が必要になる
などしてコストの上昇を招来したりするなどしない限
り、はめ込みによる装着以外の種々の方法を用いても構
わない。上記装着具の材質は、緩衝効果の得られる材質
(緩衝材)であれば特に限定されるものではない。たと
えば、割繊維不織布、カーペット、フェルト、ステッチ
ボンド不織布などの不織布類;フラットヤーンの繊維織
物、綿織物、麻織物、ポリプロピレンなどの合成樹脂織
物などの織物類;ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプ
ロピレン、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール
樹脂、ゴムフォームなどに対して独立または連続気泡を
形成して得られる発泡体;ウレタンゴム、シリコーンゴ
ム、フッ素ゴム、エーテルゴム、アクリルゴム、ブチル
ゴム、ネオプレン(クロロプレンゴム)、ブタンジエン
−アクリロニトリル共重合体、天然ゴムなどのエラスト
マー;皮革、木材、紙、厚紙などの天然物などを挙げる
ことができる。また、支持体(H形鋼)の建て込み時に
は、ローラー付き建込みガイド(定規)を使用すること
が建て込み精度を向上させる観点から好ましい。さら
に、ローラー付き建込みガイド(定規)の使用は本発明
の接着防止材の破損を防止するために特に好ましい。ロ
ーラー付き建込みガイド(定規)は例えば、建て込むH
形鋼のフランジの腹部およびエッジ部、あるいはフラン
ジの腹部およびウエッブ面を抑えるローラーを取り付け
た、チャンネル角材や単管を溶接固定して作製したもの
が挙げられる。このローラーによって、支持体に被覆し
た接着防止材が該ガイドと接触しても破損することを防
止することができる。このガイドは、掘削孔を挟んで並
列定置した2本の固定用H形鋼(土台)にセットされ
る。
【0225】本発明の接着防止材は、例えば、図5に示
すようにシート状基材層または吸水性潤滑層と、吸水剤
と疎水性潤滑剤とを含む混合物層または疎水性潤滑層と
から構成される。
【0226】また、本発明の他のシート状接着防止材と
しては、シート状基材層または吸水性潤滑層と、吸水剤
と疎水性潤滑剤とを含む混合物層または疎水性潤滑層と
が積層された構成のもので、例えば、図6に示すように
吸水剤と疎水性潤滑剤とを含む混合物層または疎水性潤
滑層が、2つのシート状基材層または吸水性潤滑層に挟
まれた構成のものである。
【0227】以上のように、本発明の接着防止材を適用
した場合には、例えば支持体(仮埋設物)を埋設すると
きに生じる衝撃力や引張力等の外力がかかって破損した
としても、接着防止材は該混合物層の疎水性潤滑剤成分
または疎水性潤滑層の密着性(再剥離など、融通のきく
粘着性)の効果により支持体表面からの遊離が起こらず
一部的な破損に抑えることができ支持体と水硬性組成物
の硬化物との分離を極めて容易にすることができる。
【0228】また、上記混合物中の疎水性潤滑剤成分ま
たは疎水性潤滑層は、本来の潤滑効果を発揮し、吸水
剤、吸水ゲルの極めて高い潤滑性と共に支持体と水硬性
組成物との分離を容易にする。
【0229】支持体(仮埋設物)を水硬性組成物の硬化
物から引き抜く際には、その摩擦抵抗力を大きく低減す
ることができる。つまり、引き抜く作業における労力
(引張力)を低減することができ、該作業の作業性を向
上させることができる。また、回収した支持体(仮埋設
物)は、そのまま再利用することができる。
【0230】また、上記の説明においては、支持体(仮
埋設物)と水硬性組成物の硬化物との分離について例を
挙げたが、本発明の接着防止材(被覆材)は、水硬性組
成物の存在しない土壌に埋設される支持体(仮埋設物)
に対しても適用することができる。つまり、地下水等の
吸収により支持体(仮埋設物)を土壌から引き抜く際の
摩擦抵抗力を低減することができ、支持体(仮埋設物)
を容易に引き抜くことができるようになる。
【0231】また、以上述べてきた接着防止材の特徴
(性能、作用、効果)から、本発明の接着防止材は、土
留め壁用のH形鋼や鋼矢板などの仮埋設物とソイルセメ
ントなどの硬化セメント組成物との接着を防止する最適
な材料である。例えば、掘削孔内のソイルセメントミル
ク中に埋設するH形鋼を、本発明の接着防止材で被覆し
ておくことで、該土留め壁(ソイルセメント硬化体)か
らのH形鋼の引抜き回収を極めて容易かつ安全に行なう
ことができる。このように土留め壁の芯材としての役割
を終えた後のH形鋼は、容易に引抜き除去できるので、
その後の2次工事の障害となることがなく2次工事を容
易にする。尚、土留め壁は、ビルやダム、駅等の基礎
(土台)工事、煙突工事、高速道路や鉄道等の基礎また
は橋脚の工事、地下開発工事、地下鉄工事、トンネル工
事、下水道工事等の地中線工事、ボックスカルバート設
置工事、現場打ちボックスカルバート設置工事、シール
ドマシーンが発進する立て坑(孔)等の立て坑工事など
で構築される。
【0232】さらに、以上述べてきた接着防止材の特徴
(性能、作用、効果)から、本発明の接着防止材は、建
設現場で発生する建設発生土(泥状土)に水分とセメン
トなどの固化材を混合して調整される流動化処理土と鋼
矢板などの仮埋設物との接着を防止する最適な材料であ
る。例えば、上水管、下水管、電気線、電話線、ケーブ
ル線、ガス管などのライフラインを通す、既製または現
場打ちのボックスカルバートを地下に設置する工事にお
いて、土留め壁の鋼矢板とボックスカルバートとの間の
埋め戻し箇所に流動化処理土を流し込む前に流動化処理
土と接する鋼矢板の表面に本発明の接着防止材を貼りつ
けなどにより被覆しておくことで、埋め戻し硬化後の地
盤から鋼矢板を極めて容易かつ安全に引抜くことができ
る。
【0233】さらにまた、以上述べてきた接着防止材の
特徴(性能、作用、効果)から、本発明の接着防止材
は、ビルやダム、駅等の建築物、煙突、橋脚、基礎(土
台)工事、地下街、地下鉄、トンネル、下水道、ボック
スカルバート、プレキャスト構造体などのコンクリート
構造物を構築する際に用いられる型枠の離型材として最
適である。水硬性組成物の硬化構造物と型枠との接着を
防止する。中でも表面をスライドさせて離型する、型枠
やシールド工法にさらに好ましく用いられる。
【0234】また、以上述べてきた接着防止材の特徴
(性能、作用、効果)から、本発明の接着防止材は、基
礎埋め込み杭または現場打ち杭の杭頭の貧強度コンクリ
ート(水硬性組成物)を除去するための分離材として最
適である。該杭と水硬性組成物との接着を防止する。例
えば、中空杭の内面や鉄筋籠(鉄筋)の表面に本発明の
接着防止材を貼りつけなどで配することで、中空杭の内
面や鉄筋籠(鉄筋)の表面と水硬性組成物の硬化構造物
との接着を防止できる。また、特開平10−18400
3号公報に記載している、杭頭の貧強度コンクリートを
除去するための栓体表面に、貼りつけなどで本発明の接
着防止材を配することで、杭頭のコンクリート硬化後に
該栓体をさらに容易に引抜き除去することができ貧強度
コンクリートの除去をより簡単にする。さらに、特開平
10−184002号公報に記載している、空隙を形成
させるための栓体表面に本発明の接着防止材を貼りつけ
などで配することで、コンクリート硬化後にコンクリー
ト(水硬性組成物)に埋め込まれた該栓体の引抜き除去
をさらに容易にすることができ空隙をより簡便に形成さ
せる。
【0235】さらに、本発明の組成物は、止水や漏水防
止に最適な材料である。
【0236】特に本発明の該混合物を含む接着防止材
は、吸水性樹脂の特性から吸水による体積膨張性を有
し、疎水性潤滑剤の特性から疎水性または撥水性を有す
ることから、鋼矢板のジョイント部や地盤、岩盤、コン
クリート等の隙間またはひび割れ部などの止水や漏水防
止を確実に実現する。また、特に、半固形状潤滑剤と吸
水性樹脂とを含む混合物の本発明の接着防止材は、加熱
により溶融して注入施工も行なうことが出来ることから
施工性に優れた止水剤(水漏れ防止材)で、どんなに細
く小さい隙間や複雑な形状の隙間でも充填が可能であ
る。
【0237】
【実施例】以下、実施例および比較例により、本発明を
さらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら
限定されるものではない。 〔実施例1〕以下の条件、方法によって接着防止材の作
製、H形鋼への被覆、H形鋼の建て込み及び引抜きを実
施した。 〔吸水性樹脂〕吸水性樹脂としては、市販のポリアクリ
ル酸ナトリウム塩架橋体(アクアリックML−70、平
均粒子径50μm、日本触媒製)を使用した。 〔シート状基材〕シート状基材としては、幅1250m
m、ポリエステル/レーヨン=60/40重量比、坪量
160g/m2の織物基布を用いた。 〔耐水性付与剤として用いるアルカリ水可溶性樹脂の調
製〕アルカリ水可溶性樹脂を以下の方法で以て調製し
た。即ち、温度計、攪拌翼、還流冷却器、および滴下装
置を備えた容量50Lの槽型反応器に、アクリル酸0.
45kg、アクリル酸エチル2.4kg、メタクリル酸
メチル0.15kg、重合開始剤である2,2’−アゾ
ビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)12g、お
よび、溶媒であるメチルアルコール3kgを仕込んだ。
また、滴下装置に、アクリル酸1.05kg、アクリル
酸メチル2.1kg、メタクリル酸メチル3.85k
g、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニ
トリル)28g、および、メチルアルコール7kgから
なる混合溶液を仕込んだ。
【0238】上記のメチルアルコール溶液を窒素ガス雰
囲気下、攪拌しながら65℃に加熱し、20分間反応さ
せた。これにより、内容物の重合率を72%に調節し
た。続いて、内温を65℃に保ちながら、滴下装置から
上記の混合溶液を2時間かけて均等に滴下した。滴下終
了後、内容物を65℃でさらに3時間熟成させた。反応
終了後、内容物にメチルアルコール10kgを混合する
ことにより、アルカリ水可溶性樹脂の33重量%メチル
アルコール溶液を得た。
【0239】得られたアルカリ水可溶性樹脂の酸価は1
17mgKOH/gであった。また、該アルカリ水可溶
性樹脂の示差走査熱量測定を行った結果、該アルカリ水
可溶性樹脂は、ガラス転移温度を−80℃〜120℃の
範囲内に2つ有していた。 〔疎水性潤滑剤〕吸水剤と混合する疎水性潤滑剤として
は、半固形状粘着剤であるハイスライドワックス、TA
P−2、朝日機材(販売会社)、パレス化学株式会社
(製造会社)、融点70℃、引火点210℃、比重0.
905を使用した。 〔使用H形鋼〕使用したH形鋼は、Hサイズ=300*
300mm、長さL=1.5m、重量=139.5kg
であった。 〔ソイルセメントの圧縮強度〕H形鋼を建て込む(投
入)ソイルセメントの圧縮強度は157N/cm2(1
6kg/cm2)であった。 (1)シート状接着防止材の作製 (耐水性を付与したシート状基材の作製)下記の条件
で、上記シート状基材の片面に耐水性付与剤としての上
記アルカリ水可溶性樹脂(略称:ASP)を塗布した。
ASP樹脂の乾燥塗布量は50g/m2とした。尚、該
シートのASP塗布面を表面とし、未塗布面は裏面とし
た。
【0240】また、耐水性を付与したシート状基材の長
さは10mであった。これを半分に切断し5m巻を2本
作った。 (吸水性樹脂と疎水性潤滑剤との混合物の作製)吸水性
樹脂と疎水性潤滑剤とを温度80℃で均一に混合した。
吸水性樹脂と疎水性樹脂との重量比は50/50とし
た。 (シート状の接着防止材の作製)上記耐水性を付与した
シート状基材の裏面に、疎水性樹脂の融点付近まで加温
した上記の、吸水性樹脂と疎水性樹脂との混合物を塗布
しそれと同時に該混合物塗布面の上から別の上記シート
状基材の裏面を合わせて巻き取った。つまり2枚の耐水
性を付与したシート状基材裏面で、吸水性樹脂と疎水性
樹脂との混合物(組成物)層が挟まれた3層構造のシー
ト状の接着防止材を得た。この混合樹脂乾燥塗布量は6
50g/m2とした。また、該混合物(組成物)の塗布
幅は900mm(中央)とした。
【0241】また、上記のシート状基材に該混合物を塗
布する加工と同時に該シートの両端はスリット切断され
幅960mmになるようにした。また、仕上がり長さを
2mになる様に裁断した。 (2)H形鋼への接着防止材の被覆 上記のシート状の接着防止材を下記の手順に沿って貼り
付けた。 1.枕木の上にH形鋼をウエッブ(溝)が上を向く様に
(『H』状)寝かせた。 2.上記接着防止材の端部の重なっている2枚のシート
状基材を30cm程度剥がした。 3.剥がしたシート状基材の粘着剤面(上記混合層)が
下に来る様にした。 4.剥がしたシート状基材の端部をもう一人の作業員が
持ち固定した。 5.もう一方の剥がしたシート状基材をH鋼に沿って引
っ張った。 6.上記の様にシート状基材を引っ張ることで密着して
いる2枚のシート状基材は剥がされH鋼を覆った。 7.H形鋼を覆った後に、シート状基材の中央線がH形
鋼の中央線と重なる様にシート状基材を整えた。 8.シート状基材の中央線を足で踏みつけ、シート状基
材をH形鋼ウエッブ表面に貼り付けた。(踏み付け密
着) 9.H形鋼ウエッブのコーナー部のシート状基材を、空
気がかまない様に足で踏みつけた。 10.H形鋼フランジの内側部のシート状基材を足のア
ウトサイド面で擦り付けて貼り付けた。(足擦り密着) 11.H形鋼フランジの外側部のシート状基材を、空気
がかまない様に手で押え付けた。 12.H形鋼を裏返した。 13.裏返したH形鋼に接着防止材を上記の作業と同様
にして貼り付けた。(両面被覆) 14.貼り付けたシート状の接着防止材の端部全体を合
わせ直し、ホッチキスで閉じて接着防止材を袋状にし
た。この袋状に形成された接着防止材を接着防止材1と
した。 (3)建て込み 以下のように建て込みを行なった。
【0242】クレーン車で吊り上げた、袋状の接着防止
材1が被覆されたH形鋼をセメントミルクが注入された
穴の真上に移動させ、位置、鉛直性を確認した後に該H
形鋼を慎重に建て込んだ。(頭出し10cm) (4)H形鋼の引抜き 建て込み後23日間残置した後に9.8kN(1tf)
のバネ計りで引抜荷重を測定しながら上記H形鋼の引抜
きを行なった。 (5)結果 結果としては、最大引抜荷重は6.6kN(0.67t
f)で、H形鋼単位表面積当たりの最大引抜力である最
大付着強度は2.06kN/m2(0.21tf/m2
であった。格段にH形鋼の引抜きが容易であった。
【0243】従って、工期短縮(経済性向上)、作業安
全性の向上、鋼材のリサイクル等を実現することができ
るものであった。
【0244】また、建て込み時に袋状の接着防止材1は
H形鋼表面に密着しているのでH形鋼の表面及び形状
(輪郭)が明確になっていたため、作業をスムーズに行
なうことができ、建て込み精度の低下を防ぐことができ
た。
【0245】また、接着防止材を密着(貼り付け)した
ままずらして位置調製することが容易(融通がきく)
で、さらに、破れた箇所の貼り直しも容易であった。
(補修容易) 〔実施例2〕上記のHサイズ=300*300mm、長
さL=1.5mのH形鋼の表面に上記の、吸水性樹脂と
疎水性潤滑剤との混合物を温度80℃で全面均一にロー
ラーを用いてに塗布した。塗布厚みは600g/m2
あった。
【0246】該H形鋼の建て込み方法、H形鋼の引抜き
方法については、実施例1に準じて行なった。
【0247】結果としては、最大引抜荷重は4.1kN
(0.42tf)で、H形鋼単位表面積当たりの最大引
抜力である最大付着強度は1.1kN/m2(0.11
tf/m2)であった。格段にH形鋼の引抜きが容易で
あった。 〔比較例1〕実施例1において、吸水性樹脂を混合せず
疎水性潤滑剤(ワックス)のみをシート状基材に塗布し
て得られた袋状の比較接着防止材1を使った他は、実施
例1の方法に準じて実施した。結果としては、最大引抜
荷重は測定限界の9.8kN(1.0tf)を超えた
為、測定できなかった。
【0248】〔比較例2〕朝日機材株式会社技術機材部
発行の技術資料である「ソイルセメント柱列親杭引抜工
法」には、Hサイズ300*300mm、長さ11mの
H形鋼の表面にワックス(商品名;ハイスライドワック
ス)を8mmの厚みになるように塗布しておくことで、
最大引抜荷重が608kN(62tf)で引抜いた実績
データが記載されている。H形鋼単位表面積当たりの最
大引抜力である最大付着強度は34.3kN/m
2(3.5tf/m2)であった。 〔実施例3〕以下の条件、方法で接着防止材の作製、H
形鋼への被覆、H形鋼の建て込み及び引抜き撤去を実施
した。 〔吸水性潤滑層シートの吸水性樹脂〕吸水性潤滑層シー
トの吸水性樹脂としては、市販のポリアクリル酸ナトリ
ウム塩架橋体(アクアリックCA、日本触媒製)を粒径
が80メッシュパス(粒径180μm以下)になるまで
微粉砕した吸水性樹脂を使用した。 〔吸水性潤滑層シートのシート状基材〕吸水性潤滑層シ
ートのシート状基材としては、幅1250mm、ポリエ
ステル/レーヨン=60/40重量比、坪量160g/
2の織物基布を用いた。 (1)接着防止材シートの作製 (吸水性潤滑層シートの作製)下記の条件で、上記シー
ト状基材の片面に上記アルカリ水可溶性樹脂(略称:A
SP)と上記吸水性樹脂(略称:SAP)の混合樹脂を塗
布し吸水性潤滑層となるシートを作製した。尚、塗布面
を表面とし、未塗布面は裏面とした。また、この吸水重
量は自重の7倍であった。 ・ASPとSAPは混合し基材に塗布するが、この混合
樹脂乾燥塗布量は100g/m2とし、ASP/SAP
重量比は、50/50とした。 ・樹脂塗布幅は1050mm、塗布長さは110mで行
なった。これを半分に切断し55m巻を2本作った。 (疎水性潤滑層の作製)上記吸水性潤滑層シートの裏面
に上記ワックス(疎水性潤滑剤)を塗布し、それと同時
にワックス塗布面の上から別の上記吸水性潤滑層シート
の裏面を合わせて巻き取った。つまり2枚の吸水性潤滑
層シート裏面で疎水性潤滑層であるワックス層が挟まれ
た3層構造の接着防止材シートを得た。 ・ワックス塗布幅は900mm、ワックス塗布量は60
0~700g/m2とした。 ・ワックス未塗布の両端は幅1050mmになるように
切断し、仕上がり長さを約55mとした。 (2)筒状の接着防止材の作製 上記の接着防止材シートの両サイドを、ポリエステル製
の幅25mmの帯紐を上下両面から重ね合せながら縫製
加工(複数針縫製)して幅1050mm、長さ18.5
mの筒状の接着防止材3を作製した。また、吊り上げ被
覆用の吊りロープとの接続を容易にするために筒状の接
着防止材3の頭部には該帯紐で長さ1mの取っ手を取り
付けた。尚、縫製直後の状態ではワックスの粘着性によ
り2枚の吸水性潤滑層シートは密着しており筒状の形態
になっていないが、ワックスの粘着性は再剥離可能な融
通のきく粘着なので、2枚重なっている吸水性潤滑層シ
ートを容易に剥がすことができ、このとき筒状の接着防
止材3となる。 (3)H形鋼の建て込み 土留め壁用の仮埋設物として用いられる下記H形鋼の建
て込みを以下の条件で行なった。 (使用H形鋼)使用したH形鋼は、Hサイズ=450*
200mm、長さL=17m、重量1.273tであっ
た。 (掘削機)掘削機はアースオーガー(150KVR、P
アンドH社製110P)を用いた。 (掘削条件)掘削口径は直径650mm、掘削深度は1
7mとした。 (注入セメントミルク配合)セメントミルク配合は、W
/C=214%(水600:セメント280:ベントナ
イト10)とした。(H形鋼の吊り上げ、建て込み、及
び接着防止材の被覆機材)490kN(50tf)クレ
ーン車を用いた。 (筒状の接着防止材の被覆)以下の手順で筒状の接着防
止材3の被覆を行なった。 490kN(50tf)クレーン車の小フックにH形
鋼をシャックルとワイヤーを用いて接続して該H形鋼を
吊り上げた。 大フック(親フック)に42mの吊り上げロープを通
した逆回転防止滑車を取付け、H形鋼の頭部より上にさ
らに1mから1.5m程度上方まで該滑車を吊り上げ
た。 H形鋼の底部の4つの角にクッション製を有する長さ
90mmのチューブ状発泡断熱材(例:保温材=チュー
ブ状の独立発泡体、長尺縦方向に切り目あり、イノアッ
クコーポレーション製保温材、品番PPS−13、外径
33mm、内径13mm)を、角が露出しないように嵌め込み、
さらに、固定を強固にするために発泡断熱材の上からプ
ラスチック製の接続材(例:矢崎化工株式会社製、イレ
クター部品、プラスチックジョイントJ38B)を嵌め
込んだ。 地上にある吊り上げロープ先端のフックと筒状の接着
防止材3の取っ手を接続し、筒状の接着防止材3の頭部
の開口部を1m程度の深さまで開けた。(ワックスによ
り密着した2枚の吸水性潤滑層を剥がした) H形鋼の底部を筒状の接着防止材3の開口部で包むよ
うに履かせ、一方の地上に垂らされた吊り上げロープを
人力で引張ることで(旗を掲揚する要領)筒状の接着防
止材3を吊り上げてH形鋼の被覆を行なった。また、滑
車とロープを使わず、筒状の接着防止材3の取っ手を直
接に親フックに取付けて(接続)、クレーンで吊り上げ
被覆も可能であった。(機械被覆) 筒状の接着防止材3の頭部がH形鋼の頭部に達すると
吊り上げを止め、筒状の接着防止材3の底部の余分な長
さの筒状接着防止材シートを細くまとめて紐または輪ゴ
ムで縛った。(H形鋼底部の余分な長さの筒状の接着防
止材3の表面と裏面はワックスの密着効果で密着してい
た。) 建て込み不良時の機械的強制押込みに備え、H形鋼底
部のH型に沿って補強材(例:LION製バインダーク
リップ、幅6cm、品番:NO.450)を取り付け
た。 (建て込み用ガイド)チャンネル角材にローラーを取り
付けた、ローラー付き簡易建込み定規ガイドを事前に作
製しておいた。このガイドを、H形鋼2本を掘削孔を挟
んで並列定置した固定用H形鋼(土台)にセットした。 (建て込み)以下のように建て込みを行なった。
【0249】490kN(50tf)クレーン車で吊り
上げた、筒状の接着防止材3が被覆されたH形鋼をセメ
ントミルクが注入された掘削孔の真上に移動させ、位
置、鉛直性を確認した後に該H形鋼を慎重に建て込ん
だ。
【0250】建て込み時には、内面に塗布したのワック
スの密着効果と水圧により、筒状接着防止材はH形鋼表
面に自然に密着するが、より確実に密着させるために地
上においても、可能な範囲で筒状の接着防止材3をH形
鋼表面に手作業で押し付けながら建て込んだ。建て込み
が所定の位置(頭出し20cm)まで達すると建て込み
を止め、筒状の接着防止材の2つの取っ手を結び合わせ
て建て込みを完了した。 (その他使用機材)その他、セメントプラント、発電
機、コンプレッサー、廃土処理用バキューム車などを使
用した。 (4)H形鋼の引抜き 建て込み後28日間残置した後に上記H形鋼の引抜きを
行なった。
【0251】クレーン車に取り付けられた引抜補助機材
である多滑車機材に、引抜荷重測定用ロードセルを組み
込み、引抜荷重測定用データアナライザーで引抜荷重を
測定しながら、まず縁切り及び3m程度だけ引抜き、次
に多滑車機材を取り外しクレーン車のみで全長引抜きを
行なった。尚、サンプリングしたソイルセメントの28
日後の硬化体の圧縮強度は333N/cm2(34kg
f/cm2)であった。 (5)結果 結果としては、最大引抜荷重は196kN(20tf)
で、H形鋼単位表面積当たりの最大引抜力である最大付
着強度は6.47kN/m2(0.66tf/m2)であ
った。従来工法に比べ格段にH形鋼の引抜きが容易であ
った。
【0252】この結果は、驚くべきことに17mという
長尺のH形鋼であっても多滑車などの補助機材を不要に
することができ、クレーン車のみでH形鋼を引抜くこと
ができることを意味する。(素抜き工法可能)従って、
工期短縮(経済性向上)、作業安全性の向上、鋼材のリ
サイクル等を実現することができる。
【0253】また、建て込み時に筒状の接着防止材3は
H形鋼表面に密着しているのでH形鋼の表面及び形状が
明確になっていたため、作業をスムーズに行なうことが
できた。 〔比較例3〕実施例3において、本発明の接着防止材に
代えて、疎水性潤滑層(ワックス)を複合化せず、吸水
性潤滑層シートのみを使用した他は実施例3に準じて、
筒状の接着防止材の作製、H形鋼への被覆、H形鋼の建
て込み等を実施した。尚、該吸水性潤滑層シートを比較
接着防止材3とした。
【0254】しかしながら、筒状の比較接着防止材3を
被覆したH形鋼の建て込みにおいて、再投入時(H形鋼
の投入と吊り上げを繰り返す。)に、比較接着防止材3
は、ナイフで切った様な破損が約3mの長さで縦方向に
観察された。これは、掘削孔壁との衝突の際に、H形鋼
のフランジのエッジで切断されたものと考えられた。さ
らに、比較接着防止材3はH形鋼表面から離れているこ
とが観察された。(比較接着防止材3の乖離)このこと
から大量のセメントミルクがH形鋼表面へ流入している
ことが明らかであった。従って、このまま作業を続けて
もH形鋼の引抜きは困難であると判断されたので、H形
鋼の建て込み及び引抜きを中止した。
【0255】今回の様な長尺なH形鋼に被覆する場合
や、掘削孔径に余裕が少ない場合には接着防止材の破損
を事前に回避する工夫(建て込み精度向上、完全な掘削
孔の形成、十分な余掘りなど)が必要であることが分か
った。 〔実施例4〕実施例3において、掘削孔径を650mm
から600mmに小さくした他は実施例3に準じて筒状
の接着防止材4の作製、H形鋼への被覆、H形鋼の建て
込み、及びH形鋼引抜き等を実施した。
【0256】結果としては、最大引抜荷重は402kN
(41tf)で、H形鋼単位表面積当たりの最大引抜力
である最大付着強度は14.5kN/m2(1.48t
f/m2)であった。従来工法に比べ格段にH形鋼の引
抜きが容易であった。
【0257】また、掘削孔径を小さくしたことで、H形
鋼の建て込み(投入)は極めて困難になり、再投入を6
回繰り返し、最後はオーガーで強制的に押込む必要があ
った。この再投入及び押込みの操作により、接着防止材
2の破損は甚大であることが予想されたが、比較例4で
述べたような再投入時の接着防止材4の乖離は観察され
なかった。
【0258】掘削孔径が小さくなったため建て込み抵抗
が大きくなり(建て込み不良)接着防止材4自体は、か
なり破損していたものと推定されたにもかかわらずH形
鋼が容易に抜けたのは、筒状の接着防止材4の内側に塗
布されていたワックスの密着(粘着)効果により接着防
止材4はH形鋼表面に密着しているため、破損が起こっ
ても接着防止材4のH形鋼表面からの乖離が起こらず、
セメントミルクのH形鋼表面への流入(接触)を最小限
に抑えることができたためと考察された。
【0259】また、疎水性潤滑層であるワックスは、上
記密着効果を発現すると共にH形鋼の引抜き時には、ワ
ックス固有の潤滑性能も発揮し、引抜きをさらに容易に
したものと考察された。
【0260】さらに、引抜いたH形鋼は、セメント塊や
土砂の付着がほとんどなく、変形も全く見られず良好な
状態で、直ぐにリサイクル可能な状態であった。
【0261】さらにまた、ワックスがH形鋼表面に極め
て薄く付着していたが、これがサビ止めの効果を発現す
るものと思われた。 〔実施例5〕 〔吸水性潤滑層シートの吸水性樹脂〕吸水性潤滑層シー
トの吸水性樹脂としては、市販のポリアクリル酸ナトリ
ウム塩架橋体(アクアリックML−20、平均粒子径2
0μm、日本触媒製)を用いた。 〔吸水性潤滑層シートの接合剤〕吸水性樹脂をシート状
基材に付着させる接合剤として、塗膜ガーレー剛軟度が
347(mgf){N}の天然ゴム樹脂を使用した。 〔吸水性潤滑層シートのシート状基材〕幅1250m
m、ポリエステル/レーヨン=60/40重量比、坪量
160g/m2の織物基布を用いた。 〔疎水性潤滑層の疎水性潤滑剤〕疎水性潤滑層の疎水性
潤滑剤としては、半固形状潤滑剤(混和ちょう度30〜
170)であるニグライダーTN−2を用いた。TN−
2:日本グリース(株)製、融点75.6℃、チョウ度
85、粘度17.0cSt/100℃、引火点280℃、
うす茶褐色硬いペト状(半固形) (1)接着防止材シートの作製 (吸水性潤滑層シートの作製)下記の条件で、上記シー
ト状基材の片面に上記天然ゴム樹脂と上記吸水性樹脂の
混合樹脂を塗布し吸水性潤滑層となるシートを作製し
た。尚、塗布面を表面とし、未塗布面は裏面とした。ま
た、この吸水重量は自重の7倍であった。 ・天然ゴムと吸水性樹脂は混合しシート状基材に塗布す
るが、この混合樹脂乾燥塗布量は100g/m2とし、
天然ゴム/吸水性樹脂の重量比は、50/50とした。 ・樹脂塗布幅は1050mm、塗布長さは110mで行
なった。これを半分に切断し55m巻を2本作った。 (疎水性潤滑層の作製)上記吸水性潤滑層シートの裏面
に上記半固形状疎水性潤滑剤を塗布し、それと同時に疎
水性潤滑剤塗布面の上から別の上記吸水性潤滑層シート
の裏面を合わせて巻き取った。つまり2枚の吸水性潤滑
層シート裏面で疎水性潤滑層が挟まれた3層構造の接着
防止材シートを得た。 ・疎水性潤滑剤塗布幅は900mm、疎水性潤滑剤塗布
量は600~700g/m2とした。 ・疎水性潤滑剤未塗布の両端は幅1050mmになるよ
うに切断し、仕上がり長さを約55mとした。 (2)試験用接着防止材の作製 上記の接着防止材シートを裁断して幅75mm、長さ1
40mmの接着防止材5を作製した。 (3)鋼板の建て込み 支持体として用いられる下記鋼板の建て込みを以下の条
件で行なった。 (使用支持体)支持体として鋼板を用いた。鋼板は、幅
70mm、長さ150mm、厚み0.8mmの鋼板(日
本テストパネル大阪株式会社製、標準試験板 JIS
3141)を使用した。 (建て込み)以下の様にソイルセメントミルク中に鋼板
を投入する建て込みを行なった。上記接着防止材5の
半固形状潤滑剤を介して貼り付いている2枚の吸水性潤
滑層である吸水性樹脂シートを剥がす。これにより半固
形状粘着剤が裏面に付着した吸水性樹脂シートが2枚で
き、各々のシートが新たな接着防止材となり、接着防止
材5−1と接着防止材5−2ができる。 鋼板に接着防止材5−1を疎水性潤滑層の粘着力を利
用して貼付けた。 次に鋼板を裏返し、上記及びの作業と同じ作業を
行ない反対面の接着防止材5−2の貼付けを行なった。 セメントミルク中に上記の接着防止材が被覆した接続
鋼板を垂直に建て込んだ(投入)。尚、ソイルセメント
ミルク配合は、水:セメント:ベントナイト:粘土=2
518:582:60.3:1622であり、浸漬深さ
は140mmとした。 (4)鋼板の引抜き 建て込み後3日間残置した後下記の引抜機で引抜いた。
その際の引抜荷重を測定した。引抜機は、JIS L
1096(一般織物試験方法)の引張試験方法(引張強
さ)に基づく低速伸長引張試験機を使用して、引張速度
20mm/minの条件で以て測定した。(単位:N
(kgf)) (5)結果 結果としては、最大引抜荷重は9.8N(1.0kg
f)で、鋼板単位表面積当たりの最大引抜力である最大
付着強度は500N/m2(51.0kgf/m2)であ
った。引抜きが極めて容易であった。
【0262】この結果から、実際の現場施工において、
工期短縮(経済性向上)、作業安全性の向上、鋼材のリ
サイクル等を実現することが期待された。
【0263】また、建て込み時において、この付着防止
材は鋼板表面に密着しているので、現場施工において、
鋼材の表面及び形状が明確にできるため、建て込み精度
の低下を防ぐことができる。また、得られた接着防止材
5は風合いが非常にに柔らかく鋼板表面への密着性は向
上していた。また、貼る位置を正確に決めるために接着
防止材5を貼り付けたままずらして位置調製することが
容易で融通がきき易かった。さらに、貼り直しも容易で
あった。(補修容易)
【0264】
【発明の効果】本発明の組成物は、少なくとも、吸水剤
と疎水性潤滑剤とを含む組成物であり、吸水剤と疎水性
潤滑剤との重量組成比が1:100〜100:1の範囲
である構成である。
【0265】上記の構成によれば、物体間に存在する、
水を吸収した吸水剤および/または疎水性潤滑剤は、物
体間の接着防止および潤滑性、止水性(漏れ防止性)を
発現する。この吸水剤と疎水性潤滑剤との相乗効果によ
り、より高い物体間の接着防止を行うことができる。
【0266】また、より好ましい本発明の組成物は、吸
水剤が、吸水性樹脂である構成である。
【0267】上記の構成によれば、吸水性樹脂の吸水膨
潤性により柔軟で潤滑性に優れたゲルを形成するが、こ
のゲルの潤滑性能及び物体間の接着防止性能により、よ
り高い物体間の接着防止および空隙の止水を実現する。
【0268】また、さらに好ましい本発明の組成物は、
疎水性潤滑剤が、半固形状潤滑剤である構成である。
【0269】上記の構成によれば、半固形状粘着剤の高
い潤滑性能により物体間の接着を更に確実に防止する。
また、半固形状粘着剤の高い粘着性により物体やシート
状基材表面への塗布や貼付けなどによる付着(密着)作
業を容易にし、取扱い性、生産性を向上させる。さら
に、吸水剤との混合が容易で、しかも吸水剤の沈降が起
こらず吸水剤が疎水性潤滑剤と均一に分散混合させるこ
とができる。
【0270】潤滑剤は、10℃から30℃の常温におい
て、液状潤滑剤、半固形状潤滑剤、固形潤滑剤の大きく
3つに分類されるが、液状及び固形状の潤滑剤は物体や
シート状基材表面への塗布や貼付けなどによる付着(密
着)作業時に液ダレや脱落などの問題が生じる場合があ
る。これに対し、例えば鉱油を配合して半固形状に調製
したワックスやグリースなどの常温において半固形状潤
滑剤は、潤滑性能と共に粘着力(鋼材やシート状基材に
対する密着力)を有することから、物体やシート状基材
への無溶剤塗布などの塗布や貼付けを容易にし、取扱い
性、生産性を向上させる。また、特にワックス系半固形
状潤滑剤が特に好ましく、溶融塗布が可能で加工性がさ
らに向上する。
【0271】本発明の第一の接着防止材は、水硬性組成
物と支持体との接着を防止する材料であって、少なくと
も、吸水剤と疎水性潤滑剤とを含む混合物を含む構成で
ある。
【0272】上記の構成によれば、支持体と水硬性組成
物との間に接着防止材を介在させることで支持体と水硬
性組成物との接着防止を実現する。
【0273】例えば、支持体であるH形鋼と水硬性組成
物であるソイルセメント硬化体との接着防止を実現し、
H形鋼の引抜き回収を容易にする。
【0274】また、より好ましい本発明の第一の接着防
止材は、少なくとも、吸水剤と疎水性潤滑剤とを含む混
合物を支持体表面に直接付着させる構成である。
【0275】上記の構成によれば、支持体表面に接着防
止材を塗布などにより直接付着させることで支持体と水
硬性組成物との接着防止を実現する。また、例えば、塗
布により接着防止材を被覆したH形鋼は、H形鋼の輪郭
を明確にできることから狭い孔径の穴の中へも容易に投
入(建て込み)ができる。
【0276】また、本発明の第一の接着防止材を用いた
好ましい支持体撤去工法は、H形鋼等の支持体の表面の
少なくとも一部に、吸水剤と疎水性潤滑剤との混合物を
含む接着防止材を塗布する工程、該支持体を水硬性組成
物と接触させる工程、水硬性組成物を硬化させる工程、
および、支持体を撤去する工程を順に含む構成である。
【0277】上記の構成によれば、支持体と水硬性組成
物との接着防止を確実に実現する。本発明の第二の接着
防止材は、第一の接着防止材において、さらに、シート
状基材を含む構成である。
【0278】上記の構成によれば、支持体と水硬性組成
物との間にこの接着防止材を介在させることで支持体と
水硬性組成物との接着防止を実現する。
【0279】例えば、支持体であるH形鋼と水硬性組成
物であるソイルセメント硬化体との接着防止を実現し、
H形鋼の引抜き回収を容易にする。
【0280】また、より好ましい本発明の第二の接着防
止材は、水硬性組成物層の側にシート状基材層が配置さ
れ、支持体表面側に吸水剤と疎水性潤滑剤とを含む混合
物層が配置されている構成である。
【0281】上記の構成によれば、上記した被覆作業性
向上と共に支持体と水硬性組成物との接着防止を更に確
実に実現する。水硬性組成物側にこの接着防止材のシー
ト状基材層を配し、H形鋼等の支持体表面側に吸水性樹
脂と疎水性潤滑剤との混合物を含む組成物層を配置する
ことが、組成物の密着力を利用して支持体表面に接着防
止材を密着(貼付け)させることができ特に好ましい。
例えば、シート状の接着防止材をH形鋼などの支持体に
密着させる利点としては、再剥離可能で接着防止材の
取扱い性、作業性が向上すること、被覆した支持体
(例えばH形鋼)の輪郭が明確で建て込み精度を向上さ
せること、施工時に接着防止材が破損しても支持体表
面から接着防止材は乖離し難く高い接着防止性を保持で
きることなどが挙げられる。
【0282】また、本発明の第二の接着防止材を用いた
好ましい支持体撤去工法は、H形鋼等の支持体の少なく
とも一部に、吸水剤と疎水性潤滑剤との混合物とシート
状基材とを含む接着防止材で被覆する工程、該支持体を
水硬性組成物と接触させる工程、水硬性組成物を硬化さ
せる工程、および、支持体を撤去する工程を順に含む構
成である。
【0283】上記の構成によれば、支持体と水硬性組成
物との接着防止を更に確実に実現する。
【0284】本発明の第三の接着防止材は、水硬性組成
物と支持体との接着を防止する材料であって、少なくと
も、吸水剤を含む吸水性潤滑層と、疎水性潤滑剤を含む
疎水性潤滑層とを、有する構成である。
【0285】上記の構成によれば、水を吸収することに
より水硬性組成物(硬化物)と支持体との(両者)の接
着防止性能及び潤滑性能を発現する吸水性潤滑層と、そ
の両者の接着防止性能及び潤滑性能を有する疎水性潤滑
剤を含む疎水性潤滑層との相乗効果により、より高い両
者の接着防止を行うことができる。例えば、ソイルセメ
ント硬化体からのH形鋼の引抜き回収を容易に実現す
る。また、被覆作業も改善され、ソイルセメント中に被
覆したH形鋼を容易に投入できるようになる。
【0286】また、より好ましい本発明の第三の接着防
止材は、吸水剤が、吸水性樹脂である構成である。
【0287】上記の構成によれば、吸水性潤滑層は、吸
水性樹脂の吸水膨潤性により柔軟で潤滑性に優れたゲル
層を形成するが、このゲル層の潤滑性能及び上記水硬性
組成物(硬化物)と支持体との両者の分離性能により、
より高い両者の接着防止を実現する。
【0288】本発明の第四の接着防止材は、本発明の第
三の接着防止材において、吸水性潤滑層が、少なくとも
アルカリ水可溶性樹脂を含む潤滑層である構成である。
【0289】吸水性潤滑層は、吸水性樹脂を基材に付着
させることが、加工及び経済性から好ましいが、接合剤
として疎水性の接合剤を用いると吸水性樹脂の吸水膨潤
性を阻害する場合があり、また、水溶性の接合剤を用い
ると雨などに濡れた時や硬化前の液状の水硬性組成物に
接触した時に、容易に吸水性樹脂が脱落して、何れも所
期の性能を発現しなくなる場合がある。これに対し、ア
ルカリ水可溶性樹脂は、例えば建て込み前などの使用前
において、雨などの水に接触しても容易に可溶化しない
ことや特有の高接着力を有することから吸水性樹脂の脱
落を防止できる。また一方、アルカリ水可溶性樹脂は、
アルカリ性を呈するセメント水などの水硬性組成物中で
は可溶化することから、例えば建て込み時の使用時にお
いて、吸水性樹脂の吸水膨潤を阻害しない(膨潤規制を
起こさない)という特徴を有している。
【0290】上記の構成によれば、アルカリ水可溶性樹
脂を含む吸水性潤滑層を用いることで、上記水硬性組成
物(硬化物)と、支持体との更に高い接着防止を実現す
る。
【0291】本発明の第五の接着防止材は、本発明の第
三の接着防止材において、吸水性潤滑層が、少なくとも
塗膜ガーレー剛軟度が1000(mgf){N}以下の樹脂
を含む潤滑層である構成である。上記構成によれば、塗
膜ガーレー剛軟度が1000(mgf){N}以下の柔らか
い樹脂で吸水剤を付着させているので、吸水性潤滑層の
吸水剤が吸水するときの膨潤(ゲル化)規制が小さく、
上記水硬性組成物(硬化物)と、支持体との接着防止を
容易に実現する。
【0292】本発明の第六の接着防止材は、本発明の第
一から第五の接着防止材において、疎水性潤滑剤が、半
固形状潤滑剤である構成である。
【0293】上記の構成によれば、下記の被覆作業性向
上と共に上記両者の更に確実な接着防止を実現する。ま
た、疎水性潤滑層の複合化を容易にする。
【0294】本発明の接着防止材の疎水性潤滑層側をH
形鋼等の支持体表面側に配することで、その密着力を利
用して支持体表面に接着防止材を密着(貼付け)させる
ことができ特に好ましい。例えば、シート状の接着防止
材をH形鋼などの支持体に密着させる利点としては、 半固形状潤滑剤特有の再剥離可能な密着性により、貼
り直しが自由に調整でき貼付け作業が極めて容易にする
ことができる。 土留め壁造成において、接着防止材をH形鋼(支持
体)に密着させることによりH形鋼表面を明確に確認で
きるため、建て込み精度を高くすることができ作業性を
改善できる。 土留め壁造成において、本発明の接着防止材は、半固
形状潤滑剤の密着効果(粘着効果)により接着防止材を
H形鋼表面に密着させることができるため、接着防止材
自体が、かなり破損しても、接着防止材のH形鋼表面か
らの乖離が起こらず、セメントミルクのH形鋼表面への
流入(接触)を最小限に抑えることができる。従って、
H形鋼の引抜き回収を容易に実現する。 などが挙げられる。
【0295】また、鉱油を配合して半固形状に調製した
ワックスやグリースなどの常温において半固形状の半固
形状潤滑剤は、潤滑性能と共に粘着力(鋼材に対する密
着力)を有することから、吸水性潤滑層への無溶剤塗布
が可能で複合化を容易にする。また、特にワックス系半
固形状潤滑剤が特に好ましく、溶融塗布が可能で加工性
がさらに向上する。
【0296】上記半固形状潤滑剤の好ましい混和ちょう
度としては、3から385であるが、より好ましくは5
から250であり、さらに好ましくは10から170で
ある。混和ちょう度が3未満だと潤滑性が低下し鋼材に
対する粘着力も低下し脱落が起こり易くなる。さらに溶
融に時間がかかり溶融塗布が煩雑になるという問題が生
じる。また、混和ちょう度が385を超えると液ダレが
生じ周辺を汚染し粘着力も低下する問題が生じる。
【0297】また、より好ましい本発明の第三から第六
の接着防止材は、水硬性組成物層の側に吸水性潤滑層が
配置され、支持体表面側に疎水性潤滑層が配置されてい
る構成である。
【0298】上記の構成によれば、吸水性潤滑層の吸水
膨潤を容易に発現することができ、さらに疎水性潤滑層
の粘着性により支持体表面に接着防止材を容易に密着
(粘着)させることができるので、上記の作用効果を発
現し水硬性組成物(硬化物)と支持体との接着をさらに
防止することができる。
【0299】本発明の第七の接着防止材は、少なくと
も、シート状基材と吸水剤と塗膜ガーレー剛軟度が10
00(mgf){N}以下の樹脂とを含む構成である。
【0300】上記の構成によれば、水硬性組成物(硬化
物)と支持体との接着防止を容易に実現する。
【0301】本発明の第八の接着防止材は、本発明の第
一から第七の接着防止材において、吸水剤が、吸水性樹
脂である構成である。
【0302】上記の構成によれば、吸水性樹脂と疎水性
潤滑剤とを含む混合物または吸水性潤滑層は、吸水性樹
脂成分の吸水膨潤性により柔軟で潤滑性に優れたゲル層
を形成するが、このゲル層の優れた、潤滑性能及び上記
水硬性組成物(硬化物)と支持体との分離性能により、
水硬性組成物(硬化物)と支持体との接着防止を容易に
実現する。
【0303】本発明の接着防止材の第一の用途は、本発
明の接着防止材を、土留め壁用の仮埋設物と硬化セメン
ト組成物との接着防止に使用する。
【0304】上記した接着防止材の接着防止性能によっ
て、土留め壁用の仮埋設物とセメント組成物の硬化物と
の接着を、より完全に防止する。
【0305】本発明の接着防止材の第二の用途は、本発
明の接着防止材を、仮埋設物と流動化処理土との接着防
止に使用する。
【0306】上記した接着防止材の接着防止性能によっ
て、仮埋設物と流動化処理土との接着を、より完全に防
止する。
【0307】本発明の組成物の第三の用途は、本発明の
組成物および接着防止材を止水や漏水防止に使用する。
【0308】特に本発明の該混合物を含む接着防止材
は、吸水性樹脂の特性による吸水によって体積膨張性を
有し、疎水性潤滑剤の特性によって、疎水性または撥水
性を有することから、鋼矢板のジョイント部や地盤、岩
盤、コンクリート等の隙間またはひび割れ部の止水や漏
水防止を確実に実現する。また、特に本発明の吸水剤と
疎水性潤滑材との混合物を含む接着防止材は加熱により
無溶剤で極めて低粘度(シャフ゛イ)の液状体とすることが
できるため、作業環境が安全でしかも注入施工が容易で
あるので作業性、施工性に優れている。更に、どんなに
細く小さい隙間にも注入ができる。
【0309】本発明の支持体撤去工法は、H形鋼等の支
持体の少なくとも一部を、本発明の接着防止材で被覆す
る工程、該支持体を水硬性組成物と接触させる工程、水
硬性組成物を硬化させる工程、および、支持体を撤去す
る工程を順に含む構成である。
【0310】上記の構成によれば、水を吸収することに
より水硬性組成物(硬化物)と支持体との(両者)の接
着防止性能及び潤滑性能を発現する、吸水剤と疎水性潤
滑剤とを含む混合物の吸水剤成分または吸水性潤滑層
と、その両者の接着防止性能及び潤滑性能を有する、吸
水剤と疎水性潤滑剤とを含む混合物の疎水性潤滑剤成分
または疎水性潤滑層との相乗効果により、容易に支持体
を撤去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)、(b)共に、支持体(仮埋設物)を
シート状の接着防止材(被覆材)で被覆することによっ
て本発明の実施の一形態にかかる被覆形成する手順を示
す概略の斜視図である。
【図2】 (a)〜(d)共に、支持体(仮埋設物)を
シート状の接着防止材(被覆材)で被覆することによっ
て本発明の実施の他の形態にかかる被覆形成する手順を
示す概略の斜視図である。
【図3】 シート状の接着防止材を袋状の形状に縫製加
工した状態を示す説明図である。
【図4】 (a)は、本発明のシート状の接着防止材の
被覆方法に用いられる接着防止材破損防止用装着具の構
成を示す説明図であり、(b)は、上記装着具を装着し
た状態を示す説明図である。
【図5】 本発明の実施の一形態にかかるシート状の接
着防止材の構造を示す概略断面図である。
【図6】 上記シート状の接着防止材における他の構造
を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 シート状の接着防止材(被覆材) 2 支持体(仮埋設物) 3 紐(ロープ) 4 作業員 5 滑車 6 クレーン 10 シート状の接着防止材(被覆材) 11 固定治具 14 先端カバー 15 補強帯 16 吊りひも 17 縛りひも 18 接着防止材破損防止用装着具 21 袋状の接着防止材 22 支持体(仮埋設物) 31 シート状基材層または吸水性潤滑層 32 吸水剤と疎水性潤滑剤とを含む混合物層または疎
水性潤滑剤層 33 シート状の接着防止材
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成13年10月12日(2001.10.
12)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の名称
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の名称】 接着防止材
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正内容】
【0014】組成物は、少なくとも、吸水剤と疎水性潤
滑剤とを含む組成物であり、吸水剤と疎水性潤滑剤との
重量組成比が1:100〜100:1の範囲である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正内容】
【0016】また、より好ましい組成物は、吸水剤が、
吸水性樹脂である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正内容】
【0018】また、さらに好ましい組成物は、疎水性潤
滑剤が、半固形状潤滑剤である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0264
【補正方法】変更
【補正内容】
【0264】
【発明の効果】組成物は、少なくとも、吸水剤と疎水性
潤滑剤とを含む組成物であり、吸水剤と疎水性潤滑剤と
の重量組成比が1:100〜100:1の範囲である構
成である。

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも、吸水剤と疎水性潤滑剤とを
    含む組成物であり、吸水剤と疎水性潤滑剤との重量組成
    比が1:100〜100:1の範囲であることを特徴と
    する組成物。
  2. 【請求項2】 水硬性組成物と支持体との接着を防止す
    る材料であって、少なくとも、吸水剤と疎水性潤滑剤と
    を含む混合物を含むことを特徴とする接着防止材。
  3. 【請求項3】 さらに、シート状基材を含むことを特徴
    とする、請求項2記載の接着防止材。
  4. 【請求項4】 水硬性組成物と支持体との接着を防止す
    る材料であって、少なくとも、吸水剤を含む吸水性潤滑
    層と、疎水性潤滑剤を含む疎水性潤滑層とを、有するこ
    とを特徴とする接着防止材。
  5. 【請求項5】 吸水性潤滑層が、少なくともアルカリ水
    可溶性樹脂を含む潤滑層であることを特徴とする請求項
    4に記載の接着防止材。
  6. 【請求項6】 吸水性潤滑層が、少なくとも塗膜ガーレ
    ー剛軟度が1000(mgf){N}以下の樹脂を含む潤滑
    層であることを特徴とする請求項4に記載の接着防止
    材。
  7. 【請求項7】 疎水性潤滑剤が、半固形状潤滑剤である
    ことを特徴とする請求項2〜6の何れかに記載の接着防
    止材。
  8. 【請求項8】 少なくとも、シート状基材と吸水剤と塗
    膜ガーレー剛軟度が1000(mgf){N}以下の樹脂と
    を含むことを特徴とする接着防止材。
  9. 【請求項9】 吸水剤が、吸水性樹脂であることを特徴
    とする請求項2〜8のいずれかに記載の接着防止材。
  10. 【請求項10】請求項2〜9の何れかに記載の接着防止
    材を、土留め壁用の仮埋設物と硬化セメント組成物との
    接着防止に使用する方法。
  11. 【請求項11】請求項2〜9の何れかに記載の接着防止
    材を、仮埋設物と流動化処理土との接着防止に使用する
    方法。
  12. 【請求項12】請求項1に記載の組成物または請求項2
    に記載の接着防止材を、止水材として使用する方法。
  13. 【請求項13】H形鋼等の支持体の表面の少なくとも一
    部を、請求項2〜4のいずれかに記載の接着防止材で被
    覆する工程、上記の被覆された支持体を水硬性組成物と
    接触させる工程、水硬性組成物を硬化させる工程、およ
    び、支持体を撤去する工程を順に含むことを特徴とする
    支持体撤去工法。
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