JP2002012764A - ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物 - Google Patents

ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、ポリフェニレンスルフィドと
ポリフェニレンエーテルからなるポリフェニレンスルフ
ィド樹脂組成物の靱性(衝撃強度)、ウェルド強度に優
れた樹脂材料を提供することにあり、さらには二次電池
用電槽構造材料(容器またはシート、フィルム)として
長期間にわたって初期の電解質の性能を維持するため
に、靱性(衝撃強度)、ウェルド強度、に優れた二次電
池電槽用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を提供す
ることにある。 【解決手段】 ポリフェニレンスルフィド樹脂とポリフ
ェニレンエーテル樹脂とからなる樹脂組成物を得るに当
たり、供するポリフェニレンスルフィド樹脂として、特
定したオリゴマー量および特定の官能基量を有するポリ
フェニレンスルフィド樹脂と特定の官能基量を有する混
和剤を用いる。 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は靱性(衝撃強度)、
ウェルド強度、耐熱クリープ性、耐水蒸気透過性および
耐油性、耐薬品性、耐熱性に優れたポリフェニレンスル
フィド樹脂組成物に関するものであり、さらにはリチウ
ム金属電池、リチウムイオン電池(以下リチウム電池と
略称する)、ポリマーイオン電池、ニッケル−水素電
池、鉛蓄電池、アルカリ蓄電池などの二次電池の電槽
(容器)、二次電池を構成するシートまたはフィルム材
料として好適に用いられる二次電池電槽用ポリフェニレ
ンスルフィド樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、非強化のポリフェニレンスルフィ
ドは、その結晶性に起因して流動特性が良好で耐熱性、
耐水性に優れるため電子分野で利用されているが成形材
料として、靱性(衝撃強度)に劣る欠点を有するため各
種成形品(特に大型成形品)に利用することが困難であ
る。
【0003】このためポリフェニレンスルフィドのこれ
らの欠点を解消するため各種樹脂、各種熱可塑性エラス
トマー等とブレンドまたはアロイ化する試みが数多く提
案されている。例えば、特公昭56−34032号公報
にはポリフェニレンオキサイド類とポリフェニレンスル
フィド類から成る成形性、難燃性に優れた樹脂組成物が
提案されており、また、本出願人が提案した特開昭58
−27740号公報には、ポリフェニレンスルフィドや
他のエンジニアリング樹脂とα,β−不飽和カルボン酸
の誘導体で変性した水添ブロック共重合体からなる、耐
衝撃性、耐界面剥離性に優れた変性ブロック共重合体組
成物が提案されており、さらに同様に本出願人が提案し
た特開昭58−40350号公報には、ポリフェニレン
スルフィドや他のエンジニアリング樹脂とα,β−不飽
和カルボン酸の誘導体で変性した水添ブロック共重合体
およびエポキシ基含有重合体から成る耐衝撃性に優れた
熱可塑性グラフト共重合体組成物がある。そして特開昭
58−154757号公報にはポリアリレーンサルファ
イドとα−オレフィン/α,β−不飽和酸のグリシジル
エステル共重合体からなる耐衝撃性、成形加工性に優れ
たポリアリレーンサルファイド樹脂組成物が提案されて
おり、特開昭59−207921号公報にはポリフェニ
レンスルフィドと不飽和カルボン酸またはその無水物ま
たはその誘導体をグラフト共重合したポリオレフィンお
よびエポキシ樹脂からなる耐衝撃性に優れた組成物が提
案されており、さらに特開昭62−153343号公
報、特開昭62−153344号公報、特開昭62−1
53345号公報には特定のポリフェニレンスルフィド
とα−オレフィン/α,β−不飽和酸のグリシジルエス
テル共重合体からなる耐衝撃性に優れたポリフェニレン
スルフィド樹脂組成物が提案されている。そしてさらに
特開昭62−169854号公報、特開昭62−172
056号公報、特開昭62−172057号公報にも特
定のポリフェニレンスルフィドと不飽和カルボン酸また
はその無水物またはその誘導体をグラフト共重合したポ
リオレフィンからなる耐衝撃性に優れたポリフェニレン
スルフィド樹脂組成物が提案されている。
【0004】一方、ポリフェニレンスルフィドおよびポ
リフェニレンエーテルを含む樹脂組成物に関しては、そ
の混和性改良を目的として、特開平01−266160
号公報および特開平02−75656号公報には、酸変
性ポリフェニレンエーテルと変性ポリフェニレンスルフ
ィドの混和性改良にスチレンとオキサゾニル基を有する
エチレン性不飽和モノマーとの共重合体を用いる方法が
提案され、特開平01−213359号公報、特開平0
1−213361号公報、特開平02−86652号公
報、特開平05−339500号公報には、ポリフェニ
レンエーテルとポリフェニレンスルフィドの混和性改良
にスチレンとグリシジル基を有するエチレン性不飽和モ
ノマーとの共重合体を用いる方法が提案され、さらに特
開平03−20356号公報には、ポリフェニレンスル
フィドとポリフェニレンエーテルの混和性改良にスチレ
ンとオキサゾニル基を有するエチレン性不飽和モノマー
との共重合体を用いる方法が提案されている。
【0005】しかしながら、これら先行技術に開示され
た組成物はポリフェニレンスルフィドとポリフェニレン
エーテルからなる樹脂組成物の分散性、靱性付与および
成型品のウェルド強度の観点で十分な材料設計がなされ
ていないのが現状である。
【0006】さらに、特開平09−161737号公報
にはポリフェニレンスルフィドとポリフェニレンエーテ
ルの混和性改良にスチレンとオキサゾニル基を有するエ
チレン性不飽和モノマーとの共重合体を用いた組成物が
密閉型アルカリ二次電池の電槽用として利用できる旨の
内容が開示されている。しかしながら、ここで開示され
ている組成物に関しても、分散相の分散性、靱性付与お
よび成型品のウェルド強度の観点で十分な材料設計がな
されていないのが現状である。
【0007】一方、材料の利用観点から見ると、移動機
器用駆動電源、コンピューターのデーターバックアップ
電源、太陽エネルギーの有効利用を目的とした太陽電
池、さらには環境保護の観点から各種二次電池の用途が
拡大されつつある。特に、自動車の内燃機関の所要電力
を供給するために二次電池が多く使用されていることは
周知であるが、更には、内燃機関の代わりに直接二次電
池を駆動電源とする、いわゆる、電気自動車の開発が地
球環境保護の観点より盛んに行われている。
【0008】このように、産業技術の発展に伴い二次電
池の需要は益々増加する傾向にあり、二次電池は小型軽
量化、大電気容量化の要請が高まっている。
【0009】このような二次電池は、電解液と電極を収
納する電槽(容器)、電槽シートまたは電槽フィルムが
不可欠であり、該電槽用樹脂材料に要求される主な特性
としては、電解液に対する耐性長期安定性が挙げら
れる。
【0010】電解液に対する耐性としては、例えばアル
カリ蓄電池ではアルカリ水溶液に対する耐性、リチウム
イオン電池では有機電解液[例えば、6フッ化リン酸リ
チウム(LiPF6)が溶質、プロピレンカーボネート
/1,2−ジメトキシエタンが主成分の有機溶媒で構成
して成る有機電解液]に対する耐性(自動車用途に用い
られる場合は、更に耐油性などが要求される)、鉛蓄電
池では酸に対する耐性が要求される。また、長期間にわ
たって電解液の性状を適正に維持する必要があり、例え
ば、アルカリ蓄電池では電槽内のアルカリ水溶液中の水
分が電槽外へ透過すると性能が劣化したり、リチウムイ
オン電池では逆に外部から電槽内に水分が入り込むと有
機溶液中のリチウム塩[例えば、6フッ化リン酸リチウ
ム(LiPF6)やホウフッ化リチウムなど]が分解し
て性能が劣化したりする。
【0011】さらに、長期間にわたって充電時または放
電時の化学変化に伴う発熱、内圧上昇に耐えうる性能が
要求される。
【0012】中でも密閉型二次電池においては、可能な
限り小型・軽量で、且つ大電気容量、電池寿命が長いこ
とが要求される。このため、密閉型二次電池の電槽は、
薄肉時における靱性(衝撃強度、伸び)の付与が望ま
れ、且つ、充電時または放電時の発熱、内圧上昇などの
過酷な条件に耐えうる耐熱性、耐熱クリープ性、熱時剛
性に優れた樹脂材料が要求されており、電槽シート分野
に於いても同様な性能が望まれている。
【0013】従来の二次電池の電槽用樹脂材料は、ポリ
プロピレン樹脂、ABS樹脂が多く採用されているが、
ポリプロピレン樹脂は成形時の流動性、耐温水透過性
(耐水蒸気透過性)、耐ガス透過性に優れるものの、薄
肉リブ構造の製品の射出成形において、成形収縮率が大
きかったり、剛性、特に高温時の剛性や耐熱クリープ性
に劣る等の欠点をもっていた。一方、ABS樹脂は、自
動車用途において、ガソリン、オイル(例えばブレーキ
オイル、防錆剤)に対する耐性が十分でなく、さらには
温水透過性、ガス透過性が高いため、長時間使用におい
て電解質の性状を維持できなくなり、二次電池の生命で
ある長時間電気容量確保が達成できなくなるなどの欠点
を有している。これらの視点より、上記に挙げたポリフ
ェニレンスルフィド樹脂組成物の先行技術で得られる組
成物は二次電池電槽(容器、シート、フィルム)用材料
として上記した要求性能を満たすものの、分散相の分散
性、靱性付与および成型品のウェルド強度の観点で十分
な材料設計がなされていないのが現状である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ポリフェニ
レンスルフィドとポリフェニレンエーテルからなる樹脂
組成物の分散多次構造を制御し、靱性(衝撃強度)、ウ
ェルド強度に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成
物を提供することにあり、さらには二次電池用電槽材料
(容器またはシート、フィルム)として長期間にわたっ
て初期の電解質の性能を維持するために、靱性(衝撃強
度)、ウェルド強度、耐熱クリープ性、耐水蒸気透過
性、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性、耐油性に優れた二
次電池電槽用ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を提
供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、このよう
な現状に鑑み、ポリフェニレンスルフィド樹脂とポリフ
ェニレンエーテル樹脂からなる樹脂組成物において、靱
性(衝撃強度)およびウェルド強度に関し鋭意検討を重
ねた結果、従来知られていないポリフェニレンスルフィ
ドに関する構造を特定したポリフェニレンサルファイド
を用いた樹脂組成物が、靱性を大幅に改良し、かつ、ウ
ェルド強度に優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成
物を与え、さらには二次電池電槽(容器またはシート、
フィルム)材料として利用できることを見いだし本発明
に到達した。
【0016】すなわち、本発明は、(a)塩化メチレン
による抽出量が0.7重量%以下であり、かつ−SX基
(Sはイオウ原子、Xはアルカリ金属または水素原子で
ある)が15μmol/g以上であるポリフェニレンス
ルフィド樹脂1〜99重量部、(b)ポリフェニレンエ
ーテル樹脂99〜1重量部、ならびに(a)と(b)の
合計100重量部あたり(c)混和剤としてエポキシ基
およびまたはオキサゾニル基を有する不飽和モノマーを
0.3〜20重量%の割合でスチレンを主たる成分とす
るモノマーと共重合してなる共重合体1〜20重量部、
さらに(a)成分と(b)成分の合計100重量部あた
り(d)ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1
個の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする
少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック
共重合体およびまたは該ブロック共重合体を水素添加し
てなる水添ブロック共重合体0〜40重量部、そしてさ
らに(a)成分〜(d)成分の合計100重量部あたり
(e)無機フィラー0〜300重量部からなることを特
徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に関する
ものである。
【0017】本発明の樹脂組成物の(a)成分のポリフ
ェニレンスルフィド樹脂(以下PPSと略記する)は、
塩化メチレンによる抽出量が0.7重量%以下、好まし
くは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以
下である。上記抽出量の範囲は、PPS中に比較的低分
子量(約10〜30量体)の低いオリゴマーの存在が少
ないことを意味するものである。該抽出量が上記上限値
を超える場合は、得られる樹脂組成物のポリフェニレン
スルフィドとポリフェニレンエーテルとの混和性が劣
り、得られる樹脂組成物のウェルド強度の改良が望め
ず、かつ靱性としての耐衝撃性の低下が著しく好ましく
ない。ここで、塩化メチレンによる抽出量の測定は以下
の方法により求めることができる。すなわち、PPS粉
末5gを塩化メチレン80mlに加え、6時間ソクスレ
ー抽出を実施した後、室温まで冷却し、抽出後の塩化メ
チレン溶液を秤量瓶に移す。更に、上記の抽出に使用し
た容器を塩化メチレン合計60mlを用いて、3回に分
けて洗浄し、該洗浄液を上記秤量瓶中に回収する。次
に、約80℃に加熱して、該秤量瓶中の塩化メチレンを
蒸発させて除去し、残渣を秤量し、この残渣量よりPP
S中に存在するオリゴマー量の割合を求めることができ
る。さらに(a)成分のPPSは、−SX基( Sはイ
オウ原子、Xはアルカリ金属または水素原子である)が
15μmol/g以上、好ましくは18〜35μmol
/g、特に好ましくは20〜30μmol/gである。
該基が上記下限未満では得られる樹脂組成物のポリフェ
ニレンスルフィドとポリフェニレンエーテルとの混和性
が劣り、得られる樹脂組成物のウェルド強度の改良が望
めず、かつ靱性としての耐衝撃性の低下が著しく好まし
くない。ここで、−SX基の定量は以下の方法により求
めることができる。すなわち、PPS粉末を予め120
℃で4時間乾燥した後、乾燥PPS粉末20gをN−メ
チル−2−ピロリドン150gに加えて粉末凝集塊がな
くなるように室温で30分間激しく撹拌混合しスラリー
状態にする。
【0018】かかるスラリーを濾過した後、毎回約80
℃の温水1リットルを用いて7回洗浄を繰り返す。ここ
で得た濾過ケーキを純水200g中に再度スラリー化
し、ついで1Nの塩酸を加えて該スラリーのPHを4.
5に調整する。次に、25℃で30分間撹拌し、濾過し
た後、毎回約80℃の温水1リットルを用いて6回洗浄
を繰り返す。得られた濾過ケーキを純水200g中に再
度スラリー化し、次いで、1Nの水酸化ナトリウムによ
り滴定し、消費した水酸化ナトリウム量よりPPS中に
存在する−SX基の量を知ることができる。
【0019】上記したPPSの製造方法は、通常、ハロ
ゲン置換芳香族化合物、例えばp−ジクロルベンゼンを
硫黄と炭酸ソーダの存在下で重合させる方法、極性溶媒
中で硫化ナトリウムあるいは硫化水素ナトリウムと水酸
化ナトリウムまたは硫化水素と水酸化ナトリウムあるい
はナトリウムアミノアルカノエートの存在下で重合させ
る方法、p−クロルチオフェノールの自己縮合等が挙げ
られるが、中でもN−メチルピロリドン、ジメチルアセ
トアミド等のアミド系溶媒やスルホラン等のスルホン系
溶媒中で硫化ナトリウムとp−ジクロルベンゼンを反応
させる方法が適当である。これらの製造方法は公知の方
法で得られるものであれば特に限定されるものではな
く、例えば、米国特許第2513188号明細書、特公
昭44−27671号公報、特公昭45−3368号公
報、特公昭52−12240号公報、特開昭61−22
5217号および米国特許第3274165号明細書、
英国特許第1160660号さらに特公昭46−272
55号公報、ベルギー特許第29437号明細書、特開
平5−222196号公報、等に記載された方法やこれ
ら特許等に例示された先行技術の方法で得ることが出来
る。
【0020】本発明で用いるPPSは320℃における
溶融粘度(フローテスターを用いて、300℃、荷重2
0Kgf/cm2、L/D=10/1で6分間保持した
値。)が1〜10000ポイズの中から任意に選ぶこと
が出来、さらにPPSの構造は、上記した特徴を示すも
のであれば直鎖状、分岐状のものいずれでも良く、中で
も直鎖状のものがより好ましい。
【0021】つぎに本発明の樹脂組成物で供する(b)
成分のポリフェニレンエーテル樹脂(以下、単にPPE
と略記)は、本発明の樹脂組成物おいて耐熱性(荷重撓
み温度:DTUL)、耐熱クリープ性および難燃性を付
与するうえで必須な成分であり、該PPEは、結合単位
(式1):
【0022】
【化1】
【0023】(ここで、R1,R2,R3,およびR4
はそれぞれ、水素、ハロゲン、炭素数1〜7までの第一
級または第二級低級アルキル基、フェニル基、ハロアル
キル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基または少
なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを
隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択さ
れるものであり、互いに同一でも異なっていてもよい)
からなり、還元粘度(0.5g/dl,クロロホルム溶
液,30℃測定)が、0.15〜2.0の範囲であるこ
とが好ましく、さらに好ましくは0.20〜1.0の範
囲にあるホモ重合体および/または共重合体である。
【0024】このPPEの具体的な例としては、例えば
ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテ
ル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニ
レンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−
1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロ
ロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さら
に2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例
えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル
−6−ブチルフェノール)との共重合体のごときポリフ
ェニレンエーテル共重合体も挙げられる。中でもポリ
(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、
2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチル
フェノールとの共重合体が好ましく、さらにポリ(2,
6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好まし
い。
【0025】かかるPPEの製造方法は公知の方法で得
られるものであれば特に限定されるものではなく、例え
ば、米国特許第3306874号記載のHayによる第
一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、例
えば2,6−キシレノールを酸化重合することにより容
易に製造でき、そのほかにも米国特許第3306875
号、同第3257357号および同第3257358
号、特公昭52−17880号および特開昭50−51
197号および同63−152628号等に記載された
方法で容易に製造できる。
【0026】つぎに本発明の(c)成分として用いる混
和剤は、(a)成分のPPSと(b)成分のPPEを混
合する際の乳化分散剤として作用し、特に(a)成分特
有の構造である限定されたオリゴマー量、官能基(−S
X基)量と有効な反応を呈し、その結果、ポリフェニレ
ンスルフィド樹脂組成物に優れた靱性および優れたウェ
ルド強度を与える効果を奏するものである。
【0027】かかる(c)混和剤としては、エポキシ基
および/またはオキサゾニル基を有する不飽和モノマー
とスチレンを主たる成分とするモノマーとの共重合体で
ある。
【0028】ここで言うスチレンを主たる成分とするモ
ノマーとは、スチレンモノマーと共重合可能なエポキシ
基および/またはオキサゾニル基を有する不飽和モノマ
ーを除く他のモノマーであれば何ら問題なく使用でき、
その割合が少なくともスチレンモノマーを65重量%以
上含むことを意味するものである。
【0029】具体的には、エポキシ基および/またはオ
キサゾニル基を有する不飽和モノマーとスチレンモノマ
ーの共重合体。エポキシ基および/またはオキサゾニル
基を有する不飽和モノマーとスチレン/アクリロニトリ
ル=90〜75重量%/10〜25重量%の共重合体な
どが挙げられる。
【0030】上記のエポキシ基含有不飽和モノマーとし
ては、グリシジルメタアクリレート、グリシジルアクリ
レート、ビニルグリシジルエーテル、ヒドロキシアルキ
ル(メタ)アクリレートのグリシジルエーテル、ポリア
ルキレングリコール(メタ)アクリレートのグリシジル
エーテル、グリシジルイタコネート等が挙げられ、中で
もグリシジルメタアクリレートが好ましい。また、上記
のオキサゾニル基含有不飽和モノマーとしては、下記一
般式(式2):
【0031】
【化2】
【0032】(ここでRは、水素原子または炭素数1〜
6のアルキル基またはアルコキシ基)である。)
【0033】この構造を示すビニルオキサゾリン化合物
であり、中でもRが水素原子またはメチル基を示す化合
物が好ましい。その中でも2−イソプロペニル−2−オ
キサゾリンが工業的に入手でき好ましく使用できる。
【0034】これら、エポキシ基および/またはオキサ
ゾニル基を有する不飽和モノマーと共重合する他の不飽
和モノマーとしては、スチレン等のビニル芳香族化合
物、アクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマー、酢
酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる
が、かかるスチレンモノマーを少なくとも65重量%以
上含むことが必須である。
【0035】また、エポキシ基および/またはオキサゾ
ニル基を有する不飽和モノマーは(c)成分の共重合体
中に0.3〜20重量%、好ましくは、1〜15重量
%、更に好ましくは3〜10重量%含有しなければなら
ない。かかる(c)成分の共重合体に含まれるエポキシ
基および/またはオキサゾニル基は、(a)成分のPP
Sが含有する−SX基と化学的に有効な反応が起こり、
本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物において
有用な−SX基含有PPSとのグラフト体を形成するも
のと思われ、結果としてポリフェニレンスルフィドとポ
リフェニレンエーテルとを好ましく混合分散し、この有
用なグラフト体形成が本発明のポリフェニレンスルフィ
ド樹脂組成物の効果である優れた靱性の付与およびウェ
ルド強度の性能改良をもたらしている。したがって、か
かる(c)成分の共重合体のエポキシ基およびまたはオ
キサゾニル基を有する不飽和モノマー量が0.3重量%
未満では(a)成分のPPSとの好ましいグラフト化反
応が進みにくく、本発明の樹脂組成物に好適な混合分散
形態をもたらすことができず、靱性の付与およびウェル
ド強度の改善が望めず好ましくない。また、かかるエポ
キシ基およびまたはオキサゾニル基を有する不飽和モノ
マー量が20重量%を超えると(a)成分のPPSとの
好ましいグラフト化が進みにくく、これら官能基を過剰
に有する場合は、ゲル化などの架橋反応や他の反応が起
こり、本発明の樹脂組成物に好適な混合分散形態をもた
らすことができず靱性の付与およびウェルド強度の改善
が望めず好ましくない。
【0036】これら共重合可能な不飽和モノマーを共重
合して得られる(c)成分の共重合体の例として、例え
ば、スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、ス
チレン−グリシジルメタクリレート−メチルメタクリレ
ート共重合体、スチレン−グリシジルメタクリレート−
アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルオキサゾ
リン共重合体、スチレン−ビニルオキサゾリン−アクリ
ロニトリル共重合体等が挙げられる。
【0037】つぎに本発明で(d)成分として用いるビ
ニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体
ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする少なくとも
1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体お
よび該ブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロッ
ク共重合体は、(b)成分のポリフェニレンエーテル樹
脂中に分散し、ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の
靱性付与に大きな効果を奏するものである。
【0038】ここで、ビニル芳香族化合物を主体とする
少なくとも1個の重合体ブロックAと共役ジエン化合物
を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとから
なるブロック共重合体とは、例えばA−B、A−B−
A、B−A−B−A、(A−B−)4−Si、A−B−
A−B−A等の構造を有するビニル芳香族化合物−共役
ジエン化合物ブロック共重合体であり、結合したビニル
芳香族化合物を5〜95重量%、好ましくは10〜80
重量%含んだブロック共重合体である。またブロック構
造に言及すると、ビニル芳香族化合物を主体とする重合
体ブロックAとは、ビニル芳香族化合物のホモ重合体ブ
ロックまたはビニル芳香族化合物を好ましくは50重量
%を超え、更に好ましくは70重量%以上含有するビニ
ル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロッ
クの構造を有しており、そしてさらに、共役ジエン化合
物を主体とする重合体ブロックBとは、共役ジエン化合
物のホモ重合体ブロックまたは共役ジエン化合物を好ま
しくは50重量%を超え、更に好ましくは70重量%以
上含有する共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物との
共重合体ブロックの構造を有するものである。これらの
ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックA、共
役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBは、それ
ぞれの重合体ブロックにおける分子鎖中の共役ジエン化
合物またはビニル芳香族化合物の分布がランダム、テー
パード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加または減少
するもの)、一部ブロック状またはこれらの任意の組み
合わせで成っていてもよく、該ビニル芳香族化合物を主
体とする重合体ブロックおよび該共役ジエン化合物を主
体とする重合体ブロックがそれぞれ2個以上ある場合
は、各重合体ブロックはそれぞれ同一構造であってもよ
く、異なる構造であってもよい。
【0039】このブロック共重合体を構成するビニル芳
香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルス
チレン、ビニルトルエン、p−tert−ブチルスチレ
ン、ジフェニルエチレン等のうちから1種または2種以
上を選択でき、中でもスチレンが好ましい。また、共役
ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレ
ン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3
−ブタジエン等のうちから1種または2種以上が選ば
れ、中でも、ブタジエン、イソプレンおよびこれらの組
み合わせが好ましい。そして共役ジエン化合物を主体と
する重合体ブロックは、そのブロックにおける結合形態
のミクロ構造を任意に選ぶことができ、例えば、ブタジ
エンを主体とする重合体ブロックにおいては、1,2−
ビニル結合が2〜90%が好ましく、より好ましくは8
〜80%である。また、イソプレンを主体とする重合体
ブロックにおいては、1,2−ビニル結合と3,4−ビ
ニル結合の合計量が2〜80%、より好ましくは3〜7
0%である。
【0040】本発明で用いる(d)成分のブロック共重
合体の数平均分子量は、5,000〜1,000,00
0であるものが好ましく、特に好ましくは20,000
〜500,000の範囲のものであり、分子量分布[ゲ
ルパーミエーションクロマトグラフィで測定しポリスチ
レン換算した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量
(Mn)の比]は10以下であるものが好ましい。
【0041】さらに、このブロック共重合体の分子構造
は、直鎖状、分岐状、放射状あるいはこれらの任意の組
み合わせのいずれであってもよい。
【0042】このような構造をもつブロック共重合体
は、上記したブロック共重合体の共役ジエン化合物を主
体とした重合体ブロックBの脂肪族系二重結合を水素添
加反応を実施し、本発明で用いる(d)成分の水添ブロ
ック共重合体として利用できる。かかる脂肪族系二重結
合の水素添加率は、少なくとも20%を超えることが好
ましく、更に好ましくは50%以上、特に好ましくは8
0%以上である。
【0043】かかる水素添加率は例えば核磁気共鳴装置
(NMR)等を用いて知ることができる。
【0044】さらに本発明で(e)成分として用いる無
機フィラーとは、上記した(a)〜(c)からなる樹脂
組成物に対して数多くの機能を与える成分であり、例え
ば、剛性の付与、耐熱性の付与、熱伝導性の付与、導電
性の付与、成形収縮率の改善、線膨張率の改善などその
目的に応じ選択することが出来、これら効果を引き出す
(e)成分の無機フィラーとしては、例えば、無機塩、
ガラス繊維(ガラス長繊維、チョップドストランドガラ
ス繊維)、ガラスフレーク、ガラスビーズ、カーボン繊
維、ウィスカ、マイカ、タルク、カーボンブラック、酸
化チタン、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、ワラス
トナイト、熱伝導性物質(グラファイト、窒化アルミニ
ウム、窒化ホウ素、アルミナ、酸化ベリリウム、二酸化
ケイ素、酸化マグネシウム、硝酸アルミニウム、硫酸バ
リウムなど)、導電性金属繊維、導電性金属フレーク、
導電性を示すカーボンブラック、導電性を示すカーボン
ファイバー等が挙げられる。これらの無機フィラー類
は、上記したポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェ
ニレンエーテル樹脂への分散性を改良する目的で公知の
表面処理剤や加工時の取り扱い性を改良する目的で公知
の集束剤などで処理した物も好適に使用できる。
【0045】本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組
成物は、上記した必須成分の(a)成分のポリフェニレ
ンスルフィド樹脂を1〜99重量%、(b)成分のポリ
フェニレンエーテル樹脂99〜1重量%、(a)成分+
(b)成分の合計100重量部に対して(c)成分の混
和剤を1〜20重量部および(d)成分のビニル芳香族
化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックA
と共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合
体ブロックBとから成るブロック共重合体およびまたは
該ブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共
重合体0〜40重量部、そしてさらに(a)成分〜
(d)成分の合計100重量部に対して(e)無機フィ
ラー0〜300重量部を含むポリフェニレンスルフィド
樹脂組成物である。
【0046】中でも、最も好ましい態様の組成は、
(a)成分のポリフェニレンスルフィド樹脂を35〜9
0重量部、(b)成分のポリフェニレンエーテル樹脂1
0〜65重量部、(c)成分の混和剤を1〜10重量部
および(d)成分のブロック共重合体および/または水
添ブロック共重合体を5〜25重量部含むポリフェニレ
ンスルフィド樹脂組成物である。なおこれら成分以外に
(e)成分の無機フィラーを含む樹脂組成物の最も好ま
しい態様は、上記(a)〜(d)成分の合計100重量
部に対して、1〜150重量部である。
【0047】なお、本発明のポリフェニレンスルフィド
樹脂組成物において(a)成分のポリフェニレンスルフ
ィド樹脂中に分散粒子を形成する(b)成分のポリフェ
ニレンエーテル樹脂および(d)成分のビニル芳香族化
合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと
共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体
ブロックBとからなるブロック共重合体およびまたは該
ブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重
合体の分散状態は、通常、透過型電子顕微鏡で容易に確
認することができる。
【0048】そして、これらの分散状態を確認する方法
は、例えば、四塩化ルテニウム等の重金属化合物を用い
てサンプルを酸化染色し、ウルトラミクロトーム等で超
薄切片を切り出し、その切片を透過型電子顕微鏡で観察
することにより行うことができる。また写真撮影し(例
えば、10000倍)、その写真により、樹脂組成物の
モルフォロジーが、海−島−湖の多次構造を示すことを
確認することができる。そして、かかる海相であるマト
リックスを形成する成分が(a)成分のポリフェニレン
スルフィド樹脂であり、分散相を形成する島相の成分が
(b)成分のポリフェニレンエーテル樹脂であり、さら
にその島相中に共存する湖相が(d)成分のビニル芳香
族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック
Aと共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重
合体ブロックBとからなるブロック共重合体およびまた
は該ブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック
共重合体と判断することができる。
【0049】以下、本発明のポリフェニレンスルフィド
樹脂組成物の製造方法について説明する。
【0050】本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組
成物を工業的に容易に得る方法として最も好ましい実施
態様としては、
【0051】(1)上記した各成分を溶融混練するため
の溶融混練機が、ニーディングブロックをスクリューの
任意の位置に組み込むことが可能な二軸以上の多軸押出
機であり、用いるスクリューの全ニーディングブロック
部分を実質的に(L/D)≧1.5、さらに好ましくは
(L/D)≧5[ここでLは、ニーディングブロックの
合計長さ、Dはニーディングブロックの最大外径をあら
わす]に組み込み、かつ、(π・D・N/h)≧50
[ここで、π=3.14、D=メタリングゾーンに相当
するスクリュー外径、N=スクリュー回転数(回転/
秒)、h=メタリングゾーンの溝深さ]を満たし、
【0052】(2)これらの押出機は、原料の流れ方向
に対し上流側に第一原料供給口、これより下流に第二原
料供給口を有し、必要に応じ、第二原料供給口より下流
にさらに1つ以上の原料供給口を設けても良く、さらに
必要に応じこれら原料供給口の間に真空ベント口を設け
た二軸押出機を用いる。
【0053】本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組
成物を製造する方法で、基本となる原料供給方法は、第
一原料供給口より(a)成分〜(d)成分の全量を供給
する方法、(b)成分のPPE全量と(a)成分のPP
S全量の50%を超えない範囲範囲で(a)成分のPP
Sの共存下で供給し、第二原料供給口より残部の(a)
成分のPPSを供給する押出方法が好ましく、その際の
(c)成分の混和剤の供給は、第一原料供給口より
(a)成分のPPSと(b)成分のPPEと一緒に配合
して供給する方法が好ましい。また、(d)成分のブロ
ック共重合体、水添ブロック共重合体の供給は、上記し
た(a)成分〜(d)成分と一緒に配合して供給するこ
とが好ましいがこれに限定されるものではない。さらに
(e)成分の無機フィラーの供給は、(a)成分〜
(d)成分が完全に溶融混練されている状態下に供給す
ることが好ましく、通常、第二原料供給口以降の原料供
給口へ供給することが好ましい。
【0054】また、押出機バレル設定温度は通常、溶融
混練するゾーンが280〜350℃、好ましくは280
〜310℃、スクリュー回転数は100〜1200rp
m、好ましくは100〜500rpmの条件で溶融混練
し製造することができる。
【0055】本発明では、上記の成分の他に、本発明の
特徴および効果を損なわない範囲で必要に応じて他の附
加的成分、例えば、更なる耐衝撃性向上を目的としてエ
ポキシ基およびまたはオキサゾニル基を含有する不飽和
モノマーを1〜20重量%の割合でα−オレフィン(好
ましくはエチレン)と共重合してなる共重合体を本発明
の樹脂組成物100重量部に対して1〜20重量部添加
するともできる。その他に通常用いられる、酸化防止
剤、金属不活性化剤、難燃剤(有機リン酸エステル化合
物、縮合リン酸エステル系化合物、ポリリン酸アンモニ
ウム系難燃剤、芳香族ハロゲン系難燃剤、シリコーン系
難燃剤など)、フッ素系ポリマー、可塑剤(低分子量ポ
リエチレン、エポキシ化大豆油、ポリエチレングリコー
ル、脂肪酸エステル類等)、三酸化アンチモン等の難燃
助剤、耐候(光)性改良剤、造核剤、スリップ剤、各種
着色剤、離型剤等を添加してもかまわない。
【0056】このようにして得られる本発明のポリフェ
ニレンスルフィド樹脂組成物は、従来のポリフェニレン
スルフィド系樹脂組成物が持つ欠点を解消し、靱性(耐
衝撃性)の他に、成型品のウェルド強度に優れるため電
気・電子、自動車部品の成型品に好ましく利用でき、さ
らにこの改良された性能に加えてポリフェニレンスルフ
ィド自体が有する耐熱クリープ性、耐水蒸気透過性、耐
薬品性とが相まって二次電池電槽用材料(射出成型品、
シートもしくはフィルム)として特に有用である。そし
て本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、従
来より公知の種々の加工方法、例えば、圧縮成形、射出
成形、押出成形、多層押出成形、異形押出成形などによ
り用途目的に応じた各種の成形体として成形できる。
【0057】
【発明の実施の形態】本発明を実施例によって、さらに
詳細に説明するが、これらの実施例により限定されるも
のではない。
【0058】(a)成分のポリフェニレンスルフィド樹
脂 a−1:溶融粘度(フローテスターを用いて、300
℃、荷重20Kgf/cm2、L/D=10/1で6分
間保持した後測定した値。)が500ポイズ、塩化メチ
レンによる抽出量が0.4重量%、−SX基量が29μ
mol/gのPPSをa−1とした。
【0059】a−2:溶融粘度が500ポイズ、塩化メ
チレンによる抽出量が0.7重量%、−SX基量が30
μmol/gのPPSをa−2とした。
【0060】a−3:溶融粘度が500ポイズ、塩化メ
チレンによる抽出量が1.2重量%、−SX基量が31
μmol/gのPPSをa−3とした。
【0061】a−4:溶融粘度が500ポイズ、塩化メ
チレンによる抽出量が3.0重量%、−SX基量が29
μmol/gのPPSをa−4とした。
【0062】a−5:溶融粘度が500ポイズ、塩化メ
チレンによる抽出量が0.6重量%、−SX基量が7μ
mol/gのPPSをa−5とした。
【0063】a−6:溶融粘度が200ポイズ、塩化メ
チレンによる抽出量が0.5重量%、−SX基量が36
μmol/gのPPSをa−6とした。
【0064】a−7:溶融粘度が250ポイズ、塩化メ
チレンによる抽出量が3.1重量%、−SX基量が40
μmol/gの東レ(株)製のPPS(L3340)を
a−7とした。
【0065】a−8:溶融粘度が500ポイズ、塩化メ
チレンによる抽出量が1.8重量%、−SX基量が9μ
mol/gのPPSをa−8とした。
【0066】(b)成分のポリフェニレンエーテル樹脂 b−1:2,6−キシレノールを酸化重合して得た還元
粘度0.54のポリフェニレンエーテル
【0067】b−2:2,6−キシレノールを酸化重合
して得た還元粘度0.31のポリフェニレンエーテル
【0068】(c)成分の混和剤 c−1:グリシジルメタクリレートを5重量%含有する
スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体。(重量
平均分子量110,000)
【0069】c−2:グリシジルメタクリレートを18
重量%含有するスチレン−グリシジルメタクリレート共
重合体。(重量平均分子量114,000)
【0070】c−3:グリシジルメタクリレートを22
重量%含有するスチレン−グリシジルメタクリレート共
重合体。(重量平均分子量101,000)
【0071】c−4:2−イソプロペニル−2−オキサ
ゾリンを5重量%含有するスチレン−2−イソプロペニ
ル−2−オキサゾリン共重合体。(重量平均分子量14
6,000)
【0072】c−5:2−イソプロペニル−2−オキサ
ゾリンを5重量%し、アクリロニトリルを25重量%、
スチレンを70重量%含有するスチレン−アクリロニト
リル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン共重合
体。(重量平均分子量152,000)
【0073】(d)成分のブロック共重合体、水添ブロ
ック共重合体 d−1:ポリスチレン−水素添加されたポリブタジエン
−ポリスチレンの構造でり、結合スチレン量が35重量
%、数平均分子量が178,000、水素添加する前の
ポリブタジエン部の1,2−ビニル結合量が48%であ
る水添ブロック共重合体。
【0074】d−2:ポリスチレン−水素添加されたポ
リブタジエン−ポリスチレンの構造でり、結合スチレン
量が60重量%、数平均分子量が113,000、水素
添加する前のポリブタジエン部の1,2−ビニル結合量
が44%である水添ブロック共重合体。
【0075】(e)成分の無機フィラー e−1:ガラスフレーク:平均粒径600μm、平均厚
み5μm、平均アスペクト比5120のアミノシラン処
理されたガラスフレーク
【0076】e−2:ガラス繊維:直径13μm、平均
長さ3mmのアミノシラン処理されたガラス繊維
【0077】e−3:マイカ:平均フレーク径90μm
のアミノシラン処理されたマイカ
【0078】(f)成分(その他の付加的成分)の共重
合体 f−1:グリシジルメタクリレートを6重量%含有する
エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体。(ボン
ドファースト2C:住友化学社製)
【0079】f−2:グリシジルメタクリレートを12
重量%含有するエチレン−グリシジルメタクリレート共
重合体。(ボンドファーストE:住友化学社製)
【0080】実施例1〜14および比較例1〜15 表1〜表3に示した(a)〜(f)の各成分を、温度2
90〜310℃、スクリュー回転数500rpmに設定
した二軸押出機(ZSK−40;WERNER&PFL
EIDERER社製、ドイツ国)を用い、押出機の第一
原料供給口より(a)成分〜(d)成分を供給して溶融
混練し、第二原料供給口より(e)成分および(f)成
分を供給し溶融混練しポリフェニレンスルフィド樹脂組
成物をペレットとして得た。
【0081】このペレットを用いて290〜310℃に
設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、
金型温度130℃の条件で引張試験用テストピース、ウ
ェルド引張試験用テストピース、アイゾット衝撃試験用
テストピースおよび荷重撓み温度(DTUL)測定用テ
ストピースを射出成形した。
【0082】つぎに、これらのテストピースを用いて引
張強度試験(ASTM D−638に準拠:測定温度2
3℃)を行ない、引張強度およびウェルド引張強度を測
定し、アイゾット(厚み1/8、ノッチ付き)衝撃強度
(ASTM D−256に準拠:測定温度23℃)およ
び荷重撓み温度:DTUL(ASTM D−648:
1.82MPa荷重)を測定した。これらの結果を併せ
て表1に載せた。
【0083】また実施例1〜7で得たポリフェニレンス
ルフィド樹脂組成物の引張試験片の中央部のモルフォロ
ジーを透過型電子顕微鏡を用いて写真にして観察したと
ころ、マトリックスであるポリフェニレンスルフィド中
にポリフェニレンエーテル樹脂が約1μmで分散し、且
つ、分散相ポリフェニレンエーテル中に水添ブロック共
重合体が分散して存在することが確認できた。
【0084】これらの結果より、ポリフェニレンスルフ
ィド樹脂中のオリゴマー量の指標である塩化メチレンに
よる抽出量が0.7重量%を超えるポリフェニレンスル
フィド樹脂を用いた場合、靱性(衝撃強度)およびウェ
ルド引張強度が著しく低下することが明らかとなった。
さらに、ポリフェニレンスルフィド樹脂中のオリゴマー
量の指標である塩化メチレンによる抽出量が0.7重量
%以下であっても、ポリフェニレンスルフィド樹脂中に
存在する−SX基(Sはイオウ原子、Xはアルカリ金属
または水素原子である)量が15μmol/gに満たな
いポリフェニレンスルフィド樹脂を用いた場合、靱性
(衝撃強度)およびウェルド引張強度が著しく低下する
ことが明らかとなった。
【0085】また更に、用いる(c)成分である混和剤
のエポキシ基およびまたはオキサゾニル基を有する不飽
和モノマーとスチレンを主たる成分としたモノマーを共
重合した共重合体において、かかる官能基モノマー量が
20重量%を超える共重合体を用いた場合、靱性(衝撃
強度)およびウェルド引張強度が著しく低下することが
明らかとなった。
【0086】実施例15 実施例1で得たポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を
用いて、密閉型二次電池電槽として要求される耐熱クリ
ープ性能をクリープ試験機(安田精機製作所(株)製、
145−B−PC型)を用いて、幅4mm×厚み1mm
×長さ70mmのダンベル片を用いて、チャック間40
mm間に応力12.25MPa相当の荷重で、温度95
℃の条件で、歪み伸度が20mmに到達する時間を測定
したところ、5000時間経過しても6mmであり密閉
型二次電池電槽用材料として十分な性能を示すことが明
らかになった。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【発明の効果】本発明のポリフェニレンスルフィド樹脂
組成物は、供するポリフェニレンスルフィド樹脂とし
て、特定したオリゴマー量および特定の官能基量を有す
るポリフェニレンスルフィド樹脂と特定の官能基量を有
する混和剤を用いることによってポリフェニレンスルフ
ィド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂およびブロック
共重合体からなる樹脂組成物に対して靱性(衝撃強
度)、ウェルド強度が顕著に改良された効果をもたら
す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 25:08 C08L 25:08 53:02) 53:02) (C08L 81/02 (C08L 81/02 71:12 71:12 25:08 25:08 53:02) 53:02) (72)発明者 箕西 国秋 千葉県袖ヶ浦市中袖5番地1 旭化成株式 会社内 Fターム(参考) 4J002 BC043 BP014 CH07X CN01W DA016 DA026 DA036 DA066 DE076 DE096 DE136 DE146 DE186 DE236 DF016 DF036 DG046 DJ006 DJ016 DJ046 DJ056 DK006 DL006 FA016 FA046 FA066 FA086 FD016

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)塩化メチレンによる抽出量が0.
    7重量%以下であり、かつ−SX基(Sはイオウ原子、
    Xはアルカリ金属または水素原子である)が15μmo
    l/g以上であるポリフェニレンスルフィド樹脂1〜9
    9重量部、(b)ポリフェニレンエーテル樹脂99〜1
    重量部、ならびに(a)成分と(b)成分の合計100
    重量部あたり(c)混和剤としてエポキシ基および/ま
    たはオキサゾニル基を有する不飽和モノマーを0.3〜
    20重量%の割合でスチレンを主たる成分とするモノマ
    ーと共重合してなる共重合体1〜20重量部、さらに
    (a)成分と(b)成分の合計100重量部あたり
    (d)ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個
    の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする少
    なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共
    重合体および/または該ブロック共重合体を水素添加し
    てなる水添ブロック共重合体0〜40重量部、そしてさ
    らに(a)成分〜(d)成分の合計100重量部あたり
    (e)無機フィラー0〜300重量部からなることを特
    徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の樹脂組成物のモルフォロ
    ジーが、海−島−湖の多次構造を示し、かかる海相であ
    るマトリックスを形成する成分が(a)成分のポリフェ
    ニレンスルフィド樹脂であり、分散相を形成する島相の
    成分が(b)成分のポリフェニレンエーテル樹脂であ
    り、さらにその島相中に共存する湖相が(d)成分のビ
    ニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体
    ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする少なくとも
    1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体お
    よび/または該ブロック共重合体を水素添加してなる水
    添ブロック共重合体であり、且つ、(d)成分が1〜3
    5重量部含むことを特徴とするポリフェニレンスルフィ
    ド樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の樹脂組成物が、(e)成
    分の無機フィラーを1〜200重量部含むことを特徴と
    するポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 (a)成分のポリフェニレンスルフィド
    樹脂の溶融粘度(フローテスターを用いて、300℃、
    荷重20Kgf/cm2、L/D=10/1で6分間保
    持した値。)が1〜10000ポイズであることを特徴
    とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のポリフェニ
    レンスルフィド樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 (d)成分がビニル芳香族化合物を主体
    とする少なくとも1個の重合体ブロックAと共役ジエン
    化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックB
    とからなるブロック共重合体を水素添加して成る水添ブ
    ロック共重合体であり、且つ、かかる水添ブロック共重
    合体の構造がポリスチレン−水素添加されたポリブタジ
    エン−ポリスチレンであり数平均分子量が20000〜
    300000であり、さらに結合スチレン量が10〜8
    0重量%であることを特徴とする請求項1または2記載
    のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  6. 【請求項6】 (e)成分の無機フィラーが、無機塩、
    ガラス繊維(ガラス長繊維、チョップドストランドガラ
    ス繊維)、ガラスフレーク、ガラスビーズ、カーボン繊
    維、ウィスカ、マイカ、タルク、カーボンブラック、酸
    化チタン、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、ワラス
    トナイト、熱伝導性物質(グラファイト、窒化アルミニ
    ウム、窒化ホウ素、アルミナ、酸化ベリリウム、二酸化
    ケイ素、酸化マグネシウム、硝酸アルミニウム、硫酸バ
    リウムなど)、導電性金属繊維、導電性金属フレーク、
    導電性を示すカーボンブラック、導電性を示すカーボン
    ファイバーであることを特徴とする請求項1または3記
    載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  7. 【請求項7】 (a)塩化メチレンによる抽出量が0.
    7重量%以下であり、かつ−SX基(Sはイオウ原子、
    Xはアルカリ金属または水素原子である)が15μmo
    l/g以上であるポリフェニレンスルフィド樹脂1〜9
    9重量部、(b)ポリフェニレンエーテル樹脂99〜1
    重量部、ならびに(a)成分と(b)成分の合計100
    重量部あたり(c)混和剤としてエポキシ基およびまた
    はオキサゾニル基を有する不飽和モノマーを0.3〜2
    0重量%の割合でスチレンを主たる成分とするモノマー
    と共重合してなる共重合体1〜20重量部、さらに
    (a)成分と(b)成分の合計100重量部あたり
    (d)ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個
    の重合体ブロックAと共役ジエン化合物を主体とする少
    なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共
    重合体およびまたは該ブロック共重合体を水素添加して
    なる水添ブロック共重合体0〜40重量部、そしてさら
    に(a)成分〜(d)成分の合計100重量部あたり
    (e)無機フィラー0〜300重量部からなることを特
    徴とする二次電池電槽用ポリフェニレンスルフィド樹脂
    組成物。
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