【発明の詳細な説明】
熱可塑性成形用組成物
本発明は、
(A)(ak)30から90重量%の、
(ak/1)単一もしくは複数のC1−C10アルキルアクリラート
80から99.99重量%、
(ak/2)架橋作用単量体0.01から20重量%、および
(ak/3)単一もしくは複数のその他の単量体0から40重量
%を共重合させることにより得られるエラストマーグラフトコアと、
(as)10から70重量%の、
(as/1)下式
で表わされ、かつR1、R2が水素またはC1−C8アルキルである場合のスチレン
化合物またはC1−C8アルキルアクリラートもしくはメタクリラート、またはス
チレン化合物とC1−C8アルキルアクリラートもしくはメタクリラートの混合物
50から100重量%、および
(as/2)単一もしくは複数のその他の単量体0から50重量
%で構成されるグラフトシェルとを含有する、30から98重量%のグラフト重
合体、
(B)(b1)50から100重量%のスチレンおよび/またはα−メチルス
チレン、
(b2)0から50重量%のアクリロニトリル、および
(b3)0から50重量%の単一もしくは複数のその他の単量体で構成
される、1から50重量%の熱可塑性重合体、および
(C)硬質相を形成し、重合体(連鎖)中にビニル芳香族単量体単位を有する
少なくとも1個のブロックAおよび/または
第一のエラストマー(軟質)相を形成し、ジエン単量体を含有するブロックB
、および
軟質相(場合により第二のまたはさらに他の)を形成し、重合体(連鎖)中に
ビニル芳香族単量体およびジエンの両方の単位をランダムに含有する少なくとも
1個のエラストマーブロックB/Aを含有し、
ブロックAのガラス転移温度が25℃より高く、ブロックB/Aのそれが25
℃より低く、ブロックA対ブロックB/Aの相容量割合を、全ブロック共重合体
中の硬質相の割合が1から40容量%、ジエンの重量割合が50重量%未満とな
るように選択して成る、全部のもしくはほとんど全部のオレフィン性二重結合が
水素添加されている、1から70重量%のエラストマーブロック共重合体を含有
することを特徴とする熱可塑性成形用組成物に関する。
本発明は、さらに上記組成分(C)が特定の組成を有する成形用組成物、これ
ら成形用組成物の、フィルムおよび成形体製造のための用途およびこれら成形用
組成物から製造されたフィルムおよび成形体に関する。
いわゆるプラスチックフィルムは、各種各様の領域における用途を有する。特
定のフィルム、ことにレザー状外観を有する可撓性フィルムは、各種の内装、例
えば自動車の内装用に、あるいは皮革代用品として、広く使用されている。この
ようなプラスチックフィルムは、大部分がカレンダー処理または押出により製造
されている。
これらフィルムの主成分は、現在においては、一般的に、可塑剤およびしばし
ばその他のビニル重合体を含有するポリビニルクロリド(PVC)である。しか
しながら、このようなフィルムは、耐老性において制約があり、さらに使用され
る可塑剤が経時的に滲出する欠点がある。
欧州特願公開526813号公報は、メチルメタクリラートもしくはスチレン
アクリロニトリルで高度に架橋されたアクリラートゴム、部分的に架橋されたア
クリラートゴム、エチレン/ビニルアセタート共重合体、スチレンおよび/また
はアクリル化合物を基礎とするさらに他の重合体から成る熱可塑性成形材料組成
物を開示している。しかしながら、これら成形材料は、例えばフィルム製造のた
めの成形条件下において、好ましくない退化的反応を惹起する傾向がある。
西独特願公開4211412号公報は、フィルム成形材料として、スチレン/
アクリロニトリル重合体およびエラストマー重合体のグラフトシェルを有する熱
可塑性樹脂から成る混合物を推奨している。しかしながら、この種のグラフト共
重合体の製造は、技術的に複雑であって、一定品質の目的生成物を得ることは困
難である。
ことに、現在公知の成形用組成物から得られるフィルムは、必ずしも完全に満
足すべき熱可塑性成形特性を持っておらず、また高いショア硬さを示し、従って
達成されるべき皮革状表面をもたらす柔軟性がない。
そこで、本発明の目的とするところは、一定品質で容易に製造されることがで
き、例えば退化的反応による品質のロスをもたらすことなく、さらに成形体にま
で加工処理され得る熱可塑性成形材料組成物を提供することである。さらに他の
目的は、良好な熱塑性成形特性(高い破断時伸び、高い引裂強さ)および低ショ
ア硬さにおいて秀れている成形体、ことにフィルムを製造し得る熱可塑性成形材
料組成物を提供することである。
しかるに、これらの目的は本明細書の冒頭に記載された熱可塑性成形材料組成
物により達成されることが本発明者らにより見出された。
さらに、組成分(C)として特定の組成のものを含有する組成物、さらにこれ
ら組成物の、フィルムおよび成形体を製造するための用途およびこのような組成
物材料から製造されたフィルムおよび成形体も見出された。
本発明による組成物中において、組成分(A)は、各組成分(A)、(B)、
(C)の合計量に対して、30から98重量%、好ましくは40から90、こと
に50から82重量%の割合で存在する。この組成分は、エラストマーグラフト
コア(ak)(軟質構成分)と、これにグラフト結合シェル(as)(硬質組成分
)とから構成される粉末グラフト共重合体である。
グラフトコア(ak)は、組成分(A)に対して、30から90重量%、好ま
しくは40から80、ことに50から75重量%の割合で存在する。
このグラフトコア(ak)は、これに対して、
(ak/1)80から99.99重量%、好ましくは85から99.5、こと
に90から99重量%の単一もしくは複数種類のC1−C10アルキルアクリラー
ト、
(ak/2)0.01から20重量%、好ましくは0.5から10、ことに1
から5重量%の架橋作用を示す単量体、および
(ak/3)0から20重量%、好ましくは0から5重量%の単一もしくは複
数種類のその他の単量体から成る混合物を重合させることにより得られる。
上記のアルキルアクリラート(ak/1)としては、エタノール、2−エチル
ヘキサノール、ことにn−ブタノールからの誘導体が使用される。単一のアルキ
ルアクリラートまたは複数種類のアルキルアクリラートと、異なるアルキル基を
有するアルキルアクリラートとの混合物も使用され得る。
架橋作用する単量体(ak/2)としては、二官能性もしくは多官能性のコモ
ノマー、例えばブタジエン、イソプレン、ジカルボン酸のジビニルエステル、例
えばこはく酸、アジピン酸のジビニルエステル、二価アルコールのジビニルエー
テル、例えばエチレングリコール、ブタン−1,4−ジオール、アクリル酸、メ
タクリル酸と上述の二価アルコールとのジエステル、1,4−ジビニルベンゼン
、トリアリルシアヌラートが使用される。ことに好ましいのは、下式
で表わされ、ジヒドロジシクロペンタジエニルとして知られているトリシクロデ
セニルアクリラート、およびさらにアリルアクリラート、アリルメタクリラート
である。
成形用組成物中の組成分(ak)は、コアの機械特性および熱特性を一定の範
囲内で変更させる他の単量体(ak/3)を、単量体(ak/1)および(ak/
2)の量より少量含有してもよい。このようなモノエチレン性不飽和コモノマー
(ak/3)の例としては、以下の化合物が挙げられる。すなわち、
下式(I)のスチレン、スチレン誘導体のようなビニル芳香族単量体(R1、R2は水素また
はC1−C8アルキル)、
メタクリロニトリル、アクリロニトリル、
アクリル酸、メタクリル酸、ジカルボン酸、例えばマレイン酸、フマル酸、こ
れらの無水物、例えば無水マレイン酸、
窒素官能性単量体、例えばジメチルアミノエチルアクリラート、ジエチルアミ
ノエチルアクリラート、ビニルイミダゾール、ビニルピロリドン、ビニルカプロ
ラクタム、ビニルカルバゾール、ビニルアニリン、アクリルアミド、
C1−C4アルキルメタクリラート、例えばメチルメタクリラート、エチルメタ
クリラート、n−プロピルメタクリラート、イソプロピルメタクリラート、n−
ブチルメタクリラート、t−ブチルメタクリラートおよびヒドロキシエチルアク
リラート、
アクリル酸およびメタクリル酸の芳香族および芳香脂肪族エステル、例えばフ
ェニル(メタ)アクリラート、ベンジル(メタ)アクリラート、2−フェニルエ
チル(メタ)アクリラート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリラート、
ビニルメチルエーテルのような不飽和エーテル、および
これら単量体の混合物である。
グラフトシェル(as/1)は、以下の単量体の混合物を重合させることによ
り得られる。この混合物は、(as/1)に対して、
(as/1)50から100重量%、好ましくは60から95、ことに60か
ら85重量%の、下式(I)
で表わされるスチレン化合物(R1、R2は水素またはC1−C8アルキルを意味す
る)またはC1−C8アルキルアクリラートもしくはメタクリラート、またはスチ
レン化合物とC1−C8アルキルアクリラートもしくはメタクリラートの混合物、
および
(as/2)0から50重量%、ことに15から35重量%の単一もしくは複
数の他の単量体から構成される。
式(I)のスチレン化合物(組成分as/1)としては、スチレン、α−メチ
ルスチレンまたは環C1−C8アルキル化スチレン、例えばp−メチルスチレン、
t−ブチルスチレンが好ましく、スチレンがことに好ましい。
このスチレン化合物は、C1−C8アルキルアクリラートおよび/またはメタク
リラート、ことにメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノー
ル、s−ブタノール、t−ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサ
ノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ことにn−ブ
タノールからの誘導体で代替され、またはこれらと混合され得る。メチルメタク
リラートがことに好ましい。
グラフトシェル(as)は、上記単量体(as/1)より少量の他の単量体(as
/2)を含有してもよい。この組成分(as/2)に対しては、組成分(ak/
3)について述べたと同様のコメントが該当する。
(as/2)の単量体としては、マレインイミド、N−メチル−、N−フェニ
ル−およびN−シクロヘキシルマレインイミド、および酸もしくは塩基官能性基
、例えば(ak/3)に関して上述した酸、酸無水物で変性される単量体、およ
び(ak/3)に関して上述した窒素官能性単量体が挙げられる。組成分(as/
2)としては、上述した単量体の中でも、アクリロニトリル、メタクリロニトリ
ル、マレインイミドが好ましく、アクリロニトリルがことに好ましい。
グラフトシェル(as)は、スチレンまたはメチルメタクリラート、または
40から90重量%のメチルメタクリラートと残余量のアクリロニトリルの混合
物、または65から85重量%のスチレンと残余量のアクリロニトリルの混合物
から構成されるのが好ましい。
グラフト共重合体(A)は、それ自体公知の態様で、ことに30から80℃に
おける乳化重合で製造され得る。この場合の乳化剤としては、例えばアルカリ金
属のアルキルスルホナートもしくはアルキルアリールスルホナート、炭素原子数
10から30の高級脂肪酸の塩、スルホスクシナート、エーテルスルホナート、
樹脂石鹸が適当である。ことにアルカリ金属アルキルスルホナートまたは炭素原
子数10から18の高級脂肪酸が好ましい。
分散液の調製に当たっては、20から50重量%の固体分を含有する最終分散
液がもたらされるような量の水を使用するのが好ましい。
重合開始剤として好ましいのは、遊離基形成剤、例えばペルオキソスルファー
トのような過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物である。
ただし、レドックス組成物、ことにクメンヒドロペルオキシドのような過酸化水
素を基礎とする組成物も使用され得る。これと関連して、分子量制御剤、例えば
エチルヘキシルチオグリコラート、n−およびt−ドデシルメルカプタン、テル
ピノール、α−メチルスチレンニ量体も使用され得る。
好ましくは6から9の定常的pH値を維持するためにNa2HPO4/NaH2
PO4または重炭酸ナトリウムのような緩衝剤を添加してもよい。
乳化剤、開始剤、制御剤および緩衝剤は、慣用の量で使用されることができ、
これについては詳述しない。
グラフトコアは、ゴムラテックス微細粉の存在下に、単量体(ak)を重合さ
せる(シードラテックス重合法)ことによっても、ことに有利に形成され得る。
グラフトコアは、乳化重合以外の方法、例えば塊状重合、溶液重合で形成され
、次いで得られた重合体を乳化させることによっても形成され得る。微小懸濁重
合法も適当であって、この場合、過酸化ラウロイル、t−ブチルペルピバラート
のような油溶性開始剤を使用するのが好ましい。
グラフトシェル(as)は、組成分(as/1)および(as/2)を同時にま
たは連続的に添加して、一工程で形成され得る。例えば組成分(as/1)を
先ず重合させ、次いで組成分(as/2)または両組成分混合物を重合させる複
数工程でも形成され得る。(as/1)対(as/2)の混合割合は、一定でもよ
く、また添加の過程において連続的もしくは段階的に変更してもよい。
また、グラフト単量体(as/1)および(as/2)は、一度に全部添加(
バッチ式)してもよく、また定常的もしくは可変的給送割合で連続的に給送して
も差支えないことは当業者に周知である。これらの添加方法の種々の組合わせは
、頻繁に行なわれていることである。
反応条件は、それ自体周知の態様で相互に均衡させ、60から1500、こと
に150から1000nmの範囲でほぼ均斉な粒径d50の重合体粒子が得られる
ようにすることが望ましい。
本発明による新規の熱可塑性組成物を調製するために、単一のグラフト共重合
体(A)の代わりに異なる複数種類のグラフト共重合体、ことに粒度の著しく相
違するグラフト共重合体を使用することができる。二種類の粒度分布を有するこ
の種の混合物は、その後の処理に際して技術的な利点を有する。有用な粒径は、
一方において60から200nm、他方において300から1000nmである
。
また、複数の「軟質」および「硬質」シェル、例えば(ak)−(as)−(ak
)−(as)または(as)−(ak)−(as)構造のグラフトシェルを有する
グラフト共重合体も、ことに粒径が比較的大きい場合に有用である。
グラフト形成処理の間に、一般的に10重量%以下の単量体(as)から形成
される非グラフト重合体は、グラフト共重合体組成分(A)の重量の一部として
みなされる。
本発明による新規の成形用組成物は、組成分(A)、(B)、(C)の合計量
に対して、1から50重量%、好ましくは5から40、ことに10から30重量
%の割合で組成分(B)を含有する。組成分(B)は熱可塑性重合体であって、
これに対して
(b1)50から100重量%、好ましくは55から95、ことに60から8
5重量%のスチレンまたはα−メチルスチレン、
(b2)0から50重量%、好ましくは5から45、ことに15から40重量
%のアクリロニトリル、および
(b3)0から50重量%、好ましくは0から40重量%の単一もしくは複数
の他の単量体から構成される。(b3)の単量体として好ましいのは、(ak/
3)および(as/2)に関して前述した単量体である。
好ましい単量体(b3)は、アルキルおよびアリールメタクリラートと、メタ
クリルアミドである。好ましい単量体(b3)は、具体的には、メチルメタクリ
ラート、無水マレイン酸、マレインイミド、および比較的少量のグリシジルメタ
クリラート、マレイン酸、メタクリル酸およびジメチルアミノエチルアクリラー
トである。
組成分(B)は、好ましくは、例えば、60から95重量%のスチレンと5か
ら40重量%のアクリロニトリルとからなる共重合体を含む。60から85重量
%のスチレンと15から40重量%のアクリロニトリルとからなる共重合体は特
に好ましい。
重合体(B)は、その主要構成分であるスチレンとアクリロニトリルの故に、
一般的にSAN重合体と称されており、部分的には市販されている。この重合体
は、一般的に、ほぼ40000から2000000の平均分子量(数平均)に相
当する、40から160ml/gの粘度数VN(DIN53726により、25
℃において、0.5重量%濃度のジメチルホルムアミド溶液について測定)を有
する。このSANポリマーは、慣用の態様で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、
沈殿重合または乳化重合で得られる。これら各重合法の詳細については、例えば
、1969年、ミュンヘンのカルル、ハンゼル、フェルラーク社刊、R.フィー
ヴェークおよびG.ダウミラー編「クンストシュトフハントブーフ」第V巻「ポ
リスチレン」118頁以降を参照され度い。
この重合体(B)は、スチレンおよび/またはα−メチルスチレンおよびアク
リロニトリルの、例えばアクリロニトリルの割合、分子量において相違する複数
の共重合体の混合物であってもよい。
本発明による成形用組成物は、さらに、組成分(A)、(B)、(C)の合計
量に対して、1から70重量%、好ましくは5から50、ことに8から40重量
%の他の組成分(C)を含有する。この組成分(C)は、水素添加されたエラス
トマーブロック共重合体であって、これは
少なくとも1個の、「硬質相」を形成し、かつビニル芳香族単量体単位を重合
体連鎖中に含有するブロックA、および/または
(第一)エラストマー(軟質)相を形成し、かつビニル芳香族単量体単位およ
びジエン単位を重合体連鎖中に含有するブロックB、および
少なくとも1個の、「軟質相」を形成し、かつビニル芳香族単量体単位および
ジエン単位を重合体連鎖中にランダムに含有するブロックB/Aを含有する。ブ
ロックAのガラス転移温度Tgは25℃より高く、ブロックB/Aのそれは25
℃より低く、ブロックA対ブロックB/Aの相容量割合は、全ブロック共重合体
中における硬質相の割合が1から40容量%、ジエンの重量が50重量%未満と
なるように選定される。
エラストマー共重合体(C)中におけるオレフィン性二重結合の全部もしくは
実質的に全部が水素添加されている。
この組成分(C)の構造および製造方法に関する詳細は以下に説明されるが、
また本明細書中に合併されるべき西独特願公開4420952号公報中において
も説明されている。
軟質相(ブロックB/A)は、極性共溶媒中における、ビニル芳香族単量体と
ジエンのランダム共重合により得られる。
水素添加ブロック共重合体は、例えば以下の式1から11のいずれかにより表
わされる。
(1)(A−B/A)n
(2)(A−B/A)n−A、ことにA−B/A−A
(3)B/A−(A−B/A)n
(4)X−[(A−B/A)n]m+1
(5)X−[(B/A−A)n]m+1、ことにX−[−B/A−A]2
(6)X−[(A−B/A)n−A]m+1
(7)X−[(B/A−A)n−B/A]m+1
(8)Y−[(A−B/A)n]m+1
(9)Y−[(B/A−A)n]m+1、ことにY−[−B/A−A]2
(10)Y−[(A−B/A)n−A]m+1
(11)Y−[(B/A−A)n−B/A]m+1
ただし、式中のAはビニル芳香族ブロック、B/Aは軟質相、すなわちジエン
およびビニル芳香族単位からランダムに構成されているブロック、Xはn−官能
性開始剤、Yはm−官能性結合剤、m、nは1から10の整数である。
好ましいのは、その軟質相B/Aが複数の以下のブロックに分割されているブ
ロック共重合体
(12)(B/A)1−(B/A)2
(13)(B/A)1−(B/A)2−(B/A)1
(14)(B/A)1−(B/A)2−(B/A)3
であって、各ブロックB/A中のビニル芳香族単量体/ジエンの割合が相互に異
なるか、または単一ブロック中において、(B/A)1→(B/A)3の範囲内で
連続的に変わり(ことに増大し)、各サブブロックのガラス転移温度Tgが25
℃未満のものである。ことにブロック共重合体(14)が好ましい。
ことに好ましい水素添加共重合体(C)は、式(2)(A−B/A)n−Aを
有する。
極めて好ましい水素添加共重合体(C)は、式
(19)A−B/A−A
で表わされる共重合体である。
同様にして、ジエン単量体から形成されるブロックBは、もっぱらビニル芳香
族単位から構成されるブロックAに代替し得る。要点は単にエラストマー共重合
体を形成することに在るからである。この代替構造の共重合体は、以下の式(1
5)から(18)で表わされる。
(15)B−(B/A)
(16)(B/A)−B−(B/A)
(17)(B/A)1−B−(B/A)2
(18)B−(B/A)1−(B/A)2
本発明において好ましいビニル芳香族化合物は、スチレン、α−メチルスチレ
ン、ビニルトルエンおよびこれらの混合物である。また、好ましいジエンは、ブ
タジエン、イソプレン、ピペリレン、1−フェニルブタジエンおよびこれらの混
合物である。
ことに好ましい単量体の組合わせは、ブタジエンとスチレンである。以下に示
されるすべての重量および容量は、この組合わせに関する。
B/Aブロックは、ほぼ75から30重量%のスチレンと、25から70重量
%のブタジエンから構成される。ことに好ましいのは35から70%のブタジエ
ンと、65から30%のスチレンから成る軟質ブロックである。
スチレン/ブタジエンの単量体の組合わせにおいて、全ブロック共重合体中の
ジエンの重量割合は15から50重量%であり、ビニル芳香族単位の割合はこれ
に対応して85から50重量%である。ことに好ましいブタジエン/スチレンブ
ロック共重合体は、25から50重量%のジエンと、75から50重量%のビニ
ル芳香化合物により構成される。
このようなブロック共重合体は、非極性溶媒と、中性極性共溶媒との混合溶媒
中における陰イオン重合により形成される。好ましい溶媒はシクロヘキサン、メ
チルシクロヘキサンのような脂肪族炭化水素であり、ことに好ましい共溶媒は、
例えばテトラヒドロフランのようなエーテル、ジエチレングリコールジメチルエ
ーテルのような脂肪族ポリエーテル、トリブチルアミン、ピリジンのような三級
アミンである。共溶媒は、非極性溶媒に対して、少量で、例えば0.5から5容
量%の割合で使用される。経験によれば、0.1から0.3容量%のテトラヒド
ロフランを使用するのがことに好ましく、通常、約0.2容量%で充分である。
陰イオン重合は、有機金属化合物、ことにメチルリチウム、エチルリチウム、
プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチ
ウムのようなリチウム有機金属化合物を使用して開始される。この有機金属化合
物は、化学的に不活性の炭化水素中における溶液として、単量体に対して0.0
02から5モル%の割合で添加される。
重合温度は0から130℃、ことに30から100℃の範囲が好ましい。
本発明組成物において、組成分(C)中における、ジエンおよびビニル芳香族
単位から構成される軟質相の容量割合は60から99%、好ましくは70から
90、ことに80から90%である。ビニル芳香族単量体から構成されるブロッ
クAは、硬質相を形成し、その容量割合は、これに対応して1から40%、好ま
しくは10から30、ことに10から20%である。
組成分(C)の軟質相(ブロックBおよびB/A)は、一般的に−50から+
25℃、ことに−50から+5℃のガラス転移温度を有し、これに対して硬質相
(ブロックA)のそれは50℃より高いのが好ましい。
ブロックAの分子量は、一般的に1000から200000(g/モル)、こ
とに3000から80000(g/モル)であり、単一分子中において異なる分
子量を持っていてもよい。
結合中心xは、活性陰イオン連鎖末端と、少なくとも二官能性の結合剤との反
応により形成される。このような化合物の例は、米国特許3985830号、3
280084号、3637554号および4091053号各明細書に記載され
ている。例えばエポキシド化グリセリド、例えばエポキシド化された亜麻仁油、
大豆油を使用するのが好ましく、ジビニルベンゼンの使用も適当である。
ことに二量体化のために、ジクロロジアルキルシラン、テレフタルアルデヒド
のようなアルデヒド、エチルホルマート、アセタート、ベンゾアートのようなエ
ステルが適当である。
ランダムブロックB/Aは、ブロックB1/A1−B2/A2−B3/A3・・・・・・
に分割されてもよい。このランダムブロックは、2から15個、ことに3か
ら10個のサブブロックを有するのが好ましい。
重合は複数工程で行なわれ、単官能性開始剤を使用する場合、例えば硬質ブロ
ックAの形成により開始される。単量体の一部はあらかじめ反応器に装填され、
重合は開始剤の添加により開始される。一定の連鎖構造をもたらすために、必須
ではないが、第二の単量体の添加前に、反応を高度の転化(99%以上)をもた
らすまで行なわせるのが好ましい。
第二の単量体の添加の態様は、選択されるブロック構造に応じて相違する。単
官能性開始の場合には、例えばビニル芳香族化合物が、まず計量給送により反応
器に装填され、その後にジエンと残余量のビニル芳香族化合物が、できるだけ同
時に添加されるべきである。ジエン対ビニル芳香族化合物の混合割合、ルイス塩
基の量割合、化学的構造は、温度と共に、ブロックB/Aの組成およびランダム
構造を決定する。本発明によれば、ジエンは、ビニル芳香族化合物を含む全重量
に対して25から70重量%の割合で存在する。次いで、ビニル芳香族の添加に
より、ブロックAが重合形成される。あるいは、必要なブロックが、結合反応に
より相互に結合され得る。二官能性開始の場合には、ブロックB/Aがまず形成
され、次いでブロックAが形成される。
重合反応は、それ自体公知の態様で、水またはアルコール、例えばエタノール
、イソプロパノールのような極性化合物の添加により停止される。
重合体中に依然として残存し、ジエンに基因するオレフィン性二重結合も、同
様に、水素と、選択的水素添加触媒、例えばヘキサンのような不活性溶媒中にお
けるニッケル(11)アセチルアセトナートとトリイソブチルアルミニウムの混
合を使用して、均質相において水素添加される。水素添加は、20から200℃
において行なわれ、水素圧は6から30バールの範囲が好ましい。非芳香族二重
結合のすべてを水素添加する必要はなく、95%の水素添加度で充分である。こ
の水素添加に関する詳細は、例えば西独特願公開3106959号公報に記載さ
れている。
好ましくは50000から300000、ことに70000から180000
(重量平均)の所望の水素添加重合体(C)をもたらすべき後処理は、通常の態
様で行なわれる。通常まで溶媒が除去され、次いで重合体は押出され、顆粒化さ
れる。
本発明による熱可塑性成形用組成物は、上述した組成分(A)、(B)、(C
)のほかに、滑剤、離型剤、顔料、染料、難燃化剤、酸化防止剤、光安定剤、充
填剤、繊維ないし粉末状補強剤、帯電防止剤などの添加剤を、これら各剤の慣用
量において含有していてもよい。ことに本発明組成物からフィルムを成形する場
合、組成分(A)、(B)、(C)の合計量に対して、30から70重量%のエ
チレンオキシドおよび70から30重量%の1,2−プロピレンオキシドから成
り、2000から8000の平均分子量を有する共重合体が、0.5から10重
量%の割合で、可塑剤として添加される。
本発明による成形用組成物の製造は、それ自体公知の混合方法により、例えば
押出機、バンベリーミキサー、混練機、ロールミルまたはカレンダーにより溶融
状態で行なわれ得る。各組成分は、また溶融することなく、「冷」状態において
も混合され得る。この場合、粉末もしくは顆粒状の混合物は、溶融することなく
、さらに他の処理が行なわれるまで均質になされる。
種々の形態の、ことにフィルム状の成形体が、本発明による成形用組成物から
製造され得る。フィルムは、押出機、ロールミル、その他の、この分野の当業者
に周知の手段により製造され得る。これらの手段により、本発明組成物は、加熱
および/または組成物自体の、または可塑剤または他の添加剤との摩擦熱により
溶融させて、さらに他の加工処理に附されるべきフィルムに成形される。この種
のフィルムの成形体への転化は、例えば熱塑性成形によって行なわれる。
この種のフィルムは種々の用途、ことに自動車産業における内装、スーツケー
ス、各種のバッグにおける皮革代用品として、また家具産業における各種家具表
面の被覆材料として使用され得る。
本発明による新規の熱可塑性成形用組成物は、上述したようにハロゲンを全く
含有しない。この組成物は、通常、蒸散または滲出により逸出する組成分を全く
含有せず、またその後の処理の間にも、好ましくない質的変化、例えば、変色、
褪色、しみなどをもたらすことがない。さらに本発明組成物は、良好な機械特性
を示し、ことにこれから形成されるフィルムは、良好な熱塑性特性(高い破断時
伸びおよび引裂耐性)を示し、また好ましいソフトな手触わりを有する。
実験例
以下の実験用組成分を調製し、使用した。
組成分(A)
架橋されたポリ−n−ブチルアクリラート(グラフトコア)およびスチレン/
アクリロニトリル共重合体(グラフトシェル)から構成される粉末状グラフト重
合体
98gのn−ブチルアクリラートおよび2gのジヒドロジシクロペンタジエニ
ルと、別途に50gの水に溶解させた1gのナトリウムC12−C18パラフィンス
ルホナートの溶液とを、3gのポリブチルアクリラートシードラテックス、10
0gの水および0.2gの過硫酸カリウムの混合物に、60℃において4時
間にわたって添加し、次いでさらに3時間重合を継続した。得られたラテックス
は、狭まい粒度分布(Q=0.1)で、430nmの平均粒径d50を示した。
このラテックス150gを、60gの水、0.03gの過硫酸カリウムおよび
0.05gの過酸化ラウロイルと混合し、次いでさらに4時間にわたって、15
gのスチレンと5gのアクリロニトリルをラテックス粒子上にグラフト重合させ
た。生成重合体を、塩化カルシウム溶液を使用し、95℃で沈殿させ、水で洗浄
し、温空気流中で乾燥した。重合体のグラフト度は35%、粒の平均粒径d50は
510nmであった。
このグラフト重合体は以下の組成を示した(ラウンドナンバー値)。
60重量%の架橋されたポリブチルアクリラートグラフトコア、
20重量%のスチレン重合体内方グラフトシェル、
20重量%のスチレン/アクリロニトリル共重合体(S/AN=3:1)外方
グラフトシェル。
開始時に使用されたシード重合体は、欧州特願公告6503号公報(12欄5
5行から13欄22行)の方法により、固体分40%の水性乳濁液中におけるn
−ブチルアクリラートとトリシクロデセニルアクリラートの重合により製造され
たものである。
組成分(A)に関する説明中の平均粒径は、粒子径の平均重量である。平均粒
径はd50値に対応し、このd50値は、全粒子の50重量%がこれより小さい粒径
を、50重量%がこれより大きい粒径を有する数値である。この数値d50に加え
て、粒径分布の幅を示すために、数値d10およびd90がしばしば表示される。全
粒子の10重量%がd10値より小さい粒径を、90重量%がd10値より大きい粒
径を有し、同様にして、全粒子の90重量%がd90値より小さい粒径を、10重
量%がd90値より大きい粒径を有することを意味する。商Q=(d90−d10)/
d50は、粒度分布の目安を示す。この商Qが小さい程、分布の幅が狭まいことを
意味する。
組成分(B)
スチレン/アクリロニトリル共重合体
スチレン分65重量%、アクリロニトリル分35重量%の共重合体を、
1969年、ミュンヘン在、カルル、ハンゼル、フェルラーク社刊、R.フィー
ヴェークおよびG.ダンミラー編「クンストシュトフ、ハントブーフ」第5巻「
ポリスチレン」122−124頁に記載された方法で連続溶液重合により製造し
た。その粘度数VN(DIN53726により、25℃で、ジメチルホルムアミ
ド中の0.5重量%濃度溶液について測定)は、80ml/gであった。
組成分(C)(本発明実施例)
エラストマーブロック共重合体
撹拌器を備えた50l容積の加熱、冷却可能スチール製オートクレーブを窒素
流で充満させ、これにs−ブチルリチウムおよび1,1−ジフェニルエチレンの
シクロヘキサン溶液で処理し、次いで乾燥した。オートクレーブに22.8lの
シクロヘキサンを装填し、42mlのs−ブチルリチウムおよび65.8mlの
テトラヒドロフランを添加した。下表1は重合の各工程を示す。
各工程において、単量体の給送時間は、重合時間にくらべて短かくされた。表
に示される開始温度および/または終結温度は、反応器ジャケットの加熱および
/または冷却により調節された。
反応終結時(単量体費消)に、エタノールを反応混合物が無色となるまで滴定
して重合を終結させ、次いで若干過剰量の酸で混合物を酸性化した。次いで混合
物を、130から140℃において15バールの水素圧に被曝させた。
反応混合物を慣用の態様で後処理して、水素添加重合体を得た。溶媒の除去は
ベント式押出機中において、200℃で有利に行なわれた。生成重合体は顆粒形
態で得られた。
生成ブロック重合体(C)は
A−B/A−A
で表わされる構造を有し、その軟質相B/Aは、
(B/A)1−(B/A)2−(B/A)3
で示されるように3サブブロックに分割されていた。
AおよびB/Aは上述した重合体ブロックを意味する。すなわち、ブロックA
はスチレン単独重合体ブロックであり、ブロックB/Aは、ランダム重合された
スチレンおよび水素添加ブタジエン(=ブチレン)単位を含有するブロックであ
る。軟質相B/A中のブチレン単位の割合は20重量%、スチレン単位のそれは
80重量%であった。また全重合体(C)中のスチレンの割合は65重量%であ
った。重合体(C)中の2硬質相Aの割合はそれぞれ10.4重量%、従って軟
質相B/Aのそれは79.2重量%であった。
重合体(C)の平均分子量Mwは、ゲル透過クロマトグラフィー(ポリスチレ
ン検度)で測定して約130000g/モルであった。
組成分(C*)(対比例)
水素添加スチレン/ブタジエン共重合体
まず、4lのシクロヘキサン中、520gのスチレン、480gのブタジエン
および20mlのテトラヒドロフランの溶液を、0℃において、プロチック不純
物不活性化のために、s−ブチルリチウムと徐々に混合し、0.2℃の温度上昇
により認識可能の重合開始後、直ちに0.8gのs−ブチルリチウムを添加した
。重合反応熱は蒸発冷却により抽出したが、その冷却度は30分間で120℃ま
で温度上昇するように調節した。さらに10分間この温度を維持してから、1g
のエタノールを添加して重合を停止させた。
水素添加のために、30mlのトルエン中1.5gのニッケル(II)アセチ
ルアセトナートの懸濁液およびヘキサン中20重量%濃度のトリイソブチルアル
ミニウム溶液34mlを、生成重合体溶液に添加し、次いでこの混合物を、80
から110℃において60分間、15バールの水素圧に被曝させた。
反応混合物を慣用の態様で後処理して水素添加重合体を得た。溶媒の除去は直
接的脱気装置により有利に行なわれた。
生成重合体は、その発端において富ブタジエン(貧スチレン)、その終端にお
いて富スチレン(貧ブタジエン)の、すなわち連続的に構成が変化し、スチレン
単独重合体ブロックが、第一ブロックの富スチレン端部に結合されているブロッ
クを有する構造を示した。
この重合体のスチレン分(BASF社のGlissoviscalR)は、重
合体全量に対して52重量%を占めた。また重合体中のスチレン単独重合体末端
ブロックは、13重量%を占めた。また上述のようにして製造された重合体の平
均分子量は、80000であった。
上記組成分(A)、(B)および(C)または(C*)の二種類の混合物、す
なわち組成物を調製し、それぞれ200℃においてロールミルにより1mm厚さ
のフィルムに成形した。両フィルムの特性は以下のようにして測定された。
(引張強さ)
フィルムからの打抜き片をDIN53504により引張り試験に附した。
(破断時伸び)
同じくDIN53504による引張り試験において、破断応力が負荷された瞬
間における試料の長さを測定し、試料の元の長さに対する伸び率を%で示した。
(引裂伝播抵抗)
上記試料についてDIN53515による引裂伝播試験を行なった。
(ショア硬さ)
DIN53505により試験装置Dを使用してショア硬さを測定した。
(熱変形温度)
DIN53461により、測定法Aを使用し、ビカー数として測定した。
製造されたフィルムの組成および試験結果を下表に示す。 本発明による組成分(C)の代わりに、水素添加重合体(C*)(貧スチレン
から富スチレンに漸次移行するブタジエン含有ブロック、スチレン単独重合体ブ
ロックと結合)を含有する成形組成物から成形されたフィルムは、著しく低い破
断時伸びおよび引裂伝播抵抗を示す。
これに対して、本発明による組成分(C)(ポリスチレンブロック/スチレン
および水素添加ブタジエンの3個のランダム重合体ブロック/ポリスチレンブロ
ック)を含有するフィルムは、良好な引張り強さ、高い破断時伸び、良好な引裂
伝播抵抗および高い熱変形温度を併わせ備えている。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】平成10年11月3日(1998.11.3)
【補正内容】
明細書
熱可塑性成形用組成物
本発明は、
(A)(ak)30から90重量%の、
(ak/1)単一もしくは複数のC1−C10アルキルアクリラート
80から99.99重量%、
(ak/2)架橋作用単量体0.01から20重量%、および
(ak/3)単一もしくは複数のその他のモノエチレン性不飽和
単量体0から40重量%を共重合させることにより得られるエラストマーグラフ
トコアと、
(as)10から70重量%の、
(as/1)下式
で表わされ、かつR1、R2が水素またはC1−C8アルキルである場合のスチレン
化合物またはC1−C8アルキルアクリラートもしくはメタクリラート、またはス
チレン化合物とC1−C8アルキルアクリラートもしくはメタクリラートの混合物
50から100重量%、および
(as/2)単一もしくは複数のその他のモノエチレン性不飽和
単量体0から50重量%で構成されるグラフトシェルとを含有する、30から9
8重量%のグラフト重合体、
(B)(b1)50から100重量%のスチレンおよび/またはα−メチルス
チレン、
(b2)0から50重量%のアクリロニトリル、および
(b3)0から50重量%の単一もしくは複数のその他の単量体で構成
される、1から50重量%の熱可塑性重合体、と
(C)重合体(連鎖)中にビニル芳香族単量体単位を含有し、25℃より高い
ガラス転移温度を有する少なくとも2個のブロックA、および
両ブロックA間に位置し、重合体(連鎖)中にビニル芳香族単量体Aおよびジ
エンBの両方の単位をランダムに含有し、ランダム構造と、25℃より低いガラ
ス転移温度Tgを有する少なくとも1個のエラストマーブロックB/Aを含有し
、
全ブロック共重合体中のブロックB/Aから成る硬質相の割合が1から40容
量%、ジエンの重量割合が50重量%未満である、全部のもしくはほとんど全部
のオレフィン性二重結合が水素添加されている、1から70重量%のエラストマ
ーブロック共重合体とを含有することを特徴とする熱可塑性成形用組成物に関す
る。
本発明は、さらに上記組成分(C)が特定の組成を有する成形用組成物、これ
ら成形用組成物の、フィルムおよび成形体製造のための用途およびこれら成形用
組成物から製造されたフィルムおよび成形体に関する。
いわゆるプラスチックフィルムは、各種各様の領域における用途を有する。特
定のフィルム、ことにレザー状外観を有する可撓性フィルムは、各種の内装、例
えば自動車の内装用に、あるいは皮革代用品として、広く使用されている。この
ようなプラスチックフィルムは、大部分がカレンダー処理または押出により製造
されている。
これらフィルムの主成分は、現在においては、一般的に、可塑剤およびしばし
ばその他のビニル重合体を含有するポリビニルクロリド(PVC)である。しか
しながら、このようなフィルムは、耐老性において制約があり、さらに使用され
る可塑剤が経時的に滲出する欠点がある。
(b3)0から50重量%、好ましくはoから40重量%の単一もしくは複数
の他の単量体から構成される。(b3)の単量体として好ましいのは、(ak/
3)および(as/2)に関して前述した単量体である。
好ましい単量体(b3)は、アルキルおよびアリールメタクリラートと、メタ
クリルアミドである。好ましい単量体(b3)は、具体的には、メチルメタクリ
ラート、無水マレイン酸、マレインイミド、および比較的少量のグリシジルメタ
クリラート、マレイン酸、メタクリル酸およびジメチルアミノエチルアクリラー
トである。
組成分(B)は、好ましくは、例えば、60から95重量%のスチレンと5か
ら40重量%のアクリロニトリルとからなる共重合体を含む。60から85重量
%のスチレンと15から40重量%のアクリロニトリルとからなる共重合体は特
に好ましい。
重合体(B)は、その主要構成分であるスチレンとアクリロニトリルの故に、
一般的にSAN重合体と称されており、部分的には市販されている。この重合体
は、一般的に、ほぼ40000から2000000の平均分子量(数平均)に相
当する、40から160ml/gの粘度数VN(DIN53726により、25
℃において、0.5重量%濃度のジメチルホルムアミド溶液について測定)を有
する。このSANポリマーは、慣用の態様で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、
沈殿重合または乳化重合で得られる。これら各重合法の詳細については、例えば
、1969年、ミュンヘンのカルル、ハンゼル、フェルラーク社刊、R.フィー
ヴェークおよびG.ダウミラー編「クンストシュトフハントブーフ」第V巻「ポ
リスチレン」118頁以降を参照され度い。
この重合体(B)は、スチレンおよび/またはα−メチルスチレンおよびアク
リロニトリルの、例えばアクリロニトリルの割合、分子量において相違する複数
の共重合体の混合物であってもよい。
本発明による成形用組成物は、さらに、組成分(A)、(B)、(C)の合計
量に対して、1から70重量%、好ましくは5から50、ことに8から40重量
%の他の組成分(C)を含有する。この組成分(C)は、水素添加されたエラス
トマーブロック共重合体であって、これは
少なくとも2個の、「硬質相」を形成し、かつビニル芳香族単量体単位を重合
体連鎖中に含有するブロックA、および
エラストマー(軟質)相を形成し、かつビニル芳香族単量体単位(A)および
ジエン単位(B)を重合体連鎖中に含有するブロックB/Aを含有する。ブロッ
クAのガラス転移温度Tgは25℃より高く、ブロックB/Aのそれは25℃よ
り低く、ブロックA対ブロックB/Aの相容量割合は、全ブロック共重合体中に
おける硬質相の割合が1から40容量%、ジエンの重量が50重量%未満となる
ように選定される。
エラストマー共重合体(C)中におけるオレフィン性二重結合の全部もしくは
実質的に全部が水素添加されている。
この組成分(C)の構造および製造方法に関する詳細は以下に説明されるが、
また本明細書中に合併されるべき西独特願公開4420952号公報中において
も説明されている。
軟質相(ブロックB/A)は、極性共溶媒中における、ビニル芳香族単量体と
ジエンのランダム共重合により得られる。
水素添加ブロック共重合体は、例えば以下の式1から4のいずれかにより表わ
される。
(1)(A−B/A)n−A、ことにA−B/A−A
(2)X−[(B/A−A)n]m+1、ことにX−[−B/A−A]2
(3)X−[(B/A−A)n−B/A]m+1
(4)Y−[(B/A−A)n]m+1)ことにY−[−B/A−A]2
ただし、式中のAはビニル芳香族ブロック、B/Aは軟質相、すなわちジエン
およびビニル芳香族単位からランダムに構成されているブロック、Xはn−官能
性開始剤、Yはm−官能性結合剤、m、nは1から10の整数である。
好ましいのは、その軟質相B/Aが複数の以下のブロックに分割されているブ
ロック共重合体
(5)(B/A)1−(B/A)2
(6)(B/A)1−(B/A)2−(B/A)1
(7)(B/A)1−(B/A)2−(B/A)3
であって、各ブロックB/A中のビニル芳香族単量体/ジエンの割合が相互に異
なるか、または単一ブロック中において、(B/A)1→(B/A)3の範囲内で
連続的に変わり(ことに増大し)、各サブブロックのガラス転移温度Tgが25
℃未満のものである。ことにブロック共重合体(7)が好ましい。
ことに好ましい水素添加共重合体(C)は、式(1)(A−B/A)n−Aを
有する。
極めて好ましい水素添加共重合体(C)は、式
(1)A−B/A−A
で表わされる共重合体である。
本発明において好ましいビニル芳香族化合物は、スチレン、α−メチルスチレ
ン、ビニルトルエンおよびこれらの混合物である。また、好ましいジエンは、ブ
タジエン、イソプレン、ピペリレン、1−フェニルブタジエンおよびこれらの混
合物である。請求の範囲
1.(A)(ak)30から90重量%の、
(ak/1)単一もしくは複数のC1−C10アルキルアクリラート
80から99.99重量%、
(ak/2)架橋作用単量体0.01から20重量%、および
(ak/3)単一もしくは複数のその他のモノエチレン性不飽和
単量体0から40重量%を共重合させることにより得られるエラストマーグラフ
トコアと、
(as)10から70重量%の、
(as/1)下式
で表わされ、かつR1、R2が水素またはC1−C8アルキルである場合のスチレン
化合物またはC1−C8アルキルアクリラートもしくはメタクリラート、またはス
チレン化合物とC1−C8アルキルアクリラートもしくはメタクリラートの混合物
50から100重量%、および
(as/2)単一もしくは複数のその他のモノエチレン性不飽和
単量体0から50重量%で構成されるグラフトシェルとを含有する、30から9
8重量%のグラフト重合体、
(B)(b1)50から100重量%のスチレンおよび/またはα−メチルス
チレン、
(b2)0から50重量%のアクリロニトリル、および
(b3)0から50重量%の単一もしくは複数のその他の単量体で構成
される、1から50重量%の熱可塑性重合体、と
(C)重合体連鎖中にビニル芳香族単量体単位を含有し、25℃より高いガラ
ス転移温度を有する少なくとも2個のブロックA、および
両ブロックA間に位置し、重合体連鎖中にビニル芳香族単量体Aおよびジエン
Bの両方の単位をランダムに含有し、ランダム構造と、25℃より低いガラス転
移温度Tgを有する少なくとも1個のエラストマーブロックB/Aを含有し、
全ブロック共重合体中のブロックB/Aから成る硬質相の割合が1から40容
量%、ジエンの重量割合が50重量%未満である、全部のもしくはほとんど全部
のオレフィン性二重結合が水素添加されている、1から70重量%のエラストマ
ーブロック共重合体とを含有することを特徴とする熱可塑性成形用組成物。
2.ブロック共重合体(C)において、硬質相(ブロックA)のガラス転移温
度Tgが50℃より高く、軟質相(ブロックBおよびB/A)のガラス転移温度
Tgが5℃より低いことを特徴とする、請求項1の熱可塑性成形用組成物。
3.ブロック共重合体(C)において、ビニル芳香族単量体が、スチレン、α
−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびこれらの混合物のいずれかであり、ジ
エンがブタジエン、イソプレンおよびこれらの混合物のいずれかであることを特
徴とする、請求項1または2の熱可塑性成形用組成物。
4.ブロック共重合体(C)において、軟質相(ブロックB/A)(場合によ
り第二のもしくはそれ以降の軟質相)が、ビニル芳香族化合物とジエンの共重合
体から形成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれかの熱可塑性
成形用組成物。
5.水素添加ブロック共重合体(C)が、式
(A−B/A)n−A
で表わされ、かつAがビニル芳香族ブロック、B/Aがジエンおよびビニル芳香
族単位のランダム重合体ブロック、nが1から10の整数を意味する場合の構造
を有することを特徴とする、請求項1の熱可塑性成形用組成物。
6.水素添加ブロック共重合体(C)の軟質相(ブロックB/A)が、以下の
サブブロック
(1)(B/A)1−(B/A)2
(2)(B/A)1−(B/A)2−(B/A)1
(3)(B/A)1−(B/A)2−(B/A)3
に分割されており、ビニル芳香族/ジエンの割合が各サブブロックB/Aにおい
て相違するか、あるいは、単一ブロック内において、(B/A)1→(B/A)3
の範囲において連続的に変化し、各サブブロックのガラス転移温度Tgが25℃
より低いことを特徴とする、請求項5の熱可塑性成形用組成物。
7.水素添加ブロック共重合体(C)が、式
A−B/A−A
で表わされ、かつAがビニル芳香族ブロック、B/Aがジエンおよびビニル芳香
族単位のランダム重合体ブロックを意味する場合の構造を有することを特徴とす
る、請求項5または6の熱可塑性成形用組成物。
8.組成分(B)が、60から95重量%のスチレンおよび5から40重量%
のアクリロニトリルから構成される共重合体であることを特徴とする、請求項2
の熱可塑性成形用組成物。
9.請求項1から8のいずれかの熱可塑性成形用組成物を、フィルムおよび成
形体の製造に使用する方法。
10.請求項1から8のいずれかの熱可塑性成形用組成物から成形されたフィ
ルムまたは成形体。
11.請求項10のフィルムまたは成形体を自動車の内装に使用する方法。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),EA(AM,AZ,BY
,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AU
,BG,BR,BY,CA,CN,CZ,GE,HU,
IL,JP,KR,KZ,LT,LV,MX,NO,N
Z,PL,RO,RU,SG,SI,SK,TR,UA
,US
(72)発明者 クノル,コンラート
ドイツ国、D―67069、ルートヴィッヒス
ハーフェン、ホルスト―ショルク―シュト
ラーセ、184
(72)発明者 リンデンシュミット,ゲールハルト
ドイツ国、D―69181、ライメン、ブーヘ
ンヴェーク、11