JP5603570B2 - 果汁炭酸飲料 - Google Patents

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Description

本発明は、炭酸ガスを圧入して製造される炭酸飲料に関する。特に本発明は、特定の大きさに調整した果実パルプ成分を配合した、濃厚感と果実感を向上させた嗜好性の高い果汁炭酸飲料に関する。
近年、食物繊維としての栄養的観点や食感付与などの嗜好的観点から、果実パルプ成分を含有する飲料が多く開発されている。果実パルプ成分とは、果実から得られる水不溶性の固形成分をいい、この果実パルプ成分を特定の粒子径(粒度)に調整して各種飲料に配合することが知られている。
果実パルプ入りの非炭酸飲料については、例えば、粒度が22〜140メッシュに調製されたニンジン搾汁カスパルプを含有する飲料で、ほどよいザラつきが感じられ喉ごしが良く、ニンジンの臭味や味を感じない飲料(特許文献1)、りんご搾汁液を篩分けすることによって得られる粒度が48〜16メッシュのりんごパルプを果汁飲料中に加えた繊維入り飲料で、りんごおろし金ですりおろしたような自然な喉ごしと清涼感を有する飲料(特許文献2)、75〜250μmの粒度画分の割合が50w/w%以上であることを特徴とする柑橘果実の実質上全果の摩砕物を含む果実飲料(特許文献3)、果実パルプ質の磨砕物と、果汁とを含有する果実飲料であって、長手方向の長さが500μm以上のパルプ質の断片が残っており、全体の粘度が15〜50cpsの果実飲料(特許文献4)等が提案されている。
また、果汁入り炭酸飲料も多く開発されている。果汁入り炭酸飲料は、炭酸の効果により果汁中のビタミンCの吸収率があがるので、これを続けて飲むと抗酸化能力が向上するといわれている(特許文献5参照)。例えば、特許文献6には、天然果実由来のオイルを吸着させたパルプ質を用いて、果汁の風味が高められたアルコール炭酸飲料を製造する方法が開発されている。
特開平9−23859号公報 特開平6−335371号公報 特開2002−300866号公報 特開平10−210956号公報 特開2004−350606号公報 特開2005−124567号公報
しかし、工業規模で果汁入り炭酸飲料を製造する場合、果汁濃度が高いと、果汁に含まれる不溶性食物繊維が核となり、炭酸ガスを圧入する際に飲料の吹きこぼれが発生し、充填量不足やシール不良等の問題が発生する。そのため、炭酸ガスを圧入して製造する炭酸飲料では、低濃度の果汁しか配合できず、果実感が不足したり、炭酸飲料のコク(ボディ感)が不足するため、その風味が必ずしも満足できるものではない。特に、果実由来の不溶性成分である果実パルプ成分を炭酸飲料に配合すると、吹きこぼれの問題が発生しやすく、コクや食感の付与を目的として果実パルプ成分を添加した飲料に関する上記特許文献1〜4にも、炭酸飲料に関する記載はない。
果汁等に含まれる不溶性成分に起因する炭酸飲料の吹きこぼれを回避するため、消泡作用を有する添加剤(以下、消泡剤という)を配合することが考えられる。しかし、消泡剤の消泡作用によって、炭酸飲料から発生する気泡が粗くなり、また、気泡の持ちが低下してしまうため、炭酸飲料に求められる爽快な刺激感の点で十分に満足できるものではなかった。また、添加剤に起因する香味が、果汁の風味を損なうという問題もあった。
このような状況に鑑み、本発明の目的は、炭酸飲料の泡質に影響を及ぼすことなく、果実感を向上させ、かつ製造時や開栓時に吹きこぼれを生じにくい、果汁入り炭酸飲料を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、粒子径が3〜300μmに調整された果実パルプ成分を配合すると、炭酸飲料において吹きこぼれが発生しにくいという驚くべき知見を得た。そして、この特定の粒子径をもつ果実パルプ成分は、それ自体では何の食感も味も有しないが、果汁飲料に添加すると、濃厚なコクを付与して果実感を高めること、特に果汁炭酸飲料に添加すると、果汁と炭酸と相俟ってコクとフレッシュ感を向上させ果実感を顕著に高めることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
(1) 粒子径が3〜300μmである果実パルプと、果汁及び/又は香料である果実フレーバーとを含む炭酸飲料。
(2) 果実パルプの数平均粒子径が5〜20μmである、(1)に記載の炭酸飲料。
(3) 果実パルプ由来の不溶性固形分の割合が、飲料全体に対して0.1〜1g/mLである、(1)又は(2)に記載の炭酸飲料。
(4) 果実パルプが、柑橘類由来の果実パルプである、(1)〜(3)のいずれかに記載の炭酸飲料。
(5) 炭酸ガスの圧力が1.0〜3.0kg/cmである容器詰め飲料である、(1)〜(4)のいずれかに記載の炭酸飲料。
(6) 粒子径が3〜300μmである果実パルプを、果汁及び/又は香料である果実フレーバーを含む飲料に対して添加することを含む、容器入り炭酸飲料の製造方法。
本発明の炭酸飲料は、製造時や開栓時に吹きこぼれが生じにくい。また、本発明の炭酸飲料は、消泡剤を添加しなくてもよいため、炭酸飲料に求められる爽快な刺激感を損なうことがない。本発明の炭酸飲料は、炭酸の刺激で果実感が弱められることもなく、炭酸の刺激感と果実感との両者が共存した嗜好性の高い飲料である。さらに、本発明の炭酸飲料は、果実パルプ成分という果実由来の天然成分を用いているので、より自然な風味として果実感を高められるという利点もある。
図1は、実施例で使用した果実パルプの粒子径分布を示すグラフである。 図2は、実施例で使用した混濁果汁の粒子径分布を示すグラフである。 図3は、実施例で使用した半混濁果汁の粒子径分布を示すグラフである。 図4は、実施例で使用した透明果汁の粒子径分布を示すグラフである。
(果実パルプ成分)
本発明の炭酸飲料は、特定の粒子径に調整された果実パルプ成分を配合することを特徴とする。ここで、果実パルプ成分とは、果実由来の不溶性固形分である。果実パルプ成分は、例えば、果実を破砕し、果汁等の液状成分を篩別及び/又は遠心分離により分離して得ることができ、果汁中に含まれる不溶性固形分や、果実から果汁を搾汁した後に得られる果汁残渣を細砕して得られる不溶性固形分などが例示される。具体的には、果実が柑橘類果実の場合には、果汁を搾汁して得られるじょうのう膜などの薄皮部分を細砕して得られるもの等が挙げられる。
果汁に含まれる不溶性固形分は一般に少なく、またその大きさも小さい。通常、飲用時の食感にザラザラとした食感を与えない、保存中の沈殿を防止する等の観点から、果汁中に含まれる不溶性固形分は、平均粒子径が3μm未満、好ましくは2μm以下であり、果汁中に含まれる不溶性固形分の粒度分布は、不溶性固形分の80%以上(累積個数)、好ましくは90%以上、より好ましくは約100%が、3μm未満、好ましくは2μm以下の粒子径となるように調整されている(実施例1、図2〜4参照)。ここで、本明細書中の平均粒子径とは、特に断りがない限り、個数平均粒子径を意味する。
本発明の炭酸飲料に配合する果実パルプ成分は、その粒子径が3〜300μmに調整されており、一般に果汁に含まれる不溶性固形分よりも大きい。上記範囲に調整された果実パルプ成分の中でも、平均粒子径が5〜20μm、好ましくは6〜18μmである果実パルプを炭酸飲料に配合すると好適である。また、粒子径(最頻径)が5〜10μmに調整された果実パルプ成分が特に好ましく用いられる。好ましい態様において、本発明の果実パルプ成分は、不溶性固形分の70%以上(累積個数)、より好ましくは80%以上が3〜20μmの粒子径範囲に分布するように調整されており、不溶性固形分の90%以上が3〜40μm、不溶性固形分の約100%が3〜100μmの粒子径範囲に分布するように調整されている(実施例1、図1参照)。このような粒子径が上記範囲となるように調整された不溶性固形分は、それ自体ではほとんど呈味を示さず、ザラザラとした食感や不溶性固形分の舌触りも感じないものであるが、果汁、香料等の果実フレーバー成分が添加された炭酸飲料に配合すると、炭酸飲料にコク(濃厚感)を与え、果実フレーバーの呈味を増強する、すなわちエンハンザーの作用を示す。これにより、果実のフレッシュな風味、コクを有する炭酸飲料が提供されることになる。
上記範囲となるように調整された果実パルプ成分を配合した本発明の炭酸飲料は、製造時や開栓時に吹きこぼれしにくい。ここで吹きこぼれとは、飲料に炭酸ガスを圧入する際に発生する泡吹きや、充填された内容物(飲料)が飛出す現象をいう。一般に炭酸飲料中に不溶性固形分が存在すると吹きこぼれが発生しやすく、特に不溶性固形分の粒子径が大きいと吹きこぼれが発生しやすく、また粒子径が小さい場合であっても粒子が多数存在する場合には、不溶性固形分が核のようになるため、吹きこぼれが発生しやすい。そのため、炭酸飲料に対しては、不溶性固形分の粒子径が極めて小さい果汁であっても、高濃度に配合できないという問題があった。本発明で用いる特定の範囲の粒子径に調整された不溶性固形分(果実パルプ成分)は、そのメカニズムは不明であるが、炭酸ガスを圧入した際に吹きこぼれが発生しにくいという驚くべき性質を持つものであり、製造時の炭酸ガス圧入時だけでなく、本発明の炭酸飲料の開栓時においても泡吹等、内容物の飛出しを防止する作用がある。
本発明の特定の粒子径に調整された果実パルプ成分は、果実を搾汁した際に得られるパルプを均質化し、特定の粒子径に調整し、製造することができる。例えば、果実がレモン、ライム、グレープフルーツ、オレンジ、ミカン、ハッサクなどの柑橘類果実である場合、チョッパーパルパー搾汁機、インライン搾汁機、ブラウン式搾汁機などの搾汁機を用いて柑橘類果実から搾汁を行い、この搾汁工程で得られた果汁に混入しているじょうのう膜を、パルパーフィニッシャーなどの手段によって果汁から分離除去し、これを回収して得られるパルプ成分を、特定の粒子径となるように細断し、必要に応じて篩別して得られる。微細粒子は、ハイドロサイクロン、遠心分離機などによって除去することもできる。細断の前及び/又は後には、水洗処理、殺菌や酵素失活のための加熱処理、乾燥処理等を適宜加えてもよい。果実が柑橘類果実の場合、外果皮の混入は、香味に悪影響を及ぼすことがあることから、外果皮は混入しないようにすることが好ましい。
(果実パルプ成分含有炭酸飲料)
本発明の炭酸飲料は、上記のとおり、特定の粒子径に調整された果実パルプ成分がエンハンザーとして作用し、従来実現し得なかった果実感を有する炭酸飲料が製造できるものである。
本発明において果実パルプ成分の割合は、不溶性固形分換算で飲料100mLあたり0.1〜1g程度が好ましく、0.2〜0.5g程度がより好ましい。炭酸飲料に含まれる不溶性固形分は一般的な方法によって測定することができるが、例えば、飲料10mLを遠沈管に秤量して遠心分離し、上清中の固形分と遠心分離された固形分とをろ過して固形物量を測定し、それを飲料100mLあたりに換算して求めることができる。本発明の特定の粒子径に調整された果実パルプ成分を有する原料の他、果汁等の不溶性固形分を有する原料が配合される場合には、これらから持ち込まれる不溶性固形分は除いて計算するものとし、特定の粒子径に調整された果実パルプ成分由来の不溶性固形分が上記範囲内となるようにする。特定の粒子径に調整された果実パルプ成分由来の不溶性固形分の割合が、飲料100mLあたり1gを越えると、製造時又は開栓時に吹きこぼれを発生することがある。飲料100mLあたり0.1gを下回ると、本発明の特徴である果実感のエンハンス作用が十分に発揮されない。
本発明の果実パルプ成分の具体例としては、グレープフルーツクリーム(ガンシュメル社)が市販されており、これを好適に用いることができる。これを用いて本発明の炭酸飲料を製造する場合、その配合量は、0.1〜0.5重量%程度が好ましい。
本発明の炭酸飲料は、果汁や香料など、果実フレーバー成分の呈味を増強するものであるから、果実フレーバー成分は必須の成分である。特に、果汁を配合することが好ましい。上記したとおり、果汁は、透明果汁、混濁果汁、半混濁果汁のいずれであっても不溶性固形分を含有するが、一般に、果汁に含まれる不溶性固形分の平均粒子径は3μm未満で、不溶性固形分の約100%の粒子が3μm未満の範囲に分布している。上記範囲に調整された不溶性固形分と、本発明の粒子径が3〜300μm(好ましくは平均粒子径が5〜20μm、最頻径が5〜10μm、不溶性固形分の約70%以上(累積個数)が3〜20μm)に調整された果実パルプ成分の、異なる2つの範囲の粒子径をもつ不溶性固形分を配合すると、より果実感が高められる。また、これらを併用することにより、不溶性固形分由来のペクチン質等の相互作用により、保存中に容器の底に果実パルプ成分が沈殿することなく、飲料全体に懸濁浮遊する状態となるので、好ましい。
果汁を配合する場合、その配合量が高いと吹きこぼれの原因となる。したがって、配合量の上限は、飲料100mLあたり不溶性固形分換算で1g以下、好ましくは0.5g以下程度である。不溶性固形分換算は、上記したように炭酸飲料100mLあたりに換算した値をいう。これに相当する果汁の配合量は、通常、飲料全体に対して0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜15重量%程度である。なお、ここでの果汁の配合量は、濃縮果汁を用いた場合、それをストレート果汁に換算した値を指す。
上記のようにして得られる本発明の炭酸飲料は、吹きこぼれを発生しにくいという性質を有することから、消泡剤を添加する必要がないので、消泡剤に起因する作用、例えば、開栓後の泡の消失が早い、消泡剤由来の香味が炭酸飲料本来の爽快な刺激感や香味を損なうことがある、などの炭酸飲料のマイナスの作用を伴わない飲料となる。したがって、本発明の炭酸飲料は、好ましい態様において、ペットボトルやボトル缶のような容器入り飲料とすることができ、特に、再栓後にも好ましい炭酸の泡感が維持されるので、再栓可能な容器入り飲料の形態とすることが好ましい。
本発明の炭酸飲料には、炭酸飲料に通常用いられる成分を任意に配合することができる。例えば、果糖ブドウ糖液糖、上白糖、グラニュー糖、果糖、ブドウ糖、オリゴ糖などの糖質及び/又はアスパルテーム、ステビア、フコース、アセスルファムKなどの甘味料、赤キャベツ、カロチノイド、フラボノイド、アントシアニンなどの着色料及び/又は合成着色料、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸、乳酸、リン酸、酒石酸などの酸味料、ビタミンA、カロチン、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンCなどのビタミン類、上記の成分の他、甘味料、酸味料、ビタミン類、pH調整剤などが挙げられる。
また、本発明によれば炭酸飲料の製造時に吹きこぼれが発生しにくいため、1つの態様において、本発明は炭酸飲料の製造方法である。すなわち、ある観点において本発明は、粒子径が3〜300μmである果実パルプを、果汁及び/又は香料である果実フレーバーを含む飲料に対して添加することを含む、炭酸飲料の製造方法である。本発明の炭酸飲料の製造方法は、通常の炭酸飲料と同様に、特定の粒子径を有する果実パルプ成分と、果汁及び/又は香料等の果実フレーバー成分と、その他炭酸飲料に配合する任意の成分とを混合して調合液を調製し、加熱殺菌した後、容器に充填し、これに炭酸ガスを圧入することにより得られる。好ましい態様において、炭酸ガスの圧力は1.0〜3.0kg/cm、好ましくは1.2〜2.0g/cm、より好ましくは1.5〜1.8g/cm程度である。
さらに別の観点において、本発明は、粒子径が3〜300μmである果実パルプを、果汁及び/又は香料である果実フレーバーを含む飲料に含有させることを含む、容器入り炭酸飲料における吹きこぼれを抑制する方法と理解することもできる。
以下、実施例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本明細書において、特に断りのない限り、配合量その他は重量基準であり、数値範囲をその端点を含むものとして記載される。
材料
果実パルプ成分及び果汁として以下の材料を用いた。
(果実パルプ成分)
・グレープフルーツクリーム(ガンシュメル社、平均粒子径:15.3μm)
(果汁)
・グレープフルーツ濃縮混濁果汁(ベリーズ社、平均粒子径:0.693μm)
・グレープフルーツ濃縮半混濁果汁(GAT社、平均粒子径:0.627μm)
・グレープフルーツ透明果汁(GAT社、平均粒子径:1.875μm)
これらの果実パルプ成分及び果汁について、粒度分布計(ベックマン・コールター社)を用い、その個数平均粒子径と累積個数とを測定した。粒度分布の測定結果を図1に結果を示す。
果実パルプ成分であるグレープフルーツクリームの平均粒子径は15.3μm(最頻径は7.06μm)であり、粒子の80%が3〜20μm、粒子の90%が3〜40μm、粒子の100%が3〜100μmに分布していた(図1)。
果汁成分である混濁果汁の平均粒子径は0.693μm(最頻径は0.52μm)であり、粒子の80%(累積個数)が0.3〜1.0μm、粒子の90%が0.3〜1.5μm、粒子のほぼ100%が0.3〜2.0μmに分布していた(図2)。セミクリア(半混濁)果汁の平均粒子径は0.627μm(最頻径は0.52μm)であり、粒子の80〜90%が0.3〜1.0μm、粒子のほぼ100%が0.3〜2.0μmに分布していた(図3)。透明果汁の平均粒子径は1.875μm(最頻径は1.92μm)であり、粒子の80〜100%が3.0μm以下に分布していた(図4)。
炭酸飲料の製造
果実パルプ成分としてグレープフルーツクリーム(ガンシュメル社)、果汁としてグレープフルーツ濃縮混濁果汁(トップジュース社、4.5倍濃縮果汁、平均粒子径:0.693μm)を使用して、炭酸飲料を製造した。以下の表1に示す配合により、果実パルプ成分及び果汁の配合量を変えて原材料を混合した後、65℃10分程度の加熱殺菌を行い、容器(ペットボトル)に所定量を充填し、1.5kg/cmの圧力の炭酸ガスを圧入して容器入り炭酸飲料を製造した。
炭酸飲料の評価
(官能評価)
得られた炭酸飲料の果実感を、専門パネラー4名で評価した。評価は、コク(濃厚感)の強さやフレッシュさの観点から、4段階で評価した。評価基準は、極めて良好な場合を◎、良好な場合を○、やや劣る場合を△、劣る場合を×とした。
(不溶性固形分量)
まず、炭酸飲料10mLを遠沈管に秤量し、高速遠心機(株式会社コクサン、卓上多本架遠心機H-28 RF110ローター)を用いて、3000rpmで30分間遠心した。保留粒子径が1μmのろ紙(ADVANTEC No.5、直径90mm)の質量を測定した後、遠沈管内の遠心後の上清固形物をろ過により回収し、さらに遠沈管中に残った固形物を全て回収して、固形分量を測定した。このようにしてサンプル10mL中の固形分量を測定し、これを10倍して飲料100mLあたりの不溶性固形分量を算出した。
(炭酸ガスの充填適性:吹きこぼれやすさ)
充填適性は、炭酸飲料製造工程における炭酸ガス圧入時に吹きこぼれが発生する確率によって評価した。評価基準は、10本中6本以上が吹きこぼれる場合には×を、2〜5本が吹きこぼれる場合には△を、1本以下である場合には○とした。
評価結果
実施例1・2および比較例1・2の炭酸飲料について、評価結果を表2に示す。果実パルプ成分及び果汁を配合した炭酸飲料(実施例1)は、果汁のみを配合した炭酸飲料(比較例1)と比較して、グレープフルーツの呈味、果実感が高かった。また、不溶性固形分量が同じである実施例1と比較例2を比較すると、果実パルプ成分を用いた本発明品(実施例1)の方がグレープフルーツの果実感が高く、厚みのある味わいで好ましい炭酸飲料であった。比較例1は、若干ではあるが、グレープフルーツのフレッシュ感が低かった。さらに、実施例2は、果汁無配合にもかかわらず、果実パルプ成分の配合により香料の果実フレーバーがエンハンスされ、果汁を配合した炭酸飲料(比較例1)と同等の果実感を呈した。
実施例1・3・4および比較例2〜5の炭酸飲料について、評価結果を表3に示す。果実パルプ成分の配合量が多いほど、グレープフルーツの呈味感が増し、果実感が高まったものの、その配合量が1.0重量%以上となると、吹きこぼれが発生しやすくなった(比較例4)。一方、果実パルプ成分の配合量が0.05重量%以下であると、果実パルプ成分配合の効果、すなわち果実感の増強、果実呈味のエンハンス作用が認められなかった(比較例3)。このように、果実パルプ成分の配合量は、果実パルプ成分由来の不溶性固形分換算で0.1〜1g/100mL程度が好適であり、0.2〜0.5g/100mL程度が特に好適であった。
同量の不溶性固形分を有する実施例1と比較例2と比較すると、本発明品(実施例1)の方が果実感があり、さらに比較例2は充填時の吹きこぼれが多発し、製造できないという問題を有することがわかった。また、比較例2に消泡剤を配合した炭酸飲料(比較例5)は、消泡剤の配合により充填時の吹きこぼれを防ぐことはできたが、炭酸感が弱く、開栓後の炭酸の抜けが著しく早かった。
なお、実施例1〜4について、炭酸ガスの圧力を1.8kg/cmとすること以外は同様にして、炭酸飲料を調製した。実施例1〜4と同様に、好ましい果実感、炭酸感を有する飲料であり、かつ吹きこぼれを発生しない飲料であった。

Claims (6)

  1. 数平均粒子径が5〜20μmであり、粒子径が3〜00μmの範囲に分布する果実パルプを、含有される粒子の粒子径が3μm以下の範囲に分布する果汁と混合することを含む、容器詰め炭酸飲料の製造方法であって、
    果実パルプ由来の不溶性固形分が、飲料全体に対して0.1〜0.5g/100mLであり、果汁の配合量が、ストレート果汁換算で0.1〜20重量%である、上記方法。
  2. 果実パルプが、柑橘類由来の果実パルプである、請求項1に記載の方法。
  3. 炭酸ガスの圧力が1.0〜3.0kg/cmである、請求項1または2に記載の方法。
  4. 果実パルプが柑橘類由来の果実パルプであり、果汁が柑橘類由来の果汁である、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  5. 請求項の方法によって製造された容器詰め炭酸飲料。
  6. 数平均粒子径が5〜20μmであり、粒子径が3〜00μmの範囲に分布する果実パルプを、含有される粒子の粒子径が3μm以下の範囲に分布する果汁と混合することを含む、容器詰め炭酸飲料における吹きこぼれを抑制する方法であって、
    果実パルプ由来の不溶性固形分が、飲料全体に対して0.1〜0.5g/100mLであり、果汁の配合量が、ストレート果汁換算で0.1〜20重量%である、上記方法。
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