JP4204497B2 - 土木・建築用樹脂組成物及び鋼材の処理方法 - Google Patents

土木・建築用樹脂組成物及び鋼材の処理方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4204497B2
JP4204497B2 JP2004071734A JP2004071734A JP4204497B2 JP 4204497 B2 JP4204497 B2 JP 4204497B2 JP 2004071734 A JP2004071734 A JP 2004071734A JP 2004071734 A JP2004071734 A JP 2004071734A JP 4204497 B2 JP4204497 B2 JP 4204497B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin
water
resin composition
civil engineering
mass
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004071734A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005256498A (ja
Inventor
功一 岡本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Shokubai Co Ltd filed Critical Nippon Shokubai Co Ltd
Priority to JP2004071734A priority Critical patent/JP4204497B2/ja
Publication of JP2005256498A publication Critical patent/JP2005256498A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4204497B2 publication Critical patent/JP4204497B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Bulkheads Adapted To Foundation Construction (AREA)
  • Placing Or Removing Of Piles Or Sheet Piles, Or Accessories Thereof (AREA)
  • Lubricants (AREA)

Description

本発明は、土木・建築用樹脂組成物に関する。より詳しくは、建築分野や土木分野の基礎工事等における鋼材の引き抜き作業をより改善することができる吸水性樹脂を含む土木・建築用樹脂組成物に関する。
建築分野や土木分野の基礎工事等において、地盤中に土留め擁壁等の構造物を埋設する場合には、鋼矢板等の鋼材(支持体)等を直接地盤に埋設する方法が一般に利用されている。そして、鋼矢板等を地盤に埋設した後には、必要に応じ、セメントミルクや生コンクリート等の水硬性組成物を地盤中に圧入したり、掘削孔を形成し水硬性組成物を注入後にH型鋼を鋼材(芯材)として埋め込んだりすることが行われている。なお、水硬性組成物を使用するか否かは、基礎工事を行う周囲の地下水の状況に応じて決定される。このような基礎工事等に用いられる鋼材は、後年に地下を再び工事(開発)する際の障害とならないようにしたり、また、鋼材を再度使用したりするために、地盤から引き抜かれることが望まれるが、地盤や注入した水硬性組成物が硬化後、当該水硬性組成物の硬化物から鋼材を引き抜く作業には相当の労力(引張力)が必要となる。
そこで、従来、鋼材表面にワックスやグリース等の潤滑油を予め塗布したり、吸水性樹脂を含む処理剤等を鋼材表面に塗布したりすることによって、鋼材の引き抜き作業を容易に行う技術が種々提案されている。例えば、吸水性樹脂と、ポリエステル系樹脂やビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等の展着剤及びエタノール等の展着剤とからなる心材引き抜き用表面処理剤が開示されており(例えば、特許文献1参照。)、また、高吸水性樹脂と、天然ゴムや合成ゴム、プラスチック等の揮発性膜形成樹脂とからなる水膨潤性膜を用いて、鋼材を引き抜く際の摩擦抵抗力を低減する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、これらは、本発明が目的とする吸水性樹脂の分散改良、沈降防止に関しての技術は記載されておらず、吸水性樹脂の分散性に関しては、改良の余地があった。また、従来使用されている吸水性樹脂は通常粉末状であるため、当該処理剤を調整するときに周囲に飛散したり、混合が不充分である場合にはママコになり、不均一となり、その結果、吸水使用時に吸水効率が充分とはならなくなったり、また、当該処理剤の作業現場へのポンプ移送が困難となったりすることが多々ある。また、吸水性樹脂としては、溶媒等に分散・混合して用いることとなるが、吸水性樹脂が短時間で沈降し易く、また、沈降後固化してしまい、容易に再分散できないものとなることが多いことから、これらの点においても工夫の余地があった。
そこで、本願出願人は、更に改良するために、水膨潤性樹脂、特定のアルカリ水可溶性樹脂及び有機溶媒を含む表面処理剤を見いだしている(例えば、特許文献3参照。)。この表面処理剤は、鋼材と水硬性組成物の水和物との間に膨潤した水膨潤性樹脂の層を形成して両者の接着を充分に抑制するとともに、鋼材を水硬性組成物の水和物から引き抜く際に膨潤した水膨潤性樹脂が潤滑効果を発揮することによって鋼材が滑り易くなることに起因して、水硬性組成物の水和物からの鋼材の引張力を低減でき、引き抜き作業の作業性を向上できることから、建築・土木分野において好適に利用されるものである。しかしながら、この表面処理剤を用いる場合には、粉末状の水膨潤性樹脂をアルカリ水可溶性樹脂と溶媒中で混合・分散する必要があるため、この混合・分散作業を簡略化することができ、現場における取り扱い性や作業環境を更に改善し、建築分野や土木分野においてより一層好適なものとするための工夫の余地があった。具体的には、この出願においては、粉末状の水膨潤性樹脂(吸水性樹脂)の、当該表面処理剤中への分散性を向上させたり、吸水性樹脂の表面処理剤中の沈降性に関しての問題を解決するための記載はされていない。
なお、本出願は、これを更に改良するものである。
従来の引き抜き作業を改善するための技術としてはまた、下記の先行技術等が挙げられる。
水膨潤性のポリウレタンのプレポリマーからなる主材と、充填材、可塑剤、チクソ剤、溶剤その他の助剤とからなり、高吸水性樹脂を含む止水を目的とする水膨張性一液型ポリウレタンシーリング材組成物が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。特に、当該特許文献4は、シーリング材組成物に関しての技術であり、高粘度の組成物であると思われる。よって粉末状の水膨潤性樹脂を有機溶媒に混合する際の問題点、あるいは、有機溶媒共存化における粉末状の水膨潤性樹脂の沈降防止の分散性に関しては何も記載されていない。鋼材と組成物との密着性を向上するとともに、引き抜き作業に必要な労力(引張力)をより低減するために、粉末状の吸水性樹脂の当該組成物中への分散性を向上することや、吸水性樹脂の組成物中の沈降性を低下させることに関しては何も記載されていない。
水を吸収して膨潤し、かつ薬物によって実質的に膨潤しない性質を有する吸水性充填剤を含有する粘着剤層が設けられた貼付剤が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら、この貼付剤は、人の皮膚に貼付されることを目的とすることから、鋼材と組成物とを密着するのに高い接着力、粘着力等が望まれる土木・建築分野の基礎工事等においても好適に用いられるようにするための工夫の余地があった。つまり、当該貼付剤は高い粘度を保有しているものであり、当該組成物における吸水性樹脂粒子の沈降防止等は記載されてはいない。また、当該引例中の吸水性樹脂は水分等を吸収している状態と考えられる。
石油系炭化水素を用いて逆相懸濁重合方法で製造したアクリル系重合体の逆相エマルジョンに、界面活性剤、粉末状吸水性樹脂、微粉末状シリカ及び有機ベントナイトを混合・分散してなる吸水性樹脂の油性分散液が開示されている(例えば、特許文献6参照。)。当該特許文献4の目的は、吸水性樹脂粒子の石油系炭化水素分散液中への沈降防止である。この油性分散液では逆相エマルションのアクリル系の重合体を用いているが、通常、水溶性重合体を製造する場合に水を含む溶媒を用いる重合方法の場合、重合後、乾燥工程を経ないまま、当該アクリル系重合体と吸水性樹脂粒子とを配合してしまうと、使用する前に吸水性樹脂が水を吸って膨張してしまうおそれがある。この油性分散液は、この問題を解決するために、逆相エマルジョンとすることで水を溶媒に用いなくても吸水性樹脂と水溶性重合体とを分散・混合することを可能とするものであると考えられる。また、開示されるアクリル系逆相懸濁重合品は、水溶性を保有していると思われる。つまり当該引例の技術は、逆相エマルジョン重合方法で製造した水溶性を有するアクリル系重合体、及び、吸水性樹脂を石油系油性液中に分散させて取り扱うための技術である。具体的には現場での吸水性樹脂粉末の飛散の問題や、油性分散液を移送するうえで吸水性樹脂の油性液中への沈降防止を目的とした技術が開示されている。つまり、本発明が対象とする、吸水性樹脂、イオン交換水難溶性のバインダー樹脂及び有機溶媒の混合樹脂組成物におけるバインダー樹脂と、上記出願が開示するアクリル系逆相懸濁重合品とは特性が異なると思われる。よって当該特許文献の技術は、水に溶解しにくいバインダー樹脂を必須成分とする樹脂組成物における吸水性樹脂粒子の沈降防止を目的とする本発明とは異なる技術であり、本発明が対象とする組成物中における吸水性樹脂の沈降をより充分に抑制したり、その再分散をより容易化したりすることにより、作業の効率化及び鋼材の引き抜き性向上を図るための工夫の余地があった。
(a)高吸水性ポリマー、(b)水不溶性粉状物、及び、(c)有機溶剤を含有する液状の漏水防止剤(例えば、特許文献7参照。)が開示されている。なお、この漏水防止剤では、水不溶性粉状物(b)として、シリカ粒子等の無機物粉体が記載されている。本文及び実施例における使用量割合から、漏水防止用の充填剤として使用されているものと考えられる。また、開示されるのは漏水防止剤であるので、その本文にはチキソトロピー性付与、粘度調整のために水を配合することは記載されてはいる。しかしながら、この漏水防止剤においては、土木・建築分野における鋼材の引き抜き作業にも好適なものとするとともに、吸水性樹脂の沈降を抑制したり、その再分散を容易化したりするために、組成物中において吸水性樹脂を均一に分散させる目的等は記載されておらず、その目的のために揺変剤を配合することは記載されてはいない。
特開昭64−58715号公報(第1、2頁) 特開昭63−165615号公報(第1、2頁) 特開平11−241339号公報(第1、3頁) 特開平3−281591号公報(第1頁) 特開平4−29927号公報(第1頁) 特開平11−92565号公報(第2頁) 特開2000−73047号公報(第2、3頁)
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、吸水性樹脂と共に特定のバインダー樹脂を含む樹脂組成物であって、現場や他の工程において当該樹脂組成物を配合しても、又保管等行っても、長期間にわたって吸水性樹脂の沈降を低減し、また、その再分散を容易化することにより、作業現場での取り扱い性や貯蔵安定性を充分に改善するものである。又、縦面や斜め面等であっても液ダレを抑制して均一に塗布することを可能とする土木・建築用樹脂組成物を提供することを目的とするものである。更に具体的には、鋼材表面処理用あるいは鋼材表面染布用の樹脂組成物に関してであり、当該樹脂組成物を使用した鋼材表面処理方法、又は、鋼材表面処理方法に関してである。
本発明者等は、土木・建築用樹脂組成物について種々検討したところ、吸水性樹脂、及び、これを鋼材に密着させるためのバインダー樹脂を含有する樹脂組成物が、吸水性樹脂の潤滑効果により鋼材と地盤や水硬性組成物との摩擦力を低減することに起因して、引き抜き作業の作業性向上に有用であることに着目した。そして、このような樹脂組成物に揺変性を付与することにより、吸水性樹脂粒子の沈降の低減や再分散性の向上を実現することができることを見いだし、吸水性樹脂、バインダー樹脂、有機溶媒及び揺変化剤を含むものとし、更に、該バインダー樹脂を水難溶性及び/又は非膨潤性のものに特定するとともに、該有機溶媒の含有量を特定すると、現場や他の工程において該樹脂組成物を配合しても又保管等行っても長期間にわたり吸水性樹脂の沈降を低減したり、また、その再分散を容易化したりすることができることを見いだし、その結果、作業現場での取り扱い性や貯蔵安定性を飛躍的に改善することが可能となることを見いだした。また、当該揺変性を付与した樹脂組成物が、より厚ぬりすることができ、特に縦面や斜め面等であっても液ダレも少なく均一に塗布することができることを見いだした。また、揺変化を付与することによってもバインダー樹脂の鋼材への密着効果を低減することなく、また配合される吸水性樹脂のより良好な分散性、均一化によって、上記膨潤効果がより適切な状態で発現することを見いだした。その結果、上記課題をみごとに解決できることに想到した。そして、このような土木・建築用樹脂組成物を、B型粘度計における6rpm時の粘度と60rpm時の粘度との比で示される揺変性が1.2〜8であるものとしたり、平均一次粒子径又は平均繊維直径が0.0001〜1μmである粉末及び/又は微細繊維を含む揺変化剤を用いたりすることにより、本発明の作用効果を更に充分に発揮できることを見いだし、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、吸水性樹脂、バインダー樹脂、有機溶媒及び揺変化剤を含む土木・建築用樹脂組成物であって、上記バインダー樹脂は、25℃のイオン交換水への溶解性が10質量%未満の樹脂、具体的には水難溶性樹脂、又は、自重に対するイオン交換水の吸水倍率が2倍未満の樹脂、具体的にはイオン交換水非膨潤性樹脂であり、上記有機溶媒は、上記樹脂組成物を100質量%としたときの含有量が25〜80質量%である土木・建築用樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
本発明の土木・建築用樹脂組成物は、土木又は建築用途に用いられる樹脂組成物であり、吸水性樹脂、バインダー樹脂、有機溶媒及び揺変化剤を含むものである。このような樹脂組成物においては、揺変化剤を含むことにより、揺変性が付与され、長期間にわたって吸水性樹脂の沈降を充分に低減することができ、また、沈降した場合でもその再分散を容易化できることから、一液状態を安定して保つことができるので、従来のような吸水性樹脂粉末を混合する工程を省略でき、更に、その粉末が空中に舞うこともないため、取り扱い性や作業環境を充分に改善できることとなる。
上記土木・建築用樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」ともいう。)の好適な形態としては、B型粘度計において測定した6rpm時の粘度と60rpm時の粘度との比(6rpm/60rpm)で示される揺変性(25℃、相対湿度65%の測定条件下)が1.2〜8である形態である。揺変性が1.2未満であると、樹脂組成物としたときに吸水性樹脂が沈降し易くなるとともに、使用前に容易に再分散することができないおそれがあり、8を超えると、粘度が高くなり過ぎて樹脂組成物を鋼材に塗布する作業の作業性を向上することができないおそれがある。上記揺変性の下限値としては、1.3であることが好ましく、上限としては、2であることが好ましい。また、好適な範囲としては、1.3〜2である。上記の括変性は、JIS−K6911記載の揺変度に準じて測定した。当該JISの規定では、測定温度条件、使用するB型粘度型のスピンドル番号は任意であるが、本発明の揺変性は、測定は温度25℃、相対湿度65%、揺変剤を配合した樹脂組成物の揺変性はスピンドルNo.4で測定した。また揺変剤を配合する前の樹脂組成物の粘度はスピンドルNo.3で測定した。
上記樹脂組成物の好適な形態としてはまた、該樹脂組成物50gを混合調整後、直径30mmのガラス管容器に封入し、25℃で24時間放置した後の該樹脂組成物上層に分離する有機溶媒の割合が、分離前の該樹脂組成物におけるガラス管容器底部から該樹脂組成物表面までの高さを100%としたときに60%以下である形態である。より具体的には、ガラス管容器中の分離前(吸水性樹脂が沈降する前)の上記樹脂組成物のガラス管容器底面部から該樹脂組成物表面までの高さを100%としたとき、該ガラス管容器に沈降した該樹脂組成物表面から当該分離層の上表面までの高さが60%以下である形態である。例えば、図を用いて説明すると、図1(A)で示すように、吸水性樹脂が沈降する前の樹脂組成物のガラス管容器底面部から該樹脂組成物表面までの高さを「x」とし、図1(B)で示すように、該ガラス管容器に沈降した該樹脂組成物表面から当該分離層の上表面までの高さを「y」とすると、「y/x」が60%以下である形態である。また上記分離層は有機溶媒であるので透明層を呈する。よって目視等で観察、評価が可能となる。有機溶媒の分離層の割合が60%を超えるものであると、吸水性樹脂が沈降し易いため、現場における取り扱い性をより充分に向上できないおそれがある。より好ましくは、有機溶媒の分離層の割合が55%以下である形態であり、更に好ましくは、50%以下である。より更に好ましくは、40%以下であり、更に好ましくは、30%以下であり、特に好ましくは、20%以下であり、10%以下が最も好ましい。
本発明の土木・建築用樹脂組成物において、吸水性樹脂は、地盤や硬化後の水硬性組成物と鋼材との接着や摩擦を抑制するために用いられるものであり、例えば、水を吸収することによって膨潤し、かつ、ティーバック法に従い、吸水後水を充分にきった状態で測定した自重に対するイオン交換水の吸水倍率が3倍以上(25゜C、1時間)の樹脂であることが好適である。より好ましくは、吸収倍率が10倍以上のものである。
このような吸水性樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸架橋体、ポリ(メタ)アクリル酸塩架橋体、スルホン酸基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリオキシアルキレン基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリ(メタ)アクリルアミド架橋体、(メタ)アクリル酸塩と(メタ)アクリルアミドとの共重合架橋体、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルと(メタ)アクリル酸塩との共重合架橋体、ポリジオキソラン架橋体、架橋ポリエチレンオキシド、架橋ポリビニルピロリドン、スルホン化ポリスチレン架橋体、架橋ポリビニルピリジン、デンプン−ポリ(メタ)アクリロニトリルグラフト共重合体のケン化物、デンプン−ポリ(メタ)アクリル酸(塩)グラフト架橋共重合体、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸(塩)との反応生成物、架橋ポリビニルアルコールスルホン酸塩、ポリビニルアルコール−アクリル酸グラフト共重合体、ポリイソブチレンマレイン酸(塩)架橋重合体等の水溶性又は親水性化合物(単量体及び/又は重合体)を架橋剤で架橋させた合成吸水性樹脂;ゼラチン、寒天等の天然水膨潤性物等の1種又は2種以上が好適である。中でも、水溶性又は親水性化合物を架橋剤で架橋させた合成吸水性樹脂を用いることが好ましく、これにより、膨潤倍率、水可溶分、吸水速度、強度等のバランスが良好となり、更に、そのバランスの調整も容易に行うことが可能となる。必要に応じ、吸水性樹脂粒子は公知のエポキシ化合物やグリコール、あるいは、グリセリン等の表面処理剤で表面処理されていてもよい。また表面熱処理で表面架橋されていてもよい。また熱可塑性樹脂で表面被覆されていてもよい。また、アクリルアミド系の架橋体であれば熱処理等で表面がアミド架橋されていてもよい。
上記吸水性樹脂の好ましい形態としては、ノニオン性基及び/又はスルホン酸(塩)基を有する吸水性樹脂である。より好ましくは、アミド基又はヒドロキシアルキル基を有する吸水性樹脂であり、例えば、(メタ)アクリル酸塩と(メタ)アクリルアミドとの共重合架橋体、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルと(メタ)アクリル酸塩との共重合架橋体等が挙げられる。また、特に好ましい形態としては、ポリオキシアルキレン基を有する吸水性樹脂であり、例えば、メトキシポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸塩との共重合架橋体等が挙げられる。これらの形態では、アルカリ水に対する吸水性が向上することになるが、メトキシポリオキシアルキレン基を有する吸水性樹脂が特に優れている。
上記吸水性樹脂としてはまた、水溶性を有するエチレン性不飽和単量体及び必要に応じて架橋剤を含む単量体成分を重合することによって得られる樹脂を用いることが好ましく、これにより、吸水性樹脂の吸水性をより向上でき、また、一般的に安価に製造できることとなる。このような吸水性樹脂を形成するエチレン性不飽和単量体及び必要に応じて用いられる架橋剤としては特に限定されないが、エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、及び、これら単量体のアルカリ金属塩やアンモニウム塩;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及び、その四級化物;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド類、及び、これら単量体の誘導体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルスクシンイミド等のN−ビニル単量体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド等のN−ビニルアミド単量体;ビニルメチルエーテル等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記エチレン性不飽和単量体としては、ノニオン性基及び/又はスルホン酸(塩)基を有するエチレン性不飽和単量体であることが好適であり、例えば、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、特に好ましい形態としては、ポリオキシアルキレン基を有するエチレン性不飽和単量体が挙げられる。これらの形態のエチレン性不飽和単量体を用いると、吸水性樹脂のアルカリ水に対する吸水性が向上することになるが、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートを用いることが特に好ましい。
上記吸水性樹脂を形成する単量体成分としてエチレン性不飽和単量体を2種以上併用する場合においては、吸水性樹脂を形成する全単量体成分100質量%に対して、ノニオン性基及び/又はスルホン酸(塩)基を有するエチレン性不飽和単量体の割合を1質量%以上とすることが好ましい。1質量%未満であると、ノニオン性基及び/又はスルホン酸(塩)基を有するエチレン性不飽和単量体により形成されることによる吸水性の効果が充分とはならないおそれがある。より好ましくは、10質量%以上である。
上記エチレン性不飽和単量体を2種以上併用する場合の組み合わせとしては特に限定されず、例えば、アクリル酸ナトリウム等の(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩とアクリルアミドとの組み合わせ、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩とメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの組み合わせ等が好適である。
上記吸水性樹脂としては、上述した単量体成分を(共)重合することにより製造できるが、(共)重合方法は特に限定されず、通常用いられている方法、例えば、塊状重合、乳化重合、溶液重合、逆相懸濁重合等により行うことができる。また、吸水性樹脂の平均分子量や形状、平均粒子径等は、地盤を構成する土壌や水硬性組成物の組成、作業環境等に応じて適宜設定する。上記平均粒子径としては、0.01〜1mmであることが好ましい。0.01mm未満であると、微粉の粉塵問題が生じ、取り扱い性を向上することができないおそれがある。また、1mmを超えると、樹脂組成物の塗布性(コーティング性)が充分とはならず、また、吸水性樹脂の分布が不均一となり潤滑性能を充分に発揮できないおそれがある。より好ましくは、0.1〜400μmであり、更に好ましくは、1〜100μmである。
このように、上記吸水性樹脂としては、平均粒子径が0.01〜1mmである粒子から構成されるものであることが好適であり、このような形態もまた、本発明の好ましい形態の1つである。上記平均粒子径は、JIS等で規定される篩を使用した方法で算出することができる平均粒子径である。
本発明の土木・建築用樹脂組成物において、バインダー樹脂としては、25℃のイオン交換水への溶解性が10質量%未満の水難溶性樹脂、又は、自重に対するイオン交換水の吸水倍率が2倍未満の非膨潤性樹脂であるが、(1)25℃のイオン交換水への溶解性が10質量%未満の水難溶性樹脂であって、かつ、自重に対するイオン交換水の吸水倍率が2倍未満の非膨潤性樹脂、(2)25℃のイオン交換水への溶解性が10質量%未満の水難溶性樹脂、(3)自重に対するイオン交換水の吸水倍率が2倍未満の非膨潤性樹脂のいずれであってもよく、上記吸水性樹脂を鋼材と密着させるバインダー(接合剤)としての機能を有するものであればよい。
本発明において、バインダー樹脂の溶解性における「水難溶性」とは、25℃のイオン交換水への溶解性が10質量%未満であることを意味し、「25℃のイオン交換水への溶解性」とは、試料樹脂1gを100gのイオン交換水(純水)中に、25℃で24時間浸漬した後の固体(膨潤する場合は自重の2倍未満)の残存率(質量%)、又は、このイオン交換水への難溶性テストにおける樹脂の流出量(質量%)により評価することができ、固体の残存率により評価する場合には、該固体が90質量%以上残存する程度であることが好ましい。より好ましくは、95質量%以上である。また、上記樹脂の流出量により評価する場合には、該樹脂の流出量が10質量%未満であることが適当であり、8質量%未満であることが好ましい。より好ましくは、5質量%未満である。
また「非膨潤性」とは、イオン交換水に対して非膨潤性であることを意味し、自重に対するイオン交換水の吸水倍率が2倍未満であることが好ましい。より好ましくは、1.5倍未満である。この膨潤性は、上記したティーバック法を準用して測定することができる。
このような本発明におけるバインダー樹脂としては、アルカリ水可溶性樹脂であることが好適である。すなわち、上記バインダー樹脂が、アルカリ水可溶性樹脂である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記アルカリ水可溶性樹脂において、「アルカリ水可溶性」とは、酸性又は中性を呈する水には溶解せず、アルカリ性を呈する水には溶解することを意味する。ここで、「中性を呈する水」とは、pH値が6〜8の範囲内の水をいい、「酸性を呈する水」とは、pH値が該中性の範囲未満の水をいい、「アルカリ性を呈する水」とは、pH値が該中性の範囲よりも大きい水をいう。
なお、上記アルカリ水可溶性樹脂としては、アルカリ水への溶解性の程度として、下記評価試験によって求められる減少率が50〜100%のものが好ましい。より好ましくは、60〜100%であり、更に好ましくは、70〜100%である。
(アルカリ水への溶解性の評価試験)
二軸押出機を用いて得ることができるような、バインダー樹脂を直径5mm、長さ5mmの円筒状のペレット形状に成形したものを用いて測定する。この成形体10gを、1Lのビーカーに入れた0.4質量%濃度のNaOHの水溶液500gに投入し、25℃にて、直径が40mm、4枚はねを用い、300rpmで24時間攪拌を行う。その後のバインダー樹脂の成形体におけるアルカリ水へ溶解した質量の、元の成形体からの減少率で評価する。すなわち、24時間攪拌後に溶解せずに残った樹脂分について、ろ別等を行い、水で洗浄し、乾燥後の質量を求め、溶解性試験にかける前における元のバインダー樹脂の質量からの減少率(%);(元の質量−溶解性試験後の質量)/(元の質量)で評価する。
また、ペレット化されていなくても、5mm角以下の任意の形状の成形品であっても、アルカリ水への溶解性を示す場合には、本件のバインダー樹脂の範囲である。
上記バインダー樹脂としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基等の置換基を有する樹脂;フェノール性ヒドロキシル基を含むノボラック樹脂;ポリビニルフェノール樹脂等の1種又は2種以上を用いることができる。中でも、アルカリ水に対する溶解性や経済性、樹脂組成物の各種物性等に優れる点で、α,β−不飽和カルボン酸系単量体と、α,β−不飽和カルボン酸系単量体以外のビニル系単量体とを共重合して得られる樹脂が好適である。
なお、カルボン酸基を有する樹脂であるヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートヘキサヒドロフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロフタレート等のセルロース誘導体を用いることもできる。
上記α,β−不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸無水物;マレイン酸モノエステル、フマル酸モノエステル、イタコン酸モノエステル等のα,β−不飽和ジカルボン酸モノエステル等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。中でも、柔軟性や靭性に優れることから、アクリル酸及び/又はメタクリル酸が好適である。
上記ビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ステアリル等の炭素数1〜18の一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系単量体;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等の水酸基含有ビニル系単量体;メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有ビニル系単量体;アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛等のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;酢酸ビニル等の脂肪族ビニル系単量体;塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン基含有ビニル系単量体;アリルエーテル類;無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等のマレイン酸誘導体;フマル酸モノアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル等のフマル酸誘導体;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド誘導体;イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、イタコンアミド類、イタコンイミド類、イタコンアミドエステル類等のイタコン酸誘導体;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。
これらのビニル系単量体の中でも、柔軟性、耐候性及び靭性に優れる点で、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルが好適である。より好ましくは、これら炭素数1〜18の一価アルコールと(メタ)アクリル酸とをエステル化して得られる(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量を、用いられるビニル系単量体全量100質量%に対して、30〜100質量%とすることが好ましく、これにより、樹脂組成物の柔軟性や耐候性、靭性を更に向上できることとなる。より好ましくは、50〜100質量%である。
上記α,β−不飽和カルボン酸系単量体とビニル系単量体との質量比としては、これらの合計量100質量%に対して、α,β−不飽和カルボン酸系単量体が9質量%以上であることが好ましく、これにより、アルカリ水に対する溶解性をより向上することが可能となる。また、α,β−不飽和カルボン酸系単量体の範囲としては、9〜40質量%であることが好ましく、これにより、アルカリ水に対する溶解性のみならず、柔軟性や耐候性、靭性に特に優れたアルカリ水可溶性樹脂を得ることができる。
上記バインダー樹脂としては、このようなα,β−不飽和カルボン酸系単量体及びビニル系単量体等の単量体成分を(共)重合することにより得ることができるが、(共)重合方法は、通常用いられている方法により行うことができる。なお、上記バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)は、地盤を構成する土壌や水硬性組成物の組成、アルカリ水のpH、作業環境等に応じて適宜設定するが、1万〜200万であることが好ましく、このように上記バインダー樹脂の重量平均分子量が1万〜200万である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。より好ましくは、3万〜200万であり、更に好ましくは、5万〜200万の範囲であり、より更に好ましくは、5万〜150万であり、更に好ましくは、5万〜100万であり、特に好ましくは、10万〜100万であり、最も好ましくは、10万〜90万である。なお、上記重量平均分子量(Mw)は、通常のGPC測定装置を使用し、標準品としてポリスチレンを使用して測定する。なお、バインダー樹脂が上記の重量平均分子量範囲を保有することにより、鋼材への良好な密着性と作業性を持たせることができる。つまり重量平均分子量が非常に大きいバインダー樹脂であると、作業性を確保するために溶剤を多量に使用する必要があり、固形分が減少する。その場合は、充分なバインダーとしての効果を発現しにくくなる。また、重量平均分子量が極端に小さい場合は、適切な使用粘度に調整するためには溶媒量を少なくする必要があり、吸水性樹脂との充分な混合、バインダー樹脂との混合が行われ難くなる。また、重量平均分子量が極端に小さい場合は、調整された樹脂組成物の粘度が極端に低下することもあり、揺変性が付与しにくくなる場合も起こり得る。
上記バインダー樹脂の酸価(mgKOH/g)としては、15以上であることが好ましい。15未満であると、耐水性を向上することができないおそれがあり、また、アルカリ水に対する溶解性が充分とはならず、吸水性樹脂による水膨潤層の形成が充分ではない場合も発現する可能性があり、鋼材を引き抜く作業をより容易化することができないおそれがある。より好ましくは、30以上であり、更に好ましくは、50以上であり、特に好ましくは、70以上である。また、500以下であることが好ましい。500を越えると、バインダー樹脂の耐水性が充分とはならず、雨等の中性域又は酸性域のpHを示す水と接触すると、溶解して損傷するおそれがあり、樹脂組成物を塗布する作業や鋼材埋設作業、引き抜き作業をより効率的に行うことができないおそれがある。酸価(mgKOH/g)の最も好適な範囲としては、70〜500である。また、バインダー樹脂の酸価が15以上であると、バインダー樹脂が持つ酸基の作用により当該組成物において揺変性の付与と相まって、吸水性樹脂粒子がより沈降しにくくなる。また、より分散性が向上する効果もあるので好ましい形態となる。また、鋼材への密着性も向上する。
上記バインダー樹脂のガラス転移温度としては、鋼材表面への密着性及び鋼材を土中へ埋設する際における樹脂組成物の強靭性の両立という点から、−80〜120℃にガラス転移温度を少なくとも1つ有することが好ましく、より好ましくは、2つ以上有することである。ガラス転移温度が−80℃未満であると、樹脂組成物を鋼材等に塗布したときにべたつき易くなり、特に塗布後の鋼材を積み重ねて放置した場合にはブロッキングを生じるおそれがあり、また、樹脂組成物からなる層の強度が充分とはならないために、鋼材を土中へ埋設する際に剥離し易くなる。また、120℃を超えると、樹脂組成物からなる層が硬くなり過ぎ、鋼材への密着性や柔軟性が充分とはならず、やはり鋼材を土中に埋設する際に剥離及び吸水性樹脂の脱落が生じ易くなる。中でも、バインダー樹脂としては、−30〜20℃の範囲内に低温側のガラス転移温度を有し、併せて40〜100℃の範囲内に高温側のガラス転移温度の2つ以上のTgを有することが好適であり、これにより、柔軟化成分と形状保持成分とのバランスをより向上することができる。
なお、ガラス転移温度とは、示差走査熱量測定(DSC;differential scanning calorimetry)によって得られるDSC微分曲線のピークトップ(DSC曲線の変曲点)である。
本発明においては、上述したようにバインダー樹脂としてアルカリ水可溶性樹脂を用いることが好適であるが、バインダー樹脂がアルカリ水に対する溶解性に優れることにより、バインダー樹脂を含む層が、アルカリ性を示す水硬性組成物と鋼材との間に介在したときに、吸水性樹脂が水を吸収して膨潤する際の体積膨張を阻害するおそれが低減され、吸水性樹脂の吸水性能を充分に発揮させることが可能となり、水で膨潤された吸水性樹脂の潤滑層が効果的に形成される。また一方で、樹脂組成物と地盤や、水硬性組成物の硬化物との間に、アルカリ水可溶性樹脂が水硬性組成物との接触面においてセメントの硬化遅延をおこすことによる、易剥離層も形成することができるので、鋼材を地盤や、水硬性組成物の硬化物中から引き抜く作業における労力(引張力)を更に充分に低減することができ、該作業の作業性をより一層向上させることが可能となる。なお、上記の水で膨潤した潤滑層は、吸水性樹脂が水を吸収して膨潤することで形成されるものである。よって、本発明の樹脂組成物を用いて処理された鋼材を、施工後、当該鋼材を引き抜く工程を含む使用方法は好ましい形態の一つとなる。
本発明の土木・建築用樹脂組成物において、有機溶媒としては、通常の塗料等に用いられる公知の溶剤であればよい。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコール誘導体、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール誘導体等の1種又は2種以上を用いることができる。なお、有機溶媒として、バインダー樹脂中に含まれる溶媒を利用することもできる。また、本発明の樹脂組成物においては、使用される有機溶媒が使用するバインダー樹脂を溶解する性質を持っていることが好ましい形態である。すなわち、上記有機溶媒が、上記バインダー樹脂を溶解するものである形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。有機溶媒がバインダー樹脂を溶解することにより、バインダー樹脂が樹脂組成物中により均一に分散することができ、バインダー樹脂としての性能を好ましく発現することができる。このバインダーを溶解する有機溶媒として極性溶媒を使用することが好ましい。より好ましくは、バインダー溶解性の点から、アルコール、ケトン、脂肪族エステル、アルキレングリコールから選択される少なくとも一つを使用することが好ましい。
上記有機溶媒の中でも、鋼材表面へ塗布するのに適した沸点や安全性等を有する溶媒を用いることが好ましい。低沸点の溶剤を選定すれば、速乾性があり、短時間で樹脂組成物からなる層が形成できるために厚塗り等が容易となり、また、高沸点の溶剤を選定すれば、乾燥速度を調整して、夏場等の現場作業における作業性を好適にすることができる。このように有機溶媒を使用することにより、水を含む媒体を用いた場合に生じる吸水性樹脂の吸水による膨潤はなく、ゲル状にならないために塗布作業が容易になり、本発明の作用効果が充分に発揮されることになる。また、メチルエチルケトンやメタノール等の揮発性の大きい溶媒を用いると、10分程度で乾燥し、水を媒体として用いる場合よりも非常に速く乾燥するために、次の作業又は工程に迅速に移行することができ、工期又は鋼材表面への塗布に要する時間を著しく短縮することができる。
本発明の土木・建築用樹脂組成物において、吸水性樹脂、バインダー樹脂及び有機溶媒の質量比率(吸水性樹脂/バインダー樹脂/有機溶媒)としては、5〜85/10〜90/5〜85であることが好ましい。より好ましくは、10〜50/10〜60/10〜75である。また本発明の樹脂組成物を100質量%として好ましい有機溶媒の含有量は、25〜80質量%である。あまり有機溶媒の含有量が高くなりすぎると塗布時の塗膜が薄くなり、膨潤層の厚みが薄くなる場合があり、作業性の点では好ましいが重ね塗り等が必要になるときがある。より好ましくは、30〜80質量%であり、更に好ましくは、40〜70質量%である。
本発明の土木・建築用樹脂組成物において、揺変性を付与するための揺変化剤としては、粉末及び/又は微細繊維から構成されるものであることが好適であり、例えば、アエロジル(商品名、日本アエロジル社製)で知られる無水シリカの無機粉体やセルロース、ビニロン等の微細繊維等の1種又は2種以上を用いることができる。中でも、無水シリカを用いることが好ましく、これにより、樹脂組成物と鋼材との密着性を充分に維持することができ、また、樹脂組成物を塗布した箇所が白濁し、塗布忘れや塗りムラ等を容易に判別できるため、より均一な塗布が可能となる。
なお、本発明の作用効果に含まれる摩擦低減性や止水性に大きく影響しない限りにおいて、他の公知の揺変化剤、例えば、ベントナイト、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等、揺変性が付与できるものであれば使用することができ、上記粉体の吸油量、粒子径を考慮し適宜選択することができる。また酸化マグネシムであると、バインダー樹脂が酸価を持つ場合、増粘作用が発現する場合があるので使用量、バインダー樹脂の組成等を考慮すればよい。なお、上述したように均一な塗布を可能とする効果を有するものを用いることが好ましい。
上記揺変化剤の好適な形態としては、平均一次粒子径又は平均繊維直径が0.0001〜1μmである粉末及び/又は微細繊維から構成されるもの、すなわち、平均一次粒子径が0.0001〜1μmである粉末、及び/又は、平均繊維直径が0.0001〜1μmである微細繊維から構成されるものであることが好ましく、これにより、現場や他の工程において樹脂組成物を配合しても長期間にわたって吸水性樹脂の沈降を低減し、また、その再分散を容易化するという本発明の作用効果を充分に発揮することが可能となる。平均一次粒子径又は平均繊維直径の下限値としては、0.001μmであることがより好ましく、上限値としては、0.1μmであることがより好ましい。また、範囲としては、0.001〜0.1μmであることがより好適である。なお、「一次粒子」とは、実質未造粒の粉末であり、少々の力をかけても壊れない単一粒子等をいい、例えば、分級操作や搬送操作によって壊れないものをいう。
上記揺変化剤として、平均一次粒子径が0.0001〜1μmである微粒シリカを用いることが特に好ましく、具体的には、アエロジル#200(商品名、日本アエロジル社製)が挙げられる。
なお、上記揺変化剤が、平均一次粒子径又は平均繊維直径が0.0001〜1μmである粉末及び/又は微細繊維から構成されるものであり、かつ、上述した吸水性樹脂は、平均粒子径が0.01〜1mmである粒子から構成されるものである形態もまた、本発明の好適な形態の1つであり、これらの相乗効果により、本発明の作用効果を更に充分に発揮することが可能となる。
上記揺変化剤の使用量としては、吸水性樹脂100質量%に対して、下限は0.1質量%、上限は50質量%とすることが好ましい。0.1質量%未満であると、樹脂組成物としたときに吸水性樹脂が沈降し易くなるとともに、使用前に容易に再分散することができないおそれがあり、50質量%を超えると、粘度が高くなり過ぎて樹脂組成物を鋼材に塗布する作業の作業性を向上することができないおそれがある。より好ましい下限は0.5質量%、上限は30質量%であり、更に好ましい下限は2質量%、上限は20質量%である。また、好適な範囲としては、吸水性樹脂100質量%に対して、0.1〜50質量%であり、より好ましくは、0.5〜30質量%であり、更に好ましくは、2〜20質量%である。
上記揺変化剤としてはまた、本発明の土木・建築用樹脂組成物100質量%に対して、下限は0.02質量%、上限は10質量%であることが好ましい。より好ましい下限は0.1質量%、上限は6質量%であり、更に好ましい下限は0.4質量%、上限は4質量%である。また、好適な範囲としては、0.02〜10質量%であり、より好ましくは、0.1〜6質量%であり、更に好ましくは、0.4〜4質量%である。
本発明の土木・建築用樹脂組成物としてはまた、上述した吸水性樹脂、バインダー樹脂、有機溶媒及び揺変化剤の必須成分以外に、その作用効果を阻害しない範囲内で、他の樹脂、顔料、各種安定剤、各種充填材等の他の添加剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。例えば、樹脂組成物からなる層が形成されていることが容易に判別可能となるように、着色する目的で、顔料を混合したり、必要に応じて他の用途の各種添加剤を混合したりしてもよい。なお、本発明においては、界面活性剤は、鋼材と本発明の樹脂組成物の密着性に阻害しない範囲や、膨潤層の機能に影響しない範囲で界面活性剤を使用してもよい。より好ましくは、界面活性剤の量は、当該樹脂組成物を100質量%にして、0.1%未満、好ましくは、0.08%未満、より好ましくは0.05%未満である。界面活性剤を含むと、界面活性剤が剥離機能を発揮し得ることに起因して、鋼材との密着性が充分とはならない場合があり、本発明の作用効果を充分に発揮することができないときもあるからである。
上記土木・建築用樹脂組成物において、上記必須成分、すなわち吸水性樹脂、バインダー樹脂、有機溶媒及び揺変化剤の合計量の質量割合としては、例えば、土木・建築用樹脂組成物を構成する全成分100質量%に対して、50質量%以上であることが好ましい。50質量%未満であると、本発明の作用効果を充分に発揮することができないおそれがある。より好ましくは、70質量%以上であり、更に好ましくは、80質量%以上である。
上記土木・建築用樹脂組成物は、鋼材表面に処理又は施工することにより、吸水性樹脂層を鋼材と地盤や硬化後の水硬性組成物との間に形成し、その作用効果を発揮することになるが、本発明において、「鋼材」とは、土木・建築分野の基礎工事において、土留め擁壁や土台等の地盤基礎構造体を施工する際に用いられ、使用後に地盤や水硬性組成物中から分離することが好ましい埋設物(地盤に埋設される基材)であればよく、例えば、鋼管、ヒューム管、H型鋼、I型鋼、鋼管杭、鉄柱、コンクリート杭、ポール、筒状のパイル(中空パイル)、長尺板状の杭である鋼矢板(シートパイル)、波板、タンク類、貯水槽等が挙げられる。なお、鋼材の形状、長さ、材質、表面の粗度等は特に限定されない。
このような鋼材表面に処理又は施工するとは、鋼材表面に本発明の樹脂組成物を塗布することや、シート状基材に本発明の樹脂組成物を塗布したシート状物を、樹脂組成物を塗布した層が外側になるように鋼材表面に貼り付けること等を意味する。
上記土木・建築用樹脂組成物の塗布方法としては特に限定されず、例えば、通常用いられる塗料の塗布方法を用いることができ、具体的には、噴霧(スプレー)や刷毛塗りによって塗布したり、ローラーを用いて塗布したり、シート状基材に上記樹脂組成物からなる溶液を含浸させたりしてもよい。噴霧塗工、ローラー塗りにおける好ましい樹脂組成物粘度としては、B型粘度型、25℃、60rpmにおける粘度が100〜10000cP(センチポイズ、1cP=1×10−3Pa・s)である。好ましくは200〜5000cPであり、より好ましくは300〜3000cPであり、さらには400〜1500cPである。塗布量としては特に限定されず、例えば、40〜700g/m2 とすることが好ましい。40g/m2 未満であると、本発明の作用効果を充分に発揮することができないおそれがあり、700g/m2を超えると、塗布して乾燥させるまでの時間が長くなり、経済的に不利となるおそれがある。より好ましくは、50〜500g/m2であり、更に好ましくは、70〜300g/m2 である。なお、鋼材表面には、他の表面処理が施されていたり、下塗り等が塗装されていたりしてもよい。
上記土木・建築用樹脂組成物をシート状基材に塗布したシート状物を鋼材表面に貼り付ける場合、用いられるシート状基材としては、地盤基礎構造体を施工する際にかかる種々の外力、例えば、鋼材や水硬性組成物の重量がかかることによって生じる引張力や剪断力;鋼材を埋設するときに生じる衝撃力や引張力、水硬性組成物との間の摩擦力等に対して耐え得る強度、すなわち、このような外力がかかっても破損しない強度を備える材質からなるものであればよく、その材質として、例えば、紙、木材、割繊維不織布、ニードルパンチ不織布、フラットヤーンの繊維織物、綿織物、麻織物、帯状織物、合成樹脂織物、湿紡織物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用(複合)してもよい。なお、上記シート状基材においては、透水性が充分でない場合等の必要に応じて、例えば、切り目や孔等を形成してもよく、切り目や孔等の形状、大きさ、個数、形成位置としては、上述した外力がかかってもシート状基材が破損しない強度を維持することができる範囲内で設定すればよい。
このようなシート状基材を用いる場合には、シート状基材の裏面に粘着剤を塗工しておくと、鋼材表面への貼り付けが容易になるため好ましい。粘着剤としては特に限定されず、例えば、一般に使用されるアクリル系粘着剤でもよいし、グリース油等を用いると、工事現場で貼り付けを誤ったときに剥離して再貼り付けすることが容易となるので好ましい。
上記シート状基材の厚さとしては、材料(材質)に応じて適宜設定すればよいが、例えば、その下限は0.01mm、上限は10mmであることが好ましい。10mmを超えると、シート状物が充分な柔軟性を得られないおそれがあり、また、シート状物が嵩高くなるため、取り扱い性や保管性が充分とはならないおそれがある。0.01mm未満であると、外力に耐え得る強度を充分に維持することができないおそれがある。より好ましい下限は0.05mm、上限は8mmであり、更に好ましい下限は0.2mm、上限は5mmである。なお、上記シート状基材の坪量は、材質や厚さ等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、その下限は1g/m2 、上限は10000g/m2 であることが好ましい。より好ましい下限は10g/m2 、上限は1000g/m2 である。
上記シート状基材の引張強度としては特に限定されないが、例えば、1kgf/2.5cm以上であることが好ましい。1kgf/2.5cm未満であると、外力に耐え得る強度を充分に維持することができないおそれがある。より好ましくは、10kgf/2.5cm以上であり、更に好ましくは、30kgf/2.5cm以上である。
なお、上記引張強度としては、例えば、下記のようにして求めることができる。
すなわち、シート状基材を幅2.5cm、長さ20cmの大きさに裁断し、イオン交換水に30分間浸漬して充分に濡らしたものを試験片とし、JIS L 1096(一般織物試験方法)の引張試験方法(引張強さ)に基づく低速伸長引張試験機を使用して、引張速度20mm/min、つかみ間隔10cmの条件下で測定する。なお、試験機によって得た測定値(単位:kgf/2.5cm)が大きいほど、シート状基材の引張強度が大きいと判断できる。
上記シート状基材の形状としては、本発明の樹脂組成物を塗布してシート状物とした場合に、鋼材を被覆することができる形状、大きさとなるものであればよいが、例えば、鋼材が挿入可能な程度の袋状又は筒状であることが好ましい。これにより、大きくかつ重量物である鋼材を、より一層簡単かつ迅速にシート状物で被覆することができるため、作業現場における作業性を更に充分に向上させることが可能となる。
本発明においては、上記土木・建築用樹脂組成物からなる塗膜の表面に、上塗り(トップコート)として、耐水性付与剤を塗布することにより耐水性付与剤層を形成することができる。これにより、例えば、鋼材を保管しておく場合に、吸水性樹脂が雨や夜露、地面からの水分等を吸水して膨潤することを充分に防ぐとともに、鋼材表面と樹脂組成物との密着力の低下をより抑制することが可能となる。すなわち地盤基礎構造体等の施工において、施工前の鋼材の保管時も施工中にも、樹脂組成物の密着性維持(剥離防止)と、吸水性樹脂が地盤(土)や水硬性組成物中の水分により吸水膨潤することをより充分に両立することができる。
上記耐水性付与剤としては、樹脂組成物中の吸水性樹脂がその作用を発揮する前に膨潤することを防止する耐水性付与剤層を形成することができるものであれば特に限定されず、例えば、上記バインダー樹脂;ワックスやシリコーン系撥水剤等の公知の撥水剤等を用いることができる。また、耐水性付与剤の塗布方法としては、上述した樹脂組成物の塗布方法と同様に行うことができる。この場合、耐水性付与剤の付着量としては特に限定されないが、50〜500g/mであることが好ましく、より好ましくは、100〜200g/mである。
本発明の土木・建築用樹脂組成物は、上述のような構成であるので、現場や他の工程において該樹脂組成物を配合しても、また、保管等を行っても、長期間にわたって吸水性樹脂の沈降を低減し、また、その再分散を容易化することにより、作業現場での取り扱い性や貯蔵安定性を充分に改善するとともに、縦面や斜め面等であっても液ダレを抑制して均一に塗布することを可能とし、建築分野や土木分野の基礎工事等において好適に用いられるものである。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
本発明における重量平均分子量(Mw)は、分子量校正用標準物質としてTSK標準ポリスチレンPS−オリゴマーキット(東ソー社製)を使用し、使用溶媒としてテトラヒドロフラン(安定剤含有(和光純薬工業社製、試薬特級)を使用して、高速GPC装置・HLC−8120GPC(東ソー社製)で測定した。
本発明におけるガラス転移温度(Tg)の測定は、JIS K7121のプラスチックの転移温度測定方法に準じ、示差走査熱量計・DSC6200(セイコー電子工業社製)で測定(加熱速度:10℃/min)した。
〔バインダー樹脂(アルカリ水可溶性樹脂)〕
アルカリ水可溶性樹脂を以下の方法で以て調製した。即ち、温度計、攪拌翼、還流冷却器、および滴下装置を備えた容量100Lの槽型反応器に、アクリル酸1.8kg、アクリル酸エチル10.2kg、重合開始剤である2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)24g、および、溶媒であるメチルアルコール28kgを仕込んだ。また、滴下装置に、アクリル酸2.7kg、アクリル酸メチル5.4kg、メタクリル酸メチル9.9kg、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)66g、および、メチルアルコール2kgからなる混合溶液を仕込んだ。
上記のメチルアルコール溶液を窒素ガス雰囲気下、攪拌しながら65℃に加熱し、20分間反応させた。これにより、内容物の重合率を72%に調節した。続いて、内温を65℃に保ちながら、滴下装置から上記の混合溶液を2時間かけて均等に滴下した。滴下終了後、内容物を65℃でさらに3時間熟成させた。反応終了後、内容物にメチルエチルケトン60kgを混合することにより、アルカリ水可溶性樹脂の25質量%溶液(ASP25質量%溶液)を得た。
得られたアルカリ可溶性樹脂の酸価は117mgKOH/gであった。また、該アルカリ水可溶性樹脂の重量平均分子量Mwは15.6万、数平均分子量Mnは6.9万であった。さらに、示差走査熱量機で測定したところ、ガラス転移温度(Tg)が10℃と67℃とに観測された。また、上記バインダー樹脂の、25℃のイオン交換水への溶解性は、0.5%未満であり、また、アルカリ水可溶性は100%であった。
〔吸水性樹脂〕
吸水性樹脂としては、市販のポリアクリル酸ナトリウム塩架橋体(商品名:アクアリックCA ML−70、平均粒径50μm、日本触媒社製)を使用した。以下、このポリアクリル酸ナトリウム塩架橋体を「SAP」ともいう。
〔ソイルメント組成〕
ソイルセメント分散液の組成は、セメント/水/笠岡粘土/ベントナイト=100/400/300/10(質量比)とした。
〔FRC(フリクションカッター(登録商標))塗布剤〕
上記ASP25質量%溶液に、乾燥状態の質量がASP(固形分換算):SAP=1:1となるようにSAPを分散させたASP/SAP分散溶液(ASP25質量%溶液700gと、SAP175gとを混合溶解させたもの)を、890g/m(乾燥時400g/m)の塗布量(付着量)となるようにして2回塗りで塗布し、その上から、ASP25質量%溶液のみを400g/m(乾燥時100g/m)となるように塗布したものを「FRC塗布剤」とした。
実施例1
(分散性)
製造した25質量%濃度のASP溶液(有機溶媒:メタノール/MEK)345gと、平均粒子径50μmのSAP粉末100gと、微粒シリカ(商品名:「アエロジル#200」、日本アエロジル社製、平均粒子径0.012μm)3gとを均一に混合した。この混合物の揺変性を示すB型粘度計の6rpm/60rpmの値は、1.4であった。得られた混合組成物を本文記載にしたがって、50g採取し、分離テストを行った。
また、24時間後の混合物(樹脂組成物)上層に分離する有機溶媒の分離層の割合は5%(液深さ39mm、分離上澄み液深さ2mm)であり、良好な分散状態を保持していた。
なお、この混合物は、SAP粉末の沈降が低減されており、一液状態であった。また再攪拌することにより容易に元の混合状態になった。
更に、12ヶ月保存後の長期分散状態についても同様に評価し、そのときの再分散性についても評価した。12ヶ月という長期保存を行った後もSAPの沈降は少なく、又再攪拌による再分散も良好であった。
(引き抜き性)
開口系φ80〜90mm、深さ260mmの容器にソイルセメント分散液を注入し、上記混合物を塗布乾燥した鉄板を鉛直に容器内のソイルセメント分散液中に建て込み(投入)、鉛直のまま固定した。三日間放置してソイルセメントを硬化させ、その鉄板をバネばかりで測定しながら引き抜いた。なお、鉄板としては、標準試験板(JIS G3101(SS−400)、厚み4.5mm、幅30mm、長さ300mm、日本テストパネル社製)を用い、また、自重は0.2kg、ソイルセメントへの浸漬深さは100mmとした。
このときの最大引き抜き荷重は、0.8kgf(ブランク:1kgf)で、引き抜き性も向上していた。
その他、縦面への塗布の際の塗布性が良好であると共に塗布後の液ダレを抑制する効果や、塗布した箇所が白濁するので、塗布忘れや塗り斑のチェックを容易にできる効果も確認できた。
(塗膜剥離強度)
試験用鉄板としての標準試験板:3cm×30cmの矩形、厚み4.5mm、短辺方向の外周長さ約7cm、全表面積約200cm(日本テストパネル社製)の表面に、乾燥塗布量が150g/mとなるように、上記混合物をたらし、均一な厚みに広げて、温度20℃、湿度50%の条件の下、72時間乾燥させて塗膜を作製した。
この塗膜の一定の領域、具体的には幅5mm、長さ20mmの矩形領域を、鋭利な刃物を用いて他の領域から切り離し、当該領域を測定用塗膜とした。このようにして形成された測定用塗膜と試験用鉄板表面との境界面(矩形領域の5mmの辺)に、プッシュプルゲージA型(アイコーエンジニアリング社製、容量(測定限界)19.6N(2kgf)、使用端子番号:015)の先端が鋭利な端子を差し当て、試験用鉄板の表面に対して水平に端子を押して、徐々に加える力を増加させていき、塗膜が鉄板表面から剥がれた時の値を測定した。また、測定限界に到達した時点で測定用塗膜が剥がれていない場合は、測定限界以上(19.6N以上)と評価した。この方法に従って、5つの検体について測定し(n=5)、得られた結果を平均した値を各検体の測定値とした。本発明において塗膜剥離強度とは、上述のようにして得られた塗膜の剥がれにくさを表す値をいい、値が大きいほど塗膜が剥がれ難いことを示す。
この結果、測定限界を超える2kgf/5mm以上であった。
実施例2〜6、比較例1
表1に示す添加剤を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、揺変性、24時間後の分散性、12ヶ月後の分散性、再分散性、塗膜剥離強度について評価、測定した。結果を表1に示す。また、実施例3〜4については、下記のようにして塗膜の硬度を評価した。結果を表1に示す。なお、実施例1〜6、比較例1及びブランク1については、100cc(0.1L)スケールにて実施した。
(塗膜の硬度)
塗膜剥離強度の測定方法で作製した上記混合物を塗布乾燥した鉄板を用いて、塗膜の硬度をJIS K5600−5−4(引っかき硬度・鉛筆法)に基づいて評価した。但し、鉛筆にかける荷重は1kgで、試験は、塗膜が割れて試験用鉄板の面に鉛筆の芯が到達した時点で終了し、この鉛筆硬度より1段階柔らかい硬度を試料の硬度とした。
Figure 0004204497
表1において、「アエロジル#200(商品名)」とは、日本アエロジル社製の微粒シリカ(平均粒子径0.012μm)であり、「ミクロフィブリルセリッシュ」とは、ダイセル化学工業社製のミクロフィブリル化したセルロース(「セリッシュ(商品名)」、φ0.1〜0.01μm)であり、「レオドールSP−030(商品名)」とは、花王社製の界面活性剤である。
表1において、24時間後及び長期(12ヶ月)後の分離状態としては、生じた上澄み液の高さ(深さ)に応じて下記のように記号を付して評価した。
◎:0〜5mm未満
○:5mm以上、10mm未満
△〜○:10mm以上、15mm未満
△:15mm以上、20mm未満
×〜△:20mm以上、25mm未満
×:25mm以上
また表1において、再分散性としては、下記のように記号を付して評価した。
◎:再分散不要
○:再分散容易
△:再分散可能
×:再分散困難(固結)
表1の塗膜剥離強度の結果より、シリカ添加の場合(実施例1〜6)の剥離強度は、いずれも測定限界を越える2kgf/5mm以上であるのに対して、添加剤に界面活性剤を用いた場合(比較例1)の剥離強度は、1.5kgf/5mmで、接着強度が25%低下することが分かった。また、塗膜硬度の結果より、ブランク(シリカ無添加)の硬度は、「H」であるのに対して、シリカ添加の場合(実施例3〜4)は、いずれも硬度が「2H」とワンランク上がり、シリカ添加に伴い硬度が上昇する傾向があることが確認された。
実施例7〜10
製造したFRC塗布剤に、表1に示す添加量で「アエロジル#200」(商品名、日本アエロジル社製)を添加し、揺変性を評価した。その後、温度25度にて12ヶ月間保存した。その後、上層に分離する有機溶媒の分離層の割合(分離上澄み液深さ(mm)/全量深さ(mm))、分散状態、塗布作業性、再分散性を評価した。結果を表2に示す。なお、実施例7〜10及びブランク2については、20Lスケールにて実施した。
Figure 0004204497
表2において、分離状態としては、上層に分離する有機溶媒の分離層の割合(単位:%、分離上澄み液深さ(mm)/全量深さ(mm))に応じて、下記のように記号を付して評価した。
◎:0%(全く分離していない。)
○〜◎:0%以上、10%未満
○:10%以上、30%未満
△〜○:30%以上、40%未満
△:40%以上、60%未満
×〜△:60%以上、70%未満
×:70%以上
また表2において、塗布作業性としては、下記のように記号を付して評価した。
○:混合が容易で粉塵もなく、塗布性が良好であった。
△:混合が容易で粉塵もなかったが、塗布性が少し低下していた。
×:混合に手間がかかり、細かい粉塵が生じ、塗布性が低下していた。
また表2において、再分散性としては、下記のように記号を付して評価した。
◎:再分散不要
○:再分散容易
△:再分散可能
×:再分散困難
本発明の土木・建築用樹脂組成物における好適な形態に関し、樹脂組成物を50g混合調整後、直径30mmのガラス管容器に封入し、25℃で24時間放置した後の該樹脂組成物上層に分離する有機溶媒の割合(%)について説明する際に用いる図である。(A)は、分離前(吸水性樹脂が沈降する前)のガラス管容器内の樹脂組成物の状態を示す概念図である。(B)は、分離後(吸水性樹脂が沈降した後)のガラス管容器内の樹脂組成物の状態を示す概念図である。
符号の説明
1:樹脂組成物
2:分離層(有機溶媒)
3:吸水性樹脂
x:吸水性樹脂が沈降する前の樹脂組成物のガラス管容器底面部から樹脂組成物表面までの高さ
y:ガラス管容器に沈降した樹脂組成物表面から分離層の上表面までの高さ

Claims (8)

  1. 吸水性樹脂、バインダー樹脂、有機溶媒及び揺変化剤を含む土木・建築用樹脂組成物であって、
    該バインダー樹脂は、25℃のイオン交換水への溶解性が10質量%未満の樹脂、又は、自重に対するイオン交換水の吸水倍率が2倍未満の樹脂であり、
    該有機溶媒は、該樹脂組成物を100質量%としたときの含有量が25〜80質量%であり、
    該揺変化剤は、平均一次粒子径又は平均繊維直径が0.0001〜1μmである粉末及び/又は微細繊維から構成されるものであって、該揺変化剤の使用量は、該吸水性樹脂100質量%に対して0.1〜50質量%である
    ことを特徴とする土木・建築用樹脂組成物。
  2. 前記有機溶媒は、前記バインダー樹脂を溶解するものである
    ことを特徴とする請求項1に記載の土木・建築用樹脂組成物。
  3. 前記バインダー樹脂の重量平均分子量は、1万〜200万である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の土木・建築用樹脂組成物。
  4. 前記土木・建築用樹脂組成物は、B型粘度計にて測定した6rpm時の粘度と60rpm時の粘度との比で示される揺変性(25℃、相対湿度65%の測定条件下)が1.2〜8である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の土木・建築用樹脂組成物。
  5. 前記吸水性樹脂は、平均粒子径が0.01〜1mmである粒子から構成されるものである
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の土木・建築用樹脂組成物。
  6. 前記土木・建築用樹脂組成物は、該樹脂組成物50gを混合調整後、直径30mmのガラス管容器に封入し、25℃で24時間放置した後の該樹脂組成物上層に分離する有機溶媒の割合が、分離前の該樹脂組成物におけるガラス管容器底部から該樹脂組成物表面までの高さを100%としたときに60%以下である
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の土木・建築用樹脂組成物。
  7. 前記バインダー樹脂は、アルカリ水可溶性樹脂である
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の土木・建築用樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の土木・建築用樹脂組成物を用いてなる
    ことを特徴とする鋼材の処理方法。
JP2004071734A 2004-03-12 2004-03-12 土木・建築用樹脂組成物及び鋼材の処理方法 Expired - Fee Related JP4204497B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004071734A JP4204497B2 (ja) 2004-03-12 2004-03-12 土木・建築用樹脂組成物及び鋼材の処理方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004071734A JP4204497B2 (ja) 2004-03-12 2004-03-12 土木・建築用樹脂組成物及び鋼材の処理方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005256498A JP2005256498A (ja) 2005-09-22
JP4204497B2 true JP4204497B2 (ja) 2009-01-07

Family

ID=35082498

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004071734A Expired - Fee Related JP4204497B2 (ja) 2004-03-12 2004-03-12 土木・建築用樹脂組成物及び鋼材の処理方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4204497B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7141970B2 (ja) * 2019-03-14 2022-09-26 アイカ工業株式会社 トンネル覆工コンクリート片剥落防止構造及びこの剥落防止工法
KR20210016775A (ko) 2019-08-05 2021-02-17 주식회사 엘지화학 이차전지의 가스 제거 장치 및 이를 이용한 가스 제거 방법

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005256498A (ja) 2005-09-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2007512390A (ja) 高吸水性ポリマー水性ペースト及びコーティング
CA2111977C (en) Repositional glue stick
JP3274421B2 (ja) 被覆材およびその製造方法
US20170306060A1 (en) Aqueous emulsion, adhesive composition, and aqueous emulsion manufacturing method
JP5403387B2 (ja) 高分子乳化剤、及びこれを用いたポリオレフィン系樹脂エマルジョン
JP4204497B2 (ja) 土木・建築用樹脂組成物及び鋼材の処理方法
JP5692626B2 (ja) 高分子乳化剤、及びこれを用いたポリオレフィン系樹脂エマルジョン
JP3207843B1 (ja) 止水剤用塗料、止水工法用鋼矢板およびそれらを利用した止水工法
JP3264371B2 (ja) 潜函工法または推進工法用の摩擦低減剤用塗料およびそれを利用した潜函工法または推進工法
JP3929293B2 (ja) 汚染物拡散防止塗料、汚染物拡散防止方法およびシート状汚染物拡散防止材
JP2002060695A (ja) 摩擦低減剤用塗料ならびにそれを利用したネガティブフリクションカット工法、潜函工法および推進工法
JP5196707B2 (ja) 土木・建築用シート
JP4898028B2 (ja) 摩擦低減地中沈設体及び周面摩擦力低減工法
JP3228505B1 (ja) 密着性の良好な止水材、止水工法用鋼矢板およびそれらを利用した止水工法
JP4265726B2 (ja) 湿潤時の密着性が良好な表面処理剤、前記表面処理剤を用いた工法及び鋼矢板
JP4863732B2 (ja) 摩擦構造体
JP3212955B2 (ja) 表面処理剤、埋設物、および接着防止方法
JP3273040B2 (ja) 移動型型枠の離型方法
JP2008303628A (ja) 摩擦低減材
JPS60184540A (ja) 吸水性樹脂粉末含有組成物
JP2002327449A (ja) 耐水性が良好な表面処理層を有する表面処理基材
JP4132713B2 (ja) 耐水性の良好な水硬性混和物接着抑制剤、埋設物及び接着防止方法
JP3181573B1 (ja) 土付着防止剤用塗料、土付着防止用鋼矢板およびそれらを利用した土付着防止工法
JP2000322947A (ja) ケーブル用止水材およびその製造方法
JP2002327433A (ja) 湿潤時の密着性が良好な止水剤、該止水剤を用いた止水工法用鋼矢板、止水工法用鋼管杭、及び、止水工法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20061030

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20080603

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080617

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080806

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20081014

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20081014

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111024

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees