JP4775532B2 - 樹脂被覆シームレス缶 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジュース、コーヒー、ビール、日本酒、チューハイ等の飲料や、食品、オイル類等を保持させる樹脂被覆シームレス缶に関し、より詳細には加工性に優れ、耐食性及び耐衝撃性を有した樹脂被覆シームレス缶に関する。
【0002】
【従来の技術】
側面無継目缶(樹脂被覆シームレス缶)は、金属板の表面に樹脂層を被覆させた樹脂被覆金属板を絞り・しごき加工に付することによりカップ状に成形される。この樹脂被覆シームレス缶は、その内部にジュース類等の内容物が充填された後、カップ状の開口部の周縁を別に成形された円盤状等の蓋部の周縁と互いに重ね合わせて機械的に巻き締めて接合される。
【0003】
金属板に被覆される樹脂層の素材としては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレート/イソフタレート等のラミネート材が知られている。
このラミネート材を積層させた樹脂被覆シームレス缶は、腐食性成分に対するバリヤー性にも優れ加工性も優れているが、加工後の容器に内容物を充填して経時させた場合、樹脂層の耐衝撃性、特に耐デント性が著しく低下するという問題があった。
【0004】
この問題を解決するものとして、特開平7−108650号公報に、樹脂フィルムとして、テレフタル酸85乃至97%及びイソフタル酸3乃至15%から成る酸成分とジオール成分とから誘導された高分子配向性共重合ポリエステルの表層と、テレフタル酸84.5乃至96.5%及びイソフタル酸3.5乃至15.5%からなり、且つイソフタル酸を表層共重合ポリエステルよりも多い量で含む酸成分とジオール成分とから誘導された低分子配向性共重合ポリエステルの下層とから成る積層フィルムが積層された絞り容器が記載されている。
【0005】
また、特開平7−178485号公報には、主成分が配向結晶を含むポリエステル樹脂であり、ポリエステル樹脂層の固有粘度が0.60以上であり、配向結晶の缶高さ方向への軸配向度を表すパラメーター及び、缶高さ方向へ軸配向している結晶の面配向度を表すパラメーターが、所定値以上である有機樹脂被膜を有する絞りしごき加工、又は引伸し絞り加工してなる2ピース金属缶が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の樹脂被覆シームレス缶では、樹脂層が被覆された金属板をカップ状に成形するために高度の絞り加工や、絞り成形による曲げ伸ばし加工、ストレッチ加工、しごき加工、開口部の接合加工がなされ、樹脂層や金属板がポンチやダイス等の工具との摩擦によって損傷を受けやすく、この樹脂層や金属板の損傷部では顕在的或いは潜在的な金属露出を生じ、この部分からの金属溶出や腐食を生じ易いという課題があった。
即ち、シームレス缶の絞り成形工程においては金属板に塑性流動が生じるために金属板表面と樹脂層との間に剪断力等が生じて密着性が低下すると共に、樹脂層中の残留歪み等により両者の密着力が経時的に低下する傾向が認められる。
また、コスト削減のために金属板を薄肉化する場合には、金属板に被覆された樹脂層には、絞り加工や缶蓋の巻き締め加工に際して高度の加工性や耐久性が要求され、これを満足した缶性能を付与させるのが困難であるという課題があった。
【0007】
さらに、内容物がビール、チューハイなどのアルコール飲料に対しては、厳しい金属溶存量やERV値を要求されていた。
また、内容物がコーヒー飲料等のように低酸性であり且つホットベンダーに付される場合や、レトルト殺菌のような高温湿熱条件下に付される場合等のように過酷な条件に付されると、通常の状態では満足し得るものでも耐食性及び耐デント性が低下するという問題もある。
特に、前述したような高度の加工を施して成形された容器は、加工時に工具等との摩擦による傷が入りやすく、これらの傷が原因で容器の耐食性が損なわれるという課題があった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、高度の加工に耐用できる加工性を付与させると共に、樹脂層と金属板との密着性を高め、耐傷つき性、耐食性、耐デント性、耐突き刺し性等の缶性能を高めた樹脂被覆シームレス缶を提供することにある。
【0009】
本発明の請求項1に記載の樹脂被覆シームレス缶は、
少なくとも片面に樹脂層が被覆された金属板をカップ状に形成してなる樹脂被覆シームレス缶であって、
前記樹脂層を含む前記金属板の厚みがカップ状の胴中央部より厚く形成された肉厚部をカップの開口部に有し、
前記開口部の肉厚部の長さLが、シームレス缶の高さHに対して、1/20〜1/10であることを特徴とする。
これによって、全体の缶重量を減らして軽量化できると共に、フランジ接合等の加工工程で負荷の多くかかる開口部側の強度や耐久性を高めて折り曲げたり塑性変形させたりする際に欠陥を生じることのない加工性を付与することができる。また、樹脂被覆シームレス缶の厚みに特定の分布パターンをもたせることで、樹脂層と金属板との密着性を適正化して、耐傷つき性、耐食性、耐デント性といった缶性能を満足し得る樹脂被覆シームレス缶を提供することができる。
【0010】
本発明の請求項2に記載の樹脂被覆シームレス缶は、請求項1記載の発明において、前記開口部に形成された肉厚部が、前記カップの内面側に形成されている部分においては、その下端部から上端部にかけて肉厚が漸増する傾斜部及び傾斜部につらなる一定肉厚部が形成され、前記カップの外面側に形成されている部分においては、その下端部から上端部にかけて肉厚が漸増する傾斜部が形成されているものであることを特徴とする。
この肉厚部を利用して缶蓋を巻き締めることによって、蓋が缶胴部に強固に取り付けられ脂被覆シームレス缶の蓋の巻き締め性を高めることができる。
【0011】
本発明の請求項3に記載の樹脂被覆シームレス缶は、請求項1又は2記載の発明において、前記樹脂層が表層(A)及び下層(B)の2層からなり、表層(A)は、缶の成形時に配向して結晶化したものであることを特徴とする。
これによって、絞り加工や曲げ伸ばしを行う際に、金属板に接する下層が柔軟性を有するので金属板との密着性を維持させることができると共に、配向して結晶化した樹脂層で形成された表層の耐久性やバリヤー性を高めることができる。こうして下層と表層におけるそれぞれの機能を適正にバランスさせ、使用する樹脂にかかるコストを低減できる。また、缶蓋の巻き締め加工に際してシーミング性を向上させることができる。
【0012】
本発明の請求項4に記載の樹脂被覆シームレス缶は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記樹脂層は、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレートから成る表層(A)及び下層(B)を有し、下層(B)は、表層(A)と比較して、イソフタル酸含有量を多く含有し、同等以下の固有粘度を有し、下層(B)と表層(A)の膜厚はB≧Aの関係である、ことを特徴とする。これによって、下層及び表層における破断伸び、硬度等の加工特性や、表層と下層間及下層と金属板間の密着性を適正範囲に調整することができるので、樹脂層が破断することのない優れた加工性や、金属板との密着性、内容物の香りを変化させるようなことのないフレーバー性、耐工具傷つき性及び耐デント性等を樹脂層に付与させることができる。また、イソフタル酸含有量が表層よりも多いものを下層とする2層構成にしているので、未配向の無延伸樹脂を用いて、延伸樹脂にほぼ近いバリヤー性を保持させることができる。さらに樹脂の固有粘度(IV値)を、絞り加工やしごき加工のような厳しい加工に耐えられ、樹脂を加熱溶融させた際の金属板への付着性や作業性が損なわれることのない範囲に調整して、缶内容物に対するフレーバー性や、バリヤー性を維持できる。
また、下層(B)膜厚が表層(A)の膜厚以上になるようにしているので、金属板との密着性がさらに良好に維持されると共に、加工時に樹脂層の剥離等が生じるのを有効に防止できる。
【0013】
本発明の請求項5に記載の樹脂被覆シームレス缶は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記表層(A)は、イソフタル酸含有量が3〜13モル%で、IV値が0.7以上のポリエチレンテレフタレート/イソフタレートから成り、前記下層(B)は、イソフタル酸含有量が8〜25モル%で、IV値が0.7以上のポリエチレンテレフタレート/イソフタレートから成ることを特徴とする。これによって、表層及び下層における樹脂層の加工特性や、耐久性特性をそれぞれ所定範囲に設定でき、樹脂被覆シームレス缶の耐傷つき性、耐食性、耐デント性といった缶性能を更に高めることができる。
【0014】
本発明の請求項6に記載の樹脂被覆シームレス缶は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記樹脂被覆シームレス缶が、絞り成形、ストレッチ成形、又はこれらの成形としごき成形を組み合わせた成形、或いはしごき成形により得られたものであることを特徴とする。
これによって、特定の加工特性等を有する樹脂被覆金属板から絞り成形、ストレッチ成形やしごき成形等によって樹脂被覆シームレス缶が成形され、表層の樹脂層は結晶が配向化されて硬度が上昇し、無延伸の樹脂を用いても延伸処理をした樹脂を用いた場合と同様にバリヤー性が向上し、耐食性や耐デント性、耐工具傷つき性を向上させることができる。また、金属板に接した下層における樹脂も特定の組成や硬度、粘性等のものを用いるので、樹脂層の結晶を特定の方向に配向させて、内容物充填後の熱処理等によって結晶が無秩序化するのを抑制できるという効果を有する。しかも、下層樹脂層は、表層樹脂層に比較してガラス転移点が低いという性質を有するので、金属板に対する密着性は劣化することがない。このように、金属板の表面に、表層及び下層にそれぞれ別の性質を有する樹脂層を形成させ、それぞれの樹脂層の優れた効果を組み合わせて発揮させることができる。
【0015】
本発明の請求項7に記載の樹脂被覆シームレス缶は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記金属板がアルミ又はアルミ合金製であることを特徴とする。これによって、薄肉に形成されたアルミ又はアルミ合金性の素材に高度の加工に耐用できる加工性を付与させたり、樹脂層との密着性を高めたりすることが容易にできるので、耐傷つき性、耐食性、耐デント性等の缶性能を高めた樹脂被覆シームレス缶を容易に提供できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
(第一の実施の形態)
以下、本発明の樹脂被覆シームレス缶の第一の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第一の実施の形態を説明する樹脂被覆シームレス缶の模式断面図である。
図1において、10は第一の実施の形態である樹脂被覆シームレス缶、11は樹脂被覆シームレス缶10の金属板、12は樹脂被覆シームレス缶10の内側に被覆された内側樹脂層、13は樹脂被覆シームレス缶10の外側に被覆された外側樹脂層、14はカップ状に形成された樹脂被覆シームレス缶10の底部である。15は、その開口部15a側に形成された金属板11、内側樹脂層12、外側樹脂層13からなる肉厚部である。
金属板11としては、各種表面処理鋼板やアルミニウム等の軽金属板が使用される。表面処理鋼板としては、冷間圧延鋼板を焼鈍した後二次冷間圧延し、亜鉛メッキ、錫メッキ、ニッケルメッキ、電解クロム酸処理、クロム酸処理等の表面処理の一種または二種以上行ったものを用いることができる。またアルミニウムメッキ、アルミニウム圧延等を施したアルミニウム被覆鋼板が用いられる。
軽金属板としては、いわゆる純アルミニウム板の他にリン酸クロメート処理アルミニウム合金板等のアルミニウム合金板が使用される。
カップ状に成形される円板状の金属板(ブランク)の元板厚は、金属の種類、シームレス缶の用途或いはサイズによっても相違するが、一般に0.10〜0.50mmの厚みを有するものが好ましく、この中でも表面処理鋼板の場合には0.10〜0.30mmの厚み、軽金属板の場合は0.15〜0.40mmの厚みを有するものが好ましい。
【0017】
内側樹脂層12及び外側樹脂層13に用いられる樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、及びこれらの内の一種以上を組み合わせた複合樹脂等の組成物が適用でき、これら中でもポリエチレンテレフタレート/イソフタレートを主成分とする樹脂が好ましく用いられる。なお、内側樹脂層12と外側樹脂層13とは同一の樹脂を用いる必要はなく樹脂被覆シームレス缶10が適用される使用条件や加工条件に応じて、前記樹脂群の中からそれぞれを適宜選択して用いることができる。
なお、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレートを用いる場合の付随的な成分として、p−β−オキシエトキシ安息香酸、ナフタレン2,6−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンー4,4'−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の二塩基酸や、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−へキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロへキサンジメタノール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、グリセロール、トリメチヒールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のグリコール成分が少量含有されていてもよい。
【0018】
ポリエチレンテレフタレート/イソフタレートは、溶融重縮合法や固相重合法等の従来公知の製造方法により製造することができる。
固相重合法は、溶融重縮合法によって一旦低重合度のポリエチレンテレフタレートを合成した後、冷却固化し、細粒化もしくは粉砕し、これを220〜250℃で真空または不活性ガス流下で加熱することにより得られる。
この方法では、反応が比較的低温で行われるため、熱分解が少なく、重縮合の増大と共にカルボン酸含有量も著しく減少しているため、固有粘度の高い、高重合度のポリエチレンテレフタレート/イソフタレートが得られ、樹脂中のオリゴマー成分を減少させることができる。
【0019】
金属板11及び内側樹脂層12、外側樹脂層13からなる開口部15aに形成された肉厚部15の厚み(Tf)は、金属板及び樹脂層の各が樹脂被覆シームレス缶10の胴中央部の平均厚み(Tw)より厚くなるように形成されている。このとき、肉厚部の厚み(Tf)と胴中央部の厚み(Tw)との比(Tf/Tw)が1.1〜2の範囲に設定することが好ましい。より好ましくは、1.2〜1.5の範囲である。
この比(Tf/Tw)が1.1より小さくなると、以降のフランジ成形加工や、蓋部の巻き締め加工等の加工度が大きい処理に際して、開口部15aの強度が不足して巻き締め不良(シール不良)や、樹脂層の剥離、皺等の欠陥を生じ易くなり、逆に比(Tf/Tw)が2を超えるようになると、加工度の増大化をもたらしシーミングロール等の加工装置にかかる負荷が増加して、作業性とメンテナンス性が悪化する要因となるので好ましくない。
図2は、本発明の一実施形態を樹脂被覆シームレス缶の板厚分布図であり、樹脂被覆シームレス缶10の底部14から開口部15aに向かう高さ方向における樹脂層12、13を含む樹脂被覆シームレス缶の断面厚みの分布状態を表している。なお、実線は金属板及び樹脂層を含んだ全厚みの平均値であり、実線を挟む上の破線は缶内面側樹脂層の厚みを示し、下の破線は缶外面側樹脂層の厚みを示し、実線との隔たりは樹脂層の厚み分布の状態を表している。
この板厚分布図から、本発明の樹脂被覆シームレス缶の開口部15aに形成された肉厚部15が、カップ内面側に形成されている厚みにおいて、その下端部から上端部にかけて肉厚が漸増する傾斜部及び傾斜部につらなる一定肉厚部が形成され、カップ外面側に形成されている部分においては、その下端部から上端部にかけて肉厚が漸増する傾斜部が形成されているものであることが分かる。
また、図2に示すように、本実施の形態では、樹脂被覆シームレス缶10は、底部14を起点とした約20〜90mmの範囲の胴中央部では全厚みが約0.120mmである。開口部15a近傍の90mm〜100mmの範囲で厚みを増大させ、肉厚部15となる100〜120mmの範囲で約0.170mmの厚みであることが分かる。
また、肉厚部15の長さLはシームレス缶の高さHに対して、1/20〜1/10程度にすることが望ましい。これは肉厚部の長さが1/20より小さい値であると肉厚部をフランジ形成して巻き締めの強化効果を発揮させるのが困難になり、逆に1/10を超える値であると、厚みの厚い部分の距離が長くなるため、シームレス缶全体として薄肉化が図れなくなるので好ましくない。
なお、缶内面側において、肉厚部15は、その下端部に肉厚が漸増する傾斜部を設けて高さ方向にほぼ一定の肉厚を持たせているが、このような傾斜部や段差を設けることなく、胴中央部から開口部15aにかけて漸増するように形成してもよい。
【0020】
一般に、絞り−しごき成形、絞り−ストレッチ成形、或いはしごき成形によって、厚みt0の金属円板のブランクをカップ状のシームレス缶に成形する場合、シームレス缶の底の部分の厚みは元の板厚t0と殆ど変わらないが、缶胴側壁部分の厚み(Tw)は元の板厚t0より薄くなる。
【0021】
本実施の形態では、この側壁部分の厚みのうち、前記シームレス缶の開口部15に形成された肉厚部の厚み(Tf)が、カップの内面側に形成されている部分においては、その下端部から上端部にかけて肉厚が漸増する傾斜部及び傾斜部につらなる一定肉厚部が形成され、前記カップの外面側に形成されている部分においては、その下端部から上端部にかけて肉厚が漸増する傾斜部が形成されているものであることを特徴とする。
本実施の形態においては、少なくともこの肉厚部の厚み(Tf)が、シームレス缶胴中央部の厚み(Tw)を超えるように、金属板11と内側樹脂層12、外側樹脂層13からなる肉厚部15を形成することが好ましい。
【0022】
このような形状の肉厚部15は、予め被覆させた樹脂の厚みや樹脂の種類、成形用のポンチやダイス等の成形条件を調整することで形成することができる。特に、カップ内側に形成される肉厚部の形成は、肉厚部15に接する部分のポンチの径を部分的に小さくすることにより形成できる。また、カップ外側に形成される肉厚部の形成は、肉厚部15に接する部分のダイスの内径にテーパを持たせ、開口部上端側において内径を大きくすることにより形成できる。
【0023】
このように、肉厚部15を樹脂被覆シームレス缶10の開口部に設けることによって、加工負荷の大きいフランジ加工や蓋の巻き締め加工における耐久性や加工性を向上させることが可能になり、加工時に生じる樹脂層の剥離や傷、金属板の損傷等を効果的に防止できる。
特に、開口部に形成された肉厚部15が、金属板だけでなく内側樹脂層及び外側樹脂層それぞれにおいて肉厚となっていることによって、この肉厚樹脂層を利用した缶蓋巻き締め加工の巻き締め性を向上させ、缶蓋のパッキング性をも向上させることができ、樹脂被覆シームレス缶の蓋のシール性を高めることができる。
【0024】
(第二の実施の形態)
次に、本発明の樹脂被覆シームレス缶の第二の実施の形態について説明する。
図3は本発明の第二の実施の形態を説明する樹脂被覆シームレス缶の模式断面図である。図3において、20は第二の実施の形態である樹脂被覆シームレス缶21は樹脂被覆シームレス缶20の金属板、22は樹脂被覆シームレス缶10の内側に被覆された表層(A)及び下層(B)からなる内側樹脂層、23は樹脂被覆シームレス缶10の外側に被覆された表層(A)及び下層(B)からなる外側樹脂層、24はカップ状に形成された樹脂被覆シームレス缶20の底部、25はその開口部25a側に形成された金属板21、内側樹脂層22、外側樹脂層23からなる肉厚部である。
なお、本実施の形態の樹脂被覆シームレス缶は樹脂層を2層構造とした点で第一の実施の形態のものと異なっており、その他の主要構成は略同様であるので、金属板の材料等についての重複する部分については詳しい説明を省略する。
第二の実施の形態の樹脂被覆シームレス缶20においては、金属板21に被覆する樹脂として、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレートが好適に用いられる。この場合、缶内面及び缶外面に形成された樹脂層表層及び下層は、成形前の樹脂被覆金属板の状態では実質上未配向であり、表層におけるイソフタル酸含有量が3〜13モル%(すなわちIA=3〜13)の低イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。また、下層に用いられる樹脂は、そのイソフタル酸含有量が8〜25モル%(すなわちIA=8〜25)の高イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートであり、共に固有粘度[IV値]が0.7以上であることが好ましい。
【0025】
第二の実施の形態の樹脂被覆シームレス缶20においては、それぞれ表層(A)と下層(B)を有した内側樹脂層22、外側樹脂層23が被覆されている。
各樹脂層22、23は上記のようにイソフタル酸含有量の異なるポリエチレンテレフタレート/イソフタレート(以下、PET/IAということがある)の2層構成から成り、しかもこの2層構成の樹脂被覆はシームレス缶成形前の樹脂被積金属板の状態で実質上未配向の2層構成であることが好ましい。
即ち、樹脂層を延伸して配向させると、引張り強さ等の機械的強度は向上するが、破断伸びが減少する。従って、絞り、ストレッチ加工、しごき加工等のような厳しい加工に付される場合には、未だ配向していない無延伸樹脂層の方が加工により樹脂層の破断が生じることが無く、加工性に優れているからである。
【0026】
その一方、未配向の無延伸樹脂層は延伸樹脂層に比してバリヤー性が劣るという欠点が考えられる。これを改良するために、イソフタル酸含有量の異なるポリエチレンテレフタレート/イソフタレートをイソフタル酸含有量が3〜13モル%のものを表層、イソフタル酸含有量が8〜25モルのものを下層とする2層構成に積層することが好ましい。これにより、延伸樹脂層とほぼ同様のバリヤー性を有するものとすることが可能となる。
【0027】
樹脂被覆シームレス缶20は、このような樹脂被覆金属板を素材として絞り成形、ストレッチ成形やしごき成形等によって成形されるため、表層(A)の樹脂は配向して結晶化し硬度が上昇し、延伸フィルムを用いた場合と同様にバリヤー性が向上し耐食性や耐デント性、耐工具傷つき性が向上するものと思われる。
また、金属板に接した下層(B)の樹脂も配向結晶化し内容物充填後の熱処理等によって無秩序な結晶化や熱結晶化を抑制できるという効果を有する。
しかも、下層(B)の樹脂層は、表層(A)の樹脂層に比較してガラス転移点が低いという性質を有するので、金属板21に対する密着性が劣化することがない。
このように、樹脂被覆シームレス缶20は金属板21の表面に、表層(A)及び下層(B)からなる2層構造を形成し、それぞれが別の性質を有する樹脂を用いて、それぞれの樹脂の優れた効果を組み合わせて発揮させることができるようにしている。
【0028】
肉厚部25は開口部25aに形成された胴中央部よりも肉厚となる部分であり、内側樹脂層22及び外側樹脂層23を含む金属板21からなる。
第二の実施の形態では、このような表層と下層で異なった樹脂組成の肉厚部25を設けることによって、缶蓋の巻き締め加工のような加工程度が大きく厳しい加工に対して耐久性と加工性を付与することができる。こうして、金属板21と樹脂層22、23との密着性を維持しつつ、強固な巻き締め加工性等を高めることができる。
以下、このような樹脂被覆シームレス缶の特性に関わる諸因子を説明する。
第二の実施の形態では、樹脂層の構成を2層にした点において、▲1▼樹脂中のイソフタル酸含有量、▲2▼樹脂の固有粘度、▲3▼樹脂の平均分子量、▲4▼樹脂のガラス転移点、▲5▼樹脂層の厚み、▲6▼樹脂層の構成、▲7▼シームレス缶の成形方法について項目別に順を追って詳細に説明する。
【0029】
▲1▼樹脂中のイソフタル酸含有量
本実施の形態においては、イソフタル酸含有量の異なるポリエチレンテレフタレート/イソフタレートのイソフタル酸含有量を、樹脂層の表層側において3〜13モル%と低くすることが好ましい。
また、樹脂層の下層側で8〜25モル%と高くし、しかも表層側より高くすることが好ましい。
イソフタル酸を酸成分として含有するイソフタル酸変性ポリエステルは、種々の成分に対してバリヤー効果が大きく、内容物の香味成分に対する吸着性が低いという特徴を有しているからである。
また、表層側のイソフタル酸含有量が上記範囲よりも多いと、内容物中の香味成分の吸着に対して充分なバリヤー効果を付与することが困難となり、充分な耐デント性を付与することが困難になる。
イソフタル酸含有量を上記範囲内にすることによって、絞り容器の状態において、表層の配向性を高いレベルに維持できるという効果がある。
【0030】
一方、樹脂層の下層側のイソフタル酸含有量が上記範囲よりも多いと、共重合ポリエステル中における低分子成分の含有量が多くなり、この低分子成分の溶出によりフレーバー性が低下する傾向が増す。
また、イソフタル酸成分が上記範囲より少ないと、金属板との密着性に劣るようになると共に、加工性も低下し好ましくない。
イソフタル酸含有量を上記範囲内にすることで、フレーバー性を優れたレベルに椎持しながら、金属板との密着性や加工性を高め、被覆樹脂の強靱性を高めることができる。
また、樹脂層の下層側のイソフタル酸を表層側のイソフタル酸含有量よりも多い量含有させることにより、絞り加工やしごき加工等のような厳しい加工に対しても、金属板との充分な密着性が保持されると共に、缶体熱処理時における表層樹脂層のオーブン表面との融着を防止でき、ひいては耐デント性の顕著な向上につながるのである。
【0031】
▲2▼樹脂の固有粘度
前記樹脂層は、フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒を用いて測定した固有粘度(IV値)が、所定の範囲にあることが好ましい。
すなわち、絞り加工やしごき加工のような厳しい加工に際して、樹脂層に、割れ、削れ、剥離等を生じることがないように、樹脂の固有粘度(IV値)を、0.7以上とすることが好ましい。好ましくは、0.8以上とする。
樹脂の固有粘度(IV値)が0.7未満であると、樹脂層の強度が低下し、絞り加工やしごき加工のような厳しい加工に耐えられない。また、フレーバー性も劣り好ましくない。
一方、樹脂の固有粘度(IV値)が高くなると、樹脂を加熱溶融させた際の溶融粘度が極端に高くなり、金属板に樹脂を被覆する作業が困難となり好ましくない。したがって、樹脂の固有粘度(IV値)の上限を1.4とすることが好ましく、1.2とすることが特に好ましい。
よって、樹脂の固有粘度(IV値)を0.8〜1.2の範囲とすることが、缶内容物に対するバリヤー性や機械的性質のために好ましい。
【0032】
また、表層(A)及び下層(B)におけるIV値は、加工性、耐食性、フレーバー性等の点からA≧Bの関係とすることが好ましい。
相対的に、表層(A)のIV値が低くなると加工性が劣り、加工後パンチ等の工具との離れが悪くなり、シームレス缶の抜け性が劣り、下層(B)のIV値が高くなると金属板との密着性が劣り加工時に樹脂剥離が生ずる可能性が増す傾向にある。従って、A≧BのIV値とすることが好ましい。
【0033】
▲3▼樹脂の平均分子量
また、樹脂層の平均分子量は、表層に用いるPET/IAが5000以上、特に10000〜40000の範囲、下層に用いるPET/IAが5000〜50000、特に10000〜40000の範囲とすることが耐デント性を向上させる上で好ましい。
【0034】
▲4▼樹脂のガラス転移点
更に、樹脂層のガラス転移点は、表層に用いるPET/IAが50℃以上、特に60℃以上、下層に用いるPET/IAが40℃以上、特に50℃以上とすることが、フレーバー性向上のため好ましい。
また表層及び下層の何れにも、それ自体公知のフィルム用配合剤、例えば非晶質シリカ等のアンチブロッキング剤、二酸化チタン等の顔料、各種帯電防止剤、滑剤等を公知の処方によって配合することができる。
【0035】
▲5▼樹脂層の厚み
以下に、樹脂被覆シームレス缶20の樹脂層について更に詳細に説明する。
本実施の形態における樹脂層に用いるポリエチレンテレフタレート/イソフタレートは、表層ではイソフタル酸を3〜13モル%含有するものが好ましく、下層ではイソフタル酸を8〜25モル%含有するものが好ましい。
本実施の形態においては、上述した樹脂層表層(A)の厚みは、シームレス缶加工に際して、パンチ等の工具との摩擦で発生する樹脂の剥離によって部分的に厚みが減少していることも考慮すると平均2μm以上あることが好ましく、特に3μm以上あることが好ましい。
一方、表層(A)の厚みの上限は下層ほど厚くなくてもよく、2層の樹脂層とすることを考慮すると25μm以下とすることが好ましく、特に20μm以下とすることが好ましい。
【0036】
下層(B)の厚みは、金属板との密着性を確保する観点から一定の厚み以上にすることが必要で、3μm以上とすることが好ましく、特に4μm以上あることが好ましい。
一方、下層(B)の厚みの上限は、本発明では更に表層を形成させた2層樹脂層とすることを考慮すると30μm以下とすることが好ましく、特に25μm以下とすることが好ましい。
【0037】
また表層(A)と下層(B)の膜厚関係は、加工性、耐食性、フレーバー性等の観点から、下層(B)≧表層(A)の厚み比とすることが好ましい。
表層(A)と下層(B)との膜厚関係は、相対的に、下層(B)の厚みが表層(A)の厚みより薄くなると、金属板との密着性が劣り、加工時に樹脂剥離が生ずる可能性が増す傾向にある。したがって、表層(A)と下層(B)との膜厚関係は、上記膜厚みの範囲内で、しかも下層(B)≧表層(A)の厚み比とすることが好ましい。
【0038】
金属板への樹脂層の被覆は、公知の方法により製造することができるが、好適には、多層キャストフィルムのラミネーション、共押出コート法を用いて形成した2層の樹脂層を金属板へ被覆する方法などが挙げられる。
多層キャストフィルムのラミネーションは、表層及び下層のPET/IAチップをそれぞれ別の押出機に入れ、加熱溶融してダイよりシート状に押出し、キャスティングドラム上で冷却固化することにより形成される。
一方、共押出コートは2台の押出機を使用し、表層及び下層のPET/IA樹脂をダイに供給し押出すことにより形成される。
本発明においては、多層キャストフィルムのラミネーションまたは共押出コートにより2層樹脂層とすることができ、接着剤を使用することなく、強固に2層間の接着が可能となって、樹脂層の加工性を向上することができる。
【0039】
▲6▼樹脂層の構成
樹脂被覆シームレス缶20に用いる金属板には第一の実施の形態と同様の金属板が適用されると共に、上述した表層(A)及び下層(B)から成る2層樹脂が金属板の両面又は片面に形成されている。
なお、樹脂被覆シームレス缶20の外側樹脂層23には、表層(A)がイソフタル酸含有量が少ないポリエチレンテレフタレート/イソフタレートに少量の二酸化チタンを配合したホワイトコート層、下層(B)がイソフタル酸含有量の多いポリエチレンテレフタレート/イソフタレートから成り、表層(A)と下層(B)との間にと表層(A)と同様のポリエチレンテレフタレート/イソフタレートに二酸化チタンを配合したホワイトコート層が形成されていてもよい。
また、上記層構成以外にも種々の構成を採用することができ、金属板とシームレス缶内面側下層または外面側の下層の間に、金属板と樹脂層との両方に対して優れた接着性を示す公知の接着用プライマーを設けることも可能である。
密着性と耐腐食性とに優れたプライマーとしては、種々のフェノールとホルムアルデヒドから誘導されるレゾール型フェノールアルデヒド樹脂と、ビスフェノール型エポキシ樹脂とから成るフェノールエポキシ系等のものが挙げられる。
特に、フェノール樹脂とエポキシ樹脂を50:50〜1:99の重量比、特に、40:60〜5:95の重量比で含有する塗料が好ましい。
接着プライマーの層は一般に0.01〜10μmの厚みに設けるのがよい。接着プライマー層は予め金属板上に設けてもよく、或いは樹脂層上に設けてもよい。
【0040】
▲7▼シームレス缶の成形方法
実施の形態2の樹脂被覆シームレス缶20は、上述した金属板のPET/IA被覆面が少なくとも缶内面側に形成されるようにして、絞り・再絞り加工、絞り・再絞りによる曲げ伸ばし加工(ストレッチ加工)、絞り・再絞りによる曲げ伸ばし・しごき加工、或いは絞り・しごき加工等の従来公知の手段に付すことによって製造される。
樹脂被覆シームレス缶20は、上記手段によって製造されるが、好ましくは再絞りによる曲げ伸ばし加工、及び/又はしごき加工を行って側壁部の薄肉化を行う。その薄肉化は、底部に比して側壁部は曲げ伸ばし加工、及び/又はしごき加工により、樹脂被覆金属板の素板厚の20〜95%、特に30〜85%の厚みになるように薄肉化されることが好ましい。
【0041】
例えば、絞り・再絞りによる曲げ伸ばし加工によれば、樹脂被覆金属板から絞り比1.1〜3.0の範囲の絞り加工によって前絞りカップを成形し、このカップを絞り比1.5〜5.0の範囲で再絞りポンチと再絞りダイスによって再絞り加工を行う。
このとき、上記再絞りダイスの作用コーナー部の曲率半径(Rd)を、金属板厚み(tB)の1〜2.9倍、特に1.5〜2.9倍の寸法として曲げ伸ばし加工に付することにより薄肉化を有効に行うことができる。
こうして、側壁部の下部と上部とにおける厚みの変動が解消され、側壁部全体にわたって均一な薄肉化が可能となる。
【0042】
曲げ伸ばし加工及びしごき加工に際しては、下記の式で定義される薄肉化率RIが20〜95%、特に30〜85%の厚みになるように薄肉化することが好ましい。
RI=((tB−tW)/tB)×100
なお、前記式において、tBは金属板素板厚みであり、tWはシームレス缶側壁部の金属板厚みである。
また、上記再絞り加工において、再絞りダイの曲げ伸ばし加工部の後工程にしごき加工部を配置して、側壁部に対して更にしごき加工を行うこともできる。
【0043】
以上のようにして、絞り・再絞りによる曲げ伸ばし加工法、絞り・再絞りによる曲げ伸ばし・しごき加工法、或いは絞り・しごき加工法を適用することによって、高度に薄肉化され加工度の大きい樹脂被覆シームレス缶20を製造することができる。
実施の形態2の樹脂被覆シームレス缶20は、カップ状の開口部に肉厚部を有し、しかも金属板の両面に特定組成及び肉厚の2層構造からなる樹脂層を有するので、従来の樹脂被覆金属板からでは製造することが困難であった相当歪み(公称歪み換算)が最大400%にも達する樹脂被覆シームレス缶を製造することが可能となった。
【0044】
【実施例】
(実施例1)
次に、表1を用いて、本発明の第一の実施の形態である樹脂被覆シームレス缶の実施例1を詳細に説明する。
表1は、アルミを金属板11の素材として製造した本発明の樹脂被覆シームレス缶における諸データを示している。表1において、350mL缶は内容量が350mLの樹脂被覆シームレス缶のデータを示し、500mL缶は内容量が500mLの樹脂被覆シームレス缶のデータをそれぞれ示している。
なお、表1において、樹脂被覆シームレス缶のカップ状の開口部の厚み(Tf)、胴中央部の厚み(Tw)はそれぞれ金属板、外側樹脂層及び内側樹脂層の合計値であり、括弧( )内の数値はアルミ金属板のみの厚みを表している。
表1から明らかなように、本発明においては、開口部の厚み(Tf)が肉厚部となって胴中央部の厚み(Tw)より厚く形成されているのが分かる。
【0045】
【表1】
【0046】
(実施例2〜5)
第二の実施の形態の樹脂被覆シームレス缶を実施例2〜5で詳細に説明する。
表2に示した樹脂を用い、下記に示す樹脂被覆金属板を製造した。次いで、この樹脂被覆金属板を下記に示す成形法にて樹脂被覆シームレス缶に成形した。
【0047】
【表2】
【0048】
実施例1〜5に示すシームレス缶の評価結果を表3にまとめた。
表3からわかるように、本発明に基づく樹脂被覆シームレス缶は、成形性、耐食性に優れ、飲料保存用の樹脂被覆シームレス缶として最適なものであった。
【0049】
【表3】
【0050】
なお、実施例1〜5において用いた樹脂被覆金属板は以下のようにして作成した。フィルムラミネートによる方法では、1又は2種類の組成の樹脂を押出機に供給し、1又は2層Tダイを通して、表中の厚みとなるように押し出したものを冷却ロールにて冷却して得られた1又は2層樹脂フィルムを巻き取り、金属板被覆用樹脂フィルムとした。
作製した樹脂フィルムを、TFS鋼板(板厚0.18mm、金属クロム量120mg/m2 、クロム水和酸化物量15mg/m2 )、または板厚0.24mmのアルミ合金板(A3004H39材)の両面に熱圧着(ラミネート)し、直ちに水冷することにより樹脂被覆金属板を形成させた。このとき、ラミネート前の金属板の温度はポリエステル樹脂の融点より15℃高く設定した。
また、ラミネートロール温度は150℃とし、通板速度は150m/min.でラミネート処理を行って樹脂被覆金属板を得た。
【0051】
押出ラミネートによる方法では、250℃に加熱したTFS鋼板(板厚0.18mm、金属クロム量120mg/m2 、クロム水和酸化物量15mg/m2 )、又は板厚0.24mmのアルミ合金板(A3004H39材)上に、表1又は表2に示した1又は2種類の組成の樹脂をエクストルージョン・ラミネーション設備を備えたφ65mmの押出機に供給し、1又は2層構成の樹脂を溶融押出しを行い、直に金属板の両面に被覆し樹脂被覆金属板を得た。
【0052】
次に、前述のようにして得た樹脂被覆金属板を用いて、樹脂被覆シームレス缶を作製した。
まず、樹脂被覆金属板にワックス系潤滑剤を塗布し、直径140mmの円盤に打ち抜き、浅絞りカップを得た。次いで、この浅絞りカップを再絞りによる曲げ伸ばし加工(=ストレッチ加工)をした後、続けてしごき加工を行い、カップ径:52mm、カップ高さ:141mmの缶体を作製した。この缶体を、常法に従い底成形を行い、215℃にて熱処理を行った後、放冷後、開口部縁部のトリミング加工、曲面印刷及び焼き付け乾燥、ネック加工、フランジ加工を行って、250ml用のシームレス缶を作製した。
【0053】
なお、表2において示す樹脂固有粘度(IV値)の測定は以下のようにして行った。表2に示した樹脂200mg分をフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶液(重量比1:1)に110℃で溶解し、ウベローデ型粘度計を用いて30℃で比粘度を測定した。
固有粘度(IV値)=〔η〕(dl/g)は下記式により求めた。
〔η〕=[(−1+(1+4K'・ηsp)1/2)/2K'C]
K':ハギンズの恒数(=0.33)
C:濃度(g/100ml)
ηsp:比粘度[=(溶液の落下時間−溶媒の落下時間)/溶媒の落下時間]
なお、表2において、缶の内外両面に樹脂を被覆し、缶内面側と缶外面側の表層樹脂層、下層樹脂層を、それぞれ、缶内面側を表層(A)及び下層(B)と表示し、缶外面側を表層(C)及び下層(D)と表示した。上記した表層(A)及び下層(B)に対する説明は、樹脂被覆シームレス缶の外側樹脂層として形成した表層(C)及び下層(D)にも同様に適用される。
【0054】
前記表1又は表2に示した樹脂を用いて樹脂被覆金属板を製造し、この樹脂被覆金属板をシームレス缶に成形した。この評価結果を表3にまとめた。
表3からわかるように、本発明に基づく実施例1〜5は、成形性、耐食性に優れ、飲料保存用のシームレス缶として最適なものであった。
すなわち、本発明の実施例1〜5のシームレス缶は、全く不良品は発見できなかったが、本発明の範囲をはずれた比較例1〜3のシームレス缶は、表3に示したように、いずれかの問題点が発生し、まともに缶成形ができなかった。
【0055】
【発明の効果】
本発明の樹脂被覆シームレス缶は、開口部に肉厚部が形成されているので、缶蓋の巻き締めなどの高度の変形を伴う缶成形や、絞りしごき加工や折曲げ加工が可能であり、薄肉化されしかも金属板と樹脂層との密着性に優れた樹脂被覆シームレス缶を提供することができる。
また、缶表層は工具等による傷つきが少ない樹脂構成になっているので、ビールやチューハイ等のアルコール飲料に対しても、突き刺し強度、落下強度、ERV値のばらつきの少ない、優れた性能を有する樹脂被覆シームレス缶を提供することができる。
また、ホットベンダーやレトルト殺菌等の高湿熱条件下に置かれた場合にも、優れた耐食性及び耐デント性を有する。
さらに、シームレス缶の内容物の香りを変質させることがないので、あらゆる種類の飲料に対応することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施の形態の樹脂被覆シームレス缶の模式断面図である。
【図2】本発明の樹脂被覆シームレス缶の板厚分布図である。
【図3】本発明の第二の実施の形態の樹脂被覆シームレス缶の模式断面図である。
【符号の説明】
10: 第一の実施の形態の樹脂被覆シームレス缶
11: 金属板
12: 内側樹脂層
13: 外側樹脂層
14: 底部
15: 肉厚部
15a: 開口部
20: 第二の実施の形態の樹脂被覆シームレス缶
21: 金属板
22: 内側樹脂層
23: 外側樹脂層
24: 底部
25: 肉厚部
25a: 開口部
Claims (7)
- 少なくとも片面に樹脂層が被覆された金属板をカップ状に形成してなる樹脂被覆シームレス缶であって、
前記樹脂層を含む前記金属板の厚みがカップ状の胴中央部より厚く形成された肉厚部をカップの開口部に有し、
前記開口部の肉厚部の長さLが、シームレス缶の高さHに対して、1/20〜1/10であることを特徴とする樹脂被覆シームレス缶。 - 前記開口部に形成された肉厚部が、前記カップの内面側に形成されている部分においては、その下端部から上端部にかけて肉厚が漸増する傾斜部及び傾斜部につらなる一定肉厚部が形成され、前記カップの外面側に形成されている部分においては、その下端部から上端部にかけて肉厚が漸増する傾斜部が形成されているものであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂被覆シームレス缶。
- 前記樹脂層が表層(A)及び下層(B)の2層からなり、表層(A)は、缶の成形時に配向して結晶化したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂被覆シームレス缶。
- 前記樹脂層は、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレートから成る表層(A)及び下層(B)を有し、下層(B)は、表層(A)と比較して、イソフタル酸含有量を多く含有し、同等以下の固有粘度を有し、下層(B)と表層(A)の膜厚はB≧Aの関係である、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂被覆シームレス缶。
- 前記表層(A)は、イソフタル酸含有量が3〜13モル%で、IV値が0.7以上のポリエチレンテレフタレート/イソフタレートから成り、前記下層(B)は、イソフタル酸含有量が8〜25モル%で、IV値が0.7以上のポリエチレンテレフタレート/イソフタレートから成る、ことを特徴とする請求項3又は4記載の樹脂被覆シームレス缶。
- 前記樹脂被覆シームレス缶が、絞り成形、ストレッチ成形、又はこれらの成形としごき成形を組み合わせた成形、或いはしごき成形により得られたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂被覆シームレス缶。
- 前記金属板がアルミ又はアルミ合金製であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂被覆シームレス缶。
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