JP4551149B2 - 地中構造物外壁用止水材 - Google Patents
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(1)積層構造を有する地中構造物用止水材であって、内層として遮水シートを配置して、前記遮水シートの両面側に粘着性かつ吸水膨潤性を有する水膨潤剤層を設け、更に、該水膨潤剤層を水や異物から保護するアルカリ分解性樹脂膜である保護層を前記一方の水膨潤剤層の外面側に設け、前記他方の水膨潤剤層の外面側に剥離層を設けたことを特徴とする地中構造物用止水材、
(2)前記水膨潤剤層が水膨潤性を有する鉱物および粘着性を有する有機粘着剤を含有する組成物よりなることを特徴とする(1)記載の地中構造物用止水材、
(3)前記水膨潤性を有する鉱物がベントナイト、スメクタイト、および膨潤性雲母から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする(2)記載の地中構造物用止水材、
(4)前記有機粘着剤がアスファルト、ゲル化油、液状樹脂、およびゴム状物質から選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする(2)又は(3)記載の地中構造物用止水材、
(5)前記遮水シートがポリエステル系樹脂シート、ポリビニル系樹脂シート、ポリエチレン系樹脂シート、およびアスファルト含浸不織布から選ばれる少なくとも1つである(1)〜(4)のいずれか1項に記載の地中構造物用止水材、
(6)前記遮水シートの50%伸張時のモジュラスが1MPa以上である(1)〜(5)のいずれか1項に記載の地中構造物用止水材。
本発明の止水材の好ましい実施態様を、図1を例に説明する。本発明の止水材は、図1に示すように、遮水シート層12を内層に配設し、その両側に水膨潤剤層11Aおよび11Bが設けられており、水膨潤剤層11A、11Bの外面に、それぞれ、保護層13、および剥離層14が設けられた積層構造である。遮水シート12は、本発明の止水材を施工する際に必要な強度を止水材全体に与えると共に、水膨潤剤層11Aおよび11Bが地下水等と接して吸水し膨潤する際に膨潤による変形を適度に抑制し、止水性能を維持するという重要な目的を有する。
本発明の止水材は、図1の実施態様に限られるものではなく、各層の間に他の層を挿入してもよく、また保護層13もしくは剥離層14の外側に他の層を追加して貼り付けてもよい。
本発明の止水材の好ましい実施態様を、図1を例に説明する。本発明の止水材は、図1に示すように、遮水シート層12を内層に配設し、その両側に水膨潤剤層11Aおよび11Bが設けられていることが好ましく、水膨潤剤層11A、11Bの外面に、それぞれ、保護層13、および剥離層14が設けられた積層構造がより好ましい。遮水シート12は、本発明の止水材を施工する際に必要な強度を止水材全体に与えると共に、水膨潤剤層11Aおよび11Bが地下水等と接して吸水し膨潤する際に膨潤による変形を適度に抑制し、止水性能を維持するという重要な目的を有する。
本発明の止水材は、図1の実施態様に限られるものではなく、各層の間に他の層を挿入してもよく、また保護層13もしくは剥離層14の外側に他の層を追加して貼り付けてもよい。
本発明の止水材に用いられる遮水シートとしては、遮水性を有し打設されるコンクリートの圧力に耐える抗張力を有するシートであれば特に限定されないが、例えば、ポリエステル系樹脂シート(例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂シート)、ポリビニル系樹脂シート(例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂シート)、ポリエチレン系樹脂シート(例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂シート)、およびアスファルト含浸非透水性不織布等の遮水シートが好ましい。
本発明の止水材において、遮水シートは1層であっても2層以上であってもよい。2層以上の場合は、それぞれ同一のシートであっても異なるシートであってもよい。また、本発明の止水材において、遮水シートの厚さは、追随する山留壁面の形状や打設されるコンクリートの圧力などにより適宜設定することができるが、一般的な条件において、0.01mm〜5.0mmが好ましく、0.1mm〜3.0mmのものがより好ましい。遮水シートの物性も上記と同様に使用される条件に応じて適宜設定されるが、50%伸張時のモジュラスが1MPa以上が好ましく、100%伸張時のモジュラスが2MPa以上がより好ましく、100%伸張時のモジュラスが5MPa以上が特に好ましい。
本発明の止水材において水膨潤剤層は、地下外壁の躯体側に位置する面(以下、「A面」ともいう。)、および山留め壁や型枠側に位置する面(以下、「B面」ともいう。)に区別されるが、A面側には水膨潤剤層を保護する目的で、図1における保護層13が貼り付けられる。この保護層は、粘着性を有する水膨潤剤層の保管時や輸送時、施工時に異物が水膨潤剤層の表面に付着することを防止すると共に水膨潤剤層の粘着性を抑えることにより、本発明の止水材の取扱性を向上させる。本発明の止水材に用いられる保護層は、アルカリ分解性樹脂膜である。アルカリ分解性フィルムを用いることにより、コンクリートが打設されるまでの間、水膨潤剤層を水や異物から保護し、コンクリートが打設された後は、コンクリートのアルカリ分によって分解されるため、剥がす手間を掛けることなく、供用時において止水材の水膨潤剤層と地中構造物の躯体とが密着することができる。
本発明の止水材において、前記水膨潤剤層のB面には剥離層が貼り付けられる。この剥離層は、前述の保護層と同様に粘着性を有する水膨潤剤層の保管時や輸送時、施工時に異物が水膨潤剤層の表面に付着することを防止すると共に水膨潤剤層の粘着性を抑えることにより、本発明の止水材の取扱性を向上させる。本発明の止水材に用いられる剥離層としては、剥離効果を有するものであればどのようなものでも用いることができ、一般的に剥離フィルム(または離形紙)として市販されているものを用いることができる。本発明の止水材に用いられる剥離層は、止水材の施工時に剥がして使用しても剥がさずに使用してもよいが、少なくとも止水材同士の接合部における重ね合わせの範囲は剥離し、止水材の水膨潤剤層B面を露出させる必要がある。
剥離層の厚さは、物性と取扱性、及び剥離後の廃棄物の抑制という観点から適宜採用できるが、通常、0.001mm〜1mmが好ましく、0.01mm〜0.1mmがより好ましい。剥離層を水膨潤剤層の上に形成する方法としては、定形品を水膨潤剤層に貼り付ける、または樹脂を溶解しうる有機溶媒に適当な濃度となるよう溶解しておき塗布(コーティング)して形成することができる。
本発明の止水材に用いられる粘着性を有する水膨潤剤としては、ベントナイト等の水膨潤性を有する粘土(以下、これを成分(A)ともいう。)と、これにアスファルト、ゲル化油、液状樹脂および未加硫ゴムなどの粘着性を有する有機物から選ばれる少なくとも1つ(以下、これを成分(B)ともいう。)を混合した組成物が好ましく、均一に混合した組成物がより好ましい。当該水膨潤剤は、その保有する粘着性により止水材同士の接合時において粘着し一体化することができると共に水膨潤性を有する防水層を形成し、形成された防水層は自己修復性の利点を有する。
水膨潤剤層を遮水シートの上に成形する方法としては、例えば、ロール成型機によりシート状に成形し遮水シートに貼り付けてもよく、溶解しうる有機溶媒に適当な濃度となるよう溶解しておき塗布(コーティング)して成形してもよく、押し出し成型機により水膨潤剤と遮水シートを共押して成形してもよい。
上記の本発明の好ましい実施の形態を図1で説示すると、水膨潤剤層のA面には保護層13が貼付けられ、B面には剥離層14が貼り付けられた積層構造が好ましい。本発明の止水材を土留壁に仮留めしてからコンクリートの打設により構造物の地下外壁が構築されるまでの間、止水材が降雨などにより長時間水と接触するような時には、水膨潤剤層は有機粘着剤の作用により膨潤速度を抑えられているが、その限界を超えて膨潤を始め自己修復機能を低下される恐れがある。これに対して、前記保護層13がアルカリ分解性樹脂膜であることから、コンクリート打設までの期間、水膨潤剤層11AのA面が水との接触を遮断することにより水膨潤剤層の自己修復機能低下を防止でき、その後、当該アルカリ分解性樹脂膜の内側面に接するように地下外壁躯体のコンクリートが打設されることにより、当該アルカリ分解性樹脂膜は、コンクリートのアルカリ成分によりまもなく分解されるため、当該アルカリ分解性樹脂膜を除去する手間を掛けることなく、前記水膨潤剤層と地下外壁躯体の表面が密着した防水層を構築することができる。
ベントナイト(クニミネ工業株式会社製;商品名クニゲルVA)に、針入度60/80のストレートアスファルト100重量部に対しスチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)樹脂7重量部を加えて成る改質アスファルト、および鉱油系プロセスオイル(コスモ石油社製;商品名コスモプロセス100)を、ベントナイト100重量部に対し、改質アスファルト60重量部、および鉱油系プロセスオイル10重量部の割合で配合し、加熱ジャケット付きディスパーを用いて160℃に加熱しながら充分に混合し、粘着性を有する水膨潤剤を得、これを組成物1とした。この組成物1は粘着性を有し、水に漬けると適度な膨潤速度で膨潤した。
次に、以下の手順で図1に示す止水材を成形した。剥離層14として、ロール状に巻き取られた剥離紙の剥離処理が施された面上に、前記組成物1を加熱溶融状態で連続的に流し込み、厚さが1mmの水膨潤剤層11Bを調製した上に、積層構造の中心部遮水シート12として、ロール状に巻き取られたポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂製シート(厚さ0.75mm)を貼り付け、さらにその上に前記組成物1を加熱溶融状態で連続的に流し込み、厚さが1.5mmの水膨潤剤層11Aを調整した上に、保護層13としてロール状に巻き取られたポリ乳酸樹脂製フィルム(厚さ40μm)を貼り付けて、積層構造の止水材を得、これの幅を200mmにカットした帯状止水材を試料1とした。
次に、以下の手順で図2に示す止水材を成形した。実施例1に記載した帯状止水材の製造過程において、図1における片方の組成物11Bおよび剥離層14を設ける工程を省略した以外は同様な処置を行った。図2で説示すると、ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂シートの片面にのみ水膨潤剤層21が存在する積層構造の止水材の幅を200mmにカットした帯状止水材を得、これを試料2とした。
マシン油(コスモ石油製;製品名 コスモマシン46)100重量部、ラウリン酸(花王製;製品名 ルナックL-98)50重量部、および消石灰(秩父石灰工業製 型番SA149)10重量部を90℃に加熱して充分に反応させゲル化基油を得た。このゲル化基油とベントナイト(クニミネ工業株式会社製;商品名クニゲルV1)、ブチルゴム(JSR社製;型番Butyl065)、およびポリブテン(新日本石油化学製;型番 HV-100)を、ベントナイト100重量部に対し、ゲル化基油50重量部、ブチルゴム10重量部、およびポリブテン2重量部割合で配合し、加熱式ニーダーを用いて150℃に加熱しながら充分に混合し、粘着性を有する水膨潤剤を得、これを組成物2とした。この組成物2は粘着性を有し、水に漬けると適度な膨潤速度で膨潤した。
次に、以下の手順で図1に示す止水材を成形した。当該組成物2は、ロール成型機により厚さ2mmと3mmのシート状に成形し、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂製遮水シート(厚さ1mm)の両面に当該遮水シート12が積層構造の中心部に介在するように貼り付けられ、さらにそれぞれの組成物2の一方側の表面に保護層13としてポリビニルアルコール樹脂製フィルムを、他方側の表面に剥離層14としてポリエチレンフィルム(厚さ45μm)を貼り付けて、積層構造の止水材を得、これの幅を200mmにカットした帯状止水材を試料3とした。
次に、以下の手順で図3に示す止水材を成形した。実施例2に記載した帯状止水材の製造過程において、同様の方法で組成物2を得て、ロール成型機により厚さ5mmのシート状に成形し、組成物2の一方側の表面に保護層33としてポリビニルアルコール樹脂製フィルムを、他方側の表面に剥離層34としてポリエチレンフィルム(厚さ45μm)を貼り付けて、積層構造の止水材を得、これの幅を200mmにカットした帯状止水材を試料4とした。
次に、以下の手順で図4に示す止水材を成型した。実施例1に記載した帯状止水材の製造過程において、ポリエチレンテレフタレート樹脂製遮水シート(図1における遮水シート12)の替わりにポリエステル樹脂製メッシュ(図4におけるメッシュシート45)を用いる以外は同様の工程を経て、積層構造の止水材を得、これを試料5とした。
<止水性能試験供試体>
止水性能試験を図5を用いて説明すると、土留壁に見立てた立方体の木箱507を作製し、その垂直面に位置する四面に土留壁の凹凸を模した直径30mmの孔507aをあけ、更に上面には注水管509と圧力ゲージ取付管510を設けたものを5つ用意した。この木箱507の垂直四面に試料1〜5をそれぞれ釘打により仮留めした。この際、前記直径30mmの孔507aを塞ぐ位置に止水材試料505は釘打ちされ、止水材同士の接合部は50mmの重ね代を設けた。試料1、試料3、試料4及び試料5においては、重ね代部分の剥離紙は剥され、露出した水膨潤性組成物層をその粘着力により密着させた。
また、止水材を取り付けないブランクケースとして直径30mmの孔をあけずに、いずれの試料も仮留めしない木箱507も用意した。
この様にして得られた各止水材試料505を仮留めした木箱507(ブランクケースは止水材なし)の周囲に壁の厚さが150mmと成る様に鉄筋を組み、型枠を建て込んだ後にコンクリートを打設した。このコンクリートの打設に際し、各止水材試料505の中央部に打継部508が形成されるように、コンクリート下部506aとコンクリート上部506bの打設の二期に分けて行った。このものを2週間静置してコンクリートが充分に固まった後、廻りの型枠を取り外してコンクリート面を露出させたものを止水性能試験供試体50とした。
<止水性能試験手順>
止水性能試験の手順を図5を用いて説明すると、上記それぞれの試験供試体50の上面に突き出している注水管509に取り付けたバルブ511aを介して手動式加圧ポンプ514と耐圧ホース513により接続し、圧力ゲージ取付管510から水が溢れるまで充分に木箱507内のエア抜きを行った後、圧力ゲージ取付管510にバルブ511bを介して圧力ゲージ512を取り付けた。この様にして各供試体内部を水で充満させた後、手動式圧力ポンプ514を用い水圧をかけ、0.1MPa水圧を上昇させる毎に注水管509のバルブ511aを閉じ、その時の作用水圧を維持しながら24時間放置するという作業を繰返し、コンクリート打継部508から漏水が発生するまで最大1MPaまで観察を行った。その結果を表1に示す。
また、比較例3の止水材を用いた試験供試体においては、木箱に直径30mmの孔が開いている部分の周辺において、止水材の水膨潤剤層が完全に膨潤しきっており、それに伴う止水材の抗張力低下によるコンクリート面との密着力不足と自己修復性能の低下により漏水が発生したものと考えられる。
11A、11B、21、31、41A、41B 水膨潤剤層
12、22 遮水シート
13、23、33、43 保護層
14、34、44 剥離層
45 メッシュシート
50 止水性能試験供試体
505 止水材試料
506a コンクリート下部
506b コンクリート上部
507 木箱
507a 木箱側面孔
508 コンクリート打継部
509 注水管
510 圧力ゲージ取付管
511a、511b バルブ
512 圧力ゲージ
513 耐水圧ホース
514 手動式加圧ポンプ
Claims (6)
- 積層構造を有する地中構造物用止水材であって、内層として遮水シートを配置して、前記遮水シートの両面側に粘着性かつ吸水膨潤性を有する水膨潤剤層を設け、更に、該水膨潤剤層を水や異物から保護するアルカリ分解性樹脂膜である保護層を前記一方の水膨潤剤層の外面側に設け、前記他方の水膨潤剤層の外面側に剥離層を設けたことを特徴とする地中構造物用止水材。
- 前記水膨潤剤層が水膨潤性を有する鉱物および粘着性を有する有機粘着剤を含有する組成物よりなることを特徴とする請求項1記載の地中構造物用止水材。
- 前記水膨潤性を有する鉱物がベントナイト、スメクタイト、および膨潤性雲母から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項2記載の地中構造物用止水材。
- 前記有機粘着剤がアスファルト、ゲル化油、液状樹脂、およびゴム状物質から選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項2又は3記載の地中構造物用止水材。
- 前記遮水シートがポリエステル系樹脂シート、ポリビニル系樹脂シート、ポリエチレン系樹脂シート、およびアスファルト含浸不織布から選ばれる少なくとも1つである請求項1〜4のいずれか1項に記載の地中構造物用止水材。
- 前記遮水シートの50%伸張時のモジュラスが1MPa以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の地中構造物用止水材。
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