JP3212955B2 - 表面処理剤、埋設物、および接着防止方法 - Google Patents

表面処理剤、埋設物、および接着防止方法

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JP3212955B2
JP3212955B2 JP34755398A JP34755398A JP3212955B2 JP 3212955 B2 JP3212955 B2 JP 3212955B2 JP 34755398 A JP34755398 A JP 34755398A JP 34755398 A JP34755398 A JP 34755398A JP 3212955 B2 JP3212955 B2 JP 3212955B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、埋設物と水硬性組
成物の水和物とで少なくとも構成される構造体における
該埋設物と水硬性組成物の水和物との接着を抑制すべく
上記埋設物の表面に付着される表面処理剤に関するもの
である。また、本発明は、該表面処理剤が付着されてい
る埋設物、および、接着防止方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、建築分野並びに土木分野の基礎
工事において土留め擁壁等の構造体としての地盤基礎構
造体を施工する際には、掘削孔に例えばH型鋼を緩挿し
た後、該H型鋼の周囲にコンクリートを打設して水和
(硬化)させること、若しくは、掘削孔に打設されたコ
ンクリートに例えばH型鋼を心材(埋設物)として埋め
込んだ後、該コンクリートを水和させることが行われて
いる。H型鋼は、コンクリートの水和が終了した後、コ
ンクリート水和物から引き抜かれて再利用される。
【0003】ところが、H型鋼とコンクリート水和物と
は強固に接着しており、H型鋼をコンクリート水和物か
ら引き抜く作業には、付着強度(接着強度)に打ち勝つ
ための相当な引張力(引き抜けない場合が多い)が必要
であるので設備や経費、日数等がかかる。つまり、作業
性に劣るので、地盤基礎構造体を迅速に施工することが
できない。また、引き抜いたH型鋼は変形し、再利用で
きないものとなる。そこで、従来より、H型鋼の表面に
ワックスやグリース等の潤滑油を予め塗布することによ
って該H型鋼を引き抜き易くすることが行われている。
そして、例えば、特開昭64−58715号公報には、
上記潤滑油の代わりに、吸水性樹脂と、ポリエステル系
樹脂やビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂
等の展着剤とからなる心材引き抜き用表面処理剤を用い
ることが提案されている。また、例えば、特開昭63−
165615号公報には、上記潤滑油の代わりに、吸水
性樹脂と、天然ゴムや合成ゴム、プラスチック等の揮発
性膜形成樹脂とからなる水膨潤性膜を用いて、鋼材を引
き抜く際の摩擦抵抗力を低減する方法が提案されてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開昭
64−58715号公報に記載の表面処理剤に含まれる
展着剤、並びに、特開昭63−165615号公報に記
載の水膨潤性膜に含まれる揮発性膜形成樹脂は、コンク
リートに含まれるコンクリート水(アルカリ性を呈する
水)に対する溶解性に乏しい。このため、該展着剤並び
に揮発性膜形成樹脂は、吸水性樹脂が水を吸水して膨潤
する際の体積膨張を阻害してしまう。上記従来の表面処
理剤並びに水膨潤性膜は、このように展着剤並びに揮発
性膜形成樹脂が吸水性樹脂の体積膨張を阻害するので、
該吸水性樹脂がその吸水特性(性能)を充分に発揮する
ことができない。さらに、上記従来の表面処理剤並びに
水膨潤性膜に含まれる吸水性樹脂は、コンクリート水に
対する膨潤性に乏しい。その上、表面処理剤をH型鋼等
の心材に塗布することによって形成される塗膜、並びに
水膨潤性膜は、柔軟性および靱性に劣っているので、作
業現場の温度変化によって心材から剥離したり、べとつ
いたりし易く、ロープ等との摩擦によって損傷を受け易
い。
【0005】従って、上記従来の表面処理剤並びに水膨
潤性膜は、満足する性能が得られず、H型鋼等の心材を
引き抜く作業を容易にする効果が乏しいという問題点を
有している。それゆえ、H型鋼等の心材を引き抜く作業
を容易にすることができる表面処理剤が求められてい
る。
【0006】さらには、H型鋼等の心材を保管しておく
場合においては、通常、該心材を資材置場等に野積みす
ることが行われている。ところが、保管時に雨が降った
り、夜露が発生したり、或いは地面が濡れていたりする
と、塗膜並びに水膨潤性膜に含まれている吸水性樹脂が
吸水し膨潤してしまう。つまり、地盤基礎構造体を施工
する前に既に膨潤しているので、心材表面が滑り易くな
り、地盤基礎構造体の施工作業が困難となる。また、地
盤基礎構造体を施工する前に吸水性樹脂が膨潤すること
を防止するには、防水シートを敷いた上に心材を積んだ
後、該心材を防水シートで覆うか、或いは、心材を屋内
の資材置場等に保管する必要がある。それゆえ、心材を
簡便かつ安価に保管することができない。従って、簡便
かつ安価に保管することができる心材(表面処理剤層が
形成された心材)が求められている。
【0007】ところで、建築分野の基礎工事において土
台等の地盤基礎構造体を施工する際には、掘削孔に打設
されたセメントミルクに例えば筒状のパイル(杭)を埋
め込んだ後、該セメントミルクを水和させることが行わ
れている。そして、該パイルの内側に充填されたセメン
ト水和物等の水硬性組成物の水和物は、ビル等の建築物
を連結するための鉄筋部材を設置するために、その上部
(杭頭部)が堀り起こされ、ドリル等を用いて所定深さ
だけ削られる。
【0008】しかしながら、パイルとセメント水和物等
の水硬性組成物の水和物とは強固に接着しており、セメ
ント水和物をパイルから剥離する作業には、付着強度に
打ち勝つための相当な労力が必要であるので設備や経
費、日数等がかかる。つまり、作業性に劣るので、地盤
基礎構造体を迅速に施工することができない。それゆ
え、セメント水和物をパイルから剥離する作業の作業性
を改善することができる表面処理剤が求められている。
【0009】本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされ
たものであり、その目的は、例えば、H型鋼等の心材
(埋設物)とセメント水和物(水硬性組成物の水和物)
とで少なくとも構成される構造体における該埋設物と水
硬性組成物の水和物との接着を抑制すべく上記埋設物の
表面に付着される表面処理剤を提供することにある。ま
た、本発明は、該表面処理剤が付着されている埋設物、
並びに、H型鋼等の心材を引き抜く作業や、セメント水
和物をパイルから剥離する作業、および、硬化前の水硬
性組成物と接触し、硬化後に水硬性組成物の水和物と分
離される基体或いは支持体と、水硬性組成物の水和物と
の分離作業等の作業性を改善することによって、迅速に
施工することができる接着防止方法を提供することを目
的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本願発明者等は、上記従
来の問題点を解決すべく、表面処理剤等について鋭意検
討した。その結果、水膨潤性樹脂と、酸価が15mgK
OH/g以上であるアルカリ水可溶性樹脂と、水膨潤性
樹脂およびアルカリ水可溶性樹脂を分散させる有機溶媒
を含む表面処理剤により、埋設物と水硬性組成物の水
和物とで少なくとも構成される構造体における該埋設物
の表面に水膨潤性樹脂およびアルカリ水可溶性樹脂を
着させることにより、埋設物と水硬性組成物の水和物と
の接着を抑制することができ、埋設物を水硬性組成物の
水和物から引き抜く作業や、水硬性組成物の水和物を埋
設物から剥離する作業等の作業性を改善することができ
ることを見い出して、本発明を完成させるに至った。
【0011】即ち、請求項1記載の発明の表面処理剤
は、上記の課題を解決するために、埋設物と水硬性組成
物の水和物とで少なくとも構成される構造体における該
埋設物と水硬性組成物の水和物との接着を抑制すべく上
記埋設物の表面に付着される表面処理剤であって、水膨
潤性樹脂と、水膨潤性樹脂を埋設物の表面に付着させる
ための、酸価が15mgKOH/g以上であるアルカリ
水可溶性樹脂と、水膨潤性樹脂およびアルカリ水可溶性
樹脂を分散させる有機溶媒とを含むことを特徴としてい
る。
【0012】上記の構成によれば、水硬性組成物と埋設
物との間に、水を吸水して膨潤した水膨潤性樹脂の層が
形成される。つまり、水硬性組成物の水和物と埋設物と
の間に、膨潤した水膨潤性樹脂の層を形成することがで
きるので、両者の接着を抑制することができる。これに
より、埋設物を水硬性組成物の水和物から引き抜く際に
は、膨潤した水膨潤性樹脂が潤滑効果を発揮することに
よって、該埋設物が滑り易くなる。従って、埋設物を水
硬性組成物の水和物から引き抜く作業における労力(引
張力)をより一層低減することができるので、該作業の
作業性を向上させることができる。一方、水硬性組成物
の水和物を埋設物から剥離する際には、膨潤した水膨潤
性樹脂の層によって両者の接着を抑制することができる
ので、労力を低減することができ、水硬性組成物の水和
物を埋設物から剥離する作業の作業性を向上させること
ができる。さらに、水膨潤性樹脂を乾燥させることによ
り、水硬性組成物の水和物と埋設物との間に隙間を形成
することができるので、上記各種作業の作業性をさらに
一層向上させることができる。それゆえ、上記の構成に
よれば、構造体に好適に用いることができる表面処理剤
を提供することができる。
【0013】また、請求項2記載の発明の表面処理剤
は、上記の課題を解決するために、請求項1記載の表面
処理剤において、水膨潤性樹脂およびアルカリ水可溶性
樹脂の合計量に対する該水膨潤性樹脂の割合が10重量
%以上であることを特徴としている。上記の構成によれ
ば、構造体に特に好適に用いることができる表面処理剤
を提供することができる。
【0014】請求項3記載の発明の埋設物は、上記の課
題を解決するために、少なくとも水硬性組成物の水和物
と共に構造体を構成する埋設物であって、水膨潤性樹脂
と、水膨潤性樹脂を埋設物の表面に付着させるための、
酸価が15mgKOH/g以上であるアルカリ水可溶性
樹脂と、水膨潤性樹脂およびアルカリ水可溶性樹脂を分
散させる有機溶媒とを含む表面処理剤により、上記埋設
物の表面に、上記水膨潤性樹脂およびアルカリ水可溶性
樹脂が付着されていることを特徴としている。
【0015】上記の構成によれば、水硬性組成物と埋設
物の表面との間に、水を吸水して膨潤した水膨潤性樹脂
の層が形成される。つまり、水硬性組成物の水和物と埋
設物の表面との間に、膨潤した水膨潤性樹脂の層を形成
することができるので、両者の接着を抑制することがで
きる。これにより、埋設物を水硬性組成物の水和物から
引き抜く際には、膨潤した水膨潤性樹脂が潤滑効果を発
揮することによって、該埋設物が滑り易くなる。従っ
て、埋設物を水硬性組成物の水和物から引き抜く作業に
おける労力(引張力)をより一層低減することができる
ので、該作業の作業性を向上させることができる。さら
に、水膨潤性樹脂を乾燥させることにより、水硬性組成
物の水和物と埋設物との間に隙間を形成することができ
るので、上記作業の作業性をさらに一層向上させること
ができる。それゆえ、上記の構成によれば、構造体に好
適に用いることができる埋設物を提供することができ
る。
【0016】また、請求項4記載の発明の埋設物は、上
記の課題を解決するために、請求項3記載の埋設物にお
いて、埋設物への上記水膨潤性樹脂およびアルカリ水可
溶性樹脂の付着量が40g/m2 以上であることを特徴
としている。上記の構成によれば、構造体をより一層迅
速に施工することができる埋設物を提供することができ
る。
【0017】さらに、請求項5記載の発明の埋設物は、
上記の課題を解決するために、請求項3または4記載の
埋設物において、水膨潤性樹脂およびアルカリ水可溶性
樹脂の層の表面に、耐水性付与剤が付着されていること
を特徴としている。
【0018】上記の構成によれば、水膨潤性樹脂を含む
表面処理剤層の表面に、耐水性付与剤が付着されている
ので、例えば、埋設物を保管しておく場合において、該
埋設物を資材置場等に野積みしても、水膨潤性樹脂が雨
や夜露、或いは地面からの水分を吸水して膨潤すること
はない。つまり、耐水性付与剤が付着されているので、
例えば埋設物を用いて構造体を施工する前に該埋設物が
水濡れしたとしても、水膨潤性樹脂が膨潤することを
水性付与剤により防止できるために、例えば防水シート
で埋設物を覆ったり、屋内の資材置場等に埋設物を保管
する必要が無い。それゆえ、埋設物を簡便かつ安価に保
管することができる。
【0019】請求項6記載の発明の接着防止方法は、上
記の課題を解決するために、水硬性組成物と、該水硬性
組成物に接触し、かつ、水硬性組成物の水和が終了した
後に該水硬性組成物の水和物から分離される、埋設物或
いは基体或いは支持体との間に、接着防止剤を介在させ
ることにより、上記水硬性組成物の水和物と、埋設物或
いは基体或いは支持体との接着を防止する方法であっ
て、上記接着防止剤が、水膨潤性樹脂と、水膨潤性樹脂
を埋設物の表面に付着させるための、酸価が15mgK
OH/g以上であるアルカリ水可溶性樹脂と、水膨潤性
樹脂およびアルカリ水可溶性樹脂を分散させる有機溶媒
を含むと共に、水膨潤性樹脂の含有量が10重量%以
上であって、かつ、接触部に用いる接着防止剤の使用量
が40g/m2 以上であることを特徴としている。
【0020】また、請求項7記載の発明の接着防止方法
は、上記の課題を解決するために、請求項6記載の接着
防止方法において、上記埋設物が、鋼矢板、H型鋼、ま
たは、筒状の柱状基体であることを特徴としている。
【0021】上記の方法によれば、水硬性組成物と、埋
設物(例えば、鋼矢板、H型鋼、または、筒状の柱状基
体)或いは基体或いは支持体(水硬性組成物の水和が終
了する迄、該水硬性組成物を所望の形状に保持するため
に用いられる)との間に、水を吸水して膨潤した水膨潤
性樹脂の層を形成することができる。つまり、水硬性組
成物の水和物と、埋設物或いは基体或いは支持体との間
に、膨潤した水膨潤性樹脂の層を形成することができる
ので、両者の接着を抑制することができる。それゆえ、
上記の方法によれば、水硬性組成物の水和物と、埋設物
或いは基体或いは支持体との接着を防止することができ
る。また、埋設物或いは基体或いは支持体を水硬性組成
物の水和物から分離する際には、膨潤した水膨潤性樹脂
が潤滑効果を発揮することによって、該埋設物或いは基
体或いは支持体が滑り易くなるので、分離作業の作業性
を向上させることができる。
【0022】また、請求項8記載の発明の埋設物は、上
記の課題を解決するために、少なくとも水硬性組成物の
水和物と共に構造体を形成するための埋設物であって、
上記 埋設物の表面に、埋設物と水硬性組成物の水和物と
の接着を抑制すべく付着される表面処理剤と、上記表面
処理剤上に付着される耐水性付与剤とを有していること
を特徴としている。上記埋設物においては、表面処理剤
は、水膨潤性樹脂を含むことが好ましい。
【0023】上記構成によれば、例えば水膨潤性樹脂を
含む表面処理剤上に耐水性付与剤を付着させることによ
って、例えば、埋設物を保管しておく場合において、該
埋設物を資材置場等に野積みしても、雨や夜露、或いは
地面からの水から、表面処理剤の変化、例えば膨潤を抑
制できる。このことから、上記構成では、埋設物を、例
えば防水シートで覆ったり、屋内の資材置場等に保管す
る必要が無く、よって、埋設物を簡便かつ安価に保管す
ることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明における「アルカリ水可溶
性樹脂」とは、イオン交換水に0.4重量%の割合で水
酸化ナトリウムを溶解して調製した大過剰のアルカリ水
に対して溶解し、中性および酸性の水に対して溶解しな
い樹脂である。
【0025】本発明にかかる構造体としては、例えば、
建築分野並びに土木分野の基礎工事における土留め擁壁
や土台等の地盤基礎構造体が挙げられる。構造体を構成
する水硬性組成物としては、例えば、各種コンクリー
ト、各種モルタル等が挙げられるが、特に限定されるも
のではなく、一般に建築分野並びに土木分野の基礎工事
において、土留め擁壁や土台等の地盤基礎構造体を施工
する際に用いられる水硬性組成物であればよい。つま
り、本発明における水硬性組成物は、水と、水によって
硬化するセメント等の材料とを含んでいる。より具体的
には、該水硬性組成物は、例えば、水と、ポルトランド
セメントや混合セメント等のセメントとを含むと共に、
必要に応じて、砂や砂利等の骨材、セメント混和材、混
和剤、補強材等を含んでいる。該水硬性組成物は、セメ
ントと水とを混合して練り込むことによって徐々に水和
(硬化)していき、水和物(硬化物)となる。混合した
水は、水和反応によって徐々に消費される。尚、水硬性
組成物に含まれるセメントや骨材、混和材、混和剤、補
強材等の種類や組み合わせ、即ち、水硬性組成物の組成
は、特に限定されるものではない。
【0026】構造体を構成する埋設物としては、例え
ば、柱状基体、筒状の柱状基体、或いは、長尺板状の杭
である鋼矢板(シートパイル)や波板等が挙げられる
が、特に限定されるものではない。柱状基体としては、
具体的には、例えば、H型鋼、I型鋼、鉄柱、コンクリ
ート杭、ポール等が挙げられる。筒状の柱状基体として
は、具体的には、例えば、筒状のパイル(中空パイル)
等が挙げられる。埋設物は、一般に建築分野並びに土木
分野の基礎工事において、土留め擁壁や土台等の地盤基
礎構造体を施工する際に用いられる埋設物であればよ
い。また、埋設物の形状、長さ、材質等は、特に限定さ
れるものではない。本発明にかかる支持体とは、水硬性
組成物に接触し、かつ、水硬性組成物の水和が終了した
後に該水硬性組成物の水和物から分離される物体全般で
あり、材質は、目的、および必要とされる強度等によっ
て選択すればよい。鉄製、プラスチック製、コンクリー
ト製、木製等が挙げられるが、特に限定されるものでは
ない。
【0027】尚、本発明における「埋設物」は、水硬性
組成物に埋設される物体を示しており、それゆえ、地盤
に埋設される物体のみを示しているのではない。従っ
て、埋設物と水硬性組成物の水和物とで少なくとも構成
される構造体は、地盤基礎構造体にのみ限定されるもの
ではない。また、本発明における「埋設物」は、その全
体が水硬性組成物に埋設されている必要は無く、従っ
て、少なくとも一部分が水硬性組成物に埋設されていれ
ばよい。さらに、本発明における「埋設物」には、構造
体を施工する前に例えば資材置場等に保管されている埋
設物も含まれることとする。従って、本発明における
「埋設物」の範疇には、構造体を施工する前の埋設物、
構造体を構成している埋設物、および、構造体から抜き
出された埋設物が包含されていることとする。
【0028】表面処理剤(接着防止剤)を構成する水膨
潤性樹脂は、水を吸水することによって膨潤し、かつ、
自重に対するイオン交換水の吸水倍率が3倍以上の樹脂
であればよく、特に限定されるものではない。該水膨潤
性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリ(メタ)ア
クリル酸架橋体、ポリ(メタ)アクリル酸塩架橋体、ス
ルホン酸基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架
橋体、ポリオキシアルキレン基を有するポリ(メタ)ア
クリル酸エステル架橋体、ポリ(メタ)アクリルアミド
架橋体、(メタ)アクリル酸塩と(メタ)アクリルアミ
ドとの共重合架橋体、(メタ)アクリル酸ヒドロキシア
ルキルと(メタ)アクリル酸塩との共重合架橋体、ポリ
ジオキソラン架橋体、架橋ポリエチレンオキシド、架橋
ポリビニルピロリドン、スルホン化ポリスチレン架橋
体、架橋ポリビニルピリジン、デンプン−ポリ(メタ)
アクリロニトリルグラフト共重合体のケン化物、デンプ
ン−ポリ(メタ)アクリル酸(塩)グラフト架橋共重合
体、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸(塩)との
反応生成物、架橋ポリビニルアルコールスルホン酸塩、
ポリビニルアルコール−アクリル酸グラフト共重合体、
ポリイソブチレンマレイン酸(塩)架橋重合体等が挙げ
られる。これら水膨潤性樹脂は、一種類のみを用いても
よく、また、二種類以上を併用してもよい。さらに、水
膨潤性樹脂が備える各種性質(吸水倍率等)を阻害しな
い程度に、他の樹脂を水膨潤性樹脂と併用することもで
きる。
【0029】上記例示の水膨潤性樹脂のうち、ノニオン
性基および/またはスルホン酸(塩)基を有する水膨潤
性樹脂がより好ましく、アミド基またはヒドロキシアル
キル基を有する水膨潤性樹脂がさらに好ましい。該水膨
潤性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸塩と
(メタ)アクリルアミドとの共重合架橋体、(メタ)ア
クリル酸ヒドロキシアルキルと(メタ)アクリル酸塩と
の共重合架橋体等が挙げられる。さらに、ポリオキシア
ルキレン基を有する水膨潤性樹脂が特に好ましい。該水
膨潤性樹脂としては、例えば、メトキシポリオキシアル
キレン基を有する(メタ)アクリル酸エステルと(メ
タ)アクリル酸塩との共重合架橋体等が挙げられる。メ
トキシポリオキシアルキレン基を有する水膨潤性樹脂
は、アルカリ水に対する膨潤性に特に優れている。従っ
て、該水膨潤性樹脂を用いることにより、埋設物或いは
基体或いは支持体(以下、単に埋設物と記す)を引き抜
く(分離する)作業や、水硬性組成物の水和物を剥離す
る作業を極めて容易に行うことができる。
【0030】さらに、本発明にかかる水膨潤性樹脂とし
て、水溶性を有するエチレン性不飽和単量体と、必要に
応じて架橋剤とを含む単量体成分を重合することによっ
て得られる樹脂を用いることができる。エチレン性不飽
和単量体を(共)重合してなる水膨潤性樹脂は、水に対
する膨潤性により優れており、かつ、一般的に安価であ
る。従って、該水膨潤性樹脂を用いることにより、埋設
物を引き抜く作業や、水硬性組成物の水和物を剥離する
作業を極めて容易に、かつ、より一層経済的に行うこと
ができる。尚、上記の架橋剤は、特に限定されるもので
はない。
【0031】上記のエチレン性不飽和単量体としては、
具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタ
コン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコ
ン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、
2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスル
ホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、
2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、並び
に、これら単量体のアルカリ金属塩やアンモニウム塩;
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、
並びに、その四級化物;(メタ)アクリルアミド、N,
N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシ
エチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)ア
クリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミ
ド、(メタ)アクリロイルモルホリン等の(メタ)アク
リルアミド類、並びに、これら単量体の誘導体;2−ヒ
ドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ
プロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル
(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ
(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ
(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコー
ルモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレン
グリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレ
ングリコールモノ(メタ)アクリレート;N−ビニル−
2−ピロリドン、N−ビニルスクシンイミド等のN−ビ
ニル単量体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N
−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−
ビニル−N−メチルアセトアミド等のN−ビニルアミド
単量体;ビニルメチルエーテル;等が挙げられるが、特
に限定されるものではない。これらエチレン性不飽和単
量体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上
を併用してもよい。
【0032】上記例示のエチレン性不飽和単量体のう
ち、ノニオン性基および/またはスルホン酸(塩)基を
有するエチレン性不飽和単量体がより好ましい。該単量
体としては、例えば、2−(メタ)アクリルアミド−2
−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイ
ルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパ
ンスルホン酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシア
ルキル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレング
リコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。さ
らに、ポリオキシアルキレン基を有するエチレン性不飽
和単量体が特に好ましい。そして、メトキシポリエチレ
ングリコールモノ(メタ)アクリレートを含む単量体成
分を重合して得られる水膨潤性樹脂は、アルカリ水に対
する膨潤性に特に優れている。従って、該水膨潤性樹脂
を用いることにより、埋設物を引き抜く作業や、水硬性
組成物の水和物を剥離する作業を極めて容易に行うこと
ができる。
【0033】さらに、単量体成分としてエチレン性不飽
和単量体を二種類以上併用する場合においては、該単量
体成分に占める、ノニオン性基および/またはスルホン
酸(塩)基を有するエチレン性不飽和単量体の割合を1
重量%以上にすることがより好ましく、10重量%以上
にすることがさらに好ましい。上記の割合が1重量%未
満である場合には、該単量体成分を重合して得られる水
膨潤性樹脂を用いても、埋設物を引き抜く作業や、水硬
性組成物の水和物を剥離する作業を容易に行うことがで
きなくなるおそれがある。
【0034】単量体成分としてエチレン性不飽和単量体
を二種類以上併用する場合における、より好ましい組み
合わせとしては、例えば、アクリル酸ナトリウム等の
(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩とアクリルアミドと
の組み合わせ、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩とメ
トキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレー
トとの組み合わせ等が挙げられるが、特に限定されるも
のではない。
【0035】上記の単量体成分を重合することにより、
水膨潤性樹脂が得られる。単量体成分の重合方法、つま
り、水膨潤性樹脂の製造方法は、特に限定されるもので
はない。また、水膨潤性樹脂の平均分子量や形状、平均
粒子径等は、水硬性組成物の組成やアルカリ水のpH、
作業環境等に応じて設定すればよく、特に限定されるも
のではない。
【0036】表面処理剤を構成するアルカリ水可溶性樹
脂は、イオン交換水に水酸化ナトリウムを0.4重量%
の割合で溶解することによってアルカリ性にしたアルカ
リ水に溶解する樹脂であり、さらに、酸価が15mgK
OH/g以上であり、かつ、中性および酸性の水に対し
て溶解しない樹脂であればよく、特に限定されるもので
はない。アルカリ水可溶性樹脂は、水膨潤性樹脂を埋設
物に付着させるバインダとしての機能を備えている。
尚、後段にて詳述するように、表面処理剤からなる塗膜
(表面処理剤層)の表面に、耐水性被膜を形成する場合
においては、上記アルカリ水可溶性樹脂は、耐水性付与
剤としても用いられる。
【0037】該アルカリ水可溶性樹脂としては、例え
ば、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基等の置
換基を有する樹脂がより好ましく、α,β−不飽和カル
ボン酸系単量体とビニル系単量体とを共重合して得られ
る樹脂が、アルカリ水に対する溶解性、および経済性に
より優れると共に、表面処理剤を埋設物に塗布(付着)
することによって形成される塗膜の各種物性により優
れ、しかも、α,β−不飽和カルボン酸系単量体が有す
るカルボン酸基は様々な材質との相互作用が強く、得ら
れる塗膜の埋設物或いは基体或いは支持体に対する密着
性がより良好となるので、特に好ましい。
【0038】α,β−不飽和カルボン酸系単量体として
は、具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等
のα,β−不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイ
ン酸、フマル酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸;無水
マレイン酸、無水イタコン酸等のα,β−不飽和ジカル
ボン酸無水物;マレイン酸モノエステル、フマル酸モノ
エステル、イタコン酸モノエステル等のα,β−不飽和
ジカルボン酸モノエステル;等が挙げられるが、特に限
定されるものではない。これらα,β−不飽和カルボン
酸系単量体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種
類以上を併用してもよい。上記例示のα,β−不飽和カ
ルボン酸系単量体のうち、アクリル酸およびメタクリル
酸が、表面処理剤を埋設物に塗布(付着)することによ
って形成される塗膜の柔軟性および靱性により優れるの
で、さらに好ましい。
【0039】ビニル系単量体としては、具体的には、例
えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル
酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ステアリ
ル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタク
リル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ス
テアリル等の、炭素数1〜18の一価アルコールと(メ
タ)アクリル酸とのエステル;アクリロニトリル、メタ
クリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体;ア
クリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニ
ル系単量体;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル
酸ヒドロキシプロピル等の水酸基含有ビニル系単量体;
メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有ビニル系単
量体;アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛等の、α,β
−不飽和カルボン酸の金属塩;スチレン、α−メチルス
チレン等の芳香族ビニル系単量体;酢酸ビニル等の脂肪
族ビニル系単量体;塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビ
ニル、塩化ビニリデン等のハロゲン基含有ビニル系単量
体;アリルエーテル類;無水マレイン酸、マレイン酸モ
ノアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等
のマレイン酸誘導体;フマル酸モノアルキルエステル、
フマル酸ジアルキルエステル等のフマル酸誘導体;マレ
イミド、N−メチルマレイミド、N−ステアリルマレイ
ミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマ
レイミド等のマレイミド誘導体;イタコン酸モノアルキ
ルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、イタコン
アミド類、イタコンイミド類、イタコンアミドエステル
類等のイタコン酸誘導体;エチレン、プロピレン等のア
ルケン類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;等が
挙げられるが、特に限定されるものではない。これらビ
ニル系単量体は、一種類のみを用いてもよく、また、二
種類以上を併用してもよい。
【0040】上記例示のビニル系単量体のうち、アクリ
ル酸アルキルエステル、および、メタクリル酸アルキル
エステルが、表面処理剤を埋設物に塗布(付着)するこ
とによって形成される塗膜の柔軟性、埋設物等への密着
性、耐候性および靱性により優れるので、さらに好まし
い。また、ビニル系単量体に占める(メタ)アクリル酸
アルキルエステルの割合を30重量%以上にすることに
より、上記塗膜の柔軟性、埋設物等への密着性、耐候性
および靱性がより一層向上するので、特に好ましい。さ
らに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、炭素数
1〜18の一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエ
ステルである場合には、上記塗膜の柔軟性、埋設物等へ
の密着性、耐候性および靱性が特に向上するので、最も
好ましい。その上、(メタ)アクリル酸アルキルエステ
ルが、炭素数1〜4の一価アルコールと(メタ)アクリ
ル酸とのエステルである場合には、アルカリ水による加
水分解をより一層受け易くなり、従って、アルカリ水に
対する可溶性がさらに一層向上するので、特に好まし
い。
【0041】また、α,β−不飽和カルボン酸系単量体
およびビニル系単量体の合計量に占めるα,β−不飽和
カルボン酸系単量体の割合は、9重量%以上であること
がより好ましく、9重量%〜40重量%の範囲内がさら
に好ましい。α,β−不飽和カルボン酸系単量体の割合
を9重量%以上にすることにより、アルカリ水に対する
溶解性により一層優れたアルカリ水可溶性樹脂を得るこ
とができる。そして、α,β−不飽和カルボン酸系単量
体の割合を9重量%〜40重量%の範囲内にすることに
より、アルカリ水に対する溶解性に特に優れ、かつ、中
性および酸性の水に対して耐水性を示すアルカリ水可溶
性樹脂を得ることができる。
【0042】上記のα,β−不飽和カルボン酸系単量体
とビニル系単量体とを共重合することにより、アルカリ
水可溶性樹脂が得られる。共重合方法、つまり、アルカ
リ水可溶性樹脂の製造方法は、特に限定されるものでは
ないが、溶液重合法が、後述する表面処理剤層(接着防
止剤層)を埋設物或いは基体或いは支持体上に形成する
ための塗布液を作成することが容易であるので、より好
ましい。また、アルカリ水可溶性樹脂の平均分子量は、
水硬性組成物の組成やアルカリ水のpH、作業環境等に
応じて設定すればよく、特に限定されるものではない
が、重量平均分子量を40,000〜200,000の
範囲内とすることによって、より強靱な塗膜が得られ、
しかもアルカリ水に対して適度な溶解速度を有すること
になるので、より好ましい。本発明にかかるアルカリ水
可溶性樹脂は、アルカリ水に対する溶解性に優れている
ので、水膨潤性樹脂が水を吸水して膨潤する際の体積膨
張を阻害するおそれが無い。従って、水膨潤性樹脂は、
その吸水特性(性能)を充分に発揮することができる。
【0043】本発明にかかるアルカリ水可溶性樹脂の酸
価は、15mgKOH/g以上であればよいが、30m
gKOH/g以上であることがより好ましく、50mg
KOH/g以上であることがさらに好ましく、70mg
KOH/g以上であることが特に好ましく、70mgK
OH/g〜500mgKOH/gの範囲内であることが
最も好ましい。アルカリ水可溶性樹脂の酸価が15mg
KOH/g未満である場合には、アルカリ水に対する溶
解性が乏しくなるので、埋設物を引き抜く作業や、水硬
性組成物の水和物を剥離する作業を容易に行うことがで
きなくなる。また、アルカリ水可溶性樹脂の酸価が50
0mgKOH/gを越える場合には、該アルカリ水可溶
性樹脂の耐水性が低下するので、表面処理剤を埋設物に
塗布することによって形成される塗膜が、雨等の中性域
または酸性域のpHを示す水と接触すると、溶解または
膨潤して損傷するおそれがある。このため、埋設物を引
き抜く作業や、水硬性組成物の水和物を剥離する作業を
容易に行うことができなくなるおそれがある。以上のこ
とから、酸価は300mgKOH/g以上であること
が、より好ましい。
【0044】本発明にかかるアルカリ水可溶性樹脂は、
示差走査熱量測定(DSC (differential scanning ca
lorimetry))によって測定されるガラス転移温度を、−
80℃〜120℃の範囲内に有していることが好まし
く、−30℃〜20℃の範囲内に低温側のガラス転移温
度を有する一方、40℃〜100℃の範囲内に高温側の
ガラス転移温度を有していることがさらに好ましい。
尚、ガラス転移温度の測定方法、即ち、示差走査熱量測
定の測定条件については、後段にて詳述する。
【0045】低温側のガラス転移温度が−30℃〜20
℃の範囲内に存在することにより、低温時における塗膜
の靱性がより高くなり、例えば冬季等、作業現場が低温
であっても上記塗膜が靱性の低下を原因として埋設物か
ら剥離するおそれが少なくなる。また、高温側のガラス
転移温度が40℃〜100℃の範囲内に存在することに
より、例えば夏期等、作業現場が高温であっても上記塗
膜がべとついたり或いは軟化して、例えばロープ等との
接触によって容易に損傷するおそれがなくなる。従っ
て、アルカリ水可溶性樹脂が、−30℃〜20℃の範囲
内に低温側のガラス転移温度を有する一方、40℃〜1
00℃の範囲内に高温側のガラス転移温度を有している
場合には、作業現場の温度変化に左右され難い安定な塗
膜、即ち、剥離や損傷し難く、べとつき難い塗膜を形成
することができる。
【0046】表面処理剤における水膨潤性樹脂とアルカ
リ水可溶性樹脂との割合は、両者の組成や組み合わせ、
作業環境等に応じて設定すればよく、特に限定されるも
のではないが、水膨潤性樹脂およびアルカリ水可溶性樹
脂の合計量に対する該水膨潤性樹脂の割合が10重量%
以上であることがより好ましく、20重量%以上である
ことがさらに好ましく、30重量%以上であることが最
も好ましい。また、上記の割合が95重量%以下、より
好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量
%以下であると、水膨潤性樹脂の脱落が少なくなる。ま
た、接着防止剤における水膨潤性樹脂の含有量は、10
重量%以上であればよく、特に限定されるものではない
が、20重量%以上であることがさらに好ましく、30
重量%以上であることが最も好ましい。また、上記の含
有量が95重量%以下、より好ましくは80重量%以
下、さらに好ましくは70重量%以下であると、水膨潤
性樹脂の脱落が少なくなる。
【0047】また、表面処理剤或いは接着防止剤を、埋
設物或いは基体或いは支持体に塗布(付着)して塗膜を
形成する方法は、特に限定されるものではないが、具体
的には、例えば、水膨潤性樹脂とアルカリ水可溶性樹脂
とを有機溶剤等の分散媒に分散してなる分散液、つま
り、表面処理剤の分散液を埋設物に噴霧する方法;刷毛
塗りする方法;等を採用すればよい。表面処理剤或いは
接着防止剤は、埋設物或いは基体或いは支持体と、水硬
性組成物の水和物との接着を防止したい部分(場所)に
塗布すればよいが、その他の部分(場所)に塗布しても
差し支えない。また、上記接着が防止できる限りにおい
ては、塗りむらや、部分的な塗りもれ等があっても差し
支えない。埋設物或いは基体或いは支持体に塗布された
該分散液は、必要に応じて乾燥させてもよい。これによ
り、埋設物或いは基体或いは支持体表面(外面または内
面)に表面処理剤からなる塗膜が形成される。また、前
記したように、アルカリ水可溶性樹脂を溶液重合法で作
成した場合には、重合後の溶液に水膨潤性樹脂を混合す
るだけで分散液を得ることができるので、該分散液の調
製が容易である。
【0048】上記有機溶剤としては、具体的には、例え
ば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピ
ルアルコール、ベンゼン、トルエン、アセトン、メチル
エチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレング
リコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモ
ノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。そして、
一般的に、低沸点の有機溶剤を用いれば、分散媒の乾燥
にかかる時間が短くなるので、塗膜が形成されるまでの
時間を短縮することができ、一方、高沸点の有機溶剤を
用いれば、分散媒の乾燥にかかる時間が長くなるので、
作業可能な時間を長くすることができる。従って、有機
溶剤は、例えば、作業環境や状況等に応じて、最適な化
合物を選択すればよい。アルカリ水を媒体として用いて
もよいが、水系の媒体を用いると水膨潤性樹脂が膨潤す
るため、刷毛塗りや噴霧が困難となり、その後の乾燥に
も手間がかかるので、好ましくない。
【0049】埋設物における所望の箇所への塗膜の付着
量(または、接触部に用いる接着防止剤の使用量)は、
好ましくは40g/m2 以上、より好ましくは50g/
2以上、さらに好ましくは80g/m2 以上であるこ
とが望ましいが、特に限定されるものではない。また、
塗膜の付着量を必要以上に多くしても、得られる効果は
さほど大きくならず、塗膜が形成されるまでの時間が長
くなり、しかも、経済的に不利となる。従って、付着量
は、700g/m2 以下であることが好ましく、500
g/m2 以下であることがより好ましく、300g/m
2 以下であることが最も好ましい。
【0050】上記塗膜におけるアルカリ水可溶性樹脂
は、雨等の中性域または酸性域のpHを示す水と接触し
ても溶解しない。つまり、アルカリ水可溶性樹脂は耐水
性に優れており、中性域または酸性域のpHを示す水と
接触しても損傷しない。従って、構造体を施工する際に
おいては、表面処理剤を埋設物に予め塗布した後、保管
しておくことが簡便であり、作業現場で表面処理剤を埋
設物に塗布する必要が無く、作業の簡便化、合理化を図
ることができ、迅速に施工することができる。
【0051】一方、アルカリ水可溶性樹脂は、アルカリ
水と接触すると溶解する。つまり、表面処理剤は、水硬
性組成物と接触したときにアルカリ水可溶性樹脂が溶解
を開始し、水硬性組成物と埋設物との間に、膨潤した水
膨潤性樹脂の層を形成するようになっている。従って、
埋設物を水硬性組成物の水和物から引き抜く作業や、水
硬性組成物の水和物を埋設物から剥離する作業等の作業
性を改善することができる。
【0052】さらに、例えば埋設物を保管しておく場合
において、該埋設物を資材置場等に野積みしても、水膨
潤性樹脂が雨や夜露、或いは地面からの水分を吸水して
膨潤することがないように、表面処理剤からなる塗膜
(表面処理剤層)の表面に、必要に応じて、耐水性付与
剤を塗布(付着)することによって耐水性被膜を形成す
ることができる。
【0053】耐水性付与剤は、塗膜表面に耐水性被膜を
形成(トップコート)することによって、水膨潤性樹脂
が膨潤することを防止することができる化合物であれば
よい。耐水性付与剤としては、例えば、上述のアルカリ
水可溶性樹脂;ワックスやシリコーン系撥水剤等の従来
公知の撥水剤;等が挙げられるが、表面処理剤との組み
合わせ等を考慮して選定すればよく、特に限定されるも
のではない。また、耐水性付与剤を塗膜表面に塗布(付
着)して耐水性被膜を形成する方法は、特に限定される
ものではないが、具体的には、例えば、耐水性付与剤を
上記例示の有機溶剤等の分散媒に分散してなる分散液、
つまり、耐水性付与剤の分散液を塗膜表面に噴霧する方
法;刷毛塗りする方法;等を採用すればよい。塗膜表面
に塗布された該分散液は、必要に応じて乾燥させてもよ
い。これにより、塗膜表面に耐水性付与剤からなる耐水
性被膜が形成される。耐水性被膜の付着量は、50g/
2 程度あれば充分であるが、特に限定されるものでは
ない。
【0054】耐水性被膜を形成することにより、例え
ば、埋設物を保管しておく場合において、該埋設物を資
材置場等に野積みしても、水膨潤性樹脂が雨や夜露、或
いは地面からの水分を吸水して膨潤することはない。つ
まり、耐水性被膜が形成されているので、例えば埋設物
を用いて構造体を施工する前に該埋設物が水濡れしたと
しても、耐水性被膜が、水膨潤性樹脂が膨潤することを
防止するために、例えば防水シートで埋設物を覆った
り、屋内の資材置場等に埋設物を保管する必要が無い。
それゆえ、埋設物を簡便かつ安価に保管することができ
る。尚、耐水性被膜を形成している例えばアルカリ水可
溶性樹脂は、水硬性組成物と接触したときに溶解を開始
する。従って、構造体を施工する際においては、該施工
の実施に先立って、塗膜表面から耐水性被膜を剥離する
必要は無い。つまり、耐水性被膜が形成された埋設物を
そのまま用いて、構造体を施工することができる。
【0055】本発明の実施の一形態について、図1ない
し図2を参照しながら、さらに詳しく説明する。図1に
示すように、本実施の形態にかかる構造体としての地盤
基礎構造体は、地盤1に埋設されており、水硬性組成物
の水和物(以下、水硬性組成物水和物と記す)2と、埋
設物3とで構成されている。上記の地盤基礎構造体は、
例えば、地盤1に掘削孔を形成して埋設物3を緩挿した
後、該埋設物3の周囲に水硬性組成物を打設して水和
(硬化)させることによって水硬性組成物水和物2を形
成するか、若しくは、掘削孔に打設された水硬性組成物
に埋設物3を埋め込んだ後、該水硬性組成物を水和させ
ることによって水硬性組成物水和物2を形成することに
より施工されている。
【0056】該埋設物3の表面には、上記施工の実施に
先立って、表面処理剤4が均一に塗布されている(水硬
性組成物と埋設物との間に、接着防止剤を介在させてい
る)。図2に示すように、塗膜である表面処理剤4は、
水膨潤性樹脂粒子4a…と、該樹脂粒子4a…を埋設物
3の表面に付着させるアルカリ水可溶性樹脂4bとで構
成されている。
【0057】上記の構成において、表面処理剤4のアル
カリ水可溶性樹脂4bは、水硬性組成物に含まれるアル
カリ水と接触すると溶解する。一方、表面処理剤4の水
膨潤性樹脂粒子4a…は、アルカリ水を吸水して膨潤す
る。従って、水硬性組成物の水和が終了した後におい
て、水硬性組成物水和物2と埋設物3の表面との間に
は、水を吸水して膨潤した水膨潤性樹脂粒子4a…の層
が形成される。つまり、水硬性組成物水和物2と埋設物
3の表面との間に、膨潤した水膨潤性樹脂粒子4a…の
層が形成されるので、両者の接着を抑制することができ
る。これにより、埋設物3を水硬性組成物水和物2から
引き抜く際には、膨潤した水膨潤性樹脂粒子4a…が潤
滑効果を発揮することによって、該埋設物3が滑り易く
なる。従って、埋設物3を水硬性組成物水和物2から引
き抜く作業における労力(引張力)をより一層低減する
ことができるので、該作業の作業性を向上させることが
できる。さらに、水膨潤性樹脂粒子4a…を乾燥させる
ことにより、水硬性組成物水和物2と埋設物3の表面と
の間に隙間を形成することができるので、上記作業の作
業性をさらに一層向上させることができる。それゆえ、
上記の構成によれば、地盤基礎構造体(構造体)に好適
に用いることができる表面処理剤、並びに、地盤基礎構
造体を迅速に施工することができる埋設物を提供するこ
とができる。
【0058】本発明の実施の他の形態について、図3を
参照しながら、さらに詳しく説明する。尚、説明の便宜
上、前記実施の形態の図面に示した構成と同一の機能を
有する構成には、同一の符号を付記し、その説明を省略
する。
【0059】図3に示すように、本実施の形態にかかる
構造体としての地盤基礎構造体は、地盤1に埋設されて
おり、水硬性組成物水和物2と、筒状の埋設物13とで
構成されている。上記の地盤基礎構造体は、例えば、掘
削孔に打設された水硬性組成物に埋設物13を埋め込ん
だ後、該水硬性組成物を水和させることによって水硬性
組成物水和物2を形成することにより施工されている。
水硬性組成物水和物2は、埋設物13の内側にも形成さ
れている。そして、該埋設物13の内面における上部
(杭頭部)には、上記施工の実施に先立って、表面処理
剤4が均一に塗布されている。
【0060】上記の構成において、表面処理剤4のアル
カリ水可溶性樹脂4bは、水硬性組成物に含まれるアル
カリ水と接触すると溶解する。一方、表面処理剤4の水
膨潤性樹脂粒子4a…は、アルカリ水を吸水して膨潤す
る。従って、水硬性組成物の水和が終了した後におい
て、水硬性組成物水和物2の杭頭部2aと、埋設物13
の内面との間には、水を吸水して膨潤した水膨潤性樹脂
粒子4a…の層が形成される。つまり、上記の杭頭部2
aと埋設物13の内面との間に、膨潤した水膨潤性樹脂
粒子4a…の層が形成されるので、両者の接着を抑制す
ることができる。これにより、水硬性組成物水和物2の
杭頭部2aを埋設物13から剥離する際には、膨潤した
水膨潤性樹脂粒子4a…の層によって両者の接着を抑制
することができるので、労力を低減することができ、該
杭頭部2aを埋設物13から剥離する作業の作業性を向
上させることができる。さらに、水膨潤性樹脂粒子4a
…を乾燥させることにより、杭頭部2aと埋設物13の
内面との間に隙間を形成することができるので、上記作
業の作業性をさらに一層向上させることができる。それ
ゆえ、上記の構成によれば、地盤基礎構造体(構造体)
に好適に用いることができる表面処理剤、並びに、地盤
基礎構造体を迅速に施工することができる埋設物を提供
することができる。
【0061】本発明の実施のさらに他の形態について、
図4を参照しながら、さらに詳しく説明する。尚、説明
の便宜上、前記実施の形態の図面に示した構成と同一の
機能を有する構成には、同一の符号を付記し、その説明
を省略する。
【0062】図4に示すように、本実施の形態にかかる
構造体としての地盤基礎構造体は、地盤1に埋設されて
おり、水硬性組成物水和物2と、筒状の埋設物13とで
構成されている。上記の地盤基礎構造体は、例えば、掘
削孔に埋設物13を挿嵌した後、該埋設物13内側に水
硬性組成物を打設して水和させることによって水硬性組
成物水和物2を形成することにより施工されている。そ
して、該埋設物13の内面における上部(杭頭部)に
は、上記施工の実施に先立って、表面処理剤4が均一に
塗布されている。
【0063】上記の構成において、即ち、水硬性組成物
の水和が終了した後において、水硬性組成物水和物2の
杭頭部2aと、埋設物13の内面との間には、膨潤した
水膨潤性樹脂粒子4a…の層が形成されるので、両者の
接着を抑制することができる。これにより、水硬性組成
物水和物2の杭頭部2aを埋設物13から剥離する際に
は、膨潤した水膨潤性樹脂粒子4a…の層によって両者
の接着を抑制することができるので、労力を低減するこ
とができ、該杭頭部2aを埋設物13から剥離する作業
の作業性を向上させることができる。さらに、水膨潤性
樹脂粒子4a…を乾燥させることにより、杭頭部2aと
埋設物13の内面との間に隙間を形成することができる
ので、上記作業の作業性をさらに一層向上させることが
できる。それゆえ、上記の構成によれば、地盤基礎構造
体(構造体)に好適に用いることができる表面処理剤、
並びに、地盤基礎構造体を迅速に施工することができる
埋設物を提供することができる。
【0064】本発明にかかる表面処理剤は、以上のよう
に、埋設物と水硬性組成物の水和物とで少なくとも構成
される構造体における該埋設物と水硬性組成物の水和物
との接着を抑制すべく上記埋設物の表面に付着される表
面処理剤であって、水膨潤性樹脂と、酸価が15mgK
OH/g以上であるアルカリ水可溶性樹脂とを含む構成
である。また、本発明にかかる埋設物は、以上のよう
に、少なくとも水硬性組成物の水和物と共に構造体を構
成する埋設物であって、上記埋設物の表面に上記表面処
理剤が付着している構成である。
【0065】上記の構成によれば、水硬性組成物と埋設
物との間に、水を吸水して膨潤した水膨潤性樹脂の層が
形成される。つまり、水硬性組成物の水和物と埋設物と
の間に、膨潤した水膨潤性樹脂の層を形成することがで
きるので、両者の接着を抑制することができる。これに
より、埋設物を水硬性組成物の水和物から引き抜く際に
は、膨潤した水膨潤性樹脂が潤滑効果を発揮することに
よって、該埋設物が滑り易くなる。従って、埋設物を水
硬性組成物の水和物から引き抜く作業における労力(引
張力)をより一層低減することができるので、該作業の
作業性を向上させることができる。一方、水硬性組成物
の水和物を埋設物から剥離する際には、膨潤した水膨潤
性樹脂の層によって両者の接着を抑制することができる
ので、労力を低減することができ、水硬性組成物の水和
物を埋設物から剥離する作業の作業性を向上させること
ができる。さらに、水膨潤性樹脂を乾燥させることによ
り、水硬性組成物の水和物と埋設物との間に隙間を形成
することができるので、上記各種作業の作業性をさらに
一層向上させることができる。それゆえ、上記の構成に
よれば、構造体に好適に用いることができる表面処理剤
を提供することができる。また、上記の構成によれば、
構造体を迅速に施工することができる埋設物を提供する
ことができる。
【0066】さらに、埋設物を水硬性組成物の水和物か
ら引き抜くと、構造体には、埋設物の形状と等しい形状
の空洞(穴)が形成されることになる。該空洞は、例え
ば、排水溝として利用することができる。また、該空洞
に、電線やガス管、水道管等を挿通することができる。
【0067】尚、本発明にかかる構造体は、道路標識等
を設置する際の土台であってもよい。つまり、設置を所
望する道路標識の埋設部に対応した大きさ(形状、長さ
等)の埋設物を用いて構造体を形成した後、該埋設物を
引き抜いて道路標識を挿嵌することにより、道路標識を
設置することができる。
【0068】本発明にかかる接着防止方法は、以上のよ
うに、水硬性組成物と、該水硬性組成物に接触し、か
つ、水硬性組成物の水和が終了した後に該水硬性組成物
の水和物から分離される、埋設物或いは基体或いは支持
体との間に、接着防止剤を介在させることにより、上記
水硬性組成物の水和物と、埋設物或いは基体或いは支持
体との接着を防止する方法であって、上記接着防止剤
が、水膨潤性樹脂と、酸価が15mgKOH/g以上で
あるアルカリ水可溶性樹脂とを含むと共に、水膨潤性樹
脂の含有量が10重量%以上であって、かつ、接触部に
用いる接着防止剤の使用量が40g/m2 以上である方
法である。
【0069】上記の方法によれば、水硬性組成物と、埋
設物(例えば、鋼矢板、H型鋼、または、筒状の柱状基
体)或いは基体或いは支持体(水硬性組成物の水和が終
了する迄、該水硬性組成物を所望の形状に保持するため
に用いられる)との間に、水を吸水して膨潤した水膨潤
性樹脂の層を形成することができる。つまり、水硬性組
成物の水和物と、埋設物或いは基体或いは支持体との間
に、膨潤した水膨潤性樹脂の層を形成することができる
ので、両者の接着を抑制することができる。それゆえ、
上記の方法によれば、水硬性組成物の水和物と、埋設物
或いは基体或いは支持体との接着を防止することができ
る。また、埋設物或いは基体或いは支持体を水硬性組成
物の水和物から分離する際には、膨潤した水膨潤性樹脂
が潤滑効果を発揮することによって、該埋設物或いは基
体或いは支持体が滑り易くなるので、分離作業の作業性
を向上させることができる。
【0070】
【実施例】以下、実施例により、本発明をさらに具体的
に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるも
のではない。
【0071】アルカリ水可溶性樹脂の酸価は、JIS
K6901「液状不飽和ポリエステル樹脂試験方法」の
適用箇条4.3に記載の試験方法に基づいて測定した。
但し、該試験方法に規定される溶媒にアルカリ水可溶性
樹脂が溶解しない場合には、溶解する溶媒を適宜用い
て、上記試験方法に準じて測定した。
【0072】アルカリ水可溶性樹脂の示差走査熱量測定
は、セイコー電子工業株式会社製のDSC220Cを用
いて行った。測定条件は以下の通り。即ち、窒素ガス雰
囲気下、10mgの試料を150℃に昇温し、該温度で
5分間保持した後、−100℃に急冷し、該温度で5分
間保持した。続いて、上記の試料を、昇温速度10℃/
分で150℃まで昇温させた。そして、DSC曲線にお
ける変曲点を示す温度を、常法に従って読み取り、該温
度をアルカリ水可溶性樹脂のガラス転移温度とした。
【0073】〔実施例1〕 水膨潤性樹脂を以下の方法で以て調製した。即ち、温度
計とブレード(攪拌翼)とを備え、内面が三フッ化エチ
レンでライニング処理された容量1.5Lの卓上型ジャ
ケット付きニーダーを反応器として用い、該反応器に、
メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(分子
量512)55.18g、メタクリル酸(分子量86.
09)3.76g、メタクリル酸ナトリウム(分子量1
08)215.69g、架橋剤であるポリエチレングリ
コールジアクリレート1.4g、および、溶媒であるイ
オン交換水352.37gを仕込んだ。単量体成分にお
ける架橋剤の割合は0.15モル%である。
【0074】ジャケットに50℃の温水を流すことによ
り、上記の水溶液を窒素ガス気流下、攪拌しながら50
℃に加熱した。次いで、重合開始剤である2,2’−ア
ゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(分子量2
71.27,和光純薬工業株式会社製化成品V−50)
の11.6重量%水溶液10gを添加して10秒間攪拌
した後、攪拌を停止して静置した。単量体成分に対する
重合開始剤の割合は0.2モル%である。
【0075】重合開始剤を添加した後、直ちに重合反応
が開始され、90分経過後に内温が100℃(ピーク温
度)に達した。その後、ジャケットに80℃の温水を流
しながら、内容物をさらに30分間熟成させた。これに
より、含水ゲルを得た。反応終了後、ブレードを回転さ
せて含水ゲルを微細な状態になるまで解砕した後、反応
器を反転させて該含水ゲルを取り出した。
【0076】得られた含水ゲルを熱風循環式乾燥機を用
いて140℃で3時間乾燥した。乾燥後、乾燥物を卓上
簡易型粉砕機(協立理工株式会社製)を用いて粉砕し
た。これにより、平均粒子径150μmの水膨潤性樹脂
を得た。
【0077】一方、アルカリ水可溶性樹脂を以下の方法
で以て調製した。即ち、温度計、攪拌翼、還流冷却器、
および滴下装置を備えた容量50Lの槽型反応器に、ア
クリル酸0.45kg、アクリル酸エチル2.4kg、
メタクリル酸メチル0.15kg、重合開始剤である
2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリ
ル)12g、および、溶媒であるメチルアルコール3k
gを仕込んだ。また、滴下装置に、アクリル酸1.05
kg、アクリル酸メチル2.1kg、メタクリル酸メチ
ル3.85kg、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメ
チルバレロニトリル)28g、および、メチルアルコー
ル7kgからなる混合溶液を仕込んだ。
【0078】上記のメチルアルコール溶液を窒素ガス雰
囲気下、攪拌しながら65℃に加熱し、20分間反応さ
せた。これにより、内容物の重合率を72%に調節し
た。続いて、内温を65℃に保ちながら、滴下装置から
上記の混合溶液を2時間かけて均等に滴下した。滴下終
了後、内容物を65℃でさらに3時間熟成させた。反応
終了後、内容物にメチルアルコール10kgを混合する
ことにより、アルカリ水可溶性樹脂の33重量%メチル
アルコール溶液を得た。
【0079】得られたアルカリ水可溶性樹脂の酸価は1
17mgKOH/gであった。また、該アルカリ水可溶
性樹脂の示差走査熱量測定を行った結果、該アルカリ水
可溶性樹脂は、ガラス転移温度を−80℃〜120℃の
範囲内に2つ有していた。
【0080】以上のようにして調製した水膨潤性樹脂5
0重量部と、アルカリ水可溶性樹脂の33重量%メチル
アルコール溶液150重量部とを混合・分散することに
より、本発明にかかる表面処理剤としての分散混合液を
得た。分散混合液における水膨潤性樹脂とアルカリ水可
溶性樹脂との重量比(水膨潤性樹脂/アルカリ水可溶性
樹脂)は、1/1である。そして、得られた分散混合液
を、埋設物である幅200mm×200mm、長さ50
0mmのH型鋼(鋼材の厚み10mm)の表面に均一に
塗布した。これにより、剥離や損傷し難く、べとつき難
い塗膜を形成することができた。また、塗膜は、H型鋼
との密着性が充分であり、鉄へら等で擦っても容易には
剥離しなかった。
【0081】一方、水硬性組成物として、セメント55
重量部に、川砂135重量部と、水100重量部とを配
合してなるモルタルを調製し、該モルタルを400mm
以上の深さにまで掘削した掘削孔に打設した。次いで、
打設したモルタルに上記のH型鋼を400mmの長さだ
け垂直に埋め込んだ後、該モルタルを水和させた。
【0082】7日間経過後、H型鋼をモルタルの水和物
から引き抜いた。H型鋼はモルタルの水和物から容易に
引き抜くことができ、該H型鋼の表面には、水を吸水し
て膨潤した水膨潤性樹脂の層が形成されていた。該引き
抜き作業に要した引張力から算出したH型鋼とモルタル
の水和物との最大付着強度は、0.01kg/cm2
あった。従って、分散混合液をH型鋼の表面に塗布する
ことにより、H型鋼とモルタルの水和物との接着を抑制
することができ、作業性を向上させることができること
が判った。
【0083】〔実施例2〕 アルカリ水可溶性樹脂を以下の方法で以て調製した。即
ち、温度計、攪拌翼、還流冷却器、および滴下装置を備
えた容量50Lの槽型反応器に、アクリル酸0.525
kg、アクリル酸メチル1.725kg、アクリル酸エ
チル2.4kg、メタクリル酸メチル2.85kg、
2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリ
ル)30g、および、メチルアルコール15kgを仕込
んだ。
【0084】上記のメチルアルコール溶液を窒素ガス雰
囲気下、攪拌しながら65℃に加熱し、5時間反応させ
た。これにより、アルカリ水可溶性樹脂の33重量%メ
チルアルコール溶液を得た。得られたアルカリ水可溶性
樹脂の酸価は51mgKOH/gであった。
【0085】以上のようにして調製したアルカリ水可溶
性樹脂の33重量%メチルアルコール溶液150重量部
と、前記実施例1にて調製した水膨潤性樹脂50重量部
とを混合・分散することにより、本発明にかかる表面処
理剤としての分散混合液を得た。
【0086】そして、得られた分散混合液を用いて、実
施例1の条件下と同一の条件下で、H型鋼とモルタルの
水和物との最大付着強度を算出した。その結果、該最大
付着強度は、0.016kg/cm2 であった。従っ
て、分散混合液をH型鋼の表面に塗布することにより、
H型鋼とモルタルの水和物との接着を抑制することがで
き、作業性を向上させることができることが判った。
【0087】〔実施例3〕 実施例1に記載の方法で以てそれぞれ調製した、水膨潤
性樹脂10重量部と、アルカリ水可溶性樹脂(酸価は1
17mgKOH/g)の33重量%メチルアルコール溶
液273重量部とを混合・分散することにより、本発明
にかかる表面処理剤としての分散混合液を得た。分散混
合液における水膨潤性樹脂とアルカリ水可溶性樹脂との
重量比は、1/9である。そして、得られた分散混合液
を、幅70mm×長さ150mm×厚さ0.8mmの冷
間圧延鋼板(埋設物;日本テストパネル株式会社製,S
PCC−SB)の表面に均一に塗布した。これにより、
該鋼板(以下、テストピースと記す)の表面に、付着量
が100g/m2 である塗膜を形成した。
【0088】次に、本発明にかかる耐水性付与剤とし
て、実施例1に記載の方法で以て調製したアルカリ水可
溶性樹脂の25重量%メチルアルコール溶液を用い、上
記塗膜の表面に、塗布量が50g/m2 となるように該
溶液を均一に塗布した。
【0089】そして、上記耐水性被膜の耐水性を評価し
た。即ち、テストピース(塗膜および耐水性被膜が形成
されたテストピース、以下、テストピースaと記す)を
脱イオン水に浸漬し、塗膜の経時変化を目視にて観察す
ることにより、耐水性被膜の耐水性を評価した。耐水性
に劣っている場合には、脱イオン水が耐水性被膜を通過
して塗膜に含まれている水膨潤性樹脂を膨潤させるの
で、該水膨潤性樹脂が白く浮き上がった状態に見える。
従って、耐水性は、塗膜全体に占める、浮き上がった状
態に見える部分が10%未満である場合を「良好」、同
部分が10%以上、40%未満である場合を「良」、同
部分が40%以上である場合を「不良」とする三段階で
評価した。
【0090】同様に、表面に耐水性被膜だけが形成され
たテストピース(以下、テストピースbと記す)、並び
に、表面に塗膜だけが形成されたテストピース(以下、
テストピースcと記す)の耐水性を評価した。結果を表
1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】表1に示した結果から、テストピースa・
bは、耐水性被膜が形成されているので、脱イオン水に
7時間浸漬しても評価が「良好」または「良」であり、
耐水性に優れていることが判った。つまり、耐水性被膜
が耐水性に優れていることが判った。また、本実施例に
かかるアルカリ水可溶性樹脂が耐水性に優れており、水
に濡れても塗膜の剥離等を生じないことが判った。これ
に対し、テストピースcは、耐水性被膜が形成されてい
ないので、塗膜に含まれている水膨潤性樹脂が露出して
いる部分があり、脱イオン水に5分間浸漬しただけで評
価が「不良」になり、耐水性が悪いことが判った。
【0093】次に、実施例1に記載の方法で以て調製し
たモルタルに、上記テストピースaを135mmの長さ
だけ垂直に埋め込んだ後、該モルタルを水和させた。7
日間経過後、テストピースaをモルタルの水和物から引
き抜き、該引き抜き作業に要した引抜荷重を測定すると
共に、テストピースaを引き抜いた後に形成された穴の
幅を測定した。
【0094】同様に、表面に市販のワックスを厚さ15
0μmとなるように塗布したテストピース(以下、テス
トピースdと記す)、同ワックスを厚さ400μmとな
るように塗布したテストピース(以下、テストピースe
と記す)、並びに、表面に何も塗布しないテストピース
(以下、ブランクテストピースと記す)の引抜荷重を測
定した。結果を表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】テストピースaは、モルタルの水和物から
容易に引き抜くことができた。また、該テストピースa
の表面には、膨潤した水膨潤性樹脂の層が形成されてお
り、このため、テストピースaを引き抜いた後に形成さ
れた穴の幅は、テストピースaの幅と比較して充分に広
くなっていた。これに対し、テストピースd・eは、モ
ルタルの水和物から引き抜くのに、テストピースaと比
較して凡そ2倍の引抜荷重を必要とした。また、ブラン
クテストピースは、53kgfの引抜荷重を掛けても、
モルタルの水和物から引き抜くことができなかった。つ
まり、表2に示した結果から、分散混合液をテストピー
スの表面に塗布することにより、テストピースaとモル
タルの水和物との接着を抑制することができ、作業性を
向上させることができること、並びに、塗膜の表面に耐
水性被膜を形成しても、上記作業性に対して何ら支障を
生じないことが判った。
【0097】〔実施例4〕 実施例1に記載の方法で以てそれぞれ調製した、水膨潤
性樹脂(平均粒子径150μm)と、アルカリ水可溶性
樹脂の33重量%メチルアルコール溶液とを、下記表3
に示す種々の重量比(割合)で混合・分散することによ
り、本発明にかかる表面処理剤としての分散混合液を得
た。つまり、本発明にかかる表面処理剤としての分散混
合液2種類と、比較用の分散混合液1種類とを得た。
【0098】そして、得られた分散混合液を、それぞ
れ、埋設物である幅100mm×100mm、長さ1m
のH型鋼(鋼材の厚み10mm)の表面に、該表3に示
す付着量となるように均一に刷毛塗りした後、一晩乾燥
させて塗膜を形成した。塗膜は、H型鋼との密着性が充
分であり、鉄へら等で擦っても容易には剥離しなかっ
た。
【0099】次いで、上記のH型鋼(H型鋼〜、比
較用H型鋼、ブランクの計8本)を、それぞれ、内径2
50mmの有底の紙製ボイド管(昭和丸筒製,商品名・
ソノボイド)の中心部に挿入した。上記ボイド管の底
は、ビニール袋を用いて塞ぐことによって有底とした。
また、上記H型鋼のうちの1本には、本発明にかかる耐
水性付与剤として、実施例1に記載の方法で以て調製し
たアルカリ水可溶性樹脂の25重量%メチルアルコール
溶液を、表3に示す付着量となるように均一に塗布して
耐水性被膜を形成した。
【0100】一方、水硬性組成物として、水、セメン
ト、粘土、およびベントナイトを、52.6:12.
2:34:1.2(重量比)の割合で配合してなるセメ
ント組成物(以下、セメント組成物Aと記す)を調製し
た。そして、該セメント組成物Aを、挿入されたH型鋼
(H型鋼〜、比較用H型鋼、ブランクの計7本)が
900mm埋まるようにして、上記ボイド管に打設し
た。また一方、水硬性組成物として、水、セメント、お
よび豊浦標準砂を、6:10:20(重量比)の割合で
配合してなるセメント組成物(1:2モルタル、以下、
セメント組成物Bと記す)を調製した。そして、該セメ
ント組成物Bを、挿入されたH型鋼(H型鋼)が90
0mm埋まるようにして、上記ボイド管に打設した。そ
の後、これらセメント組成物A・Bを水和させた。
【0101】1週間経過後、セメント組成物A・Bの水
和物を固定して、H型鋼を該水和物から引き抜いた。そ
して、この引き抜き作業に要した引張力(以下、最大強
度と記す)を測定した。測定条件(重量比、付着量)並
びに結果を表3に示す。尚、該最大強度の数値は、H型
鋼の重量を含んでいる。
【0102】
【表3】
【0103】
【発明の効果】本発明の請求項1記載の表面処理剤は、
以上のように、埋設物と水硬性組成物の水和物とで少な
くとも構成される構造体における該埋設物と水硬性組成
物の水和物との接着を抑制すべく上記埋設物の表面に付
着される表面処理剤であって、水膨潤性樹脂と、水膨潤
性樹脂を埋設物の表面に付着させるための、酸価が15
mgKOH/g以上であるアルカリ水可溶性樹脂と、水
膨潤性樹脂およびアルカリ水可溶性樹脂を分散させる有
機溶媒とを含む構成である。
【0104】これにより、埋設物を水硬性組成物の水和
物から引き抜く際には、膨潤した水膨潤性樹脂が潤滑効
果を発揮することによって、該埋設物が滑り易くなる。
従って、埋設物を水硬性組成物の水和物から引き抜く作
業における労力(引張力)をより一層低減することがで
きるので、該作業の作業性を向上させることができる。
一方、水硬性組成物の水和物を埋設物から剥離する際に
は、膨潤した水膨潤性樹脂の層によって両者の接着を抑
制することができるので、労力を低減することができ、
水硬性組成物の水和物を埋設物から剥離する作業の作業
性を向上させることができる。さらに、水膨潤性樹脂を
乾燥させることにより、水硬性組成物の水和物と埋設物
との間に隙間を形成することができるので、上記各種作
業の作業性をさらに一層向上させることができる。それ
ゆえ、上記の構成によれば、構造体に好適に用いること
ができる表面処理剤を提供することができるという効果
を奏する。
【0105】本発明の請求項2記載の表面処理剤は、以
上のように、水膨潤性樹脂およびアルカリ水可溶性樹脂
の合計量に対する該水膨潤性樹脂の割合が10重量%以
上である構成である。上記の構成によれば、構造体に特
に好適に用いることができる表面処理剤を提供すること
ができるという効果を奏する。
【0106】本発明の請求項3記載の埋設物は、以上の
ように、少なくとも水硬性組成物の水和物と共に構造体
を構成する埋設物であって、水膨潤性樹脂と、水膨潤性
樹脂を埋設物の表面に付着させるための、酸価が15m
gKOH/g以上であるアルカリ水可溶性樹脂と、水膨
潤性樹脂およびアルカリ水可溶性樹脂を分散させる有機
溶媒とを含む表面処理剤により、上記埋設物の表面に、
上記水膨潤性樹脂およびアルカリ水可溶性樹脂が付着さ
れている構成である。
【0107】これにより、埋設物を水硬性組成物の水和
物から引き抜く際には、膨潤した水膨潤性樹脂が潤滑効
果を発揮することによって、該埋設物が滑り易くなる。
従って、埋設物を水硬性組成物の水和物から引き抜く作
業における労力(引張力)をより一層低減することがで
きるので、該作業の作業性を向上させることができる。
一方、水硬性組成物の水和物を埋設物から剥離する際に
は、膨潤した水膨潤性樹脂の層によって両者の接着を抑
制することができるので、労力を低減することができ、
水硬性組成物の水和物を埋設物から剥離する作業の作業
性を向上させることができる。さらに、水膨潤性樹脂を
乾燥させることにより、水硬性組成物の水和物と埋設物
との間に隙間を形成することができるので、上記各種作
業の作業性をさらに一層向上させることができる。それ
ゆえ、上記の構成によれば、構造体に好適に用いること
ができる埋設物を提供することができるという効果を奏
する。
【0108】本発明の請求項4記載の埋設物は、以上の
ように、埋設物への上記水膨潤性樹脂およびアルカリ水
可溶性樹脂の付着量が40g/m2 以上である構成であ
る。上記の構成によれば、構造体をより一層迅速に施工
することができる埋設物を提供することができるという
効果を奏する。
【0109】本発明の請求項5記載の埋設物は、以上の
ように、水膨潤性樹脂およびアルカリ水可溶性樹脂の層
の表面に、耐水性付与剤が付着されている構成である。
【0110】これにより、例えば、埋設物を保管してお
く場合において、該埋設物を資材置場等に野積みして
も、水膨潤性樹脂が雨や夜露、或いは地面からの水分を
吸水して膨潤することはない。つまり、耐水性付与剤が
付着されているので、例えば埋設物を用いて構造体を施
工する前に該埋設物が水濡れしたとしても、耐水性付与
剤が、水膨潤性樹脂が膨潤することを防止するために、
例えば防水シートで埋設物を覆ったり、屋内の資材置場
等に埋設物を保管する必要が無い。それゆえ、埋設物を
簡便かつ安価に保管することができるという効果を奏す
る。
【0111】本発明の請求項6記載の接着防止方法は、
以上のように、水硬性組成物と、該水硬性組成物に接触
し、かつ、水硬性組成物の水和が終了した後に該水硬性
組成物の水和物から分離される、埋設物或いは基体或い
は支持体との間に、接着防止剤を介在させることによ
り、上記水硬性組成物の水和物と、埋設物或いは基体或
いは支持体との接着を防止する方法であって、上記接着
防止剤が、水膨潤性樹脂と、水膨潤性樹脂を埋設物の表
面に付着させるための、酸価が15mgKOH/g以上
であるアルカリ水可溶性樹脂と、水膨潤性樹脂およびア
ルカリ水可溶性樹脂を分散させる有機溶媒とを含むと共
に、水膨潤性樹脂の含有量が10重量%以上であって、
かつ、接触部に用いる接着防止剤の使用量が40g/m
2 以上である方法である。
【0112】本発明の請求項7記載の接着防止方法は、
以上のように、上記埋設物が、鋼矢板、H型鋼、また
は、筒状の柱状基体である方法である。
【0113】上記の方法によれば、水硬性組成物と、埋
設物(例えば、鋼矢板、H型鋼、または、筒状の柱状基
体)或いは基体或いは支持体(水硬性組成物の水和が終
了する迄、該水硬性組成物を所望の形状に保持するため
に用いられる)との間に、水を吸水して膨潤した水膨潤
性樹脂の層を形成することができる。つまり、水硬性組
成物の水和物と、埋設物或いは基体或いは支持体との間
に、膨潤した水膨潤性樹脂の層を形成することができる
ので、両者の接着を抑制することができる。それゆえ、
上記の方法によれば、水硬性組成物の水和物と、埋設物
或いは基体或いは支持体との接着を防止することができ
るという効果を奏する。また、埋設物或いは基体或いは
支持体を水硬性組成物の水和物から分離する際には、膨
潤した水膨潤性樹脂が潤滑効果を発揮することによっ
て、該埋設物或いは基体或いは支持体が滑り易くなるの
で、分離作業の作業性を向上させることができる。
【0114】本発明の請求項8記載の埋設物は、以上の
ように、埋設物の表面に、埋設物と水硬性組成物の水和
物との接着を抑制すべく付着される表面処理剤と、表面
処理剤上に付着される耐水性付与剤とを有している構成
である。上記構成では、表面 処理剤は、水膨潤性樹脂を
含むことが好ましい。
【0115】上記構成によれば、耐水性付与剤を付着さ
せることによって、例えば、埋設物を保管しておく場合
において、該埋設物を資材置場等に野積みしても、雨や
夜露、或いは地面からの水から、表面処理剤の変化、例
えば膨潤を抑制できる。このことから、上記構成では、
埋設物を、例えば防水シートで覆ったり、屋内の資材置
場等に保管する必要が無く、よって、埋設物を簡便かつ
安価に保管することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態にかかる構造体としての
地盤基礎構造体の概略を示す断面図である。
【図2】上記地盤基礎構造体の要部を示す断面図であ
る。
【図3】本発明の実施の他の形態にかかる構造体として
の地盤基礎構造体の概略を示す断面図である。
【図4】本発明の実施のさらに他の形態にかかる構造体
としての地盤基礎構造体の概略を示す断面図である。
【符号の説明】
1 地盤 2 水硬性組成物水和物 2a 杭頭部 3 埋設物 4 表面処理剤 4a 水膨潤性樹脂粒子 4b アルカリ水可溶性樹脂 13 筒状の埋設物
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 村上 洋平 大阪府吹田市西御旅町5番8号 株式会 社日本触媒内 (72)発明者 服部 晃 大阪府大阪市中央区高麗橋4丁目1番1 号 株式会社日本触媒内 (56)参考文献 特開 昭64−58715(JP,A) 特開 平4−16618(JP,A) 特開 昭63−165615(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) E02D 9/02 C09K 3/00

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】埋設物と水硬性組成物の水和物とで少なく
    とも構成される構造体における該埋設物と水硬性組成物
    の水和物との接着を抑制すべく上記埋設物の表面に付着
    される表面処理剤であって、 水膨潤性樹脂と、水膨潤性樹脂を埋設物の表面に付着さ
    せるための、酸価が15mgKOH/g以上であるアル
    カリ水可溶性樹脂と、水膨潤性樹脂およびアルカリ水可
    溶性樹脂を分散させる有機溶媒とを含むことを特徴とす
    る表面処理剤。
  2. 【請求項2】水膨潤性樹脂およびアルカリ水可溶性樹脂
    の合計量に対する該水膨潤性樹脂の割合が10重量%以
    上であることを特徴とする請求項1記載の表面処理剤。
  3. 【請求項3】少なくとも水硬性組成物の水和物と共に構
    造体を構成する埋設物であって、 水膨潤性樹脂と、水膨潤性樹脂を埋設物の表面に付着さ
    せるための、酸価が15mgKOH/g以上であるアル
    カリ水可溶性樹脂と、水膨潤性樹脂およびアルカリ水可
    溶性樹脂を分散させる有機溶媒とを含む表面処理剤によ
    り、上記埋設物の表面に、上記水膨潤性樹脂およびアル
    カリ水可溶性樹脂が付着されていることを特徴とする埋
    設物。
  4. 【請求項4】上記水膨潤性樹脂およびアルカリ水可溶性
    樹脂の付着量が40g/m2 以上であることを特徴とす
    る請求項3記載の埋設物。
  5. 【請求項5】水膨潤性樹脂およびアルカリ水可溶性樹脂
    層の表面に、耐水性付与剤が付着されていることを特
    徴とする請求項3または4記載の埋設物。
  6. 【請求項6】水硬性組成物と、該水硬性組成物に接触
    し、かつ、水硬性組成物の水和が終了した後に該水硬性
    組成物の水和物から分離される、埋設物或いは基体或い
    は支持体との間に、接着防止剤を介在させることによ
    り、上記水硬性組成物の水和物と、埋設物或いは基体或
    いは支持体との接着を防止する方法であって、 上記接着防止剤が、水膨潤性樹脂と、水膨潤性樹脂を埋
    設物の表面に付着させるための、酸価が15mgKOH
    /g以上であるアルカリ水可溶性樹脂と、水膨潤性樹脂
    およびアルカリ水可溶性樹脂を分散させる有機溶媒と
    含むと共に、水膨潤性樹脂の含有量が10重量%以上で
    あって、かつ、接触部に用いる接着防止剤の使用量が4
    0g/m2 以上であることを特徴とする接着防止方法。
  7. 【請求項7】上記埋設物が、鋼矢板、H型鋼、または、
    筒状の柱状基体であることを特徴とする請求項6記載の
    接着防止方法。
  8. 【請求項8】少なくとも水硬性組成物の水和物と共に構
    造体を形成するための埋設物であって、 埋設物の表面に、埋設物と水硬性組成物の水和物との接
    着を抑制すべく付着される表面処理剤と、 表面処理剤上に付着される耐水性付与剤とを有している
    ことを特徴とする埋設物。
  9. 【請求項9】表面処理剤は水膨潤性樹脂を含むことを特
    徴とする請求項8記載の埋設物。
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