JP2001233334A - 溶接缶胴及びその製法 - Google Patents

溶接缶胴及びその製法

Info

Publication number
JP2001233334A
JP2001233334A JP2000041774A JP2000041774A JP2001233334A JP 2001233334 A JP2001233334 A JP 2001233334A JP 2000041774 A JP2000041774 A JP 2000041774A JP 2000041774 A JP2000041774 A JP 2000041774A JP 2001233334 A JP2001233334 A JP 2001233334A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
polyester
tape
welded
melting point
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2000041774A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4078780B2 (ja
Inventor
Kenji Matsuno
建治 松野
Sachiko Machii
幸子 町井
Toshinori Moriga
俊典 森賀
Ikuo Komatsu
郁夫 小松
Yasuhiro Takasaki
泰裕 高崎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyo Seikan Group Holdings Ltd
Original Assignee
Toyo Seikan Kaisha Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Family has litigation
First worldwide family litigation filed litigation Critical https://patents.darts-ip.com/?family=18564945&utm_source=google_patent&utm_medium=platform_link&utm_campaign=public_patent_search&patent=JP2001233334(A) "Global patent litigation dataset” by Darts-ip is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International License.
Application filed by Toyo Seikan Kaisha Ltd filed Critical Toyo Seikan Kaisha Ltd
Priority to JP2000041774A priority Critical patent/JP4078780B2/ja
Publication of JP2001233334A publication Critical patent/JP2001233334A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4078780B2 publication Critical patent/JP4078780B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Rigid Containers With Two Or More Constituent Elements (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶接部における段差凹部への樹脂の埋め込み
が有効に行われていると共に、溶接部における肩部での
樹脂被覆層の薄肉化も防止され、耐腐食性、密着性、加
工性及び衛生的特性の組合せに優れた継ぎ目被覆溶接缶
胴及びその製法を提供するにある。 【解決手段】 溶接部及びその近傍を除く缶内面側が熱
可塑性ポリエステルフィルムにて被覆されており、該溶
接部及びその近傍が表層(I)及び下層(II)で構成さ
れる少なくとも2層の熱可塑性ポリエステルテープにて
被覆されており、下層(II)のポリエステルの融点乃至
軟化温度が表層(I)の融点よりも10℃以上低いこと
を特徴とする溶接缶胴。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶接部が補正され
た溶接缶胴に関するもので、より詳細には溶接部及びそ
の近傍を除く缶内面が熱可塑性ポリエステルフィルム層
で被覆されていると共に、溶接部及びその近傍が、熱可
塑性ポリエステルフィルム層にまたがる形で複合熱可塑
性ポリエステルテープで被覆補正された溶接缶胴及びそ
の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】所謂スリーピース缶の継ぎ目の形成手段
として、溶接が広く使用されているが、この溶接缶胴の
内面側溶接部においては金属が露出しており、これを樹
脂等で被覆保護することが必要となる。
【0003】出願人の提案にかかる特公平5−5899
5号公報には、分子配向結晶を有する熱可塑性ポリエス
テル層(I)と、特定の熱可塑性コポリエステル層(I
I)とからなる積層フィルムを、缶内面側の溶接継ぎ目
に層(I)が缶内面側に層(II)が継ぎ目側に位置する
ように施し、層(I)の軟化温度よりも高く、層(I)
の樹脂の融点よりも低い温度で熱接着させることによ
り、継ぎ目被覆溶接缶を製造することが記載されてい
る。また、溶接による継ぎ目の形成に先立って、継ぎ目
となるべき部分を除いて、金属素材にエポキシ−フェノ
ール系などの内面保護樹脂塗料で被覆することも記載さ
れている。
【0004】特開平7−76058号公報には、溶接缶
の缶胴に適したラミネート鋼板として、鋼板の幅(A)
が製造しようとしている缶胴の周長に接合代を加えた長
さに対応しており、被覆されるフィルムが共重合ポリエ
ステル製で、鋼板より狭い幅(B)を有すると共に、鋼
板の両側端部を除く部分に被覆されているラミネート鋼
板が記載されている。また、溶接部の被覆にはポリブチ
レンテレフタレート等のテープが使用されることも記載
されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来、
缶内面塗料として広く使用されているエポキシ−フェノ
ール系塗料は、ビスフェノールA(BPA)等の環境ホ
ルモン物質から誘導されるため、これに置き換わる内面
被覆材が望まれており、ポリエステルフィルムはこの目
的に適するものである。
【0006】一方、溶接缶の溶接継ぎ目は、缶用素材
(ブランク)を円筒状に成形すると共に、その両端部を
重ね合わせ、この重ね合わせた部分を電気抵抗溶接する
ことにより形成されるが、この溶接部には重ね合わせ段
差に対応する凹部と、重ね合わせの内側端部に相当する
肩部とが存在するが、この凹部及び肩部をテープ状樹脂
で確実に被覆することが概して困難であるという問題が
ある。
【0007】溶接部の段差凹部に被覆樹脂を隙間なしに
埋め込むためには、段差部の周囲から樹脂を流動させる
ことが必要となるが、このように樹脂の流動を十分に行
わせると、溶接部の肩部の樹脂層が薄肉化し、カバレッ
ジが不十分なものとなるという問題を生じやすい。
【0008】また、溶接缶の溶接部以外の部分では、金
属基体の表面処理層が存在しているのに対して、溶接部
の肩部ではスチールなどの金属面が露出しており、金属
面の耐食性が他の部分に比してどうしても劣っている。
このため、溶接部の被覆に用いるテープ状樹脂は、腐食
成分に対するバリアー性に優れていることが要求され
る。
【0009】従って、本発明の目的は、溶接部における
段差凹部への樹脂の埋め込みが有効に行われていると共
に、溶接部における肩部での樹脂被覆層の薄肉化も防止
され、耐腐食性、密着性、加工性及び衛生的特性の組合
せに優れた継ぎ目被覆溶接缶胴及びその製法を提供する
にある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、溶接部
及びその近傍を除く缶内面側が熱可塑性ポリエステルフ
ィルムにて被覆されており、該溶接部及びその近傍が表
層(I)及び下層(II)で構成される少なくとも2層の
熱可塑性ポリエステルテープにて被覆されており、下層
(II)のポリエステルの融点乃至軟化温度が表層(I)
の融点よりも10℃以上低いことを特徴とする溶接缶胴
が提供される。本発明の溶接缶胴において、前記テープ
の下層(II)がエチレンテレフタレート単位を50モル
%以上有しているポリエステル樹脂、特に (1)50乃至95モル%のエチレンテレフタレート単
位と酸成分基準で5乃至40モル%のイソフタル酸成分
とを有しているポリエステル樹脂、(2)50乃至95
モル%のポリエチレンテレフタレートとジオール成分基
準で5乃至40モル%の1,4−シクロヘキサジメタノ
ール成分とを有しているポリエステル樹脂、(3)50
乃至95モル%のポリエチレンテレフタレートと酸成分
基準で5乃至50モル%のナフタレンジカルボン酸成分
とを有しているポリエステル樹脂、であることが好まし
い。一方、テープの表層(I)が分子配向結晶化したポ
リエチレンテレフタレートよりなることが好ましい。ま
た、溶接部及びその近傍を除き缶内面側のポリエステル
フィルム層は、表層が分子配向結晶化したポリエステル
樹脂よりなることが好ましく、特に表層の分子配向結晶
化しているポリエステル樹脂層と下層の接着性樹脂層の
複合層より成ることが好ましい。具体的に、缶内面側被
覆ポリエステルフィルム層は、表層のポリエチレンテレ
フタレートを主体とする分子配向結晶化したポリエステ
ル樹脂層と下層のポリエチレンテレフタレートを50モ
ル%以上含有するポリエステル樹脂層との複合樹脂層よ
りなることが好ましい。更に、ポリエステルテープの下
層(II)の融点乃至軟化温度が缶内面側のポリエステル
フィルムの表層の融点(Tm)−100℃以上、特に融
点(Tm)−80℃以上であることが好ましい。
【0011】また、本発明によれば、溶接部及びその近
傍を除く缶内面側に熱可塑性ポリエステルフィルムを被
覆した溶接缶胴に、溶接部及びその近傍及び円周上にて
それに連なる該ポリエステルフィルムの一部にわたっ
て、熱可塑性ポリエステルより成り、表層(I)及び表
層(I)の融点よりも10℃以上低い融点乃至軟化温度
を有する下層(II)で構成されるポリエステルテープ
を、少なくとも接着界面が該ポリエステルフィルムを構
成する表層ポリエステルの融点(Tm)−80℃以上の
温度で且つ該テープの下層(II)の融点乃至軟化温度以
上の温度で、しかもテープ表層(I)の最表面が溶融し
ない温度において熱接着することを特徴とする溶接缶胴
の製法が提供される。
【0012】
【発明の実施形態】本発明の溶接缶胴は、溶接部及びそ
の近傍を除く缶内面側が熱可塑性ポリエステルフィルム
にて被覆されていること、溶接部及びその近傍及び円周
上にてそれに連なる該ポリエステルフィルムの一部に渡
って、表層(I)及び下層(II)で構成される少なくと
も2層の熱可塑性ポリエステルテープにて被覆されてい
ること、及び下層(II)のポリエステルの融点乃至軟化
温度が表層(I)の融点よりも10℃以上低いことが特
徴である。
【0013】本発明の溶接缶胴においては、溶接部及び
その近傍を除く缶内面側が熱可塑性ポリエステルフィル
ムにて被覆され、しかも溶接部及びその近傍が複合熱可
塑性ポリエステルテープで被覆されているため、缶内面
が全てポリエステルによるBPAフリーの被覆構造とな
り、衛生的特性に特に優れたものとなる。
【0014】また、溶接部における肩部での樹脂被覆層
の薄肉化を防止しつつ、溶接部における段差凹部への樹
脂の埋め込みを有効に行うためには、熱可塑性ポリエス
テルのテープを溶接部の段差凹部及び肩部に、できるだ
け沿った形で施すことが重要である。本発明に従い、缶
胴内面の熱可塑性ポリエステルフィルム層の両端縁部
と、熱可塑性ポリエステルのテープの両端縁部とが重な
り合う状態で、このテープを溶接部に施すと、接着初期
にテープを溶接部の段差凹部及び肩部に正確に沿った状
態で接着を開始することができ、肩部での樹脂層の薄肉
化を防止しつつ、段差凹部にも有効に樹脂を充填するこ
とが可能となる。この理由としては、缶胴内面のポリエ
ステルフィルム層がテープの段差凹部へ向けての引き出
しを容易にしていること、及びポリエステルフィルム層
がテープへの熱伝導を遅延させ、テープの溶接部への熱
接着、次いでフィルム層への熱接着という時系列で接着
が行われることが挙げられる。
【0015】本発明に用いる溶接部の被覆テープは、種
類の異なる少なくとも2層のポリエステル樹脂複合被覆
層よりなる。即ち、下層(II)の融点または軟化温度が
表層(I)の融点よりも10℃以上、好ましくは20℃
以上低い組み合わせが使用される。
【0016】テープ表層(I)の熱可塑性ポリエステル
は、缶内面に露出するものであるので、耐腐食性、バリ
アー性、耐熱性、加工性等に優れたポリエステル樹脂が
選択使用される。ここでいう加工性とは、テープ補正時
の加工性は勿論のこと、テープ補正後に缶体に行う種々
の加工、例えばネツクイン/フランジ加工、巻締め加工
などについての加工性が含まれる。上記の特性は、用い
るポリエステルの融点と関連しており、一般に融点の高
いポリエステルは耐腐食性、バリアー性、耐熱性等の特
性に優れている。表層(I)のポリエステルとして、相
対的に高融点のものを用いるのはこの理由による。表層
のポリエステルは、一般に分子配向結晶化されたものが
好ましい。未配向の熱結晶化されたポリエステルは、耐
熱性や剛性には優れているが、加工性や強靱性に劣る傾
向があり、加工或いはレトルト殺菌に際して容易にクラ
ックや破断が生じやすくなる。また、非晶質のポリエス
テルでは腐食成分に対するバリアー性が劣る傾向があ
る。表層ポリエステルとして、配向結晶化させたポリエ
ステルを用いることにより、優れた加工性や強靱性を保
持しながら、優れたバリアー性を有することができ、耐
腐食性を向上させ得る利点がある。更に、表層ポリエス
テルとして分子配向結晶化され、更に熱結晶化されたポ
リエステルを用いることにより、優れた加工性や強靱性
及びバリアー性に加えて、優れた耐熱性を有することが
できる。
【0017】一方、テープ下層(II)の熱可塑性ポリエ
ステルは、溶接缶の溶接部に密着されるべきものであ
り、被覆時に溶融軟化し、金属表面に流動して密着性に
優れた被覆を形成することが要求される。この見地か
ら、テープ下層のポリエステルは、その融点または軟化
温度が表層(I)の融点よりも10℃以上、好ましくは
20℃以上低いものでなければならない。上記の融点乃
至軟化温度を有するポリエステルをテープ下層として用
いることにより、テープの接着時に下層ポリエステルが
優先的に溶融軟化し、流動して、溶接部の段差凹部を埋
め込んで隙間のない接着構造を形成する。尚、本明細書
において、融点乃至軟化温度とは、ポリエステルが溶融
流動を開始する温度であり、融点が明確なポリエステル
については一義的に融点(示差走査熱量計測定における
融解ピーク温度)を示し、融点の明確でないものについ
ては、熱機械分析手段を用いて得られるペネトレーショ
ンカーブから作図して、後常法により求められる軟化温
度を意味するものとする。
【0018】テープ下層(II)のポリエステルの融点乃
至軟化温度と、表層(I)の融点との差が10℃未満で
ある場合、テープ接着時に溶接缶胴への好ましい接着強
度を得ようとすると、表層(I)のポリエステルも溶融
流動する傾向が顕著となり、溶接部の肩部のカバレッジ
が不足し、その部位からの金属溶出や腐食を発生する傾
向がある。
【0019】テープ下層のポリエステルは、上述した特
性を有するものであるが、それと同時に耐腐食性、耐熱
性、加工性にも優れていることが好ましい。このような
見地から、下層(II)のポリエステル樹脂は、エチレン
テレフタレート単位を50モル%以上、特に60モル%
以上含有するコポリエステルまたはコポリエステルブレ
ンドであることが好ましい。このコポリエステルまたは
コポリエステルブレンドにおいて、残りのエステル単位
は、他の二塩基酸成分及び/またはジオール成分から誘
導されるエステル単位であってよい。このようなコポリ
エステルまたはコポリエステルブレンドの適当な例とし
て、(1)50乃至95モル%のエチレンテレフタレー
ト単位と酸成分基準で5乃至40モル%のイソフタル酸
成分とを有しているコポリエステル、(2)50乃至9
5モル%のポリエチレンテレフタレートとジオール成分
基準で5乃至40モル%の1,4‐シクロヘキサジメタ
ノール成分とを有しているコポリエステルまたはコポリ
エステルブレンド、(3)50乃至95モル%のポリエ
チレンテレフタレートと酸成分基準で5乃至50モル%
のナフタレンジカルボン酸成分とを有しているコポリエ
ステル、が挙げられる。
【0020】缶胴の内面被覆に用いる樹脂フィルム層と
しても、金属への密着性に優れ、耐腐食性、バリア性、
耐熱性、及び加工性に優れているという見地から、ポリ
エステル樹脂フィルムが使用される。ポリエステルフィ
ルムは、単層のフィルムでも、積層フィルムであっても
よく、更に接着剤層を施したフィルムであってもよい。
溶接部及びその近傍を除く缶内面側の被覆ポリエステル
フィルム層は、耐腐食性の観点から、表層が分子配向結
晶化したポリエステル樹脂層を有していることが好まし
い。更に、表層の分子配向結晶化したポリエステル樹脂
層と下層の金属素材への接着性が良好なポリエステル樹
脂或いは熱硬化性プライマーなどから成る接着性樹脂層
との複合層から成ることが特に好ましい。具体的に、缶
内面側の被覆ポリエステルフィルムは、表層のポリエチ
レンテレフタレートを主体とする分子配向結晶化したポ
リエステル樹脂層と、下層のポリエチレンテレフタレー
トを50モル%以上含有するポリエステル樹脂層との複
合樹脂層よりなることが特に好ましい。ベースフィルム
の下層にコポリエステルまたはコポリエステルブレンド
より成る接着性の良好なポリエステル樹脂を用いること
により、熱硬化性プライマーを用いる場合に比して、フ
ィルム被覆の際のプライマーの熱硬化のための熱処理工
程が省略できる利点がある。このようなベースフィルム
の下層コポリエステルの適当な例として、上述したポリ
エステルテープの下層(II)と同様のコポリエステルま
たはコポリエステルブレンドを用いることが好ましい。
【0021】ベースフィルムの分子配向結晶化された表
層ポリエステルは、フィルム作製時に歪みの緩和及び耐
熱性向上のために、熱固定処理により熱結晶化を施して
おくことが好ましく、これにより、被覆の際のフィルム
の熱収縮の程度を減じることができる。また、ベースフ
ィルムの被覆の際の加熱により、分子配向結晶化した表
層ポリエステルの熱結晶化を進行させることが好まし
い。最終的に、缶胴内面側に被覆されたポリエステルの
最表面層の分子配向結晶化及び熱結晶化の程度は、アッ
ベの屈折計で測定される3次元方向の屈折率より求めら
れる面配向係数で0.05〜2の範囲、特に好ましくは
0.07〜1.8の範囲とすることが好ましく、これに
より、ベースフィルムの好適なガスバリアー性のため、
優れた耐腐食性能を得ることができる。
【0022】本発明の溶接缶胴では、缶胴内面側のベー
スフィルムの両端部とポリエステルテープの両端部とが
重なり合う状態で接着されている。このベースフィルム
とポリエステルテープとの接着の際には、ベースフィル
ムがテープ下層(II)に接着可能となるまで接着界面の
温度を上げることが必要である。特に、ベースフィルム
の表層ポリエステルが分子配向結晶化を有している場
合、接着されるべきベースフィルムの表層の配向歪みが
十分に緩和される温度条件下にて熱接着することによ
り、ベースフィルムとポリエステルテープとの好ましい
接着強度を得ることができる。具体的には、ベースフィ
ルムを接着せしめた溶接缶胴に、熱可塑性ポリエステル
樹脂より成る表層(I)と表層(I)の融点より10℃
以上低い融点乃至軟化温度を有する下層(II)で構成さ
れるポリエステルテープを、少なくとも接着界面がテー
プ下層(II)が溶融流動する融点乃至軟化温度以上の温
度で、且つベースフィルムの表層ポリエステルの融点
(Tm)−80℃以上の温度で熱接着することが好まし
い。更に、表面ポリエステルが分子配向結晶化している
ベースフィルムとポリエステルテープとの接着において
は、そのベースフィルムと補正テープとの接着界面をベ
ースフィルムの表層ポリエステルの融点(Tm)−80
℃から融点(Tm)までの範囲の温度で熱接着すること
が特に好ましく、これにより、ポリエステルテープとベ
ースフィルムとの接着部の近傍のベースフィルムの表層
の分子配向結晶性を殆ど壊すことなく、テープの接着が
可能となるため、溶接缶胴の内面側全域にわたって好ま
しい耐腐食性能と付与することができる。
【0023】ポリエステルテープをベースフィルムを被
覆した溶接缶胴に接着する際に、ポリエステルテープの
円周上の両端部よりテープの下層(II)が溶融流動して
ベースフィルム上に押し出され、はみ出すことになる。
そのテープ下層(II)のはみ出し部は溶融流動に伴って
非晶状態となっており、分子配向結晶化したテープ表層
(I)及びベースフィルム表層に比べてバリアー性や缶
内容物の吸着耐性等が劣る。従って、特に食用缶詰等に
用いる場合にはテープ下層(II)のはみ出し量を小さく
することが望まれる。上述したように、ポリエステルテ
ープを接着する際の接着界面の好ましい温度範囲はベー
スフィルムの表層ポリエステルの性状に依存するが、そ
の接着界面の温度とポリエステルテープの下層(II)の
融点乃至軟化温度との差を小さくすることにより、テー
プ接着の際のポリエステルテープ下層(II)の円周方向
のはみ出し量を小さく抑制することができる。具体的に
は、ポリエステルテープの下層(II)の融点乃至軟化温
度を、ベースフィルムの分子配向結晶化した表層ポリエ
ステル樹脂の融点(Tm)−100℃以上、特に融点
(Tm)−80℃以上とすることが好ましい。それによ
り、ポリエステルテープの下層(II)の一方の端部から
のはみ出し量を例えば1mm以下の幅に抑制することが
できる。
【0024】[溶接缶胴]本発明による溶接缶胴の全体
の断面構造を示す図1、溶接部及びその近傍の断面構造
を拡大して示す図2及び被覆テープを拡大して示す図3
において、この缶胴1は側面継ぎ目となった溶接部2を
備えている。この溶接缶胴1は、溶接による継ぎ目とな
る端縁部分を除いて、少なくとも缶内面となるべき部分
がポリエステル樹脂フィルム3で被覆された缶用金属素
材(ブランク)を円筒状に成形し、その端縁部同士を重
ね合わせ、この重ね合わせ部を溶接することにより形成
される。この缶胴1は、内面側に且つ溶接部2及びその
近傍を除いてポリエステルフィルムからなる有機被膜3
を備えている。内面側の溶接部2及びその近傍には、有
機被膜3の側方端部にまたがるように、複合ポリエステ
ルテープ4が被覆されている。この複合ポリエステルテ
ープ4は表層(I)5と下層(II)6との少なくとも2
層から形成されており、下層(II)のコポリエステルの
融点乃至軟化温度は表層(I)の融点よりも、少なくと
も10℃低くなるように組み合わされている。溶接部2
には、図3に示すとおり、段差凹部7及び肩部8が存在
するが、段差凹部7には下層樹脂が隙間なしに埋め込ま
れていると共に、肩部8も十分な厚みのポリエステルで
被覆保護されている。図1は、重ね部全体を押潰しなが
ら電気抵抗溶接する、いわゆる重ねマッシュシーム式抵
抗溶接手段により得られた溶接部を示しているが、本発
明では特に溶接法及び溶接形態について限定されること
はない。例えば、重ね合わせレーザ溶接或いは突き合わ
せレーザ溶接等に得られた溶接部に対しても適用でき
る。
【0025】(1)金属板 缶胴を構成する金属板としては各種表面処理鋼板が使用
される。表面処理鋼板としては、冷圧延鋼板を焼鈍後二
次冷間圧延し、亜鉛メッキ、錫メッキ、ニッケルメッ
キ、ニッケル錫メッキ、電解クロム酸処理、クロム酸処
理等の表面処理の一種または二種以上行ったものを用い
ることができる。重ねマッシュシーム式電気抵抗溶接法
に好適な表面処理鋼板の一例は、ニッケル錫メッキ鋼板
であり、鋼表面に通常600乃至1100mg/m
錫と、8乃至100mg/mのニッケルとの複合メッ
キ層と、8乃至25mg/mの金属クロム及び酸化ク
ロムから成るクロムメッキ層とを備えたものである。こ
のものは溶接缶胴を製造する際の溶接性に優れていると
共に、塗膜密着性及び耐腐食性の組み合わせに優れてい
る。好適な表面処理鋼板の他の一例は、電解クロム酸処
理鋼板であり、特に10乃至200mg/mの金属ク
ロム層と1乃至50mg/m(金属クロム換算)のク
ロム酸化物層とを備えたものであり、このものは塗膜密
着性と耐腐食性との組合せに優れている。表面処理鋼板
の更に他の例は、0.5乃至11.2g/mの錫メッ
キ量を有する硬質ブリキ板である。このブリキ板は、金
属クロム換算で、クロム量が1乃至30mg/mとな
るようなクロム酸処理或いはクロム酸−リン酸処理が行
われていることが望ましい。更に他の例としては、アル
ミニウムメッキ、アルミニウム圧接等を施したアルミニ
ウム被覆鋼板が用いられる。
【0026】金属板の厚みは、金属の種類、容器の用途
或いはサイズによっても相違するが、一般に0.05乃
至0.5mmの厚みを有するのがよく、この内でも表面
処理鋼板の場合には、0.08乃至0.4mm、特に
0.1乃至0.35mmの厚みを有するのがよい。
【0027】(2)内面ポリエステルフィルム 内面被覆となる熱可塑性ポリエステルとしては、芳香族
ジカルボン酸を主体とするカルボン酸成分と脂肪族ジオ
ールを主体とするアルコール成分とから誘導されたポリ
エステル、特に前記カルボン酸成分の50モル%以上が
テレフタール酸成分からなり且つ前記アルコール成分の
50モル%以上がエチレングリコール成分からなるポリ
エステルが挙げられる。上記条件を満足する限り、この
ポリエステルは、ホモポリエステルでも、共重合ポリエ
ステルでも、或いはこれらの2種類以上のブレンド物で
あってもよい。
【0028】テレフタル酸成分以外のカルボン酸成分と
しては、イソフタール酸、ナフタレンジカルボン酸、P
−β−オキシエトキシ安息香酸、ビフェニル−4,4’
−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカ
ルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサ
ヒドロテレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメ
リット酸、ピロメリット酸等を挙げることができる。
【0029】一方、エチレングリコール以外のアルコー
ル成分としては、1,4−ブタンジオール、プロピレン
グリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキシ
レングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレン
グリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノ
ールAのエチレンオキサイド付加物、グリセロール、ト
リメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペン
タエリスリトール、ソルビタンなどのアルコール成分を
挙げることができる。
【0030】適当な熱可塑性ポリエステルの例は、決し
てこれに限定されないが、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,
6−ナフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソ
フタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレ
ート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート/テレフタ
レート、ポリエチレン/ブチレンテレフタレート、ポリ
ブチレンテレフタレート/アジペート、ポリエチレン−
2,6−ナフタレート/イソフタレート、ポリブチレン
テレフタレート/アジペート、或いはこれらの2種以上
のブレンド物である。
【0031】用いるポリエステルは、フィルム形成範囲
の分子量を有するべきであり、溶媒として、フェノール
/テトラクロロエタン混合溶媒を用いて測定した固有粘
度〔η〕は0.5以上、特に0.6乃至1.5の範囲に
あるのが腐食成分に対するバリアー性や機械的性質の点
でよい。
【0032】熱可塑性ポリエステルは、種々の形態で金
属基体の有機被膜として用いることができる。例えば、
前に示した熱可塑性ポリエステルフィルムを単独で金属
基体の被覆に用いることができるし、また、複数の熱可
塑性ポリエステルの積層フィルムを金属基体の被覆に用
いることができる。更に、プライマーを施した熱可塑性
ポリエステルフィルムを金属基体の被覆に用いることも
できる。これらの何れの場合においても、熱可塑性ポリ
エステルは、未延伸のフィルム層であってもよいし、ま
た分子配向された、好適には二軸方向に分子配向された
フィルム層であってよく、内容品の熱殺菌の有無、条件
などの使用用途により使い分けることができる。フィル
ム層の厚みは特に限定されないが、一般的にいって、5
〜50μm、特に8〜35μmの範囲にあるのがよい。
フィルム層の厚みが上記範囲を下回ると耐腐食性が低下
し、厚みが上記範囲を上回ると加工性が低下するのでい
ずれも好ましくない。
【0033】熱可塑性ポリエステルフィルム単層を用い
る場合には、エチレンテレフタレート系の共重合ポリエ
ステル、特に50モル%以上、好適には60モル%以上
のエチレンテレフタレート単位を有するコポリエステル
が使用される。テレフタル酸以外の二塩基酸成分及びエ
チレングリコール以外のジオール成分としては、前に例
示したものが使用される。適当な共重合ポリエステルの
例は、これに限定されないが、ポリエチレンテレフタレ
ート/イソフタレート(PET/IA)、ポリエチレン
テレフタレート/ナフタレンジカルボキシレート(PE
T/NDC)等であり、これらのコポリエステルは、金
属基体への熱接着性に優れていると共に、腐食性成分等
に対するバリアー性に優れており、また内容品中の芳香
成分を収着する傾向も少ない。
【0034】熱可塑性ポリエステルの積層フィルムを用
いる場合、表層の熱可塑性ポリエステル樹脂は、耐腐食
性、バリアー性、耐熱性、機械的特性に優れたものが使
用され、例えばポリエチレンテレフタレート(PE
T)、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート
(PET/IA)、ポリエチレンテレフタレート/ナフ
タレンジカルボキシレート(PET/NDC)、ポリエ
チレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタ
レート/ポリエチレンナフタレート・ブレンド乃至ラミ
ネート(PET+PEN)が挙げられる。積層フィルム
の表層は、例えば二軸延伸により分子配向結晶化されて
いることが好ましい。表層は、一般に3〜40μm、好
適には5〜30μmの厚みを有することが望ましい。一
方、積層フィルムの下層は、熱接着性に優れた熱可塑性
コポリエステル樹脂、特に50モル%以上、好適には6
0モル%以上のエチレンテレフタレート単位を有するコ
ポリエステルまたはコポリエステルブレンドが使用され
る。下層用のコポリエステルまたはコポリエステルブレ
ンドの適当な例は、 ポリエチレンナフタレート/イソフタレート[PET/
IA(5〜40モル%)]、更に好ましくは[PET/
IA(8〜25モル%)] ポリエチレン/シクロヘキサンジメチレンテレフタレー
ト[PET/CHDM(5〜40モル%)]、更に好ま
しくはPET/CHDM(8〜30モル%)] ポリエチレンテレフタレート/ナフタレンジカルボキシ
レート[PET/NDC(5〜50モル%)]、更に好
ましくはPET/NDC(8〜40モル%)] などである。下層の厚みは、0.5〜20μm、好適に
は1〜10μmの範囲にあるのがよい。
【0035】内面有機被膜としては、熱硬化性プライマ
ー付き熱可塑性ポリエステルフィルムを用いることがで
きる。表層の熱可塑性ポリエステル樹脂としては、積層
フィルムの表層に使用される樹脂、例えばPET、PE
T/IA、PET/NDC、PET+PENが好適に使
用される。この表層樹脂も二軸延伸により分子配向結晶
化されていることが望ましく、その厚みは5〜40μm
の範囲にあるのが適当である。下層の熱硬化性プライマ
ーとしては、それ自体公知の任意のプライマー、特にエ
ポキシ系、ポリエステル系、ウレタン系等の熱硬化性樹
脂が使用される。その厚みは一般に0.1〜5μmの範
囲にあるのがよい。
【0036】熱可塑性ポリエステルは、押出機を使用
し、ダイを通して、製膜してフィルム化するか、或いは
直接金属板上に押し出しコートする。多層の熱可塑性ポ
リエステルは熱可塑性ポリエステルの種類に対応する数
の押出機を使用し、多層多重ダイを通して、製膜或いは
押し出しコートする。ダイより押し出しされ製膜された
熱可塑性ポリエステルは二軸延伸加工を行うのが好まし
く、それにより分子配向結晶化させることができる。更
に二軸延伸加工を施したフィルムを加熱処理して熱固定
することにより、配向歪みを緩和すると共に熱結晶化を
進行させることができ、後の加熱接着時のフィルムの収
縮を緩和させる効果を有する。ポリエチレンテレフタレ
ートを主成分とする熱可塑性ポリエステルの上記熱固定
温度は130〜220℃、特に140〜210℃である
のが好適である。この場合、分子配向結晶化及び熱結晶
化されたフィルムの結晶化度(密度法)は30乃至55
%、特に40乃至55%とすることが好ましい。また、
多層の熱可塑性ポリエステルは、表層となる二軸延伸加
工されたポリエステルフィルムの上に、下層のポリエス
テル樹脂を押し出しコートすることによっても製造する
ことができる。一方、熱硬化性プライマー付き熱可塑性
ポリエステルは、表層となる二軸延伸加工されたポリエ
ステルフィルムの上に塗料化した熱硬化性プライマーを
塗布乾燥して製造することができる。
【0037】(3)ラミネートの製造 溶接缶製造用のブランクは、金属基体の溶接すべき端縁
部を被覆することなく残して、他の部分にポリエステル
フィルムを貼り合わせる方法(マージンラミネートと呼
ぶ)により製造される。熱可塑性ポリエステルフィルム
と金属基体との貼り合わせは熱接着で行う。例えば、加
熱された金属基体の表面に予め形成された延伸或いは未
延伸のポリエステルフィルムを供給し、ラミネートロー
ルで圧着して積層体とする。また、加熱された金属基体
の表面に単層或いは多層の熱可塑性ポリエステルを溶融
押出し、ラミネートロールで圧着して積層体とする。
【0038】(4)溶接による継ぎ目の形成 側面溶接部の形成は、マッシュシーム式電気抵抗溶接に
よって好適に行われ、この側面溶接部の電気抵抗溶接
は、缶用素材を円筒状に形成し、形成される重ね合わせ
部を1対の電極ローラー間に通過せしめるか、或は電極
ワイヤーを介して上下1対の電極ローラー間に通過せし
めて、重ね合わせ部全体を押し潰すことによって行われ
る。この際溶接操作を不活性雰囲気中で行い、且つ溶接
部の表面温度が550℃に低下するまでの雰囲気を不活
性雰囲気とすることが、溶接部外表面にポーラスな金属
酸化物層が形成させるのを防止し、補正用テープの密着
性を向上させるために望ましい。不活性雰囲気として
は、窒素、アルゴン、ネオン、水素、二酸化炭素等を使
用することができる。上述した不活性気体の気流中に溶
接接合部を保持して作業を行うのが好ましいが、上記気
体を充填した密閉容器内で作業を行ってもよい。
【0039】この溶接缶の側面溶接部の幅は缶の径によ
っても相違するが、0.2 乃至1.2 mmのような比較的小さ
い幅でよい。また、溶接部の厚みは、素材厚みの2倍か
ら1.2 倍迄変形し得る。即ち、溶接時に重ね合せ部を高
圧力で押圧することにより、溶接部の厚みを減小させ、
これにより二重巻締に際して溶接部とそれ以外の部分と
の段差を小さくし得ることも、この溶接法の利点であ
る。
【0040】本発明は、重ね合わせレーザ溶接或いは突
き合わせレーザ溶接等に得られた溶接部に対しても適用
できる。特に、突き合わせレーザ溶接等に得られた溶接
部の厚みは素材の厚みとほぼ同一であり、重ね合わせ溶
接の溶接部にみられる溶接段差がないため、補正テープ
の接着が容易になると共に、ポリエステルテープの下層
(II)の厚みを減少できる利点を有する。
【0041】[補正用テープ]本発明において、溶接部
の被覆テープとしては、既に指摘したとおり、種類の異
なる少なくとも2層のポリエステル樹脂複合被覆層、即
ち、下層(II)の融点または軟化温度が表層(I)の融
点よりも10℃以上、好ましくは20℃以上低い組み合
わせが使用される。また、缶内面側のベースフィルムの
一部にポリエステルテープを接着する際のテープ下層
(II)のはみ出し量を抑制するために、ポリエステルテ
ープの下層(II)に融点乃至軟化温度がベースフィルム
の表層ポリエステル樹脂の融点(Tm)−100℃以
上、好ましくは融点(Tm)−80℃以上のポリエステ
ル樹脂を用いることが望ましい。
【0042】表層(I)の熱可塑性ポリエステル樹脂と
しては、前に例示したポリエステルの内、耐腐食性、ガ
スバリア性、耐熱性、加工性等に優れたポリエステル樹
脂が選択使用される。表層(I)に適したポリエステル
樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PE
T)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のホモポ
リエステルや、ポリエチレンテレフタレート/イソフタ
レート(PET/IA)、ポリエチレンテレフタレート
/ナフタレンジカルボキシレート(PET/NDC)等
のコポリエステルや、ポリエチレンテレフタレートとポ
リエチレンナフタレートとのラミネートまたはブレンド
(PET+PEN)などが挙げられる。表層(I)のポ
リエステルは二軸延伸されていることが好ましく、この
延伸ポリエステルでは、延伸による分子配向結晶化によ
り、腐食成分に対するバリアー性が向上する結果とし
て、耐食性が向上し、更に接着時における表層の溶融流
動が抑制されて、溶接部肩部のカバレツジ性が確保され
るという利点がある。更に、表層(I)のポリエステル
は二軸延伸の上、熱固定することにより、配向歪みを緩
和すると共に熱結晶化を進行させておくことが好まし
い。それにより、テープ接着時の表層(I)の収縮を抑
制し、溶接段差に沿って表層(I)が変形するのを容易
にする効果がある。表層(I)がポリエチレンテレフタ
レートを主成分とする熱可塑性ポリエステルよりなる場
合、上記熱固定温度は130〜240℃、特に170〜
230℃であるのが好適である。この場合、分子配向結
晶化及び熱結晶化されたフィルムの結晶化度(密度法)
は30乃至55%、特に40乃至55%とすることが好
ましい。最終的に、缶胴内面側に被覆されたポリエステ
ルテープの表層(I)の最表面層の分子配向結晶化及び
熱結晶化の程度は、アッベの屈折計で測定される3次元
方向の屈折率より求められる面配向係数で0.05〜2
の範囲、特に好ましくは0.07〜1.8の範囲とする
ことが好ましく、これにより、補正されたポリエステル
テープの好適なガスバリアー性のため、優れた耐腐食性
能を得ることができる。
【0043】本発明に用いる補正テープにおける表層
(I)厚みは、平均の元の厚みとして、3μm〜50μ
m、好適には5μm〜30μmの範囲にあることが、被
覆の完全さ及び耐腐食性の点で好ましい。表層(I)の
厚みが3μmを下回ると、腐食成分に対するバリアー性
が不十分で耐食性が低下し、また溶接肩部のカバレッジ
性が低下するので好ましくない。一方、表層(I)の厚
みが50μmを越えると、テープの変形抗力が過大とな
り、溶接段差部への下層樹脂の埋め込みが不安定とな
り、好ましくない。
【0044】一方、下層(II)の熱可塑性ポリエステル
は、コポリエステルまたはコポリエステルブレンドから
成り、前述したポリエステルの内、金属及びポリエステ
ル表層(I)との密着性に優れたものが使用され、表層
(I)の融点よりも10℃以上、好ましくは20℃以上
低い融点乃至軟化温度を有するものが使用される。下層
(II)のコポリエステルは、エチレンテレフタレート単
位を50モル%以上、好ましくは60モル%以上含有し
ているものであり、このコポリエステルは、テレフタル
酸以外の二塩基酸成分及び/またはエチレングリコール
以外のジオール成分を含有している。このようなエチレ
ンテレフタレート系のコポリエステルは、金属に対する
優れた接着性及び溶融流動性を有すると共に、バリアー
性及び耐熱性にも優れている。
【0045】下層コポリエステルにおけるテレフタル酸
以外の二塩基酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレ
ンジカルボン酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン
酸等が適当であり、一方エチレングリコール以外のジオ
ール成分としては、ブタンジオール、ジエチレングリコ
ール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサ
ンジメタノール等が適当である。
【0046】特に好適な下層(II)用コポリエステルと
しては、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート
(PET/IA)であって、イソフタレート単位の含有
量が5〜40モル%、特に10〜25モル%のものが挙
げられる。イソフタレート単位の含有量が上記の範囲内
のものでは、優れた性能が発揮されるが、イソフタレー
トの含有量が5モル%を下回ると、金属への密着性が低
下したり、下層(II)の融点が高くなりすぎて、接着時
に溶接肩部近傍での表層(I)の温度上昇が大きく、表
層(I)が破損して、その部位でのカバレッジ性が低下
するおそれがある。一方、イソフタレートの含有量が4
0モル%を上回ると、融点乃至軟化温度が低下して、被
覆の耐熱性が低下したり、バリア性が低下したりする傾
向がある。
【0047】他に、好適な下層(II)用コポリエステル
として、ポリエチレン/1,4−シクロヘキサンジメチ
レンテレフタレート(PET/CHDM)、特にCHD
M成分の含有量が5〜40モル%、好適には10〜35
モル%のものや、ポリエチレンテレフタレート/2,6
−ナフタレンジカルボキシレート(PET/NDC)、
特にNDC成分の含有量が5〜50モル%、好適には1
0〜40モル%のものが挙げられる。
【0048】補正用テープにおける下層(II)の元の平
均厚みは、5μm以上、好ましくは10〜50μmの範
囲にあるのが溶接部への密着性の点でよい。下層の厚み
が5μmを下回ると、溶接段差部の埋め込み量の不足ま
たは溶接肩部のカバレッジ性の不足をもたらすので好ま
しくなく、一方、下層(II)の厚みが50μmを上回る
と、テープ端部での下層樹脂のはみ出し量が多くなっ
て、局部的に厚肉部が形成され、溶接缶端部のネックイ
ン等の加工時のしわが増大するので好ましくない。
【0049】溶接部補正用テープの全体の厚み、即ち表
層(I)+下層(II)の厚みは、平均の厚みで、8〜1
00μm、好ましくは15〜60μmの範囲にあるのが
よい。この範囲内の厚みであれば、溶接肩部での薄肉化
を防止しつつ、テープを溶接段差部に沿わせて密着させ
ることが可能となる。
【0050】本発明で用いる補正用テープには、所望に
より、それ自体公知の樹脂用配合剤、例えば、充填剤、
着色剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、老化防
止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、金属セッ
ケンやワックス等の滑剤、改質用樹脂乃至ゴム、等の公
知の樹脂配合剤を、それ自体公知の処方に従って配合で
きる。例えば、溶接部を隠蔽する目的で、チタンホワイ
ト、酸化亜鉛等の着色剤乃至顔料、またテープのアンチ
ブロッキングを防止する目的で、アルミナ粉、炭酸カル
シウム、シリカ、タルク等の滑剤乃至アンチブロッキン
グ剤を配合することができる。このような樹脂配合剤の
配合は、缶内面被覆用のポリエステルフィルムに対して
も同様に行うことができる。
【0051】本発明に用いる積層構造の溶接部補正テー
プは、それ自体公知の手段、例えば共押出法、押出コー
ト法、サンドイッチラミネーション法等で製造すること
ができる。共押出法の場合、表層ポリエステルと下層コ
ポリエステルとを共押出してキャストフィルムを製造
し、このキャストフィルムを延伸温度にて二軸延伸し
て、少なくとも表層が分子配向された積層フィルムとす
る。この積層フィルムを所定の幅にスリットして、溶接
部補正用のテープとする。押出コート法では、予め形成
された延伸ポリエステルフィルムの表層(I)に、下層
(II)となるコポリエステルを押出コートして、同様に
溶接部補正用のテープを形成させる。サンドイッチラミ
ネーションでは、予め形成された延伸ポリエステルフィ
ルムの表層(I)と、コポリエステルフィルムの下層
(II)との間に、コポリエステルを溶融押出し、両フィ
ルムをサンドイッチして、同様に溶接部補正用のテープ
を形成させる。
【0052】[溶接部の被覆(補正)]テープによる溶
接部の被覆は、次のように行う。即ち、溶接缶胴の内面
に対して溶接部と補正テープの下層(II)とが対面する
位置関係で補正テープを供給する。補正テープの位置決
めは、溶接部及びその近傍及び円周上にてそれに連なる
ポリエステル内面被覆フィルムの一部が幅方向(円周方
向)に補正テープで覆われ、且つ溶接部の高さ方向の実
質上全てが補正テープで覆われるようなものである。補
正テープと内面被覆フィルムとの重なりは、片側におい
て、少なくとも0.5mm、好適には1mm以上確保す
ることが、金属露出を確実に防止する上で好ましい。
【0053】この位置決めが行われた後、補正テープを
シリコーンゴム等の弾性体で溶接部に対して押圧し、ベ
ースフィルムの一部を含む溶接部及びその近傍を加熱し
て補正テープを溶接部に熱接着させる。補正テープの弾
性体による押圧に際して、補正テープを、幅方向に見て
溶接部の段差に沿った形で変形させることが段差部を樹
脂で埋め込むために有利である。また、補正テープを押
圧するための弾性体としても、缶胴の曲率半径よりも小
さい曲率半径のものを用いると、段差部に沿ったテープ
の変形が容易に行われるという利点がある。
【0054】補正テープの加熱は、溶接缶胴の金属基体
からの熱伝導により行うのが好ましく、一方金属基体の
加熱は高周波誘導加熱により行うことができる。加熱温
度及び加熱時間は、補正テープの下層(II)が溶融乃至
軟化し、一方表層(I)の配向結晶が実質上維持される
ように決定される。補正テープによる被覆が完了した溶
接缶は、加熱部分を冷却して被覆を固定し、ネックイン
加工、フランジ加工、蓋との巻締加工などの残りの製缶
工程に付する。
【0055】本発明の溶接部の被覆方法は、上記の手段
に限定されない。例えば、補正テープを溶接部に被覆す
る手段として、1個または複数個の男性ロールを用いて
補正テープを缶胴の端部より順次に熱圧着させることが
できる。また、補正テープの下層(II)と表層(I)
は、一体化して熱接着することには限定されない。下層
(I)と表層(II)のテープ状のフィルムを順に溶接部
に接着する手段、下層(II)を溶接部に押し出しコート
し、次にテープ状の表層フィルムを接着する手段、或い
は溶接部と表層(I)のテープ状フィルムとを合わせた
間に溶融流動した下層樹脂を押し出して接着する手段な
どが採用できる。更に、複数の押出機を使用し、多層多
重ダイから積層構造のテープ状の溶融樹脂を直接缶内面
側溶接部近傍に押しだし、加圧接着することができる。
この方法は、18リットル缶のような大口径の缶胴に適
用できる。
【0056】[用途]本発明による溶接部補正溶接缶胴
は、内容物をレトルト殺菌するバキューム缶、炭酸飲料
等の自生圧力を有する内容物を充填するための内圧缶、
エアゾール缶などの種々の用途に用いることができる。
また、缶径としては、202径の小径缶から18リット
ル缶のような大口径の缶にも適用できる。
【0057】
【実施例】本発明を更に次の例で説明する。以下の実施
例に使用する溶接缶胴の製造方法は以下の通りであっ
た。市販のニッケル錫メッキ鋼板を用意し、鋼板の缶胴
内面側に相当する溶接されるべき部分を残してポリエス
テル樹脂フィルムを熱接着する、いわゆるマージンラミ
ネートを行ない、ラミネート鋼板を作成した。用意した
ニッケル錫メッキ鋼板は板厚0.2mmで、ニッケル量
が30mg/m、錫量が0.8g/mのニッケル錫
メッキ層の上に、10mg/mの金属クロムメッキ層
と金属クロム換算で10mg/mの酸化クロムメッキ
層とを有していた。製作したラミネート鋼板をブランク
状に切断し、そのブランクを線電極を用いた市販の重ね
マッシュシーム式抵抗溶接機にて溶接することにより、
溶接缶胴(缶径52.3mm、缶胴高さ107.95m
m)を作成した。溶接時の重ね合わせ幅は0.35mm
であり、得られた溶接部の幅が約0.75mm、厚みが
約0.28mm、缶内面側の溶接部段差量は約0.08
mm程度であった。また、溶接後の溶接部を挟んでポリ
エステルフィルムが被覆されない金属露出部位の幅、い
わゆるマージン幅は約5mmであった。
【0058】作成した溶接缶胴の缶内面側溶接部分及び
その近傍に幅10mmのポリエステルテープを熱接着に
より被覆した。被覆に当たっては、最初に缶胴内側に溶
接部に対向して位置するゴム製弾性バー上に、ポリエス
テルテープを配置し、次に缶胴の溶接部及び近傍を缶胴
外面側に配置した電磁誘導コイルからの誘導電流により
缶胴の溶接部及びその近傍を加熱し、缶内面側の溶接部
の温度がポリエステルテープの下層(II)が溶融流動を
開始する融点乃至軟化温度以上に到達した時点にて、弾
性バーを介してポリエステルテープを缶内面側溶接部に
押圧し接着し、その前後に加熱を停止した後にポリエス
テルテープの下層(II)が少なくとも固化する温度まで
冷却させて押圧を解除する方式を用いた。その際、ポリ
エステルテープと缶胴との間に熱電対を配することによ
り、特にベースフィルムと補正テープとの接着界面の温
度を測定した。得られた溶接缶胴の一方の端部を50m
mの直径(200径)ネックイン加工し、さらに缶胴両
端部にフランジ加工の端部加工を施した。
【0059】(比較試験1)マージンラミネートするポ
リエステルフィルムとして、表層がポリエチレンテレフ
タレート(PET)、下層がポリエチレンテレフタレー
ト(PET)とイソフタル酸(IA)16モル%とを共
重合したコポリエステルよりなる構成にて共押し出し
し、二軸延伸加工及び熱固定処理したものを用いた。そ
のフィルムの表層は厚みが12μmで、融点が252
℃、下層は厚みが3μmで、融点が222℃であった。
また、貼り合わせる前のフィルムが結晶化度は45%で
あり、貼り合わせた後のフィルム最表面の面配向係数は
0.11であった。作成されたマージンラミネート鋼板
より、上記の手段により溶接缶胴を作成した。補正テー
プとして、表層(I)がポリエチレンテレフタレート
(PET)、下層(II)がポリエチレンテレフタレート
(PET)とイソフタル酸(IA)16モル%とを共重
合したコポリエステルよりなる構成にて共押し出しし、
二軸延伸加工及び熱固定処理したものを用いた。そのテ
ープの表層(I)は厚みが12μmで、融点が252
℃、下層(II)は厚みが30μmで、融点が219℃で
あった。貼り合わせる前のフィルム状のテープの結晶化
度は40%であった。前記の溶接缶胴に補正テープを被
覆する手段により、溶接部の加熱温度を変えることによ
り、溶接部乃至ベースフィルム表層と補正テープの下層
(II)とより成る接着界面の温度を表1に示す例1,
2,3及び4のように変えた条件にて、補正テープを溶
接缶胴に熱接着した。なお、表1の接着界面はベースフ
ィルムと補正テープとの間であり、接着界面温度とはそ
の界面での押圧時のピーク温度を示している。また、表
層(I)がポリエチレンテレフタレート(厚み20μ
m、融点250℃)、下層(II)がポリエチレンテレフ
タレート(PET)とナフタレンジカルボン酸(ND
C)20モル%とを共重合したコポリエステル(厚み2
0μm、融点205℃)よりなる二軸延伸加工及び熱固
定処理した補正テープを用意し、上と同様に補正テープ
を表1の例5の条件にて溶接缶胴に熱接着した。さら
に、表層(I)がポリエチレンテレフタレート(PE
T)とイソフタル酸(IA)5モル%とを共重合したコ
ポリエステル(厚み12μm、融点235℃)で、下層
(II)がポリエチレンテレフタレート((PET)とイ
ソフタル酸(IA)15モル%とを共重合したコポリエ
ステル(厚み26μm、融点215℃)よりなる無延伸
の補正テープを用意し、上と同様に補正テープを表1の
例6の条件にて溶接缶胴に熱接着した。比較として、ポ
リエチレンテレフタレート(PET)とイソフタル酸
(IA)16モル%とを共重合したコポリエステルより
なる、厚みが30μmの二軸延伸加工及び熱固定処理し
た単層テープ(融点217℃)を上と同様に作成し、そ
の単層テープを溶接缶胴に表1に示す例7及び8の条件
にて熱接着を行った。
【0060】補正された溶接缶胴は上記の端部加工を施
した、その端部を加工された溶接缶胴の補正部に対し、
加工端部でのテープの剥離の有無による加工性の評価、
目視による溶接部段差凹部での気泡の残存の有無及び補
正部位の局部的なエナメルレータ値(ERV)の測定に
よる金属露出部の有無の評価を○(良好)、×(不良)
により行った。その結果を表1に示す。
【0061】
【表1】 表1に示す評価より、本発明の積層構造の補正テープの
優位性が明らかである。
【0062】さらに、例2、例5、例6及び例8の条件
にて作成した溶接缶胴のネックイン端部にアルミ製イー
ジーオープンエンド(EOE)を巻締めし、空缶を得
た。その空缶に、1.5%の食塩水、及び4%酢酸水溶
液を充填し、市販のバキュームシーマーにて、端部にT
FS蓋を巻締めて缶詰とした。この缶詰を125℃、3
0分のレトルト殺菌処理を行った後、37℃で1週間保
存し、その後開缶して、缶内面側、特に詳細に補正部の
状態を調べた。いずれの場合も補正部を除く缶胴内面に
異常は認められなかった。補正部の結果を表2に示す。
【0063】
【表2】 表2に示す結果より、本発明の溶接缶胴が耐腐食性に優
れていることが明らかであり、特に、補正テープの表層
が分子配向結晶化していることが、本発明の溶接缶胴に
より優れた耐腐食性能を付与していることが明らかであ
る。
【0064】(比較試験2)ベースフィルムとして、二
軸延伸したポリエチレンテレフタレート(厚み12μ
m)に1μmの厚みの熱硬化性エポキシ・フェノール系
プライマーを塗布し、乾燥固化させたものを用意し、上
記のニッケル錫メッキ鋼板にマージンラミネートした。
フィルムを貼り合わせの際の、鋼板の加熱温度は200
℃であり、ラミネートした鋼板は210℃で30秒加熱
して熱硬化性プライマーを完全に熱硬化させた。作成し
たマージンラミネート鋼板より、上記の手段にて溶接缶
胴を作成した。また、比較のために、上記のニッケル錫
メッキ鋼板に市販のエポキシ・フェノール系塗料を焼き
付け後の膜厚が約7μmとなるようにマージン塗装し、
所定の焼き付け処理を施した後、上記の手段と同様にし
て溶接缶胴を作成した。補正テープとして、表層(I)
がポリエチレンテレフタレート(厚み12μm、融点2
52℃)、下層(II)がポリエチレンテレフタレート
(PET)とイソフタル酸(IA)16モル%とを共重
合したコポリエステル(厚み30μm、融点219℃)
よりなる二軸延伸加工及び熱固定処理したものを用い
た。前記の手段により、溶接缶胴に補正テープを熱接着
した。その際、溶接部の加熱温度を変えることにより、
ベースフィルムの表層またはベース塗膜と補正テープの
下層(II)とより成る接着界面の接着温度条件を変えて
得た溶接缶胴の補正部の接着強度、気泡の有無、金属露
出等を評価し、テープ接着時の好適な接着温度範囲を求
めた。その結果、プライマー付ポリエチレンテレフタレ
ートを被覆した溶接缶胴では、ベースフィルムと補正テ
ープ間の好適な接着温度範囲は225℃〜250℃であ
った。一方、エポキシ・フェノール系塗料を被覆した溶
接缶胴ではベース塗膜と補正テープ下層(II)との接着
強度が弱く、好適な接着温度範囲は全くなかった。
【0065】
【発明の効果】本発明によれば、溶接部及びその近傍を
除く缶内面側を熱可塑性ポリエステルフィルムにて被覆
し、溶接部及びその近傍及び円周上にてそれに連なる該
ポリエステルフィルムの一部に渡って、表層(I)及び
下層(II)で構成される少なくとも2層の熱可塑性ポリ
エステルテープで被覆し、下層(II)の材料の融点乃至
軟化温度を表層(II)の融点よりも10℃以上低いもの
としたことにより、溶接部における段差凹部への樹脂の
埋め込みが有効に行われていると共に、溶接部における
肩部での樹脂被覆層の薄肉化も防止され、耐腐食性、密
着性、加工性及び衛生的特性の組合せに優れた継ぎ目被
覆溶接缶胴が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による溶接缶胴の全体の断面構造を示す
断面図である。
【図2】図1の溶接部及びその近傍の断面構造を拡大し
て示す断面図である。
【図3】図1の被覆テープを拡大して示す断面図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高崎 泰裕 神奈川県横浜市西区西戸部町2−206 Fターム(参考) 3E061 AA16 AB04 AB13 AC09 AD01 BA02 4F100 AB01A AB03 AK41B AK41C AK42B AK43C BA02 BA03 BA10A BA10C BA26 DA01 DA06 DA15 EC032 EJ462 GB16 JA04B JA04C JA11B JB02 JB16B JB16C JK06 YY00B YY00C

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶接部及びその近傍を除く缶内面側が熱
    可塑性ポリエステルフィルムにて被覆されており、該溶
    接部及びその近傍が表層(I)及ぴ下層(IIII)で構成
    される少なくとも2層の熱可塑性ポリエステルテープに
    て被覆されており、下層(II)のポリエステルの融点乃
    至軟化温度が表層(I)の融点よりも10℃以上低いこ
    とを特徴とする溶接缶胴。
  2. 【請求項2】 該テープの下層(II)がエチレンテレフ
    タレート単位を50モル%以上有しているポリエステル
    樹脂であることを特徴とする請求項1記載の溶接缶胴。
  3. 【請求項3】 該テープの下層(II)が50乃至95モ
    ル%のエチレンテレフタレート単位と酸成分基準で5乃
    至40モル%のイソフタル酸成分とを有しているポリエ
    ステル樹脂よりなることを特徴とする請求項1記載の溶
    接缶胴。
  4. 【請求項4】 該テープの下層(II)が50乃至95モ
    ル%のポリエチレンテレフタレートとジオール成分基準
    で5乃至40モル%の1,4‐シクロヘキサジメタノー
    ル成分とを有しているポリエステル樹脂よりなることを
    特徴とする請求項1記載の溶接缶胴。
  5. 【請求項5】 該テープの下層(II)が50乃至95モ
    ル%のポリエチレンテレフタレートと酸成分基準で5乃
    至50モル%のナフタレンジカルボン酸成分とを有して
    いるポリエステル樹脂よりなることを特徴とする請求項
    1記載の溶接缶胴。
  6. 【請求項6】 該テープの表層(I)が分子配向結晶化
    したポリエチレンテレフタレートよりなることを特徴と
    する請求項1記載の溶接缶胴。
  7. 【請求項7】 溶接部及びその近傍を除き缶内面側に被
    覆されたポリエステルフィルムの表層が分子配向結晶化
    していることを特徴とする請求項1記載の溶接缶胴。
  8. 【請求項8】 溶接部及びその近傍を除き缶内面側に被
    覆されたポリエステルフィルムが表層の分子配向結晶化
    しているポリエステル樹脂層と下層の接着性樹脂層の複
    合層より成ることを特徴とする請求項1記載の溶接缶
    胴。
  9. 【請求項9】 溶接部及びその近傍を除く缶内面側が表
    層のポリエチレンテレフタレートを主体とする分子配向
    結晶化したポリエステル樹脂層と下層のポリエチレンテ
    レフタレートを50モル%以上含有するポリエステル樹
    脂層との複合樹脂層よりなることを特徴とする請求項8
    記載の溶接缶胴。
  10. 【請求項10】 該ポリエステルテープの下層(II)の
    融点乃至軟化温度が缶内面側のポリエステルフィルムの
    表層の融点(Tm)−100℃以上であることを特徴と
    する請求項1記載の溶接缶胴。
  11. 【請求項11】 溶接部及びその近傍を除く缶内面側に
    熱可塑性ポリエステルフィルムを被覆した溶接缶胴に、
    溶接部及びその近傍及び円周上にてそれに連なる該ポリ
    エステルフィルムの一部にわたって、熱可塑性ポリエス
    テルより成り、表層(I)及び表層(I)の融点よりも
    10℃以上低い融点乃至軟化温度を有する下層(II)で
    構成されるポリエステルテープを、少なくとも接着界面
    が該ポリエステルフィルムを構成する表層ポリエステル
    の融点(Tm)−80℃以上の温度で且つ該テープの下
    層(II)の融点乃至軟化温度以上の温度で、しかもテー
    プ表層(I)の最表面が溶融しない温度において熱接着
    することを特徴とする溶接缶胴の製法。
JP2000041774A 2000-02-18 2000-02-18 溶接缶胴及びその製法 Expired - Fee Related JP4078780B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000041774A JP4078780B2 (ja) 2000-02-18 2000-02-18 溶接缶胴及びその製法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000041774A JP4078780B2 (ja) 2000-02-18 2000-02-18 溶接缶胴及びその製法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2001233334A true JP2001233334A (ja) 2001-08-28
JP4078780B2 JP4078780B2 (ja) 2008-04-23

Family

ID=18564945

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000041774A Expired - Fee Related JP4078780B2 (ja) 2000-02-18 2000-02-18 溶接缶胴及びその製法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4078780B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2022519658A (ja) * 2019-02-13 2022-03-24 ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド エアロゾル化可能材料用容器
WO2022085412A1 (ja) 2020-10-21 2022-04-28 日本製鉄株式会社 電池用ケース
US12021249B2 (en) 2020-10-21 2024-06-25 Nippon Steel Corporation Battery case

Citations (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6252043A (ja) * 1985-08-31 1987-03-06 東洋製罐株式会社 継目被覆溶接缶
JPH03133739A (ja) * 1989-10-16 1991-06-06 Toyo Seikan Kaisha Ltd 金属容器
JPH05111980A (ja) * 1991-06-06 1993-05-07 Nippon Steel Corp 優れた意匠性を有する有機皮膜積層鋼板及びその鋼板より成るスリーピース缶
JPH071694A (ja) * 1993-06-17 1995-01-06 Toyobo Co Ltd 金属貼合せ用ポリエステル複合フイルム
JPH07125166A (ja) * 1993-11-04 1995-05-16 Diafoil Co Ltd 3ピース缶の内缶被覆用積層ポリエステルフイルム
JPH09277471A (ja) * 1996-04-09 1997-10-28 Toyobo Co Ltd ポリエステル系複合フィルム、ラミネート金属板および金属容器
JPH09316216A (ja) * 1996-03-25 1997-12-09 Toyobo Co Ltd 金属板ラミネート用フィルム、ラミネート金属板および金属容器
JP2000043191A (ja) * 1998-08-03 2000-02-15 Toyobo Co Ltd 樹脂被覆金属板およびその製造方法
JP2001072060A (ja) * 1999-09-08 2001-03-21 Mitsubishi Polyester Film Copp 金属缶溶接部補修フィルム
JP2001205764A (ja) * 2000-01-27 2001-07-31 Mitsubishi Polyester Film Copp 金属缶溶接部補修フィルム
JP3865174B2 (ja) * 1998-03-13 2007-01-10 東レ株式会社 金属板ラミネート用ポリエステルフィルム

Patent Citations (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6252043A (ja) * 1985-08-31 1987-03-06 東洋製罐株式会社 継目被覆溶接缶
JPH03133739A (ja) * 1989-10-16 1991-06-06 Toyo Seikan Kaisha Ltd 金属容器
JPH05111980A (ja) * 1991-06-06 1993-05-07 Nippon Steel Corp 優れた意匠性を有する有機皮膜積層鋼板及びその鋼板より成るスリーピース缶
JPH071694A (ja) * 1993-06-17 1995-01-06 Toyobo Co Ltd 金属貼合せ用ポリエステル複合フイルム
JPH07125166A (ja) * 1993-11-04 1995-05-16 Diafoil Co Ltd 3ピース缶の内缶被覆用積層ポリエステルフイルム
JPH09316216A (ja) * 1996-03-25 1997-12-09 Toyobo Co Ltd 金属板ラミネート用フィルム、ラミネート金属板および金属容器
JPH09277471A (ja) * 1996-04-09 1997-10-28 Toyobo Co Ltd ポリエステル系複合フィルム、ラミネート金属板および金属容器
JP3865174B2 (ja) * 1998-03-13 2007-01-10 東レ株式会社 金属板ラミネート用ポリエステルフィルム
JP2000043191A (ja) * 1998-08-03 2000-02-15 Toyobo Co Ltd 樹脂被覆金属板およびその製造方法
JP2001072060A (ja) * 1999-09-08 2001-03-21 Mitsubishi Polyester Film Copp 金属缶溶接部補修フィルム
JP2001205764A (ja) * 2000-01-27 2001-07-31 Mitsubishi Polyester Film Copp 金属缶溶接部補修フィルム

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2022519658A (ja) * 2019-02-13 2022-03-24 ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド エアロゾル化可能材料用容器
JP7273167B2 (ja) 2019-02-13 2023-05-12 ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド エアロゾル化可能材料用容器
WO2022085412A1 (ja) 2020-10-21 2022-04-28 日本製鉄株式会社 電池用ケース
KR20230058527A (ko) 2020-10-21 2023-05-03 닛폰세이테츠 가부시키가이샤 전지용 케이스
US12021249B2 (en) 2020-10-21 2024-06-25 Nippon Steel Corporation Battery case

Also Published As

Publication number Publication date
JP4078780B2 (ja) 2008-04-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US4735835A (en) Seam covered welded can
WO2006123666A1 (ja) 3ピース角形缶及びその製造方法
EP2085318B1 (en) Method of producing a two-piece can body made of laminated steel sheet
JPH07507525A (ja) 積層金属板
JPH0755552B2 (ja) 深絞り缶の製造方法
JP2004148324A (ja) 樹脂被覆金属絞りしごき缶の製造方法
EP1914065B1 (en) Laminate steel sheet for two-piece can, method for manufacture of two-piece can, and two-piece laminate can
US20230382617A1 (en) Resin-coated metal sheet for container, container formed of resin-coated metal sheet, and method for manufacturing resin-coated metal sheet
JP4078780B2 (ja) 溶接缶胴及びその製法
WO2019112051A1 (ja) ヒートシール蓋及び缶
JP4319358B2 (ja) ポリエステル樹脂被覆金属板、およびそれを用いた缶
EP1914064B1 (en) Laminate steel sheet for can body of two-piece can and two-piece can comprising laminate steel sheet
JP4775532B2 (ja) 樹脂被覆シームレス缶
US20180147816A1 (en) Metal plate laminating resin film, resin laminated metal plate, and container and container lid using same
JP4967208B2 (ja) 自己潤滑性を有する樹脂被覆金属板及びその製造方法、並びに金属缶及び缶蓋
JP4366730B2 (ja) 製缶用積層体及びシームレス缶
JPH1086308A (ja) 積層体及びそれを用いた容器
JP2001260221A (ja) 溶接部が補正された溶接缶胴の製造方法及び装置
JP6511299B2 (ja) 金属缶溶接部の補修用ポリエステルフィルム
JP2002120278A (ja) 金属板被覆用樹脂フィルムの製造方法、金属板被覆用樹脂フィルム、樹脂フィルム被覆金属板の製造方法、樹脂フィルム被覆金属板およびそれを成形してなる缶
JP2001253032A (ja) 熱可塑性樹脂フィルム、熱可塑性樹脂フィルム被覆金属板およびそれを用いた缶
JP4079207B2 (ja) 樹脂被覆シームレス缶
JP7040222B2 (ja) ヒートシール容器用缶体およびヒートシール容器
JPH11100006A (ja) 押出ラミネート用ロール
JP2007105948A (ja) ポリエステルフィルム

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050803

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20070628

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20071023

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20071217

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20080115

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20080128

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110215

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 4078780

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110215

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120215

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120215

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120215

Year of fee payment: 4

R157 Certificate of patent or utility model (correction)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R157

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130215

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130215

Year of fee payment: 5

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130215

Year of fee payment: 5

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140215

Year of fee payment: 6

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140215

Year of fee payment: 6

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees