JPH11127886A - ガンマーデカラクトン及びガンマードデカラクトンを含有する液体組成物の製造方法 - Google Patents
ガンマーデカラクトン及びガンマードデカラクトンを含有する液体組成物の製造方法Info
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- JPH11127886A JPH11127886A JP9295387A JP29538797A JPH11127886A JP H11127886 A JPH11127886 A JP H11127886A JP 9295387 A JP9295387 A JP 9295387A JP 29538797 A JP29538797 A JP 29538797A JP H11127886 A JPH11127886 A JP H11127886A
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Abstract
として有用なガンマーデカラクトン及び/又はガンマー
ドデカラクトンを高濃度含有した液体組成物の製造方法
を提供する。 【解決手段】 不飽和脂肪酸を含有する酵母菌体を基質
として用い、当該基質に含有される不飽和脂肪酸を、乳
酸菌などの不飽和脂肪酸のヒドロキシル化能を有する第
1微生物によりヒドロキシル化した後、酵母などのベー
タ酸化能を有する第2微生物を作用させて、ガンマーデ
カラクトン及び/又はガンマードデカラクトンを含有す
る液体組成物を製造する。
Description
用されている酵母菌体を基質として用い、この酵母菌体
に含まれる不飽和脂肪酸を、不飽和脂肪酸のヒドロキシ
ル化能を有する第1の微生物によってヒドロキシル化
し、更にベータ酸化能を持つ第2の微生物によって処理
することにより、アルコール飲料、食品、香料などに用
いることができるガンマーデカラクトン及び/又はガン
マードデカラクトンを含有する液体組成物を製造する方
法に関する。
ガンマーデカラクトン、ガンマードデカラクトンなどは
ピーチに似た甘い香を持っており、従来より香料の調製
成分として用いられている。また、これらは食品、香粧
品の調合用素材としても有用である。ガンマーデカラク
トンとガンマードデカラクトンの構造式を化1に示す。
ン、n=7がガンマードデカラクトンである。)
クトンなどのガンマーラクトンは、果実などの天然物に
含有されているが、一般的に含有量が極めて少ないた
め、天然物から分離精製し、利用することは極めて困難
である。化学合成法によるガンマーラクトン類の製造法
としては、特開昭55−133371号公報に、第1級
アルコールとアクリル酸エステルとを有機過酸化物と鉱
酸及び/又は有機酸の存在下に反応させて合成する方法
が開示されている。
特開平4−275283号公報には、第1級アルコール
並びに第2級アルコールと2−アルケン酸エステル類か
ら有機過酸化物及び含窒素化合物の存在下又は1、1−
ビス−t−ブチルパーオキシシクロヘキサンの存在下に
加熱反応によって合成する方法などが開示されている。
マーラクトン類の生産も試みられている。特開昭59−
82090号及び特開昭61−238708号公報に
は、ヒマシ油(カスターオイル)を、サッカロミセス
(Saccharomyces)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、キ
ャンディダ(Candida)属及びピキア(Pichia)属酵母
を用いて発酵処理し、ヒマシ油中の構成脂肪酸の90%
を占めるリシノール酸から、ガンマーデカラクトンを生
成させ、皮膚感を良好にし、不快臭を除去し、香気を改
良する方法が開示されている。
は、ヒドロキシ脂肪酸を基質として酵母を用いてガンマ
ーラクトンを生成する方法が、特開平3−198787
号公報には、10−オキソステアリン酸からベータ酸化
能を有する微生物によってガンマードデカラクトンを生
産する方法が開示されているが、これらの基質の製造方
法については言及されていない。
は香料として食品に添加したり、芳香成分として高濃度
含有する食品、飲料、アルコール飲料などを製造する用
途があるが、食品としての安全性を考慮すると、複雑な
化学合成工程は含まないことが望ましい。また、用いる
微生物も古くから食品に用いられ、有害な副産物の産生
のないことが判明し、安全性の確立した微生物であるこ
とが望ましい。更に、ガンマーラクトンを生産する原材
料として、特定の高価な物質等を添加することなく、従
来より食品製造に用いられてきた天然物のみで行える方
法の開発が強く望まれていた。
類の添加により特定の酵素の合成が低下することが古く
から知られており、この現象はカタボライト抑制と呼ば
れている。ラクトン類の生物変換に必要なベータ酸化系
の酵素も、用いた培地中にグルコースなどが高濃度含有
されていると糖によるカタボライト抑制を受け、結果と
してラクトン類の生成量の著しい減少が見られる。しか
し、グルコースなどを糖源として用いると酵母類の生育
が速くなることや、自然界にグルコースなどの糖を含有
する天然培地が存在することから、グルコースなどの糖
を用いてもラクトン類の生成を行える系の開発が望まれ
ていた。
たものであり、従来から食品製造に用いられてきた天然
の食品用原材料を用いて、ガンマーデカラクトン及び/
又はガンマードデカラクトンを高濃度に含有する液体組
成物を製造できる方法を提供することを目的とする。ま
た、グルコースを高濃度に含有する培地を用いた場合で
も、カタボライト抑制による生成量の著しい減少がな
く、ガンマーデカラクトン及び/又はガンマードデカラ
クトンを高濃度生産できる方法を提供することを目的と
する。
脂肪酸を含有する酵母菌体を基質として用い、当該基質
に含有される不飽和脂肪酸を、不飽和脂肪酸のヒドロキ
シル化能を有する第1微生物によってヒドロキシル化
し、更にベータ酸化能を有する第2微生物によって処理
することを特徴とするガンマーデカラクトン及び/又は
ガンマードデカラクトンを含有する液体組成物の製造方
法、が提供される。
−デオキシグルコースを含有する培地を用いることを特
徴とするグルコースによるベータ酸化抑制が解除された
菌株の選択法、が提供される。
より得られたガンマーデカラクトン及び/又はガンマー
ドデカラクトンを含有する液体組成物に、エタノールを
含有する溶液を添加し、蒸留することを特徴とするガン
マーデカラクトン及び/又はガンマードデカラクトンを
含有する液体組成物の製造方法、が提供される。
造などに用いられてきた酵母菌体を不飽和脂肪酸の供給
源として用い、この酵母菌体を溶菌することにより培地
中に放出された不飽和脂肪酸を、不飽和脂肪酸のヒドロ
キシル化能を有する第1の微生物によってヒドロキシル
化し、更に、ベータ酸化能を有する第2の微生物で処理
することによってガンマーラクトン類を高濃度生成する
ことに成功した。更に、グルコースによるベータ酸化の
抑制が解除された菌株を効率良く造成する方法を開発
し、得られた菌株を用いることにより、グルコースなど
の糖類を高濃度含有する培地中でもガンマーラクトン類
を高濃度生産することに成功した。
は、不飽和脂肪酸を含有するものであればどのような株
でもよいが、特に従来より広く食品業界で用いられてき
たサッカロミセス(Saccharomyces)属に属する酵母が
有利である。かかる酵母としては、例えば、市販のパン
酵母や清酒醸造用酵母(日本醸造協会より市販)、ある
いはSaccharomyces cerevisiae S288C(米国酵母
遺伝保存センター分譲菌)などの公知自由分譲株を挙げ
ることができるが、サッカロミセス属以外の酵母菌株、
例えばトルラスポラ(Torulaspora)属酵母、サッカロ
ミコデス(Saccharomycodes)属酵母、キャンディダ(C
andida)属酵母などを用いても差し支えない。
化酵母を用いてもよい。温度感受性自己消化酵母として
は、サッカロミセス・セレビシエ233、254、30
8、315、X3119−12、X3124−4B(以
上米国酵母遺伝保存センター分譲菌)などの公知自由分
譲株を用いることができるが、一般にこれらの実験室用
酵母由来の変異株は、野生酵母に比べて増殖速度が遅い
上に30℃程度でも弱い自己消化を示すものが多く、培
養が容易とは言い難い。
従来より知られている方法(J.Bacteriol.,124,1604(19
75))により作製した変異株を適宜用いるようにしても
よい。発明者らは、本法を用いて、以下に記述するよう
にアルコール生産酵母サッカロミセス・セレビシエN1
30(FERM P−16365)株より温度感受性自
己消化酵母サッカロミセス・セレビシエOII−33
(FERM P−16364)株を造成した。
であるアルコール生産酵母サッカロミセス・セレビシエ
N130株(以下、「N130」と略す。)を親株とし
て用い、YPD培地(酵母エキス1%、ペプトン2%、
グルコース2%)で定常期まで培養した後、滅菌水で数
回洗浄した。一般的には、紫外線の照射や薬剤処理など
の公知の変異誘導法によって変異率を高めてもよいが、
これらの変異誘導法によって自己消化能以外の性質に変
化が起こることを避けるため、ここではそのままYPD
プレート一枚あたりの細胞数が約1000個になるよう
に植菌し、25℃で3日間培養した。生育してきたコロ
ニーを数枚のYPDプレートにレプリカし、37℃以上
では生育できない株を選択した。更に顕微鏡を用いて3
7℃で自己消化を起こしている株を選択し、その中から
30℃での生育が最も良い一株を分離した。
化酵母をサッカロミセス・セレビシエOII−33(Sa
ccharomyces cerevisiae OII-33)と命名し、これを工
業技術院生命工学工業技術研究所に生命研菌寄第163
64号(FERM P−16364)として寄託した。
33株(以下「OII−33」と略す。)と親株である
N130株との菌学的性質を、ザ・イースト・ア・タキ
ソノミック・スタディー(The Yeast a taxonomic stud
y, 3rd edition, eds. by Kreger-van Rij, Elsevier S
cience Publishers, Amsterdam)の記載に基づいて検討
し、その結果として表1に炭素源の資化性と発酵性を、
表2に窒素源の資化性とその他の特徴を示した。
した変異株であるOII−33の菌学的性質は、表1及
び表2に示すように、37℃で生育せず、溶菌すること
以外は、親株であるN130と全く同一であった。
養に用いられる培地、例えば麦汁やYPD培地のような
天然培地やウィッカーハム改変培地のような合成培地に
接種し、約10℃から約40℃、好ましくは20℃から
30℃にて前培養を行なう。この時、菌体脂肪酸の不飽
和度を上げるために振盪、撹拌もしくは無菌空気を通気
することによって好気的条件下に培養させることが好ま
しい。培養に要する時間は、用いる酵母の菌株や培地、
培養条件などによって異なるが、酵母が培養液1mlあ
たり108個程度になるまで培養することが好ましく、
一般に12時間から72時間必要である。
そのまま次の溶解工程に進めてもよいが、従来一般に行
なわれている方法で集菌した後溶菌させてもよい。菌体
を溶菌させる溶解工程は、培養液のまま、あるいは、集
めた菌体を適当な培地あるいは水に懸濁した状態で行な
ってもよいが、パン酵母の製造工程で行なうように脱水
した脱水酵母の状態で行なってもよい。
少なくとも40℃で24時間以上の加熱溶解処理が必要
であるが、オートクレーブを用いて121℃15分処理
でもよい。比較的低温で溶解する温度感受性自己消化酵
母では、30℃で24時間程度の処理でもよいが、好ま
しくは、40℃で24時間、更に好ましくは50℃で2
4時間の処理が望まれる。一般に低温での溶解は、加熱
に必要な光熱費を低減する上で有利であり、逆に50℃
以上での溶解は、雑菌の混入を防止するという点で有利
である。
再び一般に酵母類が生育できるような培地に懸濁する。
培地としては、市販されているペプトン、酵母エキス、
カザミノ酸などとグルコース、マルトースなどの糖類と
の混合物や、発酵飲料の原料、あるいは発酵飲料の原料
とこれらとの混合物、又は廃糖蜜と尿素の混合物などか
らなる培地を例示することができる。また、ウィッカー
ハム改変培地のような合成培地を用いてもよい。
酸をヒドロキシル化する能力を持った第1微生物を接種
する。この能力を持った第1微生物としては、シュード
モナス(Pseudomonas)属(J.Biol.Chem.,249, 2833(19
74))、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属(J.
Biol.Chem.,241, 5441(1966))、ノカルディア(Nocard
ia)属(Appl.Envirom., 2116(1992))などが知られて
おり、ガンマーラクトン類の生成にはどの菌株を用いる
ことも可能であるが、従来より食品製造に用いられ、安
全性の確立している乳酸菌類を用いることが望ましい。
を生産する細菌類の総称であり、ラクトバチルス(Lact
obacillus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)
属、ロイコノストック(Leuconostoc)属などを例示す
ることができる。例えば、Lactobacillus casei JCM
1163、Lactobacillus plantarum IAM1041、
Pediococcus pentosaceus IAM1215、Leuconosto
c mesenteroides IAM1233などを挙げることがで
きる。これらの菌株は、東京大学分子生物学研究所、埼
玉の理化学研究所などの公知自由分譲株として入手する
ことができる。
地、例えばMRS培地やV8培地などで培養液1mlあ
たり106〜1010個になるまで前培養する。前培養液
はそのままあるいは、遠心処理、膜処理などによって濃
縮した後、加える乳酸菌が本培養液1mlあたり104
〜108個になるように植菌する。このまま、約10℃
から約40℃、好ましくは20℃から30℃にて12時
間から48時間振盪、撹拌などによって好気的にあるい
は静置培養する。この間に、溶解酵母由来の不飽和脂肪
酸が相当するヒドロキシ脂肪酸に変化する。
ータ酸化能を有する第2微生物を植菌する。ほとんどす
べての真核細胞生物がベータ酸化能を持っていることが
知られているが、ここで用いる第2微生物としては、例
えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、ピキア(P
ichia)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、キャンディダ
(Candida)属、クリベロミセス(Kluyveromyces)属な
どを挙げることができる。
市販パン酵母や、清酒醸造用酵母(日本醸造協会より市
販)、あるいはSaccharomyces cerevisiae S288C
(米国酵母遺伝保存センター分譲菌)などの公知自由分
譲株を例示することができる。また、ピキア・ファリノ
ーサ(Pichia farinosa)、キャンディダ・ユーチリス
(Candida utilis)、ハンゼヌラ・アノマラ(Hansenul
a anomala)、クリベロミセス・ラクチス(Kluyveromyc
es lactis)などに属する公知自由分譲株を用いること
も可能である。しかし、特に古来より発酵食品の生産に
安全に用いられてきたサッカロミセス属酵母が有利であ
る。
を、培養液1mlあたり104〜108個になるように植
菌し、約10℃から約40℃、好ましくは20℃から3
0℃にて培養を行なう。培養方法は一般微生物の培養方
法に準じて行なわれるが、好気的培養法が有利である。
これは、一般にベータ酸化が好気的反応であることに由
来するが、静置培養法でも、培養開始時に溶解していた
溶存酸素によってガンマーラクトン類の生成が行なわれ
る。好気的培養は、振盪、撹拌、通気撹拌などによって
行なうことができる。
応じて適宜設定されるが、酵母が培養液1mlあたり1
08個程度になるまで培養することが好ましく、一般に
24時間から96時間必要である。また、このベータ酸
化工程を先に示したヒドロキシル化工程と同時に行なう
こともできる。すなわち、ヒドロキシル化能を持った第
1微生物とベー夕酸化能を持った第2微生物を同時に植
菌し、適宜設定された条件で培養することによってもガ
ンマーラクトン類の生成を行なうことが可能である。
ンマーラクトン類の高濃度の生産ができるようにするた
めには、グルコースによるベータ酸化系の酵素群に対す
る抑制が解除された菌株を造成する必要があると考えら
れる。このような変異株を造成するために、発明者ら
は、グルコースの致死性アナログである2−デオキシグ
ルコースを、ガンマーラクトンの前駆体の一つであるリ
シノール酸を含有する培地に加えた選択培地を作製し
た。
リシノール酸を炭素源として利用しなければならない
が、野生株では2−デオキシグルコースによるカタボラ
イト抑制により、リシノール酸より先に致死性の2−デ
オキシグルコースを利用することになり死滅に至る。一
方、カタボライト抑制の解除された変異株では、2−デ
オキシグルコースが存在してもリシノール酸を利用する
ことができ、ベータ酸化により生じるエネルギーを用い
て生育することができる。
ン・ベース(DIFCO社製)0.67%を含有する培
地あるいはYP培地(酵母エキス1%、ペプトン2%)
に2%の寒天を添加した培地を基本培地として、0.0
1〜0.5%、好適には0.05%のリシノール酸と5
0ppm以上、好適には150ppmの2−デオキシグ
ルコースを含むものが推奨される。
−デオキシグルコース以外の成分は、実質的に炭素源を
含まない培地であれば特に限定されない。培養条件も酵
母菌体が生育できる条件であれば特に限定されないが、
通常30℃で一週間程度必要である。発明者らは本選択
培地を用いてベータ酸化に対するカタボライト抑制の解
除された変異株サッカロミセス・セレビシエOA−1
(FERM P−16366)を得た。
の親株として用いられる酵母は、市販のパン酵母や清酒
醸造用酵母(日本醸造協会より市販)、あるいはSaccha
romyces cerevisiae S288C(米国酵母遺伝保存セ
ンター分譲菌)などの公知自由分譲株をあげることがで
きる。これらの酵母を、酵母が増殖できる培地で適宜培
養する。培養条件も特に限定されない。
菌した後、滅菌水で数回洗浄することが望ましい。その
まま、あるいは、公知の変異誘導法、例えば紫外線の照
射、エチルメタンスルフォネートなどの薬剤処理(微生
物遺伝学実験法、石川辰夫編、1982、p193、共
立出版参照)を加えた後、上述の選択培地に塗布し、生
育してきた菌株を耐性株とする。更に、耐性株のラクト
ン生産能を調ベ、グルコースによる生産能の低下の少な
い株をベータ酸化に対するカタボライト抑制の解除され
た変異株とする。もちろん、グルコースの存在しない条
件下では、これらの変異株は、野生株を用いた場合と同
様にガンマーラクトン類の生成を行なうことができる。
方法により分離した変異株サッカロミセス・セレビシエ
OA−1株(以下「OA−1」と略す。)と親株である
N130株との菌学的性質を、ザ・イースト・ア・タキ
ソノミック・スタディー(The Yeast a taxonomic stud
y, 3rd edition, eds. by Kreger-van Rij, ElsevierSc
ience Publishers, Amsterdam)の記載に基づいて検討
し、その結果として表3に炭素源の資化性と発酵性を、
表4に窒素源の資化性とその他の特徴を示した。
した変異株であるOA−1の菌学的性質は、グルコース
によるベータ酸化の抑制が解除されていること以外は、
表3及び表4に示すように親株であるN130と全く同
一であった。
などの工程は、従来一般に行なわれている方法に従って
行なうことができる。また、微生物の培養液より物質を
単離するために一般に用いられている方法を用いて生成
した液体組成物よりラクトン類を単離することもでき
る。培養液及び菌体にガンマーラクトン類が蓄積してい
るので、遠心処理などによって菌体と培養液を分離した
後、あるいは、菌体が培養液中に懸濁した状態のまま、
ガンマーラクトン類を抽出精製することもできる。ガン
マーラクトン類は有機溶媒に溶解し、比較的高い沸点を
持つので、有機溶媒での抽出や蒸留、カラムクロマトグ
ラフィーなどの手段によって精製した後、有機溶媒を留
去し、高純度、高品質のガンマーラクトンを提供するこ
とができる。
にエタノールを含有する液体を添加し、あるいは、添加
した後、蒸留してもよい。エタノールを含有する液体と
しては、例えば、アルコール飲料を製造するために醸造
した発酵液、エタノールを含有する水溶液などが挙げら
れる。発酵液は、ウイスキー、ビール、ワイン、焼酎、
清酒などを製造する途中の醸造液でもよい。
ガンマーラクトン類が生成する詳細なメカニズムは必ず
しも明らかではないが、酵母菌体の細胞壁中に多く含ま
れる不飽和脂肪酸、特にパルミトオレイン酸とオレイン
酸が、菌体が溶解することによって乳酸菌などの他の微
生物との接触が可能になり、ヒドロキシル化されること
から始まるものと考えられる。ヒドロキシル化されたパ
ルミトオレイン酸とオレイン酸は、更にベータ酸化され
てそれぞれデカラクトンとドデカラクトンに変換され
る。したがって、基質となる酵母菌体中のパルミトオレ
イン酸とオレイン酸の量によって生成してくるデカラク
トンとドデカラクトンの量が左右される。
本発明はこれらによって限定されるものではない。な
お、下記の実施例中、ガンマーラクトン類の分析は、得
られた液体組成物をヘキサンで抽出した後、ガスクロマ
トグラフィーを用いて行なった。
レビシエH株(鹿児島県酒造協同組合)を糖蜜培地(全
糖2.4%、尿素0.14%、リン酸0.0087%)
で流加培養し、集菌した後洗浄した。集めた菌体は脱水
し、その1gを40mlのYP培地に懸濁し、121℃
で15分間オートクレーブ処理を行なった。室温まで冷
却後、第1微生物としてニッカウヰスキー株式会社保有
の乳酸菌ラクトバチルス・カゼイN5054株(Lactob
acillus casei N5054)(FERM P−16367)
を培地1mlあたり107個になるように植菌し、その
まま24時間静置培養した。更に、第2微生物として同
社保有のアルコール生産酵母N130を1mlあたり1
07個になるように植菌し、そのまま24時間振盪培養
した。この培養液には、ガンマーデカラクトンが500
ppb、ガンマードデカラクトンが1.3ppm含まれ
ていた。
で24時間培養した温度感受性自己消化酵母OII−3
3と親株のアルコール生産酵母N130をそれぞれ遠心
によって集菌した後、滅菌水で繰り返し洗浄した。集め
た菌体は素焼き板上で脱水し、脱水酵母を作製した。こ
の脱水酵母1.2gを30、40、50、60℃で24
時間加熱した後、40mlのYP培地に懸濁した。更
に、実施例1と同様にして乳酸菌ラクトバチルス・カゼ
イN5054株(第1微生物)を植菌して培養した後、
アルコール生産酵母N130(第2微生物)を接種し、
好気的に培養した。この液体組成物のガンマーラクトン
濃度を測定し、結果を表5に示した。
自己消化酵母OII−33を用いた場合は、30℃処理
でもガンマーデカラクトン、ドデカラクトンが生成して
いたが、基質として親株N130を用いた場合では40
℃以上に加熱しないとガンマーラクトンは生成しなかっ
た。
菌体の代わりにオレイン酸50ppm、100ppm、
500ppmを添加し、実施例2と同一条件でラクトン
の生成を見た。この場合、ガンマーデカラクトンはまっ
たく生成されないが、ガンマードデカラクトンがそれぞ
れ13ppm、30ppm、50ppm生成した。
菌体の代わりにパルミトオレイン酸50ppmを添加
し、実施例2と同一条件でラクトンの生成を見た。この
場合、ガンマーデカラクトンが28ppm生成し、ガン
マードデカラクトンは生成していなかった。
菌体を添加せずに実施例2と同一条件で処理し、液体組
成物を作製した。この液体組成物のラクトンの生成を見
たところ、ガンマーデカラクトン、ガンマードデカラク
トンがそれぞれ12ppb、24ppb生成されている
に過ぎず、基質としての酵母菌体の添加がガンマーラク
トンの大量生産に必要であることがわかった。
I−33の脱水酵母1.2gを50℃で24時間加熱し
て溶解した後、YP培地40mlに懸濁した。そのま
ま、乳酸菌(第1微生物)を加えずに実施例2と同様に
酵母(第2微生物)を好気的に培養して作製した液体組
成物にはガンマーデカラクトン、ガンマードデカラクト
ンがそれぞれ90ppb、87ppb生成されているに
過ぎなかった。
感受性自己消化酵母サッカロミセス・セレビシエ35
1、サッカロミセス・セレビシエX3119−12A、
サッカロミコデス・ルドイギー(Saccharomycodes ludw
igii)IFO 1721、及びトルラスポラ・デルブル
ツキー(Torulaspora delbrueckii)IFO 0955の
脱水酵母を製造し、その1.2gを50℃で24時間加
熱し、溶解した。また、サッカロミセス・セレビシエ3
51とサッカロミセス・セレビシエX3119−12A
の2株については40℃で24時間加熱による溶菌処理
も行った。
菌ラクトバチルス・カゼイN5054株(第1微生
物)、次いで酵母N130(第2微生物)による培養を
行ない、液体組成物を作製した。これらの液体組成物中
に含まれるガンマーラクトンを測定し、結果を表6及び
表7に示した。
分譲株である温度感受性自己溶解変異株を基質として用
いても、40℃24時間程度の加熱でガンマーラクトン
類を製造することができた。また、表7に示すとおり、
サッカロミコデス・ルドイギー、トルラスポラ・デルブ
ルツキーなどの酵母菌体を基質として用いてもガンマー
ラクトン類を製造することができた。更に、用いた菌株
によってガンマーデカラクトンとガンマードデカラクト
ンの生成量の比が異なっており、このことを利用して、
これら2種のラクトンの作り分けも可能であった。
24時間培養した温度感受性自己消化酵母OII−33
菌体を集菌し、滅菌水で洗浄した。脱水酵母1.2gに
相当する量の湿菌体を40mlのYP培地に懸濁し、懸
濁した状態のまま50℃あるいは60℃で24時間加熱
溶解させた。更に、実施例2と同様に乳酸菌ラクトバチ
ルス・カゼイN5054株(第1微生物)の培養、酵母
N130(第2微生物)の好気的培養を行ない、液体組
成物を作製した。
を測定したところ、50℃処理菌体を用いた場合にはデ
カラクトンが4.6ppm、ドデカラクトンが6.1p
pm、また60℃処理菌体を用いた場合にはデカラクト
ンが1.3ppm、ドデカラクトンが2.0ppm含ま
れていることが判明し、基質として用いる菌体は脱水し
ていなくても問題がないことが示された。
24時間培養した温度感受性自己消化酵母OII−33
及び日本醸造協会9号酵母菌体(以下「9号酵母」と略
記する。)を集菌し、脱水酵母を作製した。それらの
1.2gを50℃24時間加熱により溶解し、YP培地
に懸濁した。更に、実施例2と同様に乳酸菌ラクトバチ
ルス・カゼイN5054株(第1微生物)の培養を行な
った後、アルコール生産酵母N130あるいは9号酵母
(第2微生物)を植菌し、24時間好気的に培養した。
得られた培養液のラクトン含量を表8に示した。
は、第2微生物として用いる酵母を特に限定しなくても
ガンマーラクトン類を生成できた。
素0.14%、リン酸0.0087%)を用いて、28
℃で24時間培養した温度感受性自己消化酵母OII−
33を用いて脱水酵母を作製した。この脱水酵母1.2
gを50℃で24時間加熱して溶解した後、YP培地4
0mlに懸濁した。これに、ラクトバチルス・カゼイN
5054、ラクトバチルス・カゼイJCM1163、あ
るいはラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus
plantarum)IAM1041(第1微生物)をそれぞれ
実施例1と同様に植菌し、培養した。更に、アルコール
生産酵母N130(第2微生物)を好気的に培養して、
得られた液体組成物中に含まれるガンマーラクトンを表
9に示した。
物)を変更しても、生成液体組成物中には大量のガンマ
ーデカラクトン及びガンマードデカラクトンが含有され
ていた。
抑制解除株を以下の方法にて取得した。すなわち、アル
コール生産酵母N130をYPD培地で24時間培養
し、遠心分離(3000rpm、5分)によって集菌し
た。菌体を滅菌水で2回洗浄した後、0.05%リシノ
ール酸と150ppm2−デオキシグルコース、及び2
%寒天を含むYP(2%ペプトン、1%酵母エキス)寒
天平板培地12枚に108個づつ塗布したところ、30
℃、一週間の培養にて10個のコロニーが出現した。こ
れらのコロニーを同じ選択培地で3回繰り返し培養した
ところ、6個のコロニーが耐性株として取得できた。
0ppmリシノール酸を含むYP培地40mlと、10
0ppmリシノール酸及び10%グルコースを含むYP
培地40mlに植菌し、30℃で24時間培養した後の
生成ラクトン量を測定して、結果を表10に示した。
〜F株)に比して、10%グルコースによるラクトン生
成阻害を受けにくいことがわかったので、この変異株を
サッカロミセス・セレビシエOA−1(FERM P−
16366)とした。
素0.14%、リン酸0.0087%)を用いて、28
℃で24時間培養した温度感受性自己消化酵母OII−
33より、実施例2と同様に脱水酵母を作製した。その
1.2gを50℃で24時間加熱して溶解した後、Br
ix 14.0の麦汁40mlに懸濁した。実施例2と
同様に乳酸菌ラクトバチルス・カゼイN5054(第1
微生物)を接種して培養した後、アルコール生産酵母N
130、あるいはグルコースによるベータ酸化抑制解除
株OA−1(第2微生物)を植菌し、30℃で24時間
好気的に培養した。この液体組成物を分析した結果を表
11に示す。なお、コントロールとして麦汁の代わりに
YP培地を用いた場合の値も合わせて示す。
場合には、麦汁中に大量に含まれている麦芽糖やグルコ
ースのために、YP培地を用いた場合に比して、生成す
るガンマーラクトン類の量は著しく減少する。しかし、
グルコースによるベータ酸化抑制解除株OA−1を用い
た場合には、この減少の程度を緩和することができた。
従来から食品の製造に用いられてきた原材料を用いて、
高価な物質を添加したり、新規の設備を導入したりする
ことなく、ガンマーデカラクトン及び/又はガンマード
デカラクトンを高濃度含有する液体組成物が製造でき
る。また、本発明では、食品用の原材料を用いてガンマ
ーデカラクトンが製造できるため、直接発酵食品の品質
の向上をもたらすばかりでなく、食品に添加できる安全
性の高い香料の製造法を提供することができる。
−デオキシグルコースを含有する培地を用いることによ
り、グルコースによるベータ酸化抑制が解除された菌株
を造成でき、この菌株を使用することにより、グルコー
スを高濃度に含有する培地を用いた場合でも、カタボラ
イト抑制による生成量の著しい減少がなく、ガンマーデ
カラクトン及び/又はガンマードデカラクトンを高濃度
生産できる。
Claims (10)
- 【請求項1】 不飽和脂肪酸を含有する酵母菌体を基質
として用い、当該基質に含有される不飽和脂肪酸を、不
飽和脂肪酸のヒドロキシル化能を有する第1微生物によ
ってヒドロキシル化し、更にベータ酸化能を有する第2
微生物によって処理することを特徴とするガンマーデカ
ラクトン及び/又はガンマードデカラクトンを含有する
液体組成物の製造方法。 - 【請求項2】 第1微生物が乳酸菌である請求項1記載
の製造方法。 - 【請求項3】 第2微生物がサッカロミセス(Saccharo
myces)属酵母である請求項1又は2に記載の製造方
法。 - 【請求項4】 基質として用いる酵母菌体を加熱によっ
て溶解させる請求項1ないし3のいずれかに記載の製造
方法。 - 【請求項5】 温度感受性自己消化酵母を基質として用
いる請求項1ないし4のいずれかに記載の製造方法。 - 【請求項6】 温度感受性自己消化酵母がサッカロミセ
ス・セレビシエOII−33(Saccharomyces cerevisi
ae OII-33)(FERM P−16364)である請求
項5記載の製造方法。 - 【請求項7】 第2微生物が、グルコースによるベータ
酸化抑制が解除された菌株である請求項1ないし6のい
ずれかに記載の製造方法。 - 【請求項8】 グルコースによるベータ酸化抑制が解除
された菌株がサッカロミセス・セレビシエOA−1(Sa
ccharomyces cerevisiae OA-1)(FERMP−163
66)である請求項7記載の製造方法。 - 【請求項9】 リシノール酸と2−デオキシグルコース
を含有する培地を用いることを特徴とするグルコースに
よるベータ酸化抑制が解除された菌株の選択法。 - 【請求項10】 請求項1ないし8のいずれかに記載の
製造方法により得られたガンマーデカラクトン及び/又
はガンマードデカラクトンを含有する液体組成物に、エ
タノールを含有する溶液を添加し、蒸留することを特徴
とするガンマーデカラクトン及び/又はガンマードデカ
ラクトンを含有する液体組成物の製造方法。
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---|---|---|---|
JP29538797A JP3953601B2 (ja) | 1997-10-28 | 1997-10-28 | ガンマーデカラクトン及びガンマードデカラクトンを含有する液体組成物の製造方法 |
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JP29538797A Expired - Fee Related JP3953601B2 (ja) | 1997-10-28 | 1997-10-28 | ガンマーデカラクトン及びガンマードデカラクトンを含有する液体組成物の製造方法 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP3953601B2 (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002000287A (ja) * | 2000-06-16 | 2002-01-08 | Nikka Whisky Distilling Co Ltd | 不飽和ラクトンを含有する液体組成物の製造法および不飽和ラクトンを含有する蒸留酒 |
KR101383342B1 (ko) * | 2013-02-28 | 2014-04-10 | 건국대학교 산학협력단 | 효모의 베타-산화 유도에 의한 수산화 지방산으로부터 감마-데카락톤과 감마-부티로락톤의 제조방법 및 그 조성물 |
-
1997
- 1997-10-28 JP JP29538797A patent/JP3953601B2/ja not_active Expired - Fee Related
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KR101383342B1 (ko) * | 2013-02-28 | 2014-04-10 | 건국대학교 산학협력단 | 효모의 베타-산화 유도에 의한 수산화 지방산으로부터 감마-데카락톤과 감마-부티로락톤의 제조방법 및 그 조성물 |
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