JP2001299157A - 竿体の嵌合構造 - Google Patents

竿体の嵌合構造

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 長期にわたって嵌合力の低下を抑えられる竿
体の嵌合構造を提供する。 【解決手段】 大径竿体1は引張弾性率が20〜40t/mm2
の第1プリプレグを主材料として形成され、大径竿体1
の穂先側内周面には引張弾性率が50〜60t/mm 2の第2プ
リプレグから構成される嵌合面12が形成される。そし
て、この嵌合面12に小径竿体2の竿元側の嵌合雄部2
2を嵌合固定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、振出形式で連結さ
れた釣竿の竿体同士を連結する嵌合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の振出形式の釣竿(以下、「振出し
竿」という)は、穂先側端部内周を嵌合雌部とする大径
竿体と、竿元側端部外周を嵌合雄部とし大径竿体の穂先
側に連結される小径竿体とを有している。
【0003】この振出し竿では、大径竿体内に穂先側か
ら小径竿体が挿入され出し入れ自在となっている。そし
て、一本の釣竿として用いる場合には、小径竿体を大径
竿体の穂先側に引き出して、大径竿体の嵌合雌部に小径
竿体の嵌合雄部を嵌合させて連結し固定する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の振出し竿では、
小径竿体の嵌合雄部を大径竿体の嵌合雌部に繰り返し嵌
合させ、また嵌合を解除しているうちに、嵌合雄部と嵌
合雌部とが互いに摩耗しあって嵌合力の低下をもたらす
恐れがある。嵌合雄部と嵌合雌部とは互いに固着してし
まうことを避けかつ十分な嵌合力を維持できるように、
その径を精密に調整しているものであり、微妙な摩耗程
度もその嵌合力に大きな影響を与える。そして、釣竿使
用時の微妙な竿操作にも影響を与える恐れがある。
【0005】このような摩耗を防止するべく竿体をより
耐摩耗性の高い素材で製造すると、逆に竿体の撓り程度
を低下させてしまう恐れがあり、「竿の調子」が低下す
る。
【0006】本発明の課題は、長期にわたって良好な大
径竿体と小径竿体との嵌合程度を維持可能な竿体の嵌合
構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記問題点
に鑑み鋭意研究の結果、通常竿体を構成するために用い
られる繊維の引張弾性率が20〜40t/mm2の炭素繊維やガ
ラス繊維に合成樹脂を含浸させたプリプレグに比べて、
より弾性率の高いプリプレグ(本発明における第2プリ
プレグ)を、竿体同士が嵌合する部分に部分的に積層す
ることで、上記問題点を解決し得ることを知見した。
【0008】発明1にかかる嵌合構造は、大径竿体の内
部に収納可能に小径竿体が振出形式で連結される竿体の
嵌合構造であって、大径竿体は、炭素繊維またはガラス
繊維に合成樹脂を含浸させこの繊維の引張弾性率が20〜
40t/mm2である第1プリプレグから構成される先細り筒
状の本体部と、本体部の穂先側内周面に積層され炭素繊
維またはガラス繊維に合成樹脂を含浸させこの繊維の引
張弾性率が50〜60t/mm2の第2プリプレグからなる嵌合
面とを有し、小径竿体の竿元側外周面が嵌合面に脱着自
在に嵌合する。
【0009】この嵌合構造を採用する釣竿では、竿体を
連結して一本の釣竿として用いる場合には、小径竿体を
大径竿体内から穂先側に引き出して、小径竿体の竿元側
外周面を大径竿体の穂先側内周面の嵌合面に嵌合させて
連結し固定する。
【0010】ここで、大径竿体の嵌合面は、炭素繊維ま
たはガラス繊維に合成樹脂を含浸させこの繊維の引張弾
性率が50〜60t/mm2の第2プリプレグから形成されてお
り、長期にわたり繰り返し嵌合・嵌合解除を繰り返して
も、嵌合力の低下を十分に抑えることが可能である。ま
た、嵌合面以外は従来の第1プリプレグを採用すること
で、竿全体の撓り調子は十分に担保できる。
【0011】発明2にかかる嵌合構造は、大径竿体の内
部に収納可能に小径竿体が振出形式で連結される竿体の
嵌合構造であって、小径竿体は、炭素繊維に合成樹脂を
含浸させこの繊維の引張弾性率が20〜40t/mm2第1プリ
プレグから構成される先細り筒状の本体部と、本体部の
竿元側外周面に積層され炭素繊維またはガラス繊維に合
成樹脂を含浸させこの繊維の引張弾性率が50〜60t/mm2
の第2プリプレグからなる嵌合面とを有し、大径竿体の
穂先側内周面が嵌合面に脱着自在に嵌合する。
【0012】この場合も、小径竿体の嵌合面も所定の第
2プリプレグから形成されており、長期にわたり繰り返
し嵌合・嵌合解除を繰り返しても、嵌合力の低下を十分
に抑えることが可能である。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態につい
て、図面を参照しつつ説明する。
【0014】本発明の一実施形態を採用した釣竿は、図
1に示すように、大径竿体1と、大径竿体1の穂先側に
大径竿体1内に収納可能なように連結された小径竿体2
とを有している。大径竿体1は、竿尻側端部に設けられ
たグリップ3と、グリップ3よりやや穂先側の外周面に
設けられリール5が装着可能なリールシート4と、リー
ルシート4の穂先側の外周面に設けられリール5からの
釣糸Lを竿体内部に挿入する釣糸導入孔6とを有してい
る。小径竿体2は、複数の竿体が順次挿入して収納可能
になっており、穂先側先端にはトップガイド7が設けら
れている。そして、リール5から導かれた釣糸Lは、釣
糸導入孔6から外部竿体1及び内部竿体2内に導入さ
れ、トップガイド7から外部へ導かれる。
【0015】大径竿体1は、図2に示すように、穂先側
ほど小径にテーパーが形成された筒状の部材であって、
内部は小径竿体2を収納可能な竿収納部100となって
いる。この大径竿体1は、本体部11と、本体部11の
穂先側端部内周面に形成された嵌合面12とを有してい
る。この本体部11は、後述のように、炭素繊維または
ガラス繊維等の強化繊維を一方向に引き揃えて熱硬化性
合成樹脂を含浸させた第1プリプレグを焼成して構成さ
れている。この第1プリプレグの引張弾性は20〜40t/m
m2である。
【0016】また、嵌合面12は、本体部11を第1プ
リプレグから焼成する際に、第2プリプレグを第1プリ
プレグ上に部分的に積層して本体部11と共に焼成し一
体化させることで形成される。この第2プリプレグは炭
素繊維またはガラス繊維等の強化繊維を一方向に引き揃
えて熱硬化性合成樹脂を含浸させたもので、その引張弾
性は50〜60t/mm2である。そして、結果的に嵌合面12
は他の部分に比べて特にやや小径化することとなり、小
径竿体2の竿元側部分と嵌合することになる。
【0017】一方、小径竿体2は、図2に示すように、
穂先側ほど小径にテーパーが形成された筒状の部材であ
る。内部竿体2は、本体部21と、本体部21の竿元側
端部に設けられ本体部21に比べてやや大径に形成され
る嵌合雄部22とを有し、さらにその竿元側端部には軸
方向に貫通する貫通孔有する尻栓23がはめ込まれてい
る。
【0018】この大径竿体1は、以下のようにして製造
される。
【0019】図3に示すように、まず、所定のテーパが
形成されたマンドレルMの外周にワックス等の離型剤を
必要に応じて塗布する。そして、マンドレルMの穂先側
端部に第2プリプレグ32を配置しこれを巻回する。こ
の第2プリプレグ32は炭素繊維またはガラス繊維をマ
ンドレルMの周方向に引き揃えたものであり、その引張
弾性は50〜60t/mm2である。
【0020】続いて、炭素繊維またはガラス繊維等の強
化繊維に合成樹脂を含浸させたシート状の第1プリプレ
グ31を加圧しながら必要回数乃至必要枚数順次巻回す
る。その引張弾性は20〜40t/mm2である。ここで、最も
内側の第1プリプレグ31は、テープの長さ方向に強化
繊維が配向されたものを用いるのが好ましい。また、そ
の外周に必要に応じて積層される他の第1プリプレグ3
1はマンドレルMの幅方向に強化繊維が配向されたもの
を用いて形成するのが好ましい。また、径差を鑑みてマ
ンドレルMの竿元側に補助用の第1プリプレグ31を部
分的に配置してもよい。さらには、炭素繊維合成樹脂と
ガラス繊維合成樹脂とを交互に積層してもよい。
【0021】その後、これらの外周にポリエチレンテレ
フタレートやポリプロピレンからなる保護用テープを巻
回して竿素材を得る。得られた竿素材を焼成し、マンド
レルMを抜き取り保護用テープを剥離する。そして、両
端部を切り落とし、表面を研磨処理等して、大径竿体1
を製造する。
【0022】この釣竿では、小径竿体2を大径竿体1の
穂先側に連結して一本の釣竿として用いる場合には、小
径竿体2を大径竿体1内から穂先側に引き出して、小径
竿体2の嵌合雄部22を大径竿体1の穂先側内周面の嵌
合面12に嵌合させて連結し固定する。ここで、大径竿
体1の嵌合面12は、炭素繊維またはガラス繊維に合成
樹脂を含浸させこの繊維の引張弾性率が50〜60t/mm2
第2プリプレグ32から形成されており、長期にわたり
繰り返し嵌合・嵌合解除を繰り返しても、嵌合力の低下
を十分に抑えることが可能である。また、嵌合面以外は
従来の第1プリプレグ31を採用することで、竿全体の
撓り調子は十分に担保できる。
【0023】[他の実施形態] (a)上記実施形態では大径竿体1と小径竿体2との2
本継ぎにおいて説明したが、竿体の継数は任意であり、
それぞれの竿体に同様の嵌合構造を設けることができ
る。 (b)上記実施形態では、大径竿体の穂先側内周面に嵌
合面を形成したが、小径竿体の竿元側外周面に嵌合面を
形成してもよい。また、大径竿体穂先側内周面及び小径
竿体竿元側外周面共に嵌合面を形成してもよい。
【0024】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を説明する。
【0025】[実施例]竿元側内周面に穂先側端面より
80mmの範囲に、炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸させた第
2プリプレグ(炭素繊維の引張弾性率50t/mm2)を配置
して嵌合面を構成し、他の部分は炭素繊維樹脂にエポキ
シ樹脂を含浸させた第1プリプレグ(炭素繊維の引張弾
性率24t/mm2)によって、大径竿体を製造した。
【0026】この大径竿体の嵌合面に小径竿体を繰り返
し5000回嵌合させ、当初の嵌合力を1として試行後の嵌
合力の比を測定した。なお、この嵌合力とは大径竿体に
嵌合させた小径竿体を再度収納させる際に必要となる力
の大きさである。結果を表1に示す。
【0027】[比較例]炭素繊維を一方向に引き揃えて
エポキシ樹脂を含浸させたプリプレグ(引張弾性率24 t
/mm2)のみによって、穂先側内周面をやや肉厚化して
嵌合面を構成し大径竿体を製造した。
【0028】そして、実施例と同様に、この大径竿体の
嵌合面に小径竿体を繰り返し5000回嵌合させ、当初の嵌
合力を1として試行後の嵌合力の比を測定した。結果を
表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】このように、第2プリプレグを用いて嵌合
面を形成した場合には、これを用いない場合に比べて50
00回の繰り返し嵌合後も嵌合力の低下の程度は小さく、
嵌合力の維持が十分に図られていることが解る。
【0031】
【発明の効果】本発明にかかる嵌合構造によれば、長期
間使用しても嵌合力の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を採用した釣竿の全体図。
【図2】図1の大径竿体1と小径竿体2との嵌合部分の
拡大断面図。
【図3】図1の大径竿体1の製造工程を示した図。
【符号の説明】
1 大径竿体 2 小径竿体 11 本体部 12 嵌合部 22 嵌合雄部 31 第1プリプレグ 32 第2プリプレグ

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】大径竿体の内部に収納可能に小径竿体が振
    出形式で連結される竿体の嵌合構造であって、 前記大径竿体は、炭素繊維またはガラス繊維に合成樹脂
    を含浸させ前記繊維の引張弾性率が20〜40t/mm2の第1
    プリプレグから構成される先細り筒状の本体部と、前記
    本体部の穂先側内周面に積層され炭素繊維またはガラス
    繊維に合成樹脂を含浸させ前記繊維の引張弾性率が50〜
    60t/mm2の第2プリプレグからなる嵌合面とを有し、 前記小径竿体の竿元側外周面が前記嵌合面に脱着自在に
    嵌合する、竿体の嵌合構造。
  2. 【請求項2】大径竿体の内部に収納可能に小径竿体が振
    出形式で連結される竿体の嵌合構造であって、 前記小径竿体は、炭素繊維に合成樹脂を含浸させ前記繊
    維の引張弾性率が20〜40t/mm2の第1プリプレグから構
    成される先細り筒状の本体部と、前記本体部の竿元側外
    周面に積層され炭素繊維またはガラス繊維に合成樹脂を
    含浸させ前記繊維の引張弾性率が50〜60t/mm2の第2プ
    リプレグからなる嵌合面とを有し、 前記大径竿体の穂先側内周面が前記嵌合面に脱着自在に
    嵌合する、竿体の嵌合構造。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007020495A (ja) * 2005-07-19 2007-02-01 Shimano Inc 振出竿
CN1784961B (zh) * 2004-12-08 2011-08-31 株式会社岛野 钓竿用竿体

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007020495A (ja) * 2005-07-19 2007-02-01 Shimano Inc 振出竿
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