JP2001346557A - 乳化香料入り炭酸飲料 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 炭酸飲料の乳化剤を安定化させるような方法
を開発し、乳化香料によって油溶性の色素や味成分等が
飲料中に安定に分散された乳化香料入り炭酸飲料を提供
することができるようにする。 【解決手段】 炭酸飲料中にパルプを添加することによ
って炭酸飲料中の乳化剤を安定化する。そして、この安
定化された乳化剤によって油溶性の色素や味成分等が飲
料中に安定に分散されることとなるので、色素、香気、
味についてバラエティの富んだ炭酸飲料を提供すること
ができるようになる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、その中に含まれる
乳化香料が安定化された乳化香料入り炭酸飲料に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】乳化香料は、水に不溶性の成分を用い
て、発色、香料化、味付けをする際に飲料中に添加され
るものである。そして、乳化香料それ自身は飲料中で界
面活性剤として機能し、水に不溶性の色素、香料、味成
分を内包したミセル及びその類似物を飲料中に形成させ
るが、同時に、香料でもあるために乳化香料と呼ばれ、
成分表示中では一般的には香料として分類されている。
また乳化香料は、飲料に対して積極的に濁りを付与する
ために飲料中に添加されることもある。なお、乳化香料
の他にも乳化着色料というものも存在し、乳化香料が乳
化剤（界面活性剤）と香料の機能を併せ持つのと同様
に、乳化着色料も乳化剤（界面活性剤）と着色料の機能
を併せ持つ。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが、乳化香料を
含有する飲料（以下、これを乳化香料入り飲料と言う）
を炭酸飲料にしたもの（本明細書では、これを「乳化香
料入り炭酸飲料」と呼ぶ）については、その中の乳化香
料が不安定となり、飲料中に形成されていたミセル及び
その類似物が崩壊してしまい、それらに取り込まれてい
た油状成分が放出されてしまう。そして、この放出され
た油状成分は水中で凝集し、飲料の液面に油が浮いたよ
うな外観を呈するようになる。特に、油状成分が色素で
あったような場合には、飲料の色落ちが生じる。

【０００４】本発明は以上のような課題に鑑みてなされ
たものであり、その目的は、炭酸飲料の乳化剤を安定化
させるような方法を開発し、乳化香料によって油溶性の
色素や味成分等が飲料中に安定に分散された乳化香料入
り炭酸飲料を提供することができるようにすることにあ
る。

【０００５】

【課題を解決するための手段】以上のような目的を達成
するために、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、炭酸
飲料中に乳化剤が含まれていた場合には、当該炭酸飲料
中にパルプを混入させることによって当該炭酸飲料中の
乳化剤を安定化させることができるということを見出
し、本発明を完成するに至った。

【０００６】より具体的には、本発明は、以下のような
乳化香料入り炭酸飲料、及び炭酸飲料中の乳化剤の安定
化方法を提供する。

【０００７】（１） 所定量のパルプが混入され、その
中に含まれる乳化香料が安定化された乳化香料入り炭酸
飲料。

【０００８】（２） セミクリア果汁飲料である（１）
記載の乳化香料入り炭酸飲料。

【０００９】（３） 前記パルプは果実系のパルプであ
ることを特徴とする（１）または（２）記載の乳化香料
入り炭酸飲料。

【００１０】（４） 前記パルプは柑橘系のパルプであ
ることを特徴とする（１）または（２）記載の乳化香料
入り炭酸飲料。

【００１１】（５） トロピカルフルーツ系の飲料であ
ることを特徴とする（１）または（２）記載の乳化香料
入り炭酸飲料。

【００１２】（６） 炭酸飲料中の乳化剤を安定化する
ために当該炭酸飲料中にパルプを混入させる方法。な
お、「乳化剤」であるから、乳化香料には限られず、乳
化着色料などの他の乳化剤も含まれる。

【００１３】（７） 前記パルプは果実系または柑橘系
のパルプであることを特徴とする請求項６記載の方法。

【００１４】（８） 前記パルプはグレープフルーツの
パルプであることを特徴とする（６）記載の方法。

【００１５】

【発明の実施の形態】「パルプ」というのは、果実や野菜
の加工に伴って生ずる不溶性加工物であり、一般には、
原料をそのまま物理的に粉砕（場合によっては、加熱や
酸処理を併用して物理的に粉砕）した際に生ずる微細な
組織片のことを意味する。

【００１６】柑橘果実から生ずるパルプは、さのう膜や
じょうのう膜の他、アルベドやフラベドなどの摩砕物で
あり、カロテノイド、脂質、香気性分、ペクチン、フラ
ボノイド、リモノイド、各種酵素など、果汁の風味や粘
性などのの成分が局在している。

【００１７】なお、果汁の中でも、パルプを含んだ状態
そのままの果汁を一般には混濁果汁（例えば、白濁した
リンゴジュースの製造に使用される果汁）と呼び、パル
プを含まないものとして製造された果汁を一般には透明
果汁（例えば、透明なリンゴジュースの製造に使用され
る果汁）と呼び、これらの中間に位置する果汁をセミク
リヤー果汁と呼ぶ。また、乳化香料を飲料に添加した場
合には飲料に濁りが生じるが、パルプを入れた場合でも
濁りが生じる。

【００１８】いわゆる果汁飲料としては、桃、葡萄、蜜
柑、林檎のジュース等を挙げることができるが、特にト
ロピカルフルーツ系の飲料としては、グレープフルー
ツ、レモン、オレンジ、パイナップル、マンゴー、パパ
イヤ等を挙げることができる。

【００１９】本発明の実施にあたっては、通常の炭酸飲
料に、適量の乳化香料とその量等に応じたパルプを添加
するだけでよい。乳化香料の添加量は、作成したい炭酸
飲料の処方に応じて当業者が適宜決定するものである。
そして、既に説明をしたように、パルプを入れた場合で
も、乳化香料を飲料に添加した場合と同様に飲料に濁り
が生じるだけであるので、乳化香料が既に添加されてい
る飲料にパルプを添加したとしても外観品質が劣るとい
うことはない。

【００２０】本発明に従って炭酸飲料中にパルプが添加
されることによって炭酸飲料中の乳化剤が安定し、この
安定化された乳化剤によって油溶性の色素や味成分等が
飲料中に安定に分散されることとなるので、色素、香
気、味についてバラエティの富んだ炭酸飲料を提供する
ことができるようになる。

【００２１】

【実験例】本発明者らは、炭酸飲料中の乳化香料を不安
定化させる原因は、炭酸飲料中に生じる炭酸ガスの泡に
よって乳化香料が気体に晒されるためであると考え、図
１に示されるようなバブリング系を組んで実験を行っ
た。

【００２２】実際の実験は、２５０ｍｌのセル中に２０
０ｍｌの飲料を入れ、モータによって１５００ｍｌ／ｍ
ｉｎの速度で１０分間バブリングを行って飲料の状態を
観察した。

【００２３】マリーゴールド色素香料（油状）を市販の
乳化香料Ａで乳化させ、パイン透明果汁α及び透明グレ
ープフルーツ果汁を添加したものを「Control」とし、
このControlに対し、乳化香料Ａを乳化香料Ｂに代えた
もの(実施例番号１)、パイン透明果汁α及びグレープフ
ルーツ果汁を共に抜いたもの(実施例番号３)、パイン透
明果汁αを別のパイン透明果汁βに代えたもの(実施例
番号４)、パイン透明果汁αを別のパイン透明果汁γに
代えたもの(実施例番号５)について、それぞれ実験を行
った。

【００２４】ここで、実施例２では、本発明に従って飲
料中にパルプを添加した。なお、パルプの添加は、市販
のセミクリアー果汁を添加することによって行った。よ
り具体的には、実施例２においては、Controlに対し、
その中の透明グレープフルーツ果汁をセミクリアーグレ
ープフルーツ果汁（即ち、この中にはグレープフルーツ
のパルプが含まれている）に代えたものとした。

【００２５】この結果を以下の表１に示す。

【００２６】

【表１】

【００２７】この表１から明らかなように、炭酸飲料中
の乳化香料の安定性は、添加されている乳化剤の種類に
は依存しない（実施例１）。また、添加される透明果汁
の種類にも依存しない（実施例４及び５）。

【００２８】ただ、果汁分を全く抜いてしまえば、ある
程度改善はされるものの（実施例３）、それでもまだ十
分ではなく、また、そもそも果汁を抜いてしまったので
は飲料のバラエティを十分に確保することはできない。

【００２９】しかしながら、実施例２のように炭酸飲料
中にパルプを添加することにより、果汁炭酸飲料中でも
乳化剤の安定化を図ることができるようになる。

【００３０】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
炭酸飲料中にパルプが添加されることによって乳化剤が
安定化し、これによって油溶性の色素や味成分等が飲料
中に安定に分散されるようにすることができるので、色
素、香気、味についてバラエティの富んだ炭酸飲料を提
供することができるようになる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 実験に際して使用したバブリング系の構成を
示すブロック図である。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Ｆターム(参考） 4B017 LC01 LC02 LC10 LE04 LE10 LG02 LL01 4B047 LB02 LF07 LG12 LG38 LG70 LP02

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 所定量のパルプが混入され、その中に含
   まれる乳化香料が安定化された乳化香料入り炭酸飲料。
2. 【請求項２】 セミクリア果汁飲料である請求項１記載
   の乳化香料入り炭酸飲料。
3. 【請求項３】 前記パルプは果実系のパルプであること
   を特徴とする請求項１または２記載の乳化香料入り炭酸
   飲料。
4. 【請求項４】 前記パルプは柑橘系のパルプであること
   を特徴とする請求項１または２記載の乳化香料入り炭酸
   飲料。
5. 【請求項５】 トロピカルフルーツ系の飲料であること
   を特徴とする請求項１または２記載の乳化香料入り炭酸
   飲料。
6. 【請求項６】 炭酸飲料中の乳化剤を安定化するために
   当該炭酸飲料中にパルプを混入させる方法。
7. 【請求項７】 前記パルプは果実系または柑橘系のパル
   プであることを特徴とする請求項６記載の方法。
8. 【請求項８】 前記パルプはグレープフルーツのパルプ
   であることを特徴とする請求項６記載の方法。