JP4231186B2 - 付着防止剤およびそれを用いた接続支持体撤去工法 - Google Patents

付着防止剤およびそれを用いた接続支持体撤去工法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメントなどの水硬性組成物とH形鋼などの支持体との付着を防止する材料に関するものである。より詳しくは、本発明は、例えば、水硬性組成物に埋設または接触したH形鋼や鋼矢板などを、より簡単に引き抜くことまたは分離除去できるように、両者の摩擦や付着を抑制する水硬性組成物の硬化物と支持体との付着を防止する材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、建築分野並びに土木分野の基礎工事において土留め擁壁等の構造体としての地盤基礎構造体を施工する際には、まず、掘削孔を形成するためにオーガーにより掘削を行なうが、掘削しながらセメントミルクや生コンクリート等の水硬性組成物が注入される。次に、掘削孔に注入された水硬性組成物に例えばH形鋼を芯材(仮埋設物)として埋め込んだ(打ち込んだ)後、該水硬性組成物を硬化させることが行われている。H形鋼は、目的工事が終了した後、借地のためや後年に地下を再び工事(開発)する際の障害とならないように、該硬化物から引き抜かれて撤去されることが望まれている。
【0003】
ところが、H形鋼と水硬性組成物の硬化物とは強固に付着しており、工事終了後にH形鋼を撤去するために、H形鋼を該硬化物から引き抜く作業には、付着強度(接着強度)に打ち勝つための相当な労力(引張力)が必要であるので設備や経費、日数等がかかる。
【0004】
これまで、例えば15m以上の長尺のH形鋼を引抜く場合、H形鋼の周りを特殊機械でボーリングして、くり貫きH形鋼表面に付着している地盤ごと引抜き撤去する工法があったが、多大な設備及び経費、時間がかかるなどの問題があった。また、例えば全長を引抜き撤去するのではなく基礎工事終了後の埋め戻す前に撤去が必要な長さの箇所をウォータージェットの力で切断し、その上部のH形鋼(例えば上部7〜10m分)を引抜く工法があったが、やはり多大な設備及び経費、時間がかかるなどの問題があった。
【0005】
これらに対し最近では、事前に所定の長さに切断しておいた2本のH形鋼を接合用鋼板と長ボルトを使って接続したH形鋼を建て込み、ソイルセメント土留め壁の硬化後(強度発現後)の腹起こし及び基礎工事終了後(埋め戻し前)に長ボルトを抜きとり、上部と下部のH形鋼の接続を解除した後に撤去が必要な上部のH形鋼を引抜き撤去する工法が提案されている。この工法は、上記のボーリングする工法や埋め戻し前にウォータージェットの力で切断する工法に比べ特殊な機械及び設備が不要で経費を大幅に削減し工期も短縮できる有力工法である。
【0006】
本発明は、上記の様な、ボルト等の接続材を使って複数のH形鋼等の支持体が接続された接続支持体を、水硬性組成物と接触させ、次に水硬性組成物が硬化した後に、接続支持体から接続材を除去することで接続支持体の接続を解除し、少なくとも一つの支持体を撤去する接続支持体撤去工法における、セメント等の水硬性組成物とH形鋼等の支持体との付着防止材に関するものである。
【0007】
しかしながら、該接続支持体撤去工法においても、H形鋼を水硬性組成硬化物から引き抜く作業には、全長を引抜くほどではないにしてもやはり付着強度(接着強度)に打ち勝つための相当な労力(引張力)が必要であった。
【0008】
そこで、上記の引き抜き作業をさらに容易に行うために、従来より、i)H形鋼の表面にワックス等の潤滑剤を予め塗布する方法や、H形鋼の表面に吸水性樹脂を接着剤を用いて付着させる方法、或いは、ii)H形鋼の表面に潤滑材を貼着する方法、さらには、iii)H形鋼を被覆材で被覆する方法、等の各種方法が提案されている。
【0009】
上記i)の方法として、例えば、特許公報の昭62−18597には、特定組成のワックスを用いることが提案されている。また、例えば、特開昭64−58715号公報には、ポリエステル系樹脂やビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等の展着剤と、吸水性樹脂とからなる芯材(仮埋設物)引き抜き用表面処理剤を用いることが提案されている。また、例えば、特開昭63−165615号公報には、天然ゴムや合成ゴム、プラスチック等の揮発性膜形成樹脂と、吸水性樹脂とからなる水膨潤性膜を用いて、鋼材を引き抜く際の摩擦抵抗力を低減する方法が提案されている。
【0010】
また、上記 ii)の方法として、例えば、特開平6−185054号公報には、超吸水性繊維からなるシート状の潤滑材を鋼材の表面に貼着することが提案されている。また、例えば、特開昭62−174418号公報には、吸水性樹脂と水を必要とするバインダーとからなる潤滑テープを用いて、鋼材を引き抜く際の摩擦抵抗力を低減する方法が提案されている。
【0011】
また、上記iii)の方法として、例えば、特開平7−247549号公報には、吸水性樹脂を織布や不織布等の基材に直接的に固着させてなるポリマーシートからなる袋状の潤滑材で仮埋設物を被覆することによって、該仮埋設物を引き抜く際の摩擦抵抗力を低減する方法が提案されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、潤滑剤をH形鋼等の芯材(仮埋設物)の表面に潤滑剤を直接塗布する方法では、現場の条件などによって該芯材(仮埋設物)が引き抜き回収できない場合がしばしばあり、芯材(仮埋設物)引き抜き時の摩擦抵抗の低減効果(例えばソイルセメントとH形鋼との付着防止効果)は不十分なものであり、過大な引抜き力が必要となるため引抜き時の安全性にも問題が有った。また、上記潤滑剤の芯材(仮埋設物)表面への塗布作業は、普通、現場で行われるが、該塗布作業を行う空き地の確保が難しい上に、塗布作業自体が極めて煩雑であり、現場の天候に左右されるという問題もあった。
【0013】
また、芯材(仮埋設物)の表面に潤滑材を貼着する方法も、引き抜き時の摩擦抵抗の低減効果は不十分なものであり、また該潤滑材の芯材(仮埋設物)表面への貼着作業自体が貼り直しがきかず調整が困難で極めて煩雑であるという問題もあった。更に、この従来の吸水性樹脂とバインダーとからなる潤滑テープを得るためには、水を必要とする接合剤を使って吸水性樹脂を基材に付着させる加工を行なっているが、取り扱いが煩雑で水の除去に時間がかかり生産性が低下する問題があった。また、超吸水性繊維の製造及びシート化についてもいくつもの工程が必要で煩雑であった。
【0014】
また、吸水性樹脂を基材に直接的に固着させたシートの袋状の潤滑材で仮埋設物を被覆する方法は、例えば、該シートの袋が仮埋設物に密着していないため仮埋設物の表面を確認しづらく(袋が膨らんで形状が見えない)、建て込み精度または作業性が低下する場合があった。また、掘削孔への建て込み時に袋が破損し仮埋設物の引抜性が低下する場合があり、その被覆作業には、注意を要した。
【0015】
それゆえ、作業性、安全性、芯材(仮埋設物)のリサイクル性が良好で、H形鋼等の芯材(仮埋設物)を引き抜く作業を容易にすることができる付着防止材、つまり、芯材(仮埋設物)を水硬性組成物の硬化物からより簡単に引き抜くことができるように、両者の付着や摩擦を抑制すべく構成した付着防止材が求められている。
【0016】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、安全性、芯材(仮埋設物)のリサイクル性の向上と共に、付着防止材の支持体(H形鋼等の芯材)への被覆作業の簡便化を行なうことができ、高い付着防止効果により引き抜く作業を改善することができる付着防止材を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本願発明者は、上記従来の問題点を解決すべく、付着防止材について鋭意検討した。その結果、上記接続支持体撤去工法における、セメントなどの水硬性組成物とH形鋼などの支持体(仮埋設物)との付着を防止する材料であって、少なくとも、吸水性樹脂や吸水性樹脂シート、パルプ(繊維)、綿、レーヨン(繊維)、吸水性繊維、ゼオライト、脱イオン水に1時間浸漬後に網ですくい上げ1分間20℃で風乾した後の吸水量が乾燥自重の2倍以上となる材料などの親水剤を含む吸水性潤滑層を有する付着防止材をH形鋼表面と水硬性組成物の硬化体との間に介在させることにより、水硬性組成物と支持体(仮埋設物)との付着や摩擦を抑制し、水硬性組成物からの支持体(仮埋設物)の引抜きまたは分離除去を容易にすることを見い出して、本発明を完成させるに至った。
【0018】
本発明の第1の付着防止材は、上記の課題を解決するために、接続材を使って複数のH形鋼等の支持体が接続された接続支持体を、水硬性組成物と接触させ、次に水硬性組成物が硬化した後に、接続支持体から接続材を除去することで接続支持体の接続を解除し少なくとも一つの支持体を撤去する接続支持体撤去工法における、水硬性組成物と支持体との付着を防止する材料であって、少なくとも、親水剤を含む吸水性潤滑層を支持体表面に有することを特徴としている。
【0019】
上記の構成によれば、水を吸収することにより水硬性組成物の硬化物と支持体との(両者)の付着防止性能及び潤滑性能を発現する吸水性潤滑層により、両者の付着防止を行うことができ、例えば、ソイルセメント硬化体からのH形鋼の引抜き撤去回収を容易に実現する。
【0020】
本発明の第2の付着防止材は、上記の課題を解決するために、接続材を使って複数のH形鋼等の支持体が接続された接続支持体を、水硬性組成物と接触させ、次に水硬性組成物が硬化した後に、接続支持体から接続材を除去することで接続支持体の接続を解除し、少なくとも一つの支持体を撤去する接続支持体撤去工法における、水硬性組成物と支持体との付着を防止する材料であって、少なくとも、親水剤を含む吸水性潤滑層と疎水性潤滑剤を含む疎水性潤滑層とを有することを特徴としている。
【0021】
上記の構成によれば、水を吸収することにより水硬性組成物の硬化物と支持体との(両者)の付着防止性能及び潤滑性能を発現する吸水性潤滑層と、その両者の付着防止性能及び潤滑性能を有する潤滑剤を含む疎水性潤滑層との相乗効果により、より高い両者の付着防止を行うことができ、例えば、ソイルセメント硬化体からのH形鋼の引抜き撤去回収を容易に実現する。また、被覆作業も改善され、ソイルセメント中に被覆したH形鋼を容易に投入できるようになる。
【0022】
本発明の第3の付着防止材は、上記の課題を解決するために、上記第1の付着防止材または上記第2の付着防止材において、親水剤が、吸水性樹脂であることを特徴としている。
【0023】
上記の構成によれば、吸水性潤滑層は、吸水性樹脂の吸水膨潤性により柔軟なゲル層を形成するが、このゲル層の潤滑性能及び上記水硬性組成物の硬化物と支持体との両者の分離性能により、より高い両者の付着防止を実現する。
【0024】
本発明の第4の付着防止材は、上記の課題を解決するために、上記第2の付着防止剤または上記第3の付着防止剤において、疎水性潤滑剤が、半固形状潤滑剤であることを特徴としている。
【0025】
潤滑剤は、10℃から30℃の常温において、液状潤滑剤、半固形状潤滑剤、固形潤滑剤の大きく3つに分類されるが、液状及び固形状の潤滑剤は吸水性潤滑層と複合化するときに液ダレや脱落などの問題が生じる場合がある。上記の構成によれば、鉱油を配合して半固形状に調製したワックスやグリースなどの常温(25℃)において半固形状の潤滑剤は、潤滑性能と共に粘着力(鋼材に対する密着力)を有することから、吸水性潤滑層への無溶剤塗布が可能で複合化を容易にする。また、特にワックス系半固形状潤滑剤が特に好ましく、溶融塗布が可能で加工性がさらに向上する。
【0026】
本発明において、半固形状とは、JIS規格(JIS K−2560またはJIS K−2524)にある混和ちょう度が3〜385の範囲であることをいう。
【0027】
上記半固形状潤滑剤の好ましい混和ちょう度としては、3から385であるが、より好ましくは5から250であり、さらに好ましくは10から170である。混和ちょう度が3未満だと潤滑性が低下し鋼材に対する粘着力も低下し脱落が起こり易くなる。さらに溶融に時間がかかり溶融塗布が煩雑になるという問題が生じる。また、混和ちょう度が385を超えると液ダレが生じ周辺を汚染し粘着力も低下する問題が生じる。
【0028】
さらに、本発明の付着防止材の疎水性潤滑層側をH形鋼等の支持体表面側に配することで、その密着力を利用して支持体表面に付着防止材を密着(貼付け)させることができ特に好ましい。例えば、シート状の付着防止材をH形鋼などの支持体に密着させる利点としては、
▲1▼半固形状潤滑剤特有の再剥離可能な密着性により、貼り直しが自由に調整でき貼付け作業が極めて容易にすることができる。上記従来のワックスなどの潤滑剤を支持体に塗り付ける方法やテープ状潤滑材を貼り付ける方法に比べ、より簡便である。
▲2▼土留め壁造成において、従来の上記特開平7−247549号公報の支持体であるH形鋼等の仮埋設物に、付着防止材の被覆材を非接着状態で被覆する方法に比べ、付着防止材をH形鋼(支持体)に密着させることによりH形鋼表面を明確に確認できるため、鉛直性等の建て込み(掘削孔へのH形鋼の投入)精度を高くすることができ作業性を改善できる。
▲3▼土留め壁造成において、上記従来の非接着状態で被覆材を被覆する方法では、例えば、掘削孔径の小さい場合など、建て込み時に被覆材が掘削孔壁面に接触してナイフで切った後のような破損が数mに渡り起こる場合があった。この場合、切り口からセメントミルクが多量にH形鋼表面へ流入(接触)し付着防止材がH形鋼表面から乖離してしまうため、上記水硬性組成物の硬化物とH形鋼(支持体)との両者の付着強度は増大してH形鋼の引抜きが困難になる場合があった。しかしながら、本発明の付着防止材は、半固形状潤滑剤の密着効果(粘着効果)により付着防止材をH形鋼表面に密着させることができるため、付着防止材自体が、かなり破損しても、付着防止材のH形鋼表面からの乖離が起こらず、セメントミルクのH形鋼表面への流入(接触)を最小限に抑えることができる。H形鋼(支持体)に付着防止材を密着させることで、破損し易い厳しい条件下でも上記水硬性組成物とH形鋼との両者の付着強度を格段に抑制することができ、H形鋼の引抜き回収を容易に実現する。
などが挙げられ、上記の構成によれば、上記した被覆作業性向上と共に上記両者の更に確実な付着防止を実現する。
【0029】
即ち、本発明の第5の付着防止材は、上記の課題を解決するために、接続材を使って複数のH形鋼等の支持体が接続された接続支持体を、水硬性組成物と接触させ、次に水硬性組成物が硬化した後に、接続支持体から接続材を除去することで接続支持体の接続を解除し少なくとも一つの支持体を撤去する接続支持体撤去工法における、水硬性組成物と支持体との付着を防止する材料であって、少なくとも、疎水性潤滑剤を含む疎水性潤滑層とシート状基材とを有することを特徴としている。
【0030】
上記の構成によれば、水硬性組成物の硬化物と支持体との(両者)の付着防止性能及び潤滑性能を発現するシート状基材層及び疎水性潤滑層により、両者の付着防止を行うことができ、例えば、ソイルセメント硬化体からのH形鋼の引抜き撤去回収を容易に実現する。
【0031】
本発明の接続支持体撤去工法は、上記の課題を解決するために、接続材を使って複数のH形鋼等の支持体が接続された接続支持体を、少なくとも親水剤を含む吸水性潤滑層を有する付着防止材で被覆する工程、該接続支持体を水硬性組成物と接触させる工程、水硬性組成物を硬化させる工程、および、接続支持体から接続材を除去して該接続を解除し、少なくとも一つの支持体を撤去する工程を順に含むことを特徴としている。
【0032】
上記構成によれば、接続支持体表面に、水を吸収することにより水硬性組成物の硬化物と支持体との(両者)の付着防止性能及び潤滑性能を発現する吸水性潤滑層が形成され、両者の付着防止を行うことができ、例えば、ソイルセメント硬化体からのH形鋼の引抜き撤去回収を容易に実現する。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明の付着防止材は、ボルト等の接続材を使って複数のH形鋼等の支持体が接続された接続支持体を、水硬性組成物と接触させ、次に水硬性組成物が硬化した後に、接続支持体から接続材を除去することで接続支持体の接続を解除し少なくとも一つの支持体を撤去する接続支持体撤去工法における、水硬性組成物と支持体との付着を防止する材料である。
【0034】
ここで上記の様に定義した接続支持体撤去工法の例としては、事前に所定の長さに切断しておいた2本のH形鋼を接合用鋼板と長ボルトを使って接続したH形鋼を建て込み、ソイルセメント土留め壁の硬化後(強度発現後)の腹起こし及び基礎工事終了後(埋め戻し前)に長ボルトを抜きとり、上部と下部のH形鋼の接続を解除した後に撤去が必要な上部のH形鋼を引抜き撤去する工法が挙げられる。この工法は、上記の従来のボーリングする工法や埋め戻し前にウォータージェットの力で切断する工法に比べ特殊な機械及び設備が不要で経費を大幅に削減し工期も短縮できる工法で、この優れた接続支持体撤去工法において、水硬性組成物と支持体との付着を防止する性能が極めて高い本発明の付着防止材を併用することで、この接続支持体撤去工法の工期短縮、作業性、安全性、支持体のリサイクル性、経費削減等の多くの面で更にこれまでに無い大きなメリットを生むことができる。
【0035】
本発明の付着防止材の形態については、以下詳細に後述するが、以下の形態が挙げられる。
【0036】
i)吸水性樹脂をシート状基材に付着させた吸水性潤滑層(樹脂)シート。
【0037】
ii)吸水性潤滑層シート等の吸水性潤滑層の少なくとも片面に疎水性潤滑剤を含む疎水性潤滑層を塗布などにより形成させたもの、さらに、疎水性潤滑剤を含む疎水性潤滑層の両面に吸水性潤滑層シート等の吸水性潤滑層が形成されたものまたは2枚の吸水性潤滑層シートの間に疎水性潤滑層が形成された3層シート(構成:吸水性潤滑層/疎水性潤滑層/吸水性潤滑層)。
【0038】
iii)シート状基材の少なくとも片面に疎水性潤滑剤を形成させた疎水性潤滑層シートと吸水性潤滑層シートを複合化したもの。
【0039】
iv)支持体表面に直接、疎水性潤滑剤及び吸水性潤滑層シートを交互に積層形成させたもの。
【0040】
v)吸水性樹脂と接合剤とを含む液状組成物(塗布型付着防止材)の形態。この塗布型付着防止材は直接支持体に塗布する。
などが好ましい形態として挙げられる。
【0041】
接合剤は成膜可能なものであれば特に限定されなず、各種の水溶性樹脂や疎水性樹脂、アルカリ水可溶性樹脂、柔軟な樹脂などが挙げられるが、中でも接合剤としてはアルカリ水可溶性樹脂あるいは、吸水時の吸水性樹脂の膨潤を阻害する力の小さい柔軟な樹脂が好ましい。
【0042】
この柔軟な樹脂とは、下記の塗膜ガーレー剛性度が1000(mgf){N}以下の樹脂が好ましく、700(mgf){N}以下の樹脂がより好ましく、500(mgf){N}以下の樹脂がさらに好ましく、300(mgf){N}以下の樹脂が特に好ましい。具体例としては塗膜ガーレー剛性度が500(mgf){N}以下の天然ゴム樹脂が挙げられる。
(塗膜ガーレー剛性度)
塗膜ガーレー剛性度は以下の方法で測定し算出する。
【0043】
ガーレー剛性度が250±50(mgf){N}の不織布基材に乾燥塗布量が250g/m2になる様に試料樹脂を塗布する。この塗布された基材の柔軟度をJIS L1096(一般織物試験方法)の6.20項、曲げ反ぱつ性 A法(ガーレー法)に基づいて測定し算出する。得られたガーレー剛性度をその試料樹脂の塗膜ガーレー剛性度とする。
【0044】
本発明にかかる水硬性組成物としては、例えば、セメント、各種コンクリート、各種モルタル、セメントミルク、ソイルセメント、埋め戻し土などに使われるセメント成分を混合した流動化処理土、水ガラスなどが挙げられるが、特に限定されるものではなく、一般に建築分野並びに土木分野の基礎工事において、土留め擁壁や土台等の地盤基礎構造体を施工する際に用いられる水硬性組成物がよく用いられる。該水硬性組成物は硬化(水和)することによって硬化物となるが、本発明で言う水硬性組成物とは、硬化前の流動化状態のものと、硬化後の圧縮強度を発現した固い状態のものの両者を指すものとする。尚、水硬性組成物に含まれるセメント、水、混和材、混和剤、骨材、補強材等の種類や組み合わせ、即ち、水硬性組成物の組成は、特に限定されるものではないが、水硬性組成物の硬化物の圧縮強度が9.8N/cm2(1kgf/cm2)以上、好ましくは49N/cm2(5kgf/cm2)以上、より好ましくは981N/cm2(10kgf/cm2)以上、特に好ましくは294N/cm2(30kgf/cm2)以上であり、その圧縮強度が大きくなればなるほど、本発明の付着防止材の効果は従来の付着防止材のものと比較して、その付着防止効果の優位差は増大する。
【0045】
本発明にかかる支持体としては、例えば、具体的には、例えば、H形鋼、I型鋼、鉄柱、コンクリート杭、ポール、筒状のパイル(中空パイル)、長尺板状の杭である鋼矢板(シートパイル)や波板等が挙げられるが、水硬性組成物を外側及び/または中側(埋設状態)から支え保持するものであれば特に限定されるものではない。支持体は、一般に建築分野並びに土木分野の基礎工事において、土留め擁壁や土台等の地盤基礎構造体を施工する際によく用いられ、使用後に水硬性組成物の硬化物から引き抜く、または分離する必要があるものである。尚、支持体の形状、長さ、材質等は、特に限定されるものではない。
【0046】
また、支持体の形状については、作業性向上などのために工事の所期の目的を達成させるのに支障のない範囲で適宜変形させても良い。例えば、吊り上げた支持体(仮埋設物)であるH形鋼に、筒状の付着防止材を下部から履かせ吊り上げて被覆する場合に、H形鋼の下部のフランジの先端部分の角が引っかかり付着防止材が破損する恐れがあるが、予めH形鋼の該先端の角を溶融切断などにより、角を斜めに落しておいた(切る)H形鋼は、引っかかり難くくなるので破損を防止することができる。従って、角を斜めに落した形状は、好ましい。また、上記の角を斜めに落したH形鋼は、建て込み(掘削孔への投入)時に高止まりしてオーガー機などで強制的に押込む場合でも、その押し込みを容易にすることができるので好ましい。 本発明における接続支持体とは、複数の、上記H型鋼などの支持体を、接続材を用いて接続したものである。ここにおいて接続材には、ボルト等を用いることができ、場合によっては鋼板などのつなぎ用の補助部材を用いて接続してもよい。
【0047】
上記の水硬性組成物と支持体とは、接触し硬化すると強固に付着し、支持体の引抜きまたは分離除去は困難であった。しかしながら、本発明の付着防止材を水硬性組成物と支持体との両者の間に介在させることで吸水性潤滑層と疎水性潤滑層の優れた潤滑性、分離性により、両者の付着を防止することができ水硬性組成物と支持体との引抜きまたは分離除去を容易にすることができる。
【0048】
本発明にかかる吸水性潤滑層の主要な構成材料となる吸水性潤滑層シートとしては、吸水重量において、脱イオン水中に重石を付けて1時間浸漬後に30秒間風乾した後の重量が乾燥時の自重の2倍(g/g)以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上、特に好ましくは20倍以上であり、自重の2倍以上のものであれば特に制限はされない。吸水重量が自重の2倍未満だと潤滑成分として働く水分または含水ゲルが少ないために十分な潤滑及び分離効果が発現しない場合がある。基本的に吸水重量(吸水倍率)は多いほど水硬性組成物と支持体との付着を防止できる。
【0049】
吸水性潤滑層となる吸水性潤滑層シートの具体例としては、吸水重量が自重の2倍以上である、不織布、織物、混紡織物、連続気泡が形成されてなる発泡体、木材シート、紙シート、厚紙シート、合成紙等の多孔性材料、吸水性繊維から作られた吸水性繊維シート、または粒径の小さい吸水性樹脂とシート状基材とから少なくとも構成される吸水性樹脂シート等である。これらの吸水性潤滑層シートは、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用(複合)してもよい。上記材料の中で、潤滑性能の観点から、吸水性繊維シートと吸水性樹脂シートが好ましいが、吸水性樹脂を含む吸水性樹脂シートがより好ましい。
【0050】
吸水性樹脂シートは、疎水性樹脂の接合剤や水溶性樹脂の接合剤、アルカリ水可溶性樹脂の接合剤、天然又は合成のゴム系接合剤などの各種接合剤で吸水性樹脂をシート状基材に付着させて作ることができるが、吸水性樹脂を付着させる接合剤として好ましいものとしては、吸水性樹脂の吸水膨潤性を阻害させない観点から水溶性樹脂の接合剤やアルカリ水可溶性樹脂の接合剤、塗膜ガーレー剛性度が1000(mgf){N}以下、より好ましくは700(mgf){N}以下、さらに好ましくは500(mgf){N}以下、特に好ましくは300(mgf){N}以下の樹脂接合剤が挙げられる。さらに、吸水性樹脂の脱落防止性も備えるアルカリ水可溶性樹脂と塗膜ガーレー剛性度が500(mgf){N}以下の天然ゴム樹脂が特に好ましい。塗膜ガーレー剛性度が1000(mgf){N}を超えると該樹脂は硬くなり吸水性樹脂の吸水性、膨潤性を阻害し付着防止性を低下させる。
【0051】
本発明にかかる吸水性樹脂シートを構成するシート状基材は、地盤基礎構造体を施工する際にかかる種々の外力、例えば、支持体や水硬性組成物の重量がかかることによって生じる引張力や剪断力;支持体を埋設するときに生じる衝撃力や引張力、水硬性組成物との間の摩擦力;等に対して耐え得る強度、つまり、上記外力がかかっても破損しない強度を備えている材質が好ましい。
【0052】
該シート状基材の材質としては、具体的には、例えば、割繊維不織布(例えばワリフ「商品名」等)、カーペット、フェルト、石綿布、石綿フェルト、ガラス繊維不織布、ガラス繊維強化プラスチック、ステッチボンド不織布、ニードルパンチ不織布、等の不織布類;フラットヤーンの繊維織物、綿織物、麻織物、帯状織物、帯ひも、ポリプロピレン等からなる合成樹脂織物、等の織物類;ポリエステル繊維と綿繊維とを混紡して得られる織物、等の混紡織物;ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ゴムフォーム等からなる素材の内部に、独立気泡および/または連続気泡が形成されてなる発泡体;ウレタンゴムやシリコーンゴム、フッ素ゴム、エーテルゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、ネオプレン(クロロプレンゴム)、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、天然ゴム等からなるエラストマーシート、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド(ナイロン)、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂等からなるプラスチックシート、皮革シートや木材シート、防水加工を施した紙シート、厚紙シート等の天然物シート、合成紙、アルミニウムや鉄、銅、銀等からなる金属シート、ステンレス等からなる合金シート、ステンレス鋼繊維シート、セラミックファイバーシート、アルミニウムや鉄、銅、銀等からなる金属箔、ステンレス等からなる合金金属箔、等のシート類;ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド(ナイロン)、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂等からなるネットまたはメッシュ、アルミニウムや鉄、銅、銀等からなるネットまたはメッシュ、ステンレス等の合金からなるネットまたはメッシュ、等のネット・メッシュ類;等が挙げられる。これら材質は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用(複合)してもよい。
【0053】
上記例示の材質のうち、透水性や加工性により優れると共に、廉価であることから、割繊維不織布、ニードルパンチ不織布、フラットヤーンの繊維織物、綿織物、麻織物、帯状織物、合成樹脂織物、および、混紡織物が特に好ましい。
【0054】
また、上記例示の材質のうち、透水性を備えていない材質、例えば、シート類等に対しては、必要に応じて、例えば切り目や孔等を形成してもよい。この場合、切り目や孔の形状、大きさ、個数、形成位置は、特に限定されるものではなく、上記外力がかかってもシート状基材が破損しない強度を維持することができる範囲内で以て、適宜設定することができる。
【0055】
上記シート状基材の厚さは、材質に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、0.01mm〜10mmの範囲内がより好ましく、0.05mm〜8mmの範囲内がさらに好ましく、0.2mm〜5mmの範囲内が特に好ましい。シート状基材の厚さが10mmよりも厚いと、付着防止材(被覆材)の柔軟性が低下するおそれがある。また、付着防止材(被覆材)が嵩高くなるので、その取り扱い性や保管性が低下するおそれがある。シート状基材の厚さが0.01mmよりも薄いと、外力に耐え得る強度を維持することができないおそれがある。
【0056】
尚、上記シート状基材の坪量は、材質や厚さに応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、10g/m2 〜10,000g/m2 の範囲内がより好ましく、20g/m2 〜1,000g/m2 の範囲内がさらに好ましい。
【0057】
シート状基材の引張強度は、9.81N/2.5cm(1kgf/2.5cm)以上であることがより好ましく、98.1N/2.5cm(10kgf/2.5cm)以上であることがさらに好ましく、294N/2.5cm(30kgf/2.5cm)以上であることが特に好ましい。引張強度が9.81N/2.5cm(1kgf/2.5cm)以上であれば、シート状基材は、上記外力がかかっても破損しない強度を維持することができる。シート状基材の引張強度が9.81N/2.5cm(1kgf/2.5cm)未満であると、外力がかかったときに破れたり裂けたりし易くなる。
【0058】
上記の引張強度は、幅2.5cm、長さ20cmの大きさに裁断した後、脱イオン水に30分間浸漬して充分に濡らした試験片(シート状基材)を用い、JIS L 1096(一般織物試験方法)の引張試験方法(引張強さ)に基づく低速伸長引張試験機を使用して、引張速度20mm/min、つかみ間隔10cmの条件で以て測定した。該試験機によって得た測定値(単位:N/2.5cm(kgf/2.5cm))が大きいほど、シート状基材の引張強度が大きいと判断できる。
【0059】
上記吸水性樹脂と複合化されたシート状基材、つまり、付着防止材(被覆材)は、支持体(例:H形鋼)を被覆することができる形状並びに大きさに形成されていることがより好ましいが、後段にて詳述するように、支持体を挿入可能な袋状若しくは筒状に形成されていることが特に好ましい。付着防止材を袋状若しくは筒状に形成することにより、大きくかつ重量物であるH形鋼などの仮埋設物をより一層簡単にかつ迅速に被覆することができるので、作業現場における作業性をより一層向上させることができる。また、疎水性潤滑層の粘着性を利用して支持体表面に貼り付けるためのシート状の形状も好ましい。特に2枚の吸水性潤滑層シートの間に疎水性潤滑層が形成された3層シートの形状が作業性、安全性、廃材縮減(剥離材不要)の観点から好ましい。
【0060】
吸水性樹脂を付着させる接合剤であるアルカリ水可溶性樹脂は、中性ないし酸性を呈する水には溶解せず、アルカリ水に溶解する樹脂であればよく、特に限定されるものではないが、酸価が15mgKOH/g以上であり、かつ、脱イオン水に対して非膨潤性、即ち、自重に対する脱イオン水の吸水倍率が2倍未満の樹脂が好適である。
【0061】
該アルカリ水可溶性樹脂としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基等の置換基を有する樹脂、フェノール性ヒドロキシル基を含むノボラック樹脂、および、ポリビニルフェノール樹脂がより好ましく、α,β−不飽和カルボン酸系単量体とビニル系単量体とを共重合して得られる樹脂が、アルカリ水に対する溶解性、および経済性により優れると共に、シート状基材表面に形成される吸水性樹脂とアルカリ水可溶性樹脂との樹脂層の各種物性により優れるので、特に好ましい。また、カルボン酸基を有する樹脂である、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートヘキサヒドロフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロフタレート等のセルロース誘導体を、アルカリ水可溶性樹脂として用いることもできる。
【0062】
α,β−不飽和カルボン酸系単量体としては、具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸無水物;マレイン酸モノエステル、フマル酸モノエステル、イタコン酸モノエステル等のα,β−不飽和ジカルボン酸モノエステル;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらα,β−不飽和カルボン酸系単量体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。上記例示のα,β−不飽和カルボン酸系単量体のうち、アクリル酸、メタクリル酸が、シート状基材表面に形成される吸水性樹脂とアルカリ水可溶性樹脂との樹脂層の柔軟性および靱性により優れるので、さらに好ましい。
【0063】
ビニル系単量体としては、具体的には、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ステアリル等の、炭素数1〜18の一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系単量体;アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等の水酸基含有ビニル系単量体;メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有ビニル系単量体;アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛等の、α,β−不飽和カルボン酸の金属塩;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;酢酸ビニル等の脂肪族ビニル系単量体;塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン基含有ビニル系単量体;アリルエーテル類;無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等のマレイン酸誘導体;フマル酸モノアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル等のフマル酸誘導体;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド誘導体;イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、イタコンアミド類、イタコンイミド類、イタコンアミドエステル類等のイタコン酸誘導体;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらビニル系単量体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0064】
上記例示のビニル系単量体のうち、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルが、シート状基材表面に形成される樹脂層の柔軟性、耐候性および靱性により優れるので、さらに好ましい。また、ビニル系単量体に占める(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合を30重量%以上にすることにより、上記樹脂層の柔軟性、耐候性および靱性がより一層向上するので、特に好ましい。さらに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、炭素数1〜18の一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルである場合には、上記樹脂層の柔軟性、耐候性および靱性が特に向上するので、最も好ましい。
【0065】
また、α,β−不飽和カルボン酸系単量体およびビニル系単量体の合計量に占めるα,β−不飽和カルボン酸系単量体の割合は、9重量%以上であることがより好ましく、9重量%〜40重量%の範囲内がさらに好ましい。α,β−不飽和カルボン酸系単量体の割合を9重量%以上にすることにより、アルカリ水に対する溶解性により一層優れたアルカリ水可溶性樹脂を得ることができる。そして、α,β−不飽和カルボン酸系単量体の割合を9重量%〜40重量%の範囲内にすることにより、アルカリ水に対する溶解性と共に、柔軟性や耐候性、靱性に特に優れたアルカリ水可溶性樹脂を得ることができる。
【0066】
上記のα,β−不飽和カルボン酸系単量体とビニル系単量体とを共重合することにより、アルカリ水可溶性樹脂が得られる。共重合方法、つまり、アルカリ水可溶性樹脂の製造方法は、特に限定されるものではない。また、アルカリ水可溶性樹脂の平均分子量は、水硬性組成物の組成やアルカリ水のpH、作業環境等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。本発明にかかるアルカリ水可溶性樹脂は、アルカリ水に対する溶解性に優れているので、例えば吸水性樹脂を混合する場合においては、吸水性樹脂が水を吸水して膨潤する際の体積膨張を阻害するおそれが無い。従って、吸水性樹脂は、その吸水特性(性能)を充分に発揮することができる。
【0067】
本発明にかかるアルカリ水可溶性樹脂の酸価は、15mgKOH/g以上であることが好ましい。30mgKOH/g以上であることがより好ましく、50mgKOH/g以上であることがさらに好ましく、70mgKOH/g以上であることが特に好ましく、70mgKOH/g〜500mgKOH/gの範囲内であることが最も好ましい。アルカリ水可溶性樹脂の酸価が15mgKOH/g未満である場合には、アルカリ水に対する溶解性が乏しくなるので、支持体を引き抜く作業を容易に行うことができなくなる(引き抜き性が低下する)おそれがある。また、アルカリ水可溶性樹脂の酸価が500mgKOH/gを越える場合には、該アルカリ水可溶性樹脂の耐水性が低下するので、シート状基材表面に形成される樹脂層が、雨等の中性域または酸性域のpHを示す水と接触すると、アルカリ水可溶性樹脂の溶解または吸水性樹脂の膨潤が起こり損傷するおそれがある。このため、付着防止材(被覆材)を被覆する作業や支持体を埋設する作業に支障をきたすおそれがあると共に、支持体の引き抜き性に悪影響を及ぼすおそれがある。また、作業現場の温度変化によって該樹脂層がシート状基材から剥離したり、べとついたりし易くなるおそれがある。尚、酸価の測定方法は、特に限定されるものではない。
【0068】
本発明にかかるアルカリ水可溶性樹脂は、示差走査熱量測定(DSC (differential scanning calorimetry))によって得られるDSC微分曲線のピークトップ(DSC曲線の変曲点)、つまり、ガラス転移温度を、−80℃〜120℃の範囲内に1つ、より好ましくは2つ以上有している。そして、アルカリ水可溶性樹脂は、−30℃〜20℃の範囲内に低温側のガラス転移温度を有する一方、40℃〜100℃の範囲内に高温側のガラス転移温度を有していることがさらに好ましい。尚、ガラス転移温度の測定方法、即ち、示差走査熱量測定の測定条件は、特に限定されるものではない。
【0069】
低温側のガラス転移温度が−30℃〜20℃の範囲内に存在することにより、例えば冬季等、作業現場が低温であっても上記樹脂層がシート状基材から剥離するおそれがなくなる。また、高温側のガラス転移温度が40℃〜100℃の範囲内に存在することにより、例えば夏期等、作業現場が高温であっても上記樹脂層がべとつくおそれがなくなる。従って、アルカリ水可溶性樹脂が、−30℃〜20℃の範囲内に低温側のガラス転移温度を有する一方、40℃〜100℃の範囲内に高温側のガラス転移温度を有している場合には、作業現場の温度変化に左右されない安定な樹脂層、即ち、剥離し難く、べとつき難い樹脂層を形成することができる。
【0070】
本発明の付着防止材においては、アルカリ水可溶性樹脂と吸水性樹脂とを併用することが、最も好ましい実施の形態である。
【0071】
上記の吸水性樹脂は、水を吸水することによって膨潤し、かつ、自重に対する脱イオン水の吸水倍率が3倍以上の樹脂であればよく、特に限定されるものではないが、該吸水倍率が10倍以上の樹脂がより好ましい。該吸水性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸架橋体、ポリ(メタ)アクリル酸塩架橋体、スルホン酸基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリオキシアルキレン基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリ(メタ)アクリルアミド架橋体、(メタ)アクリル酸塩と(メタ)アクリルアミドとの共重合架橋体、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルと(メタ)アクリル酸塩との共重合架橋体、ポリジオキソラン架橋体、架橋ポリエチレンオキシド、架橋ポリビニルピロリドン、スルホン化ポリスチレン架橋体、架橋ポリビニルピリジン、デンプン−ポリ(メタ)アクリロニトリルグラフト共重合体のケン化物、デンプン−ポリ(メタ)アクリル酸(塩)グラフト架橋共重合体、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸(塩)との反応生成物、架橋ポリビニルアルコールスルホン酸塩、ポリビニルアルコール−アクリル酸グラフト共重合体、ポリイソブチレンマレイン酸(塩)架橋重合体等が挙げられる。これら吸水性樹脂は、必要に応じて、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。さらに、吸水性樹脂が備える各種性質(吸水倍率等)を阻害しない程度に、他の樹脂を吸水性樹脂と併用することもできる。
【0072】
上記例示の吸水性樹脂のうち、ノニオン性基および/またはスルホン酸(塩)基を有する吸水性樹脂がより好ましく、アミド基またはヒドロキシアルキル基を有する吸水性樹脂がさらに好ましい。該吸水性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸塩と(メタ)アクリルアミドとの共重合架橋体、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルと(メタ)アクリル酸塩との共重合架橋体等が挙げられる。さらに、上記例示の吸水性樹脂のうち、ポリオキシアルキレン基を有する水膨潤性樹脂が特に好ましい。該吸水性樹脂としては、例えば、メトキシポリオキシアルキレン基を有する(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸塩との共重合架橋体等が挙げられる。メトキシポリオキシアルキレン基を有する水膨潤性樹脂は、長期間にわたって、アルカリ水に対する膨潤性に特に優れている。従って、該吸水性樹脂を用いることにより、支持体を引き抜く作業を極めて容易に行うことができる。
【0073】
さらに、本発明にかかる吸水性樹脂として、水溶性を有するエチレン性不飽和単量体と、必要に応じて架橋剤とを含む単量体成分を重合することによって得られる樹脂を用いることができる。エチレン性不飽和単量体を(共)重合してなる吸水性樹脂は、水に対する膨潤性により優れており、かつ、一般的に安価である。従って、該吸水性樹脂を用いることにより、支持体(仮埋設物)を引き抜く作業を極めて容易に、かつ、より一層経済的に行うことができる。尚、上記の架橋剤は、特に限定されるものではない。また、直鎖状の高分子に、架橋剤を添加して架橋することにより、或いは、電子線を照射して架橋することにより、水膨潤性樹脂を形成することも好ましい。
【0074】
上記のエチレン性不飽和単量体としては、具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、並びに、これら単量体のアルカリ金属塩やアンモニウム塩;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、並びに、その四級化物;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド類、並びに、これら単量体の誘導体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルスクシンイミド等のN−ビニル単量体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド等のN−ビニルアミド単量体;ビニルメチルエーテル;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらエチレン性不飽和単量体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0075】
上記例示のエチレン性不飽和単量体のうち、ノニオン性基および/またはスルホン酸(塩)基を有するエチレン性不飽和単量体がより好ましい。該単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、ポリオキシアルキレン基を有するエチレン性不飽和単量体が特に好ましい。そして、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートを含む単量体成分を重合して得られる吸水性樹脂は、アルカリ水に対する膨潤性に特に優れている。従って、該吸水性樹脂を用いることにより、例えば、支持体(仮埋設物)を引き抜く作業を極めて容易に行うことができる。
【0076】
さらに、単量体成分としてエチレン性不飽和単量体を二種類以上併用する場合においては、該単量体成分に占める、ノニオン性基および/またはスルホン酸(塩)基を有するエチレン性不飽和単量体の割合を1重量%以上にすることがより好ましく、10重量%以上にすることがさらに好ましい。上記の割合が1重量%未満である場合には、該単量体成分を重合して得られる吸水性樹脂を用いても、支持体(仮埋設物)を引き抜く作業の作業性をさらに向上させることができなくなるおそれがある。
【0077】
単量体成分としてエチレン性不飽和単量体を二種類以上併用する場合における、より好ましい組み合わせとしては、例えば、アクリル酸ナトリウム等の(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩とアクリルアミドとの組み合わせ、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩とメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの組み合わせ等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0078】
上記の単量体成分を重合することにより、吸水性樹脂が得られる。単量体成分の重合方法、つまり、吸水性樹脂の製造方法は、特に限定されるものではない。
【0079】
また、吸水性樹脂の平均分子量や形状、平均粒子径等は、水硬性組成物の組成やアルカリ水のpH、シート状基材との組み合わせ、作業環境等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、平均粒子径が2,000μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下である吸水性樹脂を用いることがより望ましい。特に好ましい平均粒径は30μm以下である。該平均粒子径の吸水性樹脂を用いることにより、例えば樹脂溶液(後述する)における吸水性樹脂の分散性または混合性が良好となるので、その取り扱い性がより一層向上すると共に、シート状基材表面に樹脂層を容易に形成することができる。また、単位面積当たりの樹脂層に含まれる吸水性樹脂の量を、均一な状態で多くすることが容易で付着防止性能を更に向上させることができる。さらに、吸水、膨潤時における吸水性樹脂の脱落も抑制し付着防止性の低下を防ぐことができる。
【0080】
該樹脂層が吸水性樹脂を含む場合には、シート状基材と水硬性組成物の硬化物との間に、水を吸水して膨潤した含水ゲル層が形成される。この吸水性潤滑層の吸水性樹脂とアルカリ水可溶性樹脂からなる樹脂層を支持体と水硬性組成物の間に配すると、支持体(仮埋設物)と水硬性組成物の硬化物との間に、膨潤した吸水膨潤した含水ゲル層を形成することができるので、両者の付着をより一層抑制することができる。これにより、支持体(仮埋設物)を水硬性組成物の硬化物から引き抜く際には、膨潤したゲル層が潤滑効果を発揮することによって、該支持体(仮埋設物)が滑り易くなる。従って、支持体(仮埋設物)を水硬性組成物の硬化物から引き抜く作業における労力(引張力)をより一層低減することができるので、該作業の作業性を向上させることができる。さらに、該ゲル層を乾燥させることにより、支持体(仮埋設物)と水硬性組成物の硬化物との間に僅かな隙間を形成することができるので、上記作業の作業性をさらに一層向上させることができる。
【0081】
アルカリ水可溶性樹脂と吸水性樹脂とを併用(混合)する場合における両者の割合、即ち、樹脂層におけるアルカリ水可溶性樹脂と吸水性樹脂との割合は、両者の組成や組み合わせ、作業環境等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、吸水性樹脂の吸水膨潤性と付着性(非脱落性)の両者を満足させる観点から、重量比で1/99〜99/1の範囲内がより好ましく、10/90〜90/10の範囲内がさらに好ましく、25/75〜75/25の範囲内が特に好ましい。
【0082】
また、シート状基材に対する樹脂層の割合、即ち、シート状基材の単位面積当たりに対するアルカリ水可溶性樹脂および吸水性樹脂の付着量は、両者の組成や組み合わせ、作業環境等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、上記付着防止性とシート基材への塗布生産性の両者を満足させる観点から、1g/m2 〜10,000g/m2 の範囲内がより好ましく、10g/m2 〜1,000g/m2 の範囲内がさらに好ましく、20g/m2 〜500g/m2 の範囲内が特に好ましい。尚、シート状基材100重量部に対するアルカリ水可溶性樹脂および吸水性樹脂の割合は、上記付着防止性とシート基材への塗布生産性の両者を満足させる観点から、1重量部〜10,000重量部の範囲内がより好ましく、10重量部〜1,000重量部の範囲内がさらに好ましく、20重量部〜500重量部の範囲内が特に好ましい。
【0083】
少なくとも、アルカリ水可溶性樹脂と吸水性樹脂とを混合して得られる塗布材料を、シート状基材に塗布することにより付着防止性に優れた付着防止材が得られる。
【0084】
また、このアルカリ水可溶性樹脂と吸水性樹脂とを混合して得られる塗布材料は、塗布型の付着防止材としても使用される。本発明において、塗布型の付着防止材としては少なくとも吸水性樹脂を含んでいれば特に限定されないが、少なくとも、アルカリ水可溶性樹脂と吸水性樹脂とを含む塗布型の付着防止材が付着防止性の観点から特に好ましい。塗布型の付着防止材は、シート状の付着防止材では被覆し難い、凹凸のある箇所や狭い隙間の被覆(塗布)に有効である。本発明における支持体はボルト等の接続材の突起部分が存在するが、この接続部分を上記塗布型の付着防止材で塗布して被覆することが好ましい。
【0085】
シート状基材表面または支持体表面に樹脂層を形成する方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、アルカリ水可溶性樹脂と吸水性樹脂とを併用する場合においては、両者を有機溶剤や水等の分散媒に分散(または溶解)してなる分散液(樹脂溶液)をシート状基材表面または支持体表面に、噴霧(スプレー)する方法;樹脂溶液を刷毛塗り、またはローラを用いて塗布する方法;シート状基材に樹脂溶液を含浸させる方法;等を採用すればよい。或いは、アルカリ水可溶性樹脂を含む溶液または分散液をシート状基材表面または支持体表面に噴霧または塗布した後、該表面に吸水性樹脂を均一に撒布し、さらにこの上に該溶液または分散液を噴霧または塗布する方法;等を採用することもできる。上記例示の方法のうち、アルカリ水可溶性樹脂と吸水性樹脂とを有機溶剤や水等の分散媒に分散(または溶解)してなる分散液(樹脂溶液)をシート状基材表面または支持体表面に、噴霧(スプレー)または塗布する方法が、作業上並びに製造上、容易であるので、より好ましく、シート状基材表面に塗布する場合は特に上下のローラーのクリアランス調整で付着量をコントロールしながら連続的に塗布加工する方法が特に好ましい。シート状基材または支持体表面に塗布された該分散液等は、必要に応じて乾燥させればよい。これにより、シート状基材表面(外面および/または内面)または支持体表面に樹脂層が形成される。尚、吸水性樹脂を用いない場合には、上記方法において吸水性樹脂を分散する工程や、吸水性樹脂を撒布する工程を省略すればよい。
【0086】
そして、付着防止材においては、支持体(仮埋設物)を被覆した状態において外側となる面に、上記樹脂層が形成されていることがより好ましい。つまり、水硬性組成物層の側に吸水性潤滑層が配される様にすることが特に好ましい。また、疎水性潤滑層を含む付着防止材の場合は支持体側に疎水性潤滑層が配される様にし、水硬性組成物層の側に吸水性潤滑層が配される様にすることが特に好ましい。これにより、支持体(仮埋設物)を引き抜く作業をより一層容易に行うことができると共に、例えば、アルカリ水に溶解したアルカリ水可溶性樹脂が支持体(仮埋設物)に付着することが少なくなるので、引き抜いた支持体(仮埋設物)の表面を、綺麗な状態に保つことができる。
【0087】
アルカリ水可溶性樹脂と吸水性樹脂とを含む樹脂溶液の調製方法は、特に限定されるものではない。また、上記有機溶剤としては、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンゼン、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の、多価アルコールおよびその誘導体;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。樹脂層の膜厚は、10μm程度あれば充分であるが、吸水性樹脂の粒子径等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0088】
上記樹脂層におけるアルカリ水可溶性樹脂は、雨等の中性域または酸性域のpHを示す水と接触しても容易に溶解しない。つまり、アルカリ水可溶性樹脂は耐水性に優れており、中性域または酸性域のpHを示す水と接触しても損傷しない。従って、作業中に降雨等があっても、性能を損なうことがない。また、構造体を施工する際においては、作業現場で支持体(仮埋設物)を付着防止材で被覆することができるが、例えば、支持体(仮埋設物)を付着防止材(被覆材)で予め被覆しておき、該被覆された支持体(仮埋設物)を作業現場に野積みすることもできる。つまり、作業現場の状況に応じて、適宜、作業の簡便化、合理化を図ることができるので、構造体を迅速に施工することができる。さらに、必要に応じて、上記樹脂層の表面に、耐水性付与剤からなる耐水性被膜を形成(いわゆるトップコート)してもよい。該耐水性付与剤としては、例えば、ワックス、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、上記アルカリ水可溶性樹脂等が挙げられる。
【0089】
一方、アルカリ水可溶性樹脂は、アルカリ水と接触すると溶解する。つまり、樹脂層は、水硬性組成物と接触したときにアルカリ水可溶性樹脂が溶解を開始し、水硬性組成物と付着防止材との間に、例えば、膨潤した吸水性樹脂のゲル層を形成するようになっている。従って、支持体(仮埋設物)を水硬性組成物の硬化物から引き抜く作業の作業性を改善することができる。
【0090】
アルカリ水可溶性樹脂は吸水性樹脂を支持体表面やシート状基材表面に付着させる接合材料としては最適であるが、もう一つの最適な接合剤として
塗膜剛性度が1000(mgf){N}以下、好ましくは700(mgf){N}以下、より好ましくは500(mgf){N}以下、さらに好ましくは300(mgf){N}以下の樹脂が挙げられる。塗膜ガーレー剛性度が1000(mgf){N}以下の樹脂は優れた柔軟、伸縮性によって吸水性樹脂の吸水膨潤を阻害しない特徴を有しており、吸水性樹脂の脱落も抑制することができる。各種の塗膜ガーレー剛性度が1000(mgf){N}以下の樹脂の中でも塗膜ガーレー剛性度が500(mgf){N}以下の天然ゴム樹脂が接合性能、付着防止性、経済性の観点から好ましい。特に好ましい付着防止材は、少なくとも、塗膜ガーレー剛性度が1000(mgf){N}以下の樹脂を含む接合剤と吸水性樹脂とを含む付着防止材である。付着防止材の形態は、シート状と塗布型(液状)などの形態がある。塗膜ガーレー剛性度が1000(mgf){N}以下の樹脂の塗布方法、塗布量、配合量などの諸条件は基本的に上記アルカリ水可溶性樹脂の条件と同じである。
【0091】
本発明にかかる疎水性潤滑層は、少なくとも疎水性潤滑剤を含んだ潤滑層であれば特に制限はされない。
【0092】
該疎水性潤滑剤は、支持体(仮埋設物)を水硬性組成物の硬化物から引き抜くまたは分離する際に潤滑効果を発揮することができるものであればよく、特に制限されるものではない。
【0093】
該疎水性潤滑剤としては、具体的には、例えば、ワックス、グリース、タール、アスファルト、油脂・油剤等が挙げられる。
【0094】
疎水性潤滑剤としては半固形状の潤滑剤が好ましい。半固形状とは混和ちょう度が3から385である状態で、好ましい疎水性潤滑剤としては、混和ちょう度が3から385であり、より好ましくは5から250であり、さらに好ましくは10から170である疎水性半固形状潤滑剤である。混和ちょう度が3未満だと潤滑性が低下し鋼材に対する粘着力も低下し脱落が起こり易くなる。さらに溶融に時間がかかり溶融塗布が煩雑になるという問題が生じる。また、混和ちょう度が385を超えると液ダレが生じ周辺を汚染し粘着力も低下する問題が生じる。尚、混和ちょう度はJIS K2524の試験方法またはJIS K2560の試験方法により求められる。
【0095】
ワックスは、水に不溶性の1価または2価の高級アルコール類と脂肪酸とのエステルであると化学的に定義されるが、具体的には、例えば、木ろう、綿ろう等の植物ろう;マッコウ鯨油、ミツろう、羊毛ろう等の動物ろう;ツチ油、モンタンろう、オゾケライト、石油ワックス、パラフィンろう、微晶ろう、ペトロラタム;等の液体状または半固形状、固体状の各種ろうが挙げられるが、特に限定されるものではない。上記例示のワックスのうち、半固形状のワックスが、潤滑性、塗布加工性、支持体と付着防止材との密着性(粘着性)の観点から、より優れているので好ましい。さらに、半固形状の石油ワックスが特に好ましい。
【0096】
また、半固形状のワックスは、一般に鉱油を配合して得られるが、ワックスと鉱油との重量配合比がワックス:鉱油=40:60から60:40までの範囲つまり、ワックスが40重量%を超え、60重量%未満のものが、潤滑性、塗布加工性、支持体と付着防止材との密着性(粘着性)の観点から特に好ましい。ワックスの重量%が40重量%以下であると、30℃付近の常温において粘性が低下し液状に近づき(流動化)密着力が弱くなったり、塗布加工時に液ダレの問題が生じる場合がある。また、60重量%以上であると、5℃以下の低温環境下において、固くなり付着防止材の支持体への被覆に支障をきたしたり、密着性が低下する場合がある。
【0097】
また、上記ワックスには鉱油の他にポリブタジエンやポリエチレンなどの各種添加剤を添加しても良く、例えば、ワックスと鉱油を合わせた全量に対して1重量%から20重量%の範囲で添加することで密着力向上などの性質の改善を行なうことができる。
【0098】
グリースは、鉱油に脂肪酸金属塩を混和して得られる半固形状の潤滑剤であるが、具体的には、例えば、鉱油やシリコーン油(シリコーングリース)、ジエステル油系などの基油に、脂肪酸カルシウム塩や脂肪酸ナトリウム塩、脂肪酸リチウム塩等の脂肪酸塩からなる金属セッケン、ベントナイト系、シリカゲル系、銅フタロシアニン系、アリル尿素系などの増稠剤を混和してなるものが挙げられる。グリースは特に限定されるものではないが、30℃付近の常温において流動化せず、かつ、5℃以下の低温環境下においても、付着防止材の支持体への被覆に支障をきたさない固さ(柔かさ)の範囲のものが好ましい。
【0099】
タールとしては、具体的には、例えば、木タール、コールタール等が挙げられる。タールは、特に限定されるものではないが、30℃付近の常温において流動化せず、かつ、5℃以下の低温環境下においても、付着防止材の支持体への被覆に支障をきたさない固さ(柔かさ)の範囲のものが好ましい。
【0100】
油脂・油剤としては、具体的には、例えば、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸等の脂肪酸類;合成グリセリン、ポリグリセリン等の誘導体;分岐高級アルコール等の高級アルコール類;大豆油、アマニ油、ナタネ油、ヒマシ油、牛油、ラノリン、マーガリン、重油;等が挙げられる。油脂・油剤は、特に限定されるものではないが、30℃付近の常温において流動化せず、かつ、5℃以下の低温環境下においても、付着防止材の支持体への被覆に支障をきたさない固さ(柔かさ)の範囲のものが好ましい。
【0101】
これら潤滑剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。上記例示の潤滑剤のうち、半固形状のワックスおよびグリースが、潤滑効果に、より一層優れており、かつ、揮発成分の含有量が少ないので、より好ましい。さらに、半固形状のワックスは、溶融塗布加工が可能であり、耐久性(経時安定性)に優れており特に好ましい。
【0102】
また、疎水性潤滑層中には、吸水性樹脂および/または界面活性剤を含有させることもできる。この場合、例えば、支持体(仮埋設物)の引き抜き性をさらに向上させることができる。
【0103】
そして、疎水性潤滑剤層は、上記潤滑剤に加えて、必要に応じて、該潤滑剤の潤滑性を阻害しない程度で以て、例えば、防錆剤や酸化防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0104】
吸水性潤滑層シート裏面および/またはシート状基材表面に疎水性潤滑層を形成する方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、加熱溶融した液(加熱溶融液)または疎水性潤滑剤等を有機溶剤等の分散媒に分散してなる分散液(疎水性潤滑剤の分散溶液)を、吸水性潤滑層シート裏面および/またはシート状基材表面に噴霧(スプレー)する方法;疎水性潤滑剤の加熱溶融液または疎水性潤滑剤の分散溶液を刷毛塗り又はローラを用いて塗布する方法;吸水性潤滑層シートまたはシート状基材に加熱溶融液または分散溶液を含浸させる方法;等を採用すればよい。上記方法の中で、加熱溶融した疎水性潤滑剤を上下のローラーのクリアランス調整で付着量をコントロールしながら連続的に塗布加工するという、ローラーを用いた方法が塗布加工性、生産性、製品精度に優れるので特に好ましい。
【0105】
疎水性潤滑剤の分散溶液を用いる場合の分散溶液の調製方法は、特に限定されるものではない。また、上記有機溶剤としては、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンゼン、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0106】
潤滑剤層の膜厚は、1μmから10,000μmの範囲が好ましく、10μmから5,000μmの範囲がより好ましく、100μmから2,000μmの範囲がさらに好ましい、300μmから1,000μmの範囲が特に好ましい。膜厚が10μm未満だと、水硬性組成物の硬化物と支持体との分離性、潤滑性が低下し、付着防止材の支持体への密着性も低下するので好ましくない。一方膜厚が10000μmを超えると、得られる付着防止材の重量や嵩が増大し取り扱い性や製造時の加工性が低下するので好ましくない。
【0107】
本発明にかかる疎水性潤滑層は、i)吸水性潤滑層の裏面(吸水性樹脂が付着していない面)および/または表面(吸水性樹脂が付着している面)、ii) 上記したシート状基材と同じ基材の表面および/または裏面となる面、iii)支持体表面からなる群より選ばれる少なくとも一つの面に塗布などにより形成される。
【0108】
このうち、例えば、支持体(仮埋設物)と水硬性組成物との付着防止性(引き抜き作業の容易性)や、作業性、塗布加工の生産性、経済性(作業にかかる費用)などから鑑みて、疎水性潤滑層は、吸水性潤滑層シートの裏面(吸水性樹脂が付着していない面)に形成させることが、より好ましい。
【0109】
吸水性潤滑層シート、シート状基材または支持体(仮埋設物)に対する疎水性潤滑剤の付着量、即ち、単位面積当たりに対する該潤滑剤の付着量は、吸水性潤滑層シート、シート状基材、支持体(仮埋設物)の表面の状態(凹凸等)、両者の組成や組み合わせ、作業環境等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、上記塗布加工性と上記密着性の両者を満足させる観点から、1g/m2 〜10,000g/m2 の範囲内が好ましく、10g/m2 〜5,000g/m2 の範囲内がより好ましく、100g/m2 〜2,000g/m2 の範囲内がさらに好ましく、300g/m2 〜1,000g/m2 の範囲内が特に好ましい。
【0110】
尚、シート状基材100重量部に対する潤滑剤の割合は、上記塗布加工性と上記密着性の両者を満足させる観点から、1重量部〜10,000重量部の範囲内がより好ましく、10重量部〜2,000重量部の範囲内がさらに好ましく、20重量部〜1,000重量部の範囲内が特に好ましい。
【0111】
本発明の付着防止材は、上記したように i)吸水性潤滑層となる吸水性潤滑層シートの少なくとも片面に疎水性潤滑層となる疎水性潤滑剤を塗布などにより形成させたもの、ii)シート状基材の少なくとも片面に疎水性潤滑剤を形成させた疎水性潤滑層シートと吸水性潤滑層シートを複合化したもの、iii)支持体表面に直接、疎水性潤滑剤及び吸水性潤滑層シートを交互に積層形成させたもの、などが好ましい形態として挙げられる。
【0112】
しかしながら、1)水硬性組成物と支持体との付着防止性(引抜き・分離性、安全性、支持体密着性)、2)支持体への被覆作業及び建て込み作業の簡便化、3)付着防止材の製造加工性、4)経済性、などを鑑みた結果、吸水性潤滑層シートの吸水性樹脂が付着していない裏面に疎水性潤滑剤を形成させた付着防止材が特に好ましい。
【0113】
支持体(仮埋設物)を付着防止材(被覆材)で被覆する際には、一つの支持体(仮埋設物)に対して一つの付着防止材(被覆材)を用いることが望ましいが、必要に応じて、一つの支持体(仮埋設物)に対して二つ以上の付着防止材(被覆)を用いることもできる。従って、支持体(仮埋設物)を付着防止材(被覆材)で被覆する方法として、例えば、支持体(仮埋設物)をシート状に形成された二枚の付着防止材(被覆材)で貼り付ける方法等を採用することもできる。尚、本発明において「被覆」とは、必ずしも被覆材で支持体(仮埋設物)が見えなくなるように覆い隠すことではなく、例えば、支持体(仮埋設物)を水硬性組成物の硬化物から容易に引き抜くことができる程度に、つまり、両者の付着を抑制することができる程度に、支持体(仮埋設物)を付着防止材(被覆材)で覆うことを示している。
【0114】
支持体(仮埋設物)を付着防止材(被覆材)で被覆する方法としては、具体的には、例えば、縫製加工などにより袋状若しくは筒状に形成された付着防止材(被覆材)に支持体(仮埋設物)を挿入する方法;袋状若しくは筒状に形成された付着防止材(被覆材)を支持体(仮埋設物)上部から被せる方法;支持体(仮埋設物)をシート状に形成された付着防止材(被覆材)で包み込む方法;支持体(仮埋設物)に付着防止材(被覆材)を合わせ、挟み付けるものやバンドなどの固定治具等を用いて固定する方法;
疎水性潤滑層の密着性(粘着性)を利用してシート状の付着防止材を貼り付ける方法;親水剤を含む塗布型の付着防止材を支持体表面に塗布する方法等を採用することができるが、特に限定されるものではない。
また、支持体(仮埋設物)を付着防止材(被覆材)で被覆する際には、支持体(仮埋設物)の形状に沿うようにして付着防止材(被覆材)を被覆させることがより好ましい。これにより、被覆した支持体を建て込む(埋設する)際の位置決め精度(打ち込み精度)がより向上する。例えば、より作業を簡便にかつ正確に行なう観点から、袋状若しくは筒状に形成された付着防止材(被覆材)に支持体(仮埋設物)を挿入し、付着防止材が支持体(仮埋設物)の形状に沿うようにするために付着防止材の袋若しくは筒の内面に形成している疎水性潤滑層の密着性(粘着性)を利用して密着させる方法が好ましい。
【0115】
この方法において、具体例としては、クレーンなどで吊り上げた支持体の下部から、内面に粘着性半固形状潤滑剤(グリース状ワックス)が塗られた袋状若しくは筒状の付着防止材を履かせ(靴下を履かせる要領)、さらに付着防止材を吊り上げて支持体全体を被覆し、次に一旦該支持体を寝かせてローラーを用いたり足で踏みつけて付着防止材を支持体表面に疎水性潤滑層の密着性(粘着性)を利用して密着させる方法が、より好ましい方法として挙げられる。付着防止材を支持体表面に密着させる方法としては、足の底(踏み付け)や足のインサイド面またはアウトサイド面で擦り付ける方法が作業性の観点から特に好ましい。
【0116】
また、該支持体を吊り下げた状態のままで特殊なローラー治具で付着防止材を密着させても良い。
【0117】
また、ローラーなどを用いて人為的に密着させるのではなく、建て込み時などの水硬性組成物の水圧で自然に密着させる方法も好ましい方法である。
【0118】
尚、付着防止材(被覆材)を袋状若しくは筒状に形成する方法としては、具体的には、例えば、2つに付着防止材を合わせてその端部を接着剤を用いて接着する方法;ヒートシールによって、その端部を融着させる方法;その端部を縫い合わせる方法;針金や紐等で縛る方法、等の種々の方法を採用することができる。このように特に限定されるものではないが、製品の強度の観点から縫い合せる縫製加工が特に好ましい。
【0119】
また、本発明の付着防止材の好ましい形態としては、上記したように、吸水性潤滑層シートの吸水性樹脂が付着していない裏面に疎水性潤滑剤を形成させた付着防止材である。(図5)
この2つの付着防止材の裏面(疎水性潤滑層が形成した面)どうしを合わせた付着防止材が特に好ましい形態である(図6)。単に裏面に疎水性潤滑剤が形成した付着防止材製品は、疎水性潤滑層のべとつき(粘着性)が製造、保管、輸送、作業時で問題となるため、離型紙などのカバー紙が必要となる。これに対して、この裏面どうしをあわせた付着防止材は上記離型紙を不要にすることができ、現場での離型紙の廃棄処理を軽減することができる。また、付着防止材を袋状または筒状に加工する場合は、2枚の付着防止材シートを貼り合わせて、その合わせた2つのシートの両サイドを例えば縫製することで得られるが、裏面どうしを貼り合わせた付着防止材は、この合わせ工程と縫製工程の2工程のうち、合わせ工程を省略することができるため生産性を向上させることができる。また、吸水性潤滑層と疎水性潤滑層とを複合化する付着防止材の製造(加工)方法において、例えば、吸水性樹脂が基材表面に付着した吸水性潤滑層シートの裏面に半固形状ワックスなどの疎水性潤滑層を塗布加工する際に、その塗布加工と同時に別の吸水性潤滑層シートの裏面を貼り合わせていく加工方法が、塗布加工工程と貼り合わせ工程とを同時に行なうことができ工程短縮による生産性を向上させるので特に好ましい。
【0120】
支持体(仮埋設物)を付着防止材(被覆材)で被覆する時期は、特に限定されるものではなく、作業現場に支持体(仮埋設物)を運び込むまでの間の適当な時期であってもよく、作業現場で支持体(仮埋設物)を保管している間の適当な時期であってもよく、支持体(仮埋設物)を水硬性組成物と接触させる(埋設する)作業にかかるまでの間の適当な時期であってもよい。つまり、支持体(仮埋設物)は、水硬性組成物と接触させる(埋設する)時点で、付着防止材(被覆材)で被覆されていればよい。
【0121】
また、袋状若しくは筒状に形成された付着防止材(被覆材)を用いる場合においては、該付着防止材(被覆材)は、水硬性組成物と接触させる(埋設する)時点で、これら形状に形成されていればよい。
【0122】
支持体(仮埋設物)、付着防止材(被覆材)で被覆された支持体(仮埋設物)は、作業現場に野積みすることができるので、保管に手間がかからない。
【0123】
また、作業現場において、例えば、支持体(仮埋設物)表面に疎水性潤滑剤層を予め形成しておき、施工直前に疎水性潤滑剤の粘着力を利用して吸水性潤滑層シートを貼り付けることもできる。つまり、作業現場の状況に応じて、適宜、作業の簡便化、合理化を図ることができるので、迅速に施工することができる。
【0124】
また、裏面どうしを貼合わさず疎水性潤滑層が露出する付着防止材を使用する場合は、潤滑剤層がべとついたり、他のものに付着することを防止するために、必要に応じて、該潤滑剤層の表面に、被膜として紙やフィルムを積層することができる。上記の紙、フィルムとしては、具体的には、例えば、剥離剤が塗布された離型紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂;セロハン等の再生セルロース;等からなるフィルムが挙げられるが、潤滑剤の潤滑性を阻害しないフィルムであればよく、特に限定されるものではない。
【0125】
接続支持体または支持体(仮埋設物)を付着防止材(被覆材)で被覆する方法としては、より具体的には、例えば、図1(a)に示すように、クレーン6を用いて支持体(仮埋設物)2を吊り上げると共に、該クレーン6の先端部に設けられた滑車5に通した紐3を付着防止材(被覆材)1に取り付け、次いで、袋状若しくは筒状に形成された付着防止材(被覆材)1を、例えば作業員4が紐3を引っ張ることにより、下方から履かせるようにして支持体(仮埋設物)2に挿入した後、同図(b)に示すように、作業員4が紐3をさらに引っ張ることにより、該付着防止材(被覆材1)を引き上げて被覆し固定する方法、または、作業員に代わって例えばクレーン車に装備されているもう一つのクレーン(親フック)やウインチなどの吊り上げ機械で引き上げる方法、さらに滑車やロープも使用せず、例えばクレーン車に装備されているもう一つのクレーン(親フック)などの吊り上げ機械のフックに直接に付着防止材を取り付けて直接機械引き上げをする方法;
筒状に形成された付着防止材(被覆材)を上方から被せるようにして支持体(仮埋設物)に挿入し上端部を固定した後、クレーンを用いて支持体(仮埋設物)を吊り上げ、次いで、付着防止材(被覆材)の下端部に取り付けられた紐を例えば作業員が引っ張ることにより、該付着防止材(被覆材)を引き下げて被覆する方法;
袋状若しくは筒状に形成された付着防止材(被覆材)を地面等に載置した後、該付着防止材(被覆材)に支持体(仮埋設物)を挿入し、次いで、付着防止材(被覆材)を引き上げて被覆し固定する方法;
支持体(仮埋設物)を地面等に載置した後、該支持体(仮埋設物)に袋状若しくは筒状に形成された付着防止材(被覆材)を挿入し、次いで、支持体(仮埋設物)を吊り上げると共に付着防止材(被覆材)を引き上げて被覆し固定する方法;図2(a)に示すように、シート状に形成された付着防止材(被覆材)10の上に支持体(仮埋設物)2をクレーン6等を用いて載置した後、同図(b)・(c)に示すように、該付着防止材(被覆材)10で支持体(仮埋設物)2を包み込み、必要であれば次いで、同図(d)に示すように、付着防止材(被覆材)10を固定治具11を用いて固定する方法;
支持体(仮埋設物)に、シート状の付着防止材を貼り付ける方法、好ましくは吸水性潤滑層/疎水性潤滑層/吸水性潤滑層の3層から構成される付着防止材を貼りつける方法;
蛇腹状に折り畳んだ付着防止材(被覆材)の間に支持体(仮埋設物)を挿入または挟み込んで固定する方法;
支持体(仮埋設物)の上部および下部に付着防止材(被覆材)の両端部を固定する方法;
支持体(仮埋設物)の上部および下部に付着防止材(被覆材)の両端部を固定すると共に、該付着防止材(被覆材)の中央部を針金(番線)や紐、ベルト、ガムテープ等を用いて固定する方法;
支持体(仮埋設物)の上部に被覆材の一部分を固定し、該付着防止材(被覆材)の残りの部分を支持体(仮埋設物)に沿って垂らす方法;
等を採用することができるが、特に限定されるものではない。
【0126】
上記例示の方法のうち、袋状若しくは筒状に形成された付着防止材(被覆材)を下方から履かせるようにして吊り上げ、支持体(仮埋設物)を被覆(挿入)する方法、支持体(仮埋設物)をシート状に形成された付着防止材(被覆材)で包み込む方法並びに、支持体(仮埋設物)に付着防止材を貼りつける方法が、より好ましい。さらに、袋状若しくは筒状に形成された付着防止材(被覆材)を下方から履かせるようにして吊り上げ、支持体(仮埋設物)を被覆(挿入)する方法が被覆作業の作業性に優れているのでさらに好ましい。また、この吊り上げ被覆作業において、滑車やロープも使用せず、例えばクレーン車に装備されているもう一つのクレーン(親フック)などの吊り上げ機械のフックに直接に付着防止材の吊り紐(取っ手)を接続させて直接機械吊り上げをする方法が、吊り上げ労力(人手)の軽減ができることや、滑車、ロープの準備・取付け作業を省けることから、作業時間の短縮をさらに実現するので特に好ましい。
【0127】
但し、支持体を吊り上げるスペースがなかったり近くに民家などがあって吊り上げ被覆ができない場合や撤去する支持体の長さが短い場合など撤去条件によっては、支持体(仮埋設物)に付着防止材を貼りつける方法が最も好ましくなる。例えば、吸水性樹脂シート/半固形状潤滑剤層/吸水性樹脂シートの3層から構成された付着防止材の2枚の吸水性樹脂シートを開き剥がしながら支持体の表面に半固形状潤滑剤の粘着性を利用して密着させる(貼りつける)方法が特に好ましい。例えば下記の作業手順で貼り付け被覆することが最適である。
【0128】
1.枕木の上にH形鋼をウエッブ(溝)が上を向く様に(『H』状)寝かせる
2.付着防止材シートロールの端部の重なっている2枚の布(吸水性潤滑層シート)を30cm程度剥がす
3.剥がした布の密着剤面が下に来る様にしてこの付着防止材シートロール をH形鋼先端部の上に載せる
4.剥がした布の端部を作業員が持ち固定する。
【0129】
また、剥がした布を左右のH鋼フランジの角で少し(3cm程度)破り、布をH鋼フランジの角に引っかけて端部を固定してもよい。
【0130】
5.もう一方の剥がした布を別の作業員がH鋼に沿って引っ張る
6.上記の様に布を引っ張ることで密着している2枚の布は剥がされH鋼を覆う
7.H形鋼を覆った後に、布の中心線がH形鋼と重なる様に布を整える
8.布の中心線を足で踏みつけ、布をH形鋼ウエッブ表面に貼り付ける(踏み付け密着)
9.H形鋼ウエッブのコーナー部の布を空気がかまない様に足で踏みつける
10.H形鋼フランジの内側部の布を足のアウトサイド面で擦り付けて貼り付ける(足擦り密着)
11.H形鋼フランジの外側部の布を足のインサイドまたは足の裏で擦り付けて貼り付ける
12.クランプを使ってH形鋼を裏返す
13.裏返したH形鋼に付着防止材シートを上記の作業と同様にして貼り付ける(両面被覆)
14.H形鋼先端部に余った布は適当に切り目を入れ(2個所)H形鋼ウエッブ及びフランジ内側に折り込み、金属製の固定具(バインダークリップ等)で固定する
※上部の接続支持体に貼り付ける場合は14.の作業は不要。
※必要であれば、上記作業後にバインダークリップ等の固定具やガムテープなどで補助する。
【0131】
尚、上記付着防止材シートロールは、現場で長尺(例えば50m程度)の付着防止材シートロールから必要な長さ分(例えば支持体(H形鋼)長さの1/2)を裁断し、この付着防止材シートを再びロール状に巻き取ったものを用いても良いし、事前に所定の長さに巻かれた付着防止材シートロールを用いても良い。
【0132】
上記の様に接続支持体または支持体に付着防止材を貼り付ける場合は、手で腰をかがめながら貼り付けるよりも、上記の踏み付け密着または足で行なう擦り付け密着の方法で行なうことが、より短時間でしかも軽い労力で貼り付けることが出来るので特に好ましい。
【0133】
また、付着防止材(被覆材)を支持体(仮埋設物)に固定する方法は、特に限定されるものではない。上記固定治具11としては、具体的には、例えば、洗濯挟み、
金属製バインダークリップ等のクリップ、
ゴムホースまたは発泡断熱材等のチューブ・ホース類の長さ方向に切り目が入ったバインダー(挟み物)、針金(番線)、紐、ベルト、ガムテープ、切り目を入れた(紙)カップ等が挙げられ特に限定されるものではないが、作業の簡便さの観点からゴムホースまたは断熱発泡体等のチューブ・ホース類の長さ方向に切り目が入ったバインダー(挟み物)が好ましく、中でも長さ方向に切り目が入ったチューブ状の発泡断熱材(保温材)が特に好ましい。この発泡断熱材(保温材)は、単に付着防止材を固定する働きだけではなく、付着防止材を支持体(仮埋設物)に被覆する際または水硬性組成物と接触する際(建て込む際)に、発泡断熱材のクッション性により支持体(仮埋設物)の鋭利な角部で付着防止材を破損させないようにする働きがある。従って、発泡断熱材(保温材)で固定することが特に好ましい。また、発泡断熱材(保温材)の取付け位置は、部分的であってもよく、例えば、筒状の付着防止材を被覆する直前の、吊り上げた支持体の下部の角部にのみ取り付けることが、作業性、経済性の観点から特に好ましい。
【0134】
また、取り付けた発泡断熱材(保温材)をより強固に固定するための補助バインダー(挟み物)を発泡断熱材の上からさらに挟みつけることが施工時に発泡断熱材の脱落を防止でき特に好ましい。
【0135】
また、付着防止材を支持体(仮埋設物)に被覆する際の上記破損を防止する方法に関しては、上記の発泡断熱材を用いる方法の他に、滑らかな曲線を持った大きなキャップで例えば吊り上げたH形鋼の底部全体を覆う方法やペーパーバックで同様に覆う方法などが挙げられる。この滑らかな曲線を持ったキャップも好ましい破損防止材料である。この滑らかな曲線を持ったキャップは、例えば吊り上げたH形鋼(支持体)底部の角全体を覆う大きさと、被覆時の抵抗力に耐え得る強度及び引っかかりのない形状を持っていれば良い。
【0136】
袋状に加工した付着防止材(被覆材)の実施する形態は、例えば、図3に示すような形態が挙げられる。図3において、袋状の付着防止材21の底部に対して、第2の補強材としての先端カバー14を取り付けると、より袋(付着防止材21)の底部の構造を強化することが可能となる。この先端カバー14は、補強帯とともに付着防止材21に縫い付けておくことが好ましい。また、図3に示すように、先端カバー14の上端を接着止め14aにて付着防止材21に固定することもできる。この先端カバー14の素材としては特に限定されるものではなく、上述したシート状基材に用いられる材質と同様のものを好適に用いることができる。中でも、強度の観点からフェルトなどが好ましい。
【0137】
また、上述したように袋状または筒状の形状に加工するには、袋または筒の周囲を縫い合わせる方法が好ましい。このとき、袋または筒の周囲は補強帯により補強しておくことが好ましい。たとえば、図3に示すように、長方形状の袋状の形状に加工された付着防止材21の四辺の周囲を所定の幅w0 を有するベルト状の補強帯15を縫い合わせて補強し、底部についても補強帯15aを縫い合わせて補強して、袋(付着防止材21)の形状をより一層安定化させることができる。
【0138】
また、別のタイプとして、付着防止材21の底部(補強帯15aの部分)の縫製を行なわず、さらに補強帯15aや先端カバー14も無くしたところの筒状の付着防止材は、上記疎水性潤滑層の密着効果による付着防止材の支持体への密着をより完全なものにできることと、上記縫製加工を簡略化できることから、より好ましい。
【0139】
尚、上記補強帯15および15aの材質および幅w0 のサイズは特に限定されるものではない。たとえば、本実施の形態では、補強帯15および15aとしてw0 =2.5cmのポリエステル製ベルトまたは5cmのポリプロピレン製ベルトを用いている。 上記補強帯15および15aは、袋または筒(付着防止材21)の周囲に沿って縫い合わせられることが好ましいが、このときの縫い代の位置は特に限定されるものではなく、たとえば、本実施の形態では、袋の外側から見て、1cm程度内側となるように位置している。
【0140】
また、上記補強帯15における袋(付着防止材21)の開口部側の端部は、そのまま延長した状態で吊りひも16として形成しておくことができる。この吊りひも16の長さl0 は特に限定されるものではなく、たとえば、本実施の形態ではl0 =1m程度の長さである。この吊りひも16は、支持体(仮埋設物)に被覆する際に袋を吊り下げたり吊り上げたりする作業を行うために用いることができる。
【0141】
なお、上記吊りひも16の端部も、折り返し構造として補強しておくことが好ましい。たとえば、本実施の形態では、折り返し部の長さ=10cm程度として縫い合わせておくと、吊りひも16の端部の構造を強化できるため好ましい。
【0142】
袋状や筒状の形状に加工された付着防止材21の開口部には、図3に示すように、縛りひも17が設けられていることが好ましい。この縛りひも17で開口部を縛ることによって、支持体(仮埋設物)に対して袋(付着防止材21)を安定して取り付けることができる。同様に、折り返し構造となっている袋の底部にも縛りひも17を設けておくことが好ましい。これによって、支持体(仮埋設物)に対して袋をさらに安定して被覆することが可能となる。
【0143】
上記縛りひも17のうち、開口部に設けられるものは、たとえば、図3に示すように、開口部の補強帯15に沿って配置されている。すなわち、縛りひも17は、長方形状の袋において長手方向に直交するように位置している。
【0144】
一方、上記縛りひも17のうち、底部に設けられているものは、上記開口部に設けられているものと同様に、長方形状の袋の長手方法に直交するように位置している。ここで、この底部に設けられている縛りひも17は、図3に示すように複数本設けられていてもよい(本実施の形態では、図3に示すように2本)。このように縛りひも17が複数設けられていれば、袋(付着防止材21)を支持体(仮埋設物)に被覆する状態をより一層安定化させることができる。
【0145】
底部の縛りひも17は、上述した先端カバー14上に配設されることになるが、この縛りひも17の配設位置については、支持体(仮埋設物)の端部に対して袋の底部を安定して被覆することができれば特に限定されるものではない。たとえば、図3に示すように、先端カバー14が長手方向にH=3mの長さを有している形状である場合には、最底部からh=1mの位置に1本目の縛りひも17を配設し、最底部から2mの位置、すなわち、1本目の縛りひも17から見てh=1m離れた位置に2本目の縛りひも17を配設する手法が挙げられる。
【0146】
このとき、各縛りひも17を袋に備えさせる構成としては特に限定されるものではない。たとえば、本実施の形態では、袋(付着防止材21)の長手方向の周囲に沿って設けられている補強帯15に、複数のひも通しを設けておく構成が挙げられる。
【0147】
上記縛りひも17の長さは支持体(仮埋設物)に被覆した状態の付着防止材21を縛ることができる長さであれば特に限定されるものではないが、縛りひも17を縛るためには、好ましくは、ひも通しに通して袋に備えさせた状態で、該縛りひも17の両端部がそれぞれ30cm程度の長さを有していることが好ましい。
【0148】
たとえば、本実施の形態では、付着防止材21の幅W=1.4mであるが、支持体(仮埋設物)に上記付着防止材21を被覆した場合に、付着防止材21の内径幅Kは、K=1.3m以上となる。このとき、縛りひも17は、付着防止材21を縛ることができる長さでなければならないため、上記のように、両端部が30cm程度の長さを有していることが好ましい。
【0149】
なお、縛りひも17の材質は特に限定されるものではなく、支持体(仮埋設物)に対して袋(付着防止材21)を被覆することができるように縛るだけの強度があればよい。本実施の形態では、縛りひも17としては、通常よく用いられている丸ひもを
使用している。
【0150】
上記のような縛りひもは必要であれば用いた方が良いが、疎水性潤滑層の密着力で付着防止材が支持体に安定して密着し被覆できる場合には、縫製加工の簡略化(生産性)の観点から縛りひもが無い方が、より好ましい。
【0151】
本発明にかかる付着防止材を支持体(仮埋設物)に被覆する際には、H形鋼などの支持体(仮埋設物)の下側となる端部に対して、付着防止材破損防止用装着具(以下、装着具とする)を装着する被覆方法を用いることが好ましい。この装着具は、少なくとも緩衝効果を示す材質、すなわち緩衝材を備えてなるものである。
【0152】
この装着具を支持体(仮埋設物)の下側となる端部に装着しておけば、支持体(仮埋設物)に対してさらに付着防止材を被覆する際に、装着具の緩衝効果により支持体(仮埋設物)の端部に付着防止材が引っ掛かるなどして該付着防止材が破損するようなことがない。それゆえ、付着防止材が有する効果、すなわち、支持体(仮埋設物)を容易に引き抜く(分離)効果をより一層向上させることができる。
【0153】
さらに、上記装着具を装着しない状態で付着防止材を被覆した支持体(仮埋設物)を、例えば、ソイルセメントが充填された掘削孔の中に打ち込んだ場合、底部の付着防止材が非常に破損し易くなる。すなわち、上記の場合では、支持体(仮埋設物)の重量やソイルセメントの圧力などにより支持体(仮埋設物)の下側の端部と付着防止材の底部とが激しく接触する上に、硬い金属からなる支持体(仮埋設物)の端部が剥き出しであるため、この端部と上記重量や圧力との効果により、付着防止材はより一層破損し易くなる。
【0154】
しかしながら、上記装着具を支持体(仮埋設物)の下側となる端部に装着しておけば、支持体(仮埋設物)の下側となる端部が剥き出しとならず、また、支持体(仮埋設物)の下側の端部にかかる単位面積当たりの重量やソイルセメントからの圧力を低減することができる。そのため、掘削孔への建て込み(打ち込み)の際の付着防止材の破損をより効果的に抑制することができる。それゆえ、付着防止材が有する効果をより一層向上させることができる。
【0155】
上記装着具の形状は、支持体(仮埋設物)の下側となる端部が剥き出しにならず、また、支持体(仮埋設物)の下側となる端部と付着防止材との間に設けられた際に緩衝材としての役割を果たすことができるものであれば特に限定されるものではない。しかしながら、上記装着具は、支持体(仮埋設物)の端部にはめ込むことによって装着できるような形状であることが特に好ましい。
【0156】
たとえば、本実施の形態では、図4(a)に示すように、少なくとも発泡体からなっている円筒形状で、さらに、切り込み部18aを有する装着具18を用いている。この装着具18は、図4(b)に示すように、切り込み部18aを支持体22であるH形鋼の端部へはめ込むだけで装着することが可能である。それゆえ、装着具18の装着が非常に容易であり、支持体(仮埋設物)22を掘削孔に打ち込む作業の煩雑化を伴うことがない。
【0157】
なお、上記装着具の装着においては、装着が煩雑化したり、装着のために特殊な設備が必要になるなどしてコストの上昇を招来したりするなどしない限り、はめ込みによる装着以外の種々の方法を用いても構わない。
【0158】
上記装着具の材質は、緩衝効果の得られる材質(緩衝材)であれば特に限定されるものではない。たとえば、割繊維不織布、カーペット、フェルト、ステッチボンド不織布などの不織布類;フラットヤーンの繊維織物、綿織物、麻織物、ポリプロピレンなどの合成樹脂織物などの織物類;ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ゴムフォームなどに対して独立または連続気泡を形成して得られる発泡体;ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エーテルゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、ネオプレン(クロロプレンゴム)、ブタンジエン−アクリロニトリル共重合体、天然ゴムなどのエラストマー;皮革、木材、防水加工を施した紙、厚紙などの天然物などを挙げることができる。
【0159】
本発明の付着防止材は、例えば、図5に示すように吸水性潤滑層と疎水性潤滑層とから構成される。
【0160】
また、本発明の他の付着防止材としては、吸水性潤滑層と疎水性潤滑層とが積層された構成のもので、例えば図6に示す様に疎水性潤滑層が2つの吸水性潤滑層に挟まれた構成のものである。
【0161】
本発明のかかる接続支持体は、複数の支持体が接続材を用いて接続された支持体であり、例えば図7に示す様に2つの支持体43をつなぎ合わせ、接続ボルト45と接続板46とを用いて接続されたものが挙げられる。
【0162】
また、本発明の付着防止材が接続支持体に被覆された状態としては、例えば図7に示す様に少なくとも一つの支持体43(H形鋼)に袋型又は筒型又は貼付け型の付着防止材41で被覆され、接続ボルト45と接続板46が存在する接続部分には塗布型の付着防止材42を塗ることにより被覆された状態を挙げることができる。また、支持体を除去(撤去)するときは、上記接続材を取り外して除去(撤去)される。
【0163】
上記の様に付着防止材は支持体に被覆するが、接続支持体撤去工法において、以下に示すタイミングで付着防止材を支持体に被覆することができる。
【0164】
i)接続前の支持体に被覆する。被覆後に被覆した支持体と他方の支持体とを接続する。
【0165】
ii)2つの支持体が接続された後に、所定の支持体の方を被覆する。
【0166】
尚、i)またはii)の何れの方法においても、接続部分に関しては、接続ボルトや接続鋼板などの部材の突起部ができるためワックス系潤滑剤や塗布型の付着防止材で塗布することが好ましい。中でも、付着防止性能の観点から、上記吸水性潤滑層の作製に用いた吸水性樹脂とアルカリ水可溶性樹脂又はと塗膜ガーレー剛性度が1000(mgf){N}以下の樹脂からなる塗布型の付着防止材を塗布することが特に好ましい。
【0167】
上記のタイミングは現場の事情に合わせて適宜選択される。
【0168】
以上のように、本発明の付着防止材を適用した場合には、例えば支持体(仮埋設物)を埋設するときに生じる衝撃力や引張力等の外力がかかって破損したとしても、付着防止材は疎水性潤滑層の密着性(再剥離など、融通のきく粘着性)の効果により支持体表面からの遊離が起こらず一部的な破損に抑えることができ支持体と水硬性組成物の硬化物との分離を極めて容易にすることができる。
【0169】
また、疎水性潤滑層は、本来の潤滑効果を発揮し、吸水性潤滑層の極めて高い潤滑性と共に支持体と水硬性組成物との分離を容易にする。
【0170】
支持体(仮埋設物)を水硬性組成物の硬化物から引き抜く際には、その摩擦抵抗力を大きく低減することができる。つまり、引き抜く作業における労力(引張力)を低減することができ、該作業の作業性を向上させることができる。また、回収した支持体(仮埋設物)は、そのまま再利用することができる。
【0171】
また、上記の説明においては、支持体(仮埋設物)と水硬性組成物の硬化物との分離について例を挙げたが、本発明の付着防止材(被覆材)は、水硬性組成物の存在しない土壌に埋設される支持体(仮埋設物)に対しても適用することができる。つまり、支持体(仮埋設物)を土壌から引き抜く際の摩擦抵抗力を低減することができ、支持体(仮埋設物)を容易に引き抜くことができるようになる。
【0172】
また、以上述べてきた付着防止材の特徴(性能、作用、効果)から、本発明の付着防止材は、土留め壁用のH形鋼や鋼矢板などの仮埋設物とソイルセメントなどの硬化セメント組成物との付着を防止する最適な材料である。例えば、掘削孔内のソイルセメントミルク中に埋設するH形鋼を、本発明の付着防止材で被覆しておくことで、該土留め壁(ソイルセメント硬化体)からのH形鋼の引抜き回収を極めて容易かつ安全に行なうことができる。このように土留め壁の芯材としての役割を終えた後のH形鋼は、容易に引抜き除去できるので、その後の2次工事の障害となることがなく2次工事を容易にする。尚、土留め壁は、ビルやダム等の基礎(土台)工事、煙突工事、高速道路や鉄道等の橋脚工事、地下開発工事、地下鉄工事、トンネル工事、下水道工事、ボックスカルバート設置工事、現場打ちボックスカルバート設置工事、シールドマシーンが発進する立て溝(孔)の工事などで構築される。
【0173】
さらに、以上述べてきた付着防止材の特徴(性能、作用、効果)から、本発明の付着防止材は、建設現場で発生する建設発生土(泥状土)に水分とセメントなどの固化材を混合して調整される流動化処理土と鋼矢板などの仮埋設物との付着を防止する最適な材料である。例えば、上水管、下水管、電気線、電話線、ケーブル線、ガス管などのライフラインを通す、既製または現場打ちのボックスカルバートを地下に設置する工事において、土留め壁の鋼矢板とボックスカルバートとの間の埋め戻し箇所に流動化処理土を流し込む前に流動化処理土と接する鋼矢板の表面に本発明の付着防止材を貼りつけなどにより被覆しておくことで、埋め戻し硬化後の地盤から鋼矢板を極めて容易かつ安全に引抜くことができる。
【0174】
さらにまた、以上述べてきた付着防止材の特徴(性能、作用、効果)から、本発明の付着防止材は、ビルやダム等の建築物、煙突、橋脚、基礎(土台)工事、地下街、地下鉄、トンネル、下水道、ボックスカルバート、プレキャスト構造体などのコンクリート構造物を構築する際に用いられる型枠の離型材として最適である。水硬性組成物の硬化構造物と型枠との付着を防止する。中でも表面をスライドさせて離型する、型枠やシールド工法にさらに好ましく用いられる。
【0175】
さらにまた、以上述べてきた付着防止材の特徴(性能、作用、効果)から、本発明の付着防止材は、基礎埋め込み杭または現場打ち杭の杭頭の貧強度コンクリート(水硬性組成物)を除去するための分離材として最適である。該杭と水硬性組成物との付着を防止する。例えば、中空杭の内面や鉄筋籠(鉄筋)の表面に本発明の付着防止材を貼りつけなどで配することで、中空杭の内面や鉄筋籠(鉄筋)の表面と水硬性組成物の硬化構造物との付着を防止できる。また、特開平10−184003号公報に記載している、杭頭の貧強度コンクリートを除去するための栓体表面に、貼りつけなどで本発明の付着防止材を配することで、杭頭のコンクリート硬化後に該栓体をさらに容易に引抜き除去することができ貧強度コンクリートの除去をより簡単にする。さらに、特開平10−184002号公報に記載している、空隙を形成させるための栓体表面に本発明の付着防止材を貼りつけなどで配することで、コンクリート硬化後にコンクリート(水硬性組成物)に埋め込まれた該栓体の引抜き除去をさらに容易にすることができ空隙をより簡便に形成させる。
【0176】
【実施例】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
〔吸水性樹脂〕
市販のポリアクリル酸ナトリウム塩架橋体(アクアリックML−20、平均粒子径20μm、日本触媒製)を用いた。
〔アルカリ水可溶性樹脂の調製〕
アルカリ水可溶性樹脂を以下の方法で以て調製した。即ち、温度計、攪拌翼、還流冷却器、および滴下装置を備えた容量50Lの槽型反応器に、アクリル酸0.45kg、アクリル酸エチル2.4kg、メタクリル酸メチル0.15kg、重合開始剤である2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)12g、および、溶媒であるメチルアルコール3kgを仕込んだ。また、滴下装置に、アクリル酸1.05kg、アクリル酸メチル2.1kg、メタクリル酸メチル3.85kg、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)28g、および、メチルアルコール7kgからなる混合溶液を仕込んだ。
【0177】
上記のメチルアルコール溶液を窒素ガス雰囲気下、攪拌しながら65℃に加熱し、20分間反応させた。これにより、内容物の重合率を72%に調節した。続いて、内温を65℃に保ちながら、滴下装置から上記の混合溶液を2時間かけて均等に滴下した。滴下終了後、内容物を65℃でさらに3時間熟成させた。反応終了後、内容物にメチルアルコール10kgを混合することにより、アルカリ水可溶性樹脂の33重量%メチルアルコール溶液を得た。
【0178】
得られたアルカリ水可溶性樹脂の酸価は117mgKOH/gであった。また、該アルカリ水可溶性樹脂の示差走査熱量測定を行った結果、該アルカリ水可溶性樹脂は、ガラス転移温度を−80℃〜120℃の範囲内に2つ有していた。
〔疎水性潤滑剤〕
疎水性潤滑剤としては、半固形状潤滑剤(混和ちょう度30〜170)であるニグライダーTN−2を用いた。
【0179】
TN−2:日本グリース(株)製、融点75.6℃、チョウ度85、粘度17.0cSt/100℃、引火点280℃、うす茶褐色硬いペト状(半固形)
〔実施例1〕
(1)付着防止材の作製
(吸水性潤滑層の作製)
下記の条件で、基材の片面に下記アルカリ水可溶性樹脂と下記吸水性樹脂の混合樹脂溶液を塗布し吸水性潤滑層となるシート(吸水性樹脂シート)を作製した。尚、塗布面を表面とし、未塗布面は裏面とした。また、この吸水重量は自重の7倍であった。
【0180】
また、上記の、アルカリ水可溶性樹脂と吸水性樹脂の混合樹脂溶液は、塗布型の付着防止材でもあり、支持体(鋼板)の接続部分(凹凸部)に塗布される。
・基材は、幅1250mm、ポリエステル/レーヨン=60/40重量比、坪量160g/m2の織物基布を用いた。
・吸水性樹脂としては、上記の吸水性樹脂(略称:SAP)を用いた。
・吸水性樹脂を基材に付着させるバインダーとしては、上記調製のアルカリ水可溶性樹脂(略称:ASP)を用いた。
・ASPとSAPは混合し基材に塗布するが、この混合樹脂乾燥塗布量は100g/m2とし、ASP/SAP重量比は、50/50とした。
・樹脂塗布幅は1050mm、塗布長さは110mで行なった。これを半分に切断し55m巻を2本作った。
【0181】
上記吸水性潤滑層シートの裏面に上記半固形状潤滑剤を塗布し、それと同時にワックス塗布面の上から別の上記吸水性潤滑層シートの裏面を合わせて巻き取った。つまり2枚の吸水性潤滑層シート裏面で疎水性潤滑層である半固形状潤滑剤層が挟まれた3層構造の付着防止材を得た。
・疎水性潤滑層となる疎水性潤滑剤(疎水性粘着剤)としては、上記の粘着性を有する半固形状潤滑剤であるニグライダーTN−2を用いた。
・半固形状潤滑剤の塗布幅は900mm、塗布量は600~700g/m2とした。
・半固形状潤滑剤未塗布の両端は幅1050mmになるように切断し、仕上がり長さを約55mとした。
(2)試験用付着防止材の作製
上記の付着防止材を裁断して幅75mm、長さ125mmの付着防止材1を作製した。
(3)鋼板の建て込み
仮埋設物として用いられる下記鋼板の建て込みを以下の条件で行なった。
(使用接続支持体)
接続支持体である接続鋼板は、以下の様に作製した。
【0182】
幅70mm、長さ150mm、厚み0.8mmの2枚の鋼板を縦つなぎで接続した。
【0183】
上記2枚の鋼板の接続は、幅70mm、長さ50mm、厚み0.8mmのつなぎ鋼板を上記2枚の鋼板の継ぎ目が真ん中になる様に重ね合わせて、上部の鋼板とつなぎ鋼板との重ね部に穴を開けて貫通させ、下部の鋼板とつなぎ鋼板との重ね部にも穴を開けて貫通させて、その2つの穴にボルトを通して2枚(上下)の鋼板を接続した。
(建て込み)
以下の様にソイルセメントミルク中に接続鋼材を投入する建て込みを行なった。
【0184】
▲1▼上記付着防止材1の半固形状潤滑剤を介して貼り付いている2枚の吸水性潤滑層である吸水性樹脂シートを剥がす。これにより半固形状粘着剤が裏面に付着した吸水性樹脂シートが2枚でき、各々のシートが新たな付着防止材となり、付着防止材1−1と付着防止材1−2ができる。)
▲2▼接続鋼板の上部125mmに付着防止材1−1を疎水性潤滑層の粘着力を利用して貼付けた。
【0185】
▲3▼上記アルカリ水可溶性樹脂(ASP:25%メチルエチルケトン/メタノール溶液)中に上記吸水性樹脂(SAP)を添加混合した塗料型の付着防止材(混合樹脂溶液)を重ね合わせた接続部の全体にハケで塗布した。このときの混合樹脂乾燥塗布量は400g/m2とし、ASP/SAP混合重量比は、50/50とした。
【0186】
▲4▼次に接続鋼板を裏返し、上記▲2▼及び▲3▼の作業と同じ作業を行ない反対面の付着防止材1−2の貼付け及び重ね部の塗料型付着防止材の塗布を行なった。
【0187】
▲5▼セメントミルク中に上記の付着防止材が被覆した接続鋼板を垂直に建て込んだ(投入)。尚、ソイルセメントミルク配合は、水:セメント:ベントナイト:粘土=2518:582:60.3:1622であり、浸漬深さは275mmとした。
(4)H形鋼の引抜き
建て込み後3日間残置した後に上記接続鋼板のボルトの頭が存在する片面側を上部側のボルトが露出するまで硬化したセメントミルク層を掘り起こし(腹起こし)、上部側のボルトを除去した。
【0188】
次に掘り起こした空間部に粘土を充填(埋め戻し)し、下記の引抜機で引抜いた。その際の引抜荷重を測定した。
【0189】
引抜機は、JIS L 1096(一般織物試験方法)の引張試験方法(引張強さ)に基づく低速伸長引張試験機を使用して、引張速度20mm/minの条件で以て測定した。(単位:N(kgf))
(5)結果
結果としては、最大引抜荷重は3.92N(0.4kgf)で、鋼板単位表面積当たりの最大引抜力である最大付着強度は448N/m2(45.7kgf/m2)であった。引抜きが極めて容易であった。
【0190】
この結果から、実際の現場施工において、工期短縮(経済性向上)、作業安全性の向上、鋼材のリサイクル等を実現することが期待された。
【0191】
また、建て込み時において、この付着防止材は鋼板表面に密着しているので、現場施工において、鋼材の表面及び形状が明確にできるため、建て込み精度の低下を防ぐことができる。
〔比較例1〕
実施例1の同じ方法で作製した接続鋼板に、潤滑剤としてのワックス(パレス化学株式会社製;商品名・ハイスライドWAX TAP−2)を、両面に厚さ1mmとなるように均一に塗布して比較接続鋼板1を得た。
【0192】
比較接続鋼板1を実施例1と同じ組成のソイルセメントミルク中に建て込み、3日間残置後、ボルト除去等の作業と接続鋼材の引抜きを実施例1と同様に行った。
【0193】
結果としては、最大引抜荷重は118N(12kgf)で、鋼板単位表面積当たりの最大引抜力である最大付着強度は13.44kN/m2(1371kgf/m2)であった。
【0194】
【発明の効果】
【発明の効果】
本発明の第一の付着防止材は、接続材を使って複数のH形鋼等の支持体が接続された接続支持体を、水硬性組成物と接触させ、次に水硬性組成物が硬化した後に、接続支持体から接続材を除去することで接続支持体の接続を解除し少なくとも一つの支持体を撤去する接続支持体撤去工法における、水硬性組成物と支持体との付着を防止する材料であって、少なくとも、親水剤を含む吸水性潤滑層を有する構成である。
【0195】
上記の構成によれば、水を吸収することにより水硬性組成物の硬化物と支持体との(両者)の付着防止性能及び潤滑性能を発現する吸水性潤滑層により、両者の付着防止を行うことができ、例えば、ソイルセメント硬化体からのH形鋼の引抜き撤去回収を容易に実現する。
【0196】
本発明の第2の付着防止材は、接続材を使って複数のH形鋼等の支持体が接続された接続支持体を、水硬性組成物と接触させ、次に水硬性組成物が硬化した後に、接続支持体から接続材を除去することで接続支持体の接続を解除し、少なくとも一つの支持体を撤去する接続支持体撤去工法における、水硬性組成物と支持体との付着を防止する材料であって、少なくとも、親水剤を含む吸水性潤滑層と疎水性潤滑剤を含む疎水性潤滑層とを有する構成である。
【0197】
上記の構成によれば、水を吸収することにより水硬性組成物の硬化物と支持体との(両者)の付着防止性能及び潤滑性能を発現する吸水性潤滑層と、その両者の付着防止性能及び潤滑性能を有する潤滑剤を含む疎水性潤滑層との相乗効果により、より高い両者の付着防止を行うことができ、例えば、ソイルセメント硬化体からのH形鋼の引抜き撤去回収を容易に実現する。また、被覆作業も改善され、ソイルセメント中に被覆したH形鋼を容易に投入できるようになる。
【0198】
本発明の第3の付着防止材は、上記第1または第2の付着防止材において、親水剤が吸水性樹脂である構成である。
【0199】
上記の構成によれば、吸水性潤滑層は、吸水性樹脂の吸水膨潤性により柔軟なゲル層を形成するが、このゲル層の潤滑性能及び上記水硬性組成物の硬化物と支持体との両者の分離性能により、より高い両者の付着防止を実現する。
【0200】
本発明の第4の付着防止材は、上記第2または第3の付着防止材において、疎水性潤滑剤が半固形状潤滑剤である構成である。上記の構成によれば、鉱油を配合して半固形状に調製したワックスやグリースなどの常温(25℃)において半固形状潤滑剤は、潤滑性能と共に粘着力(鋼材に対する密着力)を有することから、吸水性潤滑層への無溶剤塗布が可能で複合化を容易にする。
【0201】
さらに、本発明の付着防止材の疎水性潤滑層側をH形鋼等の支持体表面側に配することで、その密着力を利用して支持体表面に付着防止材を密着(貼付け)させることができ、上記した被覆作業性と建て込み性の向上と共に上記両者の更に確実な付着防止を実現する。
【0202】
本発明の第5の付着防止材は、接続材を使って複数のH形鋼等の支持体が接続された接続支持体を、水硬性組成物と接触させ、次に水硬性組成物が硬化した後に、接続支持体から接続材を除去することで接続支持体の接続を解除し少なくとも一つの支持体を撤去する接続支持体撤去工法における、水硬性組成物と支持体との付着を防止する材料であって、少なくとも、疎水性潤滑剤を含む疎水性潤滑層とシート状基材とを有する構成である。
【0203】
上記の構成によれば、水硬性組成物の硬化物と支持体との(両者)の付着防止性能及び潤滑性能を発現するシート状基材層及び疎水性潤滑層により、両者の付着防止を行うことができ、例えば、ソイルセメント硬化体からのH形鋼の引抜き撤去回収を容易に実現する。
【0204】
本発明の接続支持体撤去工法は、まず、接続材を使って複数のH形鋼等の支持体が接続された接続支持体を、少なくとも、親水剤を含む吸水性潤滑層を有する付着防止材で被覆した後に、該接続支持体を水硬性組成物と接触させ水硬性組成物を硬化させる。次に接続支持体が用済みになった後に接続支持体から接続材を除去して該接続を解除し、少なくとも一つの支持体を撤去する構成である。
【0205】
上記の構成によれば、接続支持体表面に、水を吸収することにより水硬性組成物の硬化物と支持体との(両者)の付着防止性能及び潤滑性能を発現する吸水性潤滑層が形成され、両者の付着防止を行うことができ、例えば、ソイルセメント硬化体からのH形鋼の引抜き撤去回収を容易に実現する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)、(b)共に、支持体(仮埋設物)を付着防止材(被覆材)で被覆することによって本発明の実施の一形態にかかる被覆形成する手順を示す概略の斜視図である。
【図2】 (a)〜(d)共に、支持体(仮埋設物)を付着防止材(被覆材)で被覆することによって本発明の実施の他の形態にかかる被覆形成する手順を示す概略の斜視図である。
【図3】 付着防止材を袋状の形状に縫製加工した状態を示す説明図である。
【図4】 (a)は、本発明の付着防止材の被覆方法に用いられる付着防止材破損防止用装着具の構成を示す説明図であり、(b)は、上記装着具を装着した状態を示す説明図である。
【図5】 本発明の実施の一形態にかかる付着防止材の構造を示す概略断面図である。
【図6】 上記付着防止材における他の構造を示す概略断面図である。
【図7】 本発明にかかる接続支持体の概略を示す一形態である。また、本発明の付着防止材が接続支持体に被覆された状態を示す一形態である。
【符号の説明】
1 付着防止材(被覆材)
2 支持体(仮埋設物)
3 紐(ロープ)
4 作業員
5 滑車
6 クレーン
10 付着防止材(被覆材)
11 固定治具
14 先端カバー
15 補強帯
16 吊りひも
17 縛りひも
18 付着防止材破損防止用装着具
21 付着防止材
22 支持体(仮埋設物)
31 吸水性潤滑層
32 疎水性潤滑層
33 付着防止材
41 袋型又は筒型又は貼付型の付着防止材
42 塗布型の付着防止材
43 支持体(H形鋼)
44 接続支持体
45 接続ボルト
46 接続板
47 固定具(バインダークリップ)

Claims (8)

  1. 接続材を使って複数のH形鋼等の支持体が接続された接続支持体を、水硬性組成物と接触させ、次に水硬性組成物が硬化した後に、接続支持体から接続材を除去することで接続支持体の接続を解除し少なくとも一つの支持体を撤去する接続支持体撤去工法における、水硬性組成物と支持体との付着を防止する材料であって、少なくとも、吸水性樹脂とアルカリ水可溶性樹脂を含む吸水性潤滑層を有することを特徴とする付着防止材。
  2. 接続材を使って複数のH形鋼等の支持体が接続された接続支持体を、水硬性組成物と接触させ、次に水硬性組成物が硬化した後に、接続支持体から接続材を除去することで接続支持体の接続を解除し、少なくとも一つの支持体を撤去する接続支持体撤去工法における、水硬性組成物と支持体との付着を防止する材料であって、少なくとも、吸水性樹脂とアルカリ水可溶性樹脂を含む吸水性潤滑層と疎水性潤滑剤を含む疎水性潤滑層とを有することを特徴とする付着防止材。
  3. アルカリ水可溶性樹脂の酸価が15mgKOH/g以上、500mgKOH/g以下である、請求項1または2に記載の付着防止材。
  4. アルカリ水可溶性樹脂と吸水性樹脂の割合が、重量比で1/99〜99/1の範囲である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の付着防止材。
  5. 疎水性潤滑剤が、半固形状潤滑剤であることを特徴とする請求項2に記載の付着防止材。
  6. 半固形状潤滑剤が、混和ちょう度が3から385の半固形状潤滑剤である請求項に記載の付着防止材。
  7. 付着防止剤がアルカリ水可溶性樹脂と吸水性樹脂を混合して得られる塗布材料を、シート状基材に塗布することにより得られる付着防止剤であって、該シート状基材の単位面積当たりに対するアルカリ水可溶性樹脂および吸水性樹脂の付着量が、1g/ 〜10000g/ の範囲内である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の付着防止材。
  8. 接続材を使って複数のH形鋼等の支持体が接続された接続支持体を、少なくとも吸水性樹脂とアルカリ水可溶性樹脂を含む吸水性潤滑層を有する付着防止材で被覆する工程、該接続支持体を水硬性組成物と接触させる工程、水硬性組成物を硬化させる工程、および、接続支持体から接続材を除去して該接続を解除し、少なくとも一つの支持体を撤去する工程を順に含むことを特徴とする接続支持体撤去工法。
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