JP2002000287A - 不飽和ラクトンを含有する液体組成物の製造法および不飽和ラクトンを含有する蒸留酒 - Google Patents

不飽和ラクトンを含有する液体組成物の製造法および不飽和ラクトンを含有する蒸留酒

Info

Publication number
JP2002000287A
JP2002000287A JP2000221535A JP2000221535A JP2002000287A JP 2002000287 A JP2002000287 A JP 2002000287A JP 2000221535 A JP2000221535 A JP 2000221535A JP 2000221535 A JP2000221535 A JP 2000221535A JP 2002000287 A JP2002000287 A JP 2002000287A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
unsaturated
lactone
unsaturated lactone
yeast
acid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000221535A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiroshi Shoji
博志 小路
Akira Wanikawa
彰 鰐川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nikka Whisky Distilling Co Ltd
Original Assignee
Nikka Whisky Distilling Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nikka Whisky Distilling Co Ltd filed Critical Nikka Whisky Distilling Co Ltd
Priority to JP2000221535A priority Critical patent/JP2002000287A/ja
Publication of JP2002000287A publication Critical patent/JP2002000287A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Alcoholic Beverages (AREA)
  • Fats And Perfumes (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明はアルコール飲料、食品、香料などの
香気成分として有用な不飽和ラクトンを高濃度含有した
液体組成物の製造法と、不飽和ラクトンを含有する付加
価値の高い蒸留酒を提供する。 【構成】 リノール酸やリノレン酸など二重結合を2つ
以上有する不飽和脂肪酸を死滅した酵母の存在下に、乳
酸菌などによりヒドロキシル化した後、酵母などのベー
タ酸化能を有する微生物を作用させて不飽和ラクトンを
含有する液体組成物を製造する。さらに、飽和型のガン
マーラクトンよりもオフフレーバーのマスク効果が強
く、濃厚でファッティーな甘さを有する不飽和ラクトン
を含有する蒸留酒を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は食品にも使用されている
不飽和脂肪酸を基質として用い、炭素、炭素二重結合を
開烈して水酸基を導入することができる微生物によって
ヒドロキシル化し、さらにベータ酸化能を持つ第2の微
生物によって処理することによってアルコール飲料、食
品、香料などに用いることができる不飽和ラクトンを高
濃度含有するようになった液体組成物の製造法と不飽和
ラクトンを含有することによって甘い香が付与され、オ
フフレーバーがマスクされた蒸留酒に関する。
【0002】
【従来の技術】環状エステルであるラクトン類のうち、
ガンマーデカラクトンやガンマードデカラクトンはピー
チに似た甘い香りを持っており、従来より香料の調製成
分として用いられてきた。これらのラクトン類のうち、
ラクトン環の側鎖に不飽和結合を持った不飽和ラクトン
も極めて甘い芳香を持っている。特に、ガンマードデカ
ラクトンの側鎖に不飽和結合を持った6−ドデセン−4
−オライドと6、9−ドデカジエン−4−オライドは、
ガンマードデカラクトンよりさらに濃厚な甘い香を持っ
ており、食品、香粧品の調合用素材としてこれまでのも
のと差別化できる有用な素材である。一方、これまでに
蒸留酒から不飽和ラクトンが検出されたことはなく、ま
た、不飽和ラクトンの添加による蒸留酒の品質の改善に
ついても報告されていない。ガンマードデカラクトンの
構造式を化1に、6−ドデセン−4−オライドの構造式
を化2に、また6、9−ドデカジエン−4−オライドの
構造式を化3に示す。
【0003】
【化1】
【0004】
【化2】
【0005】
【化3】
【0006】ガンマーデカラクトン、ガンマードデカラ
クトンなどのガンマーラクトンは、果実などの天然物に
含有されているが、一般的に含有量が極めて少ないた
め、天然物から分離精製し、利用することは極めて困難
である。さらに、不飽和ラクトンは自然界にはほとんど
存在しないため、産業的に利用することは困難である。
化学合成法によるガンマーラクトン類の製造法として
は、第1級アルコールとアクリル酸エステルとを有機過
酸化物と鉱酸および/または有機酸存在下に反応させて
合成する方法(特開昭55−133371号公報)、第
1級アルコールならびに第2級アルコールと2−アルケ
ン酸エステル類から有機過酸化物および含窒素化合物の
存在下または1、1−ビス−t−ブチルパーオキシシク
ロヘキサンの存在下に加熱反応によって合成する法(特
開平4−275282号公報および特開平4−2752
83号公報)などが開示されている。また、不飽和ラク
トンの化学合成法についてはJournal of O
rganic Chemistry(1979)vo
l.44,No.13,pp2169−2175に報告
されている。
【0007】一方、微生物を利用した発酵法によるガン
マーラクトン類の生産も試みられている。特開昭59−
82090号および特開昭61−238708号公報に
は、ヒマシ油(カスターオイル)を、サッカロミセス
(Saccharomyces)属、ハンゼヌラ(Ha
nsenula)属、キャンディダ(Candida)
属及びピキア(Pichia)属酵母を用いて発酵処理
し、ヒマシ油中の構成脂肪酸の90%を占めるリシノー
ル酸から、ガンマーデカラクトンを生成させ、皮膚感を
良好にし、不快臭を除去し、香気を改良する方法が開示
されている。また特開平3−117494号公報には、
ヒドロキシ脂肪酸を基質として酵母を用いてガンマーラ
クトンを生成する方法が、特開平3−198787号公
報には、10−オキシステアリン酸からベータ酸化能を
有する微生物によってガンマードデカラクトンを生産す
る方法が開示されている。さらに、特開平7−2749
86号公報、特開平7−327689号公報には、オレ
イン酸やパルミトオレイン酸からガンマードデカラクト
ンやガンマーデカラクトンを製造する方法が開示されて
いる。また、Thomas Haffnerらは、酵母
スポロボロミセス・オドラス(Sporobolomy
ces odurus)だけを用いてリノール酸やリノ
レン酸から不飽和ラクトンを生物的に生成する方法を報
告している(Helvetica Chimica A
cta(1996)vol.79,No.8,pp.2
088−2099)。さらに、カビの一種であるペニシ
リウム・ロックフォルチ(Penicillium r
oqueforti)を用いてリノール酸から不飽和ラ
クトンを生成する方法(Chirality(199
8)vol.10,pp.786−790)や、カビの
一種フザリウム・ポアエ(Fusarium poa
e)が不飽和ラクトンを生成できること(Chiral
ity(1993)vol.5,pp.379−38
4)が、開示されている。しかしながら、これら方法は
産業的に利用するには収率が低く、また、一般に食品製
造に用いられていないスポロボロミセスやフザリウムは
食品として用いた場合の安全性に問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】不飽和ラクトンは香料
として食品に添加したり、芳香成分として高濃度含有す
る食品、飲料、アルコール飲料などを製造する用途があ
るが、食品としての安全性を考慮すると、複雑な化学合
成工程は含まないことが望ましい。さらに、古くから食
品に用いられ、有害な副産物の産生のないことが判明
し、安全性の確立した食品級の微生物を用いた方法の開
発が強く望まれている。また、食品として利用すること
を鑑み、オフフレーバーを生成しない微生物を利用した
不飽和ラクトンの生成方法の開発が必要とされている。
【0009】蒸留酒とはアルコールを含有する発酵液を
蒸留することによって製造した酒類を言い、ウイスキ
ー、ブランデー、焼酎、ジン、ウオッカなどが含まれ
る。一般に、蒸留した直後の蒸留液には、良好な芳香と
ともに、オフフレーバーと呼ばれる不快臭が感じられ
る。このオフフレーバーを減少させ、良好な芳香を引き
出すために、蒸留条件を常圧から減圧下にしたり、蒸留
液を樹脂で処理したり、あるいは、樽などで熟成させる
手法が開発されている。付加価値が高く、差別化できる
芳香を付与した上で、さらにオフフレーバーをマスク
し、蒸留液の持つ良好な芳香を引き出す手法の開発が望
まれている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者たちは、二重結
合を2つ以上持った不飽和脂肪酸を第一の微生物によっ
てヒドロキシ化し、さらに、ベータ酸化能を有する微生
物で処理することによって不飽和ラクトンを高濃度含有
する液体組成物の生成に成功した。
【0011】基質として用いる二重結合を2つ以上持っ
た不飽和脂肪酸としては、リノール酸(オクタデカジエ
ン酸)やリノレン酸(オクタデカトリジエン酸)をあげ
ることができる。第1微生物によってヒドロキシ化で
き、さらにラクトン環化ができる構造の不飽和脂肪酸で
あれば、脂肪族鎖が分枝鎖を含む分枝鎖脂肪酸であって
も、直鎖脂肪酸であっても、好適に用いることができ
る。また、不飽和脂肪酸の炭素数にも特にこだわらない
が、炭素数18のリノール酸やリノレン酸を好適に用い
ることができる。さらに、精製された不飽和脂肪酸を用
いるばかりではなく、これらの不飽和脂肪酸を高含有す
る組成物を用いてもよい。このような組成物としては、
リノール酸を含有するとうもろこしや大豆、サフラワー
油などをあげることができる。こららの組成物は、その
まま、あるいは加熱、酵素処理など公知の方法により、
含有する不飽和脂肪酸が微生物によって利用できるよう
にして用いる。
【0012】二重結合を2つ以上持った不飽和脂肪酸は
乳酸菌が増殖するために適当な培地に懸濁する。不飽和
脂肪酸の濃度は、培地中に分離せずに懸濁していればど
のような濃度でも用いることができるが、50ppmか
ら500ppmが望ましく、100ppmから200p
pmがさらに望ましい。二重結合を2つ以上持った不飽
和脂肪酸が懸濁しやすいように、適当な界面活性剤を添
加してもよい。界面活性剤は、乳酸菌の増殖を阻害しな
い濃度で使用することが望ましい。乳酸菌が生育できる
培地としては、麦芽より作成した麦汁の他、2%ペプト
ン、1%酵母エキスからなるYP培地、市販されている
MRS培地、GYP培地などが好適に用いられる。二重
結合を2つ以上持った不飽和脂肪酸を大量に含有し、乳
酸菌が増殖できるような成分を含有する組成物を培地と
して用いることもできる。このような組成物の例として
は、とうもろこしを原料として酵母によりアルコール発
酵させた醪を蒸留した残渣(メイズ蒸留廃液と言う)を
あげることができる。メイズ蒸留廃液は、バーボンウイ
スキーやグレンウイスキーの製造の際の副産物として製
造される。このような組成物はそれ単独で用いてもよい
が、乳酸菌用の培地と混和して用いることもできる。
【0013】二重結合を2つ以上持った不飽和脂肪酸を
培地に懸濁する際に、死滅した酵母菌体を共存させるこ
とが望ましい。酵母としては、例えば、サッカロミセス
(Saccharomyces)属、ピキア(Pich
ia)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、カン
ディダ(Candida)属、クリベロミセス(Klu
yveromyces)属などをあげることができる。
かかる菌株としては、サッカロミセス属の市販パン酵母
や、清酒醸造用酵母(日本醸造協会より市販)、あるい
はSaccharomyces cerevisiae
S288C(米国酵母遺伝保存センター分譲菌)など
の公知自由分譲株を例示することができる。また、Pi
chia farinosa、Candida uti
lis、Hansenula anomala、Klu
yveromyces lactisなどの公知自由分
譲株を用いることも可能であるが、特に古来より発酵製
品の生産に安全に用いられてきたサッカロミセス属酵母
が有利である。
【0014】酵母菌は適当な培地で増殖させ、遠心およ
び/またはろ過などの公知の方法で集菌し、洗浄する。
さらに、集められた酵母菌体を適当な方法で死滅させ
る。死滅させる方法としては、加熱処理、凍結融解処
理、アルコールやアセトンなどの有機溶媒への懸濁処
理、長期間の保存、ガンマー線処理などがあげられる。
殺菌処理時の酵母菌体の形態も、乾燥状態、菌体懸濁水
溶液、脱水プレス酵母など、どのような状態で殺菌処理
を行ってもよい。死滅した酵母菌体を、二重結合を2つ
以上持った不飽和脂肪酸を懸濁した培地に添加する。添
加する量は、一般に培地1mlあたり10〜10
が望ましく、10〜10個が特に好適に用いられ
る。また、メイズ蒸留廃液のように死滅した酵母菌体が
すでに適切な濃度で含まれている組成物には、さらに死
滅した酵母菌体を添加しなくてもよい。
【0015】二重結合を2つ以上持った不飽和脂肪酸と
死滅した酵母菌体を懸濁した培地に、二重結合を2つ以
上持った不飽和脂肪酸をヒドロキシル化する能力を持っ
た微生物を接種する。この能力を持った微生物として
は、シュードモナス(Pseudomonas)属
(J.Biol.Chem.(1974)vol.24
9,pp.2833−)、コリネバクテリウム(Cor
ynebacterium)属(J.Biol.Che
m.(1966)vol.241,pp.5441
−)、ノカルディア(Nocardia)属(App
l.Envirom.(1992)pp.2116−)
などが知られており、不飽和ラクトンの生成にはどの菌
株を用いることも可能であるが、従来より食品製造に用
いられ、安全性の確立している乳酸菌類を用いることが
望ましい。乳酸菌とは、炭水化物を分解し、主に乳酸を
生産する細菌類の総称であり、ラクトバチルス(Lac
tobacillus)属、ストレプトコッカス(St
reptococcus)属、ロイコノストック(Le
uconostoc)属、ペディオコッカス(Pedi
ococcus)属などを例示することができる。例え
ば、Lactobacilluscasei JCM1
163、Lactobacillus plantar
um IAM1041、Pediococcus pe
ntosaceus IAM1215、Leucono
stoc mesenteroides IAM123
3などをあげることができる。これらの菌株は、大阪の
発酵研究所、埼玉の理化学研究所などの公知自由分譲株
として入手することができる。
【0016】乳酸菌は、一般に乳酸菌の培養に用いる培
地、例えばMRS培地やV8培地などで培養液1mlあ
たり10〜1010個になるまで前培養する。前培養
液はそのままあるいは、遠心処理、膜処理などによって
濃縮した後、加える乳酸菌が本培養液1mlあたり10
〜10個になるように植菌する。このまま、約10
℃から約40℃、好ましくは20℃から30℃にて12
時間から48時間振とう、攪拌などによって好気的にあ
るいは静置培養する。この間に、二重結合を2つ以上持
った不飽和脂肪酸が相当するヒドロキシ脂肪酸に変化す
る。
【0017】ヒドロキシル化した不飽和脂肪酸を含む培
地にベータ酸化能を有する微生物を植菌する。ほとんど
すべての真核細胞生物がベータ酸化能を持っていること
が知られているが、ここで用いる微生物としては、例え
ば、サッカロミセス(Saccharomyces)
属、ピキア(Pichia)属、ハンゼヌラ(Hans
enula)属、カンディダ(Candida)属、ク
リベロミセス(Kluyveromyces)属などを
あげることができる。かかる菌株としては、サッカロミ
セス属の市販パン酵母や、清酒醸造用酵母(日本醸造協
会より市販)、あるいはSaccharomyces
cerevisiae S288C(米国酵母遺伝保存
センター分譲菌)などの公知自由分譲株を例示すること
ができる。また、Pichia farinosa、C
andida utilis、Hansenula a
nomala、Kluyveromyces lact
isなどの公知自由分譲株を用いることも可能である
が、特に古来より発酵製品の生産に安全に用いられてき
たサッカロミセス属酵母が有利である。
【0018】これらのベータ酸化能を有する微生物を、
培養液1mlあたり10〜10個になるように植菌
し、約10℃から約40℃、好ましくは20℃から30
℃にて培養を行なう。培養方法は一般微生物の培養方法
に準じて行なわれるが、好気的培養法が有利である。こ
れは、一般にベータ酸化が好気的反応であることに由来
するが、静置培養法でも、培養開始時に溶解していた溶
存酸素によって不飽和ラクトンの生成が行なわれる。好
気的培養は、振盪、攪拌、通気攪拌などによって行なう
ことができる。培養時間は、培地組成や、培養温度など
に応じて適宜設定できるが、酵母が培養液1mlあたり
10個程度になるまで培養することが好ましく、一般
に24時間から72時間必要である。また、このベータ
酸化工程を先に示したヒドロキシル化工程と同時に行な
うこともできる。すなわち、ベータ酸化能を持った微生
物とヒドロキシル化能を持った微生物を同時に植菌し、
適宜設定された条件で培養することによっても不飽和ラ
クトンの生成を行なうことが可能である。
【0019】菌株の接種や培養液の回収などの工程は、
従来一般に行なわれている方法に従って行なうことがで
きる。また、微生物の培養液より物質を単離するために
一般に用いられている方法を用いて生成した液体組成物
より不飽和ラクトンを単離することもできる。培養液に
不飽和ラクトンが蓄積しているので、遠心処理などによ
って菌体と培養液を分離した後、あるいは、菌体が培養
液中に懸濁した状態のまま、不飽和ラクトンを抽出精製
することもできる。不飽和ラクトンは有機溶媒に溶解
し、比較的高い沸点を持つので、有機溶媒での抽出や蒸
留、カラムクロマトグラフィーなどの手段によって精製
した後、有機溶媒を留去し、高純度、高品質の不飽和ラ
クトンを提供することもできる。
【0020】不飽和ラクトンを含有する液体組成物にエ
タノールを含有する液体を添加し、あるいは、添加した
後、蒸留してもよい。エタノールを含有する液体として
は、例えば、アルコール飲料を製造するために醸造した
発酵液、エタノールを含有する水溶液などがあげられ
る。発酵液は、ウイスキー、ビール、ワイン、焼酎、清
酒などを製造する途中の醸造液でもよい。これらを用い
た場合には、相当する蒸留酒が製造できる。
【0021】不飽和ラクトンを蒸留酒に添加すると、著
しい酒質の改善が見られる。蒸留酒に添加する不飽和ラ
クトンの濃度は、100ppbより1ppmが望まし
く、さらには200ppbより400ppbが好まし
い。オフフレーバーのマスク効果は100ppbでも充
分であるが、不飽和ラクトンの持つ甘い香を付与する目
的には、やや多めに添加してもよい。不飽和ラクトン
は、製造された蒸留酒に添加してもよいし、蒸留前の発
酵液に添加した後蒸留してもよい。添加する不飽和ラク
トンの形態も特に限定されず、精製した標品を用いても
よいし、不飽和ラクトンを含有する培養液のまま用いて
もよい。さらに、不飽和ラクトンの製造法も本発明で示
された製造法を用いてもよいし、化学合成法やカビなど
を用いた製造法で作られた不飽和ラクトンを使用しても
よい。
【0022】本発明において、二重結合を2つ以上持っ
た不飽和脂肪酸を基質として用いて不飽和ラクトンが生
成する詳細なメカニズムは必ずしも明らかではないが、
二重結合を2つ以上持った不飽和脂肪酸が乳酸菌により
ヒドロキシル化されることから始まるものと考えられ
る。ヒドロキシル化された相当する脂肪酸は、さらにベ
ータ酸化されて不飽和ラクトンに変換される。
【0023】
【実施例】以下に実施例を記して具体的に説明するが、
本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるもの
ではない。下記の実施例中ラクトン類の分析は、得られ
た液体組成物をOASIS(ミリポア社)カラムで分離
した後、ガスクロマトグラフィーを用いて行なった。
【0024】(参考例1)アルコール産生酵母サッカロ
ミセス・セレビシエN130(寄託番号FERMP−1
6364)株を糖蜜培地(全糖2.4%、尿素0.14
%、リン酸0.0087%)で培養し、集菌した後滅菌
水でよく洗浄した。集めた菌体は、素焼き板上で脱水し
て脱水固形酵母を作製した。その0.6gを水で10倍
に希釈した麦汁20mlに懸濁した後、100ppmの
リノール酸またはα−リノレン酸を添加した。このとき
の酵母濃度は10/mlであった。さらに、乳酸菌ラ
クトバチルス・カゼイ(Lactobacillus
casei)N5054(寄託番号FERM P−16
367)を培地1mlあたり10個になるように植菌
し、そのまま24時間静置培養した後、アルコール産生
酵母サッカロミセス・セレビシエN130を1mlあた
り10個になるように植菌して24時間振盪培養し
た。この培養液に含まれる不飽和ラクトン(6−ドデセ
ン−4−オライドおよび6、9−ドデカジエン−4−オ
ライド)の濃度を測定した。結果を表1に示した。
【0025】(実施例1)参考例1に示した方法で作製
した脱水固形酵母菌体0.6gを121℃で15分間オ
ートクレーブ処理を行ない、完全に死滅させた。室温ま
で冷却後、参考例1と同じように水で10倍に希釈した
麦汁20mlに懸濁した後、100ppmのリノール酸
またはα−リノレン酸を添加した。充分に懸濁した後、
乳酸菌ラクトバチルス・カゼイN5054を培地1ml
あたり10個になるように植菌し、そのまま30℃で
24時間静置培養した。さらに、サッカロミセス・セレ
ビシエN130を1mlあたり10個になるように植
菌し、30℃で24時間振盪培養した。この培養液に含
まれる不飽和ラクトン(6−ドデセン−4−オライドお
よび6、9−ドデカジエン−4−オライド)の濃度を測
定した。結果を表1に示した。
【0026】
【表1】
【0027】表1に示されているように、オートクレー
ブ処理によって完全に死滅した酵母菌体とリノール酸あ
るいはリノレン酸が添加された場合には、大量の不飽和
ラクトン(6−ドデセン−4−オライドおよび6、9−
ドデカジエン−4−オライド)が生成することが判明し
た。一方、基質であるリノール酸やリノレン酸が添加さ
れなかった場合には、不飽和ラクトンは生成されなかっ
た。また、基質が存在しても、生きている酵母菌体が添
加された場合や、酵母菌体が添加されなかった場合に
は、不飽和ラクトンである6−ドデセン−4−オライド
および6、9−ドデカジエン−4−オライドは全く生成
されなかった。なお、表には記載してはいないが、リノ
ール酸を添加した場合には6−ドデセン−4−オライド
が、リノレン酸を添加した場合には6、9−ドデカジエ
ン−4−オライドが生成した。
【0028】(実施例2)グレンウイスキーを製造する
際に生産されるメイズ蒸留廃液を用いて不飽和ラクトン
を製造した。グレンウイスキーの製造現場からメイズ蒸
留廃液40mlを入手し、乳酸菌ラクトバチルス・カゼ
イN5054を廃液1mlあたり10個になるように
植菌し、そのまま30℃で24時間静置培養した。この
とき、メイズ蒸留廃液中の死滅酵母の菌数は約10
mlであった。培養後、酵母サッカロミセス・セレビシ
エN130の生菌を1mlあたり10個になるように
植菌し、30℃で24時間振盪培養した。この培養液に
含まれる6−ドデセン−4−オライドの濃度を測定した
ところ、16ppmもの濃度で生成されていることが確
認された。
【0029】(実施例3)不飽和ラクトンを含有するス
ピリッツを製造した。糖蜜をBrix16となるように
加水希釈し、さらに尿素0.1%を加えた培地400m
lを調整し、実施例2と同様にして作製した不飽和ラク
トン含有組成物を添加した。添加量は10ml、20m
lの2点で行った。また、加熱処理した酵母菌体を基質
として用い、ガンマーデカラクトンとガンマードデカラ
クトンを含有する液体組成物も特開平11−12788
6号広報に開示されている方法で製造し、400mlの
糖蜜培地に20ml添加した糖蜜培地も作製した。各糖
蜜培地に酵母を添加して30℃で3日間発酵させた。発
酵液終了液はガラス蒸留器を用いて常圧での蒸留を2回
繰り返し、最終的にアルコール濃度65%のスピリッツ
を製造した。さらに、製造されたスピリッツの官能検査
を7名の専門パネラーを用いて5点法で行った。表2に
製造したスピリッツ中の不飽和ラクトンの濃度と官能検
査の平均点を示した。官能検査では、点数の高い標品が
良い評価を受けたことになる。
【0030】
【表2】
【0031】表には記載していないが、ガンマーラクト
ンを含有する液体組成物を添加したスピリッツには、不
飽和ラクトンは含まれていなかったが、ガンマーデカラ
クトンとガンマードデカラクトンがあわせて650pp
b含まれていた。不飽和ラクトンを含有するスピリッツ
は甘い特徴香を有しており、200ppb程度の濃度で
も、添加していないものよりもはるかに高い評価を得
た。不飽和ラクトンの持つ甘い香は、ガンマーラクトン
類の持つ甘い香とよく似ていたが、ガンマーラクトン類
よりも濃厚な甘さ、ファッティーな甘さを有しており、
ガンマーラクトン類の3分の1の濃度でほぼ同じ評価を
受け、3分の2の濃度では高い評価を得た。また、どち
らも樽で貯蔵していない蒸留酒の持つ不快臭をマスクす
る効果を有していたが、不飽和ラクトンはこのマスク効
果も特に強く、高い評価はこの強いマスク効果にも依存
していた。
【0032】
【発明の効果】本発明によって、従来のガンマーラクト
ン類とは異なったタイプの甘い香を有する不飽和ラクト
ンを高濃度含有する液体組成物の製造法が確立した。こ
の方法では、従来から食品の製造に用いられてきた原材
料を用いて、高価な物質を添加したり、新規の設備を導
入したりすることなく、不飽和ラクトンを高濃度含有す
る液体組成物が製造できる。また、本発明では、食品用
の原材料を用いて不飽和ラクトンが製造できるため、直
接発酵食品の品質の向上をもたらすばかりでなく、食品
に添加できる安全性の高い香料の製造法を提供すること
は明らかである。さらに、不飽和ラクトンを添加した蒸
留酒は、オフフレーバーがマスクされ、甘い芳香を持つ
付加価値の高い製品となることも明らかである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) (C12P 17/04 (C12P 17/04 C12R 1:78) C12R 1:78) (C12P 17/04 (C12P 17/04 C12R 1:645) C12R 1:645) (C12P 17/04 (C12P 17/04 C12R 1:72) C12R 1:72) (C12P 17/04 (C12P 17/04 C12R 1:84) C12R 1:84) Fターム(参考) 4B015 NB01 NB02 NG07 NG14 NG17 NP01 NP02 4B064 AE45 CA02 CA06 CD07 CE01 DA10 4H059 BA36 BB15 BB22 BB44 BC48 DA09

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】二重結合を2つ以上持った不飽和脂肪酸を
    基質として用い、第1微生物によりヒドロキシル化し、
    さらに第1微生物と異なる種に属し、ベータ酸化能を有
    する第2微生物によって処理することを特徴とする、不
    飽和ラクトンを含有する液体組成物の製造方法。
  2. 【請求項2】第1微生物が乳酸菌である請求項1記載の
    方法。
  3. 【請求項3】第2微生物がサッカロミセス属、ハンゼヌ
    ラ属、クリベロミセス属、キャンディダ属酵母、ピキア
    属酵母である請求項1および2記載の方法。
  4. 【請求項4】基質となる不飽和脂肪酸がリノール酸、生
    成する不飽和ラクトンが6−ドデセン−4−オライドで
    ある請求項1から3までのいずれかに記載の方法。
  5. 【請求項5】基質となる不飽和脂肪酸がリノレン酸、生
    成する不飽和ラクトンが6、9−ドデカジエン−4−オ
    ライドである請求項1から3までのいずれかに記載の方
    法。
  6. 【請求項6】二重結合を2つ以上持った不飽和脂肪酸を
    基質として用い、死滅した酵母菌体を共存させることを
    特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の方
    法。
  7. 【請求項7】不飽和ラクトンを含有することを特徴とす
    る蒸留酒。
  8. 【請求項8】不飽和ラクトンが6−ドデセン−4−オラ
    イドおよび/または6、9−ドデカジエン−4−オライ
    ドである請求項7記載の蒸留酒。
JP2000221535A 2000-06-16 2000-06-16 不飽和ラクトンを含有する液体組成物の製造法および不飽和ラクトンを含有する蒸留酒 Pending JP2002000287A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000221535A JP2002000287A (ja) 2000-06-16 2000-06-16 不飽和ラクトンを含有する液体組成物の製造法および不飽和ラクトンを含有する蒸留酒

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000221535A JP2002000287A (ja) 2000-06-16 2000-06-16 不飽和ラクトンを含有する液体組成物の製造法および不飽和ラクトンを含有する蒸留酒

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002000287A true JP2002000287A (ja) 2002-01-08

Family

ID=18715922

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000221535A Pending JP2002000287A (ja) 2000-06-16 2000-06-16 不飽和ラクトンを含有する液体組成物の製造法および不飽和ラクトンを含有する蒸留酒

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2002000287A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008079583A (ja) * 2006-09-29 2008-04-10 Kohjin Co Ltd 乳酸菌培養基材
JP2008519013A (ja) * 2004-11-03 2008-06-05 ヴィ・マン・フィス γ−ウンデセノラクトン、化粧品としての及び食品添加物の形態における、その生産方法及び使用方法
JP2013527184A (ja) * 2010-05-18 2013-06-27 フイルメニツヒ ソシエテ アノニム 香味剤としての5−アルケニル−2−オキソ−テトラヒドロフラン誘導体
JP2014166152A (ja) * 2013-02-28 2014-09-11 Ajinomoto Co Inc 風味素材の製造法
JP6838850B1 (ja) * 2020-06-26 2021-03-03 月桂冠株式会社 γ−ラクトン高含有清酒

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03187387A (ja) * 1989-08-04 1991-08-15 Pernod Ricard γ―及びδ―ラクトン類の微生物学的製造方法
JPH0530981A (ja) * 1991-07-25 1993-02-09 Ngk Insulators Ltd 酵母抽出油脂の製造方法
JPH07327689A (ja) * 1994-06-07 1995-12-19 Nikka Uisukii Kk γ−ドデカラクトン又はγ−デカラクトンを含有する液体組成物の製造方法
JPH11127886A (ja) * 1997-10-28 1999-05-18 The Nikka Wisky Distilling Co Ltd ガンマーデカラクトン及びガンマードデカラクトンを含有する液体組成物の製造方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03187387A (ja) * 1989-08-04 1991-08-15 Pernod Ricard γ―及びδ―ラクトン類の微生物学的製造方法
JPH0530981A (ja) * 1991-07-25 1993-02-09 Ngk Insulators Ltd 酵母抽出油脂の製造方法
JPH07327689A (ja) * 1994-06-07 1995-12-19 Nikka Uisukii Kk γ−ドデカラクトン又はγ−デカラクトンを含有する液体組成物の製造方法
JPH11127886A (ja) * 1997-10-28 1999-05-18 The Nikka Wisky Distilling Co Ltd ガンマーデカラクトン及びガンマードデカラクトンを含有する液体組成物の製造方法

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008519013A (ja) * 2004-11-03 2008-06-05 ヴィ・マン・フィス γ−ウンデセノラクトン、化粧品としての及び食品添加物の形態における、その生産方法及び使用方法
JP2008079583A (ja) * 2006-09-29 2008-04-10 Kohjin Co Ltd 乳酸菌培養基材
JP2013527184A (ja) * 2010-05-18 2013-06-27 フイルメニツヒ ソシエテ アノニム 香味剤としての5−アルケニル−2−オキソ−テトラヒドロフラン誘導体
JP2014166152A (ja) * 2013-02-28 2014-09-11 Ajinomoto Co Inc 風味素材の製造法
JP6838850B1 (ja) * 2020-06-26 2021-03-03 月桂冠株式会社 γ−ラクトン高含有清酒

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN106754580B (zh) 可同时促进酿酒酵母产酒精和风味物质的芽孢杆菌及其应用
JP2009153506A (ja) 蒸留酒の製造方法
Zhao et al. Development of Organic Acids and Volatile Compounds in Cider during Malolactic Fermentation.
CN111378605B (zh) 一株高产挥发性酯类化合物的生物降酸用植物乳杆菌及其在果酒中的应用
KR100915446B1 (ko) 벌꿀을 이용한 식초의 제조방법 및 그로부터 수득되는 식초
Muys et al. Preparation of Optically Active γ-and δ-Lactones by Microbiological Reduction of the Corresponding Keto Acids
JP6158401B1 (ja) 麹菌と乳酸菌を利用した蒸留酒の製造方法
JP2002000287A (ja) 不飽和ラクトンを含有する液体組成物の製造法および不飽和ラクトンを含有する蒸留酒
TUYNENBURGMUYS et al. PREPARATION OF OPTICALLY ACTIVE GAMMA-AND DELTA-LACTONES BY MICROBIOLOGICAL REDUCTION OF THE CORRESPONDING KETO ACIDS.
CN108603153A (zh) 制备乙醇减少的发酵饮料的方法
JP3479342B2 (ja) γ−ドデカラクトン及びγ−デカラクトンを含有する液体組成物の製造方法
JPH03117494A (ja) γ―ラクトンを生成する方法
JP4732970B2 (ja) 蒸留酒の製造方法
JP4020444B2 (ja) γ−ラクトンを含有する液体組成物の製造方法
JP3953601B2 (ja) ガンマーデカラクトン及びガンマードデカラクトンを含有する液体組成物の製造方法
JP3798689B2 (ja) 発泡性清酒及びその製造方法
KR102243418B1 (ko) 신규한 초산발효균주 및 이를 이용한 콤부차 음료의 제조방법
JP2645757B2 (ja) γ―ドデカラクトンの製法
JP2826989B2 (ja) 大豆酢
JP3479337B2 (ja) γ−ドデカラクトンの製造方法
JP2002253289A (ja) 光学活性ラクトンの製造法
JP3151363B2 (ja) トランス−2−ヘキセナール含有組成物の製造方法、及び該組成物を含有する香料組成物
JP2003093084A (ja) 芳香性液状組成物の製造方法並びに飲料及びアルコール飲料
Nardi et al. Fermentation Process
Panda Handbook on Small & Medium Scale Industries (Biotechnology Products): how to start a small scale industry, manufacturing business ideas for small scale industry, small scale manufacturing business ideas, how to start wine and beer processing industry in india, how to start a small business in india, beer processing industry in india, small business manufacturing ideas, most profitable wine and beer manufacturing business ideas, profitable small scale industries, tea processing projects

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070508

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20070508

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100216

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100326

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100525

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20101026